回転ブラシ用毛材
【課題】 高い洗浄力と洗浄面保護性を備えると共に、外観及び性能面において均一な回転ブラシを実現し得る毛材を提供する。
【解決手段】 放射状に延びた主枝幹1の外縁部から副枝幹2が分岐し、副枝幹2によって、外周部が隙間3を持った正六角形の断面形状を成していることを特徴とする。
【解決手段】 放射状に延びた主枝幹1の外縁部から副枝幹2が分岐し、副枝幹2によって、外周部が隙間3を持った正六角形の断面形状を成していることを特徴とする。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、例えば自動洗車機、窓ガラス洗浄装置等の回転ブラシの毛材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば自動洗車機等に用いられている回転ブラシの毛材としては、分岐形状の断面を有する樹脂製糸が広く使用されている。
【0003】
かかる毛材には、ある程度の腰の強さと洗浄力が要求される反面、洗浄物の表面に傷を付けることなく洗浄面への接触を和らげる柔軟性が要求され、従来から材料及び断面形状について様々な提案がなされている。
【0004】
図10は、従来の毛材の一例を示す断面図であり、このように分岐形状の断面とすることにより、ある程度の腰の強さが得られると共に、保水性が高まり、洗浄力が高まる効果がある。また、分岐部分の厚さを調整することで所望の柔軟性を得ることもでき、洗浄面を保護し易くなる。
【0005】
また、図11は、従来の毛材の別の例を示す断面図であり、上記のような分岐形状に加えて各分岐部分に突起を設けることにより、保水性をより一層高めると共に、洗浄面への接触面積を増すことにより、洗浄力の向上を図ったものである。
【0006】
【考案が解決しようとする課題】
毛材は通常、図12に示されるように回転軸の周囲に多段に配設したり、図13に示されるように螺旋状に密に配設される。このとき、数本〜数十本の毛材を一纏めに束ねた状態で回転軸に順次取り付けるのが一般的であるが、前記従来の毛材を複数本一纏めにしようとすると、ランダムな状態で束ねられてしまう。
【0007】
すなわち、例えば図10に示したような断面形状の毛材を複数本束ねると、図14に示すようにランダムな状態になり、各毛材は回転軸に対してランダムな密度・方向で取り付けられることになる。このため、ブラシ毎に異なる外観を呈するばかりではなく、保水性の低下を招き易く、所定の洗浄力が得られないことがあった。
【0008】
また、近年、特殊コーティング等が施された塗装面の洗浄に際して、より一層高い洗浄力と洗浄面保護性が要求されるようになってきており、従来の断面形状のものではかかる要求を十分満足するのが困難な状況を迎えつつある。
【0009】
本考案は、上記事情に鑑み、より一層高い洗浄力と洗浄面保護性を備えると共に、外観及び性能面において均一な回転ブラシを実現し得る毛材を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本考案者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、回転ブラシ用毛材を特定の断面形状とすることが極めて効果的であることを知見し、本考案に至ったものである。
【0011】
すなわち本考案は、樹脂製の回転ブラシ用毛材であって、その一実施例に対応する図1を用いて説明すると、放射状に延びた複数の主枝幹1の外縁部から夫々副枝幹2が分岐しており、複数の副枝幹2によって、外周部が隙間3を持った略正六角形の断面形状を成している点を特徴とするものである。
【0012】
【考案の実施の形態】
本考案の回転ブラシ用毛材に用いられる樹脂は熱可塑性樹脂であり、例えばポリオレフィン、ポリオレフィンを主体とした共重合体又はブレンド物及びこれらの変性物が好ましく、この中でもポリエチレン及びこれを主体としたブレンド物が適しており、特に低圧法直鎖状低密度ポリエチレン及びこれを主体としたブレンド物が好ましい。また、かかる熱可塑性樹脂は、密度が0.94以下、メルトインデックスが0.3〜4.0g/10分、特に0.4〜3.0g/10分であることが好ましい。
【0013】
本考案の毛材は、上記熱可塑性樹脂を無発泡状態若しくは発泡倍率が1.1〜3.0倍の範囲で発泡させた状態で成形することが好ましい。発泡倍率が高過ぎると、必要な腰の強さや強度を得るのが難しくなると共に、砂や汚れの付着を生じ易くなる。
【0014】
本考案の毛材は、例えば図1〜図4の断面図に示されるように、中心部から外方に放射状に延びた複数の主枝幹1と、この主枝幹1の外縁部から分岐している副枝幹2を有するものである。また、相隣接する副枝幹2の間には隙間3が設けられていて、これら複数の副枝幹2によって毛材の外周部は略正六角形の断面形状を成している。
【0015】
上記のように、本考案の毛材は正六角形の外周断面を有することから、複数本を束ねる際に、その根元部分を図5に示すようにハニカム状に各毛材を隙間なく安定して取り纏めることができる。このため、回転軸に均一な密度で、且つ均一な状態で取り付けることができ、従来のようにブラシ毎に異なる外観を呈したり、保水性の低下に起因して洗浄力の低下を招く心配がない。
【0016】
本考案において、前記ハニカム状に取り纏める際の確実性、洗浄力の低下防止の確実性を考慮すると、副枝幹2間の隙間3を狭くするのが好ましい。すなわち、隙間3が広過ぎると、取り纏めの際若しくは使用時にこの隙間3に他の毛材の副枝幹2が入り込み、毛材同士が絡み付く場合があるからである。したがって、副枝幹2間の隙間3の幅は、具体的には副枝幹2の厚さ以下であるのが好ましく、通常は0.05〜0.5mm程度に設計されるが、副枝幹2の剛性が比較的高い場合にはこれ以上の幅とすることもできる。
【0017】
なお、複数の毛材を隙間なく取り纏める点に関してだけ言えば、正六角形に限らず正三角形若しくは正方形等の断面形状とすることも考えられる。しかしながら、例えば正三角形とした場合には、毛材の取り付け方向に2種類の方向が発生し、各毛材を均一な状態で回転軸に取り付けることができなくなる。また、正方形とした場合には、取り纏めの際にずり変形を起こし易く安定性に欠けるため、各毛材を均一な状態で回転軸に取り付けることが難しくなる。
【0018】
本考案の毛材においては、正六角形断面の内側に外部と隙間3を介して通じる複数の空間が形成される。かかる空間は洗浄時に水を保持する効果があり、洗浄効果を高めることができる。また、従前から知られているように、洗浄時に水が多ければ多いほど被洗浄物の表面に水が良く介在するようになり、洗浄面に傷が付きにくくなると共に、主枝幹1から分岐する副枝幹2が洗浄面へのタッチを和らげる柔軟性を備えることとも相俟って、洗浄面の大きな保護効果が得られる。
【0019】
主枝幹1の本数は3本以上とすることができるが、図1及び図2に示したように6本にするのが特に好ましい。
【0020】
図3に示したように主枝幹1を3本とした場合には、副枝幹2の断面方向の長さが長くなりがちで、繰り返し使用によって反り返り等の変形や割れを招く場合があり、耐久性及び洗浄力が低下する場合がある。また、保水性の向上を図るのが難しくなる。
【0021】
図4に示すように主枝幹1が4本の場合には、非対称断面であるため方向によって剛性(腰の強さ)が若干異なり、回転軸に取り付けた際の垂れ下がり状態にバラツキを生じる場合があり、ブラシ毎に洗浄力にバラツキが生じたり、洗浄力の低下を招く場合がある。
【0022】
また、主枝幹1が6本よりも多くなると、毛材の均質性が低下する等の製造上の問題が発生し易いと共に、製造コストが増大する傾向にある。
【0023】
本考案の毛材の太さ(正六角形の外接円の直径)は、0.5〜5mm、特に1〜3mm程度であることが好ましい。この径が小さ過ぎると、必要な腰の強さが得にくくなり、逆に大き過ぎると、洗浄時に被洗浄物に当たる衝撃が大きくなって傷付け易くなると共に、ブラシが粗くなって、洗い残しを生じ易くなる。
【0024】
主枝幹1と副枝幹2の厚さは、緩衝効果を得る上で0.05〜0.5mmであることが好ましく、全断面形状に応じてこれらの厚さを調整することにより所望の緩衝効果を得ることができる。
【0025】
また、本考案の毛材は、例えば図6及び図7に示すように、中心部分に基幹4を設け、かかる基幹4から複数の主枝幹1を分岐させることもできる。特に、樹脂の発泡倍率を例えば1.5倍以上とした場合には、このような基幹4を設けることにより腰の強さと強度の補強を同時に行うことができ、好ましい。
【0026】
なお、上記のように基幹4を設けた場合には、主枝幹1の突出長さは、毛材の太さ(正六角形の外接円の直径)の10%以上確保することが好ましい。
【0027】
また、本考案の毛材は、例えば図8及び図9に示すように、主枝幹1の外縁部以外にも、副枝幹2と断面相似な副枝幹2’設けることも好ましい。これにより毛材の保水性をより一層高めることができると共に、繰り返し使用により副枝幹2が取れてしまった場合にも洗浄力の低下を防止することができる。
【0028】
本考案の毛材は、前記熱可塑性樹脂に必要に応じて所定量の発泡剤を添加したものを、所望の断面形状のダイスから押出すことで、容易に連続的に製造することができる。この時の延伸倍率は3.0〜6.0倍、特に4.0〜5.5倍程度であることが好ましい。
【0029】
【実施例】
以下に本考案の実施例を具体的に説明する。
【0030】
[実施例1]
密度0.924、メルトインデックス0.8の低圧法直鎖状低密度ポリエチレンに発泡剤としてダイブローPE−MD20N(発泡剤量20重量%のマスターバッチ:大日精化工業社製)を2.5%添加し、以下の条件で紡糸した。
【0031】
押出機:モノフィラメント用紡糸機 スクリュー直径40mm L/D=24 圧縮比3.0 押出機設定温度:C1 170℃ C2 200℃ H 200℃ ダイ190℃ 紡口:図1と同様の形状 ホール数15 紡糸デニール:6000D/1F 延伸倍率:4.7倍
【0032】
得られた本実施例の毛材Aの発泡倍率を測定したところ、2.5倍であった。
【0033】
また、上記と同様の条件で、比較用として図10に示したような断面形状を有する無発泡の毛材Bと発泡倍率2.5倍の毛材Cを紡糸した。なお、各毛材の太さ(図10の断面形状のものにあっては十字の外接円の直径)は全て1.25mmである。
【0034】
上記毛材A〜Cについて、以下の試験を行った。
【0035】
(保水率)
各毛材を取り付けたブラシを1分間水の中に浸し、取り出した後30秒間自然状態で水をきる。この前後の重量変化から保水率を測定した結果、毛材Aのブラシは、毛材B及び毛材Cのブラシに比べて、保水率が25〜20%大きかった。
【0036】
(腰の強さ)
同一長さの各毛材を植毛したパイプを垂直に立てた状態において、毛材の長さ方向の中間点における接線と水平方向との成す角度を測定した。この結果、毛材Aは、毛材B及び毛材Cに比べて、上記角度が25〜30%小さかった。
【0037】
(衝撃吸収力)
浅底の平らな容器に各毛材を自然な状態で同一重量敷き並べ、1.2mの高さから重量1.18kgのボールを落下させ、バウンド高さを測定した。その結果、バウンド高さは毛材を敷かない状態では90cm、毛材Bについては63cm、毛材Cについては52cm、毛材Aについては44cmであった。
【0038】
以上の試験結果から、本考案による毛材Aは、従来の毛材B,Cに比べて、保水率が高く、腰が強く、且つ衝撃吸収力が大きいことが確認された。
【0039】
また、本考案の毛材Aを、回転ブラシの軸に15本及び30本づつ纏めて取り付けたが、いずれの場合にも極めて簡単に均一な密度且つ均一な状態で各毛材を取り付けることができた。
【0040】
さらに、上記回転ブラシを自動洗車機に取り付けて洗車テストを行い、傷付きの程度を観察した結果、傷付きはほとんど見られず、洗い残しもなく、極めて良好な結果が得られた。
【0041】
[実施例2]
実施例1と同様の条件で、図4に示したような断面形状を有する発泡倍率2.
5倍の毛材Dを紡糸した。この毛材Dの太さは実施例1の毛材Aと同じく1.25mmである。
【0042】
上記毛材Dにについて、実施例1と同様の試験を行った結果、保水率に関しては前記毛材Aと毛材Cの中間程度、腰の強さに関しては毛材Aと毛材Bの中間程度、衝撃吸収力に関しては毛材Aと同程度であることが確認された。
【0043】
また、毛材Dを、回転ブラシの軸に15本及び30本づつ纏めて取り付けた。
このとき、毛材の根元が変形しないように注意して束ねることにより、均一な密度且つ均一な状態で各毛材を取り付けることができた。
【0044】
さらに、上記回転ブラシを自動洗車機に取り付けて洗車テストを行った結果、良好な結果が得られた。
【0045】
【考案の効果】
以上説明した様に、本考案の回転ブラシ用毛材によれば以下の効果を奏する。
【0046】
(1)外周断面を略正六角形としたことにより、複数の毛材の根元部分をハニカム状に隙間なく安定して取り纏めることができるため、複数本を束ねて植毛する際に、ブラシの軸に極めて簡単に均一な密度で、且つ均一な状態で取り付けることができる。したがって、各毛材が重なり合うことによる保水性の低下を防止することができ常に所定の洗浄力が得られると共に、外観及び性能面において均一な回転ブラシを実現できる。
【0047】
(2)内部に複数の空間を保有するため保水性が高く、且つ複数の主枝幹と副枝幹を有することにより比較的腰が強いにもかかわらず洗浄面へのタッチを和らげる高い衝撃吸収力を備えるため、極めて高い洗浄力と洗浄面保護性を有する回転ブラシを実現できる。
【0048】
(3)特に、主枝幹を6本備えるものにあっては、製造コストを抑えつつ前記の特徴的な効果を高度に発揮することができる。
【0049】
(4)主枝幹の外縁部以外にも、副枝幹を設けたものにあっては、洗浄力の低下が少なく、より耐久性に富んだ回転ブラシが実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の回転ブラシ用毛材の一例を示す断面図である。
【図2】本考案の回転ブラシ用毛材の別の例を示す断面図である。
【図3】本考案の回転ブラシ用毛材の別の例を示す断面図である。
【図4】本考案の回転ブラシ用毛材の別の例を示す断面図である。
【図5】本考案の回転ブラシ用毛材を複数本取り纏めた状態を示す断面図である。
【図6】基幹部分を有する本考案の回転ブラシ用毛材の一例を示す断面図である。
【図7】基幹部分を有する本考案の回転ブラシ用毛材の別の例を示す断面図である。
【図8】本考案の回転ブラシ用毛材の別の例を示す断面図である。
【図9】本考案の回転ブラシ用毛材の別の例を示す断面図である。
【図10】従来の回転ブラシ用毛材の一例を示す断面図である。
【図11】従来の回転ブラシ用毛材の別の例を示す断面図である。
【図12】回転ブラシ用毛材の使用状態例を示す図である。
【図13】回転ブラシ用毛材の使用状態例を示す図である。
【図14】従来の回転ブラシ用毛材を複数本取り纏めた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 主枝幹
2,2’副枝幹
3 隙間
4 基幹
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、例えば自動洗車機、窓ガラス洗浄装置等の回転ブラシの毛材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば自動洗車機等に用いられている回転ブラシの毛材としては、分岐形状の断面を有する樹脂製糸が広く使用されている。
【0003】
かかる毛材には、ある程度の腰の強さと洗浄力が要求される反面、洗浄物の表面に傷を付けることなく洗浄面への接触を和らげる柔軟性が要求され、従来から材料及び断面形状について様々な提案がなされている。
【0004】
図10は、従来の毛材の一例を示す断面図であり、このように分岐形状の断面とすることにより、ある程度の腰の強さが得られると共に、保水性が高まり、洗浄力が高まる効果がある。また、分岐部分の厚さを調整することで所望の柔軟性を得ることもでき、洗浄面を保護し易くなる。
【0005】
また、図11は、従来の毛材の別の例を示す断面図であり、上記のような分岐形状に加えて各分岐部分に突起を設けることにより、保水性をより一層高めると共に、洗浄面への接触面積を増すことにより、洗浄力の向上を図ったものである。
【0006】
【考案が解決しようとする課題】
毛材は通常、図12に示されるように回転軸の周囲に多段に配設したり、図13に示されるように螺旋状に密に配設される。このとき、数本〜数十本の毛材を一纏めに束ねた状態で回転軸に順次取り付けるのが一般的であるが、前記従来の毛材を複数本一纏めにしようとすると、ランダムな状態で束ねられてしまう。
【0007】
すなわち、例えば図10に示したような断面形状の毛材を複数本束ねると、図14に示すようにランダムな状態になり、各毛材は回転軸に対してランダムな密度・方向で取り付けられることになる。このため、ブラシ毎に異なる外観を呈するばかりではなく、保水性の低下を招き易く、所定の洗浄力が得られないことがあった。
【0008】
また、近年、特殊コーティング等が施された塗装面の洗浄に際して、より一層高い洗浄力と洗浄面保護性が要求されるようになってきており、従来の断面形状のものではかかる要求を十分満足するのが困難な状況を迎えつつある。
【0009】
本考案は、上記事情に鑑み、より一層高い洗浄力と洗浄面保護性を備えると共に、外観及び性能面において均一な回転ブラシを実現し得る毛材を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本考案者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、回転ブラシ用毛材を特定の断面形状とすることが極めて効果的であることを知見し、本考案に至ったものである。
【0011】
すなわち本考案は、樹脂製の回転ブラシ用毛材であって、その一実施例に対応する図1を用いて説明すると、放射状に延びた複数の主枝幹1の外縁部から夫々副枝幹2が分岐しており、複数の副枝幹2によって、外周部が隙間3を持った略正六角形の断面形状を成している点を特徴とするものである。
【0012】
【考案の実施の形態】
本考案の回転ブラシ用毛材に用いられる樹脂は熱可塑性樹脂であり、例えばポリオレフィン、ポリオレフィンを主体とした共重合体又はブレンド物及びこれらの変性物が好ましく、この中でもポリエチレン及びこれを主体としたブレンド物が適しており、特に低圧法直鎖状低密度ポリエチレン及びこれを主体としたブレンド物が好ましい。また、かかる熱可塑性樹脂は、密度が0.94以下、メルトインデックスが0.3〜4.0g/10分、特に0.4〜3.0g/10分であることが好ましい。
【0013】
本考案の毛材は、上記熱可塑性樹脂を無発泡状態若しくは発泡倍率が1.1〜3.0倍の範囲で発泡させた状態で成形することが好ましい。発泡倍率が高過ぎると、必要な腰の強さや強度を得るのが難しくなると共に、砂や汚れの付着を生じ易くなる。
【0014】
本考案の毛材は、例えば図1〜図4の断面図に示されるように、中心部から外方に放射状に延びた複数の主枝幹1と、この主枝幹1の外縁部から分岐している副枝幹2を有するものである。また、相隣接する副枝幹2の間には隙間3が設けられていて、これら複数の副枝幹2によって毛材の外周部は略正六角形の断面形状を成している。
【0015】
上記のように、本考案の毛材は正六角形の外周断面を有することから、複数本を束ねる際に、その根元部分を図5に示すようにハニカム状に各毛材を隙間なく安定して取り纏めることができる。このため、回転軸に均一な密度で、且つ均一な状態で取り付けることができ、従来のようにブラシ毎に異なる外観を呈したり、保水性の低下に起因して洗浄力の低下を招く心配がない。
【0016】
本考案において、前記ハニカム状に取り纏める際の確実性、洗浄力の低下防止の確実性を考慮すると、副枝幹2間の隙間3を狭くするのが好ましい。すなわち、隙間3が広過ぎると、取り纏めの際若しくは使用時にこの隙間3に他の毛材の副枝幹2が入り込み、毛材同士が絡み付く場合があるからである。したがって、副枝幹2間の隙間3の幅は、具体的には副枝幹2の厚さ以下であるのが好ましく、通常は0.05〜0.5mm程度に設計されるが、副枝幹2の剛性が比較的高い場合にはこれ以上の幅とすることもできる。
【0017】
なお、複数の毛材を隙間なく取り纏める点に関してだけ言えば、正六角形に限らず正三角形若しくは正方形等の断面形状とすることも考えられる。しかしながら、例えば正三角形とした場合には、毛材の取り付け方向に2種類の方向が発生し、各毛材を均一な状態で回転軸に取り付けることができなくなる。また、正方形とした場合には、取り纏めの際にずり変形を起こし易く安定性に欠けるため、各毛材を均一な状態で回転軸に取り付けることが難しくなる。
【0018】
本考案の毛材においては、正六角形断面の内側に外部と隙間3を介して通じる複数の空間が形成される。かかる空間は洗浄時に水を保持する効果があり、洗浄効果を高めることができる。また、従前から知られているように、洗浄時に水が多ければ多いほど被洗浄物の表面に水が良く介在するようになり、洗浄面に傷が付きにくくなると共に、主枝幹1から分岐する副枝幹2が洗浄面へのタッチを和らげる柔軟性を備えることとも相俟って、洗浄面の大きな保護効果が得られる。
【0019】
主枝幹1の本数は3本以上とすることができるが、図1及び図2に示したように6本にするのが特に好ましい。
【0020】
図3に示したように主枝幹1を3本とした場合には、副枝幹2の断面方向の長さが長くなりがちで、繰り返し使用によって反り返り等の変形や割れを招く場合があり、耐久性及び洗浄力が低下する場合がある。また、保水性の向上を図るのが難しくなる。
【0021】
図4に示すように主枝幹1が4本の場合には、非対称断面であるため方向によって剛性(腰の強さ)が若干異なり、回転軸に取り付けた際の垂れ下がり状態にバラツキを生じる場合があり、ブラシ毎に洗浄力にバラツキが生じたり、洗浄力の低下を招く場合がある。
【0022】
また、主枝幹1が6本よりも多くなると、毛材の均質性が低下する等の製造上の問題が発生し易いと共に、製造コストが増大する傾向にある。
【0023】
本考案の毛材の太さ(正六角形の外接円の直径)は、0.5〜5mm、特に1〜3mm程度であることが好ましい。この径が小さ過ぎると、必要な腰の強さが得にくくなり、逆に大き過ぎると、洗浄時に被洗浄物に当たる衝撃が大きくなって傷付け易くなると共に、ブラシが粗くなって、洗い残しを生じ易くなる。
【0024】
主枝幹1と副枝幹2の厚さは、緩衝効果を得る上で0.05〜0.5mmであることが好ましく、全断面形状に応じてこれらの厚さを調整することにより所望の緩衝効果を得ることができる。
【0025】
また、本考案の毛材は、例えば図6及び図7に示すように、中心部分に基幹4を設け、かかる基幹4から複数の主枝幹1を分岐させることもできる。特に、樹脂の発泡倍率を例えば1.5倍以上とした場合には、このような基幹4を設けることにより腰の強さと強度の補強を同時に行うことができ、好ましい。
【0026】
なお、上記のように基幹4を設けた場合には、主枝幹1の突出長さは、毛材の太さ(正六角形の外接円の直径)の10%以上確保することが好ましい。
【0027】
また、本考案の毛材は、例えば図8及び図9に示すように、主枝幹1の外縁部以外にも、副枝幹2と断面相似な副枝幹2’設けることも好ましい。これにより毛材の保水性をより一層高めることができると共に、繰り返し使用により副枝幹2が取れてしまった場合にも洗浄力の低下を防止することができる。
【0028】
本考案の毛材は、前記熱可塑性樹脂に必要に応じて所定量の発泡剤を添加したものを、所望の断面形状のダイスから押出すことで、容易に連続的に製造することができる。この時の延伸倍率は3.0〜6.0倍、特に4.0〜5.5倍程度であることが好ましい。
【0029】
【実施例】
以下に本考案の実施例を具体的に説明する。
【0030】
[実施例1]
密度0.924、メルトインデックス0.8の低圧法直鎖状低密度ポリエチレンに発泡剤としてダイブローPE−MD20N(発泡剤量20重量%のマスターバッチ:大日精化工業社製)を2.5%添加し、以下の条件で紡糸した。
【0031】
押出機:モノフィラメント用紡糸機 スクリュー直径40mm L/D=24 圧縮比3.0 押出機設定温度:C1 170℃ C2 200℃ H 200℃ ダイ190℃ 紡口:図1と同様の形状 ホール数15 紡糸デニール:6000D/1F 延伸倍率:4.7倍
【0032】
得られた本実施例の毛材Aの発泡倍率を測定したところ、2.5倍であった。
【0033】
また、上記と同様の条件で、比較用として図10に示したような断面形状を有する無発泡の毛材Bと発泡倍率2.5倍の毛材Cを紡糸した。なお、各毛材の太さ(図10の断面形状のものにあっては十字の外接円の直径)は全て1.25mmである。
【0034】
上記毛材A〜Cについて、以下の試験を行った。
【0035】
(保水率)
各毛材を取り付けたブラシを1分間水の中に浸し、取り出した後30秒間自然状態で水をきる。この前後の重量変化から保水率を測定した結果、毛材Aのブラシは、毛材B及び毛材Cのブラシに比べて、保水率が25〜20%大きかった。
【0036】
(腰の強さ)
同一長さの各毛材を植毛したパイプを垂直に立てた状態において、毛材の長さ方向の中間点における接線と水平方向との成す角度を測定した。この結果、毛材Aは、毛材B及び毛材Cに比べて、上記角度が25〜30%小さかった。
【0037】
(衝撃吸収力)
浅底の平らな容器に各毛材を自然な状態で同一重量敷き並べ、1.2mの高さから重量1.18kgのボールを落下させ、バウンド高さを測定した。その結果、バウンド高さは毛材を敷かない状態では90cm、毛材Bについては63cm、毛材Cについては52cm、毛材Aについては44cmであった。
【0038】
以上の試験結果から、本考案による毛材Aは、従来の毛材B,Cに比べて、保水率が高く、腰が強く、且つ衝撃吸収力が大きいことが確認された。
【0039】
また、本考案の毛材Aを、回転ブラシの軸に15本及び30本づつ纏めて取り付けたが、いずれの場合にも極めて簡単に均一な密度且つ均一な状態で各毛材を取り付けることができた。
【0040】
さらに、上記回転ブラシを自動洗車機に取り付けて洗車テストを行い、傷付きの程度を観察した結果、傷付きはほとんど見られず、洗い残しもなく、極めて良好な結果が得られた。
【0041】
[実施例2]
実施例1と同様の条件で、図4に示したような断面形状を有する発泡倍率2.
5倍の毛材Dを紡糸した。この毛材Dの太さは実施例1の毛材Aと同じく1.25mmである。
【0042】
上記毛材Dにについて、実施例1と同様の試験を行った結果、保水率に関しては前記毛材Aと毛材Cの中間程度、腰の強さに関しては毛材Aと毛材Bの中間程度、衝撃吸収力に関しては毛材Aと同程度であることが確認された。
【0043】
また、毛材Dを、回転ブラシの軸に15本及び30本づつ纏めて取り付けた。
このとき、毛材の根元が変形しないように注意して束ねることにより、均一な密度且つ均一な状態で各毛材を取り付けることができた。
【0044】
さらに、上記回転ブラシを自動洗車機に取り付けて洗車テストを行った結果、良好な結果が得られた。
【0045】
【考案の効果】
以上説明した様に、本考案の回転ブラシ用毛材によれば以下の効果を奏する。
【0046】
(1)外周断面を略正六角形としたことにより、複数の毛材の根元部分をハニカム状に隙間なく安定して取り纏めることができるため、複数本を束ねて植毛する際に、ブラシの軸に極めて簡単に均一な密度で、且つ均一な状態で取り付けることができる。したがって、各毛材が重なり合うことによる保水性の低下を防止することができ常に所定の洗浄力が得られると共に、外観及び性能面において均一な回転ブラシを実現できる。
【0047】
(2)内部に複数の空間を保有するため保水性が高く、且つ複数の主枝幹と副枝幹を有することにより比較的腰が強いにもかかわらず洗浄面へのタッチを和らげる高い衝撃吸収力を備えるため、極めて高い洗浄力と洗浄面保護性を有する回転ブラシを実現できる。
【0048】
(3)特に、主枝幹を6本備えるものにあっては、製造コストを抑えつつ前記の特徴的な効果を高度に発揮することができる。
【0049】
(4)主枝幹の外縁部以外にも、副枝幹を設けたものにあっては、洗浄力の低下が少なく、より耐久性に富んだ回転ブラシが実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の回転ブラシ用毛材の一例を示す断面図である。
【図2】本考案の回転ブラシ用毛材の別の例を示す断面図である。
【図3】本考案の回転ブラシ用毛材の別の例を示す断面図である。
【図4】本考案の回転ブラシ用毛材の別の例を示す断面図である。
【図5】本考案の回転ブラシ用毛材を複数本取り纏めた状態を示す断面図である。
【図6】基幹部分を有する本考案の回転ブラシ用毛材の一例を示す断面図である。
【図7】基幹部分を有する本考案の回転ブラシ用毛材の別の例を示す断面図である。
【図8】本考案の回転ブラシ用毛材の別の例を示す断面図である。
【図9】本考案の回転ブラシ用毛材の別の例を示す断面図である。
【図10】従来の回転ブラシ用毛材の一例を示す断面図である。
【図11】従来の回転ブラシ用毛材の別の例を示す断面図である。
【図12】回転ブラシ用毛材の使用状態例を示す図である。
【図13】回転ブラシ用毛材の使用状態例を示す図である。
【図14】従来の回転ブラシ用毛材を複数本取り纏めた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 主枝幹
2,2’副枝幹
3 隙間
4 基幹
【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 放射状に延びた複数の主枝幹の外縁部から夫々副枝幹が分岐しており、複数の該副枝幹によって、外周部が隙間を持った略正六角形の断面形状を成していることを特徴とする樹脂製の回転ブラシ用毛材。
【請求項2】 前記主枝幹を6本有することを特徴とする請求項1に記載の回転ブラシ用毛材。
【請求項3】 前記主枝幹の外縁部以外にも、前記副枝幹と断面相似な副枝幹を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の回転ブラシ用毛材。
【請求項1】 放射状に延びた複数の主枝幹の外縁部から夫々副枝幹が分岐しており、複数の該副枝幹によって、外周部が隙間を持った略正六角形の断面形状を成していることを特徴とする樹脂製の回転ブラシ用毛材。
【請求項2】 前記主枝幹を6本有することを特徴とする請求項1に記載の回転ブラシ用毛材。
【請求項3】 前記主枝幹の外縁部以外にも、前記副枝幹と断面相似な副枝幹を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の回転ブラシ用毛材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【登録番号】第3043462号
【登録日】平成9年(1997)9月3日
【発行日】平成9年(1997)11月18日
【考案の名称】回転ブラシ用毛材
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平9−3973
【出願日】平成9年(1997)5月16日
【出願人】(593182325)株式会社サンワード (2)
【登録日】平成9年(1997)9月3日
【発行日】平成9年(1997)11月18日
【考案の名称】回転ブラシ用毛材
【国際特許分類】
【出願番号】実願平9−3973
【出願日】平成9年(1997)5月16日
【出願人】(593182325)株式会社サンワード (2)
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