説明

回路基板および電線

【課題】簡単な構造で簡素な製造方法によって製造される電磁波吸収機能を有する回路基板および電線を提供する。
【解決手段】回路基板10は、薄い板状の基板1と、基板1の両面にそれぞれ設けられた電磁波吸収層2a、2bと、電磁波吸収層2a、2bの面に直接印刷によって形成された回路配線3a、3bと、を有する。このとき、電磁波吸収層2a、2bは磁性粉体がバインダーに密に混合され、シート状に形成されたもので、回路配線3a、3bは導電性インクが印刷されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回路基板および電線、特に、電磁波吸収能力を具備する回路基板および電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のモールド樹脂封止基板は、有機基板上に設けられて回路電極パターンと、回路電極パターン上に実装された半導体チップと、半導体チップに金線によって接続された端子と、端子の一部および半導体チップを絶縁封止する封止材と、封止材の上面に設けられた電磁波吸収シートと、を有していた。
そして、かかるモールド樹脂封止基板は上方向への電磁波を吸収するものであることから、側面からの電磁波の放射に対する吸収効果を高める発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−252292号公報(第4−5頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された発明は、半導体チップを包囲する導電性の遮蔽壁部を周囲に配置するものであって、側面からの電磁波の放射に対する吸収効果を高めることができるものであるものの、製造方法が煩雑であるという問題があった。
すなわち、かかる発明は、銅合金板にレジストパターンを形成し、該レジストパターンをマスクにして導電部材をメッキして回路電極パターンを形成した後、レジストを除去する。そして、回路電極パターンを覆うように銅合金板に絶縁性の担持部材を設置し、その後、担持部材によって裏打ちされた状態で銅合金板を除去する。
【0005】
本発明は、上記問題に応えるものであって、簡単な構造で簡素な製造方法によって製造される電磁波吸収機能を有する回路基板、および電磁波吸収機能を有する電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の回路基板は、基板上に設けられ、磁性粉体とバインダーとが密に混合されてシート状に形成された電磁波吸収層と、該電磁波吸収層の面に直接印刷によって形成された回路配線と、を有することを特徴とする。
(2)また、前記回路配線に搭載された半導体チップと、前記回路配線および前記半導体チップを絶縁封止する封止材と、を有することを特徴とする。
(3)また、前記回路配線に搭載された半導体チップと、前記回路配線および前記半導体チップを絶縁封止する前記電磁波吸収層と、を有することを特徴とする板。
(4)また、電磁波吸収層の周囲に、磁性粉体とバインダーとが密に混合されて環状に形成された電磁波吸収壁が形成され、該電磁波吸収壁に導電性インクが印刷されていることを特徴とする。
(5)さらに、本発明の電線は、導電性を有する線材と、該線材を被覆する電磁波吸収機能を有する被覆材と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る回路基板は、電磁波吸収層の面に印刷によって形成された回路配線を有するから、構造が簡単で、製造が容易である。
また、電磁波吸収層の周囲に電磁波吸収壁が形成されているから、側面からの電磁波の放射に対する吸収効果を有する。このとき、電磁波吸収壁の面に印刷によって導電性の壁面を形成すれば、側方に対する電磁波吸収機能が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る回路基板を模式的に示す断面図。
【図2】本発明の実施の形態2に係る回路基板を模式的に示す断面図。
【図3】本発明の実施の形態3に係る電線を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る回路基板を模式的に示す断面図である。
図1において、回路基板10は、薄い板状の基板1と、基板1の両面にそれぞれ設けられた電磁波吸収層2a、2bと、電磁波吸収層2a、2bの面に直接印刷によって形成された回路配線3a、3bと、を有する。
このとき、電磁波吸収層2a、2bは磁性粉体がバインダーに密に混合され、シート状に形成されたものである。また、回路配線3a、3bは導電性インクが印刷されたものである。
【0010】
したがって、電磁波吸収層2a、2bに入射した電磁波は電磁波吸収層2a、2bにおいて吸収される。また、基板1は電磁波吸収層2a、2bを設けたことによって剛性が高まるから、その分、薄くすることが可能になる。
すなわち、電磁波の放射に対する吸収効果を有しながら、構造が簡単で、印刷によって容易に製造することができる回路基板が得られる。
なお、以上は、基板1の両面にそれぞれ電磁波吸収層2a、2bが設けられているが、本発明はこれに限定するものではなく、基板1の片面に電磁波吸収層2aまたは電磁波吸収層2bが設けられてもよい。
【0011】
[実施の形態2]
図2は、本発明の実施の形態2に係る回路基板を模式的に示す断面図である。
図2の(a)において、回路基板20は、薄い板状の基板1と、基板1の片面に設けられた電磁波吸収層2と、電磁波吸収層2の面に直接印刷によって形成された回路配線3と、回路配線3に搭載された半導体チップ4と、回路配線3および半導体チップ4を絶縁封止する封止材5と、を有している。なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0012】
さらに、電磁波吸収層2の周囲に、環状に形成された電磁波吸収壁6が形成され、電磁波吸収壁6に導電性インク7が印刷されている。
なお、電磁波吸収壁6は電磁波吸収層2と同様に、磁性粉体とバインダーとが密に混合されたものであるから、入射した電磁波を吸収する機能を有する。
したがって、回路基板20は、基板1に略垂直方向と共に略平行方向からの電磁波の放射に対する吸収効果を有している。このとき、回路基板20の構造は簡単で、製造は容易である。
【0013】
図2の(b)において、回路基板21は、回路基板20における封止材5に替えて、電磁波吸収層8(絶縁性を有する)が回路配線3および半導体チップ4を封止している。
したがって、入射した電磁波を吸収する機能が助長されると同時に、薄くすることが可能になる。
【0014】
図2の(c)において、回路基板22は、回路基板21の電磁波吸収層8の面に直接印刷によって回路配線3を形成し、それに半導体チップ4を搭載して、これらを電磁波吸収層8によって封止したものである。すなわち、回路基板22と回路基板21とが一体的に形成されてい。したがって、入射した電磁波を吸収する機能が助長されると同時に、回路基板20(又は回路基板21)をそのまま2枚重ねた場合に比較して、薄くすることが可能になる。
なお、以上は、説明の便宜上、相当するものには同じ名前を付しているが、それぞれは相違するものでもよいから、回路基板22における回路配線3および半導体チップ4と、回路基板21においける回路配線3および半導体チップ4とは、それぞれ相違してもよい。また、回路基板22の上に、1または2以上の回路基板22を順次積層してもよい。
【0015】
[実施の形態3]
図3は、本発明の実施の形態3に係る電線を模式的に示す断面図である。
図3において、電線30は、導電性を有する線材31が電磁波吸収機能を有する被覆材(以下、「電磁波吸収被覆」と称す)32によって被覆されたものである。したがって、線材31への電磁波の侵入や、線材31からの電磁波の周囲への放出が、抑えられる。
なお、以上は、線材31に電磁波吸収被覆32を直接被覆しているが、本発明はこれに限定するものではなく、線材31に保護被覆(絶縁、防水等)を施した後、保護被覆の上に電磁波吸収被覆32を設けてもよいし、線材31を電磁波吸収被覆32で被覆した後、電磁波吸収被覆32に保護被覆を施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明に係る回路基板および線材は、電磁波吸収機能を有しながら、簡単な構造で容易に制作することができるから、周囲への電磁波の伝播を抑えたり、周囲からの電磁波の影響を避けたりしたい各種回路基板および線材として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 基板
2 電磁波吸収層
2a 電磁波吸収層
2b 電磁波吸収層
3 回路配線
3a 回路配線
3b 回路配線
4 半導体チップ
5 封止材
6 電磁波吸収壁
7 導電性インク
8 電磁波吸収層
10 回路基板(実施の形態1)
20 回路基板(実施の形態2)
21 回路基板(実施の形態2)
22 回路基板(実施の形態2)
31 線材
32 電磁波吸収被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられ、磁性粉体とバインダーとが密に混合されてシート状に形成された電磁波吸収層と、該電磁波吸収層の面に直接印刷によって形成された回路配線と、を有することを特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記回路配線に搭載された半導体チップと、前記回路配線および前記半導体チップを絶縁封止する封止材と、を有することを特徴とする請求項1記載の回路基板。
【請求項3】
前記回路配線に搭載された半導体チップと、前記回路配線および前記半導体チップを絶縁封止する前記電磁波吸収層と、を有することを特徴とする請求項1記載の回路基板。
【請求項4】
前記電磁波吸収層の周囲に、磁性粉体とバインダーとが密に混合されて環状に形成された電磁波吸収壁が形成され、該電磁波吸収壁に導電性インクが印刷されていることを特徴とする請求項1または3記載の回路基板。
【請求項5】
導電性を有する線材と、該線材を被覆する電磁波吸収機能を有する被覆材と、を有することを特徴とする電線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−171333(P2011−171333A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30971(P2010−30971)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000145378)株式会社秀峰 (32)