説明

回転式便器

【課題】 部品点数を減少させてコストを低減させることができ、しかも、楽に安全に便器の角度を変えることができて、回転させない時は安全に使用することのできる回転式便器を提供する。
【解決手段】 キャスターを備えたベース3上に便器本体2を載置してなる回転式便器1において、ベース3に設けたキャスターの全部または一部を、上下動可能なボールキャスター7,7で構成し、このボールキャスター7が接地した時に、ベース3が床面4から離れ、回転式便器1が回転できるように構成する。
なお、回転させない時は、ボールキャスター7を上方へ上げて、ベース3を床面4に接地させて、回転式便器1を安定化させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高齢者や身体の不自由な人が、車椅子に乗った状態でトイレに入り、トイレ内で便器に移乗する時に、便器が回転できると、楽に便器へ移乗することができ、またトイレ内で車椅子を回転させるためのスペースも少なくて済むため、例えば特許文献1に開示されているようなキャスター式の回転式便器が存在する。
【特許文献1】特開2004−116165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されている回転式便器は、便器の安定性を向上させるために、ブレーキ機構を設けており、普段の便器使用時には、別に設けたブレーキをかけておく必要があり、部品点数が増大してコスト高となるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記従来の問題点に鑑み案出したものであって、その請求項1は、複数のキャスターを備えたベース上に便器本体を載置してなる回転式便器において、前記キャスターの全部または一部を上下動可能なボールキャスターで構成し、該ボールキャスターを下方側へ固定した時のみ該キャスターが接地して前記ベースが床面から離れるように構成したことである。
【0005】
また請求項2は、ベースの前部に設けられるキャスターを、前後左右方向に転動することなく、所定の円軌跡上のみを転動し得る車輪で構成したことである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、回転式便器のキャスターの全部または一部を上下動可能なボールキャスターで構成し、ボールキャスターを下方側へ固定した時のみ、キャスターが接地して、ベースが床面から離れるように構成したことにより、回転時のみボールキャスターを下方に固定することにより、楽に安全に便器の角度を変えることができ、回転させない時は、ベースが接地しているため安定しており、安全に便器を使用することができるものとなる。
また、従来のようなブレーキ機構を設ける必要がないため、部品点数が減少してコストを低減させることができるものとなる。
また、ボールキャスターは移動方向が制限されないため、経時変化で便器を支える回転の中心軸が変化しても、引っ掛かり等が生じることなく、良好に便器を回転させることができるものとなる。
【0007】
また、ベースの前部に設けられるキャスターを、前後左右方向に転動することなく、所定の円軌跡上のみを転動し得る車輪で構成したことにより、ベースの前部に設けられている車輪は、特に前後方向には転動することがないため、ベースが前後方向に動くことはなく、便器の前後方向への動きを良好に制限して、回転のみを良好に行わせることができるものとなる。
【実施例】
【0008】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、回転式便器の縦断面概略構成図であり、図2は、図1の平面構成図を示す(便器本体は半断面に省略化されている。)。
また、図3はベースの平面構成図であり、図4はベースの側面構成図である。
【0009】
図において、回転式便器1は、便器本体2がベース3上に載置されており、このベース3は、平面略三角形状に形成されて、後部中央部には大径の貫通穴3aが貫通状に形成され、その左右側には小径の貫通孔3b,3bがそれぞれ貫通形成されており、また前部には、長方形状の貫通孔3cが形成されている。
このベース3上には、前部の貫通孔3c上に車輪キャスター6が固設されており、また後部左右側には、レバー9を備えて上下動可能なボールキャスター7が固設されている。
【0010】
なお、大径の貫通穴3a内には、床面4から立ち上がる埋設排水管5との間に、床面4にネジ等で固定されるリング50が多少の隙間を形成して下方から挿入されるものであり、このリング50を中心としてベース3は水平面内で回転できるように構成され、埋設排水管5には力が加わらないように構成されている。
なお、埋設排水管5と便器本体2の排水口2aが連通接続されて、便器本体2はベース3上に載置されている。
前記車輪キャスター6は、ベース3上にビス等で固定されるハウジング6a内に回転可能に車輪6bが設けられており、この車輪6bが貫通孔3cから下方へ突出して床面4に接地されており、この車輪6bは、前後左右方向には転動することなく、貫通穴3aを中心とする円軌跡上のみを転動し得るように、転動方向が規制されたものとなっている。
【0011】
一方、後部の左右に設置されるボールキャスター7は、図5に拡大側面図で、また図6に拡大平面図で示すような構造となっている。
即ち、ボールキャスター7は、ボールケース7b内にボール7aが転動可能に内装されており、ボールケース7bがベース3に貫通形成された貫通孔3b内に上下動されて、ボール7aが貫通孔3bから下方側へ突出して床面4に接地された状態で、ベース3の後部が例えば5mm程度の隙間を形成して床面4から浮き上がり、この状態で良好にベース3を回転させることができるように構成されており、ボールキャスター7が上方側へ移動した状態では、ベース3は床面4に接地した状態となって、ベース3は床面4に固定され、この状態ではぐらつくことがなく安定しているため、便器本体2を使用して安全に用を足すことができるものとなる。
【0012】
ボールキャスター7は、レバー9の操作で上下動できるように構成されている。
即ちベース3上には、固定台部8の固定片8aがビス等で固設され、この固定台部8の上部に固定軸14aを介してレバー9が上下方向に回動可能に連結されている。
また、この固定台部8には、固定軸14bを介して上下動可能にアーム部10が連結されており、このアーム部10の後端側に、ボールケース7bの軸11が、受け板12,12を介在させて上下方向からナット13,13を締め付けて固定されている。
【0013】
また、アーム10の前端側に設けられた移動軸15bがレバー9の後端側に連結されており、また、レバー9に設けた移動軸15aが固定軸14aから延びる部分に連結されており、レバー9を想像線の位置から下方側へ指で押圧することにより、起立状態にあったアーム部10が、実線で示すように下方側に移動して略水平状態となり、この時に軸11が垂下状態となって、その下端に設けられているボールキャスター7がベース3の下方に突出状態となる。この時に固定軸14aと移動軸15a,15bが一直線状態に配置されることにより、ロック状態となり、ボールキャスター7のボール7aが床面4に強く押し付けられた状態が保持されるものとなる。
この状態で、ベース3は床面4から浮き上がるため、良好に回転式便器1を回転させることができる。
また、レバー9を上方へ撥ね上げることで、ボールキャスター7は、ベース3の上方に起立されて待機状態となる。
【0014】
このように、回転式便器1を回転移動させたい時のみ、レバー9を下方側へ押圧して、ボールキャスター7を接地させてベース3を床面4から浮き上がらせることができ、楽に安全に回転式便器1の角度を変えることができるものとなり、回転させない時はボールキャスター7を上方へ撥ね上げて、ベース3を床面4に接地させておき、ぐらつくことなく安定した状態に回転式便器1を固定状態としておくことができるものである。
【0015】
なお、回転式便器1はリング50を中心として、水平面内で回転されるものであるが、このリング50の外周と貫通穴3aの内周間には多少の隙間があり、経時変化等で回転の中心が変化した場合にも、本例ではボールキャスター7,7を用いているため、移動方向に制限を受けることなく、引っ掛かり等が生ずることなく、良好にボール7aが回転方向に回転され、楽にベース3を回転させることができるものとなる。
【0016】
また、本例では、ベースの前部には車輪キャスター6が設けられているため、回転時に車輪6bは前後左右方向には転動することがないため、ベース3が前後方向に移動することが防がれて、安定した状態で水平面内でベース3を回転させることができるものとなる。
なお、この車輪キャスター6に代えて、ベース3の前部にも上下動可能にボールキャスター7を設置して構成しても良い。この場合は、便器本体2の前部に凹部等を形成させて、この凹部内にボールキャスター7を配置させるように構成すると良い。
【0017】
なお、本例では、図5及び図6に示すような構造で上下動するボールキャスター7を例示しているが、このような構造に限定するものではなく、良好に上下動でき、且つベース3の下側で良好にロックされて固定状態を保持し得るものであれば、手動のものであっても、また電動式のものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】回転式便器の縦断面概略構成図である。
【図2】回転式便器の便器本体を半断面で示す平面構成図である。
【図3】ベースの平面構成図である。
【図4】ベースの側面構成図である。
【図5】上下動可能な手動式のボールキャスターの拡大側面構成図である。
【図6】図5の平面拡大構成図である。
【符号の説明】
【0019】
1 回転式便器
2 便器本体
3 ベース
3a 埋設排水管用貫通穴
3b,3c 貫通孔
4 床面
5 埋設排水管
6 車輪キャスター
6a ハウジング
6b 車輪
7 ボールキャスター
7a ボール
7b ボールケース
8 固定台部
9 レバー
10 アーム部
11 軸
14a,14b 固定軸
15a,15b 移動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のキャスターを備えたベース上に便器本体を載置してなる回転式便器において、前記キャスターの全部または一部を上下動可能なボールキャスターで構成し、該ボールキャスターを下方側へ固定した時のみ該キャスターが接地して前記ベースが床面から離れるように構成したことを特徴とする回転式便器。
【請求項2】
ベースの前部に設けられるキャスターを、前後左右方向に転動することなく、所定の円軌跡上のみを転動し得る車輪で構成したことを特徴とする請求項1に記載の回転式便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−2373(P2006−2373A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177537(P2004−177537)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】