説明

回転装置

【課題】流量と圧力が大きく変化する状況でも効率的に回転する回転装置を得ること。
【解決手段】ケーシング31の内部にローター32を同心状態で配置するとともに、ケーシング31の内壁に隆起部31aを設ける。さらにローター32には複数の弾性ベーンを設け、各ベーンは弾性力によって押されて常にケーシング31の内壁と接触する。吸入口側と排出口側との圧力差をベーンに与える際に、隆起部31aによって流動経路の断面積を異ならせることでローター32を所定方向に回転させて回転エネルギーを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発電機の原動機として利用可能な回転装置に関し、特に水や空気など流体の持つエネルギーを回転エネルギーに変換するための回転装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在のほとんどの火力発電所や水力発電所、風力発電所、原子力発電所では、流体の運動エネルギーと圧力エネルギーによりタービンを回し、その回転力によって交流発電機を駆動させ、電力を得ている。
【0003】
火力発電所と原子力発電所では蒸気タービンが用いられ、そのほとんどは蒸気が軸方向に流れる軸流タービンと呼ばれるものである(例えば非特許文献1参照。)。
【0004】
また、水力発電所ではフランシス水車やペルトン水車等のタービンが用いられている(例えば非特許文献2,3参照。)。風力発電所では、プロペラ型タービンが一般的に用いられている(例えば非特許文献4参照。)。
【非特許文献1】「蒸気タービン」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%92%B8%E6%B0%97%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%B3
【非特許文献2】「水車形式」http://www.pref.mie.jp/dmise/hp/suisya.htm
【非特許文献3】「水車の話し」http://www.ne.jp/asahi/kazzbon/iminonaihp/wt.html
【非特許文献4】「風力発電」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A2%A8%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらのタービンはどれも流体に対して安定した流量と圧力が求められ、定格回転数から外れると効率が悪くなってしまう。特に定格よりも回転数が下回ったときには著しく効率は低下する。そのため、流量が少ない状況では使用できないことが多かった。
【0006】
そのため、波の力や人の歩行、ビルの間に吹く風など流速や流量が大きく変化するエネルギー源を有効に利用することのできる技術の実現が重要な課題となっていた。
【0007】
本発明は、上述した従来技術における問題点を解消し、課題を解決するためになされたものであり、流量と圧力が大きく変化する状況でも損失が少ない回転装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明に係る回転装置は、流体の吸入口と排出口とを有し、内壁が略円形かつ内周の一部が内側方向に隆起した形状である外筒部材と、前記外筒部材の内側に設けられ、前記外筒部材と中心位置が同一である回転自在のローターと、前記ローターから突出し、該突端が前記ローターの回転位置に関わらず前記外筒部材の内壁に接する複数のベーンと、を備え、前記吸入口側と前記排出口側との流体の圧力差を前記複数のベーンに受けて押圧が生じた場合に、前記内壁の隆起の有無によって発生するベーン毎の押圧の差に基づいてローターを所定方向に回転させることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明に係る回転装置は、請求項1に記載の発明において、前記複数のベーンは、屈曲可能で、該屈曲状態において伸長方向に弾性を有し、前記ローターから前記内壁までの距離のうち最長の値以上の長さであり、前記ローターから内壁までの間に屈曲状態で設けられることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の発明にかかる回転装置は、請求項1に記載の発明において、前記複数のベーンは、前記ローターに対して突没自在に設けられ、前記内壁の隆起によってローター内への没入量が増大した状態において突出方向への弾性を有することを特徴する。
【0011】
また、請求項4の発明にかかる回転装置は、請求項1〜3のいずれか一つに記載の発明において、前記ローターの回転を用いて発電する発電手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項5の発明にかかる回転装置は、請求項1〜4のいずれ一つに記載の発明において、外部からの加重によって内容積が変化する2以上の液体用タンクと、利用者の動作に伴って前記液体用タンクに対する加重が変化するように前記利用者の体に装着するための装着手段と、前記内容積の変化に基づき前記2以上の液体用タンクの間で液体を流動させる流動経路とを備え、前記流動経路上に前記外筒を設けたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項6の発明にかかる回転装置は、請求項5に記載の発明において、前記装着手段は靴であり、前記利用者の足の爪先近傍に体重がかかる状態と踵近傍に体重がかかる状態とで異なる液体用タンクに加重が加わることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば回転装置は、内壁が略円形かつ内周の一部が内側方向に隆起した形状である外筒部材に対してローターを同心状態で配置し、ローターから突出したベーンを外筒部材の内壁に接触させることで、吸入口側と排出口側との流体の圧力差を複数のベーンに受けて押圧が生じた場合に、内壁の隆起の有無によって発生するベーン毎の押圧の差に基づいてローターを所定方向に回転させるので、流量と圧力が大きく変化する状況でも損失が少ない回転装置を得ることができるという効果を奏する。
【0015】
また、請求項2の発明によれば回転装置は、屈曲可能で弾性を有するベーンをローターから突出させてその先端を外筒部材内壁に接触させ、外筒部材内壁の隆起の有無によって発生するベーン毎の押圧の差に基づいてローターを所定方向に回転させるので、流量と圧力が大きく変化する状況でも損失が少ない回転装置を得ることができるという効果を奏する。
【0016】
また、請求項3の発明によれば回転装置は、ローターに突没自在のベーンを設け、その突端を外筒部材内壁に接触させ、外筒部材内壁の隆起の有無によって発生するベーン毎の押圧の差に基づいてローターを所定方向に回転させるので、流量と圧力が大きく変化する状況でも損失が少ない回転装置を得ることができるという効果を奏する。
【0017】
また、請求項4の発明によれば回転装置は、内壁が略円形かつ内周の一部が内側方向に隆起した形状である外筒部材に対してローターを同心状態で配置し、ローターから突出したベーンを外筒部材の内壁に接触させることで、吸入口側と排出口側との流体の圧力差を複数のベーンに受けて押圧が生じた場合に、内壁の隆起の有無によって発生するベーン毎の押圧の差に基づいてローターを所定方向に回転させて発電に使用するので、流量と圧力が大きく変化する状況でも効率的に発電可能な回転装置を得ることができるという効果を奏する。
【0018】
また、請求項5の発明によれば回転装置は、利用者の動作によって液体を流動させ、流動の圧力と運動量を効率的に利用して発電するので、人間の日常生活の何気ない動作の中で意識的な作業なしに効率的に発電可能な回転装置を得ることができるという効果を奏する。
【0019】
また、請求項6の発明に係る回転装置は、利用者の体重移動によって液体を流動させ、流動の圧力と運動量を効率的に利用して発電するので、歩行などの動作を利用して効率的に発電可能な回転装置を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る回転装置の好適な実施例について詳細に説明する。
【実施例】
【0021】
本発明は、流速や流量が大きく変化するエネルギー源から回転エネルギーをとりだすものであるが、本実施例では、人間の歩行から流動を発生させ、かかる流動をエネルギー源として取り出した回転エネルギーを発電に利用する場合について説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施例である回転装置を有した靴の概要構成を説明する説明図である。同図に示すように、靴の内部には歩行時に最も圧力がかかる2点、例えば踵と、足の親指の付け根の辺りにそれぞれやわらかいタンク1とタンク2を配置する。そしてタンク1とタンク2は液体で満たし、パイプ41で接続する。
【0023】
従って、歩行動作によってタンク1とタンク2に交互に圧力が加わると、パイプ41内を液体が移動する。この移動経路上に回転装置であるタービン3を設け、タービン3と発電機を接続することで発電機を動作させて発電を行なうことができる。
【0024】
タービン3は、円形で、周の一部について内壁が内側に狭くなっている(内側方向に隆起している隆起部31aを有する)ケーシング31の中にローター32が同心で配置されている。ローター32には複数のベーン(同図ではベーン33a,33b,33c,33d,33e,33fの6つ)が取り付けられている。
【0025】
各ベーンはゴムなど柔らかい素材でできていて、簡単に曲がり、曲がった状態において伸びる側に弾性を有する。ベーンの長さは、ローター32の側面から外筒部材31内側までの距離よりも長いため、折れ曲がった状態でケーシング31とローター32の間にあり、各ベーンの先端はベーンの復元力(弾性力)によりケーシング31を押し付けている。
【0026】
ローター32の軸34は、ケーシング31の外部への漏れのないシーリング、例えばOリングによって引き出され、発電機へとつながっている。吸入口35と排出口36は、ケーシング31の仮面から液体を内部に出し入れできるようにつながっている。
【0027】
次に動作について説明する。吸入口35の部分の液体と排出口36の部分の液体に圧力差が発生すると、各ベーンに断面積×圧力の力がかかる。その力の回転方向成分がローター32の回転力となる。例えば、吸入口35の圧力が高くなった時、ベーン33bとベーン33dに圧力がかかる。ベーン33bにかかる圧力はローターを時計回りに回す力となり、ベーン33dにかかる圧力はローターを反時計回りに回す力となる。
【0028】
ここで、ベーン33dは内側に狭くなったケーシングによって曲げられていることにより、ベーンにかかる力の回転方向成分は小さくなっている。ローターは各ベーンにかかる力の回転方向成分の総和によって回転をするため、結果として時計回りに回りだす。
【0029】
すなわち、ケーシング31の隆起部31aは、ローター内での流体の流動経路の断面積を変化させることで、ローター32の回転方向を規定する効果を生み出す。
【0030】
ローター32が回転するにつれてケーシング31内部の各ベーンで挟まれた空間の体積は変化していく。吸入口側ではその体積が増えることにより液体は空間内部に流れ込み、排出口側ではその体積が減ることにより、液体は外へと押し出されていく。この一連の流れで液体はその圧力差と体積の積に当たるエネルギーを各ベーンを介してローター32に伝えることができる。
【0031】
また、図2に示したように、ローター32に複数のベーン(同図ではベーン37a,37b,37c,37d,37e,37fの6つ)を突没可能に設けても良い。この構成では、各ベーンはバネによって押されて常にケーシング31の内壁と接触している。バネは、ベーンに対してそれぞれ設け、例えばベーン37dにはバネ38dが対応する。
【0032】
この図2に示した構成においても、図1の構成と同様に隆起部31aの存在によって各ベーンに発生する押圧が異なることとなり、隆起部31aの存在しない方向、すなわち時計回りの方向にローター34が回転することとなる。
【0033】
つづいて、靴内部の構造例について、図3を参照してさらに詳しく説明する。同図に示すように、タンク1とタンク2は、パイプ41およびパイプ42によって繋がれる。さらにパイプ43がパイプ41と42とを接続し、逆止弁51,52,53,54により、パイプ43には常に一方向にしか液体は流れない。
【0034】
例えば、タンク1に圧力をかけたときは、逆止弁51,53が閉じて逆止弁52からパイプ43を通り逆止弁54へ液体が流れる。同様に、タンク2に圧力を掛けた場合には、逆止弁52,54が閉じて逆止弁51からパイプ43を通り逆止弁53へ液体が流れる。
【0035】
パイプ43の途中にあるタービン3は、パイプ43に流れる液体の圧力と運動量によって回転する。この回転がプーリー9によって発電機6に伝えられる。プーリーを用いるのは、靴底という狭いスペースにおいてタービンと発電機が軸を共有しておくスペースが無い場合や、タービンと発電機の回転数を違うものにしたい場合などである。状況によってはプーリーを用いずタービンと発電が軸を共用しても良い。またプーリーではなくギアで回転数を変換してもよい。
【0036】
発電機6は、タービン3の動力によって交流電流を発生する。また、蓄電素子8は発生した電力を蓄える素子である。充電回路7は、発電機6と蓄電素子8の間にあり、発電機6で発生する交流電流を整流する機能と蓄電素子8の電圧を調整する機能を有する。
【0037】
なお、ここでは発生した電源を一旦蓄電素子8に蓄積する場合の構成を例に説明を行なっているが、例えば発電機6で発生した電流を直接外部に出力するなど、任意の構成とすることもできる。
【0038】
上述してきたように、本発明にかかる発電装置は、一部が狭くなったケーシング31の内部に配置されたローター32と、ローター32の側面に取り付けられた複数の柔らかいベーン(もしくは突没可能なベーン)を持つ原動機の、吸入口35から入る流体と排出口36から出る流体との圧力差でベーンに力を加えることにより回転エネルギーを得ることができる。ベーンはケーシング31の壁に接しながら回ることより、吸入側と排出側とが繋がることなく完全に隔てられている。これにより、流量が少なく極低回転でも流体の持つ圧力によりタービンを回転させることができる。
【0039】
そのため、安定した流速、流量が得られないために利用することができなかった様々なエネルギーを利用できるようになる。それは例えば、波の力や、人の歩行などに起因する力、ビルの間に吹く突風などである。
【0040】
すなわち、本実施例に示した構成はあくまで一例であり、適宜変更して実施することができるものである。例えば、設置場所も靴の中に限らず、圧力差を生じさせる場所、例えば股関節などに設置し、股関節を曲げたり伸ばしたりする動作によって発電をすることも可能である。
【0041】
さらに利用者が手回しなどで発電を行なう場合や、波の力、ビル風を利用するにも、本発明を適用することで効率的にエネルギーを取り出すことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明にかかる回転装置は、発電機の電動機として利用可能であり、特に流体の持つエネルギーの回転エネルギーへの変換に適している。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例である回転装置を有した靴の概要構成を説明する説明図である。
【図2】突没可能なベーンを用いたローターの変形例について説明する説明図である。
【図3】図1および図2に示した靴内部の構造例について説明する説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1,2 タンク
3 タービン
31 ケーシング
32 ローター
33a〜33f,37a〜37f ベーン
34 軸
35 吸入口
36 排出口
38a〜38f バネ
41〜43 パイプ
51〜54 逆止弁
6 発電機
7 充電回路
8 蓄電素子
9 プーリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の吸入口と排出口とを有し、内壁が略円形かつ内周の一部が内側方向に隆起した形状である外筒部材と、
前記外筒部材の内側に設けられ、前記外筒部材と中心位置が同一である回転自在のローターと、
前記ローターから突出し、該突端が前記ローターの回転位置に関わらず前記外筒部材の内壁に接する複数のベーンと、
を備え、
前記吸入口側と前記排出口側との流体の圧力差を前記複数のベーンに受けて押圧が生じた場合に、前記内壁の隆起の有無によって発生するベーン毎の押圧の差に基づいて前記ローターが所定方向に回転することを特徴とする回転装置。
【請求項2】
前記複数のベーンは、屈曲可能で、該屈曲状態において伸長方向に弾性を有し、前記ローターから前記内壁までの距離のうち最長の値以上の長さであり、前記ローターから内壁までの間に屈曲状態で設けられることを特徴とする請求項1に記載の回転装置。
【請求項3】
前記複数のベーンは、前記ローターに対して突没自在に設けられ、前記内壁の隆起によってローター内への没入量が増大した状態において突出方向への弾性を有することを特徴する請求項1に記載の回転装置。
【請求項4】
前記ローターの回転を用いて発電する発電手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の回転装置。
【請求項5】
外部からの加重によって内容積が変化する2以上の液体用タンクと、
利用者の動作に伴って前記液体用タンクに対する加重が変化するように前記利用者の体に装着するための装着手段と、
前記内容積の変化に基づき前記2以上の液体用タンクの間で液体を流動させる流動経路とを備え、
前記流動経路上に前記外筒部材を設けたことを特徴とする請求項4に記載の回転装置。
【請求項6】
前記装着手段は靴であり、前記利用者の足の爪先近傍に体重がかかる状態と踵近傍に体重がかかる状態とで異なる液体用タンクに加重が加わることを特徴とする請求項5に記載の回転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−138647(P2008−138647A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328666(P2006−328666)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】