説明

回転コネクタ装置

【課題】ロテータの回転による騒音の発生を低減させた回転コネクタ装置を提供する。
【解決手段】ステアリングロールコネクタ1は、ステータ11と、ロテータ12と、ベースリング26と、回転ローラ27と、フレキシブルフラットケーブル(ケーブル)14と、を備える。ロテータ12は、ステータ11に対し相対回転可能に取り付けられる。ベースリング26は、ステータ11とロテータ12の間に形成される環状の収容空間15内に配置される。ケーブル14は、ステータ11に配置される第1コネクタ41と、ロテータに配置される第2コネクタ42と、を電気的に接続するとともに、巻かれた状態で収容空間15内に収容される。そして、ベースリング26においてケーブル14側を向く面には、当該ケーブル14の幅方向端部に接触する接触部が、前記ケーブル14の長手方向に間隔(凹部81の大きさに相当する間隔)をあけて複数配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転コネクタ装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば自動車のステアリング側と車体側とのように、回転側と固定側を電気的に接続するための回転コネクタが各種知られている。一般的に、自動車のステアリングは、緊急時に確実な動作を要求されるエアバッグ等の構成を備えている。このため、信頼性の低い摺動電極等は用いず、フラットケーブル等によってステアリング側と車体側とを接続する構成の回転コネクタが採用されている。
【0003】
特許文献1はこの種の回転コネクタを開示する。特許文献1が開示する回転コネクタは、ステータが有する筒状の外側筒部(外筒)と、ロテータが有する筒状の内側筒部(内筒軸部)と、の間に形成された環状の空間に、ある程度の長さを有するフラットケーブルを巻いた状態で収納した構成である。このフラットケーブルは、ステータが備えるコネクタと、ロテータが備えるコネクタと、を電気的に接続している。そして、このフラットケーブルは前記環状の空間内で一方向に巻かれた後、巻かれる方向をU字状に反転されて逆方向に巻かれている。この構成で、当該フラットケーブルの長さに対応する回数だけ、ロテータを時計回り又は反時計回りに回転させることが可能となっている。
【0004】
また、特許文献1が開示する回転コネクタは、フラットケーブルが前記環状の空間内で巻かれた状態でスムーズに回転するように保持するための複数の回転ローラと、当該回転ローラを支持するためのリング部材と、を備えている。前記リング部材は、ステータとロテータとの間に形成された環状の空間内で回転自在に構成されており、ロテータが回転するに従って回転する。そして、フラットケーブルは、リング部材の一側の面に接触した状態で巻かれるようにして前記空間内に収容されている。
【特許文献1】特開2001−126836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような構成の回転コネクタにおいては、ロテータが回転すると、リング部材がロテータ及びステータに対して相対的に回転する。このため、リング部材と、当該リング部材に接触して巻かれているフラットケーブルとの間で摩擦が生じ、ロテータの回転時に摺動音が発生するとともに摩耗の原因となってしまっていた。
【0006】
本願発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、ロテータの回転による騒音の発生を低減させた回転コネクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成の回転コネクタ装置が提供される。即ち、この回転コネクタ装置は、第1ケースと第2ケースと、内部リング板と、ローラと、帯状のケーブルと、を備える。前記第2ケースは、前記第1ケースに対し相対回転可能に取り付けられる。前記内部リング板は、前記第1ケースと前記第2ケースの間に形成される環状の収容空間内に配置される。前記ローラは、前記収容空間内に周方向に並べて複数配置されるとともに、それぞれが前記内部リング板に回転可能に支持される。前記ケーブルは、前記第1ケースに配置される第1コネクタと、前記第2ケースに配置される第2コネクタと、を電気的に接続するとともに、巻かれた状態で前記収容空間内に収容される。そして、前記内部リング板において前記ケーブル側を向く面には、当該ケーブルの幅方向端部に接触する接触部が前記ケーブルの長手方向に間隔をあけて複数配置されている。
【0009】
これにより、ケーブルと内部リング板との接触部分を少なくすることができるので、ケーブルと内部リング板とが相対移動する際に摩擦によって発生する騒音を抑えることができるとともに、摩耗を低減することができる。従って、静音かつ長寿命な回転コネクタ装置を提供することができる。
【0010】
前記の回転コネクタ装置においては、以下のように構成されていることが好ましい。即ち、前記内部リング板は反転部を有する。前記内部リング板の、外周部と、前記反転部と、内周部と、のうち少なくとも何れか1つに対応する箇所には、前記接触部が前記ケーブルの長手方向に間隔をあけて配置されている。
【0011】
即ち、内部リング板は、外周部と、反転部と、内周部と、でケーブルと接触するので、この部分に接触部を間欠的に設けることにより、ケーブルと内部リング板とが相対移動する際に摩擦によって発生する騒音と摩耗を好適に低減することができる。
【0012】
前記の回転コネクタ装置においては、前記内部リング板は、前記第1ケース及び前記第2ケースの少なくとも何れか一方と周方向で360度連続的に接触することが好ましい。
【0013】
これにより、内部リング板と、第1ケース又は第2ケースとの間の接触部分が平滑になるので、引っ掛かりが低減し、回転コネクタ装置としての回転抵抗を抑えることができる。
【0014】
前記の回転コネクタ装置においては、前記接触部は、前記内部リング板の周方向に等間隔に間隔をあけて配置されていることが好ましい。
【0015】
これにより、内部リング板とケーブルとの間の摩擦力が均一となり、騒音と摩耗をより一層低減することができる。
【0016】
前記の回転コネクタ装置においては、前記接触部は、前記内部リング板の周方向の縁部がR形状であることが好ましい。
【0017】
これにより、内部リング板とケーブルとが鋭利な部分で接触しなくなるので、摩擦力が均一となり、騒音と摩耗をより一層低減することができる。
【0018】
前記の回転コネクタ装置においては、前記接触部は、前記内部リング板の周方向の縁部が斜面状であるように構成することもできる。
【0019】
これにより、内部リング板とケーブルとが鋭利な部分で接触しなくなるので、摩擦力が均一となり、騒音と摩耗をより一層低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係るステアリングロールコネクタ1の全体的な構成を示す斜視図、図2はステアリングロールコネクタ1の分解斜視図、図3はステアリングロールコネクタ1の縦断面図、図4はステアリングロールコネクタ1の平面断面図である。
【0021】
図1から図4に示す回転コネクタ装置としてのステアリングロールコネクタ1は、互いに相対回転可能なステータ(第1ケース)11とロテータ(第2ケース)12とによりなるケーブルハウジング13を備えている。
【0022】
ステータ11は、車体側の適宜の部材、例えばステアリングコラムのコンビネーションブラケットスイッチ(図略)に固定されている。前記ケーブルハウジング13の中心には貫通状の差込孔19が形成され、この差込孔19に、前記ステアリングコラムに支持されたステアリングシャフトが挿入されている。前記ステータ11はステアリングシャフトに対して相対回転可能に取り付けられる一方、ロテータ12はステアリングシャフトとともに一体的に回転するように構成されている。また、ステアリングホイール(回転操作具)は、前記ステアリングシャフトに固定されている。
【0023】
図2等に示すように、前記ステータ11は、固定側リング板(底板)21と、この固定側リング板21の外縁の部分に固定された円筒状の外側筒部(第1筒部)31と、を備えている。図3等に示すように、リング板21と外側筒部31とは、互いに垂直となるように取り付けられている。また、前記ロテータ12は、リング状に形成された回転側リング板(天板)22と、この回転側リング板22の内縁から垂直に延びる円筒状の内側筒部(第2筒部)32と、を備えている。ロテータ12はステータ11に対し、前記ステアリングシャフトの回転軸と同一の軸線を中心にして回転することができる。
【0024】
図2に示すように、ステータ11には挿通孔11aが、ロテータ12には係止凹部12aがそれぞれ形成されている。前記挿通孔11aには、回転止めのための固定ピン17を差し込むことができる。この固定ピン17には係止突起17aが形成されており、当該固定ピン17を前記挿通孔11aに挿通させるとともに係止突起17aを係止凹部12aに係合させることにより、ステータ11に対してロテータ12が回転しないようにロックすることができる。
【0025】
この固定ピン17は、ステアリングロールコネクタ1を車体に取り付ける際に、ロテータ12の位置が中間位置(ロテータ12を時計方向に最大に回した位置と、反時計方向に最大に回した位置と、の中間の位置)からズレないように、当該ステアリングロールコネクタ1の製造時に一時的に取り付けられるものである。これにより、ステアリングロールコネクタ1の車体への組付作業の効率を向上させるとともに、組付ミスを防止することができる。なお、ステアリングロールコネクタ1を適切に車体に取り付けた後は、当該固定ピン17を挿通孔11aへの差込み部分の根元で折り取ることにより、ステータ11に対してロテータ12を回転させることが可能となる。
【0026】
ステータ11には第1コネクタ41が取り付けられ、ロテータ12には第2コネクタ42が取り付けられる。第2コネクタ42は、ロテータ12の回転に伴って一体的に回転する。これらのコネクタ41,42には、外部の電気回路(例えば、ホーンスイッチ、エアバッグモジュール、電源等)から引き出された図略のケーブルをそれぞれ接続可能に構成されている。
【0027】
第1コネクタ41は固定側リング板21に配置され、第2コネクタ42は回転側リング板22に配置されている。そして、第1コネクタ41と第2コネクタ42とは、ケーブルハウジング13の内部(後述する収容空間15の内部)に配置されたフレキシブルフラットケーブル(ケーブル)14によって相互に電気的に接続されている。
【0028】
前記固定側リング板21と回転側リング板22は、ロテータ12の回転軸の方向で互いに対面するとともに、それぞれが外側筒部31と内側筒部32とを接続するように配置されている。また、前記内側筒部32は外側筒部31より内側に配置され、前記外側筒部31と内側筒部32は、径方向で互いに対面するように配置されている。以上の構成で、2つのリング板21,22及び2つの筒部31,32によって囲まれた環状の空間である収容空間15が形成されている。
【0029】
また、ロテータ12にはスリーブ16が固定されている。このスリーブ16には突起58が形成されており、ロテータ12の前記突起58に対応する位置には爪59が形成されている。そして、前記爪59に前記突起58を引っ掛けることにより、スリーブ16がロテータ12に相対回転不能に取り付けられている。
【0030】
前記収容空間15の内部には、図2から図4に示すように、リテーナ25と、フレキシブルフラットケーブル14と、が収容されている。リテーナ25は、ベースリング(内部リング板)26と、複数の回転ローラ27とを備えている。
【0031】
前記フレキシブルフラットケーブル14は、適宜巻かれた状態で収容されている。また、前記ベースリング26は環状に形成された板状の部材として構成されており、前記固定側リング板21に近接して配置されている。このベースリング26は、ロテータ12の回転軸を中心にして回転可能に構成されている。回転ローラ27はベースリング26の一面側に周方向に等間隔で並べて配置され、それぞれが、前記ロテータ12の回転軸と平行な軸を中心として回転可能に設けられている。
【0032】
次に、リテーナ25の構成について、主に図3の断面図を参照して説明する。
【0033】
リテーナ25が備える回転ローラ27は、外筒部27aと、2つの弾性係止片27b,27bと、当接軸27cとを有する。外筒部27aは、当該回転ローラ27の外周面を構成する円筒部材であり、中空状に形成され、その一端側(図3では上端側)を塞ぐ蓋部27dを有する。弾性係止片27b,27bは、前記蓋部27dから外筒部27aの内側に向かって突出するように形成されている。また、2つの弾性係止片27b,27bの表面はテーパ面の一部を構成するように形成されており、前記テーパ面は蓋部27dから遠ざかるにつれて(図3の上側から下側に向かうにつれて)徐々に拡がるように構成されている。当接軸27cは、回転ローラ27の回転軸線と一致するように形成された棒状部材であり、前記蓋部27dから外筒部27aの内側に向かって延び、当該外筒部27aの下端から突出するようになっている。
【0034】
リテーナ25が備えるベースリング26の一面側には、回転ローラ27の取り付け位置と対応する位置に、円筒状の取付円筒26aが形成されている。この取付円筒26aの内側は空洞となっており、ベースリング26の一面側から他面側に貫通する貫通孔を形成している。また、取付円筒26aの内周側には、当該取付円筒26aの内側に突出する突出部26bが形成されている。
【0035】
ベースリング26上に回転ローラ27を配置する際には、取付円筒26aに外筒部27aを被せるようにして回転ローラ27を取り付ける。このとき、図3に示すように、当接軸27c及び弾性係止片27bは、当該取付円筒26a内部の空洞に挿入される。そして、当接軸27cの端部が、ベースリング26の取付円筒26aが形成されている側の面とは反対側の面(図3の図面下向きの面)から突出するように構成されている。またこのとき、弾性係止片27bは、突出部26bと接触することで当該回転ローラ27の内向きに若干弾性変形するように構成されている。
【0036】
この弾性係止片27bの弾性変形の復元力により、回転ローラ27全体を図面下向きに移動させる方向の力が働く。一方、前述したように、回転ローラ27を取り付けた状態では、当接軸27cがベースリング26の下面から突出している。このとき、図3に示すように、当接軸27cの下端部は固定側リング板21の上側の面に接触しているので、回転ローラ27が図面下向きに移動することが規制されている。以上の構成で、ベースリング26は、弾性係止片27bの復元力によって図3の図面上向きに付勢される。
【0037】
また、ベースリング26の回転側リング板22側の面(図3の図面上向きの面)であって、当該ベースリング26の内周側端部には、内側筒部32の下端部が接触している。これにより、前述のように上向きの付勢力が作用するベースリング26を内側筒部32で受け止めることができる。
【0038】
以上の構成で、ベースリング26は、回転ローラ27の弾性係止片27bによって収容空間15内で弾性的に支持されている。なお上記のように、回転ローラ27の当接軸27cは固定側リング板21と、ベースリング26は内側筒部32と、それぞれ接触しているが、これらは互いに周方向に摺動可能であり、従ってリテーナ25はステータ11及びロテータ12に対して相対回転することができる。
【0039】
次に、収容空間15内においてフレキシブルフラットケーブル14が収容される構成について図3から図5を参照して説明する。図5は、フレキシブルフラットケーブル14の収容空間15内の様子をより良く示すため、当該フレキシブルフラットケーブル14とリテーナ25以外の構成を取り除いて示した斜視図である。
【0040】
フレキシブルフラットケーブル14は、前記収容空間15内で、ベースリング26の回転ローラ27が配置されている側の面上に位置しながら周方向に巻かれるようにして収容されている。本実施形態においては、図5に示すように2本のフレキシブルフラットケーブル14が収容されている。ただし、フレキシブルフラットケーブル14の数は、必要に応じて1本でも良いし3本以上でも良いことは勿論である。図5に示す2本のフレキシブルフラットケーブル14の第1端部14a,14aは、第1コネクタ41に接続されている。また、図5に示す第2端部14b,14bは、第2コネクタ42に接続されている。
【0041】
2本のフレキシブルフラットケーブル14は、それぞれ第1コネクタ41から収容空間15へ引き出され、2本が重なるようにして外側筒部31の内周面に沿って時計回りに巻かれる。図3に示すように、外側筒部31の内周面はベースリング26の外周側端面より若干内周側に位置しているので、フレキシブルフラットケーブル14は、ベースリング26の外周側端面から少し内周側に入った位置で巻かれる。
【0042】
続いて、2本のフレキシブルフラットケーブル14のうちの片方は、第1反転部61においてU字状に折り返されて向きを反転する。この第1反転部61は、1つの回転ローラ27と、ガイド壁63と、を備える。第1反転部61の回転ローラ27は、フレキシブルフラットケーブル14の前記U字の湾曲部に内側から当接して、当該フレキシブルフラットケーブル14を案内する。また、前記ガイド壁63は、フレキシブルフラットケーブル14の前記U字の湾曲部に外側から当接して、当該フレキシブルフラットケーブル14を案内する。以上の構成で、フレキシブルフラットケーブル14は、前記回転ローラ27とガイド壁63との間を通り、当該回転ローラ27に巻き掛かるようにして向きを反転する。
【0043】
また、もう一方のフレキシブルフラットケーブル14は、第2反転部62においてU字状に折り返されて向きを反転する。この第2反転部62には、第1反転部61のような回転ローラ27やガイド壁63は配置されていないが、フレキシブルフラットケーブル14がU字状に向きを反転するために十分なスペースが確保されている。
【0044】
フレキシブルフラットケーブル14が反転部61,62において向きを反転した後は、内側筒部32の外周面に沿うように反時計回りに巻かれる。図3に示すように、内側筒部32の外周面はベースリング26の内周側端面より若干外周側に位置しているので、フレキシブルフラットケーブル14は、ベースリング26の内周側端面から少し外周側に入った位置で巻かれる。そして、フレキシブルフラットケーブル14は、最終的には収容空間15から引き出されて第2コネクタ42側に接続される。
【0045】
このように、前記収容空間15の内部においてフレキシブルフラットケーブル14は適宜の長さの弛みを有するように巻かれており、この弛みの長さは、ロテータ12がステータ11に対して回転することにより変化する。本実施形態のステアリングロールコネクタ1では、この弛み長さの変化に追従するようにリテーナ25が適宜回転することにより、フレキシブルフラットケーブル14を収容空間15内で常に整列させた状態で保持することができる。
【0046】
具体的には以下のとおりである。例えばロテータ12が図4で見て時計回りに回転すると、フレキシブルフラットケーブル14の内側筒部32に巻かれている部分も一緒に時計回りに回転する。すると、内側筒部32の外周面からフレキシブルフラットケーブル14が巻き戻される。そして、反転部61,62で巻き方向を反転されたフレキシブルフラットケーブル14は、外側筒部31の内周面に巻きとられていく。このとき、第1反転部61において、フレキシブルフラットケーブル14がU字状に反転している部分がガイド壁63に力を加え、リテーナ25全体を時計回りに回転させる。これにより、フレキシブルフラットケーブル14が収容空間15内で折れ曲がったりすることがないように、リテーナ25が備える回転ローラ27によって適切にガイドすることができる。以上のようにして、内側筒部32の外周面からフレキシブルフラットケーブル14が全て巻き戻されるまでは、ロテータ12を時計回りに回転させることができる。
【0047】
逆に、ロテータ12が図4で見て反時計回りに回転すると、フレキシブルフラットケーブル14の内側筒部32に巻かれている部分も一緒に反時計回りに回転する。すると、外側筒部31の内周面からフレキシブルフラットケーブル14が巻き戻され、反転部61,62で巻き方向を反転されて、内側筒部32の外周面に巻かれていく。このとき、第1反転部61において、フレキシブルフラットケーブル14がU字状に反転している部分が回転ローラ27に力を加え、リテーナ25全体を反時計回りに回転させる。以上のようにして、外側筒部31の内周面からフレキシブルフラットケーブル14が全て巻き戻されるまでは、ロテータ12を反時計回りに回転させることができる。
【0048】
以上で説明したように、ロテータ12とリテーナ25は同じ方向に回転するが、このときリテーナ25はロテータ12の回転に比べて減速して回転する。即ち、反転部61,62はロテータ12の回転速度に比べてゆっくりと移動するので、これに対応してリテーナ25もロテータ12よりは遅く回転するのである。なお、ロテータ12とリテーナ25との回転数比はフレキシブルフラットケーブル14の巻き付き径(外側筒部31の内径と内側筒部32の外径)の比に依存するが、これは適宜設定することができる。
【0049】
上記のように、リテーナ25はロテータ12に対して減速して回転するので、ステータ11とリテーナ25、及びロテータ12とリテーナ25は、それぞれ相対移動する。ここで、外側筒部31に巻き付いているフレキシブルフラットケーブル14の部分は、ステータ11に対して移動しない。また、内側筒部32に巻き付いているフレキシブルフラットケーブル14の部分は、ロテータ12と一緒に回転する。従って、ロテータ12の回転時においては、フレキシブルフラットケーブル14とリテーナ25も相対移動することになる。
【0050】
一方、フレキシブルフラットケーブル14はベースリング26の上に巻かれているので、図3の断面図に示すように、ベースリング26の図面上向きの面と、フレキシブルフラットケーブル14の縁部(当該フレキシブルフラットケーブル14の幅方向の端部)と、が接触している。このため、ロテータ12の回転時には、フレキシブルフラットケーブル14とベースリング26とが摺動して摩擦が発生する。従来のステアリングロールコネクタにおいては、この摩擦による摺動音が問題となっていた。
【0051】
この点に関し、本願発明者らは、フレキシブルフラットケーブル14とベースリング26との間の接触部分が長いことが摺動音の発生に関与していることをつきとめた。即ち、フレキシブルフラットケーブル14とベースリング26との接触部分を減らすことにより、摺動音を低減できることが分かったのである。
【0052】
そこで、本実施形態のステアリングロールコネクタ1においては、リテーナ25が以下のように構成されている。図6は、リテーナ25の平面図である。
【0053】
図6に示すように、ベースリング26の回転ローラ27が配置されている側の面であって、当該ベースリング26の外周側と内周側の縁部近傍には、複数の凹部81が円周方向に等間隔で形成されている。図3に示すように、この凹部81は、外側筒部31の内周面に対応する位置と、内側筒部32の外周面に対応する位置と、に形成されている。即ち、フレキシブルフラットケーブル14は外側筒部31の内周面と内側筒部32の外周面に沿って巻かれるので、凹部81はフレキシブルフラットケーブル14の巻かれる位置と対応する位置に形成されている。
【0054】
以上の構成で、例えば図5に示すように、ベースリング26に形成された凹部81に沿うようにして、フレキシブルフラットケーブル14が巻かれることとなる。結果として、フレキシブルフラットケーブル14とベースリング26とが接触する接触部82が、当該フレキシブルフラットケーブル14の長手方向に沿うようにして間隔をあけて複数配置された構成となっている(図6参照)。これにより、フレキシブルフラットケーブル14とベースリング26との接触部分を減らし、摺動音を低減することができる。
【0055】
また、上記の構成に加えて、反転部61,62において接触部82が間欠的に形成されていても良い。反転部61,62においては、フレキシブルフラットケーブル14のU字状の反転部がロテータ12の回転時に激しく動くので、摺動音と摩耗が発生し易くなっているため特に効果的である。具体的には、例えば第1反転部61において、回転ローラ27とガイド壁63との間に、円弧を描くように凹部を複数形成する。これにより、反転部61に、フレキシブルフラットケーブル14のU字状反転部とベースリング26とが接触する接触部が間欠的に形成される。なお、反転部61,62は比較的距離が短いので、接触部を形成せず、反転部61,62の全長にわたって凹部を形成する構成でも良い。
【0056】
また、前記接触部82の周方向の縁部はR形状に形成され、フレキシブルフラットケーブル14がベースリング26と相対移動する際に鋭利な部分を通過しないように構成されている。なお、この接触部82の縁部の形状はR形状に限らず、例えばなだらかな斜面としても良い。また、図6に示すように、凹部81は周方向に等間隔で配置されている(従って、接触部82も等間隔に形成されている)。以上のように構成することで、フレキシブルフラットケーブル14とベースリング26との間の摩擦力を均一化し、摺動音の低減だけでなく、フレキシブルフラットケーブル14の摩耗を低減することができる。
【0057】
また、前述したように、上向きに付勢されるベースリング26の内周側端部は内側筒部32の下端と接触し、ロテータ12の回転時にはこの部分でベースリング26と内側筒部32とが摺動する。従って、この部分はステアリングロールコネクタ1の回転抵抗が発生する箇所の1つであり、可能な限り円滑に摺動可能であることが好ましい。この点を考慮して本実施形態では、図6に示すように、ベースリング26の内周側の凹部81は、当該ベースリング26の内周側端面から若干外周側に入った位置に形成されている。これにより、図3の断面図に示すように、内側筒部32の下端部は凹部81が形成されている部分に接触しないように構成されている。
【0058】
即ち、内側筒部32との接触部分(摺動箇所)を避けて凹部81を形成しているので、ベースリング26と内側筒部32の下端とが周方向で360度連続的に接触することが可能となる。これにより、ベースリング26と内側筒部32との接触部分に凹部が形成される場合と比べて引っ掛かりが減り、接触面(摺動面)が円滑になってステアリングロールコネクタ1としての回転抵抗を低減することができる。
【0059】
以上で説明したように、本実施形態のステアリングロールコネクタ1は、ステータ11と、ロテータ12と、ベースリング26と、回転ローラ27と、フレキシブルフラットケーブル14と、を備える。ロテータ12は、ステータ11に対し相対回転可能に取り付けられる。ベースリング26は、ステータ11とロテータ12の間に形成される環状の収容空間15内に配置される。回転ローラ27は、収容空間15内に周方向に並べて複数配置されるとともにそれぞれがベースリング26に回転可能に支持される。フレキシブルフラットケーブル14は、ステータ11に配置される第1コネクタ41と、ロテータに配置される第2コネクタ42と、を電気的に接続するとともに、巻かれた状態で収容空間15内に収容される。そして、ベースリング26においてフレキシブルフラットケーブル14側を向く面には、当該フレキシブルフラットケーブル14の幅方向端部に接触する接触部82が前記フレキシブルフラットケーブル14の長手方向に間隔をあけて複数配置されている。
【0060】
これにより、フレキシブルフラットケーブル14とベースリング26の接触部分を少なくすることができるので、フレキシブルフラットケーブル14とベースリング26とが相対移動する際に摩擦によって発生する騒音を抑えることができるとともに、摩耗を低減することができる。従って、静音かつ長寿命なステアリングロールコネクタ1を提供することができる。
【0061】
また、本実施形態のステアリングロールコネクタ1は、以下のように構成されている。即ち、ベースリング26は、フレキシブルフラットケーブル14が巻かれる方向をU字状に反転するための反転部61,62を有する。ベースリング26の、外周部と、内周部と、に対応する箇所には、接触部82が前記ケーブルの長手方向に間隔をあけて配置されている。また、反転部61,62に対応する箇所に、接触部82が間隔をあけて配置されていても良い。
【0062】
即ち、ベースリング26は、外周部と、反転部と、内周部と、でフレキシブルフラットケーブル14と接触するので、この部分に接触部82を間欠的に設けることにより、フレキシブルフラットケーブル14とベースリング26とが相対移動する際に摩擦によって発生する騒音と摩耗を好適に低減することができる。
【0063】
また、本実施形態のステアリングロールコネクタ1においては、ベースリング26は、ロテータ12の内側筒部32と周方向で360度連続的に接触している。
【0064】
これにより、ベースリング26と、ロテータ12の内側筒部32との間の接触部分が平滑になるので、引っ掛かりが低減し、ステアリングロールコネクタ1としての回転抵抗を抑えることができる。
【0065】
また、本実施形態のステアリングロールコネクタ1においては、接触部82は、ベースリング26の周方向に等間隔に間隔をあけて配置されている。
【0066】
これにより、ベースリング26とフレキシブルフラットケーブル14の間の摩擦力が均一となり、騒音と摩耗をより一層低減することができる。
【0067】
また、本実施形態のステアリングロールコネクタ1においては、接触部82は、ベースリング26の周方向の縁部がR形状である。
【0068】
これにより、ベースリング26とフレキシブルフラットケーブル14とが鋭利な部分で接触しなくなるので、摩擦力が均一となり、騒音と摩耗をより一層低減することができる。
【0069】
ただし、本実施形態のステアリングロールコネクタ1においては、接触部82は、ベースリング26の周方向の縁部が斜面状であるように構成することもできる。
【0070】
この場合においても、ベースリング26とフレキシブルフラットケーブル14とが鋭利な部分で接触しなくなるので、摩擦力が均一となり、騒音と摩耗をより一層低減することができる。
【0071】
以上に本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記の構成は、例えば以下のように変更することができる。
【0072】
ケーブルハウジング13内でフレキシブルフラットケーブル14が巻かれる方向は、上記実施形態と逆方向でも差し支えない。
【0073】
上記実施形態では、ベースリング26の内周側と外周側に接触部82を間欠的に形成している。また、上記実施形態に加えて、反転部61,62において接触部を間欠的に形成しても良いことは前述のとおりである。この点、摺動音を低減するという本発明の目的からすれば、ベースリング26の内周側、外周側、反転部の少なくとも何れか1箇所に接触部が間欠的に形成されていれば良い。
【0074】
内側筒部32とベースリング26が接触する構成に代えて、外側筒部31とベースリング26が接触する構成とすることができる。この場合、ベースリング26の外周側端部に外側筒部31が接触することになるので、ベースリング26の外周側の凹部81を少し内周側に形成することで、ステータ11とベースリング26との接触面(摺動面)を円滑にすることができる。また、外側筒部31と内側筒部32の両方にベースリング26が接触する構成でも良い。
【0075】
回転ローラ27をベースリング26に対して支持する構成としては、上記の構成に代えて、例えばベースリング26と回転ローラ27との間にバネなどの他の弾性部材を設ける構成や、ベースリング26と回転ローラ27との間にグリースなどの流体を充填して支持する構成等に変更することができる。
【0076】
また、回転ローラ27を弾性的に支持する構成は省略することもできる。
【0077】
上記実施形態及び変形例では、ベースリング26に凹部81を複数形成することで接触部82を間欠的に形成する構成としたが、凹部に代えて、ベースリング26を厚み方向に貫通する孔部を形成しても良い。孔部とすると、ベースリングの重量を低減できる点で好ましい。また、周囲を一段下げた状態で、接触部を相対的な凸部として構成しても良い。要は、ベースリング26とフレキシブルフラットケーブル14とが、当該ケーブル14の長手方向で接触と非接触を交互に繰り返すように凹凸が形成されていれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態に係るステアリングロールコネクタの全体的な構成を示す外観斜視図。
【図2】ステアリングロールコネクタの分解斜視図。
【図3】ステアリングロールコネクタの縦断面図。
【図4】ステアリングロールコネクタの平面断面図。
【図5】収容空間に収容されたフレキシブルフラットケーブルとリテーナの様子を示す斜視図。
【図6】リテーナの平面図。
【符号の説明】
【0079】
1 ステアリングロールコネクタ(回転コネクタ装置)
11 ステータ(第1ケース)
12 ロテータ(第2ケース)
14 フレキシブルフラットケーブル(ケーブル)
15 収容空間
25 リテーナ
26 ベースリング(内部リング板)
27 回転ローラ(ローラ)
41 第1コネクタ
42 第2コネクタ
81 凹部
82 接触部
61 第1反転部(反転部)
62 第2反転部(反転部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ケースと、
前記第1ケースに対し相対回転可能に取り付けられる第2ケースと、
前記第1ケースと前記第2ケースの間に形成される環状の収容空間内に配置される内部リング板と、
前記収容空間内に周方向に並べて複数配置されるとともにそれぞれが前記内部リング板に回転可能に支持されるローラと、
前記第1ケースに配置される第1コネクタと、前記第2ケースに配置される第2コネクタと、を電気的に接続するとともに、巻かれた状態で前記収容空間内に収容される帯状のケーブルと、
を備え、
前記内部リング板において前記ケーブル側を向く面には、当該ケーブルの幅方向端部に接触する接触部が前記ケーブルの長手方向に間隔をあけて複数配置されていることを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転コネクタ装置であって、
前記内部リング板は反転部を有し、
前記内部リング板の、外周部と、前記反転部と、内周部と、のうち少なくとも何れか1つに対応する箇所には、前記接触部が前記ケーブルの長手方向に間隔をあけて配置されていることを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転コネクタ装置であって、
前記内部リング板は、前記第1ケース及び前記第2ケースの少なくとも何れか一方と周方向で360度連続的に接触することを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の回転コネクタ装置であって、
前記接触部は、前記内部リング板の周方向に等間隔に間隔をあけて配置されていることを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の回転コネクタ装置であって、
前記接触部は、前記内部リング板の周方向の縁部がR形状であることを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項6】
請求項1から4までの何れか一項に記載の回転コネクタ装置であって、
前記接触部は、前記内部リング板の周方向の縁部が斜面状であることを特徴とする回転コネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−129285(P2010−129285A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301108(P2008−301108)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)