説明

回転検出装置及び車輪軸受装置

【課題】回転部材と共に回転する磁極と磁気センサとの間隔を大きくしても、磁極の磁界の強度低下を抑制することが可能な回転検出装置、及びその回転検出装置を備えた車輪軸受装置を提供する。
【解決手段】回転検出装置1は、回転部材である内輪11に取り付けられ、内輪11の周方向に沿って設けられた複数の磁極21,22を有する磁気エンコーダ2と、内輪11を回転可能に支持するナックル9に取り付けられ、磁気エンコーダ2の磁界を検出するホールIC30と、ナックル9に設けられ、磁気エンコーダ2とホールIC30との間に少なくとも一部が介在するカバー部材4と、カバー部材4のホールIC30側に配置され、カバー部材4とホールIC30とが対向する方向に弾性変形可能な磁性部材5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転部材の回転に伴う磁気の変化によって、その回転状態を検出する回転検出装置、及びそれを備えた車輪軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両の軸受けユニットに用いられ、車輪と共に回転する回転部材の回転速度を検出することが可能な回転センサが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の回転センサは、軸受けユニット内の気密性を保つために、軸受けユニットの開口部の少なくとも一部を塞ぐ非磁性のキャップ部を備えている。そして、軸受けユニット内に配置された磁性体からなる回転エンコーダの回転による磁気の変化を、キャップ部を介して軸受けユニットの外部に設けられたセンサ部で検出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−25763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この回転センサによれば、気密性の保持には寄与するものの、回転エンコーダとセンサ部との間にキャップ部が介在するため、それに応じて回転エンコーダとセンサ部との間隔が広くなる。回転エンコーダの磁界は距離に応じて弱くなるので、回転部材の回転を正確に検出するためには、センサ部をキャップ部に近接させて可及的に回転エンコーダとセンサ部との間隔を狭くする必要があるが、この間隔を狭くしすぎると、組み付け時にセンサ部がキャップ部に干渉するおそれがある。また、部材の形状誤差や組み付け誤差等によって回転エンコーダとセンサ部との間隔が広くなると、センサ部において回転エンコーダの回転に伴って発生する磁気パルスのミスカウントが生じるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、上記の事情に鑑みて、回転部材と共に回転する磁極と磁気センサとの間隔を大きくしても、磁界の強度の低下を抑制することが可能な回転検出装置、及びそれを備えた車輪軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、回転部材に取り付けられ、前記回転部材の周方向に沿って設けられた複数の磁極を有する被検出部材と、前記回転部材を回転可能に支持する固定部材に取り付けられ、前記被検出部材の磁界を検出する磁気センサを有するセンサモジュールと、前記固定部材に設けられ、前記被検出部材と前記磁気センサとの間に少なくとも一部が介在する非磁性部材と、前記センサモジュール及び前記非磁性部材の一方に固定され、前記非磁性部材と前記磁気センサとの間に配置された磁性部材と、を備え、前記磁性部材は、前記センサモジュールを前記固定部材に取り付ける際に、前記センサモジュール及び前記非磁性部材の他方に接触し、前記非磁性部材と前記磁気センサとが接近する方向に弾性変形可能である回転検出装置を提供する。
【0008】
また、前記磁性部材は、前記非磁性部材の少なくとも一部を介して前記被検出部材に対向する第1の対向部と、前記磁気センサに対向する第2の対向部と、前記第1の対向部と前記第2の対向部とを連結すると共に前記第1及び第2の対向部を互いに離間する方向に付勢する弾性連結部とを一体に有するとよい。
【0009】
また、前記被検出部材は、前記回転部材の周方向に沿って複数のN極及び複数のS極が交互に設けられ、前記磁性部材は、それぞれが前記第1及び第2の対向部と前記弾性連結部とを有し、前記回転部材の周方向に並列する一方側エレメント及び他方側エレメントからなり、前記一方側エレメントの前記第1の対向部と前記他方側エレメントの前記第1の対向部との間隔は、前記被検出部材において連続する一対又は複数対の前記N極及び前記S極の幅に対応した間隔であるとよい。
【0010】
また、前記一方側エレメントの前記第1の対向部と前記他方側エレメントの前記第1の対向部との間隔は、前記一方側エレメントの前記第2の対向部と前記他方側エレメントの前記第2の対向部との間隔よりも広いとよい。
【0011】
また、前記磁気センサの前記一方側エレメント及び前記他方側エレメントの前記第2の対向部とは反対側に配置された磁性体を備え、前記磁性体と前記一方側エレメント及び前記他方側エレメントの前記第2の対向部との間の間隔は、前記一方側エレメントの前記第2の対向部と前記他方側エレメントの前記第2の対向部との間隔よりも狭いとよい。
【0012】
また、前記磁性部材は、前記第2の対向部が前記磁気センサと共に樹脂モールドされ、前記磁性部材の前記第1の対向部が前記弾性連結部の弾性によって前記非磁性部材に接しているとよい。
【0013】
また、前記非磁性部材には、前記第1の対向部の少なくとも一部を収容する凹部が形成されているとてもよい。
【0014】
また、前記磁性部材は、前記弾性連結部が前記第1の対向部側へ折り返すように屈曲された折り返し部を有するとよい。
【0015】
また、前記磁性部材は、前記第1の対向部が前記非磁性部材に固定され、前記磁性部材の前記第2の対向部が前記磁気センサをモールドする樹脂を介して前記磁気センサに対向していてもよい。
【0016】
また、前記非磁性部材は、前記磁性部材の前記第1の対向部をモールドする樹脂部を有し、前記磁性部材の前記磁性部材の前記第2の対向部は、前記磁気センサをモールドする樹脂を介して前記磁気センサに対向していてもよい。
【0017】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、上記の回転検出装置と、車輪が取り付けられるフランジ部を有する前記回転部材としての内輪と、前記非磁性部材が取り付けられた外輪と、前記内輪の外周面に形成された軌道面及び前記外輪の内周面に形成された軌道面との間に配置された複数の転動体とを備え、前記非磁性部材は、前記内輪と前記外輪との間を封止する封止部材である車輪軸受装置を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る回転検出装置によれば、回転部材と共に回転する磁極と磁気センサとの間隔を大きくしても、磁界の強度の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る回転検出装置、及びこの回転検出装置を有する車両用の車輪軸受装置の構成例を示す断面図である。
【図2】図1における回転検出装置及びその周辺部を拡大して示す部分拡大図である。
【図3】導磁部材の形状及び構成を示し、(a)は四面図、(b)は斜視図である。
【図4】磁気エンコーダの平面図にセンサモジュールを重ねて示す説明図であり、(a)は磁気エンコーダの全体を、(b)は磁気エンコーダのセンサモジュールに重なる部分を拡大して示す。
【図5】カバー部材の形状を示し、(a)は径方向外側から見た側面図、(b)は中心軸方向から見た平面図である。
【図6】回転検出装置の構成例を示す説明図であり、(a)はホールIC及びその周辺部を内周側から見た状態を、(b)はホールICを磁気エンコーダ側から見た状態を、それぞれ示す。
【図7】本実施の形態における作用を説明する説明図であり、(a)はセンサモジュールが磁気エンコーダ及びカバー部材に接近して組み付けられた状態を、(b)はセンサモジュールが磁気エンコーダ及びカバー部材に対して離間して組み付けられた状態を、それぞれ示す。
【図8】第1の実施の形態の変形例1に係る回転検出装置、及びこの回転検出装置を有する車両用の車輪軸受装置の構成例を示す断面図である。
【図9】第1の実施の形態の変形例2に係る回転検出装置の構成例を示す断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る回転検出装置、及びこの回転検出装置を有する車両用の車輪軸受装置の構成例を示す断面図である。
【図11】第2の実施の形態に係る導磁部材の形状及び構成を示し、(a)は斜視図、(b)は四面図である。
【図12】第2の実施の形態に係る回転検出装置1Cの構成を示し、(a)は図10の部分拡大図、(b)は磁気エンコーダ2の導磁部材5Cに重なる部分を拡大して示す説明図、(c)はホールIC30を磁気エンコーダ2側から見た平面図である。
【図13】第2の実施の形態の作用を説明する説明図であり、(a)はセンサモジュールが磁気エンコーダ及びカバー部材に接近して組み付けられた状態を、(b)はセンサモジュールが磁気エンコーダ及びカバー部材に対して離間して組み付けられた状態を、それぞれ示す。
【図14】第3の実施の形態に係る回転検出装置、及びこの回転検出装置を有する車両用の車輪軸受装置の構成例を示す断面図である。
【図15】第3の実施の形態の作用を説明する説明図であり、(a)はセンサモジュールが磁気エンコーダ及びカバー部材に接近して組み付けられた状態を、(b)はセンサモジュールが磁気エンコーダ及びカバー部材に対して離間して組み付けられた状態を、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施の形態の概要]
本実施の形態は、回転部材に取り付けられ、前記回転部材の周方向に沿って設けられた複数の磁極を有する被検出部材と、前記回転部材を回転可能に支持する固定部材に取り付けられ、前記被検出部材の磁界を検出する磁気センサと、前記固定部材に相対回転不能に設けられ、前記被検出部材と前記磁気センサとの間に少なくとも一部が介在する非磁性部材とを備えた回転検出装置において、前記非磁性部材の前記磁気センサ側に配置され、前記非磁性部材と前記磁気センサとが対向する方向に弾性変形可能な磁性部材を有する回転検出装置についてのものである。
【0021】
[第1実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る回転検出装置1、及びこの回転検出装置1を有する車両用の車輪軸受装置10の構成例を示す断面図である。
【0022】
(車輪軸受装置10の構成)
車輪軸受装置10は、円筒状の本体部110、及び車輪が取り付けられるフランジ部111を有する回転部材としての内輪11と、内輪11の本体部110の外周側に配置された外輪12と、内輪11の外周面11aに形成された一対の軌道面11b,11b、及び外輪12の内周面12aに形成された一対の軌道面12b,12bの間に配置され、両軌道面11b,12bを転動する球状の複数の転動体13と、内輪11の外輪12に対する回転速度を検出する回転検出装置1とを備えている。
【0023】
内輪11の本体部110の中心部には、その回転軸線Oに沿って貫通孔が形成され、この貫通孔の内面には、図示しないドライブシャフトを連結するためのスプライン嵌合部110aが形成されている。
【0024】
内輪11のフランジ部111は、本体部110の径方向外側に突出して本体部110と一体に形成されている。フランジ部111には、図示しない車輪を取り付けるためのボルトが圧入される複数の貫通孔111aが形成されている。
【0025】
外輪12は、円筒状に形成され、車体に連結されたナックル9に複数のボルト91(図1には1つのみ示す)によって固定されている。ナックル9及び外輪12は、内輪11を回転可能に支持する固定部材の一例である。外輪12における内輪11のフランジ部111側の端部には、内輪11との間にシール14が配置されている。
【0026】
ナックル9には、次に説明する回転検出装置1のセンサモジュール3を取り付けるための貫通孔9aが形成されている。
【0027】
(回転検出装置1の構成)
図2は、図1における回転検出装置1及びその周辺部を拡大して示す部分拡大図である。
【0028】
回転検出装置1は、内輪11に取り付けられ、内輪11の周方向に沿って設けられた複数の磁極21,22を有する被検出部材としての磁気エンコーダ2と、ナックル9の貫通孔9aに取り付けられ、磁気エンコーダ2の磁界を検出する磁気センサとしてのホールIC(Hall Integrated Circuit)30を有するセンサモジュール3と、外輪12への圧入によって固定部材としてのナックル9及び外輪12に回転不能に設けられ、磁気エンコーダ2とホールIC30との間にその一部が介在する非磁性材料からなるカバー部材4と、カバー部材4のホールIC30側に配置され、磁気エンコーダ2の磁束をホールIC30側に導く磁性材料からなる導磁部材5とを備えている。
【0029】
磁気エンコーダ2は、回転軸線Oに平行な方向の厚みを有する円板状に形成され、内輪11の外周面11aに径方向に立設して、内輪11と一体回転するように取り付けられている。また、磁気エンコーダ2は、その本体部20のホールIC30側の面に、周方向に沿って交互に配列されたN磁極21とS磁極22とを有している。N磁極21及びS磁極22の配置の詳細については後述する。
【0030】
センサモジュール3は、ホールIC30と、ホールIC30の磁気エンコーダ2とは反対側に配置された磁性体としてのヨーク31と、ホールIC30及びヨーク31を封止する樹脂部32とを有している。ホールIC30の検出信号は、導線301によってセンサモジュール3の外部に出力される。また、本実施の形態では、導磁部材5は、その一部がホールIC30及びヨーク31と共に樹脂部32に封止されることにより、センサモジュール3に固定される。センサモジュール3はホールIC30を含む先端部がナックル9の貫通孔9a内に挿入され、貫通孔9aの外部における樹脂部32がボルト92によってナックル9に固定されている。
【0031】
カバー部材4は、オーステナイト系ステンレスやアルミニウム等の非磁性の金属からなり、円筒状に形成された円筒部41と、円筒部41の回転軸線O方向の一端から径方向内側に向かって突出するように形成された円環板状の鍔部42と、鍔部42の内径側の端部から回転軸線Oに沿って円筒部41とは反対側に延びるように形成された環状突出部43とを一体に有している。この環状突出部43は、内輪11の外周面11aに対向する内周面43aが円筒状である。円筒部41の回転軸線O方向の他端部は、外輪12の外周面に形成された環状凹部12cに圧入されてナックル9及び外輪12に回転不能に取り付けられている。すなわち、カバー部材4は、ナックル9及び外輪12に固定されている。カバー部材4は、本発明の非磁性部材の一例である。
【0032】
また、環状突出部43の内周面43aと内輪11の外周面11aとの間には、内周面43a及び外周面11aの間を封止する合成ゴムからなるシール部材6が配置されている。本実施の形態では、シール部材6が環状突出部43の内周面43aに固定され、内輪11の外周面11aに摺接するように構成されているが、シール部材6を内輪11の外周面11aに固定し、環状突出部43の内周面43aに摺接するように構成してもよい。
【0033】
図3は、導磁部材5の形状及び構成を示し、(a)は斜視図、(b)は四面図である。
【0034】
導磁部材5は、内輪11の回転方向に沿って並列し、対称な形状に形成された第1エレメント51及び第2エレメント52から構成されている。なお、図2では、このうち第1エレメント51のみを示している。
【0035】
第1エレメント51は、カバー部材4の鍔部42及びシール部材6を介して磁気エンコーダ2に近接して対向する第1の対向部51aと、センサモジュール3のホールIC30に近接して対向する第2の対向部51bと、第1の対向部51aと第2の対向部51bとを連結すると共に第1の対向部51a及び第2の対向部51bを互いに離間する方向に付勢する、すなわち弾性的に押し付ける、弾性連結部51cとを一体に有している。
【0036】
第2エレメント52も同様に、カバー部材4の鍔部42及びシール部材6を介して磁気エンコーダ2に近接して対向する第1の対向部52aと、センサモジュール3のホールIC30に近接して対向する第2の対向部52bと、第1の対向部52aと第2の対向部52bとを連結すると共に第1の対向部52a及び第2の対向部52bを互いに離間する方向に付勢する弾性連結部52cとを一体に有している。
【0037】
この構成により、第1エレメント51及び第2エレメント52は、カバー部材4とホールIC30とが対向する方向(回転軸線Oに平行な方向)に弾性変形可能である。
【0038】
第1の対向部51a,52a及び第2の対向部51b,52bは、平板状に形成されている。また、弾性連結部51c,52cは、第1の対向部51a,52aとの連結部分及び第2の対向部51b,52bとの連結部分が円弧状に形成され、両連結部分の間が平板状に形成されている。
【0039】
第1エレメント51の第1の対向部51aと第2エレメント52の第1の対向部52aとの間隔dは、第1エレメント51の第2の対向部52bと第2エレメント52の第2の対向部52bとの間隔dよりも広く形成されている。間隔dは磁気エンコーダ2のN磁極21又はS磁極22の周方向の幅(N磁極21の周方向の幅とS磁極22の周方向の幅は共通である。)の偶数倍(2倍,4倍,6倍等)であるとよい。本実施の形態では、磁気エンコーダ2のN磁極21及びS磁極22の幅がそれぞれ1.75mm、間隔dが3.5mmであり、間隔dが磁気エンコーダのN磁極21又はS磁極22の周方向の幅の2倍以上(2倍)となっている。
【0040】
第1エレメント51及び第2エレメント52は、弾性を有する軟磁性体からなる。この軟磁性体としては、例えばNiを35〜80重量%含み、残部がFeからなる二元系合金、又はこれにMo,Cu,Cr,Si,Mn等を添加した多元系合金を適用することができる。これらの合金は、パーマロイと総称されている。
【0041】
また、第1エレメント51及び第2エレメント52は、厚みが例えば0.1〜0.3mmである板状の磁性金属を切断及び屈曲して形成することができる。図3に示すように、導磁部材5が回転検出装置1に組み付けられる前の単体の状態では、第1の対向部51a,52aが第2の対向部51b,52bとは平行でなく、第1の対向部51a,52aは、その先端部ほど第2の対向部51b,52bから離れるように傾斜して、第1エレメント51及び第2エレメント52が形成されている。
【0042】
図2に示すように、第1エレメント51及び第2エレメント52の第2の対向部51b,52bは、ホールIC30と共にセンサモジュール3の樹脂部32にモールドされている。また、第1エレメント51及び第2エレメント52の第1の対向部51a,52aは、弾性連結部51c,52cの弾性によってカバー部材4側に押し付けられ、カバー部材4の鍔部42に接している。このとき、第1エレメント51及び第2エレメント52の第1の対向部51a,52aと第2の対向部51b,52bとは、単体の状態よりも平行に近くなる。
【0043】
図4は、磁気エンコーダ2の平面図にセンサモジュール3を重ねて示す説明図であり、(a)は磁気エンコーダ2の全体を、(b)は磁気エンコーダ2のセンサモジュール3に重なる部分を拡大して示す。なお、この図では磁気エンコーダ2とセンサモジュール3との間に介在するカバー部材4の図示を省略している。
【0044】
磁気エンコーダ2は、環状に形成され、本体部20のセンサモジュール3側の面に周方向に沿って複数のN極21及びS極22が交互に設けられている。図4に示す例では、48個のN極21と同数のS極22が等間隔に配置されている。本体部20は、非磁性体からなる。N極21及びS極22は、サマリウムコバルト等からなる磁石材料を本体部20に固定して設ける。また、本体部20となるゴムやプラスチックにサマリウムコバルト等の粉末を混ぜ込むことで本体部20にN極21及びS極22を交互に設け、磁気エンコーダ2を形成することも可能である。
【0045】
図4(b)に拡大して示すように、例えば導磁部材5の第1エレメント51の第1の対向部51aがS極22に対向するとき、第2エレメント52の第1の対向部52aはN極21に対向する。つまり、第1エレメント51の第1の対向部51aと第2エレメント52の第1の対向部52aは、互いに反対極性の磁極に対向するように、その間隔d(図3(b)に示す)が設定されている。
【0046】
また、第1エレメント51の第1の対向部51aと第2エレメント52の第1の対向部52aとの間隔(回転軸線Oの周方向の間隔)は、磁気エンコーダ2における一対のN極21及びS極22の周方向に対応した間隔である。つまり、図4(b)に示すように第1エレメント51の第1の対向部51aが1つのS極22に対向し、第2エレメント52の第1の対向部52aが1つのN極21に対向するとき、この1つのS極22と1つのN極21との間には、他の1つのS極22と他の1つのN極21が存在する。
【0047】
なお、この1つのS極22と1つのN極21との間には、他のn個(n≧2)のS極22と他のn個のN極21が存在するように磁気エンコーダ2及び導磁部材5を構成してもよい。すなわち、第1エレメント51の第1の対向部51aと第2エレメント52の第1の対向部52aとの間隔は、磁気エンコーダ2における複数対のN極21及びS極22の周方向に対応した間隔であってもよい。
【0048】
図5は、カバー部材4の形状を示し、(a)は径方向外側から見た側面図、(b)は中心軸方向から見た平面図である。
【0049】
カバー部材4の鍔部42のホールIC30側の面には、その直径方向に対して平行な一対の凹部421,422が形成されている。この凹部421,422は、カバー部材4の外周端から内周端まで貫通し、ホールIC30側の面から磁気エンコーダ2側の面に向かって窪む溝として形成されている。また、凹部421,422の延伸方向に対して直交する方向の幅寸法は、第1エレメント51の第1の対向部51a及び第2エレメント52の第1の対向部52aの幅寸法よりも大きく形成されている。
【0050】
図1に示すようにカバー部材4及びセンサモジュール3が車輪軸受装置10に組み付けられた状態では、カバー部材4の凹部421,422に、導磁部材5の第1エレメント51における第1の対向部51aと第2エレメント52における第1の対向部52aが収容される。このセンサモジュール3の組み付け時には、ナックル9の貫通孔9aにホールIC30側の先端部を挿入する過程で、第1エレメント51の第1の対向部51a及び第2エレメント52の第1の対向部52aがカバー部材4の鍔部42の凹部421,422にそれぞれ収容される。
【0051】
凹部421,422は、第1エレメント51の第1の対向部51a及び第2エレメント52の第1の対向部52aをその厚み方向及び長さ方向の全体に亘って収容してもよく、その一部を収容してもよい。すなわち、凹部421,422は、第1の対向部51a,52aの少なくとも一部を収容すればよい。本実施の形態では、凹部421,422の深さが第1の対向部51a,52aの厚みと同等であり、凹部421,422には、第1の対向部51a,52aの厚み方向及び長さ方向の全体が収容されている。
【0052】
図6は、回転検出装置1の構成例を示す説明図であり、(a)はホールIC30及びその周辺部を内周側から見た状態を、(b)はホールIC30を磁気エンコーダ2側から見た状態を、それぞれ示す。
【0053】
ホールIC30は、2つのホール素子30a,30bを有している。ホールIC30は、このホール素子30a,30bにおける磁界によるホール効果によって磁界の強度を電気信号に変換し、出力する。ホール素子30aは、第1エレメント51の第2の対向部51bに向かい合う位置に配置されている。また、ホール素子30bは、第2エレメント52の第2の対向部52bに向かい合う位置に配置されている。
【0054】
ホールIC30の第1エレメント51及び第2エレメント52の第2の対向部51b,52bとの反対側には、ヨーク31が配置されている。ヨーク31は、例えばパーマロイ等の軟磁性体からなる。ヨーク31は、少なくとも第1エレメント51及び第2エレメント52の第2の対向部51b,52bとの間にホール素子30a及びホール素子30bを挟む位置に配置されている。本実施の形態では、ホールIC30の第1エレメント51及び第2エレメント52とは反対側の面の全体を覆うように、ホールIC30に接してヨーク31が配置されている。
【0055】
第1エレメント51の第1の対向部51aにS極22が対向し、第2エレメント52の第1の対向部52aにN極21が対向するとき、ホールIC30の周辺には、N極21を起点として、第1エレメント51、ホールIC30のホール素子30a、ヨーク31、ホールIC30のホール素子30b、第2エレメント52、S極22、及び本体部20を通過する磁路Mに沿って磁界が発生する。つまり、第1エレメント51及び第2エレメント52は、磁気エンコーダ2の磁界をホールIC30側に導いている。
【0056】
第1エレメント51及び第2エレメント52の第2の対向部51b,52bとヨーク31との間隔dは、第1エレメント51の第2の対向部52bと第2エレメント52の第2の対向部52bとの間隔dよりも狭く設定されている。本実施の形態では、間隔dが1.5mmに設定されている。
【0057】
また、ホールIC30のホール素子30aとホール素子30bとの中心部間の間隔dは、第1エレメント51の第2の対向部51bと第2エレメント52の第2の対向部52bとの間隔dよりも広く形成されている。本実施の形態では、間隔dが2mmに設定されている。すなわち、間隔d〜dは、d<d<d<dの関係を満たすように設定されている。
【0058】
図7は、本実施の形態における作用を説明するための説明図であり、(a)は寸法誤差及び組み付け誤差がないとした場合(図1,2に示す)よりもセンサモジュール3が磁気エンコーダ2及びカバー部材4に接近して組み付けられた場合のこれら部材間の相対的な位置関係を、(b)は寸法誤差及び組み付け誤差がないとした場合よりもセンサモジュール3が磁気エンコーダ2及びカバー部材4に対して離間して組み付けられた場合のこれら部材間の相対的な位置関係を、それぞれ示す。
【0059】
この図に示すように、センサモジュール3とカバー部材4との間の距離が部材の寸法誤差や組み付け誤差によって変動しても、その距離の変動が導磁部材5の第1エレメント51及び第2エレメント52の弾性によって吸収され、第1の対向部51a,52aとカバー部材4の鍔部42との接触が維持される。
【0060】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した第1の実施の形態によれば、以下のような作用及び効果が得られる。
【0061】
(1)ホールIC30とカバー部材4との間に導磁部材5が配置されているので、導磁部材5の第1エレメント51及び第2エレメント52によって磁気エンコーダ2の磁界がホールIC30側に導かれ、導磁部材5を有しない場合に比較して、ホールIC30のホール素子30a,30bにおける磁界が強くなる。これにより、磁気エンコーダ2が高速で回転した場合でも、磁気パルスのミスカウントを抑制することができ、回転速度の検出精度を高めることが可能となる。
【0062】
(2)導磁部材5の第1エレメント51及び第2エレメント52は、センサモジュール3をナックル9に取り付ける際に、カバー部材4と接触し、カバー部材4とホールIC30とが接近する方向、すなわち内輪11の回転軸線Oに平行な方向に弾性変形可能であるので、ホールIC30を有するセンサモジュール3とカバー部材4との間の距離が変動しても、第1エレメント51及び第2エレメント52とカバー部材4との接触が維持される。これにより、磁気エンコーダ2の磁界をより適切にホールIC30側に導くことができる。
【0063】
(3)第1エレメント51の第1の対向部51aと第2エレメント52の第1の対向部52aとの間隔dは、第1エレメント51の第2の対向部51bと第2エレメント52の第2の対向部52bとの間隔dよりも広いので、第1エレメント51の第1の対向部51aと第2エレメント52の第1の対向部52aとの間で磁束が短絡することを抑制でき、ホールIC30を通過する磁束の磁束密度をより高めることができる。
【0064】
(4)第1エレメント51及び第2エレメント52の第2の対向部51b,52bとヨーク31との間隔dは、第1エレメント51の第2の対向部52bと第2エレメント52の第2の対向部52bとの間隔dよりも狭いので、第1エレメント51の第2の対向部51bと第2エレメント52の第2の対向部52bとの間で磁束が短絡することを抑制でき、ホールIC30を通過する磁束の磁束密度をさらに高めることができる。
【0065】
(5)カバー部材4には第1エレメント51の第1の対向部51aと第2エレメント52の第1の対向部52aの少なくとも一部を収容可能な一対の凹部421,422が形成されているので、例えば車輪軸受装置10が車両走行時における車輪からの振動を受けても、第1の対向部51a,52aが適切な位置に保持される。また、凹部421,422が形成された部分のカバー部材4(鍔部42)の厚みは他の部分に比べて薄いので、第1の対向部51a,52aを磁気エンコーダ2により近づけることができ、ホールIC30を通過する磁束の磁束密度をより一層高めることができる。
【0066】
(6)第1エレメント51及び第2エレメント52の第2の対向部51b,52bは、センサモジュール3の樹脂部32にホールIC30と共に樹脂モールドにより固定されているので、センサモジュール3のナックル9への組み付けが容易となる。また、第2の対向部51b,52bをホールIC30に接近させて固定することが可能となる。
【0067】
(7)シール部材6は、環状突出部43の内周面43aと内輪11の外周面11aとの間、すなわち磁気エンコーダ2とホールIC30との間の磁路とならない部位に配置されているので、ホールIC30を通過する磁束の磁束密度がシール部材6によって低くなることがない。従って、例えばシール部材6を鍔部42と磁気エンコーダ2との間に配置した場合に比較して、ホールIC30を通過する磁束の磁束密度が高くなる。
【0068】
[第1の実施の形態の変形例1]
上記第1の実施の形態は、次のように変形することも可能である。
図8は、第1の実施の形態の変形例1に係る回転検出装置1A、及びこの回転検出装置1Aを有する車両用の車輪軸受装置10Aの構成例を示す断面図である。なお、図8において、第1の実施の形態について説明したものと実質的に同一の機能を有する構成要素については共通する符号又は対応する符号を付してその重複した説明を省略する。
【0069】
前述の第1の実施の形態に係る車輪軸受装置10は、内輪11にドライブシャフトを連結するためのスプライン嵌合部110aが形成されていたが、本変形例に係る車輪軸受装置10Aの内輪11Aには貫通孔が形成されていない。すなわち、第1の実施の形態に係る車輪軸受装置10は車両の駆動輪用の軸受装置であるが、本変形例に係る車輪軸受装置10Aは、エンジン等の駆動源の駆動力が伝達されない従動輪用の軸受装置である。
【0070】
内輪11Aの本体部110Aにおける外周面11aのフランジ部111Aとは反対側の端部には、内輪11Aと相対回転不能に断面L字状の支持部材112が固定されている。支持部材112は、内輪11Aの回転軸線Oに垂直な取付面112aを有し、この取付面112aに磁気エンコーダ2が固定されている。
【0071】
カバー部材4Aは、キャップ状であり、外輪12の環状凹部12cに圧入された円筒部41と、円筒部41の軸方向一側の開口部の全体を覆うように形成された円板部44とを一体に有している。円板部44のセンサモジュール3に対向する側の面には、導磁部材5の第1の対向部51a,52a(図8には第1の対向部51aのみ示す)を収容する一対の凹部(図8には、第1の対向部51aを収容する一方の凹部441のみ示す)が形成されている。なお、カバー部材4Aの磁気エンコーダ2側には、第1の実施の形態に係るシール部材6に相当する部材が設けられていない。
【0072】
本実施の形態によっても、第1の実施の形態について説明した(1)〜(6)の作用及び効果と同様の作用及び効果がある。
【0073】
[第1の実施の形態の変形例2]
図9は、第1の実施の形態の変形例2に係る回転検出装置1Bの構成例を示す断面図である。回転検出装置1Bは、導磁部材5Bの形状が第1の実施の形態に係る導磁部材5とは異なり、この他の構成は共通である。
【0074】
この導磁部材5Bの第1エレメント51Bは、カバー部材4を介して磁気エンコーダ2に対向する第1の対向部51aと、ホールIC30に対向する第2の対向部51bと、第1の対向部51aと第2の対向部51bとを連結する折り返し部511c及び平板部512cとを有している。折り返し部511c及び平板部512cは、第1の対向部51a及び第2の対向部51bを互いに離間する方向に付勢する弾性連結部に相当する。
【0075】
平板部512cは、内輪11の回転軸線Oに対する第1の対向部51aの径方向内側の端部から、第1の対向部51aに対して直交し、回転軸線Oに対して平行に延びるように形成されている。
【0076】
折り返し部511cは、内輪11の回転軸線Oに対する第2の対向部51bの径方向内側の端部から、一旦第1の対向部51aに対して離間する方向に延びて第1の対向部51a側へ折り返すように屈曲された、折り返し形状に形成されている。本実施の形態では、折り返し部511cは、回転軸線Oの径方向の断面が半円状に形成されている。
【0077】
なお、図示は省略しているが、導磁部材5Bは第1エレメント51Bと対称形状に形成された第2エレメントを有している。
【0078】
本変形例に係る回転検出装置1Bによれば、第1の実施の形態について説明した(1)〜(7)の作用及び効果と同様の作用及び効果に加え、寸法誤差や組み付け誤差によってセンサモジュール3がカバー部材4に対して接近しても、第1の対向部51aをカバー部材4の鍔部42に対してより平行に保つことが可能となる。
【0079】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、図10〜図13を参照して説明する。これらの図において、第1の実施の形態について説明したものと実質的に同一の機能を有する構成要素については共通する符号又は対応する符号を付してその重複した説明を省略する。
【0080】
図10は、本実施の形態に係る回転検出装置1C、及びこの回転検出装置1Cを有する車両用の車輪軸受装置10Dの構成例を示す断面図である。図11は、導磁部材5Cの形状及び構成を示し、(a)は斜視図、(b)は四面図である。
【0081】
第1の実施の形態に係る回転検出装置1は、導磁部材5の一部(第2の対向部51b,52b)がセンサモジュール3に固定されていたが、本実施の形態に係る回転検出装置1Cは、その導磁部材5Cの一部(第1の対向部51a,52a)がカバー部材4に固定されている構成が第1の実施の形態とは異なり、その他の構成は共通である。
【0082】
より詳細には、導磁部材5Cは、第1エレメント51C及び第2エレメント52Cからなり、これら両エレメントの第1の対向部51a,52aがカバー部材4に対して移動不能に固定されている。固定の方法は、例えば導磁部材5Cの第1の対向部51a,52aの一部を溶解させてカバー部材4に溶接してもよく、あるいは導磁部材5C及びカバー部材4よりも融点の低い合金によってろう付けしてもよい。あるいは、かしめ加工又は接着剤によって第1の対向部51a,52aをカバー部材4に固定してもよい。
【0083】
また、本実施の形態に係るセンサモジュール3Cは、樹脂部32に導磁部材5Cの一部がモールドされていない他は第1の実施の形態に係るセンサモジュール3と同様に構成されている。
【0084】
導磁部材5Cの第2の対向部51b,52bは、弾性連結部51c,52cの弾性によってセンサモジュール3Cのカバー部材4との対向面に押し付けられている。つまり、導磁部材5Cの第2の対向部51b,52bは、センサモジュール3Cの樹脂部32を介してホールIC30に対向している。
【0085】
図11(b)に示すように、導磁部材5Cの第1エレメント51Cの第1の対向部51aと第2エレメント52Cの第1の対向部52aとの間隔dは、第1エレメント51Cの第2の対向部52bと第2エレメント52Cの第2の対向部52bとの間隔dよりも広く形成されている。間隔dは間隔dの2倍以上であるとよい。
【0086】
図12は、本実施の形態に係る回転検出装置1Cの構成を示し、(a)は図10の部分拡大図、(b)は磁気エンコーダ2の導磁部材5Cに重なる部分を拡大して示す説明図、(c)はホールIC30を磁気エンコーダ2側から見た平面図である。
【0087】
図12(b)に示すように、例えば導磁部材5Cの第1エレメント51Cの第1の対向部51aがS極22に対向するとき、第2エレメント52Cの第1の対向部52aがN極21に対向する。また、第1エレメント51Cの第1の対向部51aと第2エレメント52Cの第1の対向部52aとの間隔d(図11(b)に示す)は、これら両対向部の間に1つのN極21と1つのS極22を挟む寸法に設定されている。
【0088】
図12(a)に示すように、第1エレメント51C及び第2エレメント52C(図12(a)には第1エレメント51Cのみ示す)の第2の対向部51b,52bとヨーク31との間の距離を間隔dとすると、この間隔dは、第1エレメント51Cの第2の対向部51bと第2エレメント52の第2の対向部52bとの間隔d(図11(b)に示す)よりも狭く設定されている。
【0089】
また、図12(c)に示すように、ホールIC30のホール素子30aとホール素子30bとの中心部間の間隔dは、第1エレメント51Cの第2の対向部52bと第2エレメント52Cの第2の対向部52bとの間隔dよりも広く形成されている。すなわち、本実施の形態でも、間隔d〜dは、d<d<d<dの関係を満たすように設定されている。
【0090】
図13は、本実施の形態における作用を説明するための説明図であり、(a)は寸法誤差及び組み付け誤差がない場合(図10,図12(a)に示す)よりもセンサモジュール3Cが磁気エンコーダ2及びカバー部材4に接近して組み付けられた場合のこれら部材間の相対的な位置関係を、(b)は寸法誤差及び組み付け誤差がない場合よりもセンサモジュール3Cが磁気エンコーダ2及びカバー部材4に対して離間して組み付けられた場合のこれら部材間の相対的な位置関係を、それぞれ示す。
【0091】
この図に示すように、センサモジュール3Cとカバー部材4との間の距離が部材の寸法誤差や組み付け誤差によって変動しても、その距離の変動が導磁部材5Cの第1エレメント51C及び第2エレメント52Cの弾性によって吸収され、第2の対向部51b,52bとセンサモジュール3Cとの接触が維持される。
【0092】
本実施の形態に係る回転検出装置1Cによれば、第1の実施の形態について説明した(1),(3)〜(4),及び(7)の作用及び効果と同様の作用及び効果がある。また、導磁部材5Cの第1エレメント51C及び第2エレメント52Cは、センサモジュール3Cをナックル9に取り付ける際に、カバー部材4と接触し、カバー部材4とホールIC30とが接近する方向、すなわち内輪11の回転軸線Oに平行な方向に弾性変形可能であるので、ホールIC30を有するセンサモジュール3Cとカバー部材4との間の距離が変動しても、第1エレメント51C及び第2エレメント52Cとセンサモジュール3Cとの接触が維持される。これにより、磁気エンコーダ2の磁界をより適切にホールIC30側に導くことができる。
【0093】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について、図14及び図15を参照して説明する。これらの図において、第1又は第2の実施の形態について説明したものと実質的に同一の機能を有する構成要素については共通する符号又は対応する符号を付してその重複した説明を省略する。
【0094】
図14は、本実施の形態に係る回転検出装置1D、及びこの回転検出装置1Dを有する車両用の車輪軸受装置10Dの構成例を示す断面図である。
【0095】
本実施の形態に係るカバー部材4Dは、円筒状に形成された円筒部41D、及び円筒部41Dの軸方向一側の開口部の全体を覆うように形成された円板部42Dを有する樹脂からなる樹脂部412と、円筒部41Dに埋め込まれ、樹脂部412にモールドして設けられた円筒状の金属からなる芯金411とを有している。芯金411は、円筒状の金属部材である。
【0096】
また、円板部42Dには、導磁部材5Dの第1エレメント51Dの第1の対向部51aが樹脂部412内にモールドされている。なお、一部図示は省略しているが、導磁部材5Dは、第1エレメント51Dと、第1エレメント51Dに対称な形状に形成された図略の第2エレメントとによって構成されている。磁気エンコーダ2に対向する第2エレメントの第1の対向部もまた、鍔部42Bの樹脂部412内にモールドされている。
【0097】
図15は、本実施の形態における作用を説明するための説明図であり、(a)は寸法誤差及び組み付け誤差がない場合(図14に示す)よりもセンサモジュール3Cが磁気エンコーダ2及びカバー部材4Bに接近して組み付けられた場合のこれら部材間の相対的な位置関係を、(b)は寸法誤差及び組み付け誤差がない場合よりもセンサモジュール3Cが磁気エンコーダ2及びカバー部材4Bに対して離間して組み付けられた場合のこれら部材間の相対的な位置関係を、それぞれ示す。
【0098】
この図に示すように、センサモジュール3Cとカバー部材4Dとの間の距離が部材の寸法誤差や組み付け誤差によって変動しても、その距離の変動が導磁部材5Dの第1エレメント51Dの弾性によって吸収され、第2の対向部51bとセンサモジュール3Cとの接触が維持される。なお、図略の第2エレメントについても同様である。
【0099】
本実施の形態に係る回転検出装置1Dによれば、第1の実施の形態について説明した(1)及び(3)〜(4)の作用及び効果と同様の作用及び効果がある。また、導磁部材5Dの第1エレメント51D及び第2エレメントはカバー部材4DとホールIC30とが対向する方向に弾性変形可能であるので、ホールIC30を有するセンサモジュール3Cとカバー部材4Dとの間の距離が変動しても、導磁部材5Dとセンサモジュール3Cとの接触が維持される。これにより、磁気エンコーダ2の磁界をより適切にホールIC30側に導くことができる。
【0100】
またさらに、第1の対向部51aは、円板部42Dの樹脂部412内にモールドされているので、例えば第1の対向部51aが鍔部42Bの表面に固定されている場合に比較して、磁気エンコーダ2と第1の対向部51aとの距離が近くなり、磁気エンコーダ2の磁界をさらに適切にホールIC30側に導くことができる。
【0101】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0102】
また、本発明の第1〜第3の実施の形態又はその変形例の構成を適宜組み合わせて実施することも可能である。例えば、第2及び第3の実施の形態のカバー部材4,4Bを、図8に示すようにキャップ状に形成して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0103】
1,1A,1B,1C,1D…回転検出装置、2…磁気エンコーダ(被検出部材)、3,3C…センサモジュール、4,4A,4B,4D…カバー部材(非磁性部材)、5,5A,5B,5C,5D…導磁部材(磁性部材)、6…シール部材、9…ナックル、9a…貫通孔、10,10A,10C,10D,10E…車輪軸受装置、11,11A…内輪、11a…外周面、11b,12b…軌道面、12…外輪、12a…内周面、12c…環状凹部、13…転動体、14…シール、20…本体部、21…N磁極、22…S磁極、30…ホールIC、30a,30b…ホール素子、31…ヨーク(磁性体)、32…樹脂部、41,41B,41D…円筒部、42,42B…鍔部、43…環状突出部、44,42D…円板部、44…環状突出部、44a…内周面、51,51B,51C,51D…第1エレメント、52,52C…第2エレメント、51a,52a…第1の対向部、51b,52b…第2の対向部、51c,52c…弾性連結部、91,92…ボルト、110…本体部、110A…本体部、110a…スプライン嵌合部、111,111A…フランジ部、111a…貫通孔、112…支持部材、112a…取付面、301…導線、411…芯金、412…樹脂部、421,422,431…凹部、511c…折り返し部、512c…平板部、M…磁路、O…回転軸線、d〜d…間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材に取り付けられ、前記回転部材の周方向に沿って設けられた複数の磁極を有する被検出部材と、
前記回転部材を回転可能に支持する固定部材に取り付けられ、前記被検出部材の磁界を検出する磁気センサを有するセンサモジュールと、
前記固定部材に設けられ、前記被検出部材と前記磁気センサとの間に少なくとも一部が介在する非磁性部材と、
前記センサモジュール及び前記非磁性部材の一方に固定され、前記非磁性部材と前記磁気センサとの間に配置された磁性部材と、
を備え、
前記磁性部材は、前記センサモジュールを前記固定部材に取り付ける際に、前記センサモジュール及び前記非磁性部材の他方に接触し、前記非磁性部材と前記磁気センサとが接近する方向に弾性変形可能である回転検出装置。
【請求項2】
前記磁性部材は、前記非磁性部材の少なくとも一部を介して前記被検出部材に対向する第1の対向部と、前記磁気センサに対向する第2の対向部と、前記第1の対向部と前記第2の対向部とを連結すると共に前記第1及び第2の対向部を互いに離間する方向に付勢する弾性連結部とを一体に有する、
請求項1に記載の回転検出装置。
【請求項3】
前記被検出部材は、前記回転部材の周方向に沿って複数のN極及び複数のS極が交互に設けられ、
前記磁性部材は、それぞれが前記第1及び第2の対向部と前記弾性連結部とを有し、前記回転部材の周方向に並列する一方側エレメント及び他方側エレメントからなり、
前記一方側エレメントの前記第1の対向部と前記他方側エレメントの前記第1の対向部との間隔は、前記被検出部材において連続する一対又は複数対の前記N極及び前記S極の幅に対応した間隔である、
請求項2に記載の回転検出装置。
【請求項4】
前記一方側エレメントの前記第1の対向部と前記他方側エレメントの前記第1の対向部との間隔は、前記一方側エレメントの前記第2の対向部と前記他方側エレメントの前記第2の対向部との間隔よりも広い、
請求項3に記載の回転検出装置。
【請求項5】
前記磁気センサの前記一方側エレメント及び前記他方側エレメントの前記第2の対向部とは反対側に配置された磁性体を備え、
前記磁性体と前記一方側エレメント及び前記他方側エレメントの前記第2の対向部との間の間隔は、前記一方側エレメントの前記第2の対向部と前記他方側エレメントの前記第2の対向部との間隔よりも狭い、
請求項3又は4に記載の回転検出装置。
【請求項6】
前記磁性部材は、前記第2の対向部が前記磁気センサと共に樹脂モールドされ、前記磁性部材の前記第1の対向部が前記弾性連結部の弾性によって前記非磁性部材に接している、
請求項2乃至5の何れか1項に記載の回転検出装置。
【請求項7】
前記非磁性部材には、前記第1の対向部の少なくとも一部を収容する凹部が形成されている、
請求項6に記載の回転検出装置。
【請求項8】
前記磁性部材は、前記弾性連結部が前記第1の対向部側へ折り返すように屈曲された折り返し部を有する、
請求項6又は7に記載の回転検出装置。
【請求項9】
前記磁性部材は、前記第1の対向部が前記非磁性部材に固定され、前記磁性部材の前記第2の対向部が前記磁気センサをモールドする樹脂を介して前記磁気センサに対向している、
請求項2乃至5の何れか1項に記載の回転検出装置。
【請求項10】
前記非磁性部材は、前記磁性部材の前記第1の対向部をモールドする樹脂部を有し、
前記磁性部材の前記磁性部材の前記第2の対向部は、前記磁気センサをモールドする樹脂を介して前記磁気センサに対向している、
請求項2乃至5の何れか1項に記載の回転検出装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の回転検出装置と、
車輪が取り付けられるフランジ部を有する前記回転部材としての内輪と、
前記非磁性部材が取り付けられた外輪と、
前記内輪の外周面に形成された軌道面及び前記外輪の内周面に形成された軌道面との間に配置された複数の転動体とを備え、
前記非磁性部材は、前記内輪と前記外輪との間を封止する封止部材である、車輪軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−47635(P2013−47635A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185915(P2011−185915)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)