説明

嚥下を助けるシステム及び方法

実質的に吸入することなく、完全な飲み込み行為の構成要素を制御するためユーザにより支持される携帯型システムを提供する工程を含む、人工的に刺激した嚥下方法及びシステムである。該システムは、コントローラと、信号発生器と、少なくとも1つの電極を有する皮下的に配置された電極アレーとを含む。電極アレーは、皮下的に配置され且つ作動されて単一の嚥下筋肉を刺激し、ここにて、単一の嚥下筋肉は、完全な飲み込み行為の間、電極アレーを介して直接、人工的に刺激される唯一の嚥下筋肉である。嚥下を人工的に刺激するため、神経を刺激し且つ選択的に神経を刺激するシステム及び方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嚥下を助けるシステム及び方法、より特定的には、嚥下障害の影響を少なくするため嚥下筋組織を刺激するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲み込み不能な症状は、全体として、「嚥下障害」と称されている。嚥下障害は、一般に、発作、神経変性の疾患、脳腫瘍、呼吸の乱れ、及びその他のような疾病と関係している。幾つかの形態において、嚥下障害の結果、飲み込む行為である「嚥下」する間、吸入することになる。嚥下する間の吸入は、吸入性肺炎の危険性を増大させるため、非常な関心事である。特に、吸入性肺炎は、発症後最初の1年間にて、死亡率が約20%、また、その後、死亡率が毎年10%から15%となるとの証拠がある。嚥下障害の従来からの治療法は、経鼻胃チューブを通して一時的に栄養補給し又は慢性的な場合、胃へのストーマを通して栄養補給する方法を採用している。
【0003】
生きた被験者の体内の電気的に励起可能な組織を電気的に刺激する技術は、刺激電極及び信号発生器を使用して電荷を制御され又は所定の態様にて供給するものが開発されている。国際出願国際公開PCT App.Pub.WO2004/028433号明細書(「ルドロー(Ludlow)」)(2004年4月8日付けで公開された、「上気道及び飲み込み筋肉グループの筋肉内刺激方法及び装置(Methods and Devices for Intramuscular Stimulation of Upper Airways and Swallowing Muscle Groups)」という名称)には、筋肉が飲み込む効果として反応するようにする目的のため、人間被験者の首領域内の筋肉を刺激することが記載されている。より特定的には、ルドローの特許には、上気道筋肉組織の2つ以上の筋肉内に電極を植え込み且つ、調和された制御信号を提供する信号発生器と接続することにより被験者の体内にて飲み込みを誘発させることが記載されている。経皮的、非植込み型のシステムを使用して人工的に刺激するその他の技術及び方法は、全てフリード(Freed)その他の者に対する米国特許第5,725,564号明細書、米国特許第5,891,185号明細書、米国特許第5,987,359号明細書、米国特許第6,104,958号明細書及び米国特許第6,198,970号明細書に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際出願国際公開PCT App.Pub.WO2004/028433号明細書
【特許文献2】米国特許第5,725,564号明細書
【特許文献3】米国特許第5,891,185号明細書
【特許文献4】米国特許第5,987,359号明細書
【特許文献5】米国特許第6,104,958号明細書
【特許文献6】米国特許第6,198,970号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
幾つかの側面は、例えば、使用中、多数の嚥下応答を刺激する方法に関する。幾つかの実施の形態において、かかる方法は、実質的に吸入することなく完全な飲み込み行為の構成要素を制御し得るようユーザによって支持された携帯型システムを提供する工程を含む。該システムは、コントローラと、信号発生器と、少なくとも1つの電極を含む電極アレーとを含む。電極アレーは、少なくとも1つの嚥下筋肉と刺激連通する状態にて皮下的に配置される。単一の嚥下筋肉は、人工的に刺激されて、完全な飲み込み行為の構成要素が行われるようにする。特に、単一の嚥下筋肉は、完全な飲み込み行為の間、電極アレーを介して直接的に人工的に刺激される唯一の嚥下筋肉である。
【0006】
その他の側面は、単一の嚥下筋肉を刺激するのみによってユーザの嚥下を助けるシステムに関する。幾つかの実施の形態において、システムは、単一の嚥下筋肉を刺激するため皮下的に植え込み得るようにした電極アレーを含む。信号発生器が含まれており、該信号発生器は、また、単一の嚥下筋肉を刺激し得るよう電極アレーと連通し得るようにされている。コントローラは信号発生器を作動させる。特に、コントローラは、単一の嚥下筋肉を電極アレーにて直接、刺激するためにのみ信号発生器を作動させ得るようにされている。
【0007】
更にその他の側面は、例えば、実質的に吸入することなくユーザの嚥下を制御する方法に関する。幾つかの実施の形態において、かかる方法は、第一の電極アレーを第一の神経に沿った第一の位置にて皮下的に配置する工程を含み、電極アレーは、少なくとも1つの電極を含み、第一の神経は第一の嚥下筋肉を起動させる。第一の神経は、第一の電極アレーにて刺激されて第一の嚥下筋肉を人工的に起動させる。
【0008】
更にその他の側面は、例えば、ユーザの嚥下を助けるシステムに関する。幾つかの実施の形態において、かかるシステムは、第一の神経を刺激すべく皮下的に植え込み得るようにした電極アレーを含み、第一の神経は第一の嚥下筋肉を起動させる。電極アレーは少なくとも1つの電極を含む。システムは信号発生器も含む。信号発生器は、電極アレーと連通して第一の神経を刺激し得るようにされている。コントローラは信号発生器を作動させる。特に、コントローラは、信号発生器を作動させて電極アレーにより第一の神経を刺激し第一の嚥下筋肉が起動されるようにされている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】幾つかの実施の形態に従って嚥下を助けるシステムの概略図である。
【図2】幾つかの実施の形態に従った筋外膜電極を示す。
【図3】幾つかの実施の形態に従った神経カフ電極を示す。
【図4】幾つかの実施の形態に従った自蔵電極を含む図1のシステムの概略図である。
【図5A】嚥下と関係した人体要素の概略図である。
【図5B】舌骨・喉頭器官系及び嚥下と関係した関係する身体要素の概略図である。
【図6】幾つかの実施の形態に従った嚥下を助ける植込み型システムの概略図である。
【図7】幾つかの実施の形態に従った幾つかの筋肉起動パターンを示す。
【図8】幾つかの実施の形態に従った、複数の神経を介して嚥下筋肉組織と刺激連通する状態にある図1のシステムの電極アレーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
色々な実施の形態を一層良く理解し得るようにするため、以下の説明は幾つかの表題の下に記述する。しかし、かかる表題は限定的であることを意図するものではなく、その説明は、全体として、また、適当な場合、相互に関係する特徴を有する色々な実施の形態の全体的な説明として読まれるべきであることを理解すべきである。このことに留意して、以下の全体的な事項について記述する。すなわち、嚥下支援システムの概説;嚥下の概説、神経を介しての人工的な嚥下筋の刺激;筋肉の起動パターン及び関係した刺激パターン;単一の筋肉の刺激及び選択筋肉グループの刺激;刺激プログラムの開始及び選択;及びシステムフィードバックである。
嚥下支援システムの概説
図1は、嚥下支援システム20の概略図である。システム20は、コントローラ22と、信号発生器24と、少なくとも1つの電極を含む電極アレー26と、少なくとも1つのセンサを含むセンサアレー28と、電源30とを含む。幾つかの実施の形態において、システム20の色々な構成要素は、植込み型ハウジング32(図6)内に維持され、該植込み型ハウジングは、システム20の起動のため選択的に含めた外部スイッチ又はセンサ(図6)を有して、選択随意的にペースメーカ「キャン」と実質的に同様である。破線にて全体的に示したように、システム20の色々な構成要素は、互いに連通しており、かかる連通は、多岐にわたる機構を介して実現される。例えば、構成要素は、選択的に、直接、電気的連通、無線周波数連通、磁気連通、光連通、音波連通、それらの組み合わせ等である。
【0011】
システム20は、全体として、嚥下筋組織を制御し得るようにされている。幾つかの実施の形態において、システム20は、携帯型であり、また、例えば、長時間、慢性的な嚥下障害を患うユーザが支持し得るようにされている。コントローラ22、信号発生器24、電極アレー26、センサアレー28及び(又は)電極30又はその一部分は、別個の異なる構成要素とし、部分的に一体化した構成要素として又は所望に応じて完全に一体化した構成要素として提供される。例えば、幾つかの実施の形態は、処理、信号の発生、外部との連通及び(又は)感知能力を有する1つ以上の一体化した電極を含み、これらの機能の1つ以上は、一体化した電極内に完全に又は部分的に一体化されている。
【0012】
幾つかの実施の形態において、コントローラ22は、マイクロプロセッサと、ハードワイヤー回路と、又はシステム20の色々な側面を制御するその他の適宜な手段とを含む。特に、コントローラ22は、信号発生器24を作動させ且つ(又は)センサアレー28のような色々な源から情報を受け取る。幾つかの実施の形態において、コントローラ22は、1つ又は複数の刺激プログラムを保存し且つ、刺激プログラムに従って信号発生器24を作動させ得るようにされている。刺激プログラムは、例えば、コントローラ22にハードワイヤー接続された所定の設定したプログラムを含むが、例えば、センサアレー28からの入力のような色々な入力に従って人工的な嚥下刺激を順応させるソフトウェアのような順応性、動的プログラムを含むようにしてもよい。
【0013】
幾つかの実施の形態において、コントローラ22は、色々なプログラムの間にて選択し且つ(又は)ユーザから受け取った情報、センサアレー28から受け取った情報、信号発生器24から受け取った情報、電極アレー26から受け取った情報、遠隔プロセッサ(図示せず)から受け取った情報、及び(又は)例えば技師又は外科医から受け取った情報のような、色々な入力に従って刺激プログラムを能動的に変更することになる。
【0014】
信号発生器24は、電極アレー26と連通しており、また、電極アレー26に対し1つ又はより多くの刺激信号を提供し得るようにされている。幾つかの実施の形態において、刺激信号は、電流パルスのような刺激エネルギを電極アレー26に送信し、嚥下筋組織を起動させる。以下により詳細に説明するように、信号発生器24は、選択的に、回路及び(又は)その他の植込み型構成要素を含み、電気パルスを電気導線を介して電極アレー26に出力する。例えば、刺激信号は、選択随意的に、電気アレー26に、また、最終的に、嚥下筋組織に送信される一連の重複する電流パルス列である。また、信号発生器24は、選択随意的に、例えば、無線周波数電力送信及び(又は)磁気電力送信のような電気接続部以外のその他の機構を介して電力を電極アレー26に通信することも考えられる。
【0015】
更に、又はこれと代替的に、信号発生器24からの信号は、その他の場合、例えば、刺激プログラム情報、患者の情報、その他の型式の情報を通信するといったような、性質上、送信可能なものとすることができる。幾つかの実施の形態において、信号発生器24は、受信機として、すなわち、電気導線又はその他の手段を介して別個の信号発生器に物理的に「ワイヤー接続されて」いない電極として機能するような自蔵電極と連通する無線周波数送信機を含む。特に、自蔵電極は、嚥下筋組織への刺激エネルギの送出タイミングを設定する電源及び(又は)制御信号として無線周波数送信を受信する。幾つかの実施の形態において、自蔵電極は、刺激信号を特定の自蔵電極に提供するため関係した信号発生器を含むことも認識すべきである。参考として、自蔵電極の実施の形態、及び刺激信号パターン及び刺激プログラムの色々な例は、以下に、人工的に嚥下を刺激する方法に関連して説明する。
【0016】
上記にて言及したように、別段の記述がない限り、コントローラ22及び信号発生器24(システム20のその他の構成要素)は、所望に応じて、別個の異なる構成要素、部分的に一体化した構成要素又は完全に一体化した構成要素として構成される。一例として、組み合わせたコントローラ22及び信号発生器24は、電流出力又はプロセッサからのその他の適正な出力の形態にて刺激信号を電極アレー26に提供する1つ又は複数の共用のプロセッサを含む。このため、例えば、「信号発生器24及びコントローラ22は別個の異なる構成要素である」、「信号発生器24は、コントローラ22から分離している」、又はこれと代替的に、「信号発生器24及びコントローラ22が完全に一体化されている」のような、制限的な文章が存在しないとき、コントローラ22及び信号発生器24はこのように限定されないものと考えられる。
【0017】
電極アレー26は、第一の電極26a、第二の電極26b及び第三の電極26cのような、1つ以上の電極を含む。電極アレー26は、例えば、皮下的、筋組織内の配置、筋肉表面上での皮下的な外部配置、及び(又は)皮下的植え込みを介して嚥下筋組織と刺激連通する状態とし且つ、嚥下筋組織を制御する1つ以上の神経と関係するようにされている。これと代替的に、例えば、電極アレー26の1つ以上の電極は、経皮的に取り付け又は皮膚に対し外側に取り付け得るようにされている。
【0018】
幾つかの実施の形態において、電極アレー26は、次の型式及び(又は)種類の1つ以上の電極を含む。すなわち、筋外膜電極、ピーターソン(Peterson)電極のような筋肉内電極、神経カフ電極、自蔵電極、単極電極、双極電極、多接点電極、及び(又は)その他の既知の型式/種類の電極、及びこれらの組み合わせである。以下により詳細に説明するように、幾つかの実施の形態において、電極アレー26は、次のようなものに記載されたもののような、嚥下刺激の適用例にて使用するのに適した1つ以上の関係した可撓性、伸長可能な電気リードを含む。すなわち、同時出願係属中の米国特許出願第11/413,316号明細書(「身体の動きを容易にすべく改良された可撓性及び伸長性を有する植込み型医療リード及びリード組立体(Implantable Medical Leads And Lead Assemblies With Improved Flexibility And Extensibility To Facilitate Body Movements)」という名称)、同時出願係属中の米国特許出願第11/413,435号明細書(「改良された可撓性及び伸長性を有する植込み型医療リード組立体を特別形成するための方法(Methods For Customizing Implantable Medical Lead Assemblies With Improved Flexibility And Extensibility)」という名称)、同時出願係属中の米国特許出願第11/413,437号明細書(「改良された可撓性、伸長性、及び枝分かれた構造体にて位置決め可能性を有する植込み型医療組立体(Implantable Medical Assemblies With Improved Flexibility,Extensibility And Positionability With Branched Structures)」という名称)、同時出願係属中の米国特許出願第11/413,440号明細書(「改良された可撓性及び伸長性及び実質的に二元的性質を有する植込み型医療リード及びリード組立体(Implantable Medical Leads And Lead Assemblies With Improved Flexibility And Extensibility And Having A Substantially Two−Dimensional Nature)」という名称)であり、これは、全て、2006年4月28日付けで出願され、その出願の各々の内容は、参考として引用し本明細書に含められている(本明細書にて、集合的に「伸長可能なリードの取り付け(the Extensible Lead Applications)」として記載されている)。
【0019】
全体的な参照の目的のため、図3には、幾つかの実施の形態に従って電極アレー26(図1)として又はその一部として有用な筋外膜電極33が示されている。筋外膜電極33は、絶縁したハウジング34と、絶縁したハウジング34により維持された1つ以上の接点36とを含む。電気リード38は、筋外膜電極33と接続されて所望に応じて個別的に又はグループとして接点36の各々に対する電気導管を提供する。幾つかの実施の形態において、筋外膜電極33は、単一の接点36を含み、また、単極であり、全体的な寸法を小さくし且つ(又は)全体的な構造的可撓性を増大させる。
【0020】
筋外膜電極33は、例えば、縫合又はその他の適宜な手段により筋肉表面に固定し得るようにされている。幾つかの実施の形態において、筋外膜電極33は、標的筋肉の後方に配置された組織内に筋肉内電極が突っ込むといったような、筋肉内電極に関連した問題点を避けるのを助ける。例えば、筋外膜電極33は、筋肉内電極よりも組織の反応が少なく、また、幾つかの実施の形態に従って相対的に薄い嚥下筋肉と見なすことのできる用途に十分適している。筋外膜電極の例は、テスターマン(Testerman)その他の者に対し1998年12月1日付けで発行され、参考としてその内容を引用し本明細書に含めた、「植込み型眼瞼電極及びその植え込み方法(Implantable Eyelid Electrode and Method of Implanting the Same)」という名称の米国特許第5,843,147号明細書に見ることができる。図3は、電極アレー26(図1)として又はその一部として有用な神経カフ電極40の簡略図である。神経カフ電極40は、管状の絶縁ハウジング44により維持された複数の半径方向に配設された接点42を含む。神経カフ電極40は、電気リード46と接続され、複数の接点42の各々に対する電気導管を提供し、適宜に、個別的に又はグループとして起動させる。一般的な表現にて、神経カフ電極40は、神経の回りに又は神経と刺激連通する状態に配設し、刺激エネルギを神経に送出し得るようにされている。幾つかの実施の形態において、神経カフ電極40は、例えば、テスターマンその他の者に対して1994年9月6日に発行され、参考としてその内容を引用し本明細書に含めた、「カフ電極(Cuff Electrode)」という名称の米国特許第5,344,438号明細書に記載されたように、実質的にU字形をしている。適宜な神経カフ電極のその他の例は、ネープル(Naples)その他の者に対して1986年7月29日付けで発行された、「カフ、製造方法及び設置方法(Cuff,Method of Manufacture,and Method of Installation)」の名称の米国特許第4,603,624号明細書に記載された、自己寸法決め電極カフを含む。以下により詳細に記載するように、神経カフ電極40は、幾つかの実施の形態にて神経により制御される筋肉を選択的に刺激し得るようにされている。例えば、神経カフ電極40は、信号発生器24(図1)のような、マルチチャネル信号発生器を用いて半径方向に配設された接点42を個別に励起することを選択的に許容し得るようにされ、電流の操縦技術を実行するすなわち別言すれば、所望に応じて神経の神経束を選択的に刺激し得るようにされている。
【0021】
図1を再度参照すると、本明細書にて使用するように、「自蔵電極」とは、信号発生器24にハードワイヤー接続されていない電極を意味し且つ(又は)本明細書にて後に引用するシュルマン(Schulman)の特許に記載されるもののような、それ自体の信号発生器を含む。例えば、信号発生器24は、選択随意的に無線周波数通信及び(又は)磁気通信機構を介して電力を電極アレー26にて送信し及び(又は)供給する。更に、幾つかの実施の形態において、自蔵電極又はこれと代替的に、所望であれば、「ハードワイヤー接続した」電極は、選択的に、信号発生器及び(又は)電極の起動を制御するプロセッサ、電極を起動させる電力を提供する電源、刺激エネルギを受け取り/運ぶ1つ以上の接点のような、色々な制御/作動構成要素と一体化されている。
【0022】
図4は、システム20が電極アレー26として又はその一部として有用な少なくとも1つの自蔵電極48を含む1つの実施の形態の概略図である。自蔵電極48は、例えば、システム20が設けられた送信機(図示せず)から無線周波数及び(又は)磁気信号のような信号Sを受け取る状態にて示されている。幾つかの実施の形態において、自蔵電極48は、シュルマンその他の者に対して1993年3月16日付けで発行された、「植込み型マイクロスティミュレータ(Implantable Microstimulator)」という名称の米国特許第5,193,539号明細書、シュルマンその他の者に対して1993年3月16日付けで発行された、「植え込み型マイクロ刺激器の構造及び製造方法(Structure and Method of Manufacture of an Implantable Microstimulator)」という名称の米国特許第5,193,540号明細書、シュルマンその他の者に対して1994年6月28日付けで発行された、「植込み型マイクロ刺激器」という名称の米国特許第5,324,316号明細書(本明細書にて集合的に「シュルマンの特許」と称する)に記載されたもののような、植込み型マイクロ刺激器であり、これら特許の全ての内容は参考として引用し本明細書に含められている。例えば、コントローラ22及び(又は)信号発生器24は、選択随意的に、電気コイル(図示せず)を含み且つ、嚥下障害の患者の外部に設けられ、自蔵電極48は、皮下的に植え込まれる。幾つかの実施の形態において、システム20は、自蔵電極48は信号Sを通して電力及び(又は)刺激プロンプトを受け取り、例えば、信号Sは、外部の電気コイルを用いて信号発生器24と自蔵電極48との間に確立されたAC磁気リンクである。
【0023】
図1を再度参照すると、センサアレー28は、第一のセンサ28a、第二のセンサ28b、第三のセンサ28cのような1つ以上のセンサを含む。センサアレー28は、嚥下及び(又は)システム20に関する情報を提供し得るようにされている。センサアレー28は、外側に、例えば、皮膚に又は毛に配置し及び(又は)適宜に、経皮的に配置することといったような皮下的な用途にて使用し得るようにされたセンサを含む。幾つかの実施の形態において、センサアレー28は、加速度計のような、1つ以上の力、動き、圧力及び(又は)位置のセンサ、例えば、歪み計のような力計、EMGセンサ、例えば、超音波発生/感知変換器を提供するため圧電結晶を使用するセンサのような、変位センサ、圧力センサ及びその他を含む。
【0024】
例えば、センサ28a−28cのような色々なセンサの作動条件は、以下のシステム20を用いて人工的に嚥下を刺激する色々な実施の形態の方法を参考にすることにより一層良く理解される。システム20と共に適宜に使用し得るようにされた適正なセンサ及び(又は)センサの例は、例えば、フェレック−ペトリック(Ferek−Petric)その他の者に対して2006年5月2日付けで発行され、参考としてその内容を引用し本明細書に含めた、「超音波方法及びその方法を使用する植込み型医療装置(Ultrasound Methods and Implantable Medical Devices Using Same)」という名称の米国特許第7,037,266号明細書に見ることができる。
【0025】
以前に言及したように、電源30は、単一の構成要素とし又は多数の構成要素とし、また、別個に且つシステム20のその他の構成要素と異なり又はシステム20のその他の構成要素の一体化した部分として設けられる。電源30は、選択随意的に、化学電池、コンデンサ又はシステム20に給電するその他の適正な手段である。幾つかの実施の形態において、電源30は、例えば、嚥下障害を患う人のような、生きた生物内に安全に植え込み得るようにされている。
嚥下の概説
システム20及びその使用方法の追加的な利点を説明する前に、上記の説明に対する理解の下、飲み込む行為である、嚥下の色々な側面及び嚥下と関連した色々な身体部分に関する幾つかの背景を提供することが有用である。図5Aは、嚥下と関連した身体要素50の全体化した概略図である。一方、図5Bは、更なる理解のため提供される図5Aの身体要素50の幾つかを示す第二の全体化した概略図である。全体的に説明すると、身体要素50については、人間の解剖学的部位に関して説明する。しかし、人間の解剖学的部位はその他の生物のものと同一ではないが、本明細書に説明したものと同様の着想は、例えば、猿、猫、犬、馬、は虫類又はその他の動物のような、その他の生きた生物にも適用可能であると考えられる。しかし、全体的な用語にて、身体要素50は、全体として、1つ以上の神経52と、1つ以上の嚥下筋肉54と、1つ以上の嚥下構造体56とを含む。より詳細に説明したように、神経52は、嚥下筋肉54を直接刺激し且つ(又は)感覚粘膜又は筋肉感覚端末を介することを含んで、嚥下筋肉54を感覚的に起動することにより運動機能を果たす。一方、嚥下筋肉54は、嚥下構造体56を動かして嚥下を完了させる、すなわち別言すれば、完全な飲み込み行為を実行する。
【0026】
背景の一例として、完全な飲み込み行為は、口内段階、咽頭段階、食道段階という幾つかの基本的な段階に分けることができる。段階の各々は、ボーラスの嚥下を実行する一連の動きを含む。本明細書にて使用したように、「ボーラス」とは、別段の記述がない限り、液体及び固体を含む、飲み込むべき任意の物質を意味する。嚥下障害の場合、1つ以上の嚥下段階の間、筋肉の活動(例えば、タイミング、型式又は活動量)が不十分であり、嚥下は不良である。多くの場合、不良な嚥下の結果、ボーラス又はその一部分を吸入することになる。時として、特別な嚥下障害のケースは、特定の飲み込み構造/影響を受ける筋肉を含んで、個人に従い且つ(又は)飲み込むボーラスの型式/寸法/コンシステンシーに従って異なる態様及び(又は)異なる程度にて、飲み込みに影響を与える。
【0027】
全体として、口内段階は、例えば、柔口蓋の前方位置を制御するといった、口内構造の随意的制御を伴う。口内段階の間、ボーラスは、典型的に、舌にて口腔内に後方に押される。口内段階の終了部分は、全体として、ボーラスがのどの前方口蓋アーチを通過することにより示される。典型的に、咽頭相は、口内段階の終了部分にて開始される不随意の反射として開始する。3つの段階の部分は重なり合うことが多いことを認識すべきである。嚥下障害のあるケースにおいて、口内段階の間の不十分な動きの結果、咽頭相の開始部分の始まりが遅れることとなる一方、このことは飲み込む間の吸入を招く可能性がある。
【0028】
咽頭段階の開始部分は、典型的に、舌骨・喉頭器官系(hyolaryngcal complex)を持ち上げ又は上昇させ且つ、それを前方向に向けて前方に動かすため、舌骨の動き及び喉頭部の高さ位置を制御する舌骨・喉頭器官系の筋肉を使用することを含む。通常、咽頭段階の一部分として、甲状披裂軟骨及び心室索を閉じて口蓋帆咽頭シールを形成する。喉頭蓋を傾け、また、上食道括約筋(UES)を弛緩させて食道を開放する。UESは、輪状咽頭の領域内に配置されており、また、UESは、輪状軟骨に装着される輪状咽頭筋を含む。嚥下障害の幾つかのケースにおいて、舌骨・喉頭器官系の持ち上げ/前方への動きが不十分であり、喉頭蓋の傾きが不十分、及び(又は)UESの弛緩/開放が不十分であることがあり、これらは全て、完全な飲み込み行為にて吸込み及び(又は)その他の不良を引き起こす可能性がある。
【0029】
食道段階の開始部分は、典型的に、上食道括約筋(UES)が開放するときに開始される。ボーラスは、典型的に、咽頭段階の間に開始される一連のぜん動波の収縮により食道の下方に運ばれる。ボーラスは、最終的に、下食道括約筋へ向かう途中にて作用し且つ、胃に入る。嚥下障害の幾つかのケースにおいて、輪状咽頭の開口部は、咽頭段階の後、弛んだままであり、十分に収縮しない。その結果、かなりの材料が咽頭内に残り、その後に残る材料を吸入する危険性を増す可能性もある。
【0030】
上記の概説に留意して、身体構成要素50について及び身体構成要素50間の相対的な相互作用について、神経52から始めてより詳細に説明する。神経52は、第一の神経52a、第二の神経52b、第三の神経52cのような複数の神経を含む。全体的な表現にて、神経52は、嚥下筋肉54の起動を刺激し且つ(又は)嚥下に関する感覚的フィードバックを提供し、神経52a、52b、52cの各々は、複数の神経線維により形成され、その神経線維は、神経束にグループ化される。例えば、第一の神経52aは、第一の神経束60a、第二の神経束60b、第三の神経束60c、第四の神経束60dのような、第一の複数の神経束60を含む。第二の神経52bは、また、第五の神経束62a及び第六の神経束62bのような、第二の複数の神経束62を含む。以下により詳細に説明するように、筋肉運動応答と関係されたとき、神経束は、1つ以上の嚥下筋肉54と「結合」され、このため、特定の神経束又は神経束のグループは、特定の筋肉又は筋肉グループを刺激するすなわち別言すれば、起動させる。幾つかの実施の形態は、特定の神経の1つ以上の神経束を選択的に刺激してその特定の神経と関係された嚥下筋肉を選択的に刺激することを含む。
【0031】
第一の神経52aは、例えば、オトガイ舌骨、舌骨舌筋、甲状舌骨、肩甲舌骨、胸骨甲状腺、胸骨舌骨、オトガイ舌筋及び(又は)茎突舌筋を起動させる神経束60を有する舌下神経である。一方、第二の神経52bは、例えば、顎舌骨筋及び(又は)顎二腹筋を起動させる顎舌骨筋神経(下歯槽神経から)である。第三の神経52cは、1つ以上の関係付けた嚥下筋肉54を起動させる頸部の神経である。第一、第二及び第三の神経52a−52cに対する特定の例を示したが、神経52は嚥下(運動機能)と関係した筋肉組織を刺激し且つ(又は)感覚信号を運ぶ(感覚機能)神経の任意のもの(神経枝、神経根、神経細根等)であることを理解すべきである。例えば、神経52は、迷走神経、舌下神経、顎舌骨筋神経、舌咽頭神経、喉頭神経、上喉頭神経、反回神経、顔面神経、C1三叉神経、下顎神経、下歯槽神経、及び頸神経、頸神経わなを含む神経及びその他の神経の1つ以上から選ばれる。
【0032】
図5A、図5B及び図8間を参照すると、上記にて参照したように、嚥下筋肉54によって色々な嚥下段階に相応する動きが生じる。参考のため、図5Bには、舌骨・喉頭器官系64を動かす関係させた方向に従って嚥下筋肉54の幾つかが示されている。嚥下筋肉54は、全体として、嚥下の口内段階、咽頭段階及び食道段階の任意の1つ以上と関係させた筋肉を含んで、嚥下の構成要素と関係させた動きを生じさせる複数の筋肉の任意のものである。説明の目的のため、第一の筋肉54a、第二の筋肉54b、第三の筋肉54c、第四の筋肉54d、第五の筋肉54e、第六の筋肉54f、第七の筋肉54g、第八の筋肉54h及び第九の筋肉54iについて説明する。特に、筋肉54a−54iは、それぞれ顎舌骨筋、オトガイ舌骨、甲状舌骨、顎二腹筋の前腹、舌骨舌筋、茎突舌骨筋、オトガイ舌筋、胸骨舌骨、及び胸骨甲状腺である。
【0033】
上記に嚥下筋肉54の特定のものをリストアップしたが、嚥下筋肉54は、また、次の非限定的なリストから選んだ筋肉又は筋肉グループの任意の1つ以上を含むことを理解すべきである。すなわち、喉頭と舌骨を支持する筋肉、内喉頭筋、外喉頭筋、舌の後部内在筋、舌骨舌筋、オトガイ舌筋、甲状舌骨、上咽頭収縮筋、中咽頭収縮筋、下咽頭収縮筋、輪状咽頭筋(UES)、顎二腹筋、外側輪状披裂筋、オトガイ舌骨、口蓋帆挙筋、顎舌骨、肩甲舌骨、口蓋舌筋、口蓋咽頭筋、胸骨舌骨、胸骨甲状腺、茎突舌筋、茎突舌骨、茎突咽頭筋、口蓋帆張筋、甲状披裂軟骨の下、甲状披裂軟骨の上、及びその他である。参考のため、両側対の筋肉を暗示するとき、例えば、「単一の嚥下筋肉」という語は、かかる両側対の筋肉の片側のものだけを示す。
【0034】
嚥下構造体56は、骨、軟骨物質、組織、筋肉(1つ以上の嚥下筋肉54を含む)及び(又は)その他の材料にて形成される。一般的な表現にて、嚥下構造体56は、例えば、UES、喉頭蓋、舌骨、及び喉頭及び(又は)咽頭のその他の要素並びにその他の嚥下構造を含む。
【0035】
図5Aの概略図を参照すると、嚥下構造体56は、その要素を図5Bにも示した舌骨・喉頭器官系64を含む。本明細書にて使用したように、「舌骨・喉頭器官系」という語は、喉頭、舌骨、及び関係した嚥下筋肉を含む首の嚥下構造体を意味する。図5Aを参照すると、舌骨・喉頭器官系64は、舌骨70、喉頭蓋72、UES76、及び前庭80を画成する下方喉頭軟骨78を含む。舌骨・喉頭器官系64は、体軸(rostrocaudal axis)軸HRCと、前−後軸(anterior−posterior axis)HAPとを画成する。参考のため、また、一般的な表現にて、咽頭P(全体として表示した方向に向けて特定)は、呼吸器官経路及び消化器官経路が拡がる箇所である舌骨・喉頭器官系64内まで伸びている。この拡がりは、食道E(全体として表示した方向に向けて特定)と後方に連通する咽頭Pにより特徴とされ、この箇所にて、UES76は、呼吸する間、食道Eを咽頭Pから閉じる。典型的に、食道Eは、上記に説明したように、食物及び流体を胃まで運ぶ。一方、咽頭Pから逃げる空気は、呼吸中、気管T(全体として表示した方向に向けて特定)まで喉頭前庭80を通って前方に進む。
【0036】
図5A及び図5B間を参照すると、飲み込む間、喉頭前庭80は、材料が後方に食道E内に輸送される間、閉じられている。特に、正常な飲み込みの間、舌骨・喉頭器官系64は、前方及び上方に持ち上げられる。喉頭蓋72は、折り畳まれて喉頭前庭80を閉じる。この動きは、UES76の弛緩をトリガーし、食物又は液体が食道E内に進むことができるようにする。
【0037】
適正に機能する飲み込み中、色々な動きは、不随意的に調和されて、液体又は固体物等のボーラスを実質的に吸入することを避ける。しかし、嚥下障害の場合、かかる嚥下動きは、不適切なタイミングとされ且つ(又は)不十分である。例えば、舌骨・喉頭器官系64は、上方及び前方への動きが不十分であり、喉頭蓋72は、下方に十分に折り畳まれず、且つ(又は)UES76は、嚥下障害の幾つかの場合、十分に弛緩せず、嚥下する間に吸入する結果となる。以下に説明するように、システム20(図1)は、嚥下を助け、特に、嚥下障害の患者が飲み込む間の吸入を少なくし又は実質的に解消すべく使用することができる。上記の嚥下及び嚥下障害の概説に鑑みて、以下の色々な実施の形態について説明する。すなわち、システム20の植え込み、システム20によって実行される色々な刺激プログラム及びそれらの特徴、単一の嚥下筋肉の刺激及びシステム20にて嚥下を人工的に刺激するよう筋肉グループを選択すること、筋肉の起動パターン及び嚥下筋肉を刺激するための相応する刺激パターン、例えば、ユーザが開始した嚥下動きのタイミングを容易にすべくユーザのフィードバックを提供すること、関係させた神経を介してシステム20による嚥下筋肉組織の刺激、及び例えば、1つ又は複数の刺激プログラムを変更することにより、システム20により人工的な嚥下刺激を制御するためのシステムのフィードバックである。
嚥下支援システムの植え込み
図1、図5A、図5B及び図6間を参考して、システム20を植え込む方法の色々な実施の形態について説明する。更なる参考のため、例えば、切開部の縫合、外科箇所の洗浄、予防的抗生剤の塗布、又は身体恒常性のチェックのような色々な補助的手順が明確に考えられるが、更なる説明は省かれている。使用及び構成の点にて、システム20は、選択随意的に、持ち運び可能であるようにされ、また、皮下的に植え込まれ且つ(又は)幾つかの実施の形態にて別言すれば、長期間、システム20のユーザ90によって支持される。
【0038】
このことに留意し且つ、図6を特に参照すると、システム20の植え込みは、全体として、コントローラ22、信号発生器24、及び電源30を単一のユニットとして植込み型ハウジング32内に配設する工程を含む。ハンドスイッチ116のような、1つ以上の外部装置は、選択随意的に、コントローラ22と接続されるすなわち別言すれば、これらと連通し、以下により詳細に説明するように、ユーザ制御による嚥下刺激を行う。上方胸部94に且つシステム20のユーザ90の鎖骨96の下方にて皮下的空所92を画成するため第一の切開が為される。皮下的空所92は、植込み型ハウジング32を維持し得るような寸法、形状とされる、すなわち別言すれば形成される。次に、植込み型ハウジング32は、皮下的空所92内に配設される。これと代替的に、幾つかの実施の形態において、コントローラ22、信号発生器24、及び(又は)電源30は、選択随意的に、例えば、上述した自蔵電極48の実施の形態と同様、例えば、電極アレー26が自蔵電極を含む箇所にてユーザ90の外側にあるままにされる。
【0039】
第二の切開、例えば、標準的な上方及び下方の下広頚筋(subplatysmal)フラップを有する変更したエプロン切開部が首98の甲状舌骨膜レベル100の回りにてユーザ90の首98に形成される。第一及び第二の切開部は、その2つの切開部間に第一の通路を形成することにより接続される。通路は、全体として、ユーザ90の胸骨柄102の上方にて第一の切開部と第二の切開部との間で皮膚の下方にて伸びる。
【0040】
幾つかの実施の形態において、電極アレー26は、第一の電気リード104aと、第二の電気リード104bとを含み、リード104a、104bの各々は、電極アレー26と信号発生器24との間に電気的接続部を形成し得るようにされている。例えば、嚥下筋肉の刺激が望まれる場合、第二の電気リード104bは、第一の電気リード104aに対する首98の反対側に選択的に皮下的に配設され、電極アレー26の相応する電極は、首98にて対向する態様で皮下的に配置される。上述したように、電気リード104a、104bは、選択的に、伸長可能なリードの適用例にて設けたものと実質的に同様である。
【0041】
しかし、電気リード104a、104bの各々は、それぞれ第一の端部領域106a、106bと、第二の端部領域108a、108bとを画成する。第一の電気リード104aの第一の端部領域106aは、第一の通路を通って皮下的空所92に送り込まれる。幾つかの実施の形態において、第二の切開部と実質的に同様の第三の切開部が首の反対側に形成される。第二の通路は、選択的に、第一の通路に対する第三の切開部から第一の切開部を介して形成された皮下的空所92に対する第三の切開部から直接、皮下的に形成されるが、電気リード104a、104bを皮下的に配置する多岐にわたる方法とすることが考えられる。しかし、選択随意的に、第二の電気リード104bの第一の端部領域106bは、第二の通路を通して皮下的空所92に送り込まれる。
【0042】
幾つかの実施の形態において、電気リード104a、104bの各々は、第一の電気リード104aの枝分かれ点BPのように、第二の端部領域108a、108bの基端側にて枝分かれする(第二の電気リード108bの枝分かれ状態は、図6の図にて陰に隠れている)。第二の端部領域108a、108bの各々が枝分かれする点の1つ以上は、選択随意的に、ユーザ90の胸鎖乳突筋の前方に配置されるが、その他の位置とすることも考えられる。
【0043】
上述したように、図6は、電極アレー26をユーザ90の首98内に両側に植え込む状態を示すが、例えば、第一の電気リード104aのみを使用して片側に植え込むことも考えられる。一般的な表現にて、両側嚥下筋肉組織の刺激を容易にするため両側へ植え込む方法が使用されるが、両側に植え込むためその他の手順とすることが考えられる。甲状舌骨、舌骨舌筋、顎舌骨及びオトガイ舌骨及び(又は)任意のその他の嚥下筋肉54のような、1つ以上の嚥下筋肉54が特定される。更に、又はこれと代替的に、感覚的機能を提供する嚥下筋肉54(運動機能)及び(又は)神経54を制御する1つ以上の神経52が特定される。例えば、幾つかの実施の形態において、対象とする嚥下筋肉54及び(又は)神経52を特定するため視覚的確認及び(又は)神経の刺激法が使用される。
【0044】
神経52及び(又は)嚥下筋肉54の特定後、例えば、電極26a−26cのような、電極アレー26の1つ以上の電極は、選んだ筋肉54に関連してすなわち別言すればこの選んだ筋肉54を制御する神経52を介して又は直接的に、選んだ嚥下筋肉54と刺激連通する状態に配置される。電極アレー26は、選択的に、適宜に、縫合系、外科用締結具又はその他の手段を用いて適所に固定される。幾つかの実施の形態において、電極アレー26を嚥下筋肉54と刺激連通する状態に配置する工程は、電極アレー26の1つ以上の電極を1つ以上の嚥下筋肉54の表面に固定する工程と、1つ以上の電極を1つ以上の嚥下筋肉54内に挿入する工程と、及び(又は)1つ以上の電極を選んだ1つ以上の嚥下筋肉54を起動させる1つ以上の神経52と刺激連通する状態に配置する工程とを含む。
【0045】
幾つかの箇所にて、電気リード104a、104bの第二の端部108a、108bは、植込み型ハウジング32に固定され且つ信号発生器24と連通する状態に配置される。一方、電気リード104a、104bの第一の端部106a、106bは、電極アレー26の電極と接続される。幾つかの実施の形態において、電極アレー26の電極は、また、例えば、センサアレー28内のセンサとして作用するよう、感知機能の作用を果たすようにしてもよいことを認識すべきである。認識し得るように、センサアレー28は、選択随意的に、電極アレー26と関連して使用されるものと実質的に同様の技術にて選択的に植え込まれる。更なる理解のため、センサアレー28を植え込む幾つかの実施の形態の方法について、センサ28a−28cに関連して以下に説明する。
【0046】
特に、顎骨、より特定的に、ユーザ90の下顎骨のオトガイ隆起110に第四の切開部が選択随意的に形成される。第一のセンサ28aは、例えば、接着剤、縫合系、骨アンカー又はその他の手段によりオトガイ隆起110に皮下的に固定される。第一のセンサ28aは、選択的に、第一及び第二の電気リード104a、104bの1つと接続される。その他の実施の形態において、第一のセンサ28aは、第一及び第二の電気リード104a、104bに対すると実質的に同様の仕方にて、胸骨柄102の上方を進んで、可撓性の伸長可能な電気リードのような、第三の電気リード112と接続される。
【0047】
図5A、図5B及び図6間を参照すると、第二のセンサ28bは、選択随意的に、例えば、第二又は第三の切開部を通して挿入され、又は第五の切開部は、選択随意的に、ユーザ90の首98に形成され、センサ28bは、第五の切開部を通して皮下的に配置される。第二のセンサ28bは、選択的に、例えば、舌骨・喉頭器官系64のような、嚥下構造体56に固定される。幾つかの実施の形態において、第二のセンサ28bは、舌骨70、喉頭蓋72又は、例えば、甲状軟骨、輪状軟骨、披裂軟骨、楔状軟骨、及び(又は)小角軟骨を含む任意の喉頭軟骨に対して固定される。更に、又はこれと代替的に、第二のセンサ28bは、UES76に対し選択随意的に固定される。
【0048】
幾つかの実施の形態において、第二のセンサ28bは、舌骨・喉頭器官系64又はその特定の要素の体軸HRC及び前−後軸HAPに対して実質的に平行に方向決めされる。適用可能な場合、第二のセンサ28bは、電気リードと接続され、例えば、第二のセンサ28bは、第一の電気リード104aと選択随意的に接続される。このことから、電気リード104a、104bは例えば、電力をセンサアレー28に運び且つ(又は)センサアレー28からセンサ情報を運ぶと共に、電極アレー26に刺激エネルギを運ぶことを含んで、選択随意的に、多くの目的を果たすことを理解すべきである。
【0049】
図6を特に参照すると、幾つかの実施の形態において、第三のセンサ28cは、システム20の植込み型ハウジング32に対して固定されている。例えば、第三のセンサ28cは、選択随意的に、ハウジング32を植え込む前、植え込むと同時に、又は植え込んだ後に、植え込まれる。幾つかの実施の形態において、第三のセンサ28cは、植え込み可能なハウジング32に固定される、すなわち別言すれば、第三のセンサ28が植え込み可能なハウジング32から実質的に設定された距離にあり且つ、コントローラ22及び(又は)信号発生器24と連通しているよう固定される。
【0050】
システム20を植え込んだ後、所望に応じてシステム20の色々な試験及び(又は)最適化が実行される。幾つかの実施の形態において、システム20は、以下により詳細に説明するように、電極アレー26を用い且つ嚥下刺激を最適化するようセンサアレー28から情報を受け取ることによりユーザの嚥下を刺激することで自己形成の操作を実行する。センサアレーの情報の評価に続いて、システム20は、例えば、ユーザの嚥下を一層良く制御し得るように刺激プログラムを変更することによりシステムの構成を変更する。その他の実施の形態において、システム20は、技師又はその他の適宜な人間により手操作にて形成される。システム20の植え込みに関する植え込み情報も選択随意的に記録される。例えば、電極の型式/配置、センサの型式/配置、システムの試験結果に関する情報及び(又は)その他の関連する情報は、選択随意的に、遠隔的に保存し又は直接、システム20と関係させた記憶装置に保存する。
刺激プログラムの開始及び選択
図1を参照すると、植え込んだ後、1つ以上の刺激プログラムに従って、システム20を使用してユーザの嚥下の要素を刺激する。特に、システム20は、ユーザ90(図6)の多数の嚥下応答を刺激し、実質的に吸入することなく、ユーザの嚥下の1つ以上の要素を助け得るようにされている。上述したように、システム20は、システム20を構成する方法の一部として、ユーザ90に対し飲み込み方法を指導する治療方法の一部として及び(又は)例えば、長期間にわたって支援を保つ方法の一部として、ユーザの嚥下の1つ以上の要素を選択随意的に刺激する。
【0051】
システム20は、全体として、1つ以上の刺激プログラムに従って、1つ以上の嚥下筋肉54を起動する。例えば、コントローラ22は、選択随意的に、1つ以上の刺激プログラムを保存し且つ所望の嚥下プログラムに従って信号発生器24を作動させ刺激エネルギを電極アレー26に送って、1つ以上の嚥下筋肉54を起動させる。幾つかの実施の形態において、刺激プログラムは、実質的に吸入することなく、食物及び飲物の少なくとも一方の嚥下を刺激する能動的な栄養補給プログラム及び実質的に吸入することなくユーザの分泌物の嚥下を刺激する受動的なユーザの分泌維持プログラムを含む。能動的な栄養補給プログラムは、選択随意的に、ボーラスの特徴に従って、特定のボーラスの嚥下プログラムの種類に更に分割され、これらのプログラムは、例えば、所望に応じて、特殊な液体の嚥下プログラム及び特殊な固体の嚥下プログラム、ボーラスの量又はコンシステンシーに従って最適化された特殊な嚥下プログラム及びその他を含む。
【0052】
能動的な栄養補給プログラムの開始は、選択随意的に、「ユーザの制御」の下にある。特に、任意の特殊な嚥下プログラムを含んで能動的な栄養補給プログラムは、例えば、図6に全体的に示したように、ハンドスイッチ116のような外部の携帯型スイッチセンサを介して又は音声命令、動きセンサ、又は「ワイヤー接続した」すなわち別言すれば、例えば、無線周波数通信を介して上述したように、システム20と連通したセンサアレー28の1つ以上のセンサを介してユーザの栄養補給要求に応答して選択的に開始される。このように、幾つかの実施の形態において、ユーザは、システム20に対し栄養補給要求の情報を提供し、能動的な栄養補給プログラムを開始することができる。
【0053】
幾つかの実施の形態において、ユーザ90は、例えば、ハンドスイッチ116を所望の刺激時間、押し続けることにより所望の期間又は時間、能動的な栄養補給プログラムを開始し且つシステム20により嚥下筋肉の刺激を継続することができる。更に、刺激の強度は、選択随意的に、ハンドスイッチ116又はその他のセンサを押す程度に従って、ユーザの制御の対象である。また、例えば、20秒のような、実質的に連続的な予め設定した嚥下刺激の期間、又は、例えば、ジュールにて測定した、特定の量の刺激エネルギが送出された後、システム20は、更なる刺激を自動的に中断するようにした、安全性オーバライド機能を提供することも考えられる。幾つかの実施の形態は、能動的な栄養補給プログラムのユーザ制御による開始を含むが、システム20は、例えば、センサアレー28の1つ以上のセンサを使用してユーザが摂食し又は飲み込もうとするときを選択随意的に自動的に感知することも理解すべきである。また、幾つかの実施の形態において、ユーザ90は、例えば、ハンドスイッチを使用して、どの型式のボーラス及び(又は)相応する嚥下プログラムをシステム20により実行させるかに関するユーザの入力を提供する。
【0054】
上記にて言及したように、能動的な栄養補給プログラムは、例えば、特殊なプログラムを提供することを介して、液体又は固体ボーラスの消費、異なるボーラス量を有するボーラスの消費、又は異なるボーラスのコンシステンシーを有するボーラス消費に対して、選択随意的に最適化される。以下に説明するように、かかる特殊なプログラムに従った刺激は、例えば、嚥下障害の患者でない人による液体の嚥下のような状態に従って「正常な」液体又は固体嚥下の嚥下応答特徴を示すよう、選択随意的にモデル化される。
【0055】
幾つかの実施の形態において、ユーザの分泌維持プログラムは受動的に作用し、又はバックグラウンドプログラムとして作用する。特に、ユーザの分泌維持プログラムは、唾液のようなユーザの分泌物の嚥下又は粘膜を自動的に、定期的に刺激し得るようにされている。平均成人は、毎日、約500mlから約1500mlの唾液を生じさせるという証拠がある。自動的な維持プログラムを提供することは、ユーザ90がこれらの分泌物を実質的に吸入することなく、かかるユーザの分泌物を処分することを容易にする。周期、すなわちユーザの分泌維持プログラムに従って開始された嚥下順序の間のタイミングは、特定の個人の観察を介して、例えば、人間又はその他の動物が分泌物を嚥下する間に示す平均時間を介して選択随意的に決定される、すなわち別言すれば選択したように嚥下を定期的に刺激する。ユーザの分泌維持プログラムは、また、システム20の「夜間モード」の作動設定の一部として作用させることもできる。例えば、ユーザの分泌維持プログラムは、ユーザ90が実質的に傾斜した位置又は状態にあるとき又は例えば、その他の基準に従って、夜10時から朝6時までのような、特定の期間の間、選択随意的に開始し且つ終了する。ユーザの分泌維持プログラムは、選択随意的に、能動的な栄養補給プログラムが開始される迄、バックグラウンドにて連続的に作用する。上記にて言及したように、ユーザ分泌維持プログラムは、幾つかの実施の形態にて分泌物の嚥下と関係した筋肉の起動のため最適化される刺激パターンを含む。
単一筋肉の刺激及び選んだ筋肉グループの刺激
図1、図5A及び図5Bを参照すると、色々な実施の形態はユーザの嚥下を刺激すべく複数の嚥下筋肉54を使用する工程を含むが、幾つかの実施の形態において、システム20は、完全な飲み込む行為の間の全体にて、単一の嚥下筋肉54のみを使用してユーザの1つ以上の嚥下構成要素を刺激し得るようにされている。特に、電極アレー26は、単一の嚥下筋肉54と刺激連通する状態に配置される。単一の嚥下筋肉は、例えば、1つ以上の電極を単一の筋肉と接触する状態に配置することにより起動されるが、その単一の嚥下筋肉は単一の筋肉を制御する1つ以上の神経を介して直接、刺激してもよく、1つ以上の電極は、その単一の筋肉を刺激すべく1つ以上の神経52を介して単一の嚥下筋肉と刺激連通する状態に配置される。
【0056】
このように、幾つかの実施の形態において、単一の嚥下筋肉は、刺激プログラムに従ってシステム20により人工的に刺激され、完全な嚥下行為の所望の要素が行われるようにする。単一の嚥下筋肉は、完全な嚥下行為の間、電極アレー26を介する刺激が直接標的とする嚥下筋肉54の1つにしか過ぎないが、例えば、電流流れ又は電流を単一の嚥下筋肉を通して伝送することにより、幾分かの刺激エネルギは、嚥下筋肉54のその他の筋肉に偶発的にすなわち別言すれば間接的に送出されるようにすることが考えられる。
【0057】
特に図5Bを参照し、また、上記にて言及したように、幾つかの型式の嚥下障害吸入は、舌骨・喉頭器官系64を十分な程度に且つ(又は)適正なタイミングにて持ち上げるのを起動させることができない結果として、また、UES76(図5A)を十分に弛緩させることができない結果として生じる。実際上、嚥下障害と関連した実質的な吸入部分は、かかる嚥下の不良の結果として生ずるとの証拠がある。幾つかの実施の形態において、舌骨・喉頭器官系64は、舌骨舌筋54e、顎二腹筋54dの後腹又は茎突舌骨筋54fの1つを直接刺激することにより十分に持ち上げられ、これら筋肉の各々は、それぞれの嚥下筋肉54が舌骨・喉頭器官系64に加える動きの方向に従って図5Bに全体として示されている。このため、図5B及び上記の関連する説明を参照すると、単一の筋肉を刺激する方法は、特に、システム20(図1)を用いてユーザ90が単一の嚥下筋肉の刺激により提供される舌骨・喉頭器官系64の持ち上げ及び(又は)前方への動きと組み合わせて十分な程度、UES76を自動的に引き伸ばすことができることを特徴とする幾つかの実施の形態において特に有益である。幾つかの実施の形態において、UESの十分な自律的な引き伸ばし、動き及び(又は)開放する力の存在は、以下に説明するように、センサアレー28を使用して決定される(図1)。
【0058】
図5A及び図5Bを参照すると、幾つかの実施の形態において、システム20(図1)は、これらの特別に説明したものの1つ以上のような、複数の嚥下筋肉54を使用してユーザの嚥下の1つ以上の要素を刺激し得るようにされている。システム20は、複数の嚥下筋肉54を使用して協力筋の動きを生じさせるすなわち別言すれば、相乗的な喉頭部の持ち上がり及び上食道括約筋の開放を生じさせることができる。発明者ルドローその他の者に対して発行され、参考としてその内容を引用し本明細書に含めた、「上気道及び飲み込み筋肉グループの筋肉内刺激方法及び装置」という名称の国際出願国際公開PCT App.Pub.WO2004/028433号明細書(2004年4月8日公開)には、相乗的な咽頭部の持ち上がり及びUESの開放を生じさせる幾つかのシステム及び方法が記載されておいる。
【0059】
幾つかの実施の形態において、システム20は、ユーザ90の顎二腹筋の前腹及び舌骨舌筋の少なくとも1つに加えて、顎舌骨、オトガイ舌骨及び甲状舌骨を含む嚥下筋肉54が標的とするグループを更に刺激し得るようにされている。顎二腹筋及び舌骨舌筋の前腹の一方又は双方に加えて、顎舌骨、オトガイ舌骨及び甲状舌骨を刺激することにより、システム20は、何らのその他の人工的な介入無しにて、標的としたグループにより完全な嚥下を人工的に誘発させることができると考えられる。
筋肉の起動パターン及び刺激パターン
図7を参照すると、幾つかの筋肉の起動パターンが示されている。特に、嚥下する間、筋肉の起動に関する幾つかのEMG研究に従って、一連の連続的な重なり合うパターン上にて自然の筋肉の起動が行われる。図7は、その内容を参考として引用し本明細書に含めた、19J.神経生理学(NEUROPHYSILOGY)44−60(1956)における、R.W.ドーティ(Doty)及びJ.F.ボスマ(Bosma)による、反射性嚥下の筋電図解析(An electromyographic analysis of reflex deglutition)に記載されたように、嚥下する間、猿、猫及び犬の各々の口、咽頭、喉頭の、領域内の筋肉の起動パターンのEMG測定値を示すものである。
【0060】
筋肉の起動パターンの「前側系」は、顎舌骨の起動パターン150、オトガイ舌骨の起動パターン152、後部内舌筋の起動パターン154、口蓋咽頭の起動パターン156、及び上咽頭収縮筋の起動パターン158を含む。また、口蓋舌筋、茎突舌筋及び茎突舌骨筋(図示せず)の起動パターンも「前側複合体」の一部として含められている。前側系の起動パターンは、嚥下を開始させ、約250ミリ秒から約500ミリ秒の範囲における同時的な増大した筋肉の活動を示す。
【0061】
その他の遅れた筋肉の起動パターンは、甲状舌骨筋の起動パターン160、甲状披裂軟骨の起動パターン162、中咽頭収縮筋の起動パターン164、輪状甲状の起動パターン166、下咽頭収縮筋の起動パターン168、及び隔膜の起動パターン170を含む、向上した筋肉の活動の開始が阻止される状態を示す。事実上、下咽頭収縮筋の起動パターン168は、前側複合体の向上した筋肉の活性がほぼ終了する迄、伸びた筋肉の起動が示されている。前側複合体及び遅れた起動パターンの幾つかは、基準値の起動、減少した過渡的起動、増大する起動のランプ及び(又は)減少する起動のランプのような特徴を示す。例えば、顎舌骨の起動パターン150は、基準値の起動セグメント180a、180b、減少した過渡的起動セグメント182a、182b、増大するランプセグメント184、減少する起動ランプ186、増大した起動セグメント188を示す。
【0062】
幾つかの実施の形態において、1つ又は複数の刺激プログラムは、所望に応じて前側筋肉系の起動、その他の嚥下筋肉に対する遅れた起動パターンを含む、上述したもののような、起動パターンに従って決定され又は設定される。嚥下筋肉54に対する1つ以上の起動パターンを得るため、平均化した自然の嚥下筋肉の刺激パターンが選択随意的に、健常な嚥下障害無しの被験者のグループのような試験グループから決定される。次に、刺激プログラムは、嚥下筋肉の刺激を始め又は駆動し、平均化した自然の嚥下筋肉の起動パターンを開始する。幾つかの実施の形態において、特定の個人に対する個々の自然の嚥下筋肉の刺激パターンを測定し又は計算して特注的な起動パターンを決定する。次に、幾つかの実施の形態において、刺激プログラムは、嚥下筋肉の刺激を始め又は駆動して特注的なパターンにする。その他の実施の形態において、理論的な自然の嚥下筋肉の刺激パターンが、経験的データ、定量的観察、ユーザフィードバック、色々な付与された刺激パターンを有する実際のボーラスの嚥下の測定から且つ(又は)その他の手段を介して得られる。かかる理論的及び(又は)反復的な計算技術は、ユーザ90が嚥下障害患者であり、また、ユーザ90から直接、適正な自然の嚥下刺激パターンを測定できないとき、特に有益である。
【0063】
更に、例えば、液体の嚥下、固体の嚥下及び(又は)ユーザの分泌物の嚥下のような、特定種類の嚥下が選択随意的に測定され又はモデル化される。少なくともこの態様にて、特殊な液体又は固体の嚥下プログラム、ユーザの分泌維持プログラムは、又は例えば、ユーザ90が傾斜した位置、高い高度にあり、水中にあり及びその他の場合のようなとき、身体の位置又は環境に従った嚥下の変化でさえ、ユーザ90又は試験グループはかかるボーラスを飲み込むとき且つ(又は)上述した状態にあるとき、嚥下筋肉の起動を測定し又はモデル化することにより、選択随意的に特定される。
【0064】
図1及び図7間を参照し、また、幾つかの実施の形態において、システム20は、1つ以上の刺激プログラムを使用して複数の嚥下筋肉54を刺激し自然の嚥下筋肉の起動パターンを模倣する。例えば、幾つかの実施の形態は、信号発生器24を使用して電極アレー26が連続的で且つ重なり合う電気パルス列のグループにより嚥下筋肉54を刺激し、図7に示したもののような連続的な重なり合う筋肉起動のパターンと同様に、嚥下筋肉54を起動させる工程を含む。幾つかの実施の形態において、連続的で且つ重なり合う電気パルス列のグループは、少なくとも1つの非対称の二相性波形を含む。
【0065】
このように、幾つかの実施の形態において、刺激電気パルス列自体が筋肉の起動パターンを模倣し又は筋肉の起動パターンと多少同様の振幅及びタイミングを有する。その他の実施の形態において、システム20により供給された電気パルスが連続的で且つ重なり合うパルスとして嚥下筋肉54(図5A)に供給されるかどうかを問わず、電極アレー26により供給された刺激エネルギパターンは、複数の嚥下筋肉54の形成される起動パターンが所望の組みの起動パターンを模倣し又はこのパターンと同様であるように構成される。更に、上述した筋肉の起動パターンと同様に、システム20は、選択的に、基準値セグメント、減少した過渡的セグメント、増大するランプ、減少するランプ及び(又は)その他、相応する筋肉の起動パターンの特徴又はその他を模倣する特徴のような1つ以上の刺激パターンの特徴を規定する1つ以上の電気パルスを供給する。
【0066】
幾つかの実施の形態において、基準値セグメントは、刺激パターンに含められ、又は基準値の起動セグメントは、さもなければ、特定の嚥下筋肉54と関係させた嚥下の1つの要素をトリガーする前に、筋肉の張力を調節するようシミュレートされる。幾つかの実施の形態において、刺激プログラムにおける基準値セグメントは、選択随意的に、自動的なユーザの刺激を介して部分的に起動させた嚥下筋肉組織を起動させ且つ、システム20を介して部分的に起動した筋肉組織を人工的に起動させることの少なくとも一方を行う前に、ユーザ90の嚥下筋肉組織を部分的に起動された状態に置く作用を果たす。図7にて示したように、嚥下筋肉54の多くは、完全な筋肉の起動前の基準値活性を示す。基準値刺激セグメントを嚥下筋肉に対する刺激プログラムパターン内に組み込むことは、幾つかの役割を果たすことができ、この役割は、例えば、嚥下の準備として筋肉の緩み及び舌骨咽頭位置を調節し且つ(又は)ユーザ90の中枢神経系に対しユーザの固有受容性で且つ触覚的なフィードバックを提供することを含む。
【0067】
図7は、多くの嚥下筋肉54(図5A)は完全な筋肉の起動の前及び(又は)後、減少した過渡的活性を示すことも証明する。幾つかの実施の形態において、減少した過渡的セグメントは、また、刺激プログラムパターンに存在し、又は、減少した過渡的起動は、その他の点にてシミュレートされる。幾つかの実施の形態において、減少した過渡的起動は、上述したように、基準値起動の活性を阻止する作用を果たし、かかる阻止は、1つ以上の嚥下筋肉54を完全に起動させる直前及び(又は)その後に行われる。
人工的な嚥下刺激によるユーザのフィードバック及び嚥下タイミング
図1及び図5を参照すると、幾つかの実施の形態において、ユーザのフィードバックは、システム20により提供される人工的な刺激によりユーザ90の時間自律的な嚥下努力を助ける。特に、幾つかの実施の形態は、ユーザ90が自律的に、ユーザのフィードバックに応答して嚥下に要求される動きの幾つかを提供し、システム20は、また、所望に応じて吸入を防止するのを助けるべく残る嚥下の動きを刺激する。例えば、ユーザ90には、選択的に、ユーザが嚥下する前、上述の基準値信号のような、しきい値以下の基準値信号が付与され、この信号は、固有受容性のユーザのフィードバックを提供する。一方、システム20による基準値信号の開始と刺激信号の開始との間の所望のタイミング又は遅れがあるとき、システム20による嚥下筋肉組織の人工的な刺激は、ユーザのフィードバックと調和される。更に、又はこれと代替的に、ユーザのフィードバックは、選択的に、ユーザ90に対し飲み込む方法を「再教育」するのを助ける作用をも果たし、ユーザのフィードバックが治療プログラムの一部であるようにする。
【0068】
幾つかの実施の形態において、ユーザのフィードバックは、舌骨・喉頭器官系64及び(又は)咽頭Pと関係させた感覚粘膜のようなユーザ90の口及び喉の少なくとも一方の感覚粘膜(図示せず)を刺激することにより更に又は追加的に提供され、ユーザ90に対し触覚的、感覚的フィードバックを提供する。特に、電極アレー26の1つ以上の電極は、例えば、舌骨・喉頭器官系64又は咽頭Pの感覚粘膜と刺激連通する状態に置かれる。人工的な嚥下刺激の間、システム20は、感覚粘膜を刺激して、所望に応じて触覚的なユーザのフィードバックを提供する。嚥下構成要素50の任意の感覚粘膜はユーザのフィードバックを提供するよう刺激することができると考えられることも理解すべきである。また、上記にて説明したように、その他の実施の形態は、代替的に又は追加的に、電極アレー26と共に、しきい値以下、基準値又はその他の低レベルの筋肉刺激信号を使用することを含み、固有受容性のフィードバックを提供する。幾つかの実施の形態において、感覚的フィードバックは、1つ以上の電極を1つ以上の神経52と直接刺激連通する状態に置くことにより提供される。
神経を介しての人工的な嚥下筋肉の刺激
上記にて言及したように、システム20は、電極アレー26の接点を嚥下筋肉内に又はその上に置くことにより刺激エネルギを選択随意的に1つ以上の嚥下筋肉54に送出し得るようにされているが、幾つかの実施の形態は、また、図1、図5A及び図8を参照しつつ説明するように、1つ以上の嚥下筋肉54を神経52を介して刺激することを含む。例えば、色々な刺激プログラム及び(又は)上述した筋肉起動パターンは、電極アレー26にて神経52を刺激し、又は例えば、嚥下筋肉54にて(筋外膜電極)又はその内部(筋肉内電極)に植え込んだ電極を使用して嚥下筋肉54を刺激することにより嚥下筋肉組織の刺激を介して選随意的に送出される。このことに留意して、神経52を介して人工的に嚥下筋肉を刺激することを含む幾つかの実施の形態について以下に説明する。
【0069】
図8を特に参照すると、第一及び第二の神経52a、52bと刺激連通する状態に置かれた電極アレー26の概略図が示されている。参考のため、図8は、上述した色々な嚥下構成要素50を示し、また、ユーザ90の歯200及び舌210の概略図も示す。幾つかの実施の形態において、電極アレー26の第一の電極26aは、例えば、上述した神経カフ電極40(図3)の実施の形態と実質的に同様の神経を刺激し得るようにされている。第二の電極26bは、同様の構成とされており、また、選択随意的に、神経カフ電極40の実質的に同様の神経カフ電極である。参考のため、第一及び第二の神経52a、52bの一方又は双方は、選択的に、感覚的及び(又は)運動機能を提供し、嚥下筋肉の応答は、感覚的刺激又は運動機能を刺激する結果として行われる。
【0070】
図1及び図5を更に参照すると、幾つかの実施の形態において、システム20は、1つ以上の嚥下筋肉54を起動させて1つ以上の嚥下段階を助けるべく神経52の神経束を選択的に刺激し得るようにされている。筋肉の選択的な刺激及び許容可能な電極型式の説明については、例えば、12(2)IEEE神経系リハビリエンジニアリングに関するトランザクション(TRANSACTIONS ON NEURAL SYS.REHAB.ENG’G)251−257(2004)における、M.D.テーラー(Tarler)及びJ.T.モーティマー(Mortimer)による、4接点神経−カフ電極を使用する4つの動作神経束の電気的及び独立的な作動(Elective and independent activation of four motor fascicles using a four contact nerve−cuff electrode)、及びIEEE生物医学エンジニアリングに関するトランザクション(TRANSACTIONS ON BIOMEDICAL ENG’G)1−9(1997)におけるW.M.グリル(Grill)及びJ.T.モーティマーによる「過渡的脱分極による電流−距離関係の反転(Inversion of the current−distance relationship by transient depolarzation)」、発明者テスターマン(Testerman)らによる1994年9月6日付けで発行された「カフ電極」という名称の米国特許第5,344,438号明細書、発明者グリル(Grill)らによる2005年6月14日付けで発行された「選択的な生理学的応答を実現するため陰部神経又はその枝内部、その上又はその周囲にて要素を選択的に刺激するシステム及び方法(Systems and Methods for Selectively Stimulating Components in,on,or near the Pudendal Nerve or Its Branches to Achieve Selective Physiologic Responses」という名称の米国特許第6,907,293号明細書を参照されたい。参考としてこれら各々の内容は、本明細書に含められている。一般的な用語にて、選択的な刺激は、1つ以上の神経52の非選択的な刺激の結果、不適切なタイミングとなり又はその他の飲み込み段階に干渉することとなる場合に有益である。例えば、選択的な神経束刺激無しにて舌下神経を刺激する結果、さもなければ、飲み込みの口内段階と干渉することになるであろう茎突舌筋及び舌の内在筋が早期に起動されることになる。
【0071】
しかし、幾つかの実施の形態において、第一及び第二の電極26a、26bの各々は、神経を選択的に刺激することを許容し得るようにされており且つ、神経52の1つ、従って、嚥下筋肉54の1つ以上と刺激連通する状態に配置される。幾つかの実施の形態において、第一の電極26aは、例えば、舌下神経である第一の神経52aの回りに配設される。一方、第二の電極26bは、例えば、顎舌骨筋神経である第二の神経52bの回りに配設される。特に、第一の電極26aは、第一の神経52aの神経束60に対し刺激エネルギを送出し、オトガイ舌骨、舌骨舌筋、甲状舌骨、肩甲舌骨、胸骨甲状腺、胸骨舌骨、オトガイ舌筋及び茎突舌筋の1つ以上を刺激するすなわち別言すれば、起動させるよう第一の神経52a上に配置される。一方、第二の電極26bは、第二の神経52aの神経束62に刺激エネルギを送出し、例えば、顎舌骨筋及び顎二腹筋の1つ以上を刺激するすなわち別言すれば、起動させるよう第二の神経52b上に配置される。特に、幾つかの実施の形態は、第一の神経52aの神経束を選択的に刺激することにより舌骨舌筋、オトガイ舌筋及び甲状舌骨筋の1つ以上を選択的に刺激状態にて起動し、また、第二の神経52bの神経束を選択的に刺激することにより1つ以上の顎舌骨筋及び顎二腹筋の前腹を選択的に刺激することを含む。
【0072】
両側方刺激が望まれる幾つかの実施の形態において、第三及び第四の電極26c、26dは、例えば、第一及び第二の神経52a、52bと対向して第二の舌下神経及び顎舌骨筋神経と連通する状態にてユーザ90の反対側に配置される。第三及び第四の電極26c、26dは、形態及び作用の点にて、第一及び第二の電極26a、26bと選択的に実質的に同様であり、このため、更なる説明は省かれている。
【0073】
しかし、選択的な刺激が望まれる場合、コントローラ22は、第一の神経52aの神経束60及び(又は)第二の神経52bの神経束62のような、神経52の1つ以上の神経束を電極アレー26にて選択的に刺激すべく信号発生器24を作動させ得るようにされている。幾つかの実施の形態は、第一の神経52aの第一の神経束60aを選択的に刺激し、また、第一の神経52aの第二の神経束60bを選択的に刺激し、第一の神経52aの第三の神経束60cを選択的に刺激することを含み、この場合、第一、第二及び第三の神経束60a−60cの各々は、その他以外の嚥下筋肉の起動を制御する。同様に、実施の形態は、第二の神経52bの第一の神経束62aを選択的に刺激し、また、第二の神経52bの第二の神経束62bを選択的に刺激することを含み、第一の神経束62aは、第二の神経束62b以外の嚥下筋肉等の起動を制御し、以後も同様である。
【0074】
選択的な神経束の刺激を実現するため、幾つかの実施の形態は、第一及び(又は)第二の電極26a、26bを使用してしきい値以下、方形電流パルス又は電流ランプを送出して第一及び(又は)第二の神経52a、52bの神経線維を部分的に分極させるべく信号発生器24を使用することを含む。本明細書にて使用したように、「しきい値以下」という語は、完全な筋肉の起動となる刺激量が不十分であることを示す。更に、参考として及び簡単に、神経52の刺激は全体として、強度対距離の関係により特徴付けられ、この場合、例えば、電極アレー26から送出された電流パルスのような、刺激エネルギ源に近い神経束は、最初に且つ(又は)より大きい程度、刺激される。しきい値以下、方形電流パルス又は傾斜を使用することにより、強度対距離の関係は、選択随意的に逆とし、神経束は、相応する神経を部分的に分極することにより選択的に刺激することができる。換言すれば、システム20は、より近い神経束グループよりも刺激電極から遠方の神経束又は神経束グループを選択的に、また、より近い神経束グループの前に、神経を分極することにより、刺激するような構成とすることができる。
【0075】
更に又はこれと代替的に、上述した強度対距離の関係は、電極接点を1つ以上の神経52上の色々な位置に又はその神経の回りに配置することにより、幾つかの実施の形態にて利点を得ることができる。例えば、100μsの方形電流パルスのような、標準的な電流パルスを1つ以上の神経52上の特定の位置まで送出することにより、特定の接点に最も近い神経束は、最初に又は1つ以上の嚥下筋肉54が筋肉起動される結果となるのに十分な程度に刺激される。このように、刺激すべき神経束グループにより近接した神経の回りの色々な位置に接点を配置することによっても選択性は選択随意的に実現される。
【0076】
神経束の選択的な刺激を実現する、更に別の非限定的な手段として、電流操縦技術が選択随意的に採用される。幾つかの実施の形態において、第一及び第二の電極26a、26bは、上述した神経カフ電極40(図3)の実施の形態と実質的に同様であり、幾つかの実施の形態にて双極接点とすることが考えられるが、第一及び第二の電極26a、26bの各々は、例えば、電極当たり4つの単極接点のような、半径方向に配置された複数の単極接点を含む。信号発生器24は、多数のチャネル上にて作用し半径方向に配置された接点の各々に対し異なる量の刺激エネルギを送出する構成とされている。特に、しきい値以下の操縦電流は、異なる振幅にて、例えば、第一の神経52aのような神経の回りに印加されて、所望に応じて神経に印加される電界の形状を決める。しきい値以下の操縦電流は、必ずしも神経を刺激することにはならない。特に、幾つかの実施の形態において、操縦電流は、神経52の1つ、例えば、第一の神経52aの1つの回りに印加されて、第一の電極26a又は別の電極にて発生された別の刺激パルス又は一連のパルスを所望の神経の起動領域に導かれる。換言すれば、操縦電流は、追加的な1つ又は複数の刺激電流パルスを選んだ神経束又は神経束グループに導くため使用される。
【0077】
更に、刺激パターン波形は、神経52の神経束を選択的に刺激するための能力を向上させるよう選択随意的に選ばれる。例えば、短時間の電流パルスは、異なる直径の神経線維間の増大する刺激しきい値の差として特定される。神経束の選択的な励起/刺激を実現する幾つかの機構について上記に説明したが、神経/神経束の電気的ブロックを含む、その他の機構とすることも考えられることを理解すべきである。
【0078】
幾つかのその他の実施の形態において、第一及び第二の電極26a、26bは、所望の嚥下筋肉組織を起動させるため、神経束を選択的に刺激することが要求されない位置にて神経52に沿って配置される。
【0079】
特に、第一及び第二の電極26a、26bは、選択随意的に、神経幹ではなく、神経枝に沿って、例えば、1つ以上の嚥下筋肉54に十分に近接して、舌下神経の周縁枝に沿って配置され、神経束を選択的に刺激することなく、所望の組の嚥下筋肉54の起動の所望のタイミングが実現されるようにする。このように、電極アレー26は、神経束を選択的に刺激することなく嚥下筋肉組織の刺激を実行するため、複数の神経に沿って且つこの複数の神経と刺激連通する状態に配設された複数の電極を更に又は代替的に含む。
システムのフィードバック
図1及び図6を参照し且つ、センサアレー28を再度参照すると、幾つかの実施の形態において、センサアレー28は、システムフィードバックと共に作用するシステム20の手段を提供する。例えば、上述した刺激プログラムは、コントローラ22が受け取ったセンサの入力情報に従って選択随意的に開始され、変更しすなわち別言すれば適応し得るようにされている。色々なセンサ及びそれらの使用について以下に説明する。例えば、幾つかの実施の形態において、センサアレー28は、EMGフィードバックをシステム20に提供し得るよう、例えば、皮下的に且つ(又は)筋肉内の構成とされ且つ配置されたセンサを含む。かかるEMGフィードバックは、EMGフィードバックを介して測定した所定の最適な筋肉起動パターンとなるように刺激プログラムを駆動すべく選択随意的に使用される。
【0080】
幾つかの実施の形態において、センサアレー28は、力の情報をコントローラ22に提供する、歪み計のような1つ以上の力センサを含む。幾つかの適用例に従って、1つ以上の歪み計が1つ以上の嚥下筋肉54に装着されて、筋肉起動の色々な段階の間、力の情報を提供する。例えば、幾つかの実施の形態において、第一のセンサ28aは、歪み計であり且つ、UES76に装着されて、UES76に加えられた開放力に関する情報を提供する。かかる力の情報は、システム20により、特に、コントローラ22により選択的に使用されて、刺激プログラムを最適化するすなわち、別言すれば、システムのフィードバック情報を提供して嚥下筋肉の刺激を変更する。
【0081】
更にその他の実施の形態において、センサアレー28は、加速度、速度又は位置のような情報を提供する加速度計のような1つ以上の位置センサを含む。幾つかの実施の形態において、第一のセンサ28aは、頭部の位置情報を提供する3軸加速度計であり、この第一のセンサは、顎、例えば、オトガイ隆起110に対して選択随意的に固定される。図5Aを更に参照すると、一方、第二のセンサ28bは、ユーザ90の舌骨・喉頭器官系64の一部分のような、1つ以上の嚥下構成要素50に対し固定された3軸加速度計である。例えば、第二のセンサ28bは、甲状軟骨のような、舌骨70又はその他の喉頭軟骨に対して選択的に固定される。幾つかの実施の形態において、第二のセンサ28bは、喉頭器官系64又はその要素の前方−後方及び先頭−尾側軸線HAP、HARに対して平行に選択随意的に向き決めされる。更に、第三のセンサ28cは、選択随意的に、植え込み型ハウジング32に対して固定された3軸加速度計である。
【0082】
幾つかの実施の形態において、ユーザ90の全体的な身体位置の情報は、センサアレー28、特に、第三のセンサ28cにより提供される。ユーザ90の胸部に対する舌骨・喉頭器官系64又はその要素の動きは、第二及び第三のセンサ28b、28cからの組み合わさった位置情報を使用して提供される。次に、舌骨・喉頭器官系64又はその一部分のような、嚥下構造体54の所望の相対的な動きに対して、システム20による嚥下刺激を最適化するため、胸部及び舌骨・喉頭器官系64の相対的な位置に関する情報を使用することができる。一方、首の曲げ情報は、顎に対して固定されたセンサ28a及び喉頭器官系64又はその一部分に対して固定された第二のセンサ28bからの組み合わさった位置情報を使用して選択随意的に提供される。このようにして、システム20は、嚥下刺激の間、首の曲がりを補償する。更に又はこれと代替的に、幾つかの実施の形態において、センサアレー28は、ユーザ90が傾斜した状態にあるかどうかに関する情報を提供し、例えば、ユーザの分泌維持プログラムを選ぶべき又はランプ位置に対する飲み込みを最適化すべきかを決定することができる。
【0083】
上述したように、位置情報を組み合わせて利用することが考えられるが、3軸加速度計のような、単一の位置センサからの組み合わされない位置情報もまた、選択随意的に、システム20による嚥下刺激を最適化するすなわち別言すれば変更すべく使用される。幾つかの実施の形態において、舌骨・喉頭器官系64が十分に持ち上げられ且つ前方に動いているかどうかに関する情報は、ユーザ90の身体の標準的な向きを取る箇所にて得られ、また、上述したように、例えば、3軸加速度計の1つのような、加速度計は、例えば、舌骨・喉頭器官系64又はその要素の前方−後方及び首側−尾側軸線HAP、HARに対して平行に向き決めされる。
【0084】
更にその他の実施の形態において、センサアレー28は、例えば、咽頭内圧力を測定するセンサのような、1つ以上の圧力センサを含む。例えば、咽頭内圧力は、有効な嚥下刺激及び(又は)人工的な応答のインジケータとして選択随意的に測定される。
【0085】
図1、図5A及び図6間を参照すると、幾つかの実施の形態において、センサアレー28は、結晶間の距離を測定するため、超音波計測及び生成する結晶を含む音波マイクロメータ(図示せず)のような、変位情報を提供する1つ以上の変位センサを代替的に又は更に含む。第一、第二及び第三のセンサ28a−28cの1つ以上は、選択随意的に、舌骨・喉頭器官系64の1つ以上の要素に装着された半導体である。幾つかの実施の形態において、センサ28a−28cは、1つ以上の嚥下筋肉54の長さに関する変位情報を提供すべく使用される。特に、色々な嚥下構造体56の変位は、かかる全体的な筋肉の長さ情報を使用して、誘導するすなわち別言すれば、推定することができる。更に、又はこれと代替的に、かかる変位センサは、上述したように、位置センサに対すると実質的に同様の仕方にて使用し、刺激プログラムを最適化するすなわち別言すれば変更する。例えば舌骨70、顎、及び(又は)甲状軟骨を含む舌骨・喉頭器官系64の相対的位置は、嚥下刺激を調節するためセンサアレー28により選択随意的に提供される。幾つかの実施の形態において、甲状腺−舌骨ギャップは、甲状舌骨筋の刺激が甲状腺−舌骨ギャップに比例的に付与された状態にて変位センサを使用して決定される。
【0086】
要するに、また、本文の説明、図面及び特許請求によって提供される理解に従い、嚥下を助けるシステム及び嚥下を助けるシステムの製造方法及び使用方法について開示し、教示し且つ提案し、かかるシステム及び方法は、吸入が減少した状態の嚥下を提供するのを助けるといったような、多様な目的を果たすことができる。少なくとも人間又はその他の動物に対して使用するため適用可能であり、また、部分的に又は完全に外部のすなわち非植え込み式システム、並びに完全に植え込んだすなわち内部システムの何れかとして使用可能である。本発明は、色々な実施の形態に関して説明したが、当該技術の当業者は、本発明の思想及び範囲から逸脱せずに、形態及び細部の点にて変更可能であることが認識されよう。例えば、本明細書にて嚥下に関係したシステム及び方法について説明したが、本発明の原理は、例えば、会話、呼吸又はその他の型式の身体の動きのような、その他の筋肉の刺激領域に適用可能であることも理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザにて多数の嚥下応答を刺激する方法において、
実質的に吸入することなく、完全な飲み込み行為の構成要素を制御すべくユーザによって支持されて、コントローラと、信号発生器と、少なくとも1つの電極を含む電極アレーとを備える、携帯型システムを提供する工程と、
電極を少なくとも1つの嚥下筋肉と刺激連通する状態にて皮下的に配置する工程と、
単一の嚥下筋肉を人工的に刺激して完全な飲み込み行為の構成要素が生じるようにする工程と、を備え、
単一の嚥下筋肉は、完全な飲み込み行為の間、電極アレーを介して直接、人工的に刺激される唯一の嚥下筋肉である、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記単一の嚥下筋肉は、神経の刺激を介して人工的に刺激される、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記電極アレーは神経カフ(cuff)電極を含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記電極アレーは自蔵電極である、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記電極アレーは筋外膜電極及び筋肉内電極から成るグループから選ばれた電極を含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
前記単一の嚥下筋肉はユーザの舌骨舌筋、顎二腹筋の後膜、茎突舌骨筋から成るグループから選ばれる、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、
ユーザは、実質的に吸入することなく、完全な飲み込み行為の人工的に刺激した構成要素と組み合わせてユーザの上食道括約筋を十分に引き延ばすことにより、自律的に、完全な飲み込み行為を完了させることができることを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
完全な飲み込み行為の構成要素が行われるようにすべく単一の筋肉を人工的に刺激する工程は、ユーザの舌骨・喉頭器官系が持ち上がるようにする工程を含む、方法。
【請求項9】
単一の嚥下筋肉を刺激するだけでユーザの嚥下を助けるシステムにおいて、
単一の嚥下筋肉を刺激し得るように皮下的に植え込み得るようにした電極アレーと、
前記電極アレーと連通して前記単一の嚥下筋肉を刺激し得るようにした信号発生器と、
前記信号発生器を作動させるコントローラであって、前記信号発生器が前記電極アレーにて単一の嚥下筋肉を直接的にのみ刺激し得るよう前記信号発生器を作動させ得るようにした前記コントローラとを備える、システム。
【請求項10】
実質的に吸入することなく、ユーザの嚥下を制御する方法において、
第一の神経に沿った第一の位置にて第一の電極アレーを皮下的に配置する工程を備え、
前記電極アレーは、少なくとも1つの電極を備え、更に、前記第一の神経は、第一の嚥下筋肉と関係付けられ、前記第一の神経の刺激によって前記第一の嚥下筋肉が動くようにし、
前記第一の神経を第一の電極アレーにて選択的に刺激し前記第一の嚥下筋肉を人工的に起動させる工程を備える、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
前記第一の神経は、第一の嚥下筋肉を制御する第一の神経束と、前記第一の嚥下筋肉と異なる第二の嚥下筋肉を制御する第二の神経束とを備え、
前記第二の神経束を第一の電極アレーにて選択的に刺激し、前記第二の嚥下筋肉を人工的に起動する工程を更に備える、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
前記第一の神経は、舌下神経であり、更に、前記第一及び第二の嚥下筋肉の各々は、ユーザのオトガイ舌骨、舌骨舌筋、甲状舌骨筋から成るグループから選ばれる、方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法において、
ユーザの嚥下の全体にわたって前記第一の神経の神経束のみが人工的に刺激される、方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法において、
前記第一の神経は、第一の嚥下筋肉の感覚的起動を介して前記第一の嚥下筋肉が人工的に起動されようにする、方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法において、
前記電極アレーは、第一の位置にて第一の神経の回りに配設された複数の半径方向に配置した接点を備え、更に、前記第一の神経束を刺激する工程は、前記第一の神経束に送出された刺激信号を操縦するため前記電極アレーを通してしきい値以下電流を提供する工程を備える、方法。
【請求項16】
請求項10に記載の方法において、
前記第一の神経束を刺激した後、前記第一の神経を部分的に脱分極する工程を更に備える、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、
前記第一の神経を部分的に脱分極する工程は、前記第一の神経をしきい値以下方形パルスにて刺激する工程を備える、方法。
【請求項18】
請求項10に記載の方法において、
顎舌骨筋、オトガイ舌骨、甲状舌骨及びユーザの顎二腹筋の前腹及び舌骨舌筋の少なくとも1つと刺激連通する状態にて前記電極アレーを皮下的に配置する工程を更に備える、方法。
【請求項19】
請求項10に記載の方法において、
前記電極アレーは、自蔵電極、筋肉内電極、筋外膜電極及び神経カフから成るグループから選択された電極を含む、方法。
【請求項20】
ユーザの嚥下を助けるシステムにおいて、
第一の嚥下筋肉を起動させる第一の神経を刺激し得るように皮下的に植え込み得るようにした電極アレーであって、少なくとも1つの電極を含む前記電極アレーと、
前記第一の神経を刺激し得るよう前記電極アレーと連通し得るようにした信号発生器と、
前記信号発生器を作動させるコントローラであって、前記信号発生器を作動させ、前記電極アレーにて前記第一の神経を刺激して前記第一の嚥下筋肉を起動させるようにした前記コントローラとを備える、システム。
【請求項21】
請求項20に記載のシステムにおいて、
前記第一の神経は、前記第一の嚥下筋肉を制御する第一の神経束と、第二の嚥下筋肉内を制御する第二の神経束とを含み、
前記コントローラは、前記電極アレーにて前記第二の神経束を選択的に更に刺激し得るようにされる、システム。
【請求項22】
請求項20に記載のシステムにおいて、
前記信号発生器及び前記電極アレーは、皮下的に植え込み得るようにした単一のユニットとして互いに収容される、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−512844(P2010−512844A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541486(P2009−541486)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/086574
【国際公開番号】WO2008/076646
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(504101304)メドトロニック・ゾーメド・インコーポレーテッド (28)
【Fターム(参考)】