説明

回転コネクタの回転中立位置合わせ方法

【課題】回転中立状態に設定する位置合わせ作業を自動化できて製品コストの低減化が図れる回転コネクタの回転中立位置合わせ方法を提供すること。
【解決手段】環状空間S内に可撓性ケーブル4を巻き締めおよび巻き戻し可能に収納してなる回転コネクタ1を、回転中立状態に設定する位置合わせ方法であって、外筒部5の周壁に可撓性ケーブル4によって内側から塞がれる孔5aを設けておき、この孔5aを臨む外方位置に光センサ20を設置したうえで、回転駆動手段のモータで可動側ハウジングを巻き締め方向へ回転させていく。そして、可撓性ケーブル4が限界付近まで巻き締められた時点で、孔5aを塞ぐ領域に可撓性ケーブル4が存在しなくなったことを光センサ20で検出することによって、モータによる巻き締め方向への回転を停止させる。しかる後、モータによって可動側ハウジングを規定の回転数だけ逆方向(巻き戻し方向)へ回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動自在に連結された固定側ハウジングと可動側ハウジングを、両ハウジング間の環状空間内に収納された可撓性ケーブルを介して電気的に接続する回転コネクタに係り、特に、回転コネクタの組立後に可動側ハウジングを回転中立状態に設定するための回転中立位置合わせ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転コネクタは、回動自在に連結された固定側ハウジングおよび可動側ハウジングと、両ハウジング間に画成される環状空間内に収納・巻回された可撓性ケーブル(フラットケーブル)とで概略構成されており、この可撓性ケーブルの両端は両ハウジングに固定された状態で外部回路と接続可能である。そして、可動側ハウジングを固定側ハウジングに対して正逆いずれかの方向へ回転させると、その回転方向に応じて可撓性ケーブルが環状空間内で巻き締めあるいは巻き戻され、いずれの状態においても両ハウジング間の電気的接続が可撓性ケーブルを介して維持されるようになっている。
【0003】
このように概略構成された回転コネクタは、固定側ハウジングをステアリングコラム側に固定すると共に可動側ハウジングをハンドル側に連結した状態で自動車のステアリング装置に組み付けられ、ハンドルに装着されたエアーバッグシステムやホーン回路等の電気的接続手段として使用される。この場合において、回転コネクタの可動側ハウジングはハンドルの回転中立位置を基準にして正逆両方向へほぼ同量ずつ回転できなければならない。そのため、回転コネクタは通常、組立後に可動側ハウジングを回転中立状態に位置合わせしてからストッパ等を用いた適宜手段で回り止め(仮固定)しておき、回転コネクタをステアリング装置に組み付けた後に回り止めを解除して可動側ハウジングを固定側ハウジングに対して回動自在となすようにしている。
【0004】
回転コネクタの可動側ハウジングを回転中立状態に位置合わせするために行われる一般的な作業内容について説明すると、まず、可動側ハウジングを固定側ハウジングに対して一方向へ回転させて可撓性ケーブルを限界付近まで巻き締めるか、または限界付近まで巻き戻しておく。可撓性ケーブルは一端が固定側ハウジングの外筒部に固定されて他端が可動側ハウジングの内筒部に固定されており、巻き締め時には可撓性ケーブルが内筒部の外周面に巻回されていき、巻き戻し時には可撓性ケーブルが外筒部の内周面に巻回されていく。そして、可撓性ケーブルを限界付近まで巻き締めまたは巻き戻した後、可動側ハウジングを固定側ハウジングに対して逆方向へほぼ規定の回転数だけ回転させて、両ハウジングに予め設けられている位置合わせマークどうしを合致させることによって、可動側ハウジングを回転中立状態となすことができる。そして、回転中立状態に位置合わせした可動側ハウジングを、ストッパ等を用いて固定側ハウジングに対して回り止めする(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一例として、自動車のハンドルが回転中立位置を基準にして正逆両方向へ2.5回転ずつ回転可能な場合には、回転コネクタは、可撓性ケーブルを限界まで巻き締めたときに可動側ハウジングが巻き戻し方向へ5回転強だけ回転可能となっているため、この可動側ハウジングを巻き戻し方向へ約2.5回転させれば回転中立状態となすことができる。
【0006】
ただし、可撓性ケーブルを限界まで強く巻き締めると、固定側ハウジングの外筒部に固定されている可撓性ケーブルの一端部が強く引っ張られて損傷する虞がある。同様に、可撓性ケーブルを限界まで強く巻き戻すと、可動側ハウジングの内筒部に固定されている可撓性ケーブルの他端部が強く引っ張られて損傷する虞がある。そのため従来は、回転コネクタの組立工程後に行われる回転中立位置合わせ工程において、可撓性ケーブルを損傷させないように配慮しつつ手作業で可動側ハウジングを正逆回転させながら回転中立状態に設定していた。
【0007】
なお、両ハウジングに設けられている位置合わせマークどうしは可動側ハウジングが1回転するたびに合致するので、この位置合わせマークのみによって可動側ハウジングを回転中立状態に設定することはできないが、可動側ハウジングを手作業でほぼ規定の回転数だけ回転させたうえで位置合わせマークどうしを合致させれば、回転中立状態に設定する際の位置合わせが正確に行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−222369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したように従来は、回転コネクタの組立後に可動側ハウジングを正逆回転させて回転中立状態に設定する位置合わせ作業を、可撓性ケーブルを損傷させないように配慮しながら手作業で行っているため、作業効率が悪くて製品コストを上昇させる要因となっていた。すなわち、回転コネクタは組立工程の自動化を促進することでコストダウンを図っているが、組立後に行われる回転中立位置合わせ工程についてはこれまで作業の自動化が困難とされていた。
【0010】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、回転中立状態に設定する位置合わせ作業を自動化できて製品コストの低減化が図れる回転コネクタの回転中立位置合わせ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明は、外筒部および底板部を有する固定側ハウジングと、内筒部および天板部を有し前記固定側ハウジングに回動自在に連結された可動側ハウジングと、これら一対のハウジング間に形成された環状空間内に巻き締めおよび巻き戻し可能に収納された可撓性ケーブルとを備えた回転コネクタの組立後に、前記可動側ハウジングを回転中立状態に設定するための回転中立位置合わせ方法において、前記外筒部の周壁に前記環状空間に連通する孔を設け、この孔に出射光を透過させると共に前記可撓性ケーブルからの反射光を受光可能な外方位置に光学式検出手段(光センサ)を設置したうえで、モータを駆動源とする回転駆動手段で前記可動側ハウジングを前記固定側ハウジングに対して一方向へ回転させることによって、前記可撓性ケーブルを前記内筒部の外周面に巻き締めていき、前記光学式検出手段の検知信号に基づいて前記可撓性ケーブルが限界付近まで巻き締められたことを検出した時点で、前記回転駆動手段による前記一方向への回転を停止させ、しかる後、前記回転駆動手段によって前記可動側ハウジングを規定の回転数だけ逆方向へ回転させるようにした。
【0012】
このように固定側ハウジングの外筒部の周壁に環状空間に連通する孔を設けておけば、光学式検出手段(光センサ)から孔に向けて照射した出射光が環状空間内で反射して戻る反射光の光量変化に基づいて、可撓性ケーブルが限界付近まで巻き締められたか否かを検出することができる。したがって、可撓性ケーブルを損傷させることなく限界付近まで巻き締めるという可動側ハウジングの一方向(巻き締め方向)への回転を、モータを駆動源とする回転駆動手段によって行わせることができる。また、可撓性ケーブルを巻き締めた後に可動側ハウジングを逆方向(巻き戻し方向)へ所定量回転させる際にも、位置合わせマーク等を視認することなく回転駆動手段によって可動側ハウジングを規定の回転数だけ回転させることができる。それゆえ、可動側ハウジングを回転中立状態に位置合わせするための一連の作業を自動化できて、作業効率が大幅に向上する。
【0013】
上記の回転中立位置合わせ方法において、回転コネクタが、環状空間内で可撓性ケーブルを反転させる開口部を有し、かつ、この開口部で反転される可撓性ケーブルの反転部の外側でこの反転部と対向配置されたガイド壁部を有して回動自在なホルダを備えており、ガイド壁部の外表面の光反射率と可撓性ケーブルの外表面の光反射率とを異ならせるようにしてあることが好ましい。このように構成してあると、可撓性ケーブルが限界付近まで巻き締められた時点、すなわち、外筒部内壁に沿って孔を塞ぐように巻かれた可撓性ケーブルが孔から離れる状態になるまで内筒部外壁に巻き締められて、ガイド壁部が孔を塞ぐ位置に移動した時点で、それまで可撓性ケーブルの外表面で反射された反射光がガイド壁部側面で反射されるようになるため、光反射率の変化を検出しやすくなって、可動側ハウジングを回転中立状態に位置合わせする一連の作業を確実に自動化する上で大変好ましい。
【0014】
また、上記の回転中立位置合わせ方法において、回転駆動手段が可動側ハウジングを規定の回転数だけ逆方向へ回転させてから、シール体で孔を外側から蓋閉しておけば、孔を介して環状空間内に異物が侵入する虞がなくなるため好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明による回転コネクタの回転中立位置合わせ方法では、固定側ハウジングの外筒部の周壁に孔が設けてあり、光学式検出手段(光センサ)から孔に向けて照射した出射光が環状空間内で反射して戻る反射光の光量変化に基づいて、可撓性ケーブルが限界付近まで巻き締められたか否かを検出することができるため、可撓性ケーブルを損傷させることなく限界付近まで巻き締めるという可動側ハウジングの一方向(巻き締め方向)への回転を、モータを駆動源とする回転駆動手段によって行わせることができる。また、可撓性ケーブルを巻き締めた後に可動側ハウジングを逆方向(巻き戻し方向)へ所定量回転させる際にも、位置合わせマーク等を視認することなく回転駆動手段によって可動側ハウジングを規定の回転数だけ回転させることができる。それゆえ、可動側ハウジングを回転中立状態に位置合わせするための一連の作業を自動化できて作業効率が大幅に向上し、その結果として回転コネクタの製品コストを低減できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態例に係る回転コネクタとその回転中立位置合わせ工程で用いられる光センサおよび回転モータとを示す説明図である。
【図2】該回転コネクタの回転中立位置合わせ工程で巻き締め途中の可撓性ケーブルが孔を塞いでいる状態を示す説明図である。
【図3】図2に示す可撓性ケーブルが限界付近まで巻き締められたことを光センサが検出した状態を示す説明図である。
【図4】該回転コネクタの回転中立位置合わせ作業を実行する位置合わせ装置のブロック図である。
【図5】図4の位置合わせ装置による回転中立位置合わせ工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態例に係る回転コネクタの回転中立位置合わせ方法について、図1〜図4を参照しつつ説明する。
【0018】
図1〜図3に示す回転コネクタ1は、回動自在に連結された固定側ハウジング2および可動側ハウジング3と、両ハウジング2,3間に画成される環状空間S内に収納・巻回された可撓性ケーブル(フラットケーブル)4とで概略構成されている。この回転コネクタ1は、固定側ハウジング2をステアリングコラム側に固定すると共に可動側ハウジング3をハンドル側に連結した状態で自動車のステアリング装置に組み付けられ、ハンドルに装着されたエアーバッグシステムやホーン回路等の電気的接続手段として使用される。可動側ハウジング3はハンドルの回転中立位置を基準にして正逆両方向へほぼ同量ずつ回転できなければならないので、回転コネクタ1は組立工程後に、可動側ハウジング3を回転中立状態に設定するという回転中立位置合わせ工程を行う必要がある。そして、可動側ハウジング3を回転中立状態に設定したまま図示せぬストッパを用いて回り止め(仮固定)しておき、回転コネクタ1をステアリング装置に組み付けた後に回り止めを解除して、可動側ハウジング3を固定側ハウジング2に対して回動自在となすようにしている。
【0019】
固定側ハウジング2は、上下両端を開放したリング状の外筒部5と、この外筒部5の下部開放端を覆うように配置された底板部6とで構成されており、これら外筒部5と底板部6は合成樹脂で成形されている。外筒部5の周壁の所定位置には環状空間Sと連通する孔5aが開設されている。孔5aを形成する位置は、可撓性ケーブル4が図3に示すように限界付近まで巻き締められた時点、すなわち、外筒部5の内壁に沿って孔5aを塞ぐように巻かれた可撓性ケーブル4が孔5aから離れるようになるのであればどこでもよい。このような場合、可撓性ケーブル4が限界付近まで巻き締められた状態を除くと、回転コネクタ1の使用時には孔5aが常に可撓性ケーブル4によって内側から塞がれた状態になっている。回転コネクタ1の回転中立位置合わせ工程において、孔5aに出射光を透過させると共に可撓性ケーブル4からの反射光を受光可能な外方位置には光センサ(光学式検出手段)20が設置され、この光センサ20から孔5aに向けて出射光が照射されると共に、その戻り光である反射光が孔5aを介して光センサ20に入射されるようになっている。なお、外筒部5の上面には、三角形状の位置合わせマーク5bと、環状空間S内を視認するために透明フィルム等で覆われた覗き窓5cとが付設されている。
【0020】
また、孔5aは、光センサ20による検出が終了した後の適宜段階でシール体21(図1参照)によって外側から蓋閉されるため、その後、孔5aを介して環状空間S内に異物が侵入しないようになっている。このシール体21は外筒部5の周壁に容易に貼着できるものであることが好ましく、安価な紙やフィルム等からなるラベルをシール体21となせば特に好ましい。
【0021】
底板部6はスナップ結合等によって外筒部5の下端に一体化されており、この底板部6の中央部には図示せぬステアリング軸が挿通されるセンタ孔6aが形成されている。また、底板部6の外縁部には下側ダイレクトコネクタ6bが一体形成されており、可撓性ケーブル4の一端がこの下側ダイレクトコネクタ6bを介して外部に導出されるようになっている。
【0022】
可動側ハウジング3は、天板部8および内筒部9を一体形成してなる上部ロータ7と、スナップ結合によって内筒部9の下端に一体化された下部ロータ10とで構成されており、これら上部ロータ7と下部ロータ10は合成樹脂で成形されている。天板部8は外筒部5の上部開放端を覆うように円板状に形成されており、内筒部9は天板部8の内縁部に連続している。そして、内筒部9と下部ロータ10を上下方向からセンタ孔6aへ挿入してスナップ結合させることにより、可動側ハウジング3が固定側ハウジング2に回動自在に連結されて、外筒部5および底板部6と天板部8および内筒部9との間に環状の収納空間Sが画成される。
【0023】
天板部8の上面には上側ダイレクトコネクタ8aが一体形成されており、可撓性ケーブル4の他端がこの上側ダイレクトコネクタ8aを介して外部に導出されるようになっている。また、天板部8の上面には180度離れた対称な位置に2本の駆動棒8bが突設されており、各駆動棒8bをハンドルに係合・連結させることによって、可動側ハウジング3に対してハンドルの回転駆動力が付与されるようになっている。さらに、天板部8の上面には三角形状の位置合わせマーク8cが付設されており、可動側ハウジング3が固定側ハウジング2に対して回転中立状態に設定されていれば、この位置合わせマーク8cと外筒部5の位置合わせマーク5bとが合致するようになっている。ただし、位置合わせマーク8c,5bどうしは可動側ハウジング3が1回転するたびに合致するので、この位置合わせマーク8c,5bのみによって可動側ハウジング3を回転中立状態に設定することはできない。
【0024】
可撓性ケーブル4は環状空間S内に巻き締めおよび巻き戻し可能に収納されている。図2と図3に示すように、可撓性ケーブル4は環状空間S内で巻回方向を途中で反転させている。すなわち、環状空間S内にはリング状のホルダ11が回動自在に収納されており、このホルダ11上に軸支されたローラ12とホルダ11上に設けたガイド壁部11aとの間に開口部13が形成されており、ローラ12に可撓性ケーブル4を巻き掛けることによって、可撓性ケーブル4の巻回方向を途中で反転させている。したがって、可動側ハウジング3を回転させて内筒部9に可撓性ケーブル4を巻き締めていくと、反転部4aが時計方向に移動することでローラ12を押してホルダ11を時計方向に回動させ、その逆に、内筒部9から可撓性ケーブル4を巻き戻していくと、反転部4aが反時計方向に移動することでローラ12を押してホルダ11を反時計方向に回動させる。なお、可撓性ケーブル4の両端はそれぞれ外筒部5と内筒部9に固定された後、下側ダイレクトコネクタ6bと上側ダイレクトコネクタ8aに導出されており、これらコネクタ6b,8aに図示せぬ外部コネクタが接続されるようになっている。これにより、可撓性ケーブル4を介して、ステアリングコラム側に備えられた電気部品と、ハンドル側に備えられた電気部品とを電気的に接続することができる。
【0025】
ここで、可撓性ケーブル4の外表面は光反射率の高い白色系となっているのに対し、ガイド壁部11aの外表面は光反射率の低い黒色系となっている。これにより、図3に示すように可撓性ケーブル4が限界付近まで巻き締められた時点、、すなわち、外筒部5の内壁に沿って孔5aを塞ぐように巻かれた可撓性ケーブル4が、孔5aから離れる状態になるまで内筒部9の外壁に巻き締められて、ガイド壁部11aが孔5aを塞ぐ位置に移動してきた時点で、光センサ20へ入射される反射光の光量は急減する。したがって、このような構成は、可動側ハウジング3を回転中立状態に位置合わせするための一連の作業を自動化する上で大変好ましい。なお、ガイド壁部11aと外筒体5の内周面との間に可撓性ケーブル4が存在している限り、このガイド壁部11aが孔5aと直接対向することはない。
【0026】
このように構成された回転コネクタ1は、組立工程後に図4のブロック図に示す位置合わせ装置を用いて回転中立位置合わせ工程を行うことにより、可動側ハウジング3を回転中立状態に設定する。同図に示すように、この位置合わせ装置は、前述した光センサ20と、ステッピングモータ等のモータを駆動源として可動側ハウジング3に回転駆動力を付与する回転駆動手段22と、光センサ20の検知信号に基づいて回転駆動手段22のモータを制御する制御手段23とで構成されており、この制御手段23は図5のフローチャートに示すような手順で回転中立位置合わせ工程を実行する。
【0027】
かかる回転中立位置合わせ工程について詳細に説明すると、図1に示すように、まず回転駆動手段22の出力軸を可動側ハウジング3の一部、例えば天板部8の駆動棒8bに係合させ、この状態で回転駆動手段22のモータの駆動力で可動側ハウジング3を固定側ハウジング2に対して一方向(巻き締め方向)へ回転させることにより、可撓性ケーブル4を内筒部9側に巻き締めていく。その際、図5のフローチャートに示すように、制御手段23は、ステップS1で光センサ20の検出信号に基づいて孔5aが可撓性ケーブル4に塞がれているか否かを判定し、光反射率の高い可撓性ケーブル4で反射された反射光が検出された場合には、ステップS1からステップS2へ進む。このステップS2では、回転駆動手段22の駆動力による可動側ハウジング3の回転を続行し、可撓性ケーブル4を内筒部9側に次第に巻き締めていく。
【0028】
こうして可動側ハウジング3が巻き締め方向に回転駆動されると、外筒部5の内周面に沿って延在していた可撓性ケーブル4が徐々に内筒部9の外周面に巻き締められていくため、やがて図2の状態を経て図3の状態に移行する。つまり、可撓性ケーブル4が限界付近まで巻き締められた時点で、孔5aを塞ぐ領域に可撓性ケーブル4が存在しなくなり、図3に示すように、ガイド壁部11aが孔5aと対向するようになる。その結果、光センサ20に戻る反射光の光量が急減するため、制御手段23は、光センサ20に戻る反射光の光量変化に基づいて可撓性ケーブル4が限界付近まで巻き締められたものと判定し、ステップS1からステップS3へと進む。制御手段23は、このステップS3において回転駆動手段22のモータの回転を一旦停止させた後、ステップS3からステップS4へと進む。
【0029】
このステップS4において、制御手段23は、回転駆動手段22のモータの回転方向と回転量を制御することにより、可動側ハウジング3を固定側ハウジング2に対して逆方向(巻き戻し方向)へ規定の回転数だけ回転させる。本実施形態例においては、自動車のハンドルが回転中立位置を基準にして正逆両方向へ2.5回転ずつ回転可能であり、回転コネクタ1は可撓性ケーブル4を限界まで巻き締めたときに可動側ハウジング3が巻き戻し方向へ5回転強だけ回転可能となっているため、可動側ハウジング3を図3の状態から回転モータ22で巻き戻し方向へ2.5回転させることによって回転中立状態となすことができる。
【0030】
こうして可動側ハウジング3を回転中立状態に位置合わせした後、ステップS5へ進んで、図示せぬストッパを用いた回り止め(仮固定)によって可動側ハウジング3を回転中立状態に保持する。これにより、回転コネクタ1は製品化された状態となり、自動車のステアリング装置への組み付けが可能となる。
【0031】
また、図4のフローチャートには図示していないが、ステップS3,S4,S5のいずれかの直後において、外筒部5の周壁にラベル等のシール体21を貼着し、このシール体21によって孔5aを外側から蓋閉しておく。
【0032】
以上説明したように、本実施形態例に係る回転コネクタ1の回転中立位置合わせ方法では、固定側ハウジング2の外筒部5の周壁に環状空間Sに連通する孔5aが設けてあり、光センサ20から孔5aに向けて照射した出射光の戻り光となる反射光が急激に光量変化することにより、可撓性ケーブル4が限界付近まで巻き締められたか否かを検出することができる。したがって、可撓性ケーブル4を損傷させることなく限界付近まで巻き締めるという可動側ハウジング3の巻き締め方向への回転を、回転駆動手段22の駆動力を利用して行わせることができる。また、可撓性ケーブル4を巻き締めた後に可動側ハウジング3を逆方向(巻き戻し方向)へ所定量回転させる際にも、位置合わせマーク8c,5b等を視認することなく回転駆動手段22のモータによって可動側ハウジング3を規定の回転数だけ回転させることができる。それゆえ、可動側ハウジング3を回転中立状態に位置合わせするための一連の作業を自動化でき、作業効率が大幅に向上する。
【0033】
また、本実施形態例に係る回転コネクタ1の回転中立位置合わせ方法では、可撓性ケーブル4が限界付近まで巻き締められた時点で反転部4aが孔5aと対向し、その直後にガイド壁部11aが孔5aと対向するようにしてあるため、外表面の光反射率が大きく異なる可撓性ケーブル4とガイド壁部11aのいずれが孔5aを塞いでいるのかを光センサ20によって検出しやすく、安価な光センサ20を用いて所望の検出精度が確保できる。
【0034】
ただし、環状空間内に可撓性ケーブルが渦巻き状に収納されている回転コネクタであっても本発明は適用可能であり、光センサの検出方法も上記の実施形態例に限定されるものではない。例えば、可撓性ケーブルが渦巻きタイプの場合には、光を反射する物体までの距離が測定可能な光センサを用いることによって、孔が可撓性ケーブルに塞がれているか否かを検出することができる。また、渦巻きタイプの可撓性ケーブルにおいて、孔に対向する位置に反射率の高いシールなどを貼付しておけば、可撓性ケーブルが限界付近まで巻き締められた時点で、光センサへ戻る反射光の光量は急減するので、このような構成であっても、可動側ハウジングを回転中立状態に位置合わせするための作業を自動化できる。
【0035】
また、本実施形態例において、可動側ハウジング3を回転中立状態に位置合わせする作業時に位置合わせマーク8c,5bや覗き窓5cは使用されていないが、回転コネクタ1を自動車のステアリング装置へ組み付けた後に、修理やメンテナンス等で回転コネクタ1をステアリング装置から一旦取り外すことがあり、そのような場合に作業者は位置合わせマーク8c,5bや覗き窓5cを利用することによって、可動側ハウジング3を回転中立状態に無理なく位置合わせすることができる。
【0036】
また、本実施形態例では、光センサ20として発光部と受光部を一体化したものを用いているが、発光部(LED)とこの発光部から出射された光を受光する受光部(フォトダイオード)とが別体で、かつ隔離された状態で配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 回転コネクタ
2 固定側ハウジング
3 可動側ハウジング
4 可撓性ケーブル
4a 反転部
5 外筒部
5a 孔
5b 位置合わせマーク
6 底板部
7 上部ロータ
8 天板部
8b 駆動棒
8c 位置合わせマーク
9 内筒部
10 下部ロータ
11 ホルダ
11a ガイド壁部
12 ローラ
13 開口部
20 光センサ(光学式検出手段)
21シール体
22 回転駆動手段
23 制御手段
S 環状空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒部および底板部を有する固定側ハウジングと、内筒部および天板部を有し前記固定側ハウジングに回動自在に連結された可動側ハウジングと、これら一対のハウジング間に形成された環状空間内に巻き締めおよび巻き戻し可能に収納された可撓性ケーブルとを備えた回転コネクタの組立後に、前記可動側ハウジングを回転中立状態に設定するための回転中立位置合わせ方法であって、
前記外筒部の周壁に前記環状空間に連通する孔を設け、この孔に出射光を透過させると共に前記可撓性ケーブルからの反射光を受光可能な外方位置に光学式検出手段を設置したうえで、モータを駆動源とする回転駆動手段で前記可動側ハウジングを前記固定側ハウジングに対して一方向へ回転させることによって、前記可撓性ケーブルを前記内筒部の外周面に巻き締めていき、前記光学式検出手段の検知信号に基づいて前記可撓性ケーブルが限界付近まで巻き締められたことを検出した時点で、前記回転駆動手段による前記一方向への回転を停止させ、しかる後、前記回転駆動手段によって前記可動側ハウジングを規定の回転数だけ逆方向へ回転させるようにしたことを特徴とする回転コネクタの回転中立位置合わせ方法。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記回転コネクタが、前記環状空間内で前記可撓性ケーブルを反転させる開口部を有し、かつ、この開口部で反転される前記可撓性ケーブルの反転部の外側でこの反転部と対向配置されたガイド壁部を有して回動自在なホルダを備えており、前記ガイド壁部の外表面の光反射率と前記可撓性ケーブルの外表面の光反射率とを異ならせるようにしてあることを特徴とする回転コネクタの回転中立位置合わせ方法。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記回転駆動手段が前記可動側ハウジングを規定の回転数だけ逆方向へ回転させてから、シール体で前記孔を外側から蓋閉することを特徴とする回転コネクタの回転中立位置合わせ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−267530(P2010−267530A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118753(P2009−118753)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)