説明

回転コネクタ装置

【課題】この発明は、フラットケーブルの反転部分が摺動しながらフラットケーブルが送り出される回数を大幅に低減することができる回転コネクタ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】収容空間に、フラットケーブルCを、巻き締めおよび巻き戻し可能に収容したステアリングロールコネクタ10であって、リテーナ41の上面に、リテーナ41の同心円で周方向に対し等間隔を隔てて配置された複数の回転ローラ43と、複数の回転ローラ43のうち1つの回転ローラ43aの反転部分Crが巻き掛けられる側に、反転部分Crの接離が許容される間隔を隔てて反転部分Crが押し付け許容される規制部48とを設け、反転部分Crが巻き掛けられる一つの回転ローラ43aを、リテーナ41と同心円で周方向に配置された他の回転ローラ43の軸中心を結ぶ基準線Dよりも外側に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両に装着される回転コネクタ装置に関し、詳しくは、ステアリングホイール側と車体側との間をフラットケーブルにより電気的に接続するために用いられる回転コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記フラットケーブルを用いた回転コネクタ装置として、例えば既に提案済みの回転コネクタ(特許文献1参照)には、環状空間内に収納されたフラットケーブルの反転部分を、ホルダ(リテーナ)に軸支された回転ローラと、該回転ローラの近傍に突設されたガイド壁とでガイドする構成について開示されている。
【0003】
詳述すると、図8に示すように、上述のフラットケーブルCの外側巻き部分Coはステータ部材の外筒体61の内周面に沿って巻き付けられ、該フラットケーブルCの内側巻き部分Ciはロータ部材の内筒体62の外周面に沿って巻き付けられた状態で環状空間内に収納されている。また、フラットケーブルCの反転部分Crは、ホルダに軸支された一つの回転ローラ63に巻き掛けられている。また、反転部分Crが巻き掛けられた回転ローラ63は、ホルダと同心円で周方向に複数配置されたその他の回転ローラ63の軸中心Pを通る基準線D上に配置している。
【0004】
上記構成の回転コネクタのロータ部材が時計回り方向に回転する際、フラットケーブルCの反転部分Crがガイド壁64に押し付けられ、その押し付け力によってホルダが時計回り方向に回転する。また、ロータ部材が反時計回り方向に回転する際、フラットケーブルCの反転部分Crが巻き掛けられる回転ローラ63を反時計回り方向に引っ張り、ホルダが反時計回り方向に回転する。
【0005】
上述のような構造では、外筒体61の内周面に巻き付けられたフラットケーブルCの外側巻き部分Coには変曲点が存在しないが、内筒体62の外周面に巻き付けられたフラットケーブルCの内側巻き部分Ciには変曲点が存在するため、内側巻き部分Ciの変曲点を跨ぐ曲率変形率が該変曲点の下流側及び上流側に向けて徐々に大きくなる。
【0006】
したがって、時計回り方向に回転する際、フラットケーブルCにおける曲率変形率の大きい反転部分Crがガイド壁64の外側角部付近に押し当てられた状態で規制され、フラットケーブルCの反転部分Crがガイド壁64の外側角部付近に摺動しながらフラットケーブルCが送り出される。
【0007】
つまり、フラットケーブルCの反転部分Crとガイド壁64とは点接触或いは線接触するので、反転部分Crとガイド壁64との接触面積が小さく、フラットケーブルCの反転部分Crが受けるリテーナからの荷重(反力)が部分的に集中して付与された状態で摺動することとなる。このため、コネクタの回転操作を繰り返した場合、フラットケーブルCのラミネートが磨耗しやすく、例えば磨耗により露出された導体がショートしたり、導体が断線するという問題が生じるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−217974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、フラットケーブルの反転部分が摺動しながらフラットケーブルが送り出される回数を大幅に低減することができる回転コネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、環状の回転側リング板と、該回転側リング板の内周縁に形成された円筒状の内周筒部とで構成するロテータと、環状の固定側リング板と、該固定側リング板の外周縁に形成された円筒状の外周筒部とで構成するステータとを時計回り方向と反時計回り方向とに相対回転可能に嵌合し、前記ロテータの回転側リング板及び内周筒部と、前記ステータの固定側リング板及び外周筒部とで構成する収容空間に、回転ローラが軸支された環状のリテーナと、前記ロテータ側と前記ステータ側とを電気的に接続するとともに、長さ方向の途中に巻き方向を反転してなる反転部分が形成されたフラットケーブルとを、巻き締めおよび巻き戻し可能に収容した回転コネクタ装置であって、前記リテーナの上面に、該リテーナの同心円で周方向に対し等間隔を隔てて配置された複数の回転ローラと、該複数の回転ローラのうち1つの回転ローラの前記反転部分が巻き掛けられる側に、該反転部分の接離が許容される間隔を隔てて前記反転部分が押し付け許容される規制部とを設け、前記反転部分が巻き掛けられる一つの回転ローラを、前記リテーナと同心円で周方向に配置された他の回転ローラの軸中心を結ぶ基準線よりも外側に配置した回転コネクタ装置であることを特徴とする。
【0011】
上記構成により、フラットケーブルの反転部分が摺動しながらフラットケーブルが送り出される回数を大幅に低減することができる。
詳しくは、フラットケーブルの反転部分が巻き掛けられる一つの回転ローラを、リテーナと同心円で周方向に配置された他の回転ローラの軸中心を結ぶ基準線よりも外側に配置しているので、反転部分が通る回転ローラと規制部との間に形成される隙間の形状を反転部分の曲率に合わせることができるとともに、回転コネクタ装置を反時計回り方向から時計回り方向に切り返す際、反転部分が回転ローラとの接触状態が解消され、規制部に接触するまでの、どちらとも接触しない状態となる移動距離を増大することができる。
【0012】
この結果、車両搭載時に回転コネクタ装置が車両走行時に車両ハンドルから受ける微揺動、つまり、わずかな角度だけの反時計回り方向から時計回り方向へ切り返す動きの繰り返しに対し、フラットケーブルと規制部とが接触しない状態を増大することができる。
【0013】
これにより、フラットケーブルの反転部分が規制部と接触し、フラットケーブルの反転部分が規制部に摺動する回数が大幅に低減され、フラットケーブルのラミネートが磨耗しにくくなる。したがって、導体がショート或いは断線することを防止することができる。
【0014】
この発明の態様として、前記回転ローラを、前記内周筒部と前記外周筒部との対向周面間よりも小径に形成することができる。
上記構成により、回転コネクタ装置を反時計回り方向から時計回り方向に切り返す際、反転部分が回転ローラとの接触状態が解消し、反転部分が規制部に接触するまでの、どちらとも接触しない状態となる移動距離をさらに増大することができる。
【0015】
これにより、フラットケーブルの反転部分が規制部と接触し、フラットケーブルの反転部分が規制部に摺動する回数がさらに低減され、フラットケーブルのラミネートが磨耗しにくくなり、導体がショート或いは断線することをさらに防止することができる。
【0016】
また、この発明の態様として、前記規制部の前記反転部分が押し付けられる面に、該反転部分に付与される摩擦抵抗を低減するための摩擦抵抗低減手段を設けることができる。
上記構成により規制部に押し付けられた反転部分に対し付与される摩擦抵抗を摩擦抵抗低減手段により低減することができる。
これにより、反転部分が摺動した際の反転部分の摩擦を低減することができる。
【0017】
前記フラットケーブルは、複数の扁平な平角導体を所定のピッチで平行に配列し、電気絶縁体で被覆した可撓性を有する帯状の伝送線である。また、フラットケーブルは、1本或いは複数本巻き回ししている。
また、摩擦抵抗低減手段は、例えばフッ素樹脂等の摩擦係数が小さいコーティング剤で構成することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、フラットケーブルの反転部分が摺動しながらフラットケーブルが送り出される回数を大幅に低減できる回転コネクタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態のステアリングロールコネクタの外観斜視図。
【図2】本実施形態のステアリングロールコネクタの分解斜視図。
【図3】ロテータを分離したステアリングロールコネクタの平面図。
【図4】図1中のA−A線矢視断面図。
【図5】図4中の一部を示す拡大端面図。
【図6】フラットケーブルを小径の回転ローラに巻き掛けた動作説明図。
【図7】フラットケーブルを大径の回転ローラに巻き掛けた他の動作説明図。
【図8】従来のフラットケーブルの反転部分の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の一実施形態を以下図面に基づいて詳述する。
本実施形態のステアリングロールコネクタ10(SRC10)は、図1及至図5に示すように、ケーブルハウジング11と、リテーナ41と、回転ロックユニット51とで構成している。
【0021】
なお、図1、図2は、ステアリングロールコネクタ10のそれぞれ外観斜視図、分解斜視図である。図3は、後述するロテータ13を分離したステアリングロールコネクタ10の平面図である。図4は、図1中のA−A線矢視断面図である。図5は、図4中の一部を示す拡大端面図である。図6は、フラットケーブルCを小径の回転ローラに巻き掛けた動作説明図である。
【0022】
ケーブルハウジング11は、平面視中央部分に軸方向に貫通する差込孔Hが形成された略円筒状の形態で構成されている。なお、差込孔Hは、前記ステアリングコラム(図示省略)に支持されたステアリングシャフトの挿入を許容する径で形成されている。
また、前記ステアリングシャフトの上端部には、回転操作を行うためのステアリングホイールが固定されている。
【0023】
ケーブルハウジング11は、相対回転可能に嵌合されたステータ12とロテータ13とで構成している。ケーブルハウジング11の内部には、図2及至図5に示すように、フレキシブルフラットケーブルC(以下、「フラットケーブルC」という)を適宜巻いた状態で収容する収容空間Sを構成している。
【0024】
前記収容空間Sは、相対回転可能に構成したステータ12の固定側リング板14及び外周筒部15と、ロテータ13の回転側リング板21及び内周筒部22とで構成されている。
【0025】
ステータ12は、車体側の適宜の部材、例えばステアリングコラムのコンビネーションブラケットスイッチ(図示省略)に固定されている。
また、ステータ12は、底板として環状に形成した固定側リング板14と、この固定側リング板14の外周縁から垂直に延びる円筒状の外周筒部15とで構成している。固定側リング板14の外周縁と外周筒部15の下端とは嵌合により一体に構成している。
【0026】
外周筒部15は、図4、図5に示すように、円筒状の外側外周筒部15oと、該外側外周筒部15oよりも僅かに小径で内側に形成された円筒状の内側外周筒部15iとで構成され、外側外周筒部15oと内側外周筒部15iとが半径方向において近接して対向するよう同心円状に配置した2層構造で構成されている。
【0027】
外側外周筒部15oと内側外周筒部15iとは、ステアリングホイールの軸方向(図4及び図5中の上下方向)の中間部において連結部18により一体に連結されている。外側外周筒部15oと内側外周筒部15iとの半径方向の間に構成される隙間は、連結部18により上下方向に分断され、図5に示すように、上下各側向けて開口した2つの溝部gu,gdが構成されている。
また、上側に向けて開口された溝部guは、ステータ12の軸芯を中心として外側外周筒部15o又は内側外周筒部15iに沿って周方向に連続して形成されている。
【0028】
また、前記内側外周筒部15iの上部には、図5に示すように、収容空間Sで巻き回したフラットケーブルCよりも上方で該収容空間Sに向けて半径方向の内側(径内方向)へ突出し、該フラットケーブルCを上方からガイドするガイド突出片16が鍔状に形成されている。
【0029】
ガイド突出片16は、平面視円環状に内側外周筒部15iの上部の内周縁に沿って収容空間Sへ真直ぐに突出しているが、前記ガイド突出片16の下面16uは、半径方向の内側に沿って上方へ傾斜するテ―パ形状で形成されている。
【0030】
なお、ステータ12には、ステータ側コネクタ17が取り付けられている(図2参照)。
ステータ側コネクタ17は、第1ステータ側コネクタ17Aと第2ステータ側コネクタ17Bとがある。第1ステータ側コネクタ17Aと第2ステータ側コネクタ17Bとは、所定間隔を隔ててそれぞれのコネクタ接続口が同じ方向を向くように外周筒部15の外側に配置されている。
【0031】
前記ロテータ13は、環状に形成された回転側リング板(天板)21と、この回転側リング板21の内周縁から垂直に延びる円筒状の内周筒部22とで構成している。
そしてロテータ13は、図示省略するステアリングホイールに固定され、そのステアリングホイールとともに一体的に回転するように構成されている。したがって、ロテータ13は、ステータ12に対して前記ステアリングホイールの回転軸と同一の軸回りに回転することができる。
【0032】
回転側リング板21は、ロテータ13の回転軸の方向で前記固定側リング板14に対面するように配置されている。
また、前記内周筒部22は、外周筒部15と半径方向で対面するように配置されている。
【0033】
なお、ロテータ13には、該ロテータ13の回転に伴って一体的に回転するロテータ側コネクタ23が取り付けられる。
ロテータ側コネクタ23は、第1ロテータ側コネクタ23Aと第2ロテータ側コネクタ23Bとがある。
【0034】
第1ロテータ側コネクタ23A及び第1ステータ側コネクタ17A、並びに、第2ロテータ側コネクタ23B及び第2ステータ側コネクタ17Bは、それぞれ収容空間Sに配置されたフラットケーブルCによって相互に電気的に接続されている。
【0035】
ステータ側コネクタ17は、ロアコラムカバー(図示省略)内において車体側の電気回路等から引き出されたケーブル(図示省略)にそれぞれ接続される。
ロテータ側コネクタ23は、ステアリングホイール内において、例えばホーンスイッチ、エアバッグユニットなどの電気回路から引き出されたケーブル(図示省略)にそれぞれ接続される。
【0036】
上述のリテーナ41は、複数の回転ローラ43と一つのベースリング42とで構成され、収容空間Sにおいてロテータ13の回転軸を中心にして回転可能に配置されている。
【0037】
回転ローラ43は、リテーナ41と同心円で周方向に対して等間隔を隔てて複数配置している。また、後述のローラ支持突部45と同じ数で備えられ、それぞれローラ支持突部45に軸支され、それぞれが前記ロテータ13の回転軸と平行な軸を中心として回転可能に設けられている。
【0038】
ベースリング42は、平面視円環状をした板状のベースリング本体部44とローラ支持突部45と規制部47,48とで構成されている。
ベースリング本体部44は、前記固定側リング板14に載置され、ステータ12に対して相対回転可能に構成されている。
前記ローラ支持突部45は、ベースリング本体部44の周方向に対し等間隔を隔てて配置され、回転ローラ43を軸支可能に上方に向けて突出している。
【0039】
規制部47,48は、ローラ支持突部45に対して外側で、フラットケーブルCを後述するように回転ローラ43の周りに折り返した折り返し部分(後述する反転部分Cr)を径外側からガイドするようベースリング本体部44に対して上方に向けて突出している。
【0040】
また、規制部47,48は、リテーナ41に軸支された回転ローラ43の間に配置され、回転ローラ43の周面と同一又は同一以上の曲率に湾曲した壁状に形成している。
壁のように立ち上がる形状の規制部47,48のうち、フラットケーブルCの反転部分Crが巻き掛けられる一つの回転ローラ43aと対向する規制部48は、リテーナ41を回転させるために圧力を受ける規制部であり、フラットケーブルCのU字形状又は半円形状に湾曲した反転部分Crを受けるべく、該反転部分Crの湾曲に応じた曲率の曲面49を有している。
【0041】
規制部48は、回転ローラ43aの反転部分Crが巻き掛けられる側で、該反転部分Crの接離が許容される間隔を隔てて、回転ローラ43aの時計回り方向Xの前方に配置している。
【0042】
また、反転部分Crが巻き掛けられる回転ローラ43aは、リテーナ41と同心円で周方向に配置されたその他の回転ローラ43よりも小径に形成されるとともに、該回転ローラ43aの軸中心Paが他の回転ローラ43の軸中心Pを結ぶ基準線Dよりも外側となるように配置している(図3参照)。
【0043】
前記回転ロックユニット51は、図2に示すように、ロック体52とバネ受けスリーブ54と、該ロック体52および該バネ受けスリーブ54との間に介在する戻しバネ53とで構成している。
【0044】
バネ受けスリーブ54を戻しバネ53の付勢力に抗して押し上げることで、ステータ12に対してロテータ13が相対回転しないようロック体52でロックすることができる。或いは、ステアリングホイールの芯金のボス部(図示省略)を挿入することで自由に相対回転することを許容するようロック体52によるロックを解除することができる。
【0045】
フラットケーブルCは、2本を重ね合わせて巻き回した状態で収容空間Sに収容している。重ね合わせた2本のうち一方のフラットケーブルCにおける長さ方向の一端を第1ステータ側コネクタ17A側に接続するとともに、他端を第1ロテータ側コネクタ23A側に接続している。
【0046】
また、重ね合わせた2本のうち他方のフラットケーブルCにおける長さ方向の一端を第2ステータ側コネクタ17B側に接続するとともに、他端を第2ロテータ側コネクタ23B側に接続している。
【0047】
このようなフラットケーブルCは、ケーブルハウジング11の内部の収容空間Sにおいて固定側リング板14に対して回転自在に載置されたリテーナ41によって支持され、巻回した状態で収容されている。
【0048】
詳しくは、フラットケーブルCは、収容空間Sにおいて、第1ステータ側コネクタ17A、第2ステータ側コネクタ17Bのそれぞれから前記収容空間Sへ引き込まれ、図3及至図5に示すように、回転ローラ43の外側でステータ12の外周筒部15(内側外周筒部15i)の内周面に沿うように巻かれた変曲点が存在しない外側巻き部分Coが形成される。
【0049】
このようにして、外側巻き部分Coの基端は、ステータ側コネクタ17の位置において固定されている。
なお、フラットケーブルCは、収容空間Sにおいて上述したように2本一組として重ね合わせて巻き回されているが、図4、図5では、簡略化して一本のみを巻き回した状態で図示している。
【0050】
そして、図3中の破線で示すように、フラットケーブルCの長さ方向の途中には、複数の回転ローラ43のうち1つの回転ローラ43aにU字型に巻き掛かるようにして向きを反転させた反転部分Crが形成される。
【0051】
フラットケーブルCは、その後は、長さ方向の他端側を回転ローラ43の内側でロテータ13の内周筒部22の外周面に沿うように巻かれた変曲点が存在する内側巻き部分Ciが形成される。
また、フラットケーブルCは、最終的には収容空間Sから引き出されて第1ロテータ側コネクタ23A、第2ロテータ側コネクタ23B側に接続される。
【0052】
このようにして、内側巻き部分Ciの基端は、ロテータ側コネクタ23の位置において固定されている。
上述したように、前記収容空間Sの内部においてフラットケーブルCは、ロテータ13とステータ12とが相対回転することにより、外側巻き部分Coと内側巻き部分Ciとの間でそれぞれ巻き付けと巻き解きのいずれかが行われる。
【0053】
上述したステアリングロールコネクタ10によるフラットケーブルCの巻き付け動作及び巻き解き動作を説明する。
巻き付け時及び巻き解き時において、フラットケーブルCは、外側巻き部分Coと内側巻き部分Ciとの間の巻き状態のバランスの変化に追従するように反転部分Crがリテーナ41とともに適宜回転する。
【0054】
これにより、ステアリングロールコネクタ10は、フラットケーブルCを収容空間S内で常に整列された巻き付け状態で保持することができるとともに、円滑なステアリングホイールの回転操作を可能としている。
【0055】
詳しくは、ロテータ13が図3における時計回り方向Xに回転した際、一端がロテータ13に固定されたフラットケーブルCの反転部分Crが、フラットケーブルCの巻き締めと巻き戻しの過程で、回転ローラ43aの周面から巻き解かれながらリテーナ41の周方向で時計回り方向Xに移動する。
【0056】
この移動により、図6中仮想線で示すフラットケーブルCの反転部分Crが曲面49に押し付けられている規制部48は周方向に押され、リテーナ41が時計回り方向Xに回転する(図3参照)。
【0057】
また、反転部分Crが巻き掛けられる回転ローラ43aは、該回転ローラ43aの軸中心Pが他の回転ローラ43の軸中心Pを結ぶ基準線Dよりも外側となるように配置しているので、反転部分Crが通る回転ローラ43aと規制部48の曲面49との間に形成される隙間の形状を反転部分Crの曲率に合わせることができるとともに、ステアリングロールコネクタ10を反時計回り方向から時計回り方向に切り返す際、反転部分Crと回転ローラ43aとの接触状態が解消され、反転部分Crが規制部48の曲面49に接触するまでの、どちらとも接触しない状態となる移動距離を増大することができる。
【0058】
この結果、車両搭載時にステアリングロールコネクタ10が車両走行時に車両ハンドルから受ける微揺動、つまり、わずかな角度だけの反時計回り方向から時計回り方向へ切り返す動きの繰り返しに対し、フラットケーブルCと規制部48の曲面49とが接触しない状態を増大することができる。
【0059】
これにより、フラットケーブルCの反転部分Crが規制部48の曲面49と接触し、フラットケーブルCの反転部分Crと規制部48の曲面49とが摺動する回数が大幅に低減され、フラットケーブルCのラミネートが磨耗しにくくなる。したがって、導体がショート或いは断線することを防止することができる。
【0060】
この結果、フラットケーブルCの反転部分Crと規制部48との接触面積が大きくなり、該反転部分Crが受けるリテーナ41からの荷重(反力)が接触面全体に分散して付与されるので、反転部分Crの広い面積で荷重を受止めることができる。また、フラットケーブルCの反転部分Crと規制部48の曲面49とが接触するための回転角度を大きくすることができる(遊びを大きくできる)。よって本願発明の形態では、磨耗を低減することができる。
このとき、フラットケーブルCの反転部分Crは、規制部48とともに同様に移動するが、回転ローラ43には接触しないまま前記と同様に移動する。
【0061】
ロテータ13が図3における反時計回り方向Yに回転した際、一端がロテータ13に固定されたフラットケーブルCの反転部分Crが、フラットケーブルCの巻き締めと巻き戻しの過程で、リテーナ41の周方向で反対時計回り方向Yに移動する。
【0062】
この移動により、図6中実線で示すフラットケーブルCの反転部分Crが巻き掛けられている回転ローラ43aを反時計回り方向Yに引っ張り、リテーナ41が反時計回り方向Yに回転する(図3参照)。
このとき、フラットケーブルCの反転部分Crは、回転ローラ43aとともに同様に移動するが、規制部48には接触しないまま前記と同様に移動する。
【0063】
以上のように、フラットケーブルCの反転部分Crが巻き掛けられる一つの回転ローラ43aを基準線Dよりも外側に配置しているので、ステアリングロールコネクタ10をフラットケーブルCが巻き戻しされる時計回り方向Xへ回転操作した際、反転部分Crが通る回転ローラ43aと規制部48の曲面49との間に形成される隙間の形状を反転部分Crの曲率に合わせることができるとともに、ステアリングロールコネクタ10を反時計回り方向から時計回り方向に切り返す際、反転部分Crと回転ローラ43aとの接触状態が解消され、反転部分Crが規制部48の曲面49に接触するまでの、どちらとも接触しない状態となる移動距離を増大することができる。
【0064】
この結果、車両搭載時にステアリングロールコネクタ10が車両走行時に車両ハンドルから受ける微揺動、つまり、わずかな角度だけの反時計回り方向から時計回り方向へ切り返す動きの繰り返しに対し、フラットケーブルCと規制部48の曲面49とが接触しない状態を増大することができる。
【0065】
これにより、フラットケーブルCの反転部分Crが規制部48の曲面49と接触し、フラットケーブルCの反転部分Crと規制部48の曲面49とが摺動する回数が大幅に低減され、フラットケーブルCのラミネートが磨耗しにくくなる。したがって、導体がショート或いは断線することを防止することができる。
【0066】
また、回転ローラ43aを、小径に形成することにより、ステアリングロールコネクタ10を反時計回り方向から時計回り方向に切り返す際、反転部分Crが回転ローラ43aとの接触状態が解消し、反転部分Crが規制部48の曲面49に接触するまでの、どちらとも接触しない状態となる移動距離をさらに増大することができる。
【0067】
これにより、フラットケーブルCの反転部分Crが規制部48の曲面49と接触し、フラットケーブルCの反転部分Crと規制部48の曲面49とが摺動する回数がさらに低減され、フラットケーブルCのラミネートが磨耗しにくくなり、導体がショート或いは断線することをさらに防止することができる。
【0068】
図7はフラットケーブルCの反転部分Crを大径の回転ローラ50に巻き掛けた他の動作説明図である。
上記回転ローラ50は、その他の回転ローラ43と略同径に形成されるとともに、該回転ローラ50の軸中心Paが他の回転ローラ43の軸中心Pを結ぶ基準線Dよりも外側となるように配置している。
【0069】
つまり、小径の回転ローラ43aを配置しなくても、フラットケーブルCの反転部分Crが巻き掛けられる回転ローラ50を基準線Dよりも外側に配置することにより、フラットケーブルCの内側巻き部分Ciの変曲点を跨ぐ曲率変形率を低下させることができる。
【0070】
この結果、フラットケーブルCの反転部分Crと規制部48との接触面積が大きくなり、該反転部分Crが受けるリテーナ41からの荷重が接触面全体に分散して付与されるので、前記実施形態と略同等の作用及び効果を奏することができる。
【0071】
この発明の構成と、前記実施形態との対応において、
この発明の回転コネクタ装置は、実施形態のステアリングロールコネクタ10に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0072】
X…時計回り方向
Y…反時計回り方向
C…フラットケーブル
Cr…反転部分
S…収容空間
10…ステアリングロールコネクタ
11…ケーブルハウジング
12…ステータ
13…ロテータ
15…外周筒部
22…内周筒部
41…リテーナ
43a,50…回転ローラ
47,48…規制部
49…曲面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の回転側リング板と、該回転側リング板の内周縁に形成された円筒状の内周筒部とで構成するロテータと、環状の固定側リング板と、該固定側リング板の外周縁に形成された円筒状の外周筒部とで構成するステータとを時計回り方向と反時計回り方向とに相対回転可能に嵌合し、
前記ロテータの回転側リング板及び内周筒部と、前記ステータの固定側リング板及び外周筒部とで構成する収容空間に、
回転ローラが軸支された環状のリテーナと、前記ロテータ側と前記ステータ側とを電気的に接続するとともに、長さ方向の途中に巻き方向を反転してなる反転部分が形成されたフラットケーブルとを、巻き締めおよび巻き戻し可能に収容した回転コネクタ装置であって、
前記リテーナの上面に、該リテーナの同心円で周方向に対し等間隔を隔てて配置された複数の回転ローラと、該複数の回転ローラのうち1つの回転ローラの前記反転部分が巻き掛けられる側に、該反転部分の接離が許容される間隔を隔てて前記反転部分が押し付け許容される規制部とを設け、
前記反転部分が巻き掛けられる一つの回転ローラを、前記リテーナと同心円で周方向に配置された他の回転ローラの軸中心を結ぶ基準線よりも外側に配置した
回転コネクタ装置。
【請求項2】
前記回転ローラを、前記内周筒部と前記外周筒部との対向周面間よりも小径に形成した
請求項1に記載の回転コネクタ装置。
【請求項3】
前記規制部の前記反転部分が押し付けられる面に、該反転部分に付与される摩擦抵抗を低減するための摩擦抵抗低減手段を設けた
請求項1又は2に記載の回転コネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−258546(P2011−258546A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105082(P2011−105082)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)