説明

回収未反応塩化ビニルモノマーの圧縮方法

【課題】 回収未反応塩化ビニルモノマーの圧縮工程で圧縮機内に供給された潤滑油を循環用潤滑油として長期間循環、再利用しても、潤滑油の循環ライン等での塩化ビニルの重合を効果的に抑制し得る前記モノマーの圧縮方法を提供する。
【解決手段】 塩化ビニル系重合体の製造工程から回収された未反応塩化ビニルモノマーを圧縮機2により、該機内に供給された、重合開始剤を含有する循環用潤滑油との接触下に圧縮する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塩化ビニル系重合体の製造工程から回収された未反応塩化ビニルモノマーの圧縮方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、塩化ビニル系重合体(塩化ビニル系重合体、及び塩化ビニルと他の共重合性モノマーとの共重合体)は、重合器内で塩化ビニルモノマー、又は塩化ビニルモノマーと他の共重合性モノマーとの混合物を重合開始剤の存在下、水媒体中で懸濁重合、乳化重合などの方法で重合反応させることにより製造されている。重合終了後、重合器内からガス状の未反応塩化ビニルモノマーを回収し(上記モノマー混合物を用いた場合は、未反応共重合性モノマーは別途に回収する)、次いで重合器内から塩化ビニル系重合体を抜き出す。重合器内から抜き出された塩化ビニル系重合体は、脱水工程及び乾燥工程を経て製品化され、一方、重合器内から回収されたガス状の未反応塩化ビニルモノマー(以下、回収VCM又は回収VCMガスということもある)は精溜され、重合用の原料塩化ビニルモノマーとして再利用される。
【0003】通常、重合器内からの回収VCMガスは圧縮機に送られ、高圧ガスに圧縮された後、凝縮器に送られ、ここで冷却、液化されて粗液化回収VCMとなる。さらにこの粗液化回収VCMは水切りタンクで水を分離した後、精溜塔で精溜され、貯蔵タンク内に回収VCMとして貯蔵される。貯蔵された回収VCMはその後、重合用の原料液化VCMとして再利用される。
【0004】前記の回収VCMの圧縮工程においては、供給された回収VCMが圧縮されると、回収VCM及び得られる圧縮回収VCMの温度が上昇して重合を起こしやすくなる。そこで圧縮機の駆動部分及び摺動部分を冷却し、油滑(潤滑油で潤滑すること)すると共に、回収VCMの温度上昇を抑制するため、回収VCMの圧縮工程において圧縮機内に潤滑油を注入、供給して回収VCMと接触させることにより、回収VCM等を冷却する方法が採用されている。
【0005】この方法によれば、圧縮機より排出されるのは、圧縮回収VCMガスと潤滑油との混合物である。従って、圧縮機より排出される混合物を圧縮回収VCMガスと潤滑油とに分離する必要があるので、該混合物は気液分離器へ送られ、ここで圧縮回収VCMガスと潤滑油とに分離される。分離された圧縮回収VCMは凝縮器へ送られ、前述のように重合用の原料液化VCMとして再利用される。一方、分離された潤滑油は潤滑油タンクに送られ、上記圧縮工程において圧縮機内に注入、供給される潤滑油として再利用される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、分離された潤滑油を回収VCMの圧縮工程において圧縮機内に供給し、循環用潤滑油として長期間循環、再利用していると、1)潤滑油の循環ラインを形成する配管の内壁や配管の途中に設置されたストレーナ内部で塩化ビニル系重合体が生成、付着し、著しい場合は塩化ビニル系重合体の付着により配管内が閉塞する、2)潤滑油の循環ラインの配管途中に設置された潤滑油用冷却器の内壁に塩化ビニル系重合体が生成、付着して総括伝熱係数(U値)が低下し、循環している潤滑油の冷却効果が低下する、等の支障をもたらすため、潤滑油の循環ラインの分解、掃除を頻繁に行わなければならないという問題があった。
【0007】したがって本発明の目的は、回収未反応塩化ビニルモノマーの圧縮工程において圧縮機内に供給された潤滑油を循環用潤滑油として長期間循環、再利用しても、潤滑油の循環ライン等で塩化ビニルの重合が殆ど起こらない回収未反応塩化ビニルモノマーの圧縮方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは従来技術における上記問題について鋭意検討した結果、圧縮機内に注入、供給された潤滑油が圧縮機内に循環された後、気液分離器で回収された際、この回収された潤滑油中に重合開始剤の残さを同伴した微量の回収VCMが溶解していること、このため圧縮機内で再び回収VCMが圧縮されて高温化されると、いっそう重合し易くなること、したがってこのような回収VCMを溶解した潤滑油を循環用潤滑油として長期間循環、再利用していると、塩化ビニル系重合体が生成することを見い出した。そこで本発明者らはこの循環用潤滑油中に重合禁止剤を含有させたところ、塩化ビニルの重合が効果的に抑制され、循環用潤滑油を長期間再利用しても、ストレーナの閉塞や冷却器の総括伝熱係数の低下を効果的に抑制できることを見い出し、本発明に至った。
【0009】すなわち本発明は、塩化ビニル系重合体の製造工程から回収された未反応塩化ビニルモノマーを圧縮機により、該機内に供給された循環用潤滑油との接触下に圧縮する回収未反応塩化ビニルモノマーの圧縮方法であって、前記潤滑油が重合禁止剤を含有していることを特徴とする回収未反応塩化ビニルモノマーの圧縮方法を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明方法は、塩化ビニル系重合体の製造工程、具体的には塩化ビニル系重合体の製造で使用された重合器から回収された未反応塩化ビニルモノマーを圧縮機により圧縮する際、該機内に、重合開始剤を含有する循環用潤滑油を注入、供給し、回収未反応塩化ビニルモノマーを潤滑油と接触させながら、圧縮することにより行われる。上記潤滑油としては、圧縮機から排出される圧縮された回収未反応塩化ビニルモノマーと潤滑油との混合物から分離、回収された後、圧縮機内に循環された潤滑油を使用することが好ましい。
【0011】本発明で使用される圧縮機としては、回収VCMガスが該機内に供給される潤滑油と接触しながら圧縮される構造を有するものであれば特に制限はなく、例えば回転式スクリュー型圧縮機、回転式ルーツ型圧縮機、回転式可動翼圧縮機、遠心式ラジアル型圧縮機、遠心式ターボ型圧縮機、低圧部に回転式、高圧部に往復動式を採用した結合型圧縮機などが挙げられる。本発明ではこれらの圧縮機の中でも回転式スクリュー型圧縮機を用いることが好ましい。この回転式スクリュー型圧縮機は、歯数の異なる雄ローターと雌ローターとがケーシング内で噛み合い、大きく開いた歯の空間が回転するにつれて小さくなることにより、ローター空間にある体積を回転と共に減少させてガスを圧縮する圧縮機である。
【0012】本発明で使用される回収VCMガスは塩化ビニル系重合体の製造工程から回収されたものであれば、いかなるものでもよく、例えば塩化ビニルホモポリマー、塩化ビニルと他の共重合性モノマー[例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレン等のオレフィン;無水マレイン酸;アクリロニトリル;スチレン;塩化ビニリデン等]との共重合体の製造工程から回収されたものが挙げられる。
【0013】この回収VCMガスは通常、常温(20℃)で圧力O.01〜3kg/cm2G(ゲージ圧)の低圧乃至中圧の状態で圧縮機に供給され、圧縮される。圧縮圧力は、圧縮機の種類にもよるが、通常5〜7kg/cm2G程度である。
【0014】圧縮機内に注入、供給される潤滑油は、回収VCMガスの圧縮過程で該ガスとの接触により、回収VCMガス及び得られる圧縮回収VCMガスの温度上昇を抑制すると共に、圧縮機(ガスの圧縮部とそれを囲むケーシングとを備える)の圧縮部を潤滑し、かつ圧縮部内及び圧縮部とケーシング間を密封する作用を有する。このような潤滑油は、JIS K 2283の動粘度試験方法で測定される40℃における動粘度が60〜170mm2/sの範囲にあるものが適当である。この範囲にある潤滑油は、ISO粘度分類(JIS K 2001)のISO粘度グレードで、ISO VG 68、ISO VG 100及びISO VG 150が該当する。
【0015】圧縮機内への潤滑油の供給量は、圧縮機から排出される圧縮回収VCMガスの温度が60〜120℃の範囲になるような量が好ましい。これは、60℃未満であると、圧縮機の高圧回収VCMガス用出口配管で該VCMの液化が促進され、圧縮機への液戻り等の不都合が生じ、また120℃を超えると、潤滑油の循環ライン内での塩化ビニル系重合体の生成が促進される等の不都合が生じる恐れがあるからである。
【0016】本発明で使用される潤滑油は重合禁止剤を含有していることが必要である。この重合禁止剤としては、塩化ビニルモノマーに対して重合禁止作用のあるものが用いられる。また潤滑油に添加して用いるので、潤滑油との相溶性、分離性の点から油溶性の重合禁止剤を用いるのが好ましい。
【0017】油溶性重合禁止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール(3−BHA)、2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール(2−BHA)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(MBMBP)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(MBEBP)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(BBMBP)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(SBMBP)、スチレン化フェノール、スチレン化 p−クレゾール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス〔メチレン−3−(3',5'−ジ−1−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、オクタデシル 3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2'−ジヒドロキシ−3,3'−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5'−ジメチルジフェニルメタン、4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3',5'−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイル)イソシアヌレート、ビス〔2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル〕スルフィド、1−オキシ−3−メチル−イソプロピルベンゼン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、アルキル化ビスフェノール、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、ポリブチル化ビスフェノールA、ビスフェノールA、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、2,6−ビス(2'−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5'−メチル−ベンジル)−4−メチルフェノール、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テレフタロイルージ(2,6−ジメチル−4−t−ブチル−3−ヒドロキシベンジルスルフィド)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルーα−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、トルエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ヘキサメチレングリコール−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリン)−2,4−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシナミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−リン酸ジエチルエステル、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリス〔β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル−オキシエチル〕イソシアヌレート、2,4,6−トリブチルフェノール、ビス〔3,3−ビス(4'−ヒドロキシ−3'−t−ブチルフェニル)−ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンジル)サルファイド等のフェノール系禁止剤;N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N'−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物、ジアリール−p−フェニレンジアミン等のアミン系禁止剤;ジラウリル・チオジプロピオネート、ジステアリル・チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダノール等の硫黄系禁止剤;ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系禁止剤などが例示されるが、これらに限定されるものではない。これらの重合禁止剤の中では、トルエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビスフェノールA、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール(3−BHA)、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンおよびオクタデシル 3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート)が好ましい。
【0018】潤滑油中の重合禁止剤の含有量は1〜50,OOOppmの範囲が好ましく、さらには100〜10,000ppmの範囲が好ましい。この含有量が50,000ppmを超えると、潤滑油の流動性、潤滑性を低下させる上、コストアップを招き経済的に不利になることがあり、また1ppm未満であると、塩化ビニル系重合体の生成を十分に抑止することができなくなり、潤滑油の循環ライン配管内壁などへの塩化ビニル系重合体の付着を十分に防止する効果が得られないことがある。
【0019】次に本発明方法の好ましい一例を図1に従って詳細に説明する。図1は、本発明の圧縮方法の一例の工程図である。図中、1は回収VCMの圧縮機への供給ライン配管、2は圧縮機、3は圧縮回収VCMガスと潤滑油との混合物の気液分離器への供給ライン配管、4は前記混合物から圧縮回収VCMガスと潤滑油とを分離すると共に、分離された潤滑油の貯蔵タンクを兼用する気液分離器、5は圧縮回収VCMの凝縮器への供給ライン配管、6は潤滑油用冷却器への供給ライン配管、7は潤滑油用冷却器、8は潤滑油ストレーナ、9は送液ポンプ、10は潤滑油の圧縮機への供給ライン配管である。
【0020】塩化ビニル系重合体の製造工程で使用された重合器(図示せず)からの回収VCMは、前述のような低圧乃至中圧の状態で供給配管1を通って圧縮機2、例えば回転式スクリュー型圧縮機内へ供給される。該圧縮機2内に供給された低圧乃至中圧の回収VCMは、該機内に設けられた雄、雌一対のローターの空間内に導入され、圧力5〜7kg/cm2Gの高圧ガスに圧縮される。
【0021】一方、この圧縮過程で循環用潤滑油が供給ライン配管10を通って圧縮機2内の上記雄、雌一対のローター空間内に注入、供給され、こうして圧縮機2内の回収VCMは該潤滑油と接触しながら圧縮される。潤滑油の供給及び接触により、得られる圧縮回収VCMガスの温度は60〜120℃の範囲に抑制され、同時にローターの潤滑、並びにローター間及びローターとケーシング間の密封が行われる。
【0022】圧縮工程後、圧縮機2から圧縮回収VCMガスと潤滑油との混合物が排出され、該混合物は、供給ライン配管3を通って気液分離器4ヘ送られる。気液分離器4の上部で該混合物は圧縮回収VCMガスと潤滑油とに分離される。こうして分離された圧縮回収VCMガスは供給ライン配管5を通って凝縮器(図示せず)へ送られ、ここで冷却、液化されて粗液化回収VCMとなる。一方、気液分離器4で分離された潤滑油は気液分離器4の下部に集積される。
【0023】次に気液分離器4下部に集積された潤滑油は供給ライン配管6を通って冷却器7内に送られ、ここで潤滑油は通常20〜50℃の範囲の温度に冷却される。さらに冷却器7で冷却された潤滑油は、ポンプ9により潤滑油ストレーナ8を経て供給ライン配管10を通って圧縮機2内へ循環、供給される。
【0024】
【実施例】以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。実施例1〜4、比較例1図1に示すように、供給ライン配管1、3、6又は10との接続により配列された圧縮機2、気液分離器4、潤滑油用冷却器7、潤滑油ストレーナ8及びポンプ9を用いて、潤滑油の循環工程を含む回収VCMガスの圧縮工程を行った。圧縮機2としては、雄、雌一対のローターを有する回転式スクリュー型圧縮機(容量:1,000Nm3/h、吸入圧力:0.02kg/cm2G、吐出圧力:6kg/cm2G、電動機出力:160KW)を、冷却器7としては、横型シェル・チューブ式凝縮器(シェル側流体:潤滑油、最大伝熱能力:800kca1/m2・h・℃)を、また回収VCMとしては、常温で平均圧力O.02kg/cm2Gの低圧回収VCMを用いた。
【0025】上記の回収VCMの圧縮を行う前に、予め圧縮機2内、気液分離器4内、冷却器7のチューブ内、ストレーナ8内、ポンプ9内、及び潤滑油の循環ラインを形成する供給ライン配管3、6、10内の汚れを十分に取って掃除した。表1に記載した種類の潤滑油A〜E(E以外は重合開始剤を含有)の各々を供給ライン配管10に注入、供給し、ここからポンプ9により上記潤滑油を圧縮機2内に供給した。同時に、圧縮機2内に回収VCMを平均約1,000Nm3/hで供給して圧縮し、圧縮機2から圧縮回収VCMと上記潤滑油との混合物を排出させた。得られた混合物を供給ライン配管3を通って気液分離器4に導入し、該混合物から圧縮回収VCMガスと潤滑油とを分離し、平均圧力6kg/cm2G、平均温度80℃の圧縮回収VCMを得た。
【0026】潤滑油の循環工程を含む回収VCMの上記圧縮工程を連続4ヶ月間運転した。その結果、圧縮機2内に循環、供給される潤滑油の温度は40℃に維持され、また運転開始時の冷却器7における総括伝熱係数は700kcal/m2・h・℃であった。上記連続運転期間中のストレーナの閉塞回数、及び上記連続運転の停止直前の冷却器における総括伝熱係数を表1に示した。
【0027】
【表1】


【0028】(注)
A:潤滑油タフニーオイル100(出光興産社製、ISO粘度グレード:ISO VG100)500kgに対し、重合禁止剤として3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエンを500gを添加したもの。
B:前記と同じ潤滑油(タフニーオイル100)500kgに対し、重合禁止剤として3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエンを25gを添加したもの。
C:前記と同じ潤滑油500kgに対し、重合禁止剤としてビスフェノールAを500gを添加したもの。
D:前記と同じ潤滑油25kgに対し、重合禁止剤としてビスフェノールAを100g添加したもの。
E:前記と同じ潤滑油500kgのみ。
【0029】
【発明の効果】本発明方法によれば、回収未反応塩化ビニルモノマーの圧縮工程で圧縮機内に供給された潤滑油は重合禁止剤を含むので、該潤滑油を循環用潤滑油として長期間循環、再利用しても、潤滑油の循環ライン等で塩化ビニルの重合が殆ど起こらず、その結果、塩化ビニル重合体によるストレーナの閉塞や冷却器の総括伝熱係数の低下が効果的に抑制される。このため潤滑油の循環ラインの分解、掃除の回数を従来よりも著しく減少させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧縮方法の一例の工程図。
【符号の説明】
1‥‥回収未反応塩化ビニルモノマーの供給ライン配管
2‥‥圧縮機
3、6、10‥‥潤滑油の循環ライン
4‥‥気液分離器兼潤滑油貯蔵タンク
7‥‥潤滑油用冷却器
8‥‥潤滑油ストレーナ
9‥‥送液ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 塩化ビニル系重合体の製造工程から回収された未反応塩化ビニルモノマーを圧縮機により、該機内に供給された循環用潤滑油との接触下に圧縮する回収未反応塩化ビニルモノマーの圧縮方法であって、前記潤滑油が重合禁止剤を含有していることを特徴とする回収未反応塩化ビニルモノマーの圧縮方法。
【請求項2】 前記潤滑油が、圧縮機から排出される圧縮された回収未反応塩化ビニルモノマーと潤滑油との混合物から分離、回収された後、圧縮機内に循環されることを特徴とする請求項1に記載の回収未反応塩化ビニルモノマーの圧縮方法。

【図1】
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