説明

回転式剪断フィルタ

本発明は、回転式剪断フィルタであって、ケーシングが設けられており、相互間隔を有してケーシング内に定置に配置された、同軸的かつリング状で中空の複数のフィルタディスクが設けられており、フィルタディスクを貫通する回動可能な中央の駆動軸に、複数の剪断エレメントが相対回動不能に保持されており、剪断エレメントが、ケーシングからフィルタディスクに侵入する濾液に関するフィルタ透過性を維持するために、フィルタディスクの、ケーシングの軸方向に向いたリング状の表面に隣接している形式のものに関する。剪断エレメントとフィルタディスクとの間の熱膨張に起因する接触を回避するために、本発明によれば、共に回動するように駆動軸と結合された剪断エレメントが、駆動軸に沿って軸方向変位可能にガイドされており、剪断エレメントの間にスペーサが対応配置されており、スペーサが、剪断エレメントを、ケーシングの、発生する熱に関する長さ変化に応じて軸方向で変位させるようになっている。スペーサは、隣接する剪断エレメントの間に直に配置されていて、かつケーシングの熱膨張特性に相当する熱膨張特性を有する材料から形成することができる。選択的にスペーサは、任意の広範囲の材料から成っていてよく、剪断エレメントの最小間隔は、フィルタディスクもしくは端面側のケーシング壁によって制限されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式剪断フィルタであって、ケーシングが設けられており、相互間隔を有してケーシング内に定置に配置された、同軸的かつリング状で中空の複数のフィルタディスクが設けられており、フィルタディスクを貫通する回動可能な中央の駆動軸に、複数の剪断エレメントが相対回動不能に保持されており、剪断エレメントが、ケーシングからフィルタディスクに侵入する濾液に関するフィルタ透過性を維持するために、フィルタディスクの、ケーシングの軸方向に向いたリング状の表面に隣接している形式のものに関する。
【0002】
問題のない運転にとって、攪拌機として作用する剪断エレメントがフィルタディスクに接触することは許容されない。なぜならば接触後直ちにフィルタディスクに破損の生じる恐れがある、という理由による。駆動軸は、運転中に生じる力を吸収する必要があり、しかも問題のない程度のたわみしか許容されない。このような理由から、駆動軸は、一般的に金属、たとえば鋼または特殊鋼から成っている。駆動軸とフィルタディスクとは、極めて近い熱膨張特性を有する必要があり、これによって、加熱状態で、フィルタディスクと攪拌機もしくは剪断エレメントとの接触が回避される。したがってケーシングは、一般的に駆動軸に対して、同じ材料か、または極めて近い材料から製作される。ケーシングが駆動軸とは別の材料から成っていて、ケーシングの膨張特性が駆動軸の膨張特性とは異なっている場合、剪断エレメントは、フィルタディスクに対して比較的大きな安全間隔を有する必要がある。これによって剪断エレメントおよびフィルタディスクの数は制限される。なぜならば熱膨張効果は、プレートスタックの高さ(つまりディスク全体の高さ)と共に増加するからである。
【0003】
したがって本発明の課題は、請求項1の上位概念に記載の形式の回転式剪断フィルタを改良して、駆動軸とケーシングとの材料選択、ひいては熱膨張特性とは無関係で、剪断エレメントとフィルタディスクとの間の相互接触リスクの存在しないようなものを提供することである。さらにいえることは、剪断エレメントならびにフィルタディスクの間の間隔は特に小さく選択するのが望ましく、これによって最適な空間利用が保証される。
【0004】
この課題は、本発明によれば、請求項1の上位概念に記載の形式の回転式剪断フィルタにおいて、特徴部に記載した構成手段を有する装置によって解決される。つまり共に回動するように駆動軸と結合された剪断エレメントが、駆動軸に沿って軸方向変位可能にガイドされており、剪断エレメントにスペーサが対応配置されており、スペーサが、剪断エレメントを、ケーシングの、発生する熱に関する長さ変化に応じて軸方向で変位させるようになっている。
【0005】
これによって簡単な形式で、熱に起因する、攪拌機のような形式で作用する剪断エレメントとフィルタエレメントとの間の相互接触は確実に回避することができる。この場合ケーシングならびに駆動軸のためにどのような材料が使用されるか、また相対運動部分の間の間隔がどの程度に小さいかは問題ではない。ケーシングの熱膨張に応じた、ひいてはケーシングの熱膨張に依存したフィルタディスクの位置に応じた、剪断エレメントの軸方向の追従(後調整)が常時行われる。
【0006】
請求項2に記載のスペーサの構造形式は、簡単であり、かつ実際の運転に認められる。
【0007】
請求項3〜6に記載の別の実施形態によれば、熱膨張特性に関してケーシングに適合されたスペーサによって、不都合な相互接触が生じない。
【0008】
請求項7および8に記載の実施形態によれば、滑りリングとして形成されたスペーサによって、不都合な相互接触が回避される。このような構造形式は、特に簡単で、安価かつ実用的である。
【0009】
実際の利用に関して有利な別の実施形態は、請求項9〜11から理解することができる。
【0010】
請求項12の記載によれば、剪断エレメントは、ケーシングの一部によっても、またはケーシングに沿って、軸方向で変位することができ、これによって相互接触が回避される。
【0011】
次に本発明の実施例を図示し、詳しく説明する。
【0012】
図1に示した公知の回転式剪断フィルタでは、円筒形で金属製のケーシング1内に、リング状で中空の複数のフィルタディスク2が、相互間隔を有して配置されていて、かつケーシング1の、リング状の収容凹部に保持されている。ケーシング1に形成された、分岐して延びる懸濁液供給路3を介して、濾過しようとする懸濁液は、フィルタディスク2の間のケーシング領域に導入することができる。そこから懸濁液の液状成分は、フィルタディスク2内部に流入して濾過され、次いでケーシング1に形成された、分岐して延びていた濾液排出路4を介して、外部に流出することができる。懸濁液供給路3に対応する、図示していないケーシング排出路は、ケーシング1から、固形物の蓄積された高粘性の媒体を導出するのに役立つ。
【0013】
フィルタディスク2の閉塞を回避するために、フィルタディスク2の表面は、運転中に、回動可能に駆動される中央の駆動軸5に、これと共に回動可能に取り付けられた、フィルタディスク2の間で作用する剪断エレメント6によって、非接触式に覆われている。駆動軸5は、運転中に生じる力を吸収する必要があり、かつ問題のない程度のたわみしか許容されない。したがって、また同一の熱膨張特性を達成するために、駆動軸5は、従来技術では、一般的にたとえばケーシングと同様の金属、たとえば鋼または特殊鋼から成っている。
【0014】
本発明による、図2および図3に示した実施例は、図1に示した従来技術とは主要構成で異なっており、中央の駆動軸5に、これと共に回動可能に取り付けられた剪断エレメント6は、駆動軸5に沿って縦方向変位可能にガイドされている。このために、たとえば駆動軸5が、軸方向で延びる少なくとも1つの縦溝または縦リブを備えることができ、縦溝または縦リブに、剪断エレメント6はそれぞれ適当なプロフィールで相対回動不能(つまり一緒に回転するように)に係合する。剪断エレメント6は、たとえばリング状もしくはディスク状に形成してもよく、また放射状部材として形成してもよい。剪断エレメント6の役割は、フィルタディスク2の表面を非接触式の相対運動によって清潔に(つまり閉塞しないように)、ひいては機能的に保持することである。
【0015】
図2に示した実施例では、縦方向変位可能な剪断エレメント6の間に、剪断エレメント6に接触する、比較的小さな運動遊びを有して駆動軸5を包囲するリング状で金属製のスペーサ7が設けられており、スペーサ7の熱膨張度はケーシング1の熱膨張度と大体において一致する。したがって駆動軸5は、従来技術とは異なって、実質的に任意の熱膨張特性を有する材料から形成することができる。なぜならば剪断エレメント6は縦方向可動に支承されていて、剪断エレメント6の位置はスペーサ7によって特定されるからである。スペーサ7はケーシング1と同等の膨張特性を有しているので、剪断エレメント6とフィルタディスク2との間で相互接触の生じる恐れはない。
【0016】
図2に示した回転式剪断フィルタでは、一方の端部側の剪断エレメント6は、駆動軸5の、図示していない段部に接触している。他方の端部では、駆動軸5を包囲し、かつ駆動軸5に着脱可能に取り付けられた予圧ばね9が、他方の端部側の剪断エレメント6を押圧する。これによって全ての剪断エレメント6は、剪断エレメント6の間に存在するスペーサ7によって互いに押し合わされる。
【0017】
図3に示した実施例では、駆動軸5に沿って縦方向可動な剪断エレメント6は、位置に応じて、滑りリングとして形成されたリング状のスペーサ8によって保持され、スペーサ8は、比較的大きな遊びを有して駆動軸5を包囲し、また熱膨張特性に関して任意の材料から形成することができ、かつフィルタディスク2に取り付けられている。中位のスペーサ8は、隣接する剪断エレメント6の間の正確な最低間隔をもたらす。ケーシング1に取り付けられた端部側のスペーサ8は、ケーシング1からの、隣接する剪断エレメント6の正確な最低間隔をもたらす。スペーサ8は、隣接する剪断エレメント6と、場合によっては滑り係合する。
【0018】
図3に示した実施例でも、ケーシング1と駆動軸5とは、それぞれ異なる材料から成っていてよい。これらの部分およびスペーサ8の熱膨張特性は問題とはならない。なぜならば剪断エレメント6は、フィルタディスク2に、スペーサ8の厚さまでしか接近できないからである。
【0019】
図示していない別の実施例では、スペーサは、ケーシング1の、剪断エレメント6を軸方向で移動させるように剪断エレメント6と滑り係合する内側の突起または収容凹部として形成されている。突起または収容凹部は、ケーシング1の構成部材または個別的に形成することができる。連行部分は、剪断エレメント6がケーシング1、ひいてはフィルタディスク2の熱膨張に応じて、軸方向で変位されるように作用する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来技術の回転式剪断フィルタを示す概略図である。
【図2】本発明による回転式剪断フィルタの第1実施例を示す概略図である。
【図3】本発明による回転式剪断フィルタの第2実施例を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転式剪断フィルタであって、
ケーシング(1)が設けられており、相互間隔を有してケーシング(1)内に定置に配置された、同軸的かつリング状で中空の複数のフィルタディスク(2)が設けられており、これらのフィルタディスクを貫通する回動可能な中央の駆動軸(5)に、複数の剪断エレメント(6)が相対回動不能に保持されており、これらの剪断エレメントが、ケーシング(1)からフィルタディスク(2)に侵入する濾液に関するフィルタ透過性を維持するために、フィルタディスクの、ケーシング(1)の軸方向に向いたリング状の表面に隣接している形式のものにおいて、
共に回動するように駆動軸(5)と結合された剪断エレメント(6)が、駆動軸(5)に沿って軸方向変位可能にガイドされており、
剪断エレメント(6)にスペーサ(7,8)が対応配置されており、スペーサ(7,8)が、剪断エレメント(6)を、ケーシング(1)の、発生する熱に関する長さ変化に応じて軸方向で変位させるようになっていることを特徴とする、回転式剪断フィルタ。
【請求項2】
フィルタディスク(6)の間に配置されたスペーサ(7,8)が、リング状であり、かつ駆動軸(5)を包囲している、請求項1記載の回転式剪断フィルタ。
【請求項3】
リング状のスペーサ(7)が、僅かな運動遊びを有して駆動軸(5)を包囲していて、かつそれぞれ隣接する2つの剪断エレメント(6)の間に直に配置されていて、かつケーシング(1)の熱膨張係数と大体において一致する熱膨張係数を有する材料から成っている、請求項1または2記載の回転式剪断フィルタ。
【請求項4】
駆動軸(5)を包囲する少なくとも1つの予圧ばね(9)が設けられており、該予圧ばね(9)が、端部側に配置された2つのうちの1つの剪断エレメント(6)を、別の剪断エレメント(6)に向かって押圧するようになっている、請求項3記載の回転式剪断フィルタ。
【請求項5】
駆動軸(5)を包囲する2つの予圧ばね(9)が設けられており、これらの予圧ばね(9)が、端部側に配置された2つの剪断エレメント(6)を、別の剪断エレメント(6)に向かって押圧するようになっている、請求項4記載の回転式剪断フィルタ。
【請求項6】
端部側に配置された2つのうちの1つの剪断エレメント(6)が、駆動軸(5)のストッパに接触している、請求項4記載の回転式剪断フィルタ。
【請求項7】
リング状のスペーサ(8)が、滑りリングとして形成されていて、かつ比較的大きな遊びを有して駆動軸(5)を包囲しており、端部側のスペーサ(8)を除いて、中位の全てのスペーサ(8)が、それぞれフィルタディスク(2)と剪断エレメント(6)との間に配置されており、端部側の2つのスペーサ(8)が、端部側の剪断エレメント(6)とケーシング(1)との間に配置されている、請求項1または2記載の回転式剪断フィルタ。
【請求項8】
中央のスペーサ(8)が、フィルタディスク(2)に取り付けられており、端部側の2つのスペーサ(8)が、ケーシング(1)に取り付けられている、請求項7記載の回転式剪断フィルタ。
【請求項9】
駆動軸(5)が、軸方向で延びる少なくとも1つの縦溝または縦リブを備えており、縦溝または縦リブに、剪断エレメント(6)が、適当なプロフィールで、相対回動不能に係合している、請求項1から8までのいずれか1項記載の回転式剪断フィルタ。
【請求項10】
ケーシング(1)と、駆動軸(5)とが、それぞれ大幅に異なる膨張係数を有する材料から成っている、請求項1から9までのいずれか1項記載の回転式剪断フィルタ。
【請求項11】
ケーシング(1)が、プラスチックから成っており、駆動軸(5)が、金属から成っている、請求項10記載の回転式剪断フィルタ。
【請求項12】
スペーサが、ケーシング(1)の、剪断エレメント(6)を軸方向で変位させるように剪断エレメント(6)と滑り係合する内側の突起または収容凹部として形成されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の回転式剪断フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−512948(P2007−512948A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541914(P2006−541914)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013840
【国際公開番号】WO2005/053816
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(506166516)アンドレアス クッフェラート ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (1)
【氏名又は名称原語表記】Andreas Kufferath GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Andreas−Kufferath−Platz, D−52353 Dueren, Germany
【Fターム(参考)】