説明

噴流発生装置及び電子機器

【課題】
脈流として気体を吐出させて合成噴流を発生する噴流発生装置において、気体の吐出量を減らすことなく、薄型化を実現することができる噴流発生装置及びこれを搭載した電子機器を提供すること。
【解決手段】
噴流発生装置10は、円筒状の筐体5内には、そのほぼ中央に配置されたモータ4により動くブレード3a及び3bが設けられている。モータ4によりブレード3a及び3bが揺動すると、仕切り板6により筐体5内に形成された2つのチャンバ内の圧力が増減し、それに伴い、開口11〜14を介して、空気が脈流として吐出される。このように、筐体5の厚み方向(Z方向)とは異なる水平方向にブレード3a及び3bが移動する構成となっている。したがって、筐体5の厚さに比して、移動板の移動量を大きくとれ、従来の振動板の振幅に比べても、ブレード3a及び3bの振幅が大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成噴流を発生して発熱体を冷却する噴流発生装置及びこの噴流発生装置を搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、PC(Personal Computer)の高性能化に伴うIC(Integrated Circuit)等の発熱体からの発熱量の増大が問題となっており、様々な放熱の技術が提案され、あるいは製品化されている。その放熱方法として、例えばICにアルミなどの金属でなる放熱用のフィンを接触させて、ICからの熱をフィンに伝導させて放熱する方法がある。また、ファンを用いることにより、例えばPCの筐体内の温まった空気を強制的に排除し、周囲の低温の空気を発熱体周辺に導入することで放熱する方法もある。あるいは放熱フィンとファンとを併用することにより、放熱フィンで発熱体と空気の接触面積を大きくしつつ、ファンにより放熱フィンの周囲の暖まった空気を強制的に排除する方法もある。
【0003】
しかしながら、このようなファンによる空気の強制対流では、放熱フィンの下流側でフィン表面の温度境界層が生起され、放熱フィンからの熱を効率的に奪えないという問題がある。
【0004】
そこで、上記温度境界層を破壊し、放熱フィンからの熱を効率よく空気に逃がす方法として、合成噴流を用いたものがある(例えば、特許文献1参照。)。合成噴流とは、例えば筐体から吐出された気体の噴流が、その噴流と筐体外の周囲の気体との気圧差により、該周囲の気体を巻き込んで合成された噴流である。
【特許文献1】特開2005−256834号公報(図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の装置では、効率のよい放熱が可能であるが、振動板を振動させるためのアクチュエータがスピーカに用いられるようなボイスコイルモータ(VCM)である。このため、噴流発生装置の薄型化には不向きである。電子機器が薄型化される場合、その電子機器に噴流発生装置も薄く設計されることが要求される。
【0006】
一方、噴流発生装置の筐体の厚さを薄くしすぎると、その分、振動板の振幅が減り、気体の吐出量が減ってしまう。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、気体の吐出量を減らすことなく、薄型化を実現することができる噴流発生装置及びこれを搭載した電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る噴流発生装置は、開口を有し、気体を内部に含み、第1の方向に厚さを有する筐体と、前記筐体内に配置され、前記気体に圧力変化を与えるように前記第1の方向とは異なる第2の方向に周期的に往復移動することで、前記開口を介して前記気体を脈流として吐出させる移動板と、前記移動板を駆動する駆動機構とを具備する。
【0009】
本発明では、筐体の厚み方向とは異なる方向に移動板が移動する構成となっているので、筐体の厚さに比して、移動板の移動量を大きくとれる。すなわち、気体の吐出量を減らすことなく、噴流発生装置の薄型化を実現することができる。
【0010】
「第2の方向」とは、後述するように、直線方向あるいは回転周方向でもよい。直線方向の場合、移動板は、第1の方向にほぼ垂直な方向、あるいは斜め方向に移動する。
【0011】
「方向」とは、ある一方向とその逆方向も含むことは言うまでもない。直線方向の場合、ある直線上で正の方向及び負の方向が含まれる。回転周方向の場合も同様に、回転角度について正負両方の方向(「+θ」及び「−θ」)が含まれる。
【0012】
「気体」とは、例えば空気が挙げられるが、これに限らず、窒素、ヘリウムガス、あるいはアルゴンガス、その他の気体であってもよい。
【0013】
本発明において、前記駆動機構は、ほぼ前記第1の方向に沿った軸を中心に前記移動板を揺動させることが可能なモータを有する。このようなモータであれば、簡単な構造で薄型の噴流発生装置が実現される。「モータ」は、例えば電磁式のモータが用いられるが、これに限らず静電式や圧電式のモータであってもよい。電磁式の場合、例えば一般的な回転モータでもよいし、扁平モータ、あるいは後述するようにハードディスクドライブで用いられるようなボイスコイルモータであってもよい。
【0014】
本発明において、前記移動板は、前記軸を中心にほぼ対称形状でなり、前記筐体は、前記軸を含む平面に沿うように設けられ、該筐体内を仕切る仕切り板と、前記仕切り板により仕切られて形成される複数のチャンバとを有し、前記開口は、前記各チャンバに連通するように複数設けられている。すなわち、本発明のモータは、移動板が回転羽根のような形態となる。このような構成によれば、装置の重心移動がほとんどないため、筐体の厚み方向に振動板を振動させる従来の方式に比べ、噴流発生装置全体の振動も抑えられる。各チャンバの容積はほぼ等しいことが望ましいが、もちろん異なる容積であってもよい。
【0015】
本発明において、前記各チャンバのうち2つは、第1及び第2のチャンバであり、前記開口は複数設けられ、前記各開口のうち2つは、前記移動板が移動することで、前記気体を吐出するように前記各チャンバのうち第1及び第2のチャンバにそれぞれ連通する第1及び第2の開口である。「前記各チャンバのうち2つ」とは、チャンバが全部で2つしかない場合も含む意味である。同様に、「前記各開口のうち2つ」とは、開口が全部で2つしかない場合を含む意味である。
【0016】
本発明において、前記筐体は、前記各チャンバと前記各開口とをそれぞれ接続する複数の連通路を有する。例えば各開口がほぼ同じ方向に向かって開口していても、それら開口に連通する連通路があれば、各チャンバからほぼ同じ方向に気体を吐出することができる。
【0017】
本発明において、前記モータは、前記第1の方向に磁気回路を形成するための磁気回路形成部材と、前記磁気回路内で前記第2の方向に動くコイルを有し、前記コイル及び前記移動板が取り付けられた可動部材とを有する。つまり、本発明でいうモータは、上述したように、ハードディスクドライブで用いられるようなボイスコイルモータである。
【0018】
本発明において、前記駆動機構は、前記移動板を直線的に移動させるように駆動する。つまり、移動板がいわばピストンのように動く。
【0019】
本発明において、前記筐体は、前記第2の方向に配列され、前記筐体内を仕切る複数の仕切り板と、前記各仕切り板の間に形成される複数のチャンバとを有し、前記移動板は、前記チャンバごとに複数設けられ、前記駆動機構は、前記各仕切り板の間で前記移動板を移動させるように駆動する。例えば、複数のチャンバごとに開口があれば、筐体の第2の方向で均一に、かつ、効率良く気体が吐出される。
【0020】
例えば、第2の方向で互いに逆向きに動くような2つの移動板があれば、1つの移動板が動くことによる振動がキャンセルされて重心移動はなくなり、噴流発生装置の振動を抑えることができる。
【0021】
本発明において、噴流発生装置は、前記駆動機構により移動可能に構成された、前記各移動板を一体的に連結する連結部材をさらに具備する。これにより、例えば1つの駆動源で効率的に複数の移動板を移動させることができる。
【0022】
本発明において、前記駆動機構は、ほぼ前記第1の方向に沿った軸を中心に回転する回転板と、前記回転板及び前記移動板に接続され、前記回転板の回転運動を前記移動板の直線運動に変換するリンクアームとを有する。このような構成により移動板の直線的な動きが可能となる。
【0023】
例えばリンクアームが2本互いに逆向きに動き、その2本のリンクアームにそれぞれ移動板が接続されていれば、1つの移動板が動くことによる振動がキャンセルされて重心移動はなくなり、噴流発生装置の振動を抑えることができる。
【0024】
本発明に係る電子機器は、発熱体と、開口を有し、気体を内部に含み、第1の方向に厚さを有する筐体と、前記筐体内に配置され、前記気体に圧力変化を与えるように前記第1の方向とは異なる第2の方向に周期的に往復移動することで、前記開口を介して前記気体を脈流として前記発熱体に向けて吐出させる移動板と、前記移動板を駆動する駆動機構とを具備する。
【0025】
電子機器としては、コンピュータ(パーソナルコンピュータの場合、ラップトップ型であっても、デスクトップ型であってもよい。)、PDA(Personal Digital Assistance)、電子辞書、カメラ、ディスプレイ装置、オーディオ/ビジュアル機器、プロジェクタ、携帯電話、ゲーム機器、カーナビゲーション機器、ロボット機器、その他の電化製品等が挙げられる。特に、薄型の電子機器に本発明は効果的である。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明によれば、合成噴流を発生する噴流発生装置の気体の吐出量を減らすことなく、薄型化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施の形態に係る噴流発生装置を示す斜視図である。図2は、図1に示す噴流発生装置の上から見た断面図である。図3は、図2におけるA−A線断面図である。
【0029】
噴流発生装置10は、筒体1及びカバー2とでなる筐体5を備えている。筒体1の下部は開口され、その開口部にカバー2が装着されることで筐体5が実質的に密閉される。筐体5の内部には、その内部を仕切る仕切り板6が設けられ、筐体5内の中央にはブレード3a及び3bを揺動させるためのモータ4が配置されている。モータ4は、筐体5の厚み方向(Z方向)を回転軸として、移動板としてのブレード3a及び3bをX−Y平面内で揺動させることが可能となっている。
【0030】
仕切り板6は、筐体5内をほぼ同容積となるように二分して配置され、これにより2つのチャンバ16及び17(第1のチャンバ16及び第2のチャンバ17)が筐体5内に形成される。ブレード3aは、第1のチャンバ16内で揺動するように配置され、ブレード3bは、第2のチャンバ17内で揺動するように配置される。ブレード3a及び3bは、例えばモータ4の回転軸を中心に水平方向で対称形状をなしているが、必ずしもそうでなければならないわけではない。
【0031】
図4は、図2におけるB−B線断面図であり、図5は、図2におけるC−C線断面図である。筒体1において、第1及び第2のチャンバ16及び17の上部には、筐体5の内部から外部へ連通する空気の連通路1a、1b、1c及び1dが形成されている。つまり、各連通路1a、1b、1c及び1dは、筒体1の側面1eに設けられた4つの開口11、12、13及び14まで、それぞれ延びるように形成されている。図2及び図4に示すように、連通路1a及び1cは第1のチャンバ16に連通している。また、図2及び図5に示すように、連通路1b及び1dは第2のチャンバ17に連通している。
【0032】
噴流発生装置10の寸法の一例を示すと、図4を参照して、例えば厚さa=5〜15mm、各チャンバ16及び17の厚さb=4〜12mmである。また、連通路1a等の厚さc=0.7〜3mm、筐体5の外径d=30〜70mmである。しかし、これらの範囲に限られない。
【0033】
筐体5の形状は、円筒状であるが、これに限られず、直方体状、あるいはそれら以外の形状であってもよい。筐体5を構成する筒体1やカバー2の材質は、銅、アルミニウム等の熱伝導性のよい金属が用いられるが、その他の金属、あるいは樹脂、セラミックス等が用いられる。ブレード3a及び3bの材質も、樹脂または金属等が用いられるが、そのほか軽量化を達成するため紙材等でもよい。
【0034】
モータ4は、例えば一般的な電磁式の回転モータが用いられればよい。しかし、筐体5の厚さが薄くなるように、扁平モータ等が用いられてもよいし、圧電式または静電式のモータが用いられれば、モータの小型化が可能となる。あるいは、図示しないモータが筐体5の外部に配置され、そのモータの回転軸が筐体5内まで延び、その回転軸にブレード3a及び3bが連結されるような構成であってもよい。
【0035】
以上のように構成された噴流発生装置10の動作について説明する。
【0036】
図6(A)に示すように、モータ4によりブレード3a及び3bが反時計回りに回動する。そうすると、第1のチャンバ16内の図中右側及び第2のチャンバ17内の左側の圧力が上がるととともに、第1のチャンバ16内の左側及び第2のチャンバ17内の右側の圧力が下がる。このような作用により、連通路1a及び1dを介して開口11及び14から空気が吐出されるとともに、連通路1b及び1cを介して開口12及び13から外部の空気が各チャンバ16及び17内へ流入する。
【0037】
図6(B)に示すように、今度はモータ4によりブレード3a及び3bが時計回りに回動する。そうすると、第1のチャンバ16内の図中左側及び第2のチャンバ17内の右側の圧力が上がるととともに、第1のチャンバ16の右側及び第2のチャンバ17の左側の圧力が下がる。このような作用により、連通路1c及び1cを介して開口12及び13から空気が吐出されるとともに、連通路1a及び1dを介して開口11及び14から外部の空気が各チャンバ16及び17へ流入する。
【0038】
以上のように、開口11〜14から空気が脈流として吐出され、吐出された空気は図示しない発熱体に吹き付けられる。これにより、効率よく発熱体が冷却される。
【0039】
一方、図6(A)において開口11及び14から空気が吐出されるときに、開口11及び14から独立して騒音が発生する。これは主に空気流の音などによる騒音である。また、図6(B)において、開口12及び13から空気が吐出される時も同様に騒音が発生する。しかしながら、開口11及び14から発生する音波と、開口12及び13から発生する音波とが、互いに逆位相の音波であるため互いに弱められる。これにより、騒音が抑制され、静音化を図ることができる。
【0040】
以上のように、本実施の形態に係る噴流発生装置10は、筐体5の厚み方向(Z方向)とは異なる水平方向にブレード3a及び3bが移動する構成となっている。したがって、筐体5の厚さに比して、移動板の移動量を大きくとれる。また、従来の振動板の振幅に比べても、ブレード3a及び3bの振幅が大きい。これにより、気体の吐出量を減らすことなく、噴流発生装置10の薄型化を実現することができる。
【0041】
本実施の形態では、ブレード3a及び3bがモータ4を中心軸に回動させる構造となっているので、噴流発生装置10の重心移動がほとんどない。つまり、噴流発生装置10の重心位置がモータ4の軸の部分にほぼ一致するため、筐体の厚み方向に振動板を振動させる従来の方式に比べ、噴流発生装置10全体の振動も抑えられる。
【0042】
本実施の形態では、同じY方向に向けて開口する開口11〜14まで、連通路1a〜1dが各チャンバ16及び17から延設されているので、同じ方向に空気が吐出させることができる。すなわち、噴流発生装置10に対して一方向に配置される例えば1つの発熱体に向けて効率よく空気が吐出する。なお、例えば発熱体の数や配置によっては、開口の向きが一方向ではなく、複数の方向に向いていてもよい。
【0043】
図7は、本発明の他の実施の形態に係る噴流発生装置を示す斜視図である。これ以降の説明では、上記噴流発生装置10の部材や機能等について同様のものは説明を簡略または省略し、異なる点を中心に説明する。
【0044】
噴流発生装置20の筐体5を構成する筒体1には、上記開口11〜14に相当する開口21〜24が形成されている。筒体1にはそれら開口21〜24を覆うようにノズル25がそれぞれ接続され、ノズル25から空気が吐出され、また流入する。ノズル25の先端は、例えばX方向に並ぶようにそれらノズル25の長さが設定されている。つまり、各ノズル25の先端がY方向で同じ位置にある。このような構成によれば、図示しない発熱体に向けて均一な空気の流れを形成することができ、効率よく放熱することができる。なお、各ノズル25の先端は必ずしもX方向に並んでいなくてもよい。
【0045】
図8は、本発明のさらに別の実施の形態に係る噴流発生装置を示す断面図である。
【0046】
噴流発生装置30の筐体35を構成するカバー32には、空気の連通路33bが形成されている。連通路33a及び33bは第1のチャンバ16に連通している。また、第2のチャンバ17に連通する図示しない連通路が、X方向で図8とは異なる断面で現れる位置に形成されている。第1のチャンバ16に連通する連通路は、X方向で図8とは異なる断面に現される位置に、連通路33a及び33b以外にあってもよい。
【0047】
このように、カバー32にも連通路33bが形成されることにより、筐体5の厚さは若干増えるが、発熱体により均一に空気を吹き付けることが可能となる。
【0048】
また、例えば、同じタイミングで空気が吐出され及び流入する連通路が筒体31とカバー32とにそれぞれに形成されていれば、効率のよい空気の流入出が可能となる。つまり、同じタイミングで空気が出入りする開口が互いに接近している場合より、両者が離れている方が、空気が吐出される方の開口の周囲の空気が巻き込まれやすくなり、合成噴流の流量を増やすことができる。
【0049】
図8に示したような形態に限らず、図9に示す噴流発生装置40のように、同じ断面で第1及び第2のチャンバ16及び17にそれぞれ連通する連通路43a及び43bが、筒体41及びカバー42に形成されていてもよい。なお、これら連通路43a及び43b以外にも、第1または第2のチャンバ16または17に連通する連通路が、X方向で図9とは異なる断面に現れるような位置に形成されていてもよい。
【0050】
図10は、本発明のさらに別の実施の形態に係る噴流発生装置を示す断面図である。図11は、図10におけるD−D線断面図である。
【0051】
噴流発生装置50は、例えば筐体51に、複数の空気の流通路を有するノズル52が取り付けられて構成されている。筐体51は、例えば半円筒状に形成され、ノズル52は、筐体51の直線部分に取り付けられている。ノズル52の厚さ(Z方向の長さ)は、筐体51の厚さと同じでよいが、もちろん必ずしも同じでなくてもよい。筐体51内には、例えばハードディスクドライブに用いられるボイスコイルモータ36が設けられている。
【0052】
ボイスコイルモータ36は、X−Y平面内で巻回されたコイル59、筐体51の厚さ方向であるZ方向に配列された2枚のヨーク26及び27、ヨーク26に取り付けられた2つのマグネット28を有する。コイル59の両側では、適当な支持部材57により移動板55及び56が支持されている。これにより、コイル59と移動板55及び56が一体的に動く。コイル59はアーム37(図10参照)に固定され、アーム37の先端に軸58が設けられている。移動板55及び56はZ方向に立設され、これらにより、筐体51内に、第1のチャンバ53及び第2のチャンバ54が形成される。ノズル52のうち図10中、上半分のノズル52aは、第1のチャンバ53に連通している。下半分52bは、第2のチャンバ54に連通している。
【0053】
このような構成により、マグネット28、ヨーク26及び27により磁気回路が形成され、コイル59に交流電圧が加えられることで、アーム37が軸58を中心にX―Y平面内で揺動、あるいは振動する。すなわち、少なくともマグネット28とヨーク27との間の空間内で磁気回路がZ方向に形成され、アーム37がそのZ方向の磁気回路を横切るように動く。アーム37が揺動することで移動板55及び56も揺動する。移動板55が第1のチャンバ53の容積を縮める方向に動くとともに、移動板56が第2のチャンバ54の容積を増大させる方向に動くと、ノズル52aから空気が吐出する。逆に、移動板55が第1のチャンバ53の容積を増大させる方向に動くとともに、移動板56が第2のチャンバ54の容積を縮める方向に動くと、ノズル52bから空気が吐出する。
【0054】
このようにハードディスクドライブに用いられるボイスコイルモータ36が用いられる場合でも、噴流発生装置50の薄型化を実現することができる。
【0055】
図12は、本発明のさらに別の実施の形態に係る噴流発生装置を示す分解斜視図である。図13は、図12に示す噴流発生装置の一部の平面図(断面図)である。
【0056】
図12に示す噴流発生装置60は、筐体61の前方側に、複数の空気の流通路62a及び62bを有するノズル62が取り付けられて構成されている。上記筐体61には図示しないカバーが上から被せられることにより筐体61内が密閉される。筐体61内の後方側のほぼ中央には、アクチュエータ65が配置されている。
【0057】
アクチュエータ65は、Y方向で両側の2つのヨーク64を有し、ヨーク64の間に1つのヨーク66が配置されている。また、ヨーク66を挟むように2つのマグネット63が設けられている。マグネット63は、例えばY方向にそれぞれ着磁され、これらマグネット63、ヨーク64及び66により磁気回路が形成される。また、2つのヨーク64の間であって、中央のヨーク66の両側にコイル67eが配置されている。コイル67eは、後述するように可動体67のベース部67a及び67bに装着されている。
【0058】
筐体61内には、Y方向に延びる複数の仕切り板68がX方向に配列されている。この仕切り板68によって、複数のチャンバ61aがX方向に並ぶように形成される。各チャンバ61a内には、上記アクチュエータ65によりX方向に移動する移動板67c及び67dが配置されている。具体的には、各移動板67cは連結部材67fにより連結され、また、各移動板67dも同様に連結部材67gにより連結されている。連結部材67fはベース部67aに接続され、連結部材67gはベース部67bに接続され、ベース部67a及び67bは、ガイド部材69にガイドされながら動くように構成されている。すなわち、可動体67は、コイル67eが装着されたベース部67a及び67b、連結部材67f及び67g、移動板67c及び67dでなり、可動体67がアクチュエータ65により一体的に移動する。
【0059】
チャンバ61aの1つ1つには、上記ノズル62内の空気の流通路62a及び流通路62bが連通している。流通路62a及び62bは、同じタイミングで空気を吐出し、また吸入する。すなわち、アクチュエータ65の駆動により、可動体67がX方向に振動して移動板67c及び67dがX方向に振動することで、各チャンバ61a内の圧力がX方向で増減し、流通路62aと流通路62bとから交互に空気が吐出される。具体的には、移動板67c及び67dが図13中、左に振れると、各チャンバ61a内の左側の圧力がそれぞれ上がり、各流通路62aを介して空気がそれぞれ吐出される。反対に、移動板67c及び67dが図13中、右に振れると、各チャンバ61a内の右側の圧力がそれぞれ上がり、各流通路62bを介して空気が吐出される。
【0060】
このように複数の仕切り板68により形成された複数のチャンバ61a内で移動板67c及び67dがX方向に振動することにより、薄型化を実現しながら、X方向で均一に空気を吐出することが可能となる。
【0061】
なお、可動体67が、物理的に左右で分離され、つまり、ベース部67aと67bとが分離された構造である場合であって、アクチュエータ65により互いに逆向きに振動(移動板群67cと、移動板群67dとが互いに逆向きに振動)するように駆動される場合は、特に有効となる。すなわち、その場合、可動体67全体の重心移動がなくなり、噴流発生装置60に生じる全体的なX方向の振動をキャンセルすることができる。
【0062】
図14は、本発明のさらに別の実施の形態に係る噴流発生装置を示す分解斜視図である。
【0063】
この噴流発生装置70では、筐体71内のほぼ中央にはアクチュエータ75が配置されている。アクチュエータ75は、周方向に着磁されたマグネットをその外周部に有する回転板74、この回転板74に回転の動力を与えるコイル77及びヨーク76を有する。回転板74には、回転板74の回転運動を直線運動に変換するためのリンクアーム73a及び73bが、それぞれ軸79a及び79bを介して接続されている。リンクアーム73a及び73bには、それぞれ移動板72a及び72bが、軸78a及び78bを介して接続されている。
【0064】
筐体71の側面71eには、図示しない複数の開口が形成されているか、または図示しない複数のノズルが接続されている。筐体71内には、移動板72aに仕切られることで、チャンバ71a及び71cが形成される。また、移動板72bに仕切られることで、チャンバ71b及び71dが形成される。上記した図示しない開口またはノズルは、そのチャンバ71a〜71dに連通しており、これにより筐体71内の空気を筐体71の外部に吐出される。
【0065】
以上のように構成された噴流発生装置70では、アクチュエータ75の駆動により、すなわち、回転板74がZ方向の軸を回転軸として回転することにより、移動板72a及び72bが互いに接近し、及び互いに離れるように移動する。移動板72a及び72bが互いに接近するように動くと、チャンバ71c及び71b内の圧力が上がり、チャンバ71c及び71bに連通する開口またはノズルから空気が吐出される。移動板72a及び72bが互いに離れるように動くと、チャンバ71a及び71d内の圧力が上がり、チャンバ71a及び71dに連通する開口またはノズルから空気が吐出される。
【0066】
このように本実施の形態によれば、移動板72a及び72bが互いに逆向きに移動するので、装置全体の重心移動がなくなり、噴流発生装置70に生じる全体的なY方向の振動をキャンセルすることができる。
【0067】
本発明は以上説明した実施の形態には限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0068】
図1及び図7等に示した噴流発生装置10及び20の、空気の連通路1a〜1d等の断面形状は矩形であった。しかし、円、楕円、長円、その他の形状であってもよい。また、連通路の数は4つであったが、3個以下でも5個以上でもよい。
【0069】
図1及び図7等に示した噴流発生装置10及び20等では、仕切り板6により、2つのチャンバ16及び17等が形成されていた。しかし、仕切り板6の数を増やし、チャンバの数を3つ以上とし、そのチャンバの数に対応させるようにブレードの数や、連通路の数を増やすことができる。その場合、モータ4によるブレードの移動角度(回動角度)はチャンバの数に比例して小さくなる。
【0070】
例えば、図14に示した噴流発生装置70の駆動源として、上記したアクチュエータ75の代わりに、一般的な中央の回転軸で回転する扁平モータを用いることも可能である。
【0071】
上記噴流発生装置10、20、30、40、50、60及び70の特徴部分のうち少なくとも2つを組み合わせた形態も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施の形態に係る噴流発生装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示す噴流発生装置の上から見た断面図である。
【図3】図2におけるA−A線断面図である。
【図4】図2におけるB−B線断面図であり、
【図5】図2におけるC−C線断面図である。
【図6】図1に示す噴流発生装置の動作を説明するための図である。
【図7】本発明の他の実施の形態に係る噴流発生装置を示す斜視図であり、ノズルが取り付けられた形態を示す図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係る噴流発生装置を示す断面図であり、カバーに空気の連通路が設けられた形態を示す図である。
【図9】図8に示す噴流発生装置の変形例の断面図である。
【図10】本発明のさらに別の実施の形態に係る噴流発生装置を示す断面図であり、駆動源としてハードディスク用のボイスコイルモータが設けられた形態を示す図である。
【図11】図10におけるD−D線断面図である。
【図12】本発明のさらに別の実施の形態に係る噴流発生装置を示す分解斜視図であり、多数のチャンバが形成され、移動板が直線状に動く形態を示す図である。
【図13】図12に示す噴流発生装置の断面図である。
【図14】本発明のさらに別の実施の形態に係る噴流発生装置を示す分解斜視図であり、駆動源として、回転運動を直線運動に変換する機構が用いられる形態を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
1a〜1d、33a、33b、43a…連通路
3a、3b、55、56、67c、67d、72a、72b…ブレード(移動板)
4、36、65、75…モータ(アクチュエータ)
5、35、51、61、71…筐体
6、68…仕切り板
10、20、30、40、50、60、70…噴流発生装置
11〜14、21〜24…開口
16、17、53、54、61a、71a〜71d…チャンバ
73a…リンクアーム
74…回転板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有し、気体を内部に含み、第1の方向に厚さを有する筐体と、
前記筐体内に配置され、前記気体に圧力変化を与えるように前記第1の方向とは異なる第2の方向に周期的に往復移動することで、前記開口を介して前記気体を脈流として吐出させる移動板と、
前記移動板を駆動する駆動機構と
を具備することを特徴とする噴流発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の噴流発生装置であって、
前記駆動機構は、ほぼ前記第1の方向に沿った軸を中心に前記移動板を揺動させることが可能なモータを有することを特徴とする噴流発生装置。
【請求項3】
請求項2に記載の噴流発生装置であって、
前記移動板は、前記軸を中心にほぼ対称形状でなり、
前記筐体は、
前記軸を含む平面に沿うように設けられ、該筐体内を仕切る仕切り板と、
前記仕切り板により仕切られて形成される複数のチャンバとを有し、
前記開口は、前記各チャンバにそれぞれ連通するように複数設けられていることを特徴とする噴流発生装置。
【請求項4】
請求項3に記載の噴流発生装置であって、
前記各チャンバのうち2つは、第1及び第2のチャンバであり、
前記開口は複数設けられ、
前記各開口のうち2つは、前記移動板が移動することで、前記気体を吐出するように前記各チャンバのうち第1及び第2のチャンバにそれぞれ連通する第1及び第2の開口であることを特徴とする噴流発生装置。
【請求項5】
請求項3に記載の噴流発生装置であって、
前記筐体は、前記各チャンバと前記各開口とをそれぞれ接続する複数の連通路を有することを特徴とする噴流発生装置。
【請求項6】
請求項2に記載の噴流発生装置であって、
前記モータは、
前記第1の方向に磁気回路を形成するための磁気回路形成部材と、
前記磁気回路内で前記第2の方向に動くコイルを有し、前記コイル及び前記移動板が取り付けられた可動部材と
を有することを特徴とする噴流発生装置。
【請求項7】
請求項1に記載の噴流発生装置であって、
前記駆動機構は、前記移動板を直線的に移動させるように駆動することを特徴とする噴流発生装置。
【請求項8】
請求項7に記載の噴流発生装置であって、
前記筐体は、
前記第2の方向に配列され、前記筐体内を仕切る複数の仕切り板と、
前記各仕切り板の間に形成される複数のチャンバとを有し、
前記移動板は、前記チャンバごとに複数設けられ、
前記駆動機構は、前記各仕切り板の間で前記移動板を移動させるように駆動することを特徴とする噴流発生装置。
【請求項9】
請求項8に記載の噴流発生装置であって、
前記駆動機構により移動可能に構成され、前記各移動板を一体的に連結する連結部材をさらに具備することを特徴とする噴流発生装置。
【請求項10】
請求項7に記載の噴流発生装置であって、
前記駆動機構は、
ほぼ前記第1の方向に沿った軸を中心に回転する回転板と、
前記回転板及び前記移動板に接続され、前記回転板の回転運動を前記移動板の直線運動に変換するリンクアームと
を有することを特徴とする噴流発生装置。
【請求項11】
発熱体と、
開口を有し、気体を内部に含み、第1の方向に厚さを有する筐体と、
前記筐体内に配置され、前記気体に圧力変化を与えるように前記第1の方向とは異なる第2の方向に周期的に往復移動することで、前記開口を介して前記気体を脈流として前記発熱体に向けて吐出させる移動板と、
前記移動板を駆動する駆動機構と
を具備することを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2007−113530(P2007−113530A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307545(P2005−307545)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】