説明

回路遮断器

【課題】別途装置を設けることなく、単純な構成でハンドルのトリップ位置での停止、トリップ状態の表示を行う。
【解決手段】回路遮断器1は、操作ハンドル11、機構ハンドル12、ストッパ12A、アーム21を備えている。操作ハンドル11は、OFF位置とON位置との間を揺動自在に支持されている。機構ハンドル12は、連結部材15を介して操作ハンドル11とアーム21とを連結する。ストッパ12Aの突出部12AAは、回路遮断器1がトリップ状態となった時にアーム21の延出部21Cに当接し、アーム21の回転及び機構ハンドル12の回転を停止し、操作ハンドル11をトリップ位置で停止させる。また、操作ハンドル11をトリップ位置からOFF位置に揺動させる際、突出部12AAと延出部21Cとの当接が外れるとともに、連結部材15の摺動軸16がアーム21の係止溝21Bに再び係止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ショート(短絡)や電気の使いすぎ(過負荷)等によって電路に過電流が流れた時に電路の電流を遮断する回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ショート(短絡)や電気の使いすぎ(過負荷)等によって電路に過電流が流れた時に電路を遮断するために、配線用遮断器等の回路遮断器が用いられている。
【0003】
回路遮断器は、操作ハンドルをOFF位置からON位置に揺動させ、可動接触子を固定接触子に当接させることで電路に電力を供給する。回路遮断器は、過電流を検知すると、可動接触子を固定接触子から強制的に退避させるとともに、操作ハンドルをON位置とOFF位置との中間のトリップ位置に強制的に移動、固定していた。
【0004】
トリップ位置にある操作ハンドルを操作して再び可動接触子を固定接触子に当接させるには、作業者が操作ハンドルを一旦OFF位置に揺動させてリセットを行った後にON位置に揺動させなければならない。
【0005】
ところが、操作ハンドルがトリップ位置にあることを、作業者が気づかないことが多かった。これは、トリップ位置がOFF位置とON位置との中間にあり、OFF位置又はON位置と見間違えやすいからである。そのため、操作ハンドルのトリップ位置への移動に伴って、操作ハンドルがトリップ位置にある状態を表示するようにしている。従来の回路遮断器には、操作ハンドルのトリップ位置での停止及びトリップ状態の表示を別途設けられたトリップ表示装置を用いて行っている構成のものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平7−94070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1の構成では、トリップ状態の表示を行うために別途装置を設けなければならず、部品点数が増加して構成が複雑となり、またコストアップを招来してしまう。
【0007】
この発明の目的は、別途装置を設けることなく、単純な構成で操作部材のトリップ位置での停止、トリップ状態の表示を行うことができる回路遮断器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の回路遮断器は、接触子開閉機構と、トリップ機構と、操作弾性部材と、係合部材と、を筐体の内部に備え、過電流によるトリップ機構の駆動によって操作部材と接触子開閉機構との連結状態を解除して閉位置にある可動接触子を前記開位置に退避させる。
【0009】
接触子開閉機構は、位置固定された固定接触子に当接する閉位置と固定接触子から離間する開位置との間を移動自在な可動接触子と、OFF位置とON位置との間を移動自在な操作部材に連結部材を介して連結された連結状態で操作部材の移動により可動接触子を閉位置と開位置との間で移動させる。トリップ機構は、過電流により駆動する。操作弾性部材は、ON位置からOFF位置に移動させる力を操作部材に付与する。引き外し弾性部材は、可動接触子を閉位置から開位置に退避させる退避方向の力をアームに付与する。
【0010】
係合部材は、トリップ機構による連結状態が解除された際に、ON位置からOFF位置に向かって移動する操作部材をトリップ位置でアームと係合させて停止させる。また、係合部材は、操作部材がトリップ位置からOFF位置に移動した際、アームとの係合を解除して再び連結状態を復帰させる。さらに、係合部材は、操作部材に形成されている。
【0011】
この構成においては、過電流によってトリップ機構が駆動して操作部材とアームとの連結状態が解除された際に、可動接触子が固定接触子から離間する開位置に退避する。この時、退避方向に移動するアームと係合部材とが係合するため、ON位置からOFF位置に向かって移動する操作部材がトリップ位置で停止する。その後、作業者が操作部材をトリップ位置からOFF位置に移動させる際に、アームと係合部材との係合が解除され、再び操作部材とアームとが連結される。これによって、再び操作部材の操作により可動接触子を開位置、閉位置に移動させることができる。
【0012】
さらに、係合部材は、操作部材に形成されているので、操作部材をトリップ位置で停止させる装置を別途設ける必要がなく、単純な構成で操作部材のトリップ位置への停止を行うことができる。
【0013】
また、筐体は、操作部材の外側面の一部を外部に露出させるスリットを有している。操作部材は、トリップ位置にあることを示す識別標識であって、トリップ位置で停止した時にスリットから露出する外側面の位置に形成された識別標識を有している。
【0014】
これによって、操作部材がトリップ位置にあることを表示する装置を別途設ける必要がなく、単純な構成で操作部材のトリップ位置の表示を行うことができる。
【0015】
さらに、アームは、連結部材の第一端部に形成された軸を係止する係止溝を有する。連結部材は、第二端部が操作部材に接続されている。トリップ機構は、軸と係止溝との係止状態を解除する。係合部材は、操作部材の外側面から突出し、操作部材がトリップ位置に到達した時にアームの先端部に当接する突出部を備えている。突出部は、トリップ位置に停止している操作部材がOFF位置に向かって移動した時に、アームを退避方向とは反対方向に移動させ、軸を再び係止溝に係止させる突出量だけ、操作部材の外側面から突出している。
【0016】
この構成においては、過電流によってトリップ機構が駆動した際、アームの係止溝と連結部材の軸との係止が解除されることで、操作部材とアームとの連結が解除される。また、係止部材は突出部を有し、この突出部とアームとが当接することで係合状態となって操作部材がトリップ位置で停止する。さらに、トリップ位置にある操作部材がOFF位置に移動される場合、アームが退避方向とは反対方向に移動して連結部材の軸が再び係止溝に係止する。これによって、単純な構成で操作部材とアームとの連結と連結の解除を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明の回路遮断器によれば、操作部材をトリップ位置で停止させる装置を別途設ける必要がなく、単純な構成で操作部材のトリップ位置への固定を行うことができる。また、操作部材がトリップ位置にあることを表示する装置を別途設ける必要がなく、単純な構成で操作部材のトリップ位置の表示を行うことができる。さらに、操作部材と一体的に形成できるのでコストアップを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1(A),(B)は、この発明の実施形態に係る接触子開閉機構を備えた回路遮断器の簡単な構成を示す上面図及びケースの一方を取り外した状態の側面図である。図3は、操作ハンドルをOFF位置からON位置に揺動させた際の接触子開閉機構の動作状態を示す説明図である。図3(A)は操作ハンドルがOFF位置にあるときの接触子開閉機構20の状態を示し、図3(B)は、操作ハンドルがON位置にあるときの接触子開閉機構20の状態を示す。
【0019】
回路遮断器1は、可動接触子51と固定接触子52との間に過電流が流れようとする際に可動接触子51を固定接触子52から退避させて過電流を遮断する。回路遮断器1は、ハンドル部10、接触子開閉機構20、トリップ機構30、ケース40等から構成されている。
【0020】
ハンドル部10は、操作ハンドル11、機構ハンドル12、ハンドルバネ13等から構成され、操作ハンドル11の操作に応じて可動接触子51を固定接触子52に対して離接させる。操作ハンドル11は、図1(B),図3(B)に示す状態のON位置と図3(A)に示すOFF位置との間を揺動(移動)自在に支持され、機構ハンドル12を介して連結された接触子開閉機構20を構成するアーム21を揺動させる。これにより、可動接触子51が固定接触子52に対して離接する。機構ハンドル12は、操作ハンドル11の揺動時の回転力により回転する。なお、操作ハンドル11及び機構ハンドル12は、ハンドルを構成し、本発明の操作部材に相当する。ハンドルバネ13は、本発明の操作弾性部材に相当する。
【0021】
また、機構ハンドル12は、連結部材15によってアーム21に連結され、連結部材15を介して操作ハンドル11の揺動時の回転力をアーム21に伝達する。また、機構ハンドル12の外周面(外側面)には、本発明の係合部材であるストッパ12Aが形成されている。
【0022】
ストッパ12Aは、機構ハンドル12と一体的に形成されている。本実施形態では、樹脂で一体形成されている。ストッパ12Aは、機構ハンドル12の外周面から延出し、また突出部12AAを備えている。突出部12AAは、ストッパ12Aの表面から突出し、過電流が流れた際にアーム21の端部に形成された延出部21Cに当接する。詳細は後述する。ハンドルバネ13は、機構ハンドル12を操作ハンドル11がON位置からOFF位置に揺動する方向に付勢する。
【0023】
接触子開閉機構20は、操作ハンドル11の揺動時の回転力により可動接触子51を固定接触に対して離接させる。また、可動接触子51と固定接触子52との間に過電流が流れようとする際に、過電流により駆動するトリップ機構30と連携して操作ハンドル11とアーム21との連結を解除して可動接触子51を固定接触子52から退避させる。
【0024】
接触子開閉機構20は、図2(A),(B),(C)に示すように、可動接触子51、アーム21、機構盤22、引き外しバネ23及び引き外し機構24等から構成されている。 なお、図2(A)は、この発明の実施形態に係る接触子開閉機構20の構成を示す説明図である。図2(B)は、図2(C)で示す矢印Y方向から見た図である。図2(C)は、可動接触子51が開位置にある状態の接触子開閉機構20の状態を示す説明図である。
【0025】
可動接触子51は、図1(B)、図3(B)に示すように、アーム21が有する接触子回転軸21Aによって第一端部51Aが固定接触子52に当接する閉位置と、図2(C)、図3(A)に示すように第一端部51Aが固定接触子52から離間する開位置との間を移動自在に支持されている。また、可動接触子51は、図2(C)に示すように接触子バネ53によって反時計回りに回転するように付勢されている。接触子バネ53は、接触子回転軸21Aに遊嵌している。
【0026】
また、可動接触子51の第二端部51Bは、接触子バネ53による可動接触子51の回転を所定位置で規制するようにアーム21に当接する。第二端部51Bは、当接した状態で接触子バネ53に付与された回転力を利用し、接触子回転軸21Aとで可動接触子51を保持する。これにより、アーム21は、可動接触子51を一体的に保持できる。
【0027】
アーム21は、L字形状を呈し、図2(A)〜(C)に示すように機構盤22に形成されたアーム回転軸26によって屈曲部で回転自在に支持されている。また、アーム21には、係止溝21Bが形成されている。係止溝21Bには、図1(B)に示すように連結部材15の第一端部15Aに設けられた摺動軸16が貫通する。
【0028】
摺動軸16は、係止溝21Bから外れないように、引き外し杆27の第一端部に形成されたカギ爪27Aと係止溝21Bの壁面とで係止(挟持)される。連結部材15は、係止された状態で、機構ハンドル12を介して操作ハンドル11とアーム21とを連結する。また、アーム21は、アーム回転軸26を中心に回転(移動)して可動接触子51を閉位置と開位置との間で移動させる。なお、摺動軸16は、本発明の軸に相当する。
【0029】
また、アーム21には、一端側に延出部21Cが形成されている。機構盤22は、ケース40に固定され、アーム回転軸26を介してアーム21を回転自在に支持する。ケース40は、回路遮断器1の構成を収容する筐体である。引き外しバネ23は、本発明の引き外し弾性部材に相当し、一端がアーム21に接続され、他端が機構盤22に接続されている。引き外しバネ23は、可動接触子51を閉位置から開位置に退避させる退避方向の回転力をアーム21に付与する。
【0030】
機構盤22には、図2(A)に示すように当接部材22Aが形成されている。当接部材22Aは、図2(C)に示すように可動接触子51が開位置にある時にアーム21に当接し、可動接触子51が閉位置から開位置に退避する方向のアーム21の回転を規制する。当接部材22Aは、この状態の時に、引き外しバネ24に付与された回転力を利用してアーム回転軸26とでアーム21を保持する。これにより、機構盤22は、アーム21を一体的に保持することができる。また、当接部材22Aは、機構盤22の盤面を曲げ加工することで形成されている。
【0031】
引き外し機構24は、引き外し杆27及び引き外し杆バネ28等から構成され、連結部材15のアーム21への係止、解除を行う。引き外し杆27は、図2(A)に示すように、アーム21の内部に位置し、アーム回転軸26に回転自在に支持されている。また、引き外し杆27は、第一端部のカギ爪27Aが形成されており、第二端部に凹部27Bが形成されている。引き外し杆バネ28は、一端部がアーム21に係止され、他端部が凹部27Bに接続されている。
【0032】
引き外し杆バネ28は、図2(C)に示す状態で反時計回りに回転させる回転力を引き外し杆27に付与する。カギ爪27Aは、この回転力を用いて係止溝21Bの壁面とで摺動軸16を挟持する。これによって、連結部材15とアーム21とが連結される。
【0033】
操作ハンドル11がOFF位置にある時は、図3(A)に示すように可動接触子51が開位置にある。作業者が操作ハンドル11をOFF位置からON位置に揺動させた場合、操作ハンドル11の回転力が機構ハンドル12及び連結部材15を介してアーム21に伝達される。これによって、アーム21は、図3(B)に示すように、引き外しバネ23に付与された回転力に抗して反時計回りに回転する。この回転に伴って、可動接触子51が固定接触子52に当接する閉位置に移動する。
【0034】
回路遮断器1は、端子61,62を備えている。可動接触子51が固定接触子52に当接したON状態にある時、電流は、端子61から固定接触子52、可動接触子51、電磁コイル31を経て端子62に流れる。
【0035】
なお、アーム21は可動接触子51が閉位置に到達しても引き外しバネ23によって時計回りに回転しようとするが、連結部材15がストッパとなって回転を規制する。連結部材15は、可動接触子51が閉位置に到達した状態では、機構ハンドル12に軸支された第二端部15Bが機構ハンドル12を時計回りに回転させる位置にまで移動している。操作ハンドル11は、可動接触子51が閉位置にある状態では時計回りに回らないように、図3(B)に示すように開放端11Aがケース40に当接する。そのため、機構ハンドル12及びアーム21は回転ない。
【0036】
一方、作業者が操作ハンドル11を図3(B)に示すON位置から図3(A)に示すOFF位置に揺動させた場合、操作ハンドル11の回転によって機構ハンドル12が反時計回りに回転し、連結部材15の第二端部15Bが機構ハンドル12を反時計回りに回転させられる位置にまで移動する。これによって、引き外しバネ23によりアーム21が時計回りに回転する。この時のアーム21の回転力によって機構ハンドル12が反時計回りに回転し、操作ハンドル11もOFF位置に移動する。また、アーム21の時計回りの回転に伴って可動接触子51も図3(A)に示すように開位置に移動する。
【0037】
トリップ機構30は、電磁コイル31、アーマチュア32、アーマチュアバネ33及びヨーク34等を備え、可動接触子51と固定接触子52との間に過電流が流れようとする際に、過電流を検知して操作ハンドル11と接触子開閉機構20との連結を解除して閉位置にある可動接触子51を開位置に退避させる。
【0038】
電磁コイル31は、導線31Aをボビン31Bに巻回して形成され、ボビン31Bの中空軸の軸孔を貫通するダッシュポット構造のポット35を介してヨーク34に固定支持されている。電磁コイル31は、過電流が流れた際に発生する磁力によってアーマチュア32の第一端部32Aを引き寄せる。
【0039】
アーマチュア32は、L字形状を呈し、屈曲部付近の第一端部32A側がヨーク34の上端部によって回転自在に支持されている。また、アーマチュア32は、屈曲部に係止解除部材32Cを備えている。係止解除部材32Cは、アーム21に向かう方向に屈曲部から突出し、アーマチュア32が電磁コイル31に引き寄せられた際に引き外し杆27に当接する。これによって、連結部材15とアーム21との連結が解除される(図4参照)。
【0040】
アーマチュアバネ33は、一端部がアーマチュア32の屈曲部に接続され、他端部がヨーク34に接続されている。アーマチュアバネ33は、図1(B)に示した状態で時計回りに回転させる回転力をアーマチュア32に付与する。これによって、アーマチュア32は、第二端部32Bがヨーク34の壁面に当接し、図1(B)に示す状態で回転が規制される。ヨーク34は、電磁コイル31、アーマチュア32、アーマチュアバネ33を一体的に保持し、ケース40に支持されている。
【0041】
図4は、過電流発生時の回路遮断器1の動作を示す説明図である。図4(A)は過電流発生時の回路遮断器1の状態を示し、図4(B)は過電流が発生した後に回路遮断器1がトリップした状態を示す。
【0042】
電磁コイル31に過電流が流れると、電磁コイル31がアーマチュア32を吸引する。これによって、図4(A)に示すようにアーマチュア32が反時計回りに回転して係止解除部材32Cが引き外し杆27に当接する。そのため、引き外し杆27が上方に押し上げられ、連結部材15の摺動軸16の係止が解除される。アーム21は、ストッパとなっていた連結部材15との連結が解除されたので、引き外しバネ23によって図4(B)に示すように時計回りに回転する。
【0043】
この時、摺動軸16は、係止溝21Bから外れる。また、操作ハンドル11は、ハンドルバネ13によって機構ハンドル12を介してON位置からOFF位置に向かって揺動するが、ストッパ12Aの突出部12AAが延出部21Cに当接し、一定位置で機構ハンドル12の回転を規制する。そのため、操作ハンドル11は、OFF位置にまで戻らず、図4(B)に示すようにOFF位置とON位置との中間位置となるトリップ位置で回転が停止する。
【0044】
この時、図1(A)に示すスリット50から操作ハンドル11がトリップ位置にある状態を表示する識別標識が露出する。これにより、作業者が回路遮断器1がトリップした状態をすぐに認識することができる。識別標識は、機構ハンドル12の外周面において操作ハンドル11がトリップ位置にある状態でスリット50に露出する箇所に形成されている。本実施形態では、識別標識として赤色の塗料を用いてる。
【0045】
なお、突出部12AAとアーム21の延出部21Cとの当接タイミングは、ハンドルバネ13及び引き外しバネ23の調整により行うことができる。
【0046】
図5は、本発明の実施形態に係る回路遮断器1をトリップ状態から復帰させる手順を示す説明図である。図5は、ハンドル部10及び接触子開閉機構20の一部の構成を示す拡大図である。図5(A)は、図4(B)に示す状態と同様に回路遮断器1がトリップした状態を示す。図5(B)は、操作ハンドル11をトリップ位置からOFF位置に揺動させる時の状態を示す。図5(C)及び図5(D)は、操作ハンドル11がOFF位置及びON位置にある状態を示す。
【0047】
図4(B),図5(A)に示すトリップ状態を解除(リセット)するには、図5(B),図5(C),図5(D)に示す順に一度操作ハンドル11をOFF位置に戻して連結部材15とアーム21とを再度連結させ、その後にON位置に揺動させればよい。図5(A)に示すように操作ハンドル11をOFF位置に向けて揺動させると、機構ハンドル12の回転によって延出部21Cが突出部12AAに当接しつつ摺動していく。
【0048】
これによって、図5(B)に示すように、アーム21が反時計回りに回転し、且つ、摺動軸16が機構ハンドル12の回転によって係止溝21B内に進入する方向に移動する。そのため、操作ハンドル11がOFFに到達した時には、図5(C)に示すように、摺動軸16が係止溝21Bに係止された状態となり、操作ハンドル11とアーム21とが連結状態となる。
【0049】
ここで、突出部12AAによってアーム21を反時計回りに回転させるのは、摺動軸16を係止溝21Bに進入させるためである。そのため、突出部12AAの突出量は、摺動軸16を係止溝21Bに係止させられるだけの量であればよい。したがって、ストッパ12Aは、操作ハンドル11をトリップ位置で停止させる機能に加えて、操作ハンドル11とアーム21との連結を復帰させる機能とを有する。
【0050】
以上のように、機構ハンドル12に係合部材であるストッパ21を一体的に形成するこで、操作ハンドル11をトリップ位置で停止させる装置を別途設ける必要がなく、単純な構成で操作ハンドル11のトリップ位置への固定を行うことができる。また、操作ハンドルがトリップ位置にあることを表示する装置を別途設ける必要がなく、単純な構成で操作ハンドル11のトリップ位置の表示を行うことができる。さらに、機構ハンドル12と一体的に形成できるのでコストアップを抑制することができる。
【0051】
なお、本発明の実施形態では操作部材として揺動式のハンドルを用いて説明したが、特にこれに限定されるものではない。例えば、スライド式の操作部材を適用しても上述と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の実施形態に係る接触子開閉機構を備えた回路遮断器の簡単な構成を示す上面図及びケースの一方を取り外した状態の側面図である。
【図2】同接触子開閉機構の簡単な構成を示す説明図である。
【図3】同接触子開閉機構について操作ハンドルをOFF位置からON位置に揺動させた際の動作状態を示す説明図である。
【図4】同接触子開閉機構を備えた回路遮断器の過電流発生時の動作を示す説明図である。
【図5】同回路遮断器をトリップ状態から復帰させる手順を示す説明図である。
【符号の説明】
【0053】
1−回路遮断器
10−ハンドル部
11−操作ハンドル
12−機構ハンドル
12A−ストッパ
12AA−突出部
15−連結部材
20−接触子開閉機構
21−アーム
21B−係止溝
21C−延出部
30−トリップ機構
51−可動接触子
52−固定接触子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置固定された固定接触子に当接する閉位置と前記固定接触子から離間する開位置との間を移動自在な可動接触子と、OFF位置とON位置との間を移動自在な操作部材に連結部材を介して連結された連結状態で前記操作部材の移動により前記可動接触子を前記閉位置と前記開位置との間で移動させるアームと、を有する接触子開閉機構、及び、過電流により駆動するトリップ機構を筐体の内部に有し、過電流による前記トリップ機構の駆動によって前記連結状態を解除して前記閉位置にある前記可動接触子を前記開位置に退避させる回路遮断器において、
前記ON位置から前記OFF位置に移動させる力を前記操作部材に付与する操作弾性部材と、
前記可動接触子を前記閉位置から前記開位置に退避させる退避方向の力を前記アームに付与する引き外し弾性部材と、を備え、
前記トリップ機構による前記連結状態が解除された際に、前記ON位置から前記OFF位置に向かって移動する前記操作部材をトリップ位置で前記アームと係合させて停止させる係合部材であって、前記操作部材が前記トリップ位置から前記OFF位置に移動した際、アームとの係合を解除して再び前記連結状態を復帰させる係合部材を前記操作部材に形成したことを特徴とする回路遮断器。
【請求項2】
前記筐体は、前記操作部材の外側面の一部を外部に露出させるスリットを有し、
前記操作部材は、前記トリップ位置にあることを示す識別標識であって、前記トリップ位置で停止した時に前記スリットから露出する前記外周面の位置に形成された識別標識を有することを特徴とする請求項1に記載の回路遮断器。
【請求項3】
前記アームは、前記連結部材の第一端部に形成された軸を係止する係止溝を有し、
前記連結部材は、第二端部が前記操作部材に接続され、
前記トリップ機構は、前記軸と前記係止溝との係止状態を解除し、
前記係合部材は、前記操作部材の前記外側面から突出し、前記操作部材が前記トリップ位置に到達した時に前記アームの先端部に当接する突出部を備え、
前記突出部は、前記トリップ位置に停止している前記操作部材が前記OFF位置に向かって移動した時に、前記アームを前記退避方向とは反対方向に移動させ、前記軸を再び前記係止溝に係止させる突出量だけ、前記操作部材の外側面から突出していることを特徴とする請求項1に記載の回路遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−159371(P2008−159371A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345962(P2006−345962)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】