噴流浴装置
【課題】飽きや馴化がなくリラックス効果を高めた噴流浴を実現する噴流浴装置を提供する。
【解決手段】浴槽4と、浴槽の短辺側浴槽壁に設けられた複数のノズル11と、浴槽の内部に貯留された浴槽水を吸い込み加圧してノズルに導入する加圧装置7とを備え、ノズルは、気泡を含まず、不規則に旋回した噴流を浴槽水中に噴出し、浴槽水に、各々のノズルから吐水された吐水流が合成された不規則な流れが形成される。
【解決手段】浴槽4と、浴槽の短辺側浴槽壁に設けられた複数のノズル11と、浴槽の内部に貯留された浴槽水を吸い込み加圧してノズルに導入する加圧装置7とを備え、ノズルは、気泡を含まず、不規則に旋回した噴流を浴槽水中に噴出し、浴槽水に、各々のノズルから吐水された吐水流が合成された不規則な流れが形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴流浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、相対向する一対の短辺側浴槽壁のそれぞれにノズルを設け、各ノズルから対向壁方向へ直線的に水流を生じさせる浴槽がある(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平7−178142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、噴流浴装置としては、直線的な噴流を人体に当ててその刺激によるマッサージを実現するものが主であり、特に刺激をより高めるには気泡入り噴流を噴出させることが有効であることもあって噴流噴出音が騒々しく、且つ噴流刺激を人体に受けながらの入浴ということで、長時間リラックスして噴流浴を楽しむことは難しかった。
【0004】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、飽きや馴化がなくリラックス効果を高めた噴流浴を実現する噴流浴装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、浴槽と、前記浴槽の短辺側浴槽壁に設けられた複数のノズルと、前記浴槽の内部に貯留された浴槽水を吸い込み加圧して前記ノズルに導入する加圧装置とを備え、前記ノズルは、気泡を含まず、不規則に旋回した噴流を浴槽水中に噴出し、前記浴槽水に、各々の前記ノズルから吐水された吐水流が合成された不規則な流れが形成されることを特徴とする噴流浴装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、飽きや馴化がなくリラックス効果を高めた噴流浴を実現する噴流浴装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0008】
図1は、本発明の実施形態に係る噴流浴装置の概略構成を示す模式図である。また、図2に同噴流浴装置における浴槽4の平面図を示す。
【0009】
本実施形態に係る噴流浴装置は、浴槽4と、加圧装置であるポンプ7と、複数のノズル11とを備える。
【0010】
浴槽4は、略平行に相対向する一対の長辺側浴槽壁と、略平行に相対向する一対の短辺側浴槽壁4a、4bとを有し、平面視が略矩形状または長円形状に形成されている。
【0011】
一対の長辺側浴槽壁のうちの一方には吸入口5が形成されている。吸入口5と、ポンプ7の吸込口との間には吸込管6が接続され、ポンプ7が駆動されると、浴槽4の内部に貯留された浴槽水(湯も含む)は吸入口5から吸込管6へと吸い込まれる。
【0012】
一般に、入浴者は、向かい合う一対の短辺側浴槽壁4a、4bのうちの一方の短辺側浴槽壁(図1に示す例では短辺側浴槽壁4b)に背をもたれかけて、他方の短辺側浴槽壁(図1に示す例では短辺側浴槽壁4a)に足を向けた姿勢で入浴するため、吸入口5を短辺側浴槽壁に形成した場合には、入浴者の背中や足裏で吸入口5がふさがれポンプ7に過剰の負荷がかかることが懸念される。したがって、吸入口5は、入浴者の身体の一部等によってふさがれにくい長辺側浴槽壁に形成するのが望ましい。
【0013】
ポンプ7の吐出口と各ノズル11との間は吐出管8で接続され、ポンプ7は、吸入口5から吸込管6内に浴槽水を吸い込むと共に、その吸い込んだ浴槽水を加圧して吐出管8に吐出する。このポンプ7から吐出された加圧浴槽水は、ノズル11の流水導入口に流入する。使用していないときに、ポンプ7内部の残留水を抜くために、ポンプ7は吸入口5よりも上方に設け、吸入管6が吸入口5に向かって傾斜していることが望ましい。
【0014】
浴槽4の内部は概略4つの壁面で囲まれ、そのうちの一つの壁面を構成する短辺側浴槽壁4aに2つのノズル11を取り付けている。2つのノズル11は、図2に示すように、短辺側浴槽壁4aにおける水平方向の中心位置(この中心位置を通り短辺側浴槽壁4a、4bをその水平方向に2等分する線を図2において1点鎖線Oで示す)を挟んでその水平方向に互いに離間して並んで設けられている。上記中心線Oに対する各ノズル11の離間距離は略同じであり、また、2つのノズル11の設置高さは略同じ高さである。
【0015】
ノズル11が取り付けられた短辺側浴槽壁4aの上方には浴槽側水栓が設けられる。したがって、通常、入浴者は自然と図1に示すように、ノズル11が設けられた側の短辺側浴槽壁4aに足を向け、反対側の短辺側浴槽壁4bに背をもたれかけた姿勢で入浴する。
【0016】
各ノズル11は同じ構造を有し、そのノズル11の具体的構造について図3を参照して説明する。図3は、ノズル11の模式断面図である。
【0017】
ノズル11は、大きく分けて、略円筒形状でほぼまっすぐに延在する筒体20と、筒体20の軸方向の上流側端部に設けられた湾曲部30とを有する。筒体20と湾曲部30とは一体成形構造であってもよいし、別体のものを結合させてもよい。また、筒体20は、略円筒形状に限らず、略楕円筒形状であってもよい。
【0018】
湾曲部30の内部には流水導入部22が形成され、その流水導入部22における上流側端部の最上流端には、前述した吐出管8と浴槽4の外部で接続される流水導入口21が開口形成されている。筒体20の軸方向の下流側端部には噴出口26が開口形成されている。
【0019】
ノズル11は、噴出口26を浴槽4の内部に臨ませて短辺側浴槽壁4aに保持されている。ノズル11は浴槽4のあふれ縁より下で、短辺浴槽壁4aに保持されている。ここで、「あふれ縁」とは、浴槽4内に浴槽水をためていったとき、最初に浴槽4内から溢れる部分の浴槽4の縁(またはリム)を意味する。このような構成のため、ノズル11からの噴流を浴槽水中に噴出させることができる。
【0020】
流水導入部22の下流側端部は、流水導入部22の中で最も流路断面が縮小された流路断面収縮部23として機能する。流路断面収縮部23の最下流端は、筒体20の軸方向の上流側端部に開口している。
【0021】
流路断面収縮部23の流路断面の中心は、筒体20の軸中心C1に一致している。流水導入部22の流路断面の中心を通る流路中心線C2は曲率を有する曲線を描き、すなわち、流水導入部22は湾曲している。その流路中心線C2の下流端位置は、チャンバー25の軸中心C1に一致している。
【0022】
流路断面収縮部23は、筒体20の内部に形成されたチャンバー25に連通し、且つチャンバー25に対して流路断面が縮小されている。また、流路断面収縮部23は、その流路断面の中心を、チャンバー25の軸中心C1に一致させて、チャンバー25の軸方向に対して略平行に延在し、径が一定な直管状に形成されている。
【0023】
流路断面収縮部23と噴出口26との間の筒体20の内部には、筒体20の軸方向に延在するチャンバー25が設けられている。
【0024】
チャンバー25の軸方向の上流側端部には、流路断面収縮部23に対して流路断面が急拡大(例えば径が3倍以上急拡大)された流路断面急拡大部24が設けられている。流路断面急拡大部24は、流路断面収縮部23より下流側で流路断面収縮部23に連通している。
【0025】
チャンバー25の軸方向の下流側端部には噴出口26が開口している。チャンバー25の内壁面は、流路断面急拡大部24から噴出口26の近傍に至るまで、チャンバー25の軸中心C1に対して略平行に延在し、また、チャンバー25は流路断面急拡大部24の内径寸法のまま噴出口26近傍まで続いている。チャンバー25における軸方向の上流側端部が流路断面急拡大部24として機能し、チャンバー25における軸方向の下流側端部が噴出口26として機能する。
【0026】
流路断面収縮部23から流路断面急拡大部24にかけての流路壁面は略垂直に変化している。すなわち、流路断面収縮部23の流路壁面は、チャンバー25の軸方向に対して略平行であるのに対して、流路断面急拡大部24として機能するチャンバー25の軸方向の上流側端部の壁面は、流路断面収縮部23の流路壁面に対して略垂直に続いて径外方に広がって形成されている。この流路壁面の急変化により、後述するように流路断面急拡大部24にて、壁面からの流れの剥離が生じる。
【0027】
なお、流路断面急拡大部24の流路壁面は流路断面収縮部23の流路壁面に対して略垂直に広がっていることに限らず、流路断面急拡大部24にて、流れの剥離が生じる程度に、下流側に向けて流路断面が拡径する漏斗(またはラッパ)状に形成されていてもよい。ただし、流路断面収縮部23の流路壁面に対して略垂直に続くように流路断面急拡大部24の流路壁面が形成されている方が、流路断面急拡大部24における流れの剥離を促進させやすい。
【0028】
また、噴出口26近傍のチャンバー25内に、噴出口26へと通じるチャンバー25内流路の一部を遮る遮蔽体27を設けている。遮蔽体27は例えば円盤状に形成され、その中心をチャンバー25の軸中心C1に一致させて、チャンバー25の内部に設けられている。
【0029】
遮蔽体27は、例えば、遮蔽体27とチャンバー25の内壁部との間に放射状に設けられた図示しない複数本の保持部材を介してチャンバー25の内壁部に対して保持されている。それら保持部材は、円盤状の遮蔽体27の外周面のまわりに周方向に沿って等間隔で設けられ、よって、遮蔽体27によってチャンバー25内流路のすべてが遮蔽されず、遮蔽体27とチャンバー25の内壁部との間には、チャンバー25から噴出口26への流水の流れを許容する流路が確保されている。
【0030】
また、チャンバー25の軸方向の下流側端部における噴出口26へと続く内壁面に、チャンバー25の軸中心C1に向けて傾斜した環状の傾斜面28を形成している。傾斜面28は、上流側から下流側に向かうにしたがって徐々に軸中心C1に近づくように傾斜している。
【0031】
次に、本実施形態に係る噴流浴装置の作用について説明する。
【0032】
図1において、浴槽4近傍に設けられた図示しないコントローラのスイッチを入浴者が操作すると、ポンプ7が起動し、浴槽4内に貯留された浴槽水が吸入口5から吸込管6内へと吸入される。この吸入された浴槽水は、ポンプ7にて加圧されて、吐出管8を介して、ノズル11の流水導入口21に導入される。ノズル11内に導入された加圧浴槽水は、以下に説明するように、気泡を含まず、不規則に旋回した噴流を浴槽4内に貯留された浴槽水中に噴出する。
【0033】
図4(a)〜(d)は、ノズル11にて旋回噴流が形成される作用を説明するための模式図である。
【0034】
流水導入口21から導入された加圧浴槽水は、流水導入部22、流路断面収縮部23および流路断面急拡大部24を順に経てチャンバー25内に噴流となって流入する。加圧浴槽水が、流路断面収縮部23からチャンバー25内に流入する際、流路断面の急拡大により、筒体11の内壁面に沿って流れることができなくなり、すなわち流路内壁面に対して流れの剥離が生じる。
【0035】
一般的に、噴流は、外部流体との運動量交換により外部流体を加速し、噴流内部に巻き込む。このとき、噴流近傍に壁面が存在すると、外部流体を内部に引き込むように作用する引きつけ力の反作用により、噴流自身が壁面に向かって曲げられ、再び流れが壁面に沿うようになる。つまり、チャンバー25の内壁面の周の一部に流れが再付着する。
【0036】
チャンバー25の内壁面に付着した主流は、そのままチャンバー25内壁面に沿い、遮蔽体27の外周面とチャンバー25内壁面との間を噴出口26に向かって流れ、噴出口26の手前(上流側)で筒体20の軸中心に向かうように傾斜して形成された傾斜面28に沿って軸中心Cに対して傾斜した噴流として噴出口26から浴槽4内に噴出する。
【0037】
以上のようにして、ノズル11内に、主流(図4(a)において太線矢印aで表す)が形成される。
【0038】
流路断面収縮部23に比べて噴出口26の流路断面が大きく、流れは下流に向かって減速、すなわち、チャンバー25内部では下流に向かって静圧が増加する逆圧力勾配が形成されること、さらにチャンバー25内に流路の一部を遮るように遮蔽体27が設けられていることによって、前述した主流の一部は噴出口26から噴出されず、図4(b)において矢印bで表すように、チャンバー25の上流側に戻される。
【0039】
その上流側に戻された流れが、図4(c)に表すように、流路断面急拡大部24付近にて主流が剥離したよどみ領域に流れ込むことで、図4(d)に表すように、流路断面急拡大部24付近で中心軸Cまわりに旋回流が形成され、これにより、主流の内壁面に対する再付着位置が周方向で不規則に変化し、噴出口26からは中心軸Cまわりに不規則に旋回した噴流が噴出される。
【0040】
ノズル11から噴出される噴流は、噴流浴装置において一般的に広く知られる気泡入りの細く強い直線的な噴流とは異なり、太くやわらかい旋回噴流である。しかも、この噴流は不規則に旋回している。ここでの、不規則に旋回とは、旋回周期(旋回周波数)や旋回の径(広がり)、また場合によっては旋回方向が不規則に変化することを意味する。
【0041】
ここで、本発明者等は、ノズル11からの噴出噴流を、噴出口26から70mmの位置に設けた面状に広がる観測体に衝突させ、その観測体に対する噴流衝突部分を可視化した状態で噴出口26に対して正対する方向から観測し、噴流衝突部分の中心位置の時間変化に伴う衝突面内分布(移動軌跡)を求めた。
【0042】
その結果を図5に示す。図5において、小さな○印が観測体に対する噴流衝突部分の中心位置を示し、観測体面上を移動している中心位置のサンプリング時間は0.01秒である。また、測定時におけるノズル11からの噴出流量は、およそ40(リットル/分)となるように設定した。また、ノズル11について、図3に表す各寸法d、D、Dout、Lは、それぞれ以下のように設計した。流路断面収縮部23の内径d=8.3mm、流路断面急拡大部24及びチャンバー25の内径D=27.8mm、噴出口26の口径Dout=27.8mm、チャンバー25の長さL=76.6mm。
【0043】
また、図6は、図5におけるx方向座標及びy方向座標が共に0の観測体上における原点からのサンプリング点の半径(噴流の旋回半径)の時間変化を示す。
【0044】
図5、6の結果より、噴流衝突部分の中心が局所に集中せず時間経過に伴って不規則に位置が変化し、すなわち噴流の旋回半径(噴流の広がり)が不規則に変化していることがわかる。
【0045】
また、図7は、上記観測体に対する噴流衝突部分の中心位置(図5におけるサンプリング点)の位相差(rad)の時間変化を示す。
【0046】
図8に示すように、ある時刻t1における噴流衝突部分の中心位置(サンプリング点)は、サンプリング時間である0.01秒後(時刻t2)には、別の位置に移動している。このときの観測体上における原点Oと時刻t1におけるサンプリング点とを結ぶ直線と、原点Oと時刻t2におけるサンプリング点とを結ぶ直線とがなす角度を、図7における縦軸の位相差(rad)としている。
【0047】
この図7の結果より、上記位相差が不規則に時間変化しており、すなわちノズル11から噴出される噴流の旋回周期(旋回周波数)が不規則になっていることがわかる。
【0048】
また、図9は、上記観測体に対する噴流衝突部分の中心位置(図5におけるサンプリング点)の角度(rad)の変化量(時間変化)を示す。
【0049】
ここでの角度(rad)は、上記観測体上の原点Oを中心として図10に示すように第1象限、第2象限、第3象限、第4象限を規定した場合の、各サンプリング点の角度(rad)を示す。
【0050】
図9は、その角度(rad)を縦軸に、時間を横軸にとったグラフである。なお、噴流衝突部分の中心位置(サンプリング点)が第4象限から第1象限に移るときには、角度が2π(6.28・・・)近くの値から0近くの値になるので、そのときは図9のグラフ上急激に値が落ちている。
【0051】
この図9の結果より、上記角度が不規則に変化していることから、瞬間瞬間の噴出方向を不規則に変化させつつ噴流が旋回していることがわかる。
【0052】
前述したように、2つのノズル11のそれぞれから不規則な旋回噴流が浴槽水中に吐水されるが、浴槽水中にはそれぞれのノズル11からの吐水流が干渉して合成された流れが形成される。この合成流は、各ノズル11からの噴出噴流が不規則な旋回流であることから、一定方向の流れではなく、複数方向の流れを有する不規則な流れとなる。特に、ノズル11から足側の短辺側浴槽壁4bに向かう流れと、この流れとは反対側に戻ってくるような流れを入浴者が顕著に感じることができる不規則な流れが浴槽水中に形成される。この結果、入浴者は、柔らかな水流につつまれたような水流のさわさわ感やゆらぎ感を感じることができ、噴流を人体に対して局所的に受けるよりも、飽き(馴化)がなく、長時間リラックスした噴流浴を楽しめる。
【0053】
本発明者等は、前述した2つの各ノズル11から不規則な旋回流を40リットル/分で浴槽水中に吐水させた状態で、浴槽水中における複数箇所(図2に示すA〜Dの4箇所)の位置における水面から100mmの深さの地点の流速の時間変化を測定した。
【0054】
測定位置Aは、ノズル11を取り付けた短辺側浴槽壁4aの内壁面から、前述した中心線O上を他方の短辺側浴槽壁4bに向かって250mm離間した位置である。測定位置Bは、測定位置Aから中心線O上を他方の短辺側浴槽壁4bに向かってさらに250mm離間した位置である。測定位置Cは、測定位置Bから中心線O上を他方の短辺側浴槽壁4bに向かってさらに250mm離間した位置である。測定位置Dは、測定位置Cから中心線O上を他方の短辺側浴槽壁4bに向かってさらに250mm離間した位置であり、且つ他方の短辺側浴槽壁4bの内壁面から250mm離間した位置である。
【0055】
図2において、(a)〜(d)のグラフは、それぞれ位置A〜Dにおける流速の時間変化を表し、(a)〜(d)の各グラフにおいて縦軸は流速(m/秒)を、横軸は時間(秒)を示す。縦軸の流速において、正の値はノズル11から短辺側浴槽壁4bに向かう方向の流れの流速を示し、負の値は短辺側浴槽壁4bからノズル11が取り付けられた短辺側浴槽壁4aに向かう方向の流れの流速を示す。また、横軸における時間は、ノズル11から吐水が行われていない状態(0秒)から吐水が開始された以降の時間経過を示す。
【0056】
これら図2の(a)〜(d)のグラフより、A〜Dのどの位置においても、流速が正の範囲と負の範囲とを交互に繰り返しており、特に噴流が重なり合ってくるB〜Dの位置においては顕著にその様子がかわる。すなわち浴槽4内に長辺方向に沿った相反する方向の流れが交互に繰り返される流れ方向の変化が生じている。この流れ方向の変化が、局所的な噴流マッサージでは感じることができない水流のさわさわ感やゆらぎ感を入浴者に与え、入浴者はもみ疲れすることなく長時間リラックスして噴流浴を楽しめる。
【0057】
ここで、図11は、図2のD位置における流速の確率密度分布を示す。
【0058】
図11のグラフより、ピークは0以外にあり、また正の範囲と負の範囲のどちらにも偏ることなく正負両範囲に比較的広い確率密度分布を示す。正側と負側にほぼ均等(負側40%、正側60%)に揺らいでいる。すなわち、ノズル11から離れた反対側の短辺側浴槽壁4bの近くであっても浴槽水に流れが形成されていることおよびその流れ方向の変化が生じており、局所的な噴流ではなく浴槽内全体にわたるゆるやかな流れが形成されていることがわかる。また、流速の確率密度のピークが正の範囲と負の範囲の両範囲に存在するため、図1に示すように一方の短辺側浴槽壁4bに背をもたれかけ、他方の短辺側浴槽壁4aに足を向けた姿勢で入浴した入浴者の前後方向に行ったり来たりする流れを顕著に感じることができる。
【0059】
また、本実施形態では、ノズル11は気泡無しの噴流を吐水するため、噴出音を静かにでき、また大気中からノズル内に気泡が吸入されるときの音もしない。したがって、より静かな環境で前述したやわらかな水流変化を鋭敏に感じてリラックス効果を高めることができる。
【0060】
ただし、数十〜数百μmの微細気泡の場合は、音も静かであり、さわさわ感やゆらぎ感を損ねることもないため、そのような微細気泡は混入させてもよい。また、数十〜数百μmの微細気泡を混入させると、気泡により白濁した噴流が実現されるため視覚的に楽しめ、さわさわ感やゆらぎ感も感じることができる。
【0061】
ここで、図12は、本実施形態に係る2つのノズル11の代わりに、第1の比較例として、直線的な噴流を吐出する2つのノズルから浴槽水中に40リットル/分で噴流を吐出させたときの、図2のD位置における流速の時間変化を示し、図13はその確率密度分布を示す。
【0062】
図12、13のグラフに示すように、正の側に偏った流速(正側に97%の流速が分布)となり、すなわち、ノズルから、このノズルが設けられた浴槽壁4aとは反対側の短辺側浴槽壁4bに向かう一方向の流れしか感じることができず、本実施形態のような流れ方向の変化によるさわさわ感やゆらぎ感をもたらす水流を形成することができない。
【0063】
また、図14は、本実施形態に係る2つのノズル11の代わりに、第2の比較例として、図16に示すノズル2つから浴槽水中に40リットル/分で噴流を吐出させたときの、図2のD位置における流速の時間変化を示し、図15はその確率密度分布を示す。
【0064】
この第2の比較例に係るノズル60の模式断面図を図16(a)に、ノズル60の噴出口65a側から見た図を図16(b)に示す。また、図16(a)の断面は、図16(b)におけるB−B断面である。
【0065】
このノズル60は、旋回噴流を形成するために機械的に可動する部分を有する。その機械的に可動する部分として円柱状の回転体62が筒体61の内部に収容されている。筒体61の下流側端部は開口され、その開口端には直径方向に延在する軸受保持部材64が設けられている。軸受保持部材64の中心には軸受68が設けられ、この軸受68に回転軸63の一端が支持されている。回転軸63の他端は、筒体61の上流端の中心に設けられた軸受67に支持されている。回転軸63は、筒体61及び回転体62の軸方向に平行に延在してそれらの軸中心位置に設けられ、回転体62は筒体61の内部で回転軸63のまわりに回転自在となっている。
【0066】
回転体62には、上流側端面から下流側端面にかけて貫通した噴流孔65が形成されている。噴出孔65は回転軸63から偏心した位置に設けられ、且つ、図16(b)に示すように噴出孔65の入口(導水口)65bの中心と出口(噴出口)65aの中心とが回転体62の回転面の周方向にずれるように、噴出孔65の軸方向が回転軸63に対して傾いている。また、噴流孔65の軸方向は、上流側から下流側に向かうにつれ、回転軸63に対して径外方に離れるようにも傾斜している。
【0067】
筒体61における回転体62よりも上流側の内部に、ポンプからの加圧浴槽水が導入されると、その浴槽水が噴出孔65を通過して浴槽内に噴出する。ここで、噴出孔65の軸方向の両端の開口(入口65bと噴出口65a)が回転体62の回転面の周方向にずれるように、噴出孔65の軸方向が回転軸63に対して傾いているため、噴出孔65内を流れる水流は回転体62の回転面の接線方向成分を持ち、その水流の反力により回転体62が回転される。この回転体62の回転により、噴出口65aも回転軸63を中心に周方向に移動し、これにより噴出口65aから旋回した噴流が噴出される。
【0068】
ただし、このように回転体62の回転を利用して吐出される旋回噴流は、その旋回周期、旋回径、旋回方向がほぼ一定な規則的な吐水軌跡を描き、このような規則的な旋回噴流を吐出する2つのノズル60を用いた第2の比較例では、図14、15のグラフに示すように、正の側に偏った流速となり、すなわち、ノズルから、このノズルが設けられた浴槽壁4aとは反対側の短辺側浴槽壁4bに向かう一方向の流れしか感じることができず、本実施形態のような流れ方向の変化によるさわさわ感やゆらぎ感をもたらす水流を形成することができない。
【0069】
なお、本実施形態に係るノズル11は、ノズル11内に導入された流体自身が、前述したようにチャンバー25内での還流作用によって、噴出口26から噴出される噴流の旋回を励起する構成となっているため、第2の比較例のような機械的可動部分(回転部分)が不要であり、ノズル構造が単純化され、安価に作製することができ、またメンテナンスも容易になる。さらには、回転部分における摩耗やゴミ詰まりなどによる旋回性能低下の心配もない。
【0070】
また、本実施形態では、チャンバー25を形成した筒体20は、中心流路の外側に別の流路が細い隙間として形成されているような二重構造ではなく、一重構造である。すなわち、ひとつの筒体20によって周囲が囲まれる単一空間(流路)内で、噴出口26へと向かう主流、および主流とは逆方向に流れる還流が形成され、浴槽水中に旋回噴流として噴出される。したがって、構造が単純化され、安価に作製することができ、またメンテナンスも容易になる。さらには、ゴミ詰まりによる旋回性能低下の心配もない。
【0071】
また、本実施形態では、旋回流を励起するためのチャンバー25への流入口として機能する流路断面収縮部23は、チャンバー25を囲む筒体20の周壁部には形成されてはおらず、チャンバー25の軸方向の上流側端部に開口している。したがって、流路断面収縮部23からチャンバー25内に流入した主流は、流路断面急拡大部24で流路壁面から剥離した後、チャンバー25の内周面に再付着して噴出口26より直進性を保ったまま噴出し、さらに、その主流の流路壁面(チャンバー25の内周面)への再付着位置がチャンバー25内に形成される循環流(戻り流)により変化することで噴出方向が変化するため、不規則な旋回噴流を得ることができる。
【0072】
チャンバー25内静圧は、浴槽4内に貯留された浴槽水の静圧より低く、チャンバー25内部では下流側に向かって静圧が増加する逆圧力勾配が形成されるため、遮蔽体27を設けなくても主流の一部をチャンバー25上流側に戻す還流を形成することは可能である。しかし、本実施形態のように遮蔽体27を設けた方が、逆静圧勾配(流れ方向に対して静圧が上昇)だけを利用した還流形成に比べ、噴流噴出方向の切り替わりを生じさせるための循環流の形成が安定するため、確実に噴流を旋回させることができる。
【0073】
前述したように主流がチャンバー25の内周面における周の一部に偏ることから筒体軸方向に対して偏向した噴流の実現は可能であるが、本実施形態のように噴出口26の上流側の手前に傾斜面28を設けた場合には、その傾斜面28に主流を沿わせることで、主流の偏向を促進することができ、より広範囲にわたるやわらかな旋回噴流を形成しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態に係る噴流浴装置の概略構成を示す模式図。
【図2】同噴流浴装置における浴槽の平面図および浴槽内のA〜Dの各位置における流速の時間変化を示すグラフ。
【図3】は本発明の実施形態に係る噴流浴装置におけるノズルの模式断面図。
【図4】同本実施形態に係るノズルにて旋回噴流が形成される様子を説明するための模式図。
【図5】本実施形態に係るノズルからの噴出噴流を、噴出口から70mmの位置に設けた面状に広がる観測体に衝突させ、その観測体に対する噴流衝突部分の中心位置の時間変化に伴う衝突面内分布(移動軌跡)図。
【図6】図5におけるx方向座標及びy方向座標が共に0の観測体上における原点からの噴流衝突部分の中心位置(サンプリング点)の半径(噴流の旋回半径)の時間変化を示すグラフ。
【図7】上記観測体に対する噴流衝突部分の中心位置(図5におけるサンプリング点)の位相差(rad)の時間変化を示すグラフ。
【図8】図7のグラフにおける縦軸である位相差を説明するための模式図。
【図9】上記観測体に対する噴流衝突部分の中心位置(図5におけるサンプリング点)の角度(rad)の変化量(時間変化)を示すグラフ。
【図10】図9のグラフにおける縦軸である角度を説明するための模式図。
【図11】図2のD位置における流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図12】第1の比較例のノズルを用いた場合における、図2のD位置における流速の時間変化を示すグラフ。
【図13】第1の比較例のノズルを用いた場合における、図2のD位置における流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図14】第2の比較例のノズルを用いた場合における、図2のD位置における流速の時間変化を示すグラフ。
【図15】第2の比較例のノズルを用いた場合における、図2のD位置における流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図16】第2の比較例のノズルを示す模式図。
【符号の説明】
【0075】
4…浴槽、5…吸入口、7…加圧装置(ポンプ)、11…ノズル、22…流水導入部、23…流路断面収縮部、24…流路断面急拡大部、25…チャンバー、26…噴出口、27…遮蔽体
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴流浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、相対向する一対の短辺側浴槽壁のそれぞれにノズルを設け、各ノズルから対向壁方向へ直線的に水流を生じさせる浴槽がある(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平7−178142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、噴流浴装置としては、直線的な噴流を人体に当ててその刺激によるマッサージを実現するものが主であり、特に刺激をより高めるには気泡入り噴流を噴出させることが有効であることもあって噴流噴出音が騒々しく、且つ噴流刺激を人体に受けながらの入浴ということで、長時間リラックスして噴流浴を楽しむことは難しかった。
【0004】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、飽きや馴化がなくリラックス効果を高めた噴流浴を実現する噴流浴装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、浴槽と、前記浴槽の短辺側浴槽壁に設けられた複数のノズルと、前記浴槽の内部に貯留された浴槽水を吸い込み加圧して前記ノズルに導入する加圧装置とを備え、前記ノズルは、気泡を含まず、不規則に旋回した噴流を浴槽水中に噴出し、前記浴槽水に、各々の前記ノズルから吐水された吐水流が合成された不規則な流れが形成されることを特徴とする噴流浴装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、飽きや馴化がなくリラックス効果を高めた噴流浴を実現する噴流浴装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0008】
図1は、本発明の実施形態に係る噴流浴装置の概略構成を示す模式図である。また、図2に同噴流浴装置における浴槽4の平面図を示す。
【0009】
本実施形態に係る噴流浴装置は、浴槽4と、加圧装置であるポンプ7と、複数のノズル11とを備える。
【0010】
浴槽4は、略平行に相対向する一対の長辺側浴槽壁と、略平行に相対向する一対の短辺側浴槽壁4a、4bとを有し、平面視が略矩形状または長円形状に形成されている。
【0011】
一対の長辺側浴槽壁のうちの一方には吸入口5が形成されている。吸入口5と、ポンプ7の吸込口との間には吸込管6が接続され、ポンプ7が駆動されると、浴槽4の内部に貯留された浴槽水(湯も含む)は吸入口5から吸込管6へと吸い込まれる。
【0012】
一般に、入浴者は、向かい合う一対の短辺側浴槽壁4a、4bのうちの一方の短辺側浴槽壁(図1に示す例では短辺側浴槽壁4b)に背をもたれかけて、他方の短辺側浴槽壁(図1に示す例では短辺側浴槽壁4a)に足を向けた姿勢で入浴するため、吸入口5を短辺側浴槽壁に形成した場合には、入浴者の背中や足裏で吸入口5がふさがれポンプ7に過剰の負荷がかかることが懸念される。したがって、吸入口5は、入浴者の身体の一部等によってふさがれにくい長辺側浴槽壁に形成するのが望ましい。
【0013】
ポンプ7の吐出口と各ノズル11との間は吐出管8で接続され、ポンプ7は、吸入口5から吸込管6内に浴槽水を吸い込むと共に、その吸い込んだ浴槽水を加圧して吐出管8に吐出する。このポンプ7から吐出された加圧浴槽水は、ノズル11の流水導入口に流入する。使用していないときに、ポンプ7内部の残留水を抜くために、ポンプ7は吸入口5よりも上方に設け、吸入管6が吸入口5に向かって傾斜していることが望ましい。
【0014】
浴槽4の内部は概略4つの壁面で囲まれ、そのうちの一つの壁面を構成する短辺側浴槽壁4aに2つのノズル11を取り付けている。2つのノズル11は、図2に示すように、短辺側浴槽壁4aにおける水平方向の中心位置(この中心位置を通り短辺側浴槽壁4a、4bをその水平方向に2等分する線を図2において1点鎖線Oで示す)を挟んでその水平方向に互いに離間して並んで設けられている。上記中心線Oに対する各ノズル11の離間距離は略同じであり、また、2つのノズル11の設置高さは略同じ高さである。
【0015】
ノズル11が取り付けられた短辺側浴槽壁4aの上方には浴槽側水栓が設けられる。したがって、通常、入浴者は自然と図1に示すように、ノズル11が設けられた側の短辺側浴槽壁4aに足を向け、反対側の短辺側浴槽壁4bに背をもたれかけた姿勢で入浴する。
【0016】
各ノズル11は同じ構造を有し、そのノズル11の具体的構造について図3を参照して説明する。図3は、ノズル11の模式断面図である。
【0017】
ノズル11は、大きく分けて、略円筒形状でほぼまっすぐに延在する筒体20と、筒体20の軸方向の上流側端部に設けられた湾曲部30とを有する。筒体20と湾曲部30とは一体成形構造であってもよいし、別体のものを結合させてもよい。また、筒体20は、略円筒形状に限らず、略楕円筒形状であってもよい。
【0018】
湾曲部30の内部には流水導入部22が形成され、その流水導入部22における上流側端部の最上流端には、前述した吐出管8と浴槽4の外部で接続される流水導入口21が開口形成されている。筒体20の軸方向の下流側端部には噴出口26が開口形成されている。
【0019】
ノズル11は、噴出口26を浴槽4の内部に臨ませて短辺側浴槽壁4aに保持されている。ノズル11は浴槽4のあふれ縁より下で、短辺浴槽壁4aに保持されている。ここで、「あふれ縁」とは、浴槽4内に浴槽水をためていったとき、最初に浴槽4内から溢れる部分の浴槽4の縁(またはリム)を意味する。このような構成のため、ノズル11からの噴流を浴槽水中に噴出させることができる。
【0020】
流水導入部22の下流側端部は、流水導入部22の中で最も流路断面が縮小された流路断面収縮部23として機能する。流路断面収縮部23の最下流端は、筒体20の軸方向の上流側端部に開口している。
【0021】
流路断面収縮部23の流路断面の中心は、筒体20の軸中心C1に一致している。流水導入部22の流路断面の中心を通る流路中心線C2は曲率を有する曲線を描き、すなわち、流水導入部22は湾曲している。その流路中心線C2の下流端位置は、チャンバー25の軸中心C1に一致している。
【0022】
流路断面収縮部23は、筒体20の内部に形成されたチャンバー25に連通し、且つチャンバー25に対して流路断面が縮小されている。また、流路断面収縮部23は、その流路断面の中心を、チャンバー25の軸中心C1に一致させて、チャンバー25の軸方向に対して略平行に延在し、径が一定な直管状に形成されている。
【0023】
流路断面収縮部23と噴出口26との間の筒体20の内部には、筒体20の軸方向に延在するチャンバー25が設けられている。
【0024】
チャンバー25の軸方向の上流側端部には、流路断面収縮部23に対して流路断面が急拡大(例えば径が3倍以上急拡大)された流路断面急拡大部24が設けられている。流路断面急拡大部24は、流路断面収縮部23より下流側で流路断面収縮部23に連通している。
【0025】
チャンバー25の軸方向の下流側端部には噴出口26が開口している。チャンバー25の内壁面は、流路断面急拡大部24から噴出口26の近傍に至るまで、チャンバー25の軸中心C1に対して略平行に延在し、また、チャンバー25は流路断面急拡大部24の内径寸法のまま噴出口26近傍まで続いている。チャンバー25における軸方向の上流側端部が流路断面急拡大部24として機能し、チャンバー25における軸方向の下流側端部が噴出口26として機能する。
【0026】
流路断面収縮部23から流路断面急拡大部24にかけての流路壁面は略垂直に変化している。すなわち、流路断面収縮部23の流路壁面は、チャンバー25の軸方向に対して略平行であるのに対して、流路断面急拡大部24として機能するチャンバー25の軸方向の上流側端部の壁面は、流路断面収縮部23の流路壁面に対して略垂直に続いて径外方に広がって形成されている。この流路壁面の急変化により、後述するように流路断面急拡大部24にて、壁面からの流れの剥離が生じる。
【0027】
なお、流路断面急拡大部24の流路壁面は流路断面収縮部23の流路壁面に対して略垂直に広がっていることに限らず、流路断面急拡大部24にて、流れの剥離が生じる程度に、下流側に向けて流路断面が拡径する漏斗(またはラッパ)状に形成されていてもよい。ただし、流路断面収縮部23の流路壁面に対して略垂直に続くように流路断面急拡大部24の流路壁面が形成されている方が、流路断面急拡大部24における流れの剥離を促進させやすい。
【0028】
また、噴出口26近傍のチャンバー25内に、噴出口26へと通じるチャンバー25内流路の一部を遮る遮蔽体27を設けている。遮蔽体27は例えば円盤状に形成され、その中心をチャンバー25の軸中心C1に一致させて、チャンバー25の内部に設けられている。
【0029】
遮蔽体27は、例えば、遮蔽体27とチャンバー25の内壁部との間に放射状に設けられた図示しない複数本の保持部材を介してチャンバー25の内壁部に対して保持されている。それら保持部材は、円盤状の遮蔽体27の外周面のまわりに周方向に沿って等間隔で設けられ、よって、遮蔽体27によってチャンバー25内流路のすべてが遮蔽されず、遮蔽体27とチャンバー25の内壁部との間には、チャンバー25から噴出口26への流水の流れを許容する流路が確保されている。
【0030】
また、チャンバー25の軸方向の下流側端部における噴出口26へと続く内壁面に、チャンバー25の軸中心C1に向けて傾斜した環状の傾斜面28を形成している。傾斜面28は、上流側から下流側に向かうにしたがって徐々に軸中心C1に近づくように傾斜している。
【0031】
次に、本実施形態に係る噴流浴装置の作用について説明する。
【0032】
図1において、浴槽4近傍に設けられた図示しないコントローラのスイッチを入浴者が操作すると、ポンプ7が起動し、浴槽4内に貯留された浴槽水が吸入口5から吸込管6内へと吸入される。この吸入された浴槽水は、ポンプ7にて加圧されて、吐出管8を介して、ノズル11の流水導入口21に導入される。ノズル11内に導入された加圧浴槽水は、以下に説明するように、気泡を含まず、不規則に旋回した噴流を浴槽4内に貯留された浴槽水中に噴出する。
【0033】
図4(a)〜(d)は、ノズル11にて旋回噴流が形成される作用を説明するための模式図である。
【0034】
流水導入口21から導入された加圧浴槽水は、流水導入部22、流路断面収縮部23および流路断面急拡大部24を順に経てチャンバー25内に噴流となって流入する。加圧浴槽水が、流路断面収縮部23からチャンバー25内に流入する際、流路断面の急拡大により、筒体11の内壁面に沿って流れることができなくなり、すなわち流路内壁面に対して流れの剥離が生じる。
【0035】
一般的に、噴流は、外部流体との運動量交換により外部流体を加速し、噴流内部に巻き込む。このとき、噴流近傍に壁面が存在すると、外部流体を内部に引き込むように作用する引きつけ力の反作用により、噴流自身が壁面に向かって曲げられ、再び流れが壁面に沿うようになる。つまり、チャンバー25の内壁面の周の一部に流れが再付着する。
【0036】
チャンバー25の内壁面に付着した主流は、そのままチャンバー25内壁面に沿い、遮蔽体27の外周面とチャンバー25内壁面との間を噴出口26に向かって流れ、噴出口26の手前(上流側)で筒体20の軸中心に向かうように傾斜して形成された傾斜面28に沿って軸中心Cに対して傾斜した噴流として噴出口26から浴槽4内に噴出する。
【0037】
以上のようにして、ノズル11内に、主流(図4(a)において太線矢印aで表す)が形成される。
【0038】
流路断面収縮部23に比べて噴出口26の流路断面が大きく、流れは下流に向かって減速、すなわち、チャンバー25内部では下流に向かって静圧が増加する逆圧力勾配が形成されること、さらにチャンバー25内に流路の一部を遮るように遮蔽体27が設けられていることによって、前述した主流の一部は噴出口26から噴出されず、図4(b)において矢印bで表すように、チャンバー25の上流側に戻される。
【0039】
その上流側に戻された流れが、図4(c)に表すように、流路断面急拡大部24付近にて主流が剥離したよどみ領域に流れ込むことで、図4(d)に表すように、流路断面急拡大部24付近で中心軸Cまわりに旋回流が形成され、これにより、主流の内壁面に対する再付着位置が周方向で不規則に変化し、噴出口26からは中心軸Cまわりに不規則に旋回した噴流が噴出される。
【0040】
ノズル11から噴出される噴流は、噴流浴装置において一般的に広く知られる気泡入りの細く強い直線的な噴流とは異なり、太くやわらかい旋回噴流である。しかも、この噴流は不規則に旋回している。ここでの、不規則に旋回とは、旋回周期(旋回周波数)や旋回の径(広がり)、また場合によっては旋回方向が不規則に変化することを意味する。
【0041】
ここで、本発明者等は、ノズル11からの噴出噴流を、噴出口26から70mmの位置に設けた面状に広がる観測体に衝突させ、その観測体に対する噴流衝突部分を可視化した状態で噴出口26に対して正対する方向から観測し、噴流衝突部分の中心位置の時間変化に伴う衝突面内分布(移動軌跡)を求めた。
【0042】
その結果を図5に示す。図5において、小さな○印が観測体に対する噴流衝突部分の中心位置を示し、観測体面上を移動している中心位置のサンプリング時間は0.01秒である。また、測定時におけるノズル11からの噴出流量は、およそ40(リットル/分)となるように設定した。また、ノズル11について、図3に表す各寸法d、D、Dout、Lは、それぞれ以下のように設計した。流路断面収縮部23の内径d=8.3mm、流路断面急拡大部24及びチャンバー25の内径D=27.8mm、噴出口26の口径Dout=27.8mm、チャンバー25の長さL=76.6mm。
【0043】
また、図6は、図5におけるx方向座標及びy方向座標が共に0の観測体上における原点からのサンプリング点の半径(噴流の旋回半径)の時間変化を示す。
【0044】
図5、6の結果より、噴流衝突部分の中心が局所に集中せず時間経過に伴って不規則に位置が変化し、すなわち噴流の旋回半径(噴流の広がり)が不規則に変化していることがわかる。
【0045】
また、図7は、上記観測体に対する噴流衝突部分の中心位置(図5におけるサンプリング点)の位相差(rad)の時間変化を示す。
【0046】
図8に示すように、ある時刻t1における噴流衝突部分の中心位置(サンプリング点)は、サンプリング時間である0.01秒後(時刻t2)には、別の位置に移動している。このときの観測体上における原点Oと時刻t1におけるサンプリング点とを結ぶ直線と、原点Oと時刻t2におけるサンプリング点とを結ぶ直線とがなす角度を、図7における縦軸の位相差(rad)としている。
【0047】
この図7の結果より、上記位相差が不規則に時間変化しており、すなわちノズル11から噴出される噴流の旋回周期(旋回周波数)が不規則になっていることがわかる。
【0048】
また、図9は、上記観測体に対する噴流衝突部分の中心位置(図5におけるサンプリング点)の角度(rad)の変化量(時間変化)を示す。
【0049】
ここでの角度(rad)は、上記観測体上の原点Oを中心として図10に示すように第1象限、第2象限、第3象限、第4象限を規定した場合の、各サンプリング点の角度(rad)を示す。
【0050】
図9は、その角度(rad)を縦軸に、時間を横軸にとったグラフである。なお、噴流衝突部分の中心位置(サンプリング点)が第4象限から第1象限に移るときには、角度が2π(6.28・・・)近くの値から0近くの値になるので、そのときは図9のグラフ上急激に値が落ちている。
【0051】
この図9の結果より、上記角度が不規則に変化していることから、瞬間瞬間の噴出方向を不規則に変化させつつ噴流が旋回していることがわかる。
【0052】
前述したように、2つのノズル11のそれぞれから不規則な旋回噴流が浴槽水中に吐水されるが、浴槽水中にはそれぞれのノズル11からの吐水流が干渉して合成された流れが形成される。この合成流は、各ノズル11からの噴出噴流が不規則な旋回流であることから、一定方向の流れではなく、複数方向の流れを有する不規則な流れとなる。特に、ノズル11から足側の短辺側浴槽壁4bに向かう流れと、この流れとは反対側に戻ってくるような流れを入浴者が顕著に感じることができる不規則な流れが浴槽水中に形成される。この結果、入浴者は、柔らかな水流につつまれたような水流のさわさわ感やゆらぎ感を感じることができ、噴流を人体に対して局所的に受けるよりも、飽き(馴化)がなく、長時間リラックスした噴流浴を楽しめる。
【0053】
本発明者等は、前述した2つの各ノズル11から不規則な旋回流を40リットル/分で浴槽水中に吐水させた状態で、浴槽水中における複数箇所(図2に示すA〜Dの4箇所)の位置における水面から100mmの深さの地点の流速の時間変化を測定した。
【0054】
測定位置Aは、ノズル11を取り付けた短辺側浴槽壁4aの内壁面から、前述した中心線O上を他方の短辺側浴槽壁4bに向かって250mm離間した位置である。測定位置Bは、測定位置Aから中心線O上を他方の短辺側浴槽壁4bに向かってさらに250mm離間した位置である。測定位置Cは、測定位置Bから中心線O上を他方の短辺側浴槽壁4bに向かってさらに250mm離間した位置である。測定位置Dは、測定位置Cから中心線O上を他方の短辺側浴槽壁4bに向かってさらに250mm離間した位置であり、且つ他方の短辺側浴槽壁4bの内壁面から250mm離間した位置である。
【0055】
図2において、(a)〜(d)のグラフは、それぞれ位置A〜Dにおける流速の時間変化を表し、(a)〜(d)の各グラフにおいて縦軸は流速(m/秒)を、横軸は時間(秒)を示す。縦軸の流速において、正の値はノズル11から短辺側浴槽壁4bに向かう方向の流れの流速を示し、負の値は短辺側浴槽壁4bからノズル11が取り付けられた短辺側浴槽壁4aに向かう方向の流れの流速を示す。また、横軸における時間は、ノズル11から吐水が行われていない状態(0秒)から吐水が開始された以降の時間経過を示す。
【0056】
これら図2の(a)〜(d)のグラフより、A〜Dのどの位置においても、流速が正の範囲と負の範囲とを交互に繰り返しており、特に噴流が重なり合ってくるB〜Dの位置においては顕著にその様子がかわる。すなわち浴槽4内に長辺方向に沿った相反する方向の流れが交互に繰り返される流れ方向の変化が生じている。この流れ方向の変化が、局所的な噴流マッサージでは感じることができない水流のさわさわ感やゆらぎ感を入浴者に与え、入浴者はもみ疲れすることなく長時間リラックスして噴流浴を楽しめる。
【0057】
ここで、図11は、図2のD位置における流速の確率密度分布を示す。
【0058】
図11のグラフより、ピークは0以外にあり、また正の範囲と負の範囲のどちらにも偏ることなく正負両範囲に比較的広い確率密度分布を示す。正側と負側にほぼ均等(負側40%、正側60%)に揺らいでいる。すなわち、ノズル11から離れた反対側の短辺側浴槽壁4bの近くであっても浴槽水に流れが形成されていることおよびその流れ方向の変化が生じており、局所的な噴流ではなく浴槽内全体にわたるゆるやかな流れが形成されていることがわかる。また、流速の確率密度のピークが正の範囲と負の範囲の両範囲に存在するため、図1に示すように一方の短辺側浴槽壁4bに背をもたれかけ、他方の短辺側浴槽壁4aに足を向けた姿勢で入浴した入浴者の前後方向に行ったり来たりする流れを顕著に感じることができる。
【0059】
また、本実施形態では、ノズル11は気泡無しの噴流を吐水するため、噴出音を静かにでき、また大気中からノズル内に気泡が吸入されるときの音もしない。したがって、より静かな環境で前述したやわらかな水流変化を鋭敏に感じてリラックス効果を高めることができる。
【0060】
ただし、数十〜数百μmの微細気泡の場合は、音も静かであり、さわさわ感やゆらぎ感を損ねることもないため、そのような微細気泡は混入させてもよい。また、数十〜数百μmの微細気泡を混入させると、気泡により白濁した噴流が実現されるため視覚的に楽しめ、さわさわ感やゆらぎ感も感じることができる。
【0061】
ここで、図12は、本実施形態に係る2つのノズル11の代わりに、第1の比較例として、直線的な噴流を吐出する2つのノズルから浴槽水中に40リットル/分で噴流を吐出させたときの、図2のD位置における流速の時間変化を示し、図13はその確率密度分布を示す。
【0062】
図12、13のグラフに示すように、正の側に偏った流速(正側に97%の流速が分布)となり、すなわち、ノズルから、このノズルが設けられた浴槽壁4aとは反対側の短辺側浴槽壁4bに向かう一方向の流れしか感じることができず、本実施形態のような流れ方向の変化によるさわさわ感やゆらぎ感をもたらす水流を形成することができない。
【0063】
また、図14は、本実施形態に係る2つのノズル11の代わりに、第2の比較例として、図16に示すノズル2つから浴槽水中に40リットル/分で噴流を吐出させたときの、図2のD位置における流速の時間変化を示し、図15はその確率密度分布を示す。
【0064】
この第2の比較例に係るノズル60の模式断面図を図16(a)に、ノズル60の噴出口65a側から見た図を図16(b)に示す。また、図16(a)の断面は、図16(b)におけるB−B断面である。
【0065】
このノズル60は、旋回噴流を形成するために機械的に可動する部分を有する。その機械的に可動する部分として円柱状の回転体62が筒体61の内部に収容されている。筒体61の下流側端部は開口され、その開口端には直径方向に延在する軸受保持部材64が設けられている。軸受保持部材64の中心には軸受68が設けられ、この軸受68に回転軸63の一端が支持されている。回転軸63の他端は、筒体61の上流端の中心に設けられた軸受67に支持されている。回転軸63は、筒体61及び回転体62の軸方向に平行に延在してそれらの軸中心位置に設けられ、回転体62は筒体61の内部で回転軸63のまわりに回転自在となっている。
【0066】
回転体62には、上流側端面から下流側端面にかけて貫通した噴流孔65が形成されている。噴出孔65は回転軸63から偏心した位置に設けられ、且つ、図16(b)に示すように噴出孔65の入口(導水口)65bの中心と出口(噴出口)65aの中心とが回転体62の回転面の周方向にずれるように、噴出孔65の軸方向が回転軸63に対して傾いている。また、噴流孔65の軸方向は、上流側から下流側に向かうにつれ、回転軸63に対して径外方に離れるようにも傾斜している。
【0067】
筒体61における回転体62よりも上流側の内部に、ポンプからの加圧浴槽水が導入されると、その浴槽水が噴出孔65を通過して浴槽内に噴出する。ここで、噴出孔65の軸方向の両端の開口(入口65bと噴出口65a)が回転体62の回転面の周方向にずれるように、噴出孔65の軸方向が回転軸63に対して傾いているため、噴出孔65内を流れる水流は回転体62の回転面の接線方向成分を持ち、その水流の反力により回転体62が回転される。この回転体62の回転により、噴出口65aも回転軸63を中心に周方向に移動し、これにより噴出口65aから旋回した噴流が噴出される。
【0068】
ただし、このように回転体62の回転を利用して吐出される旋回噴流は、その旋回周期、旋回径、旋回方向がほぼ一定な規則的な吐水軌跡を描き、このような規則的な旋回噴流を吐出する2つのノズル60を用いた第2の比較例では、図14、15のグラフに示すように、正の側に偏った流速となり、すなわち、ノズルから、このノズルが設けられた浴槽壁4aとは反対側の短辺側浴槽壁4bに向かう一方向の流れしか感じることができず、本実施形態のような流れ方向の変化によるさわさわ感やゆらぎ感をもたらす水流を形成することができない。
【0069】
なお、本実施形態に係るノズル11は、ノズル11内に導入された流体自身が、前述したようにチャンバー25内での還流作用によって、噴出口26から噴出される噴流の旋回を励起する構成となっているため、第2の比較例のような機械的可動部分(回転部分)が不要であり、ノズル構造が単純化され、安価に作製することができ、またメンテナンスも容易になる。さらには、回転部分における摩耗やゴミ詰まりなどによる旋回性能低下の心配もない。
【0070】
また、本実施形態では、チャンバー25を形成した筒体20は、中心流路の外側に別の流路が細い隙間として形成されているような二重構造ではなく、一重構造である。すなわち、ひとつの筒体20によって周囲が囲まれる単一空間(流路)内で、噴出口26へと向かう主流、および主流とは逆方向に流れる還流が形成され、浴槽水中に旋回噴流として噴出される。したがって、構造が単純化され、安価に作製することができ、またメンテナンスも容易になる。さらには、ゴミ詰まりによる旋回性能低下の心配もない。
【0071】
また、本実施形態では、旋回流を励起するためのチャンバー25への流入口として機能する流路断面収縮部23は、チャンバー25を囲む筒体20の周壁部には形成されてはおらず、チャンバー25の軸方向の上流側端部に開口している。したがって、流路断面収縮部23からチャンバー25内に流入した主流は、流路断面急拡大部24で流路壁面から剥離した後、チャンバー25の内周面に再付着して噴出口26より直進性を保ったまま噴出し、さらに、その主流の流路壁面(チャンバー25の内周面)への再付着位置がチャンバー25内に形成される循環流(戻り流)により変化することで噴出方向が変化するため、不規則な旋回噴流を得ることができる。
【0072】
チャンバー25内静圧は、浴槽4内に貯留された浴槽水の静圧より低く、チャンバー25内部では下流側に向かって静圧が増加する逆圧力勾配が形成されるため、遮蔽体27を設けなくても主流の一部をチャンバー25上流側に戻す還流を形成することは可能である。しかし、本実施形態のように遮蔽体27を設けた方が、逆静圧勾配(流れ方向に対して静圧が上昇)だけを利用した還流形成に比べ、噴流噴出方向の切り替わりを生じさせるための循環流の形成が安定するため、確実に噴流を旋回させることができる。
【0073】
前述したように主流がチャンバー25の内周面における周の一部に偏ることから筒体軸方向に対して偏向した噴流の実現は可能であるが、本実施形態のように噴出口26の上流側の手前に傾斜面28を設けた場合には、その傾斜面28に主流を沿わせることで、主流の偏向を促進することができ、より広範囲にわたるやわらかな旋回噴流を形成しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態に係る噴流浴装置の概略構成を示す模式図。
【図2】同噴流浴装置における浴槽の平面図および浴槽内のA〜Dの各位置における流速の時間変化を示すグラフ。
【図3】は本発明の実施形態に係る噴流浴装置におけるノズルの模式断面図。
【図4】同本実施形態に係るノズルにて旋回噴流が形成される様子を説明するための模式図。
【図5】本実施形態に係るノズルからの噴出噴流を、噴出口から70mmの位置に設けた面状に広がる観測体に衝突させ、その観測体に対する噴流衝突部分の中心位置の時間変化に伴う衝突面内分布(移動軌跡)図。
【図6】図5におけるx方向座標及びy方向座標が共に0の観測体上における原点からの噴流衝突部分の中心位置(サンプリング点)の半径(噴流の旋回半径)の時間変化を示すグラフ。
【図7】上記観測体に対する噴流衝突部分の中心位置(図5におけるサンプリング点)の位相差(rad)の時間変化を示すグラフ。
【図8】図7のグラフにおける縦軸である位相差を説明するための模式図。
【図9】上記観測体に対する噴流衝突部分の中心位置(図5におけるサンプリング点)の角度(rad)の変化量(時間変化)を示すグラフ。
【図10】図9のグラフにおける縦軸である角度を説明するための模式図。
【図11】図2のD位置における流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図12】第1の比較例のノズルを用いた場合における、図2のD位置における流速の時間変化を示すグラフ。
【図13】第1の比較例のノズルを用いた場合における、図2のD位置における流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図14】第2の比較例のノズルを用いた場合における、図2のD位置における流速の時間変化を示すグラフ。
【図15】第2の比較例のノズルを用いた場合における、図2のD位置における流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図16】第2の比較例のノズルを示す模式図。
【符号の説明】
【0075】
4…浴槽、5…吸入口、7…加圧装置(ポンプ)、11…ノズル、22…流水導入部、23…流路断面収縮部、24…流路断面急拡大部、25…チャンバー、26…噴出口、27…遮蔽体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、前記浴槽の短辺側浴槽壁に設けられた複数のノズルと、前記浴槽の内部に貯留された浴槽水を吸い込み加圧して前記ノズルに導入する加圧装置とを備え、
前記ノズルは、気泡を含まず、不規則に旋回した噴流を浴槽水中に噴出し、前記浴槽水に、各々の前記ノズルから吐水された吐水流が合成された不規則な流れが形成されることを特徴とする噴流浴装置。
【請求項2】
前記複数のノズルは、前記短辺側浴槽壁における水平方向の中心位置を挟んでその水平方向に並んで設けられた少なくとも2つのノズルを含むことを特徴とする請求項1記載の噴流浴装置。
【請求項3】
前記ノズルは、流水導入部と、一重構造の筒体と、前記筒体の軸方向に延在して前記筒体の内部に形成されたチャンバーと、前記チャンバー内に設けられた遮蔽体とを有し、
前記流水導入部は、前記加圧装置から送られる加圧浴槽水が導入される上流側端部と、前記上流側端部に対して流路が細くされると共に前記チャンバーに連通する下流側端部とを有し、
前記チャンバーは、前記軸方向の上流側端部に設けられ前記流水導入部の前記下流側端部に対して流路断面が急拡大された流路断面急拡大部と、前記軸方向の下流側端部に開口され前記浴槽の内部に臨む噴出口とを有し、
前記遮蔽体は、前記噴出口へと通じるチャンバー内の流路の一部を遮り、
前記チャンバーの下流側における前記噴出口に続く内壁面は前記チャンバーの軸中心に向けて傾斜していることを特徴とする請求項1または2に記載の噴流浴装置。
【請求項1】
浴槽と、前記浴槽の短辺側浴槽壁に設けられた複数のノズルと、前記浴槽の内部に貯留された浴槽水を吸い込み加圧して前記ノズルに導入する加圧装置とを備え、
前記ノズルは、気泡を含まず、不規則に旋回した噴流を浴槽水中に噴出し、前記浴槽水に、各々の前記ノズルから吐水された吐水流が合成された不規則な流れが形成されることを特徴とする噴流浴装置。
【請求項2】
前記複数のノズルは、前記短辺側浴槽壁における水平方向の中心位置を挟んでその水平方向に並んで設けられた少なくとも2つのノズルを含むことを特徴とする請求項1記載の噴流浴装置。
【請求項3】
前記ノズルは、流水導入部と、一重構造の筒体と、前記筒体の軸方向に延在して前記筒体の内部に形成されたチャンバーと、前記チャンバー内に設けられた遮蔽体とを有し、
前記流水導入部は、前記加圧装置から送られる加圧浴槽水が導入される上流側端部と、前記上流側端部に対して流路が細くされると共に前記チャンバーに連通する下流側端部とを有し、
前記チャンバーは、前記軸方向の上流側端部に設けられ前記流水導入部の前記下流側端部に対して流路断面が急拡大された流路断面急拡大部と、前記軸方向の下流側端部に開口され前記浴槽の内部に臨む噴出口とを有し、
前記遮蔽体は、前記噴出口へと通じるチャンバー内の流路の一部を遮り、
前記チャンバーの下流側における前記噴出口に続く内壁面は前記チャンバーの軸中心に向けて傾斜していることを特徴とする請求項1または2に記載の噴流浴装置。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図12】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図12】
【公開番号】特開2009−153906(P2009−153906A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338140(P2007−338140)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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