説明

回転コネクタ

【課題】可動側ハウジングを回動中立位置に保持するためのロック機構を簡素かつ安価に実現できると共に、特別なロック解除作業が不要で廃棄物も生じない回転コネクタを提供すること。
【解決手段】固定側ハウジング1の外筒部4に装着されて可動側ハウジング2の天板部6aの自由な回動を阻止可能なストッパ部材10を備えた回転コネクタであって、ストッパ部材10は一対の弾性腕片13を外筒部4の係着部4bに係着させることにより、頂部11を天板部6aの切欠き部6e内に挿入させたロック位置に保持される。また、この回転コネクタをステアリング装置に組み付けた後にハンドルを回転させると、所要の回転力が付与される天板部6aが頂部11を押し下げるのに伴い、ストッパ部材10の一対のや弾性脚片12が弾性変形して外筒部4の係止部4cにスナップ結合されるため、頂部11が切欠き部6e内から退避してストッパ部材10はロック解除位置に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動自在に連結された固定側ハウジングと可動側ハウジングとを、両ハウジング間の環状空間内に収納された可撓性ケーブルを介して電気的に接続する回転コネクタに係り、特に、回転コネクタをステアリング装置に組み付けるまで可動側ハウジングを回動中立位置に保持しておくためのロック機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転コネクタは、回動自在に連結された固定側ハウジングおよび可動側ハウジングと、これら両ハウジング間に画成される環状空間内に収納・巻回された可撓性ケーブルとで概略構成されており、この可撓性ケーブルの両端部は両ハウジングに固定された状態で外部回路と接続可能である。そして、可動側ハウジングを固定側ハウジングに対して正逆いずれかの方向へ回転させると、その回転方向に応じて可撓性ケーブルが環状空間内で巻き締めあるいは巻き戻され、いずれの状態においても両ハウジング間の電気的接続が可撓性ケーブルを介して維持されるようになっている。
【0003】
このように概略構成された回転コネクタは、固定側ハウジングをステアリングコラム側に固定すると共に可動側ハウジングをハンドル側に連結した状態で自動車のステアリング装置に組み付けられ、ハンドルに装着されたエアーバッグシステムやホーン回路等の電気的接続手段として使用される。この場合において、回転コネクタの可動側ハウジングはハンドルの回動中立位置を基準にして正逆両方向へほぼ同量ずつ回転できなければならず、そのため、回転コネクタをステアリング装置に組み付けるまで可動側ハウジングを回動中立位置にロックしておく必要があり、かかるロック機構を付設した回転コネクタが一般的となっている。
【0004】
この種のロック機構付き回転コネクタの従来例として、固定側ハウジングに装着したストッパ部材の一部を可動側ハウジングに係合させることによって該可動側ハウジングを自由に回転できないロック状態となし、回転コネクタをステアリング装置に組み付けた後、ストッパ部材を折り曲げるなどして途中で破断させることによって該ロック状態を解除できるように構成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、他の従来例として、可動側ハウジングに設けたガイド孔内に、第1コイルばねを介して上下に対向する操作部およびロックキーと、このロックキーを上下動可能に支持する第2コイルばねとを配置させ、固定側ハウジングに設けた切欠き部にロックキーを係合させることによって可動側ハウジングがロック状態となるように構成したものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。このものは、回転コネクタをステアリング装置に組み付ける際に、可動側ハウジングのガイド孔から上方へ突出している操作部がハンドルに設けられたハンドルハブに押し下げられるのに伴い、ロックキーが第2コイルばねを圧縮させながら下動するため、固定側ハウジングの切欠き部からロックキーが離脱して可動側ハウジングがロック解除状態となる。また、ハンドルハブとの相対位置等に誤差があって操作部が過度に押し下げられても、第1コイルばねの圧縮によってその誤差分を吸収できるため、ロックキーに無理な力が加わらず確実にロック解除できるように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−97141号公報
【特許文献2】特開2002−75575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された前者の従来例は、可動側ハウジングのロック解除時に、固定側ハウジングに装着されているストッパ部材に指を掛けるなどして破断させなければならないため、ロック解除作業が煩雑であるという問題があった。また、破断させて取り去ったストッパ部材を廃棄しなければならないため、廃棄物の減量化という観点からも好ましくはなかった。
【0008】
これに対して特許文献2に開示された後者の従来例は、特別なロック解除作業が不要で廃棄物も生じないという利点はあるものの、ロック機構の構造が複雑で部品点数も多いため、高コスト化を余儀なくされるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、可動側ハウジングを回動中立位置に保持するためのロック機構を簡素かつ安価に実現できると共に、特別なロック解除作業が不要で廃棄物も生じない回転コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の回転コネクタは、外筒部および底板部を有する固定側ハウジングと、内筒部および天板部を有し前記固定側ハウジングに回動自在に連結された可動側ハウジングと、これら両ハウジング間に形成された環状空間内に巻き締めおよび巻き戻し可能に収納された可撓性ケーブルと、前記外筒部に装着されて前記可動側ハウジングの自由な回動を阻止可能なストッパ部材とを備え、前記天板部に前記ストッパ部材の頂部が挿入可能な切欠き部を設けると共に、前記ストッパ部材が、前記頂部を前記切欠き部内に挿入させて前記天板部の自由な回動を阻止するロック位置と、所要の回転力が付与された前記天板部に押し下げられて前記頂部を前記切欠き部内から退避させたロック解除位置とで、それぞれ前記外筒部に保持されるようになし、かつ前記ロック解除位置では、前記ストッパ部材に設けられた係合部と、この係合部を係止するために前記外筒部に設けられた係止部とが、少なくとも一方の弾性変形によってスナップ結合されるように構成にした。
【0011】
このように構成された回転コネクタにおいて、外筒部に装着されたストッパ部材がロック位置に保持されているときには、天板部の切欠き部内に挿入せしめたストッパ部材の頂部によって該天板部の自由な回動を阻止することができるため、可動側ハウジングを回動中立位置に保持しておくことが可能となる。また、こうしてストッパ部材をロック位置に保持したまま回転コネクタをステアリング装置に組み付け、可動側ハウジングがハンドルに連結された後にハンドルを回転させると、ハンドルから可動側ハウジングに大きな回転力が付与されるため、ストッパ部材の頂部は天板部に押し下げられて切欠き部内から退避する。その結果、天板部の回動がストッパ部材に規制されなくなって可動側ハウジングがハンドルと一体的に回動できるようになり、押し下げられたストッパ部材は係合部を外筒部の係止部にスナップ結合させることによってロック解除位置に保持されるため、ロック解除状態を安定的に維持することができる。したがって、可動側ハウジングを回動中立位置に保持するためのロック機構がストッパ部材という1部品を追加するだけで実現できることとなり、特別なロック解除作業も不要である。また、ロック解除時に廃棄物を生じることもない。
【0012】
上記の構成において、ストッパ部材の係合部が、下方へ延出して開閉方向に弾性変形可能な一対の弾性脚片からなると共に、外筒部の係止部が一対の弾性脚片で挟圧可能な位置に突設されており、ストッパ部材がロック位置からロック解除位置へ下動するのに伴い、一対の弾性脚片が係止部の外壁に沿って摺動しながら弾性変形するようにしてあると、ストッパ部材の下動時に一対の弾性脚片を開方向へ弾性変形させた後に自身の弾性復帰力によって係止部にスナップ結合させることができるため、これら弾性脚片によって係止部を抱持するように挟み込むことができる。そのため、係合部(一対の弾性脚片)を円滑かつ確実に係止部にスナップ結合させることが容易となり、スナップ結合状態で懸念されるガタも生じにくなる。
【0013】
また、上記の構成において、ストッパ部材に、下方へ延出して開閉方向に弾性変形可能な一対の弾性腕片が設けられていると共に、外筒部に、一対の弾性腕片を係着させてストッパ部材をロック位置に保持するための係着部が設けられており、ロック位置では一対の弾性腕片が閉方向に弾性変形した状態で前記係着部に係着されるようにしてあると、簡素な構造でストッパ部材をロック位置に保持することができる。
【0014】
また、上記の構成において、ストッパ部材の頂部の外壁面と、この外壁面に当接可能な天板部の切欠き部の内壁面のうち、少なくとも一方は傾斜面として形成されていることが好ましく、こうすることによって、所要の回転力が付与された天板部でストッパ部材を無理なく押し下げることができる。
【0015】
また、上記の構成において、外筒部がその外周面に露出するガイド凹所を有しており、このガイド凹所内に前記係止部が設けられていると共に、ストッパ部材がロック位置に保持されているときに頂部がガイド凹所から上方へ突出しており、このストッパ部材がロック解除位置まで下動すると頂部がガイド凹所内へ没入するようにしてあると、ストッパ部材が手動で上下動可能なロック機構となるため、ハンドル交換時などに手動でストッパ部材をロック解除位置からロック位置まで上動させておくことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の回転コネクタは、ストッパ部材がロック位置とロック解除位置でそれぞれ外筒部に保持されるようになっており、ロック位置ではストッパ部材の頂部によって天板部の自由な回動が阻止できるため、可動側ハウジングを回動中立位置に保持しておくことができる。そして、ストッパ部材をロック位置に保持したまま回転コネクタをステアリング装置に組み付けて、可動側ハウジングに連結したハンドルを回転させると、可動側ハウジングに大きな回転力が付与されるためストッパ部材の頂部が天板部に押し下げられることとなり、それゆえ天板部の回動がストッパ部材に規制されなくなって可動側ハウジングがハンドルと一体的に回動できるようになる。また、押し下げられたストッパ部材は係合部を外筒部の係止部にスナップ結合させることによってロック解除位置に保持されるため、ロック解除状態を安定的に維持することができる。すなわち、この回転コネクタは、可動側ハウジングを回動中立位置に保持するためのロック機構がストッパ部材という1部品を追加するだけで安価に実現できて、特別なロック解除作業は不要であり、かつロック解除時に廃棄物を生じることもない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態例に係る回転コネクタの上面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図4】図3に示すストッパ部材の正面図である。
【図5】該ストッパ部材がロック位置からロック解除位置まで下動する際の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1〜図3に示すように、本実施形態例に係る回転コネクタは、回動自在に連結された固定側ハウジング1および可動側ハウジング2と、これら両ハウジング1,2間に画成される環状空間S内に収納・巻回された可撓性ケーブル3とで概略構成されており、固定側ハウジング1にストッパ部材10が装着されている。このストッパ10は、回転コネクタを図示せぬステアリング装置に組み付けるまで可動側ハウジング2を回動中立位置に保持しておくためのものである。
【0019】
固定側ハウジング1は、上下両端を開放したリング状の外筒部4と、この外筒部4の下部開放端を覆うように配置された底板部5とで構成されており、これら外筒部4と底板部5は合成樹脂で成形されている。外筒部4の外周面には所定箇所にガイド凹所4aが刻設されており、このガイド凹所4a内にストッパ部材10が上下動可能に装着されている。図3に示すように、ガイド凹所4aは上部が幅狭で下部が幅広に形成されており、幅狭部分の相対向する内壁面の下端部に相手方に向かってせり出す一対の係着部4bが突設されていると共に、幅広部分の底部中央に丸みを帯びた係止部4cが突設されている。この係止部4cは、中膨らみ形状で上端側が先細りに形成されている。
【0020】
底板部5はスナップ結合等によって外筒部4の下端に一体化されており、この底板部5の中央部には、図示せぬステアリング軸が挿通されるセンタ孔5aが形成されている。また、底板部5の外縁部には下側コネクタ導出部5bが一体形成されており、この下側コネクタ導出部5b内に下側コネクタ(リードブロック)5cが固設されている。
【0021】
可動側ハウジング2は、天板部6aおよび該天板部6aの内周縁から垂下する内筒部6bを有する上部ロータ6と、内筒部6bにスナップ結合された下部ロータ7とで構成されており、これら上部ロータ6と下部ロータ7は合成樹脂で成形されている。天板部6aは外筒部4の上部開放端を覆うようにリング状に形成されており、天板部6aの上面に一体形成された上側コネクタ導出部6c内に上側コネクタ(リードブロック)6fが固設されている。また、天板部6aの上面には一対の連結ピン(駆動棒)6dが立設されており、これら連結ピン6dを介して可動側ハウジング2が図示せぬハンドル側に連結されるようになっている。この天板部6aの外周部には所定箇所に、傾斜した内壁面を有する切欠き部6eが形成されており、可動側ハウジング2を固定側ハウジング1に対して回動中立位置に設定すると、切欠き部6eがガイド凹所4aの真上に配置されるようになっている(図3参照)。なお、天板部6aと外筒部4との間には若干の隙間が確保されており、この隙間によって可動側ハウジング2が固定側ハウジング1に対して円滑に回動できるようになっている。
【0022】
下部ロータ7にはセンタ孔5aよりも大径な鍔部7aが一体形成されており、この鍔部7a上に底板部5の内周部を配置させた状態で下部ロータ7を上部ロータ6の内筒部6bにスナップ結合することによって、固定側ハウジング1と可動側ハウジング2とが回動自在に連結される。
【0023】
可撓性ケーブル3は環状空間S内に巻き締めおよび巻き戻し可能に収納されている。この環状空間Sは、外筒部4および底板部5と天板部6aおよび内筒部6bとの間に画成されており、可撓性ケーブル3は環状空間S内で巻回方向を途中で反転させている。すなわち、図2に示すように、環状空間S内にはリング状のローラホルダ8が回動自在に収納されており、このローラホルダ8上に軸支されたローラ9に可撓性ケーブル3を略半周だけ巻き掛けることによって、その巻回方向を途中で反転させている。このようにすると環状空間S内に収納される可撓性ケーブル3の長さを短縮化できる。また、可撓性ケーブル3の長手方向の両端部は、それぞれ外筒部4と内筒部6bに固定された後に下側コネクタ5cと上側コネクタ6fに電気的に導出されており、これらコネクタ5c,6fに図示せぬ外部コネクタが接続されるようになっている。これにより、可撓性ケーブル3を介して、ステアリングコラム側に備えられた電気部品と、ハンドル側に備えられた電気部品とを電気的に接続することができる。
【0024】
ストッパ部材10は合成樹脂で成形された一体品である。このストッパ部材10は、台形状の頂部11と、頂部11から下方へ延出して開閉方向に弾性変形可能な一対の弾性脚片12と、頂部11から斜め下方へ延出して開閉方向に弾性変形可能な一対の弾性腕片13とからなる。各弾性脚片12の先端部側には凹状内壁面12bを有する湾曲部12aが形成されており、相対向する湾曲部12aによって外筒部4の係止部4cが挟圧できるようになっている。図5に示すように、一対の弾性脚片12が閉じているとき相対向する凹状内壁面12bの輪郭は係止部4cの外形と類似しているため、一対の湾曲部12aによって係止部4cを抱持するように挟み込むことができる。また、各弾性腕片13の先端部には凹溝13bを有する爪部13aが形成されており、これら弾性腕片13を閉方向に弾性変形させて外筒部4の相対向する係着部4bを各凹溝13b内に嵌入させることによって、各爪部13aが各係着部4bに係着できるようになっている。
【0025】
このストッパ部材10は外筒部4のガイド凹所4a内に装着されており、図5(A)に示すロック位置と図5(C)に示すロック解除位置との間で上下動させることが可能である。そして、ロック位置では爪部13aを係着部4bに係着させることによってストッパ部材10が外筒部4に保持され、ロック解除位置では湾曲部12aを係止部4cに係止せることによってストッパ部材10が外筒部4に保持されるようになっている。
【0026】
ストッパ部材10がロック位置に保持されているときには、図5(A)に示すように、頂部11がガイド凹所4aの上方に突出するため、この頂部11を天板部6aの切欠き部6e内に挿入させることによって該天板部6aの自由な回動を阻止することができる。前述したように可動側ハウジング2を固定側ハウジング1に対して回動中立位置に設定すると切欠き部6eはガイド凹所4aの真上に配置されるため、この切欠き部6e内にストッパ部材10の頂部11を挿入して天板部6aを自由に回動できないロック状態となしておけば、可動側ハウジング2を回動中立位置に保持しておくことができる。
【0027】
また、ストッパ部材10をロック位置から下動させると、まず図5(B)に示すように、一対の弾性脚片12の先端部が外筒部4の係止部4cの外壁に沿って摺動しながら開方向へ弾性変形し、さらにストッパ部材10を下動させると、頂部11が切欠き部6e内から押し出される直前に各弾性脚片12の湾曲部12aが係止部4cにスナップ結合されて、ストッパ部材10は図5(C)に示すロック解除位置に保持されることになる。これにより、ストッパ部材10の頂部11を切欠き部6e内から完全に退避させることができるため、天板部6aは頂部11に規制されることなく自由に回動できるロック解除状態となる。なお、かかるストッパ部材10の下動時に、一対の弾性脚片12は係止部4cの外壁に沿って押し広げられた後に自身の弾性復帰力で該係止部4cにスナップ結合するので、これら弾性脚片12は円滑かつ確実に係止部4cにスナップ結合させることができる。また、前述したように、一対の弾性脚片12の湾曲部12aによって係止部4cを抱持するように挟み込むことができるので、スナップ結合された係止部4cと両湾曲部12aとの間にガタが生じることもない。
【0028】
このように構成された回転コネクタは、固定側ハウジング1をステアリングコラム側に固定すると共に可動側ハウジング2をハンドル側に連結した状態で自動車のステアリング装置に組み付けられ、ハンドルに装着されたエアーバッグシステムやホーン回路等の電気的接続手段として使用されるが、かかるステアリング装置への組み付けに際して、可動側ハウジング2はハンドルの回動中立位置を基準にして正逆両方向へほぼ同量ずつ回転できなければならない。
【0029】
そのため本実施形態例では、回転コネクタの製造過程で、可動側ハウジング2を固定側ハウジング1に対して回動中立位置に位置合わせした後、外筒部4のガイド凹所4aにストッパ部材10を装着し、このストッパ部材10を図5(A)に示すロック位置に保持することによって頂部11を天板部6aの切欠き部6e内に配置させておく。これにより、天板部6aの自由な回動がストッパ部材10によって阻止されるため、この回転コネクタを搬送してステアリング装置に組み付ける直前まで、可動側ハウジング2を回動中立位置に保持しておくことができる。
【0030】
また、この回転コネクタをステアリング装置に組み付けて可動側ハウジング2がハンドルに連結された後、ハンドルを回転させると、可動側ハウジング2にはハンドルから大きな回転力が付与されるため、ストッパ部材10の頂部11は天板部6aに押し下げられて切欠き部6e内から退避する。このとき、ハンドルを正逆いずれの向きに回転しても、切欠き部6eの傾斜した内壁面が頂部11の傾斜した外壁面に対して摺動しながらストッパ部材10を押し下げていくので、天板部6aによってストッパ部材10を無理なく押し下げることができる。こうしてストッパ部材10が天板部6aに押し下げられていくと、頂部11が切欠き部6e内から押し出された直後に一対の弾性脚片12が係止部4cにスナップ結合されて、ストッパ部材10は図5(C)に示すロック解除位置に保持されるため、天板部6aはストッパ部材10に規制されることなく回動できるようになる。これにより、可動側ハウジング2は固定側ハウジング1に対して回動自在となり、ハンドルと一体的に可動側ハウジング2が正逆両方向へ回動できるようになる。
【0031】
このように本実施形態例に係る回転コネクタは、ストッパ部材10がロック位置とロック解除位置でそれぞれ外筒部4に保持されるようになっており、ロック位置ではストッパ部材10の頂部11によって天板部6aの自由な回動が阻止できるため、可動側ハウジング2を回動中立位置に保持しておくことができる。そして、ストッパ部材10をロック位置に保持したまま回転コネクタをステアリング装置に組み付けて、可動側ハウジング2に連結したハンドルを回転させると、可動側ハウジング2にはハンドルから大きな回転力が付与されるため、ストッパ部材10の頂部11が天板部6aに押し下げられることとなり、それゆえ天板部6aの回動がストッパ部材10に規制されなくなって可動側ハウジング2がハンドルと一体的に回動できるようになる。また、押し下げられたストッパ部材10は一対の弾性脚片12を外筒部4の係止部4cにスナップ結合させることによってロック解除位置に保持されるため、ロック解除状態を安定的に維持することができる。すなわち、この回転コネクタは、可動側ハウジング2を回動中立位置に保持するためのロック機構がストッパ部材10という1部品を追加するだけで安価に実現されており、特別なロック解除作業は不要であり、かつロック解除時に廃棄物を生じることもない。
【0032】
また、本実施形態例に係る回転コネクタでは、外筒部4の外周面に露出するガイド凹所4a内にストッパ部材10が装着されており、ストッパ部材10がロック位置に保持されているときには、頂部11がガイド凹所4aから上方へ突出しており、このストッパ部材10がロック解除位置まで下動すると、頂部11がガイド凹所4a内へ没入するようにしてある。そのため、この回転コネクタはストッパ部材10を手動で上下動させることが可能であり、例えばハンドル取り外し時などに手動でストッパ部材10をロック解除位置からロック位置まで上動させておくことができる。
【符号の説明】
【0033】
1 固定側ハウジング
2 可動側ハウジング
3 可撓性ケーブル
4 外筒部
4a ガイド凹所
4b 係着部
4c 係止部
5 底板部
6 上部ロータ
6a 天板部
6b 内筒部
6e 切欠き部
7 下部ロータ
10 ストッパ部材
11 頂部
12 弾性脚片(係合部)
12a 湾曲部
13 弾性腕片
13a 爪部
S 環状空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒部および底板部を有する固定側ハウジングと、内筒部および天板部を有し前記固定側ハウジングに回動自在に連結された可動側ハウジングと、これら両ハウジング間に形成された環状空間内に巻き締めおよび巻き戻し可能に収納された可撓性ケーブルと、前記外筒部に装着されて前記可動側ハウジングの自由な回動を阻止可能なストッパ部材とを備え、
前記天板部に前記ストッパ部材の頂部が挿入可能な切欠き部を設けると共に、前記ストッパ部材が、前記頂部を前記切欠き部内に挿入させて前記天板部の自由な回動を阻止するロック位置と、所要の回転力が付与された前記天板部に押し下げられて前記頂部を前記切欠き部内から退避させたロック解除位置とで、それぞれ前記外筒部に保持されるようになし、かつ前記ロック解除位置では、前記ストッパ部材に設けられた係合部と、この係合部を係止するために前記外筒部に設けられた係止部とが、少なくとも一方の弾性変形によってスナップ結合されるようにしたことを特徴とする回転コネクタ。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記ストッパ部材の前記係合部が、下方へ延出して開閉方向に弾性変形可能な一対の弾性脚片からなると共に、前記外筒部の前記係止部が前記各弾性脚片で挟圧可能な位置に突設されており、前記ストッパ部材が前記ロック位置から前記ロック解除位置へ下動するのに伴い、前記各弾性脚片が前記係止部の外壁に沿って摺動しながら弾性変形するようにしたことを特徴とする回転コネクタ。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記ストッパ部材に、下方へ延出して開閉方向に弾性変形可能な一対の弾性腕片が設けられていると共に、前記外筒部に、前記各弾性腕片を係着させて前記ストッパ部材を前記ロック位置に保持するための係着部が設けられており、前記ロック位置では前記各弾性腕片が閉方向に弾性変形した状態で前記係着部に係着されるようにしたことを特徴とする回転コネクタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、前記ストッパ部材の前記頂部の外壁面と、この外壁面に当接可能な前記切欠き部の内壁面のうち、少なくとも一方は傾斜面として形成されていることを特徴とする回転コネクタ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の記載において、前記外筒部がその外周面に露出するガイド凹所を有しており、このガイド凹所内に前記係止部が設けられていると共に、前記ストッパ部材が前記ロック位置に保持されているときに前記頂部は前記ガイド凹所から上方へ突出しており、このストッパ部材が前記ロック解除位置まで下動すると前記頂部が前記ガイド凹所内へ没入するようにしたことを特徴とする回転コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−251276(P2010−251276A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121017(P2009−121017)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【出願人】(509140847)大連阿尓卑斯電子有限公司 (1)