回転コネクタ装置
【課題】ケーブルが該ケーブルを支持するリテーナから受ける荷重や接触抵抗を大幅に低減し、ケーブルが破損することを防ぐことができる回転コネクタ装置の提供を目的とする。
【解決手段】互いに相対回転するロテータ13とステータ12とを構成し、これらの内部にケーブルCを収容する平面視環状の収容空間Sを構成し、該収容空間Sの底面にリテーナ41を備えた回転コネクタ装置10であって、ロテータ13に、収容空間Sの内周面を構成する内周筒部22を備え、内周筒部22の下部に、リテーナ41の上面の内周部と摺動可能に当接するロテータ側当接部27を構成し、リテーナ41の上面内周部に、内周筒部22の下部と摺動可能に当接するリテーナ側当接部47を構成し、ロテータ側当接部27とリテーナ側当接部47とのうち少なくとも一方に、他方の側へ向けて突出した突出当接部27T,47Tを形成した。
【解決手段】互いに相対回転するロテータ13とステータ12とを構成し、これらの内部にケーブルCを収容する平面視環状の収容空間Sを構成し、該収容空間Sの底面にリテーナ41を備えた回転コネクタ装置10であって、ロテータ13に、収容空間Sの内周面を構成する内周筒部22を備え、内周筒部22の下部に、リテーナ41の上面の内周部と摺動可能に当接するロテータ側当接部27を構成し、リテーナ41の上面内周部に、内周筒部22の下部と摺動可能に当接するリテーナ側当接部47を構成し、ロテータ側当接部27とリテーナ側当接部47とのうち少なくとも一方に、他方の側へ向けて突出した突出当接部27T,47Tを形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステアリングホイール側と車体側との間を電気的に接続するために用いる回転コネクタ装置に関し、詳しくは、ケーブルを巻き回した状態で収容する収容空間の底面に配置され、該ケーブルを案内するリテーナを備えた回転コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に装着される回転コネクタ装置は、相対的に回転可能に同軸上に組み付けられるステータとロテータとで構成されるケーブルハウジングを備えている。
【0003】
回転コネクタ装置は、ケーブルハウジングのうち、ステータが車体側に固定され、ロテータがステアリングホイール側に組み付けられ、例えば、ホーンモジュール、エアバッグモジュール、電源等、車体側とステアリングホイール側との間の電気的な接続を行っている。
【0004】
近年では、回転コネクタ装置は、収容空間の底面に配置され、ケーブルをステアリングの軸回りに回転案内するリテーナを備えたものも提案されている。このようなリテーナを備えることにより、収容空間において巻き回した状態のケーブルは、ステアリングの回転操作に追従して円滑に動くことができる。
【0005】
特許文献1における回転コネクタ装置は、上述したようなリテーナ(移動体)を備えた回転コネクタ装置の1つである。
【0006】
特許文献1のリテーナは、複数のローラとリング状の回動板とで構成され、回動板が収容空間の底面を構成する底板に載置さている。回動板の上面における内周縁部と、収容空間の内周面を構成する内周筒部(上部ロータ)の下端部とは、互いに面状に当接している(特許文献1中の図3参照)。
【0007】
ステアリングが回転すると、回動板と内周筒部とは、互いに面状に接触する端面同士が摺動しながらそれぞれステアリングの軸回りに回転する。
【0008】
この場合、当触部分が面状となるため、当触部分の面積が大きくなり、スムーズな回転が阻害され、ケーブルの動きに追従して回転案内することができず、ケーブルとリテーナとの接触抵抗が大きくなり磨耗することや、ケーブルがリテーナから受ける引張りなどの荷重が大きくなり、ケーブルが破損するという難点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−205915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、収容空間においてステアリングの回転操作に伴うケーブルの動きに追従して該ケーブルを支持するリテーナを円滑に回転させることで、ケーブルがリテーナから受ける荷重や接触抵抗を大幅に低減し、ケーブルが破損することを防ぐことができる回転コネクタ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ステータと、該ステータに対してステアリングと同心状に回転するロテータとを構成し、前記ステータと前記ロテータとの内部に、該ロテータ側と該ステータ側とを電気的に接続するケーブルを巻き回した状態で収容する平面視環状の収容空間を構成し、ケーブルをステアリングと同心状に回転案内可能に前記収容空間の底面に配置するリテーナを備えた回転コネクタ装置であって、前記ロテータに、前記収容空間の内周面を構成する内周筒部を備え、前記内周筒部の下部に、前記リテーナの上面の内周部と摺動可能に当接するロテータ側当接部を構成し、前記リテーナの上面内周部に、前記内周筒部の下部と摺動可能に当接するリテーナ側当接部を構成し、前記ロテータ側当接部と前記リテーナ側当接部とのうち少なくとも一方に、他方の側へ向けて突出した突出当接部を形成したことを特徴とする。
【0012】
この発明の態様として、前記リテーナの前記リテーナ側当接部に対して半径方向の外側に、溝部を形成することができる。
【0013】
またこの発明の態様として、前記突出当接部を、前記リテーナ側当接部から前記ロテータ側当接部へ向けて突出するリテーナ側突出当接部で形成し、前記溝部を、前記リテーナ側突出当接部の基端部が最深となる溝形状で形成するとともに、該基端部から前記リテーナの半径方向の外側へ向けて徐々に浅くなる溝形状で形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、ケーブルがリテーナから受ける荷重や接触抵抗を大幅に低減し、ケーブルが破損することを防ぐことができる回転コネクタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態のステアリングロールコネクタの外観図。
【図2】本実施形態のステアリングロールコネクタの分解斜視図。
【図3】ロテータを外した状態の本実施形態のステアリングロールコネクタの平面図。
【図4】図1中のA−A線矢視断面図。
【図5】図4中の一部を示す拡大端面図。
【図6】本実施形態のリテーナの構成説明図。
【図7】図5中の領域X部の拡大端面図。
【図8】本実施形態のステアリングロールコネクタの作用説明図。
【図9】本実施形態のステアリングロールコネクタの作用説明図。
【図10】他の実施形態のステアリングロールコネクタの構成説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の一実施形態を、以下図面を用いて説明する。
本実施形態のステアリングロールコネクタ10は、図1及至図6に示すように、ケーブルハウジング11と、リテーナ41と、回転ロック構成体51とで構成している。
ケーブルハウジング11は、平面視中央部分にステアリングの回転軸方向(図4中の上下方向)に貫通した差込孔Hが形成された略円筒状の形態で構成されている。差込孔Hは、前記ステアリングコラム(図示省略)から突出するステアリングシャフト(図示省略)の挿入を許容する径で形成されている。
なお、前記ステアリングシャフトの上端部には、回転操作を行うためのステアリングホイールが固定されている。
【0017】
ケーブルハウジング11は、互いに相対回転可能なステータ12とロテータ13とで構成する概ね円筒状をしたケースである。ケーブルハウジング11の内部には、図3及至図5に示すように、フレキシブルフラットケーブルC(以下、「フラットケーブルC」という。)が適宜巻かれた状態で収容される収容空間Sが構成されている。
【0018】
ステータ12は、車体側の適宜の部材、例えばステアリングコラムのコンビネーションブラケットスイッチ(図示省略)に固定され、ステアリングホイールに対して相対回転可能に取り付けられている。前記ステータ12は、底板として環状に形成した固定側リング板14と、この固定側リング板14の外周縁から垂直に延びる円筒状の外周筒部15とで構成されている。ステータ12は、固定側リング板14の外周縁と外周筒部15の下端とを嵌合することで一体に構成している。
【0019】
外周筒部15は、図5に示すように、円筒状の外側外周筒部15oと、該外側外周筒部15oよりも僅かに小径である円筒状の内側外周筒部15iとで構成され、外側外周筒部15oと内側外周筒部15iとが半径方向において近接して対向するよう同心円状に配置した2層構造で構成されている。
【0020】
また、前記内側外周筒部15iの上部には、図5に示すように、収容空間Sで巻き回したフラットケーブルCよりも上方で該収容空間Sに向けて半径方向の内側(径内方向)へ突出し、該フラットケーブルCを上方からガイドするガイド突出片16が鍔状に形成されている。
【0021】
ステータ12には、ステータ側コネクタ17が取り付けられている。
ステータ側コネクタ17は、第1ステータ側コネクタ17Aと第2ステータ側コネクタ17Bとで構成している。第1ステータ側コネクタ17Aと第2ステータ側コネクタ17Bとは、所定間隔を隔ててそれぞれのコネクタ接続口が同じ方向を向くように外周筒部15(外側外周筒部15o)の外側に配置されている。
【0022】
前記ロテータ13は、リング状に形成された天板としての回転側リング板21と、この回転側リング板21の内周縁から垂直に延びる円筒状の内周筒部22とで構成されている。
【0023】
内周筒部22の下端周縁部には、図4、図5、及び、図7に示すように、リテーナ41の上面に当接するロテータ側当接部27を形成している。ロテータ側当接部27は、平坦な面状に形成されている。
【0024】
そしてロテータ13は、ステアリングホイールとともに一体的に回転する構成である。詳しくは、ロテータ13は、ステータ12に対して前記ステアリングの回転軸と同一の軸回りに回転することができる。このときロテータ側当接部27は、リテーナ41の上面に当接しながら摺動する。
【0025】
回転側リング板21は、ロテータ13の回転軸の方向で前記固定側リング板14に対面するように配置されている。
なお、ロテータ13の回転軸の方向は、上述したステアリングの回転軸方向(図4中の上下方向)と同じ方向である。
【0026】
また、前記内周筒部22は、外周筒部15に対して半径方向(図4中の左右方向)内側で対面するように配置されている。
【0027】
ロテータ13には、該ロテータ13の回転に伴って一体的に回転するロテータ側コネクタ23Bが取り付けられる。
ロテータ側コネクタ23は、第1ロテータ側コネクタ23Aと第2ロテータ側コネクタ23Bとで構成している。
【0028】
第1ロテータ側コネクタ23Aと第1ステータ側コネクタ17A、及び、第2ロテータ側コネクタ23Bと第2ステータ側コネクタ17Bとは、それぞれ収容空間Sに配置されたフラットケーブルCによって相互に電気的に接続されている。
【0029】
ステータ側コネクタ17は、ロアコラムカバー(図示省略)内において車体側の電気回路等から引き出されたケーブル(図示省略)にそれぞれ接続される。
ロテータ側コネクタ23は、例えば、ホーンスイッチ、エアバッグユニットなどの電気回路から引き出されたケーブル(図示省略)にそれぞれ接続される。
【0030】
また、上述のリテーナ41は、図2及至図7に示すように、複数の回転ローラ43とベースリング42とで構成され、収容空間Sにおいてロテータ13の回転軸を中心にして回転可能に配置されている。
【0031】
回転ローラ43は、後述のローラ支持突部45と同じ数で備えられ、それぞれローラ支持突部45に軸支され、それぞれが前記ロテータ13の回転軸と平行な軸を中心として回転可能に設けられている。
【0032】
ベースリング42は、平面視円環状をした板状のベースリング本体部44とローラ支持突部45とローラ外周側突部46とで構成されている。
ベースリング本体部44は、前記固定側リング板14に対して回転方向に摺動可能に載置され、ステータ12に対して相対回転可能に構成されている。ベースリング本体部44を前記固定側リング板14に載置したとき、ベースリング本体部44の内周縁部は、図6(a),(b)、及び、図7に示すように、収容空間Sの半径方向の内側Riにおいて前記固定側リング板14の内周縁部と内周筒部22のロテータ側当接部27との間に介在する。
なお、図6(a)は,リテーナ41の平面図であり、図6(b)は、図6(a)中のB−B線拡大端面図である。
【0033】
ベースリング本体部44の上面の内周縁部には、図6(a),(b)、及び、図7に示すように、前記内周筒部22のロテータ側当接部27と対向するリテーナ側当接部47が形成されている。該リテーナ側当接部47は、前記ロテータ側当接部27に対して摺動可能に当接するよう上方へ向けて突出したリテーナ側突出当接部47Tで形成している。
【0034】
ベースリング本体部44の上面のリテーナ側突出当接部47Tに対して半径方向の一回り外側Roには、周方向に沿って凹んだ溝部48が形成されている(図6(a),(b)参照)。溝部48は、リテーナ側突出当接部47Tの外周側基端部47Taが最深部48aとなり、該最深部48aから半径方向の外側Roへ向けて徐々に浅くなる傾斜面48bを有した溝形状で形成している(図6(b)参照)。
【0035】
前記ローラ支持突部45は、ベースリング本体部44の周方向に等間隔ごとに回転ローラ43を軸支可能に上方に向けて突出している。
【0036】
ローラ外周側突部46は、ローラ支持突部45に対して外側で、フラットケーブルCを後述するように回転ローラ43の周りに折り返した折り返し部分(後述する反転部分Cr)を径外側からガイドするようベースリング本体部44に対して上方に向けて突出している。
【0037】
また、フラットケーブルCは、複数の扁平な平角導体Caが所定のピッチで平行に配列され、電気絶縁体Cbで被覆した可撓性を有する帯状の伝送線である(図9参照)。
【0038】
フラットケーブルCは、収容空間Sで2本備え、該収容空間Sにおいて2本を重ね合わせて巻き回した状態で備えている。重ね合わせた2本のうち一方のフラットケーブルCにおける長さ方向の一端側を第1ステータ側コネクタ17A側に接続しているとともに、2本のうち他方のフラットケーブルCにおける長さ方向の一端側を第2ステータ側コネクタ17B側に接続している。
【0039】
重ね合わせた2本のうち一方のフラットケーブルCにおける長さ方向の他端側を第1ロテータ側コネクタ23A側に接続しているとともに、2本のうち他方のフラットケーブルCにおける長さ方向の他端側を第2ロテータ側コネクタ23B側に接続している。
【0040】
このようなフラットケーブルCは、ケーブルハウジング11の内部の収容空間Sにおいて固定側リング板14に対して回転自在に載置されたリテーナ41によって支持され、巻回した状態で収容されている。
【0041】
詳しくは、フラットケーブルCは、収容空間Sにおいて、第1ステータ側コネクタ17A、第2ステータ側コネクタ17Bのそれぞれから前記収容空間Sへ引き込まれ、図3及至図5に示すように、リテーナ41の外側でステータ12の外周筒部15(内側外周筒部15i)の内周面に沿うように巻かれた外側巻き部分Coが構成される。
【0042】
従って、外側巻き部分Coの基端は、ステータ側コネクタ17の位置において固定されている。
なお、フラットケーブルCは、収容空間Sにおいて上述したように2本一組として重ね合わせて巻き回されているが、図4、図5、図7及び図10では、簡略化して一本のみを巻き回した状態で図示している。
【0043】
そして、図3中の破線で示すように、フラットケーブルCは、長さ方向の途中で、複数の前記回転ローラ43のうち1つにU字型に巻き掛かるようにして向きを反転させた反転部分Crが構成される。
【0044】
フラットケーブルCは、その後は、長さ方向の他端側をリテーナ41の内側でロテータ13の内周筒部22の外周面に沿うように巻かれた内側巻き部分Ciが構成される。フラットケーブルCは、最終的には収容空間Sから引き出されて第1ロテータ側コネクタ23A、第2ロテータ側コネクタ23B側に接続される。
【0045】
従って、内側巻き部分Ciの基端は、ロテータ側コネクタ23の位置において固定されている。
【0046】
このように、前記収容空間Sの内部においてフラットケーブルCは、ロテータ13がステータ12に対して回転することにより、外側巻き部分Coと内側巻き部分Ciとの間でそれぞれ巻き付けと巻き解きのいずれかが行われる。
このとき、フラットケーブルCは、外側巻き部分Coと内側巻き部分Ciとの間の巻き状態のバランスの変化に追従するように反転部分Crがリテーナ41とともに適宜回転する。これにより、ステアリングロールコネクタ10は、フラットケーブルCを収容空間S内で常に整列された巻き付け状態で保持することができるとともに、円滑なステアリングホイールの回転操作を可能としている。
【0047】
続いて上述の回転ロック構成体51について簡単に説明する。回転ロック構成体51は、図2に示すように、ロック体52とバネ受けスリーブ54と、該ロック体52および該バネ受けスリーブ54との間に介在する戻しバネ53とで構成されている。
【0048】
バネ受けスリーブ54を戻しバネ53の付勢力に抗して押し上げることでステータ12に対してロテータ13が相対回転しないようロック体52でロックすることができ、或いは、ステアリングホイールの芯金のボス部(図示省略)を挿入することで自由に相対回転することを許容するようロック体52によるロックを解除することができる。
【0049】
上述した構成のステアリングロールコネクタ10は、様々な作用、効果を得ることができるが、特に上述したように、リテーナ側当接部47を、リテーナ側突出当接部47Tで形成したため、以下のような作用、効果を得ることができる。
図7に示すように、リテーナ側突出当接部47Tは、ロテータ側当接部27に向けて突出しているため、リテーナ41の周方向全体に亘って該ロテータ側当接部27に対して半径方向Rにおいて点状に当接させることができる。
【0050】
これにより、従来のようにリテーナ41の内周縁部と内周筒部22の下縁部とを面状に接触させた構成と比較して接触面積を小さくすることができ、ステアリングホイールを回転操作したとき、リテーナ側当接部47とロテータ側当接部27との摺動抵抗を大幅に低減することができる。
【0051】
よって、収容空間Sにおいて巻き回された状態のフラットケーブルCがステアリングホイールの回転操作に伴って収容空間Sの外周側と内周側との各側に対して巻き付けと巻き解きが行われた際にも、収容空間Sの底面においてフラットケーブルCを支持するリテーナ41は、このようなフラットケーブルCの動きに迅速に対応してステアリングの軸回りに滑らかに回転することができる。
【0052】
従って、フラットケーブルCがリテーナ41から受ける荷重や接触抵抗を大幅に低減させることで磨耗するなどして損傷することを防ぐことができる。
【0053】
詳しくは、ステアリングホイールの回転操作の際に、フラットケーブルCの外側巻き部分Coと内側巻き部分Ciとの間の巻き回し状態の変化に伴って、フラットケーブルCの反転部分Crは、U字型に巻き掛けた回転ローラ43に対して該回転ローラ43とローラ外周側突部46との間で弛緩する。
【0054】
このとき、リテーナ41は、回転ローラ43とローラ外周側突部46が反転部分Crから荷重を受ける。これによりリテーナ41は、フラットケーブルCの外側巻き部分Coと内側巻き部分Ciとの間の巻き状態の変化に追従して回転することができる。
【0055】
このとき上述したようにリテーナ側当接部47を、リテーナ側突出当接部47Tで形成することにより、リテーナ41は、円滑に回転することができるため、フラットケーブルCの特に反転部分Crは、リテーナ41から受ける荷重を大幅に低減することができる。
【0056】
従って、フラットケーブルCがリテーナ41から受ける荷重や接触抵抗を大幅に低減し磨耗するなどして損傷することを防ぐことができる。
【0057】
さらにまた、上述したようにリテーナ側当接部47を、リテーナ側突出当接部47Tで形成することにより、図8(a)に示すように、リテーナ側突出当接部47Tとロテータ側当接部27とは、これらの間にリテーナ41の内周縁全周に亘って隙間がなくしっかりと当接するため、粉塵が入り込もうとしても、その侵入を防ぐことができる(図8(a)中の矢印参照)。
【0058】
また、リテーナ41のリテーナ側突出当接部47Tの下端部であって、該リテーナ側突出当接部47Tの半径方向の外側Roには、溝部48を形成しているため、図8(b)に示すように、万が一にも、リテーナ側突出当接部47Tとロテータ側当接部27との間を通じて外側から収容空間Sへ粉塵が入り込んだ場合でも(図8(b)中の仮想線で示した矢印参照)、粉塵Dを収容空間Sにおいて拡散しないよう該溝部48に留めておくことができる。
【0059】
これにより、例えば、粉塵がリテーナ41の上面に付着するなどして、フラットケーブルCとリテーナ41との間に粉塵が介在することがないため、フラットケーブルCとリテーナ41との接触抵抗を抑えることができるとともに、フラットケーブルCとリテーナ41とが粉塵を介して擦れることで耳障りな音が発生することを未然に防ぐことができる。
【0060】
特に、上述したように溝部48を、リテーナ側突出当接部47Tの基端部47Taが最深となる溝形状で形成したため、粉塵が万が一にもロテータ側当接部27とリテーナ側突出当接部47Tとの間を通じて収容空間Sに入り込んだ場合でも、粉塵が収容空間Sに入り込んだ直後に溝部48に留めておくことができる。
【0061】
よって、粉塵が収容空間Sにおいて拡散することを、より確実に防ぐことができる。
【0062】
さらに、溝部48を、最深部48aである基端部47Taからリテーナ41の半径方向の外側Roへ向けて徐々に浅くなる滑らかな溝形状で形成することにより、ステアリングホイールの回転操作に伴ってロテータ側当接部27とリテーナ側突出当接部47Tとが摺動している最中に、ロテータ側当接部27が溝部48に引っ掛かることがなく、ロテータ側当接部27とリテーナ側突出当接部47Tとを円滑に摺動させることができる。
【0063】
同様に、溝部48を、上述したような滑らかな溝形状で形成しているため、図9に示すように、リテーナ41の上面内周部に支持されたフラットケーブルCの内側巻き部分Ciが溝部48に引っ掛かることがなく、内周筒部22の外周面に対する内側巻き部分Ciの円滑な巻き付けと巻き解きを行うことが可能となる。
【0064】
従って、フラットケーブルCは、収容空間S内で常に整列された巻き回し状態でステアリングホイールの回転操作に対応した巻き付けと巻き解きのいずれかをスムーズに行うことができる。
【0065】
なお、上述したように前記ロテータ側当接部27と前記リテーナ側当接部47は、上述した構成に限らず、該ロテータ側当接部27と該リテーナ側当接部47とのうち少なくとも一方の側を他方の側へ向けて突出した形状で形成することができる。
【0066】
例えば、他の実施形態として、図10(a)に示すように、前記リテーナ側当接部47を前記ロテータ側当接部27側へ突出させずに形成し、前記ロテータ側当接部27を前記リテーナ側当接部47側に対して当接するよう突出させたロテータ側突出当接部27Tで形成することができる。
【0067】
この構成の場合においても、リテーナ側当接部47とロテータ側当接部27とを面状に接触させる場合と比較して接触面積を小さくすることができ、ステアリングホイールを回転操作したとき、リテーナ側当接部47とロテータ側当接部27との摺動抵抗を大幅に低減することができる。
【0068】
さらに他の実施形態として、図10(b)に示すように、リテーナ側当接部47を上述したようなリテーナ側突出当接部47Tで形成し、前記ロテータ側当接部27を上述したようなロテータ側突出当接部27Tで形成してもよい。
【0069】
この構成の場合、前記リテーナ側突出当接部47Tと前記ロテータ側当接部27が当接することで、突状の先端部分同士が当接することとなり、リテーナ41の半径方向Rにおいて点状に当接するため、ステアリングホイールを回転操作したとき、リテーナ41の上面内周部と内周筒部の下部との摺動抵抗を大幅に低減することができる。
【0070】
このように本発明は、上述した実施形態に限定せず、様々な実施形態で構成することができる。
なお、この発明の構成と、上述した実施形態との対応において、回転コネクタ装置は、ステアリングロールコネクタ10に対応し、ケーブルは、フラットケーブルCに対応するものとする。
【符号の説明】
【0071】
10…ステアリングロールコネクタ
12…ステータ
13…ロテータ
22…内周筒部
27…ロテータ側当接部
27T…ロテータ側突出当接部
41…リテーナ
47…リテーナ側当接部
47T…リテーナ側突出当接部
47Ta…リテーナ側突出当接部の基端部
48…溝部
S…収容空間
C…フラットケーブル
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステアリングホイール側と車体側との間を電気的に接続するために用いる回転コネクタ装置に関し、詳しくは、ケーブルを巻き回した状態で収容する収容空間の底面に配置され、該ケーブルを案内するリテーナを備えた回転コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に装着される回転コネクタ装置は、相対的に回転可能に同軸上に組み付けられるステータとロテータとで構成されるケーブルハウジングを備えている。
【0003】
回転コネクタ装置は、ケーブルハウジングのうち、ステータが車体側に固定され、ロテータがステアリングホイール側に組み付けられ、例えば、ホーンモジュール、エアバッグモジュール、電源等、車体側とステアリングホイール側との間の電気的な接続を行っている。
【0004】
近年では、回転コネクタ装置は、収容空間の底面に配置され、ケーブルをステアリングの軸回りに回転案内するリテーナを備えたものも提案されている。このようなリテーナを備えることにより、収容空間において巻き回した状態のケーブルは、ステアリングの回転操作に追従して円滑に動くことができる。
【0005】
特許文献1における回転コネクタ装置は、上述したようなリテーナ(移動体)を備えた回転コネクタ装置の1つである。
【0006】
特許文献1のリテーナは、複数のローラとリング状の回動板とで構成され、回動板が収容空間の底面を構成する底板に載置さている。回動板の上面における内周縁部と、収容空間の内周面を構成する内周筒部(上部ロータ)の下端部とは、互いに面状に当接している(特許文献1中の図3参照)。
【0007】
ステアリングが回転すると、回動板と内周筒部とは、互いに面状に接触する端面同士が摺動しながらそれぞれステアリングの軸回りに回転する。
【0008】
この場合、当触部分が面状となるため、当触部分の面積が大きくなり、スムーズな回転が阻害され、ケーブルの動きに追従して回転案内することができず、ケーブルとリテーナとの接触抵抗が大きくなり磨耗することや、ケーブルがリテーナから受ける引張りなどの荷重が大きくなり、ケーブルが破損するという難点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−205915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、収容空間においてステアリングの回転操作に伴うケーブルの動きに追従して該ケーブルを支持するリテーナを円滑に回転させることで、ケーブルがリテーナから受ける荷重や接触抵抗を大幅に低減し、ケーブルが破損することを防ぐことができる回転コネクタ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ステータと、該ステータに対してステアリングと同心状に回転するロテータとを構成し、前記ステータと前記ロテータとの内部に、該ロテータ側と該ステータ側とを電気的に接続するケーブルを巻き回した状態で収容する平面視環状の収容空間を構成し、ケーブルをステアリングと同心状に回転案内可能に前記収容空間の底面に配置するリテーナを備えた回転コネクタ装置であって、前記ロテータに、前記収容空間の内周面を構成する内周筒部を備え、前記内周筒部の下部に、前記リテーナの上面の内周部と摺動可能に当接するロテータ側当接部を構成し、前記リテーナの上面内周部に、前記内周筒部の下部と摺動可能に当接するリテーナ側当接部を構成し、前記ロテータ側当接部と前記リテーナ側当接部とのうち少なくとも一方に、他方の側へ向けて突出した突出当接部を形成したことを特徴とする。
【0012】
この発明の態様として、前記リテーナの前記リテーナ側当接部に対して半径方向の外側に、溝部を形成することができる。
【0013】
またこの発明の態様として、前記突出当接部を、前記リテーナ側当接部から前記ロテータ側当接部へ向けて突出するリテーナ側突出当接部で形成し、前記溝部を、前記リテーナ側突出当接部の基端部が最深となる溝形状で形成するとともに、該基端部から前記リテーナの半径方向の外側へ向けて徐々に浅くなる溝形状で形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、ケーブルがリテーナから受ける荷重や接触抵抗を大幅に低減し、ケーブルが破損することを防ぐことができる回転コネクタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態のステアリングロールコネクタの外観図。
【図2】本実施形態のステアリングロールコネクタの分解斜視図。
【図3】ロテータを外した状態の本実施形態のステアリングロールコネクタの平面図。
【図4】図1中のA−A線矢視断面図。
【図5】図4中の一部を示す拡大端面図。
【図6】本実施形態のリテーナの構成説明図。
【図7】図5中の領域X部の拡大端面図。
【図8】本実施形態のステアリングロールコネクタの作用説明図。
【図9】本実施形態のステアリングロールコネクタの作用説明図。
【図10】他の実施形態のステアリングロールコネクタの構成説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の一実施形態を、以下図面を用いて説明する。
本実施形態のステアリングロールコネクタ10は、図1及至図6に示すように、ケーブルハウジング11と、リテーナ41と、回転ロック構成体51とで構成している。
ケーブルハウジング11は、平面視中央部分にステアリングの回転軸方向(図4中の上下方向)に貫通した差込孔Hが形成された略円筒状の形態で構成されている。差込孔Hは、前記ステアリングコラム(図示省略)から突出するステアリングシャフト(図示省略)の挿入を許容する径で形成されている。
なお、前記ステアリングシャフトの上端部には、回転操作を行うためのステアリングホイールが固定されている。
【0017】
ケーブルハウジング11は、互いに相対回転可能なステータ12とロテータ13とで構成する概ね円筒状をしたケースである。ケーブルハウジング11の内部には、図3及至図5に示すように、フレキシブルフラットケーブルC(以下、「フラットケーブルC」という。)が適宜巻かれた状態で収容される収容空間Sが構成されている。
【0018】
ステータ12は、車体側の適宜の部材、例えばステアリングコラムのコンビネーションブラケットスイッチ(図示省略)に固定され、ステアリングホイールに対して相対回転可能に取り付けられている。前記ステータ12は、底板として環状に形成した固定側リング板14と、この固定側リング板14の外周縁から垂直に延びる円筒状の外周筒部15とで構成されている。ステータ12は、固定側リング板14の外周縁と外周筒部15の下端とを嵌合することで一体に構成している。
【0019】
外周筒部15は、図5に示すように、円筒状の外側外周筒部15oと、該外側外周筒部15oよりも僅かに小径である円筒状の内側外周筒部15iとで構成され、外側外周筒部15oと内側外周筒部15iとが半径方向において近接して対向するよう同心円状に配置した2層構造で構成されている。
【0020】
また、前記内側外周筒部15iの上部には、図5に示すように、収容空間Sで巻き回したフラットケーブルCよりも上方で該収容空間Sに向けて半径方向の内側(径内方向)へ突出し、該フラットケーブルCを上方からガイドするガイド突出片16が鍔状に形成されている。
【0021】
ステータ12には、ステータ側コネクタ17が取り付けられている。
ステータ側コネクタ17は、第1ステータ側コネクタ17Aと第2ステータ側コネクタ17Bとで構成している。第1ステータ側コネクタ17Aと第2ステータ側コネクタ17Bとは、所定間隔を隔ててそれぞれのコネクタ接続口が同じ方向を向くように外周筒部15(外側外周筒部15o)の外側に配置されている。
【0022】
前記ロテータ13は、リング状に形成された天板としての回転側リング板21と、この回転側リング板21の内周縁から垂直に延びる円筒状の内周筒部22とで構成されている。
【0023】
内周筒部22の下端周縁部には、図4、図5、及び、図7に示すように、リテーナ41の上面に当接するロテータ側当接部27を形成している。ロテータ側当接部27は、平坦な面状に形成されている。
【0024】
そしてロテータ13は、ステアリングホイールとともに一体的に回転する構成である。詳しくは、ロテータ13は、ステータ12に対して前記ステアリングの回転軸と同一の軸回りに回転することができる。このときロテータ側当接部27は、リテーナ41の上面に当接しながら摺動する。
【0025】
回転側リング板21は、ロテータ13の回転軸の方向で前記固定側リング板14に対面するように配置されている。
なお、ロテータ13の回転軸の方向は、上述したステアリングの回転軸方向(図4中の上下方向)と同じ方向である。
【0026】
また、前記内周筒部22は、外周筒部15に対して半径方向(図4中の左右方向)内側で対面するように配置されている。
【0027】
ロテータ13には、該ロテータ13の回転に伴って一体的に回転するロテータ側コネクタ23Bが取り付けられる。
ロテータ側コネクタ23は、第1ロテータ側コネクタ23Aと第2ロテータ側コネクタ23Bとで構成している。
【0028】
第1ロテータ側コネクタ23Aと第1ステータ側コネクタ17A、及び、第2ロテータ側コネクタ23Bと第2ステータ側コネクタ17Bとは、それぞれ収容空間Sに配置されたフラットケーブルCによって相互に電気的に接続されている。
【0029】
ステータ側コネクタ17は、ロアコラムカバー(図示省略)内において車体側の電気回路等から引き出されたケーブル(図示省略)にそれぞれ接続される。
ロテータ側コネクタ23は、例えば、ホーンスイッチ、エアバッグユニットなどの電気回路から引き出されたケーブル(図示省略)にそれぞれ接続される。
【0030】
また、上述のリテーナ41は、図2及至図7に示すように、複数の回転ローラ43とベースリング42とで構成され、収容空間Sにおいてロテータ13の回転軸を中心にして回転可能に配置されている。
【0031】
回転ローラ43は、後述のローラ支持突部45と同じ数で備えられ、それぞれローラ支持突部45に軸支され、それぞれが前記ロテータ13の回転軸と平行な軸を中心として回転可能に設けられている。
【0032】
ベースリング42は、平面視円環状をした板状のベースリング本体部44とローラ支持突部45とローラ外周側突部46とで構成されている。
ベースリング本体部44は、前記固定側リング板14に対して回転方向に摺動可能に載置され、ステータ12に対して相対回転可能に構成されている。ベースリング本体部44を前記固定側リング板14に載置したとき、ベースリング本体部44の内周縁部は、図6(a),(b)、及び、図7に示すように、収容空間Sの半径方向の内側Riにおいて前記固定側リング板14の内周縁部と内周筒部22のロテータ側当接部27との間に介在する。
なお、図6(a)は,リテーナ41の平面図であり、図6(b)は、図6(a)中のB−B線拡大端面図である。
【0033】
ベースリング本体部44の上面の内周縁部には、図6(a),(b)、及び、図7に示すように、前記内周筒部22のロテータ側当接部27と対向するリテーナ側当接部47が形成されている。該リテーナ側当接部47は、前記ロテータ側当接部27に対して摺動可能に当接するよう上方へ向けて突出したリテーナ側突出当接部47Tで形成している。
【0034】
ベースリング本体部44の上面のリテーナ側突出当接部47Tに対して半径方向の一回り外側Roには、周方向に沿って凹んだ溝部48が形成されている(図6(a),(b)参照)。溝部48は、リテーナ側突出当接部47Tの外周側基端部47Taが最深部48aとなり、該最深部48aから半径方向の外側Roへ向けて徐々に浅くなる傾斜面48bを有した溝形状で形成している(図6(b)参照)。
【0035】
前記ローラ支持突部45は、ベースリング本体部44の周方向に等間隔ごとに回転ローラ43を軸支可能に上方に向けて突出している。
【0036】
ローラ外周側突部46は、ローラ支持突部45に対して外側で、フラットケーブルCを後述するように回転ローラ43の周りに折り返した折り返し部分(後述する反転部分Cr)を径外側からガイドするようベースリング本体部44に対して上方に向けて突出している。
【0037】
また、フラットケーブルCは、複数の扁平な平角導体Caが所定のピッチで平行に配列され、電気絶縁体Cbで被覆した可撓性を有する帯状の伝送線である(図9参照)。
【0038】
フラットケーブルCは、収容空間Sで2本備え、該収容空間Sにおいて2本を重ね合わせて巻き回した状態で備えている。重ね合わせた2本のうち一方のフラットケーブルCにおける長さ方向の一端側を第1ステータ側コネクタ17A側に接続しているとともに、2本のうち他方のフラットケーブルCにおける長さ方向の一端側を第2ステータ側コネクタ17B側に接続している。
【0039】
重ね合わせた2本のうち一方のフラットケーブルCにおける長さ方向の他端側を第1ロテータ側コネクタ23A側に接続しているとともに、2本のうち他方のフラットケーブルCにおける長さ方向の他端側を第2ロテータ側コネクタ23B側に接続している。
【0040】
このようなフラットケーブルCは、ケーブルハウジング11の内部の収容空間Sにおいて固定側リング板14に対して回転自在に載置されたリテーナ41によって支持され、巻回した状態で収容されている。
【0041】
詳しくは、フラットケーブルCは、収容空間Sにおいて、第1ステータ側コネクタ17A、第2ステータ側コネクタ17Bのそれぞれから前記収容空間Sへ引き込まれ、図3及至図5に示すように、リテーナ41の外側でステータ12の外周筒部15(内側外周筒部15i)の内周面に沿うように巻かれた外側巻き部分Coが構成される。
【0042】
従って、外側巻き部分Coの基端は、ステータ側コネクタ17の位置において固定されている。
なお、フラットケーブルCは、収容空間Sにおいて上述したように2本一組として重ね合わせて巻き回されているが、図4、図5、図7及び図10では、簡略化して一本のみを巻き回した状態で図示している。
【0043】
そして、図3中の破線で示すように、フラットケーブルCは、長さ方向の途中で、複数の前記回転ローラ43のうち1つにU字型に巻き掛かるようにして向きを反転させた反転部分Crが構成される。
【0044】
フラットケーブルCは、その後は、長さ方向の他端側をリテーナ41の内側でロテータ13の内周筒部22の外周面に沿うように巻かれた内側巻き部分Ciが構成される。フラットケーブルCは、最終的には収容空間Sから引き出されて第1ロテータ側コネクタ23A、第2ロテータ側コネクタ23B側に接続される。
【0045】
従って、内側巻き部分Ciの基端は、ロテータ側コネクタ23の位置において固定されている。
【0046】
このように、前記収容空間Sの内部においてフラットケーブルCは、ロテータ13がステータ12に対して回転することにより、外側巻き部分Coと内側巻き部分Ciとの間でそれぞれ巻き付けと巻き解きのいずれかが行われる。
このとき、フラットケーブルCは、外側巻き部分Coと内側巻き部分Ciとの間の巻き状態のバランスの変化に追従するように反転部分Crがリテーナ41とともに適宜回転する。これにより、ステアリングロールコネクタ10は、フラットケーブルCを収容空間S内で常に整列された巻き付け状態で保持することができるとともに、円滑なステアリングホイールの回転操作を可能としている。
【0047】
続いて上述の回転ロック構成体51について簡単に説明する。回転ロック構成体51は、図2に示すように、ロック体52とバネ受けスリーブ54と、該ロック体52および該バネ受けスリーブ54との間に介在する戻しバネ53とで構成されている。
【0048】
バネ受けスリーブ54を戻しバネ53の付勢力に抗して押し上げることでステータ12に対してロテータ13が相対回転しないようロック体52でロックすることができ、或いは、ステアリングホイールの芯金のボス部(図示省略)を挿入することで自由に相対回転することを許容するようロック体52によるロックを解除することができる。
【0049】
上述した構成のステアリングロールコネクタ10は、様々な作用、効果を得ることができるが、特に上述したように、リテーナ側当接部47を、リテーナ側突出当接部47Tで形成したため、以下のような作用、効果を得ることができる。
図7に示すように、リテーナ側突出当接部47Tは、ロテータ側当接部27に向けて突出しているため、リテーナ41の周方向全体に亘って該ロテータ側当接部27に対して半径方向Rにおいて点状に当接させることができる。
【0050】
これにより、従来のようにリテーナ41の内周縁部と内周筒部22の下縁部とを面状に接触させた構成と比較して接触面積を小さくすることができ、ステアリングホイールを回転操作したとき、リテーナ側当接部47とロテータ側当接部27との摺動抵抗を大幅に低減することができる。
【0051】
よって、収容空間Sにおいて巻き回された状態のフラットケーブルCがステアリングホイールの回転操作に伴って収容空間Sの外周側と内周側との各側に対して巻き付けと巻き解きが行われた際にも、収容空間Sの底面においてフラットケーブルCを支持するリテーナ41は、このようなフラットケーブルCの動きに迅速に対応してステアリングの軸回りに滑らかに回転することができる。
【0052】
従って、フラットケーブルCがリテーナ41から受ける荷重や接触抵抗を大幅に低減させることで磨耗するなどして損傷することを防ぐことができる。
【0053】
詳しくは、ステアリングホイールの回転操作の際に、フラットケーブルCの外側巻き部分Coと内側巻き部分Ciとの間の巻き回し状態の変化に伴って、フラットケーブルCの反転部分Crは、U字型に巻き掛けた回転ローラ43に対して該回転ローラ43とローラ外周側突部46との間で弛緩する。
【0054】
このとき、リテーナ41は、回転ローラ43とローラ外周側突部46が反転部分Crから荷重を受ける。これによりリテーナ41は、フラットケーブルCの外側巻き部分Coと内側巻き部分Ciとの間の巻き状態の変化に追従して回転することができる。
【0055】
このとき上述したようにリテーナ側当接部47を、リテーナ側突出当接部47Tで形成することにより、リテーナ41は、円滑に回転することができるため、フラットケーブルCの特に反転部分Crは、リテーナ41から受ける荷重を大幅に低減することができる。
【0056】
従って、フラットケーブルCがリテーナ41から受ける荷重や接触抵抗を大幅に低減し磨耗するなどして損傷することを防ぐことができる。
【0057】
さらにまた、上述したようにリテーナ側当接部47を、リテーナ側突出当接部47Tで形成することにより、図8(a)に示すように、リテーナ側突出当接部47Tとロテータ側当接部27とは、これらの間にリテーナ41の内周縁全周に亘って隙間がなくしっかりと当接するため、粉塵が入り込もうとしても、その侵入を防ぐことができる(図8(a)中の矢印参照)。
【0058】
また、リテーナ41のリテーナ側突出当接部47Tの下端部であって、該リテーナ側突出当接部47Tの半径方向の外側Roには、溝部48を形成しているため、図8(b)に示すように、万が一にも、リテーナ側突出当接部47Tとロテータ側当接部27との間を通じて外側から収容空間Sへ粉塵が入り込んだ場合でも(図8(b)中の仮想線で示した矢印参照)、粉塵Dを収容空間Sにおいて拡散しないよう該溝部48に留めておくことができる。
【0059】
これにより、例えば、粉塵がリテーナ41の上面に付着するなどして、フラットケーブルCとリテーナ41との間に粉塵が介在することがないため、フラットケーブルCとリテーナ41との接触抵抗を抑えることができるとともに、フラットケーブルCとリテーナ41とが粉塵を介して擦れることで耳障りな音が発生することを未然に防ぐことができる。
【0060】
特に、上述したように溝部48を、リテーナ側突出当接部47Tの基端部47Taが最深となる溝形状で形成したため、粉塵が万が一にもロテータ側当接部27とリテーナ側突出当接部47Tとの間を通じて収容空間Sに入り込んだ場合でも、粉塵が収容空間Sに入り込んだ直後に溝部48に留めておくことができる。
【0061】
よって、粉塵が収容空間Sにおいて拡散することを、より確実に防ぐことができる。
【0062】
さらに、溝部48を、最深部48aである基端部47Taからリテーナ41の半径方向の外側Roへ向けて徐々に浅くなる滑らかな溝形状で形成することにより、ステアリングホイールの回転操作に伴ってロテータ側当接部27とリテーナ側突出当接部47Tとが摺動している最中に、ロテータ側当接部27が溝部48に引っ掛かることがなく、ロテータ側当接部27とリテーナ側突出当接部47Tとを円滑に摺動させることができる。
【0063】
同様に、溝部48を、上述したような滑らかな溝形状で形成しているため、図9に示すように、リテーナ41の上面内周部に支持されたフラットケーブルCの内側巻き部分Ciが溝部48に引っ掛かることがなく、内周筒部22の外周面に対する内側巻き部分Ciの円滑な巻き付けと巻き解きを行うことが可能となる。
【0064】
従って、フラットケーブルCは、収容空間S内で常に整列された巻き回し状態でステアリングホイールの回転操作に対応した巻き付けと巻き解きのいずれかをスムーズに行うことができる。
【0065】
なお、上述したように前記ロテータ側当接部27と前記リテーナ側当接部47は、上述した構成に限らず、該ロテータ側当接部27と該リテーナ側当接部47とのうち少なくとも一方の側を他方の側へ向けて突出した形状で形成することができる。
【0066】
例えば、他の実施形態として、図10(a)に示すように、前記リテーナ側当接部47を前記ロテータ側当接部27側へ突出させずに形成し、前記ロテータ側当接部27を前記リテーナ側当接部47側に対して当接するよう突出させたロテータ側突出当接部27Tで形成することができる。
【0067】
この構成の場合においても、リテーナ側当接部47とロテータ側当接部27とを面状に接触させる場合と比較して接触面積を小さくすることができ、ステアリングホイールを回転操作したとき、リテーナ側当接部47とロテータ側当接部27との摺動抵抗を大幅に低減することができる。
【0068】
さらに他の実施形態として、図10(b)に示すように、リテーナ側当接部47を上述したようなリテーナ側突出当接部47Tで形成し、前記ロテータ側当接部27を上述したようなロテータ側突出当接部27Tで形成してもよい。
【0069】
この構成の場合、前記リテーナ側突出当接部47Tと前記ロテータ側当接部27が当接することで、突状の先端部分同士が当接することとなり、リテーナ41の半径方向Rにおいて点状に当接するため、ステアリングホイールを回転操作したとき、リテーナ41の上面内周部と内周筒部の下部との摺動抵抗を大幅に低減することができる。
【0070】
このように本発明は、上述した実施形態に限定せず、様々な実施形態で構成することができる。
なお、この発明の構成と、上述した実施形態との対応において、回転コネクタ装置は、ステアリングロールコネクタ10に対応し、ケーブルは、フラットケーブルCに対応するものとする。
【符号の説明】
【0071】
10…ステアリングロールコネクタ
12…ステータ
13…ロテータ
22…内周筒部
27…ロテータ側当接部
27T…ロテータ側突出当接部
41…リテーナ
47…リテーナ側当接部
47T…リテーナ側突出当接部
47Ta…リテーナ側突出当接部の基端部
48…溝部
S…収容空間
C…フラットケーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、該ステータに対してステアリングと同心状に回転するロテータとを構成し、
前記ステータと前記ロテータとの内部に、該ロテータ側と該ステータ側とを電気的に接続するケーブルを巻き回した状態で収容する平面視環状の収容空間を構成し、
ケーブルをステアリングと同心状に回転案内可能に前記収容空間の底面に配置するリテーナを備えた回転コネクタ装置であって、
前記ロテータに、前記収容空間の内周面を構成する内周筒部を備え、
前記内周筒部の下部に、前記リテーナの上面の内周部と摺動可能に当接するロテータ側当接部を構成し、
前記リテーナの上面内周部に、前記内周筒部の下部と摺動可能に当接するリテーナ側当接部を構成し、
前記ロテータ側当接部と前記リテーナ側当接部とのうち少なくとも一方に、他方の側へ向けて突出した突出当接部を形成した
回転コネクタ装置。
【請求項2】
前記リテーナの前記リテーナ側当接部に対して半径方向の外側に、溝部を形成した
請求項1に記載の回転コネクタ装置。
【請求項3】
前記突出当接部を、前記リテーナ側当接部から前記ロテータ側当接部へ向けて突出するリテーナ側突出当接部で形成し、
前記溝部を、前記リテーナ側突出当接部の基端部が最深となり、該基端部から前記リテーナの半径方向の外側へ向けて徐々に浅くなる溝形状で形成した
請求項2に記載の回転コネクタ装置。
【請求項1】
ステータと、該ステータに対してステアリングと同心状に回転するロテータとを構成し、
前記ステータと前記ロテータとの内部に、該ロテータ側と該ステータ側とを電気的に接続するケーブルを巻き回した状態で収容する平面視環状の収容空間を構成し、
ケーブルをステアリングと同心状に回転案内可能に前記収容空間の底面に配置するリテーナを備えた回転コネクタ装置であって、
前記ロテータに、前記収容空間の内周面を構成する内周筒部を備え、
前記内周筒部の下部に、前記リテーナの上面の内周部と摺動可能に当接するロテータ側当接部を構成し、
前記リテーナの上面内周部に、前記内周筒部の下部と摺動可能に当接するリテーナ側当接部を構成し、
前記ロテータ側当接部と前記リテーナ側当接部とのうち少なくとも一方に、他方の側へ向けて突出した突出当接部を形成した
回転コネクタ装置。
【請求項2】
前記リテーナの前記リテーナ側当接部に対して半径方向の外側に、溝部を形成した
請求項1に記載の回転コネクタ装置。
【請求項3】
前記突出当接部を、前記リテーナ側当接部から前記ロテータ側当接部へ向けて突出するリテーナ側突出当接部で形成し、
前記溝部を、前記リテーナ側突出当接部の基端部が最深となり、該基端部から前記リテーナの半径方向の外側へ向けて徐々に浅くなる溝形状で形成した
請求項2に記載の回転コネクタ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−210616(P2011−210616A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78597(P2010−78597)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
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