回転ドリル工具及びそのための本体部
【課題】回転ドリル工具を改良する。
【解決手段】本体部1は長手方向において、本体部の結合端部から軸線方向後方に延びる結合セグメント10と、該結合セグメント10より軸線方向後方に位置して本体部1の固定端部に向かって後方に延びかつ結合セグメント10よりも長い搬送セグメント12とに分割され、少なくとも1つのチップ溝9,40,41の夫々は前記結合セグメント10と前記搬送セグメント12を通って延び、少なくとも実質的に、前記雌部分14全体が前記結合セグメント10内に位置し、更に、少なくとも1つのチップ溝9,40,41の夫々は、前記結合セグメント10における深さが、前記搬送セグメント12における深さよりも小さい。
【解決手段】本体部1は長手方向において、本体部の結合端部から軸線方向後方に延びる結合セグメント10と、該結合セグメント10より軸線方向後方に位置して本体部1の固定端部に向かって後方に延びかつ結合セグメント10よりも長い搬送セグメント12とに分割され、少なくとも1つのチップ溝9,40,41の夫々は前記結合セグメント10と前記搬送セグメント12を通って延び、少なくとも実質的に、前記雌部分14全体が前記結合セグメント10内に位置し、更に、少なくとも1つのチップ溝9,40,41の夫々は、前記結合セグメント10における深さが、前記搬送セグメント12における深さよりも小さい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体部と、その本体部に着脱可能なインサートヘッドとを有する、チップ除去機械加工のための回転ドリル工具に関する。本発明は又、そのような回転ドリル工具のための本体部に関する。
【背景技術】
【0002】
回転ドリル工具はしばしば一体型工具として提供されたり、交換式又は一体型の切削エッジ付き切削挿入具が設けられたりするが、軸線方向部品からなる工具としても提供されたりする。そのような軸線方向分離型工具は本体部と、これに対し着脱可能であり他のものと交換可能なヘッドとを有しており、そのヘッドに切削エッジが含まれる。そのようにして、工具の主要部は比較的安価な材料、例えば鋼から製造する一方で、小さい部分、即ちヘッドはより硬くより高価な材料、例えば超硬合金、陶性合金、セラミック等から製造することができ、それによって切削エッジに良好なチップ除去能力、良好な機械加工精度、高耐用性を付与している。言い換えれば、ヘッドは摩耗部品であるため摩耗した後は捨てることができる一方、ベースとなる本体部分は何度でも再使用できるようになっている。
【0003】
そのような軸線方向分離型のドリル工具は、特許文献1により知られている。この文献に開示された回転工具は、本体部と、その本体部に向かって突出するジャーナルを介して前記本体部に接続可能なヘッドとを有する。このジャーナルは、ヘッドに対面する本体部の端部に、対応して形成された軸線方向凹部内に挿入される。ヘッドは、本体部を通って半径方向に延びてジャーナルの肩面に対し当接・圧迫することができる止めネジによって、本体部に対しロックすることが可能である。
【0004】
この既知工具は多くの用途において重用されている。しかしながら、時としてクラックが発生したり、最悪の場合、本体部及び/又はヘッドの互いに対面する端部に破損が生じたりする問題があることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第2266736号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それ故、本発明の目的は、上述した問題点を完全又は部分的に取り除くことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によってこの目的は、請求項1に記載の回転ドリル工具、及び請求項13に記載の回転ドリル工具用本体部によって達成される。本発明によれば、チップ除去機械加工にための回転ドリル工具は、本体部と、その本体部に着脱可能なインサートヘッドとを有する。インサートヘッドは、チップ除去能力を有する前方挿入端部と後方結合端部との間で長手軸線に沿う軸線方向延長部を有し、その前方挿入端部は、関連断面において、長手軸線を中心とする切削円を規定するような切削直径を有する。この本体部は、前方結合端部と後方固定端部との間で長手軸線に沿う軸線方向延長部を備えると共に、少なくとも1つのチップ溝を有する。少なくとも1つのチップ溝の夫々は、結合端部から固定端部に向かって延び、インサートヘッドが本体部に接続された際にはインサートヘッドによって取り除かれたチップが少なくとも1つのチップ溝のいずれかによって受け取られて前記固定端部に向かって運ばれるように形成される。インサートヘッドは、その結合端部において、前記結合端部から軸線方向外側に延びる雄部分を有し、本体部は、その結合端部において、本体部において前記結合端部から軸線方向内側に延びる雌部分を有し、前記インサートヘッドが前記本体部に接続された際には、前記雌部分はインサートヘッドの前記雄部分を受容するように形成される。少なくとも1つのチップ溝の夫々は、本体部の長手軸線に沿った各断面において、前記切削円の半径と、前記長手軸線を中心とすると共に問題となる断面において各チップ溝の界線に接する最大限の芯円の半径と、の間の差に等しい深さを有する。前記本体部は、長手方向において本体部の結合端部から軸線方向後方に延びる結合セグメントと、その結合セグメントより軸線方向後方に位置して本体部の固定端部に向かって後方に延びかつ結合セグメントよりも長い搬送セグメントと、に分割され、少なくとも1つのチップ溝の夫々は前記結合セグメントと前記搬送セグメントの双方を通って延びる。少なくとも実質上、雌部分全体が結合セグメントに位置し、少なくとも1つのチップ溝夫々の前記結合セグメントにおける深さは、前記搬送セグメントにおけるその深さよりも小さくなる。
【0008】
このようにして、ドリル工具の本体部を複数のセグメントに分割でき、各セグメントにおいては異なる特性を最適化するためにチップ溝が異なって形成されるという事実を理解することが本発明の根底を成す。本発明によれば、本体部は結合セグメントと搬送セグメントを有し、チップ溝の結合セグメントにおける深さは搬送セグメントのそれよりも小さくなる。このことは、本体部の結合セグメントにおけるウエブ幅が搬送セグメントにおけるそれよりもより幅広になるということを意味している。言い換えれば、結合セグメントのウエブを広くすることで、インサートヘッドの雄部分をより大きな断面積を以て形成することができ、更に/又はチップ溝と結合セグメントの雌部分との間の壁部分の材料厚さをより厚く作ることが可能となる。同時に、結合セグメントのそれよりも長い搬送セグメントのチップ溝深さを大きくすればするほど、仮に搬送セグメントのチップ溝が結合セグメントのチップ溝と同じ深さであった場合に起こり得るものよりもより良いチップ排出が可能となる。本発明によれば、より浅いチップ溝を持つことでインサートヘッドと本体部との間に一層強固な結合を達成する本体部前方の短いセグメント、即ち結合セグメントが設けられるほか、より深いチップ溝を持つことで良好なチップ排出を達成する後方の長いセグメントが設けられる。
【0009】
本発明による回転ドリル工具は、例えば鋼、鋳鉄、アルミ、チタン、金などの金属からなるワークのチップ除去又は切削機械加工に適している。そのドリル工具は又、異なる種類の複合材料の機械加工に使用することも可能である。ドリル工具は、その工具に回転をもたらすマシンツールに据え付けるようにしても良い。通常、工具は、軸線方向に送られてワークに穴を開けたり、ワークに既存の穴をボーリングしたりする。とはいえ、工具が軸線方向に対し横断する方向に送られるような用途もあるかもしれない。
【0010】
本発明によるドリル工具は、序文で説明した類いのものであって、即ち軸線方向部品からなる工具を指している。ドリル工具は、本体部と、これに着脱可能であってそれ故に交換可能なヘッドとを有し、ヘッドはインサートヘッドの形態をとる。本発明による工具は又、例えば連結ピースや異なるマシンツールに適応させるためのアダプタのような、追加の軸線方向部品を有することもあるかもしれない。
【0011】
工具の長手軸線は通常、同工具の回転軸線に一致する。同じことが工具に含まれる軸線方向部品に当てはまる。
【0012】
“前方”及び“後方”の表現については、本願明細書では、工具の長手軸線に沿う方向を参照するものであり、“前方”は機械加工時におけるインサートヘッドの軸送り方向のための方向、“後方”はその反対方向を指すものである。
【0013】
インサートヘッドは適当な機械加工を果たす工具部分である。通常、インサートヘッドはまさに工具の先端部であり、通常は軸線方向に限られた延長部を有する。インサートヘッドには工具の切削エッジが含まれ、それらはインサートヘッドに統合され一体となったり、或いはインサートヘッドに取り付けられる切削インサート上に置かれるかもしれない。時としてインサートヘッドは、切削エッジを収容するのに必要な長さ分にほぼ相当する軸線方向長さを有するが、工具の本体部にインサートヘッドを結合する目的を持つような結合部品の長さ分は余分なものとなるかもしれない。
【0014】
インサートヘッドには1つ以上の切削エッジが設けられるかもしれず、それらは半径方向及び/又は円周方向に分散して配置されるかもしれない。その切削エッジはチップ除去機械加工に効果があり、また適用可能なら、例えば切り出し孔の壁面研削のような摩擦機械加工にも効果がある。
【0015】
工具はその長手軸線周りに回転され、軸線方向だけに送り込まれるとインサートヘッドの切削エッジは円形の穴を切り出す。本出願においては、前記穴の径を“切削直径”という表現で表わし、穴の断面を“インサートヘッドの切削円”と命名することにする。インサートヘッドによる切削直径は又、最も外側にある切削エッジの最外点と回転軸線の間の半径を測定することによっても計測可能である。前記半径を有する円は切削円を成す。
【0016】
工具の本体部は後方固定端部を有し、それはワーク機械加工時、工具の作動や送りのためにマシンツール等に適合するように形成されるかもしれない。ワークを機械加工する上で、本体部はその前方端部においてインサートヘッドに結合される。このため、本体部は、目的とする機械加工のためにマシンツールからインサートヘッドに対し回転や送りを伝えることができるように十分な剛性と強度を以て形成されなければならない。
【0017】
本体部は又、チップ溝を設けることでインサートヘッドによりワークから削り取られたチップを運ぶように形成される。機械加工時、削り取られたチップはワークから離れてチップ溝を通り、本体部の固定端部に向かって移動する。
【0018】
本体部は又、例えばインサートヘッドのストッパ面に当接し得るドライバのような、本体部からインサートヘッドに回転トルクを伝達する部品を有するかもしれない。
【0019】
本体部は1つ又はそれ以上のチップ溝を有するかもしれない。通常、本体部は、インサートヘッドの円周方向に隔てられた位置に設けられる切削エッジの数と同数のチップ溝を有する。従って、仮にインサートヘッドがその円周の直径方向に2つの切削エッジを配するならば、付属の本体部は、夫々の切削エッジからチップを削り取ってこれらを受け取るための、直径方向に配置された2つのチップ溝を有する。しかしながら、異なる外周位置の複数の切削エッジからのチップを同一のチップ溝で受け取ることも可能である。
【0020】
本体部のチップ溝は、本体部に沿って螺旋状に延びても、或いは長手軸線に実質上平行に延びても良い。
【0021】
本体部のチップ溝は、1つの湾曲した陥凹面から成るものでも、或いは複数の陥凹分割面から成るものでも良い。任意断面において、チップ溝は一定、又は変化する曲率半径の界線を有する。複数の分割面を有する発明実施形態では、チップ溝の分割面は、任意断面において同一又は異なる曲率を有するかもしれない。
【0022】
本体部に沿った各断面において、チップ溝は深さを持ったものであり、換言すれば各断面においてチップ溝は切削円の内側に界線を持っている。本願では、チップ溝の深さは切削円の半径と最大限の芯円半径との差として定義される。また、芯円自体は長手軸線を中心とし、チップ溝の界線に接する最大限の円として規定される。言い換えれば、この芯円は、問題になっている断面において長手軸線を中心とし、かつチップ溝の界線と交差することなく描くことができる最大円である。発明の一実施形態によって、仮に本体部が直径方向に対称配置された2つのチップ溝を有するならば、この最大芯円の直径は、本体部の該当断面における最少ウエブ厚さに相当する。他の実施形態、例えばチップ溝が非対称であったり、複数の分割面から構成されるような実施形態では、前記最少ウエブ厚さは前記最大芯円の直径とは異なる場合もある。
【0023】
本発明によれば、インサートヘッドは、インサートヘッドの結合端部から突出する雄部分を有する。本体部は、付属のインサートヘッドに相互補完的であってかつ本体部の結合端部から軸線方向内側に延びる雌部分を有する。本発明によれば、雌部分は前記雄部分の少なくとも一部が雌部分内に受容できるような寸法を有する。
【0024】
雄部分と雌部分の双方は、本体部に対してインサートヘッドを中央に置き、更に/或いはインサートヘッドを本体部にロックするか、あるいはロックする一部分となるように形成配置されるかもしれない。
【0025】
雄部分は雌部分に対し、遊びを以て適合したり、実質上遊びのない状態で適合したり、摩擦した状態で適合したり、更に/或いは雄部分及び/又は雌部分が変形することで適合することが可能である。その雄・雌部分は、相互連結された際にはインサートヘッド・本体部間のロッキングを成したり、或いはその一部となるようにしても良い。これは共に摩擦結合を成す雄・雌部分によって達成することができる。この雄・雌部分に追加する形、或いはこれに代わる形で、例えばバヨネット結合などの形状固定結合又はロッキングを提供する形状固定部品を有することも可能である。
【0026】
雄部分は、1つ又はそれ以上の凹部、穿孔の形態なる1つ以上の雌部分に受容されるようになっている、任意の適当な突出部品を有するかもしれない。雄部分は、その任意な断面が、例えば円形、楕円、他の丸い曲線形状、矩形、又は多角形形状の突出ピンであるかもしれない。雌部分はこれに対応する形状となるかもしれない。また、雄・雌部分は例えば円錐形のような変化する断面を有するものでも良い。雄部分としては、雌部分に完全に収納されたり、或いはその一部が収納されるものでも良く、また雌部分の底に突き当たるものでも良い。また、雌部分内に雄部分を収容した際に雄部分と雌部分の底との間に間隙が存在するものでも良い。
【0027】
雄・雌部分は夫々、インサートヘッドと本体部の長手軸線を中心をとして配置しても良く、その場合には、より簡単な構造となるという利点がある。しかしながら、それらを敢えて中心配置せず、互いに結合された際にはインサートヘッドと本体部が互いに所望位置を得るように配置することも可能である。
【0028】
本発明によれば、本体部は前方にある結合セグメントと後方にある搬送セグメントとに分割される。セグメントは本体部の各部分に相当し、その長さの一部にわたって本体部の半径方向延長部全体を包含する。発明の実施形態によっては、本体部は更なるセグメントへと分割されるかもしれない。
【0029】
本発明によれば、本体部のチップ溝は、結合セグメントにおけるその深さが搬送セグメントにおけるその深さより小さくなる。換言すれば、チップ溝は本体部の前方端部における深さが、さらに後ろに距離をおいた所の深さよりも小さくなる。発明によれば、結合セグメントは本体部の前方端部から、少なくとも実質的に雌部全体の長さにわたって延びる。このため、チップ溝は実質上、雌部分が位置することになる本体部の部分長さにわたりより小さい深さを有する。このセグメントにおいてチップ溝の深さはより小さいことで、チップ溝の最大芯円の大きさは、チップ溝の深さがより大きくなる搬送セグメントよりも、この結合セグメントの方が大きくなる。このようにして、結合部品から成る雄・雌部分にとっては大きなスペースが得られる。一定のチップ溝深さを有する公知ドリル工具と比較して、雌部分は、より大きな断面によって強固に作られた雄部分を受容するべくより大きな断面を有して形成することができ、ここでは雌部分とチップ溝との間の壁部分の厚みは、そのような公知ドリル工具と同一にすることができる。また、雄・雌部分の断面サイズに関してもそのような公知ドリル工具のそれと同じサイズにすることも可能であるが、その際に従来よりも厚くして、チップ溝・雌部分間の壁部分の強度を高めるようにしても良い。また、本発明の請求の範囲内でこれらを組合せることも可能である。
【0030】
本発明によれば、より小さい部分からなる雌部分を結合セグメントの外側に配置することも可能であるが、そのような部分は、結合セグメントの強度を改善するというプラス効果が損なわれないようにして小さくあるべきである。
【0031】
更に、本発明によるドリル工具のチップ溝の深さは、搬送セグメントの方が結合セグメントよりも大きい。その搬送セグメントにおけるより大きな深さは、公知ドリル工具のチップ溝がチップ送り機能のために通常持つような深さに対応する。結合セグメントにおけるチップ溝の深さが浅ければそれだけこの部分におけるチップ送り機能が貧弱となることは事実だが、結合セグメントはドリル工具の前方端部に位置して比較的小さいため、この作用は小さくなるであろう。従って、小さな深さの結合セグメントは雌部分の底を超えて距離延長しても良いが、チップ送りへの影響を最小限に抑えるためには出来るだけ短く作られるべきである。通常、搬送セグメントは、はるばる本体部の固定端部の近くまで、或いは本体部の固定を目的とした本体部のセグメント近くまで延びる。チップ溝の長さに関しては、搬送セグメントにおける部分の長さが、結合セグメントのそれよりも大きい。
【0032】
本発明によれば、チップ溝は実質上、結合セグメント全体及び/又は搬送セグメントに沿って一定の深さを有しても良い。しかしながら、セグメント同士の深さを変えることも可能である。ただし、結合セグメントの最大深さは搬送セグメントの最少深さよりも小さい。
【0033】
ドリル工具の一実施形態によれば、本体部は又、マシンツールに固定するためのセグメントに分割しても良い。このセグメントは搬送セグメントよりも長くても良いが、通常は搬送セグメントの方が本体部にあって最も長いセグメントである。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、本体部は、結合セグメントと搬送セグメントの間に位置する移行セグメントにも分割される。移行セグメントでは、チップ溝の深さは結合セグメントにおけるより小さい深さから、搬送セグメントにおけるより大きな深さへと変化する。その移行セグメントは非常に短くても良く、深さは肩状或いは階段状に変化するかもしれない。これを設けることの利点は、チップを搬送するにあたって一層好適な深さをチップ溝が即座に獲得することにある。その移行セグメントは深さがより緩慢に変化するように若干長いものであっても良い。この場合の利点は、チップの搬送度合がより均一化することと、チップのチップ溝表面に対する摩耗を少なくすることがある。
【0035】
発明の一実施形態によれば、搬送セグメントと結合セグメントの間における少なくとも1つのチップ溝の各々の深さの差は、最大で切削円の直径の3%であって、かつ/又は最少で切削円の直径の0.5%となる。これよりも大きな差の場合、ドリルは特定の用途に対しては脆弱すぎることになる可能性がある。これより少ない差の場合、本発明の組合せによってもたらされる、インサートヘッド・本体部間の強固な結合と良好なチップ搬送を伴ったプラス効果が減少する。好ましくは、搬送セグメントと結合セグメントの間における少なくとも1つのチップ溝の各々の深さの差は、最大で切削円の直径の5%であって、かつ/又は最少で切削円の直径の0.7%である。前記区間内に収まる深さの差は、最も普遍的に存在する用途に効果を発揮する、結合セグメントにおける良好な強度と搬送セグメントにおける良好な搬送能力の好ましい組み合わせを提供する。
【0036】
発明の一実施形態によれば、結合セグメントのチップ溝は互いに接続した2つの陥凹分割面を有する。2つの分割面は断面において2つの窪みを持つ曲線を形成する。1つの陥凹面を有するチップ溝の対応曲線が1つの窪みを有し、それは殆どの場合、本体部の長手軸線近くで終わる。チップ溝が2つの陥凹分割面を有する場合、分割面からなる窪みを、本体部の長手軸線を通る対称面の夫々の側に配置するようにしても良い。或いは、換言すれば、一方の窪みが回転方向に位置され、他方の窪みがそれとは反対の回転方向にされることで、本体部のウエブが長手軸線において厚くなる。このようにして、2つの分割面を有するチップ溝が1つだけの分割面を有するチップ溝の容積と等しい容積をもつことで、より大きな最大芯円を好適に順応させることが可能となる。それにより、雄・雌部分にとってより大きな空間が確保される。
【0037】
対応する効果は、4つの陥凹分割面、又はそれより大きい偶数の分割面を有するチップ溝にもある。
【0038】
そのような本発明実施形態においては、チップ溝の全てが2つの分割面や1つだけの面、或いは数個の分割面を有するかもしれない。
【0039】
発明の一実施形態によれば、ドリル工具には冷却媒体のためのダクトが設けられる。そのダクトは、冷却媒体が本体部の後部からインサートヘッドの切削エッジに向かって運ばれるように形成される。冷却ダクトは中心ダクトを有することができ、その中心ダクトは1つ又はそれ以上の枝部において、インサートヘッドの外周切削インサートに向けて偏向する前に、搬送セグメントの少なくとも主要部を通って延びる。複数のチップ溝を有する実施形態によっては、搬送セグメントに、チップ溝間を延びるようにして複数の冷却ダクトを設けるようにしても良い。チップ溝が螺旋形であるような実施形態では、冷却ダクトも又螺旋形のチップ溝の側を通るようにしても良い。
【0040】
搬送セグメントに中央冷却ダクトを備えるような実施形態では、搬送セグメントにおける中央冷却ダクトとチップ溝との間の最少材料厚さが、結合セグメントにおける同じチップ溝と雌部分との間の最少材料厚さと等しい大きさか、或いはほぼ等しくなるかもしれない。これに伴う利点としては、本体の強度と剛性がこれら両セグメントにわたって、即ちその全長の大部分にわたって実質的に等しくなるということである。
【0041】
本発明の第1実施形態によれば、ドリル工具は本体部にインサートヘッドをロッキングするロック手段を有する。その雄・雌部分はこのロッキングの全体又はその一部を成すものでも良いが、例えば半径方向止めネジにように他の部品が含まれるようにしても良い。
【0042】
以下、本発明を、実施形態例によって添付概略図を参照しながら詳細に説明する。尚、異なる実施形態間において、同一の参照番号は同一又は対応部品に対して用いられている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態によるドリル工具の斜視図であって、本体部からインサートヘッドを切り離し、また陥凹面を有する結合セグメントを示した図である。
【図2】本体部にインサートヘッドを取り付けた、本発明の第1実施形態によるドリル工具の斜視図である。
【図3】本体部からインサートヘッドを分離させた、本発明の第2実施形態によるドリル工具の斜視図である。
【図4】本体部にインサートヘッドを取り付けた、本発明の第2実施形態によるドリル工具の斜視図である。
【図5】第2実施形態によるドリル工具に含まれる本体部の側方図である。
【図6A】第1実施形態による本体部の結合セグメントの、図5のA−A断面を示す図である。
【図6B】第1実施形態による本体部の搬送セグメントの、図5のB−B断面を示す図である。
【図7A】第2実施形態による本体部の結合セグメントの、図5のA−A断面を示す図である。
【図7B】第2実施形態による本体部の搬送セグメントの、図5のB−B断面を示す図である。
【図8A】第3実施形態による本体部の結合セグメントの、図5のA−A断面を示す図である。
【図8B】第3実施形態による本体部の搬送セグメントの、図5のB−B断面を示す図である。
【図9】第1実施形態による本体部を通る断面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1及び図2に、本発明の第1実施形態によるチップ除去機械加工のための回転ドリル工具が示される。ドリル工具は、本体部1と、インサートヘッド2の形態なる交換可能ヘッドとから構成される。図1では、インサートヘッド2は、取り外された非装着状態として本体部1から分離した状態で示されており、図2では装着状態として、インサートヘッドが本体部1に取り付けられた状態で示されている。
【0045】
インサートヘッド2は、作業時、ワークと対面することになる前方端部と、後方結合端部との間に軸線方向延長部を有する。インサートヘッド2は長手方向軸線の周りに半径方向延長部を有し、その長手軸線は、図示した本実施形態において中心の回転軸線4で示されている。
【0046】
インサートヘッド2には2つの切削エッジ3が設けられており、それらはインサートヘッドの前方端部において直径方向に配置される。切削エッジ3はインサートヘッドの外周からインサートヘッド中心に向かって延びる。この実施形態では、切削エッジ3はインサートヘッド2と一体を成し、同じ材料から形成されている。本実施形態ではインサートヘッド1は超硬合金からなる。
【0047】
各切削エッジ3に隣接するようにしてチップ空間7が設けられる。チップ空間7は付属の切削エッジ3によって作られるチップを受け取るために形成されるものであり、結合端部に向け軸線方向後方に延びる。
【0048】
インサートヘッド2の結合端部からは、軸ピン5の形態なる雄部分が突出する。この雄部分5は水滴型断面を有する。雄部分5は回転軸線4周りで中央配置される。雄部分の外側の一部分に沿ってストッパ面6が形成される。
【0049】
インサートヘッド2にはストッパ面8が設けられる。1つのストッパ面8はインサートヘッド2の外側からインサートヘッドの内側に向かってある距離分だけ延び、そこでチップ空間7と繋がる。そして、チップス空間7がインサートヘッド2の反対側の外部に向かって外方へと続くことになる。
【0050】
本体部1は、インサートヘッドに対面する前方結合端部と後方固定端部との間に軸線方向延長部を有する。本体部は長手軸線周りに放射状の延長部を有し、その長手軸線は、図示された実施形態では中心の回転軸線4となる。
【0051】
インサートヘッド2が本体部1に装着された際には、インサートヘッド2と本体部1の回転軸線4が互いに一致し合い、本工具に共通の回転軸線4を成すことになる。
【0052】
本実施形態では、本体部1に2つのチップ溝9が設けられる。このチップ溝9の数は、インサートヘッド2の切削エッジ3の円周方向異なる位置の数と同じである。本体部のチップ溝9の数はインサートヘッド2のチップ空間7の数とも一致する。
【0053】
本体部1は、結合セグメント10と、その軸線方向直後に位置する移行セグメント11と、移行セグメントの軸線方向直後に位置する搬送セグメント12と、搬送セグメントの軸線方向直後に位置する固定セグメント13と、に分割される。チップ溝9は、結合端部から、結合セグメント10、移行セグメント11及び搬送セグメント12を経て延設され、固定セグメント13の始点近くにある搬送セグメント12で終端する。チップ溝9は、本体部1の前記セグメントを通り螺旋カーブを描いて旋回する。
【0054】
本体部1は結合端部において、インサートヘッドのピン5を受けるための軸線方向凹部14の形態なる雌部分を有する。凹部14は結合端部から本体部1の軸線方向後方に延びる。凹部14はピン5の断面と同様に水滴型断面を有し、摩擦が全く無いか若干あるくらいで凹部14にピン5を押し込めるように、凹部14の半径方向寸法はピン5の内径方向寸法よりも若干大きい。雌部分14は回転軸線4を中心としてその周りに設置される。
【0055】
本体部1の結合端部からは、2つの駆動枝15が凹部14の夫々の側に突出する。各駆動枝15には本体部1の外周から本体部1の内側にある程度の距離を以て延びるストッパ面17が設けられる。各駆動枝には、中心にある冷却ダクトからの各分岐部24のための開口部16が設けられる。
【0056】
本体部1の固定セグメント13は、図示しないがマシンツールにドリル工具を固定するための、それ自体公知である方法によって形成される。
【0057】
結合セグメント10において、2つのチップ溝9は夫々、チップ溝9において1つだけの窪みを形成する凹状の制限面18を有する。移行セグメント12でも又、2つのチップ溝9は夫々、本体部1においてたった1つの窪みを形成する凹状制限面18を有する。
【0058】
図1及び図2には、工具の外周にはそれ自体公知の方法で、如何にして搬送セグメント12にガイドパッドや後方間隙領域が設けられるかも示されている。
【0059】
図3及び図4には本発明によるドリル工具の第2実施形態が示されており、それは図1及び図2で示した実施形態と共通な多くの特徴を有する。従って、ここではその相違点に関して第2実施形態を説明する。
【0060】
第2実施形態では、チップ溝9の夫々は、結合セグメントにおいて2つの分割面19、20を有する。チップ溝9の2つの分割面19、20は、チップ溝9内の各窪みを形成する。2つのチップ溝9の夫々は、搬送セグメント12において、チップ溝9でのたった1つだけの窪みを形成する凹状制限面21を有する。
【0061】
図5には、第2実施形態による本体部1の前/上方部分を拡大した側面図が示されている。本図には、雌部分14の開口部から本体部の軸線方向後方にかけて結合セグメント10の延長部が示されている。搬送セグメント12の前部は移行セグメント11から軸線方向後方に延びている。移行セグメント11は結合セグメントと搬送セグメント12との間を延びる。本図には、図7Aと図7Bに示された断面の軸線方向位置が示され、対応する軸線方向位置は、第1実施形態と第3実施形態の図6A、6B及び図8A、8Bの各断面に夫々対応している。
【0062】
図5には、本体部1の外側から雌部分14にかけて止めネジのための半径方向孔22が示されている。
【0063】
また、図6Aには図5のA−A断面に対応する第1実施形態の本体部の断面が示されている。このA−A断面は結合セグメント10に位置する。雌部分14は水滴型断面を有し、その水滴は底部25と上部26を有する。雌部分14は回転軸線4を中心にその周りに配置される。雌部分の両側に冷却ダクトの分岐部24が延びる。孔22は水滴の上部26のほぼ半径方向位置にある雌部分14において開口する。
【0064】
本発明によるドリル工具は図6A、Bの破線で示す切削円23を形成する。ワークの機械加工において工具がその長手軸線4周りに回転されかつ軸線方向だけに送られると、インサートヘッド2の切削エッジ3は切削円23と同じ断面をもつ丸穴を切り出す。切削円23は、ドリル工具の回転軸線4を中心とし、半径27を有する。
【0065】
図1、2及び図6による第1実施形態では、結合セグメント10の各チップ溝9は、その界線28が窪みとなるような陥凹面を有する。その界線28は一定の曲率を持つ。チップ溝9の断面は、断面における直径を挟んで対称である。
【0066】
界線28に接する最大限の芯円29が、図6Aに長い点線で示される。チップ溝9同士は対称であるため、芯円29は両方のチップ溝9に接し、両チップ溝9に共通となる。その芯円29は、回転軸線4を中心とし、半径30を有する。
【0067】
切削円23の半径27とチップ溝9の芯円29の半径30の差が、問題となるA−A断面におけるチップ溝の深さを示している。チップ溝9同士は対称であるため、それらは同じ深さを有する。
【0068】
図6Bには、図5のB−B断面に対応する、第1実施形態の本体部1断面が示されている。このB−B断面は搬送セグメント12に位置する。中央にある冷却媒体ダクト35は搬送セグメント12を通って延びる。その冷却媒体ダクトは円形断面を有し、回転軸線4を中心とする。
【0069】
図1、2及び図6による第1実施形態では、各チップ溝9は搬送セグメント12においても陥凹面を有する。その陥凹面の界線31が窪みを形作る。界線31は一定の曲率を持つ。チップ溝9同士の断面は、断面における直径を挟んで対称である。
【0070】
図6Bにおいて、最大限の芯円32が、短い点線で示される。チップ溝9は対称であるため、芯円32は両方のチップ溝9に接し、両チップ溝9に共通となる。その芯円32は回転軸線4を中心として半径33である。
【0071】
切削円23の半径27とチップ溝9の芯円32の半径33の差が、問題となるB−B断面におけるチップ溝の深さを示している。チップ溝9は対称であるため、それらは同じ深さを有する。
【0072】
芯円32とその半径33も又、図6Aに描かれている。図6Aにより、搬送セグメント12の断面の芯円32とその半径33は、結合セグメント10の断面の芯円29とその半径30よりも小さいことがわかる。従って、B−B断面におけるチップ溝9の深さはA−A断面のそれよりも大きい。このことは、結合セグメントの全てのA−A断面と送り部分の全てのB−B断面に当てはまる。
【0073】
チップ溝9が結合セグメント10においてより小さい深さを有することより、このセグメントでは本体部のウエブは一層厚くなる。雌部分14とチップ溝9との間の壁部分34は、仮に、チップ溝9が搬送セグメント12における程の大きな深さを持っていたならば考えられ得るものよりも更に厚く形成することができ、そのような場合、結合セグメントの強度を好適に増すことになる。
【0074】
チップ溝9の深さは、図5に示すように、結合セグメント10にあるより小さな深さから搬送セグメント11の大きな深さへと移行セグメントにおいて変化する。移行セグメント11は、結合セグメント12のチップ溝の深さが雌部分14の底部後方で数ミリ増加し始めた所を始点とし、深さの増加に伴って搬送セグメント12の深さに達した箇所で終端し、ここが搬送セグメント12の始点となる。従って、第1実施形態においては、雌部分4全体が結合セグメント10内に位置する。
【0075】
第1実施形態においては、少なくとも1つのチップ溝個々の深さに関し、搬送セグメント内における深さと、結合セグメント内における深さとの差は、切削円の直径の1%である。第1実施形態では切削円は直径10mmである。
【0076】
中央の冷却ダクト35とチップ溝9との間の壁36は、雌部分14とチップ溝9との間の壁部分34とほぼ同じであって、若干大きい最小厚さを有する。このようにして本体部は、搬送セグメントにおける強度が結合セグメントのそれと実質的に等しい強度を獲得する。
【0077】
第1実施形態による本体部1の断面を示す図9には、中央部分35と、それぞれ開口部16を持った2つの分岐部24とを備えた冷却ダクトも示されている。
【0078】
図7A及び図7Bには、図5による第2実施形態のA−A、B−B断面が示されている。第2実施形態において、結合セグメント10における各チップ溝9は、2つの陥凹分割面からなり、図7Aに示すようにその界線37、38によって2つの窪みが形成される。搬送セグメント12では各チップ溝9は界線39を有する陥凹面からなり、搬送セグメントを通るB−B断面は、図6Bに示した第1実施形態の搬送セグメント12における断面に実質上、対応する。
【0079】
結合セグメント10では2つの分割面の界線37、38は同じ曲率半径と同じアーク長を有する。従って、2つの界線37、38は、2つの窪みの一方が回転方向において終割るのに対し、他方は反回転方向で終わるように、回転軸線4に正対する領域で出会う。このようにして本体部1のウエブに関しては、結合セグメント10において回転軸線4と雌部分14に正対する領域の厚みが、結合セグメント10において同じ容積を有しかつ第1実施形態によるチップ溝9に関連して考えられ得る厚さよりも大きくなる。このようにして、A−A断面の最大限の芯円29は、好適にも、第2実施形態において第1実施形態よりも大きくなる。従って、2つの界線37、38が、回転軸線4と雌部分14に正対する領域において出会うならば、芯円29はA−A断面において最大値となる。
【0080】
図7Bの芯円32とその半径33は図7Aにも又、描かれている。図7Aでは、搬送セグメント12の断面からの芯円32とその半径33が、結合セグメント10の断面からの芯円29とその半径30よりも小さいことがわかる。更に、図6Aとの比較において、第2実施形態の差は第1実施形態のそれよりも大きいことがわかる。従って、第2実施形態においてA−A断面でのチップ溝9の深さは、第1実施形態のそれよりも小さくなる。
【0081】
第2実施形態では、少なくとも1つのチップ溝9の各深さに関し、搬送セグメントと結合セグメントにおける両深さ間の差は、切削円直径の1.5%であり、第2実施形態においては19mmとなる。
【0082】
結合セグメント10における第2実施形態のチップ溝9の深さが第1実施形態のそれよりも小さいことにより、このセグメントでは本体部のウエブは厚さを増すことになる。従って、雌部分14とチップ溝9の間の壁部分34は一層厚く作ることができ、そのような場合、好ましくも結合セグメント10は一層強固になる。
【0083】
図8A及び8Bには、第3実施形態のドリル工具の結合セグメントA−Aと搬送セグメントB−Bを通る対応断面が示されている。
【0084】
第3実施形態は、2つの非対称チップ溝40、41を有することで第1、第2実施形態と異なる。第1チップ溝40はA−A断面において界線42、B−B断面において界線44によって制限される。第2チップ溝41はA−A断面において界線43、B−B断面において界線45によって制限される。チップ溝40、41は、断面において各窪みを形成する面を夫々有する。第1チップ溝40の界線42は、第2チップ溝41の界線43よりも大きな曲率半径と短いアーク長を有する。
【0085】
結合セグメント10において、第1チップ溝40はこれに関連して、その界線42に接し、回転軸線4を中心とする最大の芯円46を有する。この芯円は半径47を有する。結合セグメント10において、第2チップ溝41はこれに関連して、その界線44に接し、回転軸線4を中心とする最大の芯円48を有する。この芯円は半径49を有する。
【0086】
これに対応して、B−B断面においてチップ溝は夫々、半径51、53を有し回転軸線を中心とする最大の芯円50、52を有する。
【0087】
結合セグメント10における第1チップ溝40の芯円46は、搬送セグメント12におけるその芯円50よりも大きい。同じことが第2チップ溝41の芯円48、52に当てはまる。即ち、各チップ溝40、41に対し、B−B断面における深さはA−A断面における深さよりも大きいことで、第1、第2実施形態のからみで説明した同じ利点が第3実施形態でも達成される。
【0088】
第1実施形態のドリル工具は以下の方法で据え付け、使用されるかもしれない。
【0089】
ピン5が凹部14上で整列するように、インサートヘッド2が本体部1上に保持される。次いでインサートヘッド2が2つの駆動枝15の間で本体部1に向かって内側にもたらされ、インサートヘッド2と本体部1が完全に一体化するまで凹部14内にピン5が挿入される。更にインサートヘッド2は、そのストッパ面8が本体部1の駆動枝15のストッパ面17に当接するように、本体部1に対して回転される。更に、インサートヘッド2のチップ空間7は、それらが付属のチップ溝9の始まりを形成するように各チップ溝9に対して隣接した状態で配置される。従って、雄・雌部分5、14はストッパ面8、17と組んだ状態で、インサートヘッド2を中心出しすると共に、同ヘッドを本体部1に対して正規の位置に方向付ける。
【0090】
次いで、止めネジが、凹部14内に位置するピン5の側面6に当接するまで、孔22内に挿入される。最後には止めネジを締め付け、本体部に対しインサートヘッド2をロックすることになる。
【0091】
このようにして据え付けられた第1実施形態のドリル工具は、既知方法でそこに取り付けられた固定セグメントによってマシンツールに据え付けても良い。作業中、インサートヘッド2の先端はワークに向けるようにして配置されるかもしれない。マシンツールのトルクは本体部に伝達され、次いで本体部はそのトルクを駆動枝15のストッパ面8を介してインサートヘッド2に伝達し、その結果としてインサートヘッド2を含む工具が回転軸線4周りを回転することになる。そして、インサートヘッドの切削エッジ3はワークからチップを削り出すことになる。チップはチップ空間7によって受け取られ、チップ溝9へと運ばれる。
【0092】
チップは本体部の結合セグメント10、移行セグメント11及び搬送セグメント12を通って、ワークから離れるように運ばれる。
【0093】
結合セグメント10におけるチップ溝9の深さが浅ければそれだけこのセグメントにおけるチップ送りが貧弱となることは事実だが、結合セグメントがドリル工具の前方端部に位置することと、それ自体比較的小さいため、この作用は小さくなるであろう。同時に、結合セグメントにおいてチップ溝9の深さをより小さくすることは、インサートヘッド2と本体部1間の強固な結合を可能にする。より長い搬送セグメント12においては、ワークからのチップ除去が功を奏するようにチップ溝は一層大きな深さを持つ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体部と、その本体部に着脱可能なインサートヘッドとを有する、チップ除去機械加工のための回転ドリル工具に関する。本発明は又、そのような回転ドリル工具のための本体部に関する。
【背景技術】
【0002】
回転ドリル工具はしばしば一体型工具として提供されたり、交換式又は一体型の切削エッジ付き切削挿入具が設けられたりするが、軸線方向部品からなる工具としても提供されたりする。そのような軸線方向分離型工具は本体部と、これに対し着脱可能であり他のものと交換可能なヘッドとを有しており、そのヘッドに切削エッジが含まれる。そのようにして、工具の主要部は比較的安価な材料、例えば鋼から製造する一方で、小さい部分、即ちヘッドはより硬くより高価な材料、例えば超硬合金、陶性合金、セラミック等から製造することができ、それによって切削エッジに良好なチップ除去能力、良好な機械加工精度、高耐用性を付与している。言い換えれば、ヘッドは摩耗部品であるため摩耗した後は捨てることができる一方、ベースとなる本体部分は何度でも再使用できるようになっている。
【0003】
そのような軸線方向分離型のドリル工具は、特許文献1により知られている。この文献に開示された回転工具は、本体部と、その本体部に向かって突出するジャーナルを介して前記本体部に接続可能なヘッドとを有する。このジャーナルは、ヘッドに対面する本体部の端部に、対応して形成された軸線方向凹部内に挿入される。ヘッドは、本体部を通って半径方向に延びてジャーナルの肩面に対し当接・圧迫することができる止めネジによって、本体部に対しロックすることが可能である。
【0004】
この既知工具は多くの用途において重用されている。しかしながら、時としてクラックが発生したり、最悪の場合、本体部及び/又はヘッドの互いに対面する端部に破損が生じたりする問題があることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第2266736号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それ故、本発明の目的は、上述した問題点を完全又は部分的に取り除くことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によってこの目的は、請求項1に記載の回転ドリル工具、及び請求項13に記載の回転ドリル工具用本体部によって達成される。本発明によれば、チップ除去機械加工にための回転ドリル工具は、本体部と、その本体部に着脱可能なインサートヘッドとを有する。インサートヘッドは、チップ除去能力を有する前方挿入端部と後方結合端部との間で長手軸線に沿う軸線方向延長部を有し、その前方挿入端部は、関連断面において、長手軸線を中心とする切削円を規定するような切削直径を有する。この本体部は、前方結合端部と後方固定端部との間で長手軸線に沿う軸線方向延長部を備えると共に、少なくとも1つのチップ溝を有する。少なくとも1つのチップ溝の夫々は、結合端部から固定端部に向かって延び、インサートヘッドが本体部に接続された際にはインサートヘッドによって取り除かれたチップが少なくとも1つのチップ溝のいずれかによって受け取られて前記固定端部に向かって運ばれるように形成される。インサートヘッドは、その結合端部において、前記結合端部から軸線方向外側に延びる雄部分を有し、本体部は、その結合端部において、本体部において前記結合端部から軸線方向内側に延びる雌部分を有し、前記インサートヘッドが前記本体部に接続された際には、前記雌部分はインサートヘッドの前記雄部分を受容するように形成される。少なくとも1つのチップ溝の夫々は、本体部の長手軸線に沿った各断面において、前記切削円の半径と、前記長手軸線を中心とすると共に問題となる断面において各チップ溝の界線に接する最大限の芯円の半径と、の間の差に等しい深さを有する。前記本体部は、長手方向において本体部の結合端部から軸線方向後方に延びる結合セグメントと、その結合セグメントより軸線方向後方に位置して本体部の固定端部に向かって後方に延びかつ結合セグメントよりも長い搬送セグメントと、に分割され、少なくとも1つのチップ溝の夫々は前記結合セグメントと前記搬送セグメントの双方を通って延びる。少なくとも実質上、雌部分全体が結合セグメントに位置し、少なくとも1つのチップ溝夫々の前記結合セグメントにおける深さは、前記搬送セグメントにおけるその深さよりも小さくなる。
【0008】
このようにして、ドリル工具の本体部を複数のセグメントに分割でき、各セグメントにおいては異なる特性を最適化するためにチップ溝が異なって形成されるという事実を理解することが本発明の根底を成す。本発明によれば、本体部は結合セグメントと搬送セグメントを有し、チップ溝の結合セグメントにおける深さは搬送セグメントのそれよりも小さくなる。このことは、本体部の結合セグメントにおけるウエブ幅が搬送セグメントにおけるそれよりもより幅広になるということを意味している。言い換えれば、結合セグメントのウエブを広くすることで、インサートヘッドの雄部分をより大きな断面積を以て形成することができ、更に/又はチップ溝と結合セグメントの雌部分との間の壁部分の材料厚さをより厚く作ることが可能となる。同時に、結合セグメントのそれよりも長い搬送セグメントのチップ溝深さを大きくすればするほど、仮に搬送セグメントのチップ溝が結合セグメントのチップ溝と同じ深さであった場合に起こり得るものよりもより良いチップ排出が可能となる。本発明によれば、より浅いチップ溝を持つことでインサートヘッドと本体部との間に一層強固な結合を達成する本体部前方の短いセグメント、即ち結合セグメントが設けられるほか、より深いチップ溝を持つことで良好なチップ排出を達成する後方の長いセグメントが設けられる。
【0009】
本発明による回転ドリル工具は、例えば鋼、鋳鉄、アルミ、チタン、金などの金属からなるワークのチップ除去又は切削機械加工に適している。そのドリル工具は又、異なる種類の複合材料の機械加工に使用することも可能である。ドリル工具は、その工具に回転をもたらすマシンツールに据え付けるようにしても良い。通常、工具は、軸線方向に送られてワークに穴を開けたり、ワークに既存の穴をボーリングしたりする。とはいえ、工具が軸線方向に対し横断する方向に送られるような用途もあるかもしれない。
【0010】
本発明によるドリル工具は、序文で説明した類いのものであって、即ち軸線方向部品からなる工具を指している。ドリル工具は、本体部と、これに着脱可能であってそれ故に交換可能なヘッドとを有し、ヘッドはインサートヘッドの形態をとる。本発明による工具は又、例えば連結ピースや異なるマシンツールに適応させるためのアダプタのような、追加の軸線方向部品を有することもあるかもしれない。
【0011】
工具の長手軸線は通常、同工具の回転軸線に一致する。同じことが工具に含まれる軸線方向部品に当てはまる。
【0012】
“前方”及び“後方”の表現については、本願明細書では、工具の長手軸線に沿う方向を参照するものであり、“前方”は機械加工時におけるインサートヘッドの軸送り方向のための方向、“後方”はその反対方向を指すものである。
【0013】
インサートヘッドは適当な機械加工を果たす工具部分である。通常、インサートヘッドはまさに工具の先端部であり、通常は軸線方向に限られた延長部を有する。インサートヘッドには工具の切削エッジが含まれ、それらはインサートヘッドに統合され一体となったり、或いはインサートヘッドに取り付けられる切削インサート上に置かれるかもしれない。時としてインサートヘッドは、切削エッジを収容するのに必要な長さ分にほぼ相当する軸線方向長さを有するが、工具の本体部にインサートヘッドを結合する目的を持つような結合部品の長さ分は余分なものとなるかもしれない。
【0014】
インサートヘッドには1つ以上の切削エッジが設けられるかもしれず、それらは半径方向及び/又は円周方向に分散して配置されるかもしれない。その切削エッジはチップ除去機械加工に効果があり、また適用可能なら、例えば切り出し孔の壁面研削のような摩擦機械加工にも効果がある。
【0015】
工具はその長手軸線周りに回転され、軸線方向だけに送り込まれるとインサートヘッドの切削エッジは円形の穴を切り出す。本出願においては、前記穴の径を“切削直径”という表現で表わし、穴の断面を“インサートヘッドの切削円”と命名することにする。インサートヘッドによる切削直径は又、最も外側にある切削エッジの最外点と回転軸線の間の半径を測定することによっても計測可能である。前記半径を有する円は切削円を成す。
【0016】
工具の本体部は後方固定端部を有し、それはワーク機械加工時、工具の作動や送りのためにマシンツール等に適合するように形成されるかもしれない。ワークを機械加工する上で、本体部はその前方端部においてインサートヘッドに結合される。このため、本体部は、目的とする機械加工のためにマシンツールからインサートヘッドに対し回転や送りを伝えることができるように十分な剛性と強度を以て形成されなければならない。
【0017】
本体部は又、チップ溝を設けることでインサートヘッドによりワークから削り取られたチップを運ぶように形成される。機械加工時、削り取られたチップはワークから離れてチップ溝を通り、本体部の固定端部に向かって移動する。
【0018】
本体部は又、例えばインサートヘッドのストッパ面に当接し得るドライバのような、本体部からインサートヘッドに回転トルクを伝達する部品を有するかもしれない。
【0019】
本体部は1つ又はそれ以上のチップ溝を有するかもしれない。通常、本体部は、インサートヘッドの円周方向に隔てられた位置に設けられる切削エッジの数と同数のチップ溝を有する。従って、仮にインサートヘッドがその円周の直径方向に2つの切削エッジを配するならば、付属の本体部は、夫々の切削エッジからチップを削り取ってこれらを受け取るための、直径方向に配置された2つのチップ溝を有する。しかしながら、異なる外周位置の複数の切削エッジからのチップを同一のチップ溝で受け取ることも可能である。
【0020】
本体部のチップ溝は、本体部に沿って螺旋状に延びても、或いは長手軸線に実質上平行に延びても良い。
【0021】
本体部のチップ溝は、1つの湾曲した陥凹面から成るものでも、或いは複数の陥凹分割面から成るものでも良い。任意断面において、チップ溝は一定、又は変化する曲率半径の界線を有する。複数の分割面を有する発明実施形態では、チップ溝の分割面は、任意断面において同一又は異なる曲率を有するかもしれない。
【0022】
本体部に沿った各断面において、チップ溝は深さを持ったものであり、換言すれば各断面においてチップ溝は切削円の内側に界線を持っている。本願では、チップ溝の深さは切削円の半径と最大限の芯円半径との差として定義される。また、芯円自体は長手軸線を中心とし、チップ溝の界線に接する最大限の円として規定される。言い換えれば、この芯円は、問題になっている断面において長手軸線を中心とし、かつチップ溝の界線と交差することなく描くことができる最大円である。発明の一実施形態によって、仮に本体部が直径方向に対称配置された2つのチップ溝を有するならば、この最大芯円の直径は、本体部の該当断面における最少ウエブ厚さに相当する。他の実施形態、例えばチップ溝が非対称であったり、複数の分割面から構成されるような実施形態では、前記最少ウエブ厚さは前記最大芯円の直径とは異なる場合もある。
【0023】
本発明によれば、インサートヘッドは、インサートヘッドの結合端部から突出する雄部分を有する。本体部は、付属のインサートヘッドに相互補完的であってかつ本体部の結合端部から軸線方向内側に延びる雌部分を有する。本発明によれば、雌部分は前記雄部分の少なくとも一部が雌部分内に受容できるような寸法を有する。
【0024】
雄部分と雌部分の双方は、本体部に対してインサートヘッドを中央に置き、更に/或いはインサートヘッドを本体部にロックするか、あるいはロックする一部分となるように形成配置されるかもしれない。
【0025】
雄部分は雌部分に対し、遊びを以て適合したり、実質上遊びのない状態で適合したり、摩擦した状態で適合したり、更に/或いは雄部分及び/又は雌部分が変形することで適合することが可能である。その雄・雌部分は、相互連結された際にはインサートヘッド・本体部間のロッキングを成したり、或いはその一部となるようにしても良い。これは共に摩擦結合を成す雄・雌部分によって達成することができる。この雄・雌部分に追加する形、或いはこれに代わる形で、例えばバヨネット結合などの形状固定結合又はロッキングを提供する形状固定部品を有することも可能である。
【0026】
雄部分は、1つ又はそれ以上の凹部、穿孔の形態なる1つ以上の雌部分に受容されるようになっている、任意の適当な突出部品を有するかもしれない。雄部分は、その任意な断面が、例えば円形、楕円、他の丸い曲線形状、矩形、又は多角形形状の突出ピンであるかもしれない。雌部分はこれに対応する形状となるかもしれない。また、雄・雌部分は例えば円錐形のような変化する断面を有するものでも良い。雄部分としては、雌部分に完全に収納されたり、或いはその一部が収納されるものでも良く、また雌部分の底に突き当たるものでも良い。また、雌部分内に雄部分を収容した際に雄部分と雌部分の底との間に間隙が存在するものでも良い。
【0027】
雄・雌部分は夫々、インサートヘッドと本体部の長手軸線を中心をとして配置しても良く、その場合には、より簡単な構造となるという利点がある。しかしながら、それらを敢えて中心配置せず、互いに結合された際にはインサートヘッドと本体部が互いに所望位置を得るように配置することも可能である。
【0028】
本発明によれば、本体部は前方にある結合セグメントと後方にある搬送セグメントとに分割される。セグメントは本体部の各部分に相当し、その長さの一部にわたって本体部の半径方向延長部全体を包含する。発明の実施形態によっては、本体部は更なるセグメントへと分割されるかもしれない。
【0029】
本発明によれば、本体部のチップ溝は、結合セグメントにおけるその深さが搬送セグメントにおけるその深さより小さくなる。換言すれば、チップ溝は本体部の前方端部における深さが、さらに後ろに距離をおいた所の深さよりも小さくなる。発明によれば、結合セグメントは本体部の前方端部から、少なくとも実質的に雌部全体の長さにわたって延びる。このため、チップ溝は実質上、雌部分が位置することになる本体部の部分長さにわたりより小さい深さを有する。このセグメントにおいてチップ溝の深さはより小さいことで、チップ溝の最大芯円の大きさは、チップ溝の深さがより大きくなる搬送セグメントよりも、この結合セグメントの方が大きくなる。このようにして、結合部品から成る雄・雌部分にとっては大きなスペースが得られる。一定のチップ溝深さを有する公知ドリル工具と比較して、雌部分は、より大きな断面によって強固に作られた雄部分を受容するべくより大きな断面を有して形成することができ、ここでは雌部分とチップ溝との間の壁部分の厚みは、そのような公知ドリル工具と同一にすることができる。また、雄・雌部分の断面サイズに関してもそのような公知ドリル工具のそれと同じサイズにすることも可能であるが、その際に従来よりも厚くして、チップ溝・雌部分間の壁部分の強度を高めるようにしても良い。また、本発明の請求の範囲内でこれらを組合せることも可能である。
【0030】
本発明によれば、より小さい部分からなる雌部分を結合セグメントの外側に配置することも可能であるが、そのような部分は、結合セグメントの強度を改善するというプラス効果が損なわれないようにして小さくあるべきである。
【0031】
更に、本発明によるドリル工具のチップ溝の深さは、搬送セグメントの方が結合セグメントよりも大きい。その搬送セグメントにおけるより大きな深さは、公知ドリル工具のチップ溝がチップ送り機能のために通常持つような深さに対応する。結合セグメントにおけるチップ溝の深さが浅ければそれだけこの部分におけるチップ送り機能が貧弱となることは事実だが、結合セグメントはドリル工具の前方端部に位置して比較的小さいため、この作用は小さくなるであろう。従って、小さな深さの結合セグメントは雌部分の底を超えて距離延長しても良いが、チップ送りへの影響を最小限に抑えるためには出来るだけ短く作られるべきである。通常、搬送セグメントは、はるばる本体部の固定端部の近くまで、或いは本体部の固定を目的とした本体部のセグメント近くまで延びる。チップ溝の長さに関しては、搬送セグメントにおける部分の長さが、結合セグメントのそれよりも大きい。
【0032】
本発明によれば、チップ溝は実質上、結合セグメント全体及び/又は搬送セグメントに沿って一定の深さを有しても良い。しかしながら、セグメント同士の深さを変えることも可能である。ただし、結合セグメントの最大深さは搬送セグメントの最少深さよりも小さい。
【0033】
ドリル工具の一実施形態によれば、本体部は又、マシンツールに固定するためのセグメントに分割しても良い。このセグメントは搬送セグメントよりも長くても良いが、通常は搬送セグメントの方が本体部にあって最も長いセグメントである。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、本体部は、結合セグメントと搬送セグメントの間に位置する移行セグメントにも分割される。移行セグメントでは、チップ溝の深さは結合セグメントにおけるより小さい深さから、搬送セグメントにおけるより大きな深さへと変化する。その移行セグメントは非常に短くても良く、深さは肩状或いは階段状に変化するかもしれない。これを設けることの利点は、チップを搬送するにあたって一層好適な深さをチップ溝が即座に獲得することにある。その移行セグメントは深さがより緩慢に変化するように若干長いものであっても良い。この場合の利点は、チップの搬送度合がより均一化することと、チップのチップ溝表面に対する摩耗を少なくすることがある。
【0035】
発明の一実施形態によれば、搬送セグメントと結合セグメントの間における少なくとも1つのチップ溝の各々の深さの差は、最大で切削円の直径の3%であって、かつ/又は最少で切削円の直径の0.5%となる。これよりも大きな差の場合、ドリルは特定の用途に対しては脆弱すぎることになる可能性がある。これより少ない差の場合、本発明の組合せによってもたらされる、インサートヘッド・本体部間の強固な結合と良好なチップ搬送を伴ったプラス効果が減少する。好ましくは、搬送セグメントと結合セグメントの間における少なくとも1つのチップ溝の各々の深さの差は、最大で切削円の直径の5%であって、かつ/又は最少で切削円の直径の0.7%である。前記区間内に収まる深さの差は、最も普遍的に存在する用途に効果を発揮する、結合セグメントにおける良好な強度と搬送セグメントにおける良好な搬送能力の好ましい組み合わせを提供する。
【0036】
発明の一実施形態によれば、結合セグメントのチップ溝は互いに接続した2つの陥凹分割面を有する。2つの分割面は断面において2つの窪みを持つ曲線を形成する。1つの陥凹面を有するチップ溝の対応曲線が1つの窪みを有し、それは殆どの場合、本体部の長手軸線近くで終わる。チップ溝が2つの陥凹分割面を有する場合、分割面からなる窪みを、本体部の長手軸線を通る対称面の夫々の側に配置するようにしても良い。或いは、換言すれば、一方の窪みが回転方向に位置され、他方の窪みがそれとは反対の回転方向にされることで、本体部のウエブが長手軸線において厚くなる。このようにして、2つの分割面を有するチップ溝が1つだけの分割面を有するチップ溝の容積と等しい容積をもつことで、より大きな最大芯円を好適に順応させることが可能となる。それにより、雄・雌部分にとってより大きな空間が確保される。
【0037】
対応する効果は、4つの陥凹分割面、又はそれより大きい偶数の分割面を有するチップ溝にもある。
【0038】
そのような本発明実施形態においては、チップ溝の全てが2つの分割面や1つだけの面、或いは数個の分割面を有するかもしれない。
【0039】
発明の一実施形態によれば、ドリル工具には冷却媒体のためのダクトが設けられる。そのダクトは、冷却媒体が本体部の後部からインサートヘッドの切削エッジに向かって運ばれるように形成される。冷却ダクトは中心ダクトを有することができ、その中心ダクトは1つ又はそれ以上の枝部において、インサートヘッドの外周切削インサートに向けて偏向する前に、搬送セグメントの少なくとも主要部を通って延びる。複数のチップ溝を有する実施形態によっては、搬送セグメントに、チップ溝間を延びるようにして複数の冷却ダクトを設けるようにしても良い。チップ溝が螺旋形であるような実施形態では、冷却ダクトも又螺旋形のチップ溝の側を通るようにしても良い。
【0040】
搬送セグメントに中央冷却ダクトを備えるような実施形態では、搬送セグメントにおける中央冷却ダクトとチップ溝との間の最少材料厚さが、結合セグメントにおける同じチップ溝と雌部分との間の最少材料厚さと等しい大きさか、或いはほぼ等しくなるかもしれない。これに伴う利点としては、本体の強度と剛性がこれら両セグメントにわたって、即ちその全長の大部分にわたって実質的に等しくなるということである。
【0041】
本発明の第1実施形態によれば、ドリル工具は本体部にインサートヘッドをロッキングするロック手段を有する。その雄・雌部分はこのロッキングの全体又はその一部を成すものでも良いが、例えば半径方向止めネジにように他の部品が含まれるようにしても良い。
【0042】
以下、本発明を、実施形態例によって添付概略図を参照しながら詳細に説明する。尚、異なる実施形態間において、同一の参照番号は同一又は対応部品に対して用いられている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態によるドリル工具の斜視図であって、本体部からインサートヘッドを切り離し、また陥凹面を有する結合セグメントを示した図である。
【図2】本体部にインサートヘッドを取り付けた、本発明の第1実施形態によるドリル工具の斜視図である。
【図3】本体部からインサートヘッドを分離させた、本発明の第2実施形態によるドリル工具の斜視図である。
【図4】本体部にインサートヘッドを取り付けた、本発明の第2実施形態によるドリル工具の斜視図である。
【図5】第2実施形態によるドリル工具に含まれる本体部の側方図である。
【図6A】第1実施形態による本体部の結合セグメントの、図5のA−A断面を示す図である。
【図6B】第1実施形態による本体部の搬送セグメントの、図5のB−B断面を示す図である。
【図7A】第2実施形態による本体部の結合セグメントの、図5のA−A断面を示す図である。
【図7B】第2実施形態による本体部の搬送セグメントの、図5のB−B断面を示す図である。
【図8A】第3実施形態による本体部の結合セグメントの、図5のA−A断面を示す図である。
【図8B】第3実施形態による本体部の搬送セグメントの、図5のB−B断面を示す図である。
【図9】第1実施形態による本体部を通る断面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1及び図2に、本発明の第1実施形態によるチップ除去機械加工のための回転ドリル工具が示される。ドリル工具は、本体部1と、インサートヘッド2の形態なる交換可能ヘッドとから構成される。図1では、インサートヘッド2は、取り外された非装着状態として本体部1から分離した状態で示されており、図2では装着状態として、インサートヘッドが本体部1に取り付けられた状態で示されている。
【0045】
インサートヘッド2は、作業時、ワークと対面することになる前方端部と、後方結合端部との間に軸線方向延長部を有する。インサートヘッド2は長手方向軸線の周りに半径方向延長部を有し、その長手軸線は、図示した本実施形態において中心の回転軸線4で示されている。
【0046】
インサートヘッド2には2つの切削エッジ3が設けられており、それらはインサートヘッドの前方端部において直径方向に配置される。切削エッジ3はインサートヘッドの外周からインサートヘッド中心に向かって延びる。この実施形態では、切削エッジ3はインサートヘッド2と一体を成し、同じ材料から形成されている。本実施形態ではインサートヘッド1は超硬合金からなる。
【0047】
各切削エッジ3に隣接するようにしてチップ空間7が設けられる。チップ空間7は付属の切削エッジ3によって作られるチップを受け取るために形成されるものであり、結合端部に向け軸線方向後方に延びる。
【0048】
インサートヘッド2の結合端部からは、軸ピン5の形態なる雄部分が突出する。この雄部分5は水滴型断面を有する。雄部分5は回転軸線4周りで中央配置される。雄部分の外側の一部分に沿ってストッパ面6が形成される。
【0049】
インサートヘッド2にはストッパ面8が設けられる。1つのストッパ面8はインサートヘッド2の外側からインサートヘッドの内側に向かってある距離分だけ延び、そこでチップ空間7と繋がる。そして、チップス空間7がインサートヘッド2の反対側の外部に向かって外方へと続くことになる。
【0050】
本体部1は、インサートヘッドに対面する前方結合端部と後方固定端部との間に軸線方向延長部を有する。本体部は長手軸線周りに放射状の延長部を有し、その長手軸線は、図示された実施形態では中心の回転軸線4となる。
【0051】
インサートヘッド2が本体部1に装着された際には、インサートヘッド2と本体部1の回転軸線4が互いに一致し合い、本工具に共通の回転軸線4を成すことになる。
【0052】
本実施形態では、本体部1に2つのチップ溝9が設けられる。このチップ溝9の数は、インサートヘッド2の切削エッジ3の円周方向異なる位置の数と同じである。本体部のチップ溝9の数はインサートヘッド2のチップ空間7の数とも一致する。
【0053】
本体部1は、結合セグメント10と、その軸線方向直後に位置する移行セグメント11と、移行セグメントの軸線方向直後に位置する搬送セグメント12と、搬送セグメントの軸線方向直後に位置する固定セグメント13と、に分割される。チップ溝9は、結合端部から、結合セグメント10、移行セグメント11及び搬送セグメント12を経て延設され、固定セグメント13の始点近くにある搬送セグメント12で終端する。チップ溝9は、本体部1の前記セグメントを通り螺旋カーブを描いて旋回する。
【0054】
本体部1は結合端部において、インサートヘッドのピン5を受けるための軸線方向凹部14の形態なる雌部分を有する。凹部14は結合端部から本体部1の軸線方向後方に延びる。凹部14はピン5の断面と同様に水滴型断面を有し、摩擦が全く無いか若干あるくらいで凹部14にピン5を押し込めるように、凹部14の半径方向寸法はピン5の内径方向寸法よりも若干大きい。雌部分14は回転軸線4を中心としてその周りに設置される。
【0055】
本体部1の結合端部からは、2つの駆動枝15が凹部14の夫々の側に突出する。各駆動枝15には本体部1の外周から本体部1の内側にある程度の距離を以て延びるストッパ面17が設けられる。各駆動枝には、中心にある冷却ダクトからの各分岐部24のための開口部16が設けられる。
【0056】
本体部1の固定セグメント13は、図示しないがマシンツールにドリル工具を固定するための、それ自体公知である方法によって形成される。
【0057】
結合セグメント10において、2つのチップ溝9は夫々、チップ溝9において1つだけの窪みを形成する凹状の制限面18を有する。移行セグメント12でも又、2つのチップ溝9は夫々、本体部1においてたった1つの窪みを形成する凹状制限面18を有する。
【0058】
図1及び図2には、工具の外周にはそれ自体公知の方法で、如何にして搬送セグメント12にガイドパッドや後方間隙領域が設けられるかも示されている。
【0059】
図3及び図4には本発明によるドリル工具の第2実施形態が示されており、それは図1及び図2で示した実施形態と共通な多くの特徴を有する。従って、ここではその相違点に関して第2実施形態を説明する。
【0060】
第2実施形態では、チップ溝9の夫々は、結合セグメントにおいて2つの分割面19、20を有する。チップ溝9の2つの分割面19、20は、チップ溝9内の各窪みを形成する。2つのチップ溝9の夫々は、搬送セグメント12において、チップ溝9でのたった1つだけの窪みを形成する凹状制限面21を有する。
【0061】
図5には、第2実施形態による本体部1の前/上方部分を拡大した側面図が示されている。本図には、雌部分14の開口部から本体部の軸線方向後方にかけて結合セグメント10の延長部が示されている。搬送セグメント12の前部は移行セグメント11から軸線方向後方に延びている。移行セグメント11は結合セグメントと搬送セグメント12との間を延びる。本図には、図7Aと図7Bに示された断面の軸線方向位置が示され、対応する軸線方向位置は、第1実施形態と第3実施形態の図6A、6B及び図8A、8Bの各断面に夫々対応している。
【0062】
図5には、本体部1の外側から雌部分14にかけて止めネジのための半径方向孔22が示されている。
【0063】
また、図6Aには図5のA−A断面に対応する第1実施形態の本体部の断面が示されている。このA−A断面は結合セグメント10に位置する。雌部分14は水滴型断面を有し、その水滴は底部25と上部26を有する。雌部分14は回転軸線4を中心にその周りに配置される。雌部分の両側に冷却ダクトの分岐部24が延びる。孔22は水滴の上部26のほぼ半径方向位置にある雌部分14において開口する。
【0064】
本発明によるドリル工具は図6A、Bの破線で示す切削円23を形成する。ワークの機械加工において工具がその長手軸線4周りに回転されかつ軸線方向だけに送られると、インサートヘッド2の切削エッジ3は切削円23と同じ断面をもつ丸穴を切り出す。切削円23は、ドリル工具の回転軸線4を中心とし、半径27を有する。
【0065】
図1、2及び図6による第1実施形態では、結合セグメント10の各チップ溝9は、その界線28が窪みとなるような陥凹面を有する。その界線28は一定の曲率を持つ。チップ溝9の断面は、断面における直径を挟んで対称である。
【0066】
界線28に接する最大限の芯円29が、図6Aに長い点線で示される。チップ溝9同士は対称であるため、芯円29は両方のチップ溝9に接し、両チップ溝9に共通となる。その芯円29は、回転軸線4を中心とし、半径30を有する。
【0067】
切削円23の半径27とチップ溝9の芯円29の半径30の差が、問題となるA−A断面におけるチップ溝の深さを示している。チップ溝9同士は対称であるため、それらは同じ深さを有する。
【0068】
図6Bには、図5のB−B断面に対応する、第1実施形態の本体部1断面が示されている。このB−B断面は搬送セグメント12に位置する。中央にある冷却媒体ダクト35は搬送セグメント12を通って延びる。その冷却媒体ダクトは円形断面を有し、回転軸線4を中心とする。
【0069】
図1、2及び図6による第1実施形態では、各チップ溝9は搬送セグメント12においても陥凹面を有する。その陥凹面の界線31が窪みを形作る。界線31は一定の曲率を持つ。チップ溝9同士の断面は、断面における直径を挟んで対称である。
【0070】
図6Bにおいて、最大限の芯円32が、短い点線で示される。チップ溝9は対称であるため、芯円32は両方のチップ溝9に接し、両チップ溝9に共通となる。その芯円32は回転軸線4を中心として半径33である。
【0071】
切削円23の半径27とチップ溝9の芯円32の半径33の差が、問題となるB−B断面におけるチップ溝の深さを示している。チップ溝9は対称であるため、それらは同じ深さを有する。
【0072】
芯円32とその半径33も又、図6Aに描かれている。図6Aにより、搬送セグメント12の断面の芯円32とその半径33は、結合セグメント10の断面の芯円29とその半径30よりも小さいことがわかる。従って、B−B断面におけるチップ溝9の深さはA−A断面のそれよりも大きい。このことは、結合セグメントの全てのA−A断面と送り部分の全てのB−B断面に当てはまる。
【0073】
チップ溝9が結合セグメント10においてより小さい深さを有することより、このセグメントでは本体部のウエブは一層厚くなる。雌部分14とチップ溝9との間の壁部分34は、仮に、チップ溝9が搬送セグメント12における程の大きな深さを持っていたならば考えられ得るものよりも更に厚く形成することができ、そのような場合、結合セグメントの強度を好適に増すことになる。
【0074】
チップ溝9の深さは、図5に示すように、結合セグメント10にあるより小さな深さから搬送セグメント11の大きな深さへと移行セグメントにおいて変化する。移行セグメント11は、結合セグメント12のチップ溝の深さが雌部分14の底部後方で数ミリ増加し始めた所を始点とし、深さの増加に伴って搬送セグメント12の深さに達した箇所で終端し、ここが搬送セグメント12の始点となる。従って、第1実施形態においては、雌部分4全体が結合セグメント10内に位置する。
【0075】
第1実施形態においては、少なくとも1つのチップ溝個々の深さに関し、搬送セグメント内における深さと、結合セグメント内における深さとの差は、切削円の直径の1%である。第1実施形態では切削円は直径10mmである。
【0076】
中央の冷却ダクト35とチップ溝9との間の壁36は、雌部分14とチップ溝9との間の壁部分34とほぼ同じであって、若干大きい最小厚さを有する。このようにして本体部は、搬送セグメントにおける強度が結合セグメントのそれと実質的に等しい強度を獲得する。
【0077】
第1実施形態による本体部1の断面を示す図9には、中央部分35と、それぞれ開口部16を持った2つの分岐部24とを備えた冷却ダクトも示されている。
【0078】
図7A及び図7Bには、図5による第2実施形態のA−A、B−B断面が示されている。第2実施形態において、結合セグメント10における各チップ溝9は、2つの陥凹分割面からなり、図7Aに示すようにその界線37、38によって2つの窪みが形成される。搬送セグメント12では各チップ溝9は界線39を有する陥凹面からなり、搬送セグメントを通るB−B断面は、図6Bに示した第1実施形態の搬送セグメント12における断面に実質上、対応する。
【0079】
結合セグメント10では2つの分割面の界線37、38は同じ曲率半径と同じアーク長を有する。従って、2つの界線37、38は、2つの窪みの一方が回転方向において終割るのに対し、他方は反回転方向で終わるように、回転軸線4に正対する領域で出会う。このようにして本体部1のウエブに関しては、結合セグメント10において回転軸線4と雌部分14に正対する領域の厚みが、結合セグメント10において同じ容積を有しかつ第1実施形態によるチップ溝9に関連して考えられ得る厚さよりも大きくなる。このようにして、A−A断面の最大限の芯円29は、好適にも、第2実施形態において第1実施形態よりも大きくなる。従って、2つの界線37、38が、回転軸線4と雌部分14に正対する領域において出会うならば、芯円29はA−A断面において最大値となる。
【0080】
図7Bの芯円32とその半径33は図7Aにも又、描かれている。図7Aでは、搬送セグメント12の断面からの芯円32とその半径33が、結合セグメント10の断面からの芯円29とその半径30よりも小さいことがわかる。更に、図6Aとの比較において、第2実施形態の差は第1実施形態のそれよりも大きいことがわかる。従って、第2実施形態においてA−A断面でのチップ溝9の深さは、第1実施形態のそれよりも小さくなる。
【0081】
第2実施形態では、少なくとも1つのチップ溝9の各深さに関し、搬送セグメントと結合セグメントにおける両深さ間の差は、切削円直径の1.5%であり、第2実施形態においては19mmとなる。
【0082】
結合セグメント10における第2実施形態のチップ溝9の深さが第1実施形態のそれよりも小さいことにより、このセグメントでは本体部のウエブは厚さを増すことになる。従って、雌部分14とチップ溝9の間の壁部分34は一層厚く作ることができ、そのような場合、好ましくも結合セグメント10は一層強固になる。
【0083】
図8A及び8Bには、第3実施形態のドリル工具の結合セグメントA−Aと搬送セグメントB−Bを通る対応断面が示されている。
【0084】
第3実施形態は、2つの非対称チップ溝40、41を有することで第1、第2実施形態と異なる。第1チップ溝40はA−A断面において界線42、B−B断面において界線44によって制限される。第2チップ溝41はA−A断面において界線43、B−B断面において界線45によって制限される。チップ溝40、41は、断面において各窪みを形成する面を夫々有する。第1チップ溝40の界線42は、第2チップ溝41の界線43よりも大きな曲率半径と短いアーク長を有する。
【0085】
結合セグメント10において、第1チップ溝40はこれに関連して、その界線42に接し、回転軸線4を中心とする最大の芯円46を有する。この芯円は半径47を有する。結合セグメント10において、第2チップ溝41はこれに関連して、その界線44に接し、回転軸線4を中心とする最大の芯円48を有する。この芯円は半径49を有する。
【0086】
これに対応して、B−B断面においてチップ溝は夫々、半径51、53を有し回転軸線を中心とする最大の芯円50、52を有する。
【0087】
結合セグメント10における第1チップ溝40の芯円46は、搬送セグメント12におけるその芯円50よりも大きい。同じことが第2チップ溝41の芯円48、52に当てはまる。即ち、各チップ溝40、41に対し、B−B断面における深さはA−A断面における深さよりも大きいことで、第1、第2実施形態のからみで説明した同じ利点が第3実施形態でも達成される。
【0088】
第1実施形態のドリル工具は以下の方法で据え付け、使用されるかもしれない。
【0089】
ピン5が凹部14上で整列するように、インサートヘッド2が本体部1上に保持される。次いでインサートヘッド2が2つの駆動枝15の間で本体部1に向かって内側にもたらされ、インサートヘッド2と本体部1が完全に一体化するまで凹部14内にピン5が挿入される。更にインサートヘッド2は、そのストッパ面8が本体部1の駆動枝15のストッパ面17に当接するように、本体部1に対して回転される。更に、インサートヘッド2のチップ空間7は、それらが付属のチップ溝9の始まりを形成するように各チップ溝9に対して隣接した状態で配置される。従って、雄・雌部分5、14はストッパ面8、17と組んだ状態で、インサートヘッド2を中心出しすると共に、同ヘッドを本体部1に対して正規の位置に方向付ける。
【0090】
次いで、止めネジが、凹部14内に位置するピン5の側面6に当接するまで、孔22内に挿入される。最後には止めネジを締め付け、本体部に対しインサートヘッド2をロックすることになる。
【0091】
このようにして据え付けられた第1実施形態のドリル工具は、既知方法でそこに取り付けられた固定セグメントによってマシンツールに据え付けても良い。作業中、インサートヘッド2の先端はワークに向けるようにして配置されるかもしれない。マシンツールのトルクは本体部に伝達され、次いで本体部はそのトルクを駆動枝15のストッパ面8を介してインサートヘッド2に伝達し、その結果としてインサートヘッド2を含む工具が回転軸線4周りを回転することになる。そして、インサートヘッドの切削エッジ3はワークからチップを削り出すことになる。チップはチップ空間7によって受け取られ、チップ溝9へと運ばれる。
【0092】
チップは本体部の結合セグメント10、移行セグメント11及び搬送セグメント12を通って、ワークから離れるように運ばれる。
【0093】
結合セグメント10におけるチップ溝9の深さが浅ければそれだけこのセグメントにおけるチップ送りが貧弱となることは事実だが、結合セグメントがドリル工具の前方端部に位置することと、それ自体比較的小さいため、この作用は小さくなるであろう。同時に、結合セグメントにおいてチップ溝9の深さをより小さくすることは、インサートヘッド2と本体部1間の強固な結合を可能にする。より長い搬送セグメント12においては、ワークからのチップ除去が功を奏するようにチップ溝は一層大きな深さを持つ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部(1)と、該本体部(1)に着脱可能なインサートヘッド(2)とを有し、
前記インサートヘッド(2)は、チップ除去能力を有する前方挿入端部と後方結合端部との間で長手軸線(4)に沿う軸線方向延長部を有し、前記前方挿入端部は、関連する断面において前記長手軸線(4)を中心とする切削円(23)を規定する切削直径を有し、
前記本体部(1)は、前方結合端部と後方固定端部との間で長手軸線(4)に沿う軸線方向延長部を備えると共に、少なくとも1つのチップ溝(9,40,41)を有し、
少なくとも1つのチップ溝(9,40,41)は夫々、前記前方結合端部から前記後方固定端部に向かって延びると共に、前記インサートヘッド(2)が前記本体部(1)に接続された際には、前記インサートヘッドによって除去されたチップが少なくとも1つのチップ溝のいずれか(9)によって受け取られて前記後方固定端部に向かって運ばれるように形成され、
前記インサートヘッド(2)は、その結合端部において、前記結合端部から軸線方向外側に延びる雄部分(5)を有し、
前記本体部は、その結合端部において、本体部(1)において前記結合端部から軸線方向内側に延びる雌部分(14)を有し、該雌部分(14)は前記インサートヘッド(2)が前記本体部(1)に接続された際には前記インサートヘッド(2)の前記雄部分(5)を受容するように形成され、
少なくとも1つのチップ溝(9,40,41)は夫々、前記本体部の長手軸線(4)に沿う夫々の断面において、前記切削円(23)の半径と、前記長手軸線を中心とし問題となる断面において各チップ溝の界線に接する最大限の芯円(29,32,46,48,50,52)の半径と、の間の距離に等しい深さを有する、チップ除去加工用回転ドリル工具において、
前記本体部(1)は長手方向において、本体部の結合端部から軸線方向後方に延びる結合セグメント(10)と、該結合セグメント(10)より軸線方向後方に位置して本体部(1)の固定端部に向かって後方に延びかつ結合セグメント(10)よりも長い搬送セグメント(12)とに分割され、少なくとも1つのチップ溝(9,40,41)の夫々は前記結合セグメント(10)と前記搬送セグメント(12)を通って延び、
少なくとも実質的に、前記雌部分(14)全体が前記結合セグメント(10)内に位置し、更に、
少なくとも1つのチップ溝(9,40,41)の夫々は、前記結合セグメント(10)における深さが、前記搬送セグメント(12)における深さよりも小さいことを特徴とする回転ドリル工具。
【請求項2】
少なくとも1つのチップ溝(9,40,41)夫々の、前記搬送セグメントにおける深さと、前記結合セグメントにおける深さとの差は、最大で、前記切削円の直径の3%であることを特徴とする請求項1に記載の回転ドリル工具。
【請求項3】
前記搬送セグメント及び前記結合セグメントにおける、少なくとも1つのチップ溝(9,40,41)夫々の深さ間の差は、最少で、前記切削円の直径の0.5%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転ドリル工具。
【請求項4】
前記雌部分の全体が、前記結合セグメント内に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転ドリル工具。
【請求項5】
前記結合セグメントにある前記少なくとも1つのチップ溝は、チップ溝内に2つの窪みが形成されるように第2陥凹面に繋がる第1陥凹面を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転ドリル工具。
【請求項6】
前記結合セグメントの前記雌部分を横断する各断面において、前記第1陥凹面は、前記芯円が最大になるように置かれた領域内で、前記第2陥凹面に繋がることを特徴とする請求項5に記載の回転ドリル工具。
【請求項7】
前記結合セグメントの前記雌部分を横断する各断面において、前記第1陥凹面は第1曲率と第1アーク長を有し、前記第2陥凹面は第2曲率と第2アーク長を有し、その曲率同士は実質上等しく、そのアーク長同士は実質的に等しい長さであることを特徴とする請求項6に記載の回転ドリル工具。
【請求項8】
前記搬送セグメントにおける前記少なくとも1つのチップ溝の各々は、1つだけの陥凹面を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の回転ドリル工具。
【請求項9】
前記本体部は、前記搬送セグメントにおいて中心ダクトとなる冷却ダクトを有し、前記搬送セグメントにおける前記少なくとも1つのチップ溝と前記中心ダクトとの間に位置する壁部分の最少厚さは、前記結合セグメントにおける前記少なくとも1つのチップ溝と雌部分との間の壁部分と実質的に同じであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の回転ドリル工具。
【請求項10】
前記雄部分は、中心に位置する円筒状のピンからなり、前記雌部分は、中心に位置する円筒状の凹部からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の回転ドリル工具。
【請求項11】
前記雄部分は、水滴型断面を有する中心ピンからなり、前記雌部分は、水滴型断面を有する中心凹部からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の回転ドリル工具。
【請求項12】
前記本体部は、前記長手方向において螺旋状に延びる2つのチップ溝を有し、各断面において前記チップ溝の一方は、他方のチップ溝と同じ深さを有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の回転ドリル工具。
【請求項13】
前記本体部は、前記結合端部から軸線方向外側に延びる2つの駆動枝を有し、該駆動枝はそれらの間で前記インサートヘッドを受容するように配置されトルクを前記インサートヘッドへ伝達することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の回転ドリル工具。
【請求項14】
前記結合セグメントは、前記インサートヘッドが前記本体部に接続された状態で、結合セグメントの外側から前記雄部分の接触面を圧迫するように操作可能な止めネジを有することを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の回転ドリル工具。
【請求項15】
前記請求項1〜14のいずれか一項に記載の回転ドリル工具のための本体部。
【請求項1】
本体部(1)と、該本体部(1)に着脱可能なインサートヘッド(2)とを有し、
前記インサートヘッド(2)は、チップ除去能力を有する前方挿入端部と後方結合端部との間で長手軸線(4)に沿う軸線方向延長部を有し、前記前方挿入端部は、関連する断面において前記長手軸線(4)を中心とする切削円(23)を規定する切削直径を有し、
前記本体部(1)は、前方結合端部と後方固定端部との間で長手軸線(4)に沿う軸線方向延長部を備えると共に、少なくとも1つのチップ溝(9,40,41)を有し、
少なくとも1つのチップ溝(9,40,41)は夫々、前記前方結合端部から前記後方固定端部に向かって延びると共に、前記インサートヘッド(2)が前記本体部(1)に接続された際には、前記インサートヘッドによって除去されたチップが少なくとも1つのチップ溝のいずれか(9)によって受け取られて前記後方固定端部に向かって運ばれるように形成され、
前記インサートヘッド(2)は、その結合端部において、前記結合端部から軸線方向外側に延びる雄部分(5)を有し、
前記本体部は、その結合端部において、本体部(1)において前記結合端部から軸線方向内側に延びる雌部分(14)を有し、該雌部分(14)は前記インサートヘッド(2)が前記本体部(1)に接続された際には前記インサートヘッド(2)の前記雄部分(5)を受容するように形成され、
少なくとも1つのチップ溝(9,40,41)は夫々、前記本体部の長手軸線(4)に沿う夫々の断面において、前記切削円(23)の半径と、前記長手軸線を中心とし問題となる断面において各チップ溝の界線に接する最大限の芯円(29,32,46,48,50,52)の半径と、の間の距離に等しい深さを有する、チップ除去加工用回転ドリル工具において、
前記本体部(1)は長手方向において、本体部の結合端部から軸線方向後方に延びる結合セグメント(10)と、該結合セグメント(10)より軸線方向後方に位置して本体部(1)の固定端部に向かって後方に延びかつ結合セグメント(10)よりも長い搬送セグメント(12)とに分割され、少なくとも1つのチップ溝(9,40,41)の夫々は前記結合セグメント(10)と前記搬送セグメント(12)を通って延び、
少なくとも実質的に、前記雌部分(14)全体が前記結合セグメント(10)内に位置し、更に、
少なくとも1つのチップ溝(9,40,41)の夫々は、前記結合セグメント(10)における深さが、前記搬送セグメント(12)における深さよりも小さいことを特徴とする回転ドリル工具。
【請求項2】
少なくとも1つのチップ溝(9,40,41)夫々の、前記搬送セグメントにおける深さと、前記結合セグメントにおける深さとの差は、最大で、前記切削円の直径の3%であることを特徴とする請求項1に記載の回転ドリル工具。
【請求項3】
前記搬送セグメント及び前記結合セグメントにおける、少なくとも1つのチップ溝(9,40,41)夫々の深さ間の差は、最少で、前記切削円の直径の0.5%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転ドリル工具。
【請求項4】
前記雌部分の全体が、前記結合セグメント内に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転ドリル工具。
【請求項5】
前記結合セグメントにある前記少なくとも1つのチップ溝は、チップ溝内に2つの窪みが形成されるように第2陥凹面に繋がる第1陥凹面を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転ドリル工具。
【請求項6】
前記結合セグメントの前記雌部分を横断する各断面において、前記第1陥凹面は、前記芯円が最大になるように置かれた領域内で、前記第2陥凹面に繋がることを特徴とする請求項5に記載の回転ドリル工具。
【請求項7】
前記結合セグメントの前記雌部分を横断する各断面において、前記第1陥凹面は第1曲率と第1アーク長を有し、前記第2陥凹面は第2曲率と第2アーク長を有し、その曲率同士は実質上等しく、そのアーク長同士は実質的に等しい長さであることを特徴とする請求項6に記載の回転ドリル工具。
【請求項8】
前記搬送セグメントにおける前記少なくとも1つのチップ溝の各々は、1つだけの陥凹面を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の回転ドリル工具。
【請求項9】
前記本体部は、前記搬送セグメントにおいて中心ダクトとなる冷却ダクトを有し、前記搬送セグメントにおける前記少なくとも1つのチップ溝と前記中心ダクトとの間に位置する壁部分の最少厚さは、前記結合セグメントにおける前記少なくとも1つのチップ溝と雌部分との間の壁部分と実質的に同じであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の回転ドリル工具。
【請求項10】
前記雄部分は、中心に位置する円筒状のピンからなり、前記雌部分は、中心に位置する円筒状の凹部からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の回転ドリル工具。
【請求項11】
前記雄部分は、水滴型断面を有する中心ピンからなり、前記雌部分は、水滴型断面を有する中心凹部からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の回転ドリル工具。
【請求項12】
前記本体部は、前記長手方向において螺旋状に延びる2つのチップ溝を有し、各断面において前記チップ溝の一方は、他方のチップ溝と同じ深さを有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の回転ドリル工具。
【請求項13】
前記本体部は、前記結合端部から軸線方向外側に延びる2つの駆動枝を有し、該駆動枝はそれらの間で前記インサートヘッドを受容するように配置されトルクを前記インサートヘッドへ伝達することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の回転ドリル工具。
【請求項14】
前記結合セグメントは、前記インサートヘッドが前記本体部に接続された状態で、結合セグメントの外側から前記雄部分の接触面を圧迫するように操作可能な止めネジを有することを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の回転ドリル工具。
【請求項15】
前記請求項1〜14のいずれか一項に記載の回転ドリル工具のための本体部。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【公開番号】特開2012−240198(P2012−240198A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−111597(P2012−111597)
【出願日】平成24年5月15日(2012.5.15)
【出願人】(507226695)サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−111597(P2012−111597)
【出願日】平成24年5月15日(2012.5.15)
【出願人】(507226695)サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ (34)
【Fターム(参考)】
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