説明

回転円盤固体培養装置における麹基質盛込み装置及び回転円盤固体培養装置における麹基質盛込み方法

【課題】円形培養床に盛込まれた麹基質の層厚を均一にし、その再現性を良好にすることや、意図的な層厚にすることも可能である、回転円盤固体培養装置における麹基質盛込み装置及び回転円盤固体培養装置における麹基質盛込み方法を提供する。
【解決手段】円形培養床2に麹基質7を盛り込む回転円盤固体培養装置1における麹基質盛込み装置10であって、移動コンベア5のベルト9で搬送した麹基質7を円形培養床2に落下させながら、移動コンベア5が円形培養床2上を往復運動し、ベルト9のベルト速度を調整し、ベルト速度とベルト9上の麹基質の落下端11における断面積から求まる落下量を制御する制御機構12を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円形培養床に麹基質を盛り込む回転円盤固体培養装置における麹基質の盛込みに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、移動コンベアを用いて円形培養床に麹基質を盛り込む麹基質の盛込み装置が知られている(例えば下記特許文献1、2、3)。これらの盛込み装置においては、移動コンベアを円形培養床の半径方向に往復運動させながら、麹基質を円形培養床上に落下させることになる。一方、円形培養床を仮想的な等間隔の同心円で区画した場合、各区画領域の面積は、円形培養床の中心側に比べ外周側が大きくなる。このため、移動コンベアの往復運動の速度が等速であると、面積当たりの盛込み量は、円形培養床の外周側に至るほど少なくなってしまう。
【0003】
このため、特許文献1では、搬送機(移動コンベア)自体の円盤(円形培養床)上の中心部及び外周部への移動時間を円形培養床の周速度に逆比例して制御し麹基質の盛り込みを均一にならしめることが提案されていた(第1頁第2欄15〜17行)。特許文献2では、円形培養床のドーナツ状の区画の面積(S1,S2,S3)の面積比を計算し、この面積比に逆比例して、移動搬送部(移動コンベア)の先端の供給口の移動速度を変速して、均等な堆積厚で麹基質を盛り込むことが提案されていた(段落[0015]〜[0018])。
【0004】
また、特許文献3では、円形培養床に麹基質を全面に薄層として盛込む操作を複数回繰返して目的とする層厚まで多層状に盛込むに際して、移動コンベアから麹基質が落下する位置に応じて移動コンベアのベルトスピードを変速させ、麹基質の層厚を均一にすることが提案されていた。(段落[0004])
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭53−42640号公報
【特許文献2】特開2004−229583号公報
【特許文献3】特開平6−327466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、移動コンベアの速度を刻々と変化させると、それに伴いベルト上の麹基質の断面積も刻々と変化するので、ベルト上の麹基質の断面積は不均一になる。したがって、円形培養床の周速度やドーナツ状の区画の面積比のみに基いて、移動コンベアの移動速度を変化させた場合や、位置に応じてベルトスピードを変化させるだけでは、目標とする麹基質の盛り込みの均一度が得られない場合があった。
【0007】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するためのものであり、円形培養床に盛込まれた麹基質の層厚を均一にし、その再現性を良好にすることや、意図的な層厚にすることも可能である、回転円盤固体培養装置における麹基質盛込み装置及び回転円盤固体培養装置における麹基質盛込み方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の回転円盤固体培養装置における麹基質盛込み装置は、円形培養床に麹基質を盛り込む回転円盤固体培養装置における麹基質盛込み装置であって、移動コンベアのベルトで搬送した麹基質を円形培養床に落下させながら、前記移動コンベアが円形培養床上を往復運動し、前記ベルトのベルト速度を調整し、前記ベルト速度と前記ベルト上の麹基質の落下端における断面積から求まる落下量を制御する制御機構を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の回転円盤固体培養装置における麹基質盛込み方法は、円形培養床に麹基質を盛り込む回転円盤固体培養装置における麹基質盛込み方法であって、移動コンベアのベルトで搬送した麹基質を円形培養床に落下させながら、移動コンベアを円形培養床上で往復運動させ、前記ベルトのベルト速度を調整し、前記ベルトのベルト速度と前記ベルト上の麹基質の落下端における断面積から求まる落下量を制御することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、前記ベルト速度を調整することにより、前記ベルト速度と前記ベルト上の麹基質の落下端における断面積から求まる落下量を制御するので、落下量の目標値に対する精度が高くなる。このため、各工程における必要落下量を精度良く確保でき、円形培養床に盛込まれた麹基質の層厚を均一にし、その再現性を良好にすることや、意図的な層厚にすることも可能になる。本発明においては、前記ベルト上の麹基質の落下端における断面積は、演算により求めてもよく、撮像センサ等で検出してもよい。
【0011】
本発明では、円形培養床上を仮想的な領域に分割し、麹基質の落下量が各領域に対して任意の量となるように、領域が切り替わる又は往路復路が切り替わるたびに前記ベルトのベルト速度を調整することが好ましい。このように、領域が切り替わるたび等にベルト速度を調整する構成によれば、ベルト速度を算出し易くなり、制御プログラムの作成が容易になる。
【0012】
また、前記本発明においては、前記ベルト上の麹基質の供給地点における、前記ベルト上に供給される単位時間当たりの麹基質の体積と、前記ベルト速度と、前記移動コンベアの移動速度から求まる断面積から、前記ベルト上の麹基質の落下端における断面積を導出し、前記落下量をシーケンス制御することが好ましい。
【0013】
前記の好ましい構成によるシーケンス制御によれば、前記ベルト上の麹基質の落下端における断面積は、前記ベルト上に供給される単位時間当たりの麹基質の体積と、前記ベルト速度と移動コンベアの移動速度が設定されると、演算により求まるので、落下量を調整するための前記ベルト速度は予め決定できるため、麹基質盛込み装置の一連の運転を運転前に作成された制御プログラムに従って実施させることができる。
【0014】
さらに、前記本発明においては、前記円形培養床を、仮想的な同心円により複数の分割区画に分割し、前記移動コンベアを、分割区画内を往復運動させながら麹基質を盛り込んだ後、次の分割区画内を往復運動させながら麹基質を盛り込むことが好ましい。
【0015】
前記のように、分割区画単位で移動コンベアを往復運動させる構成によれば、移動コンベアの落下端の中心点の軌跡が細かくなり、麹基質の盛り込まれない部分を少なくでき、盛り込みのばらつきを抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ベルト速度とベルト上の麹基質の落下端における断面積から求まる落下量を操作するので、落下量の目標値に対する精度が高くなる。このため、各工程における必要落下量を精度良く確保でき、円形培養床に盛込まれた麹基質の層厚を均一にし、その再現性を良好にすることや、意図的な層厚にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る麹基質盛込み装置を備えた回転円盤固体培養装置の構成図であり、(a)図は麹基質盛込み装置の平面図、(b)図は麹基質盛込み装置の断面図。
【図2】本発明の一実施の形態に係る円形培養床において、移動コンベアの1往復の盛込み領域を示す拡大図。
【図3】本発明の一実施の形態において、移動コンベアのベルト上に麹基質が供給された状態を示す斜視図。
【図4】本発明の一実施の形態において、工程PA1の開始時における固体培養装置の断面図。
【図5】本発明の一実施の形態において、工程PB1の開始時における固体培養装置を示す図であり、(a)図は円形培養床の平面図、(b)図は固体培養装置の断面図。
【図6】本発明の一実施の形態において、工程PD1の終了時における固体培養装置を示す図であり、(a)図は円形培養床の平面図、(b)図は固体培養装置の断面図。
【図7】本発明の一実施の形態において、移動コンベアの1往復の終了時における固体培養装置を示す図であり、(a)図は円形培養床の平面図、(b)図は固体培養装置の断面図。
【図8】本発明の実施例2に係る円形培養床の平面図。
【図9】図8に示した円形培養床2の分割区画Xの拡大図。
【図10】本発明の別の実施の形態に係る麹基質盛込み装置を備えた回転円盤固体培養装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る麹基質盛込み装置10を備えた回転円盤固体培養装置(以下、単に「固体培養装置」という)1の構成図である。図1(a)は、固体培養装置1の平面図であり、図1(b)は図1(a)の円形培養床2の径方向における断面図である。
【0019】
固体培養装置1は、回転円盤である円形培養床2と、円形培養床2上に麹基質7を盛り込む麹基質盛込み装置10を備えている。円形培養床2は、中心円筒3の中心軸を中心として回転する。麹基質盛込み装置10は、供給コンベア4と移動コンベア5を備えている。供給コンベア4はベルト6を有しており、ベルト6上に積載された麹基質7は、ベルト6の移動と共にベルト6の落下端8に向かって搬送される(矢印a)。
【0020】
移動コンベア5はベルト9を有しており、ベルト9上には、供給コンベア4の落下端8から落下した麹基質7が供給される。ベルト9上の麹基質7は、ベルト9の移動と共にベルト9の落下端11に向かって搬送される(矢印b)。移動コンベア5は、ベルト9が循環移動するとともに、移動コンベア5全体が円形培養床2上を往復運動する。
【0021】
具体的には、移動コンベア5が円形培養床2の内周方向に向かって移動しながら(矢印c)、円形培養床2上に麹基質7を盛り込み、内周で停止を行う経路を往路とし、移動コンベア5が円形培養床2の外周方向に向かって移動しながら(矢印d)、円形培養床2上に麹基質7を盛り込み、外周で停止を行う経路を復路とした。この例では、往路から始め復路で終わるようにしたが、これとは逆に、移動コンベア5の往復は復路から始め、往路で終わるようにしても良い。また、往路と復路の停止は行わなくても良い。
【0022】
前記のような麹基質盛込み装置10の一連の運転は、制御機構12からの指令に基いて実施される。例えば、ベルト9のベルト速度は、制御機構12からの指令を受けた駆動機構13により調整される。
【0023】
円形培養床2上に麹基質7が盛り込まれている間は、円形培養床2は、中心円筒3の中心軸を中心として回転している(矢印e方向)。このため、移動コンベア5の往復運動は直線移動であっても、落下端11の中心点の円形培養床2上の軌跡は、図2に示したようになる。
【0024】
図2は、円形培養床2において、移動コンベア5の1往復の盛込み領域を示す拡大図である。移動コンベア5は、往路において円形培養床2の中心側に向かって直線移動する。この間、円形培養床2は、矢印e方向に回転移動する。したがって、移動コンベア5の往路において、落下端11の中心点の円形培養床2上の軌跡は、線15で示したように曲線的な軌跡となる。同様に、移動コンベア5の復路においては、外周側に向かって直線運動し、外周で停止させる。したがって、移動コンベア5の復路における落下端11の中心点の軌跡は、線16で示したように曲線的な軌跡と外周上の軌跡となる。本実施形態では、1往復の盛込み領域を図2に示した落下端11の中心点の軌跡によって決定した。
【0025】
しかし、実際はベルトから麹基質が落下する際の断面積に応じた幅で落下するため、領域内にすべての麹基質が落下しないことがしばしばある。よって、実際に領域内に落下する量を算出するのではなく、図2に示した領域に必要な量を移動コンベア5の麹基質落下中心点より落下させるとして算出している。よって領域に対して実際の落下は多少ずれがあっても良い。領域の決め方は任意であるが、本実施形態では移動コンベア5の麹基質落下中心点の軌跡により領域を決定した。
【0026】
図2の例では、往路開始時における落下端11の中心点を点Sとしたときに、復路終了時における落下端11の中心点が点Eになるように設定している。このことにより、移動コンベア5が1往復完了した時点で、図2に示したすべての領域に対して、盛込みが行われたものとする。
【0027】
図2に示した移動コンベア5の中心点の軌跡によって決定された部分を、4つに分け、その各部分を領域A、領域B、領域C、領域Dとする。以下の説明において、往路において各領域に麹基質7を盛り込む工程を、工程PA1、工程PB1、工程PC1、工程PD1、工程PD1’とする。一方、復路において各領域に麹基質7を盛り込む工程を、工程PD2、工程PC2、工程PB2、工程PA2、工程PA2’とする。
【0028】
工程PD1’は往路において、領域Dで移動コンベア5が内周で停止した際に領域Dに盛込む工程であり、工程PA2’は復路において、領域Aで移動コンベア5が外周で停止した際に領域Aに盛込む工程である。停止を行わない場合、工程PD1’または工程PA2’は行われない。例えば、領域Aには工程PA1、工程PA2、工程PA2’によって盛込みが行われ、両工程を合わせて領域Aに必要な落下量を算出する。本実施形態では領域を4つに分けたが、領域の数が多いほど盛込み状況は良好となる一方で、プログラムが複雑になるため、領域の数は装置の規模やコスト等に見合うように適宜選択すればよい。
【0029】
以下、固体培養装置1の運転開始後の動作について説明する。下記の例は、麹基質盛込み装置10の一連の運転が制御機構12に備えた制御プログラムに従って実施される例である。詳細は後に説明するように、前提条件をあらかじめ定めておけば、工程毎のベルト9のベルト速度に代表される運転条件は事前に設定可能である。
【0030】
最初に、円形培養床2上に麹基質7が盛り込まれる前の初期段階について説明する。図3は、移動コンベア5のベルト9上に麹基質7が供給された状態を示す斜視図である。矢印b方向に移動しているベルト9上に、供給コンベア4(図1)から麹基質7が落下するので、ベルト9上には麹基質7の積載体Stが形成される。
【0031】
供給コンベア4(図1)からの麹基質7の単位時間当たりの供給量を一定値D(m/s)とし、初期段階のベルト9のベルト速度を一定値VbSt(m/s)とする。また、この際に形成される断面の断面積をASt(m)とし、ある時間Δt(秒)が経過したとすると、下記式(1)が成り立つ。
式(1) D×Δt=ASt×VbSt×Δt
【0032】
以後、図3の状態から時間が経過するにつれて、積載体Stは落下端11に向かって進む。積載体Stはベルト9の長手方向に落下端8より水平方向にL(図1(b))進むと、落下端11に到達し落下する。
【0033】
図4は、工程PA1の開始時における固体培養装置1の断面図である。図4に示したように、工程PA1の開始時には積載体Stの麹基質7が落下し始める。工程PA1における単位時間当たりの落下量DA1(m/s)は、工程PA1におけるベルト9のベルト速度を一定値VbA1(m/s)とすると、下記式(2)で表わされる。
式(2) DA1=ASt×VbA1
【0034】
本実施形態では、移動コンベア5の移動速度は一定値V(m/s)としている。また、図2に示したように、円形培養床2の径方向における各領域A〜Dの幅は一定値d(m)としている。このため、各領域A〜Dにおける移動コンベア5の通過時間は、下記式(3)で表わされる定数t1(s)となる。
式(3)t1=d/V
【0035】
以上により、工程PA1における総盛込み量WA1(m)は、下記式(4)で表わされる。
式(4) WA1=DA1×t1
【0036】
盛込みの制御においては、このWA1を工程PA1に必要な落下量となるように操作を行えばよいことがわかる。本実施の形態では、前記の通り移動コンベア5の移動速度は、一定値V(m/s)としている。工程PA1が開始されると、ベルト9上には積載体A1が形成される。
【0037】
積載体A1の断面積をAA1(m)とし、工程PA1におけるベルト9のベルト速度を一定値VbA1(m/s)とすると、式(1)と同様に、下記式(5)が成り立ち、式(5)から断面積AA1は式(6)で表わされる。
式(5) D×Δt=AA1×(VbA1+V)×Δt
式(6) AA1=D/(VbA1+V)
【0038】
このようにベルト9上の積載体の断面積は供給コンベア4の落下量を、供給コンベア4に対する移動コンベア5の麹基質落下地点の相対速度で割ったものになることがわかる。
【0039】
図5は、工程PB1の開始時における固体培養装置1を示している。図5(a)は円形培養床2の平面図であり、領域Aに対し工程PA1で麹基質7が盛り込まれている。図5(b)は固体培養装置1の断面図であり、ベルト9上には積載体Stと積載体A1が積載されている。積載体A1は、工程PA1においてベルト9上に積載されたものであり、積載体A1の断面積は前記式(6)で表わされる。
【0040】
一方、工程PB1においては、積載体B1が積載される。工程PB1におけるベルト9のベルト速度を一定値VbB1(m/s)とし、積載体B1の断面積をAB1(m)とすると、工程PA1の場合と同様に、断面積AB1は下記式(7)で表わされる。
式(7) AB1=D/(VbB1+V)
【0041】
積載体Stが落下している過程における、落下端11からの単位時間当たりの落下量DB1s(m/s)は下記式(8)で表わされる。積載体A1が落下している過程において、落下量DB1a(m/s)は下記式(9)で表わされ、積載体B1が落下している過程において、落下量DB1b(m/s)は下記式(10)で表わされる。
式(8) DB1s=ASt×VbB1
式(9) DB1a=AA1×VbB1
式(10) DB1b=AB1×VbB1
【0042】
工程PA1での積載体Stの消費量はベルト9が進んだ距離に等しいため、その消費距離をAL1(m)とすると、消費距離AL1は下記式(11)で表すことができる。
式(11) AL1=VbA1×t1
【0043】
よって、積載体Stの残り距離は(L−AL1)(m)となる。このため、工程PB1で積載体Stの残りが消費される時間t2(秒)は下記式(12)で表すことができる。
式(12) t2=(L−AL1)/VbB1
【0044】
同様の演算により、積載体A1の消費時間t3が求まり、積載体PB1の消費時間t4は(t1−t2−t3)(秒)と求められる。したがって、工程PB1における総盛込み量WB1(m)は下記式(13)で求まることになる。
式(13) WB1=(DB1s×t2)+(DB1a×t3)+(DB1b×t4)
【0045】
本実施の形態では、工程PB1において積載体Stに加え積載体A1と積載体B1の両方が消費される例を示しているが、ベルト速度次第では、積載体A1及び積載体B1は消費せず積載体Stのみの消費となる場合もあり、積載体B1は消費せず積載体St及び積載体A1の消費となる場合もある。
【0046】
式(13)より、盛込みの制御においては、総盛込み量WB1(m)を、工程PB1に必要な盛込み量に操作すればよいことが分かる。工程PC1、工程PD1にいても同様な操作を行う。
【0047】
図6は、工程PD1の終了時における固体培養装置1を示している。図6(a)は円形培養床2の平面図であり、領域A〜Dに麹基質7が盛り込まれている。図6(b)は固体培養装置1の断面図であり、ベルト9上には、積載体C1と積載体D1がある。積載体C1は工程PC1において積載されたものであり、積載体D1は工程PD1において積載されたものである。図6は往路を終えて復路に移行する直前の状態を示している。
【0048】
復路においては、移動コンベア5が往路と反対方向(d方向)に移動する。一方、ベルト9の矢印b方向の移動は継続しているので、ベルト9の落下端11からは積載体C1が落下し、続いて積載体D1が落下する。
【0049】
復路における落下端11からの単位時間当たりの落下量は、往路の場合と同様であり、各積載体の断面積にベルト9のベルト速度を乗じた値となる。また、前記の通り、積載体の断面積は供給コンベア4の落下量を、供給コンベア4に対する移動コンベア5の麹基質落下地点の相対速度で割ったものになる。このため、工程PD2のベルト速度を一定値VbD2(m/s)とし、積載体D2の断面積をAD2(m)とすると、断面積AD2は下記式(14)で表わされる。
式(14) AD2=D/(VbD2−V)
【0050】
供給コンベア4から見たベルト9の相対速度は、前記の通り往路ではベルト9のベルト速度に移動コンベア5の移動速度Vを加えた値となり、復路ではベルト9のベルト速度から移動コンベア5の移動速度Vを引いた値となる。このため、ベルト9のベルト速度が同じ場合は、往路に比べ復路は相対速度が遅くなり、積載体の断面積は往路に比べ復路が大きくなる。
【0051】
図7は、移動コンベア5の1往復の終了時における固体培養装置1を示している。図7(a)は円形培養床2の平面図であり、移動コンベア9が1往復したことにより、領域A〜Dに麹基質7が盛り込まれている。図7(b)は固体培養装置1の断面図であり、ベルト9上には、積載体Stがある。積載体Stは工程PA2の終了時に移動コンベア5を停止させ、工程PA2’において、ベルト9のベルト速度をVbSt(m/s)としたときに積載されたものである。復路においても、総盛込み量の制御は往路と同様である。
【0052】
移動コンベア5が外周に到達した後、工程PA2’を行わず、次の往路を直ちに開始しても良いが、移動コンベア5を外周で停止させ、工程PA2’でベルト9上の状態が図4と同じ状態になった後、次の往路を開始すれば、毎度同じ往復プログラムを使用でき簡便である。
【0053】
以上のように本実施の形態においては、ベルト速度を調整することで、ベルト速度とベルト上の麹基質の落下端における断面積から求まる落下量を制御するので、落下量の目標値に対する精度が高くなる。このため、各工程における必要落下量を精度良く確保でき、円形培養床の麹基質の盛り込み層厚の均一度を高めることができる。
【0054】
本実施の形態では、各領域の半径方向の幅は一定値dとしたが、半径方向の幅は任意で設定してもよい。例えば、各領域の幅を一定値とした場合に、内周側と外周側の各領域の面積を比較すると、装置が大きくなるほど面積の差が大きくなる。各領域の面積は小さいほど精度がよくなるため、内周側と外周側で精度が変わる可能性がある。よって、各領域の面積が同じになるように領域の幅を設定しても良いし、簡便に内周側や外周側だけ幅を変えても良い。このように、領域の幅は一定値だけでなく任意に設定することが好ましい。
【実施例1】
【0055】
以下、実施例を参照しながら本実施の形態についてさらに具体的に説明する。実施例1は前記実施の形態と同様に、円形培養床2の盛込み領域を仮想的に4つの領域(領域A〜D)に分割した。したがって、実施例1においても、工程PA1〜PD1の往路における盛込みと、工程PD2〜PA2’の復路における盛込みで、移動コンベア5の一往復の盛込みが完了する。盛込み条件を下記のように設定した。
【0056】
円形培養床2の直径d1(図1):10m
中心円筒3の直径d2(図1):2m
円形培養床2の径方向における各領域A〜Dの幅d(図2):1m
盛込み時間:7200秒
円盤回転速度:1200秒/回転
盛込み層厚:600mm
移動コンベア5の移動速度V:0.29m/秒
落下端8と落下端11との間の水平距離L(図1):1.5m
供給コンベア4からの供給量D:0.00628m/秒
以下の表1に、経過時間とベルト9のベルト速度の数値を示している。
【0057】
【表1】

【0058】
表1において、スタート時のベルト速度は0.9(m/秒)であり、往路領域Aから往路領域Bへの切替わり時に、ベルト速度は0.85(m/秒)に切替わっている。すなわち、工程PA1のベルト速度は0.9(m/秒)であり、工程PB1のベルト速度は0.85(m/秒)である。以下、同様にベルト速度の各欄の数値は各工程におけるベルト速度を示している。
【0059】
往路領域においては、移動コンベア5は円形培養床2の内側に向かって移動して行く。領域A〜領域Dの面積は、内側の領域ほど面積が小さくなる。したがって、盛込み層厚の均一化を図るために、往路においては内側の領域ほどベルト速度を遅くして麹基質7の落下量を少なくし、復路においては外側の領域ほどベルト速度を速くして麹基質7の落下量を多くすることが考えられる。
【0060】
しかしながら、実施例1では、復路領域Dから復路領域Cへの切替わり時にベルト速度は急激に増加し、その後ベルト速度は一旦遅くなった後速くなっている。すなわち、実施例1のベルト速度の変化は、各領域の面積に応じた単調な変化ではなく、不規則な変化となっている。
【0061】
これは、実施例1では前記実施の形態と同様に、ベルト速度とベルト上の麹基質の落下端における断面積から求まる落下量を制御するためベルト速度を調整しているからである。したがって、この制御ではベルト速度が不規則な変化となっても、以下の表2示すように必要な落下量を確保でき各領域に必要な盛込み量が得られることになる。
【0062】
【表2】

【0063】
前記実施例1は、円形培養床2の盛込み領域を仮想的に4つの領域(領域A〜D)に分割した例である。分割数は増やすほど盛込みを均一にできるので、装置の規模やコストに応じて分割数を適宜選択すればよい。
【実施例2】
【0064】
図8に実施例2の円形培養床2の平面図を示している。円形培養床2は、仮想的な同心円により3つの分割区画X、Y、Zに分割されている。実施例2では、移動コンベア5は、最初に分割区画X内を往復運動しながら、分割区画Xの全周に麹基質を盛り込む。以後移動コンベア5は、次の分割区画Yを往復運動しながら、分割区画Yの全周に麹基質を盛り込み、さらに次の分割区画Zを往復運動しながら、分割区画Zの全周に麹基質を盛り込む。また、分割区画Zに1周麹基質を盛り込んだ後はそのまま分割区画Zにもう1周盛り込み、分割区画Y、分割区画Xの順に盛り込み、全区画に2周ずつ盛り込む。
【0065】
図9に図8に示した円形培養床2の分割区画Xの拡大図を示している。分割区画Xは、仮想的な同心円による3つの盛込み領域に分割されている。図示はしていないが分割区画Yも3つの盛込み領域に分割され、分割区画Zは5つの盛込み領域に分割されている。盛込み条件を下記のように設定した。
【0066】
円形培養床2の直径d1(図1):15m
中心円筒3の直径d2(図1):3m
盛込み時間:7200秒
円盤回転速度:1200秒/回転
盛込み層厚:600mm
移動コンベア5の移動速度V:0.28m/秒
落下端8と落下端11との間の水平距離L(図1):1m
供給コンベア4からの供給量D:0.01414m/秒
分割区画Xの幅:1.32m
分割区画Yの幅:1.68m
分割区画Zの幅:3m
分割区画X内の分割領域の幅:0.438m
分割区画Y内の分割領域の幅:0.562m
分割区画Z内の分割領域の幅:0.600m
【0067】
以下の表3に、分割区画X、Yにおける経過時間とベルト9のベルト速度の数値を示し、表4に分割区画Zにおける経過時間とベルト9のベルト速度の数値を示す。
【0068】
【表3】

【0069】
【表4】

【0070】
実施例2は分割区画を設けない場合と比較して、移動コンベア5の落下端11の中心点の軌跡が細かくなり、麹基質の盛り込まれない部分を少なくでき、盛り込みのばらつきを抑えることができる。
【0071】
実施例2では分割区画X、Y、Zの順に麹基質を盛り込む例を示したが、各分割区画に必要量が盛り込まれればよく、盛り込み順はこの例に限るものではない。また、各分割区画に2周以上の盛り込みをする場合は、任意の分割区画1周分の盛り込みを終えた後に盛り込みを開始する次の分割区画は、同じ分割区画でもよく、別の分割区画でもよい。例えば、分割区画Xに1周分の盛込みを終えた後は、分割区画Xから開始しても良く、隣接する分割区画Yから開始しても良い。
【0072】
前記実施の形態及び実施例1〜2では、ベルト速度をあらかじめ設定しておき、この設定されたベルト速度に従って運転する例を示したが、この例に限るものではない。図10は本発明の別の実施の形態に係る麹基質盛込み装置を備えた回転円盤固体培養装置の構成図である。本図の基本的な構成は図1(b)と同様であり、図1(b)と同一構成の部分は同一符号を付して説明は省略する。
【0073】
本図に示した麹基質盛込み装置は、撮像センサ20及びレーザ変位センサ22を備えている。撮像センサ20により、ベルト9の落下端11における積載体の端面を撮像でき、積載体の断面積を検出できる。レーザ変位センサ22により、移動コンベア5の位置を検出できる。この位置検出には、リニアスケール等の直線位置検出器を用いてもよい。
【0074】
制御機構21は、レーザ変位センサ22で検出された移動コンベア5の現在の位置に基いて、現時点での必要落下量を演算する。これとともに制御機構21は、撮像センサ20により検出された積載体の断面積に基いて、現時点での必要落下量が得られるように移動コンベア5のベルト速度を調整する。このことにより、シーケンス制御と同等の制御をすることができる。
【0075】
以上、センサによる制御とプログラムによるシーケンス制御を説明したが、いずれの制御を選択するかは、適宜決定すればよい。センサを用いる場合、リアルタイムで制御するので、供給コンベアや移動コンベアのトラブル等の予期せぬ断面積の変化にも対応でき、安定性は高いが、装置構成が複雑になりコストもかかることがある。トラブルを除けば、シーケンス制御でも十分制御ができるため、装置の簡略化やコスト面を考慮すれば、通常はシーケンス制御の方が有利である。
【符号の説明】
【0076】
1 回転円盤固体培養装置
2 円形培養床
4 供給コンベア
5 移動コンベア
7 麹基質
9 ベルト
10 麹基質盛込み装置
11 落下端
12,21 制御機構
20 撮像センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形培養床に麹基質を盛り込む回転円盤固体培養装置における麹基質盛込み装置であって、
移動コンベアのベルトで搬送した麹基質を円形培養床に落下させながら、前記移動コンベアが円形培養床上を往復運動し、
前記ベルトのベルト速度を調整し、前記ベルト速度と前記ベルト上の麹基質の落下端における断面積から求まる落下量を制御する制御機構を備えたことを特徴とする回転円盤固体培養装置における麹基質盛込み装置。
【請求項2】
円形培養床上を仮想的な領域に分割し、麹基質の落下量が各領域に対して任意の量となるように、領域が切り替わる又は往路復路が切り替わるたびに前記ベルトのベルト速度を調整する請求項1に記載の回転円盤固体培養装置における麹基質盛込み装置。
【請求項3】
前記ベルト上の麹基質の供給地点における、前記ベルト上に供給される単位時間当たりの麹基質の体積と、前記ベルト速度と、前記移動コンベアの移動速度から求まる断面積から、前記ベルト上の麹基質の落下端における断面積を導出し、前記落下量をシーケンス制御する請求項1又は2に記載の回転円盤固体培養装置における麹基質盛込み装置。
【請求項4】
前記円形培養床は、仮想的な同心円により複数の分割区画に分割され、前記移動コンベアは、分割区画内を往復運動しながら麹基質を盛り込んだ後、次の分割区画内を往復運動しながら麹基質を盛り込む請求項1から3のいずれかに記載の回転円盤固体培養装置における麹基質盛込み装置。
【請求項5】
円形培養床に麹基質を盛り込む回転円盤固体培養装置における麹基質盛込み方法であって、
移動コンベアのベルトで搬送した麹基質を円形培養床に落下させながら、移動コンベアを円形培養床上で往復運動させ、
前記ベルトのベルト速度を調整し、前記ベルトのベルト速度と前記ベルト上の麹基質の落下端における断面積から求まる落下量を制御することを特徴とする回転円盤固体培養装置における麹基質盛込み方法。
【請求項6】
円形培養床上を仮想的な領域に分割し、麹基質の落下量が各領域に対して任意の量となるように、領域が切り替わる又は往路復路が切り替わるたびに前記ベルトのベルト速度を調整する請求項5に記載の回転円盤固体培養装置における麹基質盛込み方法。
【請求項7】
前記ベルト上の麹基質の供給地点における、前記ベルト上に供給される単位時間当たりの麹基質の体積と、前記ベルト速度と、前記移動コンベアの移動速度から求まる断面積から、前記ベルト上の麹基質の落下端における断面積を導出し、前記落下量をシーケンス制御する請求項5又は6に記載の回転円盤固体培養装置における麹基質盛込み方法。
【請求項8】
前記円形培養床を、仮想的な同心円により複数の分割区画に分割し、前記移動コンベアを、分割区画内を往復運動させながら麹基質を盛り込んだ後、次の分割区画内を往復運動させながら麹基質を盛り込む請求項5から7のいずれかに記載の回転円盤固体培養装置における麹基質盛込み方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−217414(P2012−217414A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88382(P2011−88382)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000223931)株式会社フジワラテクノアート (22)
【Fターム(参考)】