説明

回転部のアース構造

【課題】 基準電位面にアースされた固定部に対してヒンジ機構を介して回転部が回転可能に設けられた構成において、回転動作に影響を受けることなく回転部の確実なアースを可能にする手段を提供する。
【解決手段】 本発明に係る回転部のアース構造は、基準電位面に接地され電気部品を収容する装置本体73と、金属製の部材を有する外装カバー74と、装置本体73に突出して設けられた回転軸5と、外装カバー74に設けられて回転軸5を回転可能に支持する軸受け9と、外装カバー74が有する金属製の部材と回転軸5とを電気的に接続するアース配線14と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準電位面にアースされた固定部に対して回転可能に設けられた回転部のアース構造に関し、特に、回転部を回転させた際にアースが不安定になることのない回転部のアース構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コピー機、ファクシミリ、スキャナ等には、複写しようとする原稿やファクシミリ送信しようとする原稿の画像を読み取るための画像読取装置が搭載されている。この画像読取装置は、所定の搬送経路に沿って原稿を自動的に搬送する自動原稿搬送装置(以下、「ADF」と略す)と、その搬送経路上において原稿画像を読み取る読取ユニットとから構成される。図7は、従来のADF70の外観を示す概略斜視図である。ADF70は、原稿トレイ71にセットされた原稿72が、装置本体(固定部)73の内部に順次繰り込まれて搬送され、原稿トレイ71の下方に設けられた排紙トレイ(不図示)に排出されるよう構成される。ここで、装置本体73の上部には、外装カバー(回転部)74がヒンジ機構75を介して開閉可能に設けられている。これにより、原稿詰まりが発生した場合には、この外装カバー74を開いて内部を露呈させることにより、詰まった原稿72を除去できるようになっている。
【0003】
ここで、図8は、外装カバー74を装置本体73から取り外して裏返した状態を示す概略斜視図である。外装カバー74の内側面には、原稿搬送方向に向かって左右両側に、一対の側壁76が垂直に起立してそれぞれ設けられている。そして、この左右の側壁76の間には、原稿72を搬送するための種々のローラ77が、それぞれ回転可能に支持されている。ここで、各ローラ77は、金属製のローラ軸78の周りに樹脂製のローラ本体79が固定されてなるものである。
【0004】
このように構成される外装カバー74は、装置本体73に電気的に接続することによってアースされている。これは、ADF70には、種々の電気部品(不図示)を流れる電流により磁界が発生するが、外装カバー74にアースされていない金属製の部材が取り付けられていると、その金属製の部材がアンテナとして機能することでいわゆる放射ノイズが発生し、その影響を受けて電気部品が誤作動する問題、或いは読取ユニットによる原稿72の読取画質が劣化する問題等が生じるからである。特に、外装カバー74に設けられた各種ローラ77は、その回転時に金属製のローラ軸78に静電気が溜まってアンテナとして機能しやすいため、放射ノイズ発生の原因となりやすい。そこで、図8に示すように、各ローラ77のローラ軸78に接触させるようにして長尺な接続板80を架け渡し、この接続板80に一端を接続したアース配線81を外装カバー74の外部へ引き出している。そして、図8に詳細は示さないが、このアース配線81の他端を、基準電位面にアースされた装置本体73の所定箇所に接続している。このように、回転部としての外装カバー74を、固定部としての装置本体73に電気的に接続してアースすることによって、放射ノイズの発生を防止している。
【0005】
尚、基準電位面にアースされた固定部に対してヒンジ機構を介して回転可能に設けられた回転部をアースする構造としては、特許文献1に示される構造が従来提唱されている。この特許文献1では、ヒンジ機構が、固定部に固定される第1の板金と、回転部に固定される第2の板金と、これら各板金を回転可能に支持する回転軸とを備え、第1の板金が固定部に、第2の板金が回転部にそれぞれ電気的に接続されている。そして、このような構成において、第1の板金と第2の板金の間に、金属製のコイルバネを圧縮した状態で介在させている。これにより、コイルバネはその弾性によって両端が各板金に常に接触するので、回転動作にかかわらず回転部の確実なアースが可能となる。
【0006】
【特許文献1】特開2005−165177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の外装カバー74のアース構造では、外装カバー74から引き出したアース配線81を装置本体73に接続する構造であるため、外装カバー74の開閉動作に伴ってアース配線81が屈曲し或いは引っ張られて伸びると、外装カバー74のアースが不安定になりやすいという問題がある。また、図7に示す外装カバー74と装置本体73との境界82をアース配線81が跨ぐので、見栄えが悪いという問題もある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、基準電位面にアースされた固定部に対してヒンジ機構を介して回転部が回転可能に設けられた構成において、回転動作に影響を受けることなく回転部の確実なアースを可能にする手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る回転部のアース構造は、基準電位面に接地された固定部と、金属製の部材を有する回転部と、前記固定部及び前記回転部のうち少なくともいずれか一方に設けられた電気部品と、前記固定部及び前記回転部のうちいずれか一方に突出して設けられ、前記固定部に電気的に接続された導電性を有する回転軸と、前記固定部及び前記回転部のうちいずれか他方に設けられ前記回転軸を回転可能に支持する軸受けと、前記回転部が有する金属製の部材と前記回転軸とを電気的に接続するアース配線と、を備えるものである。
【0010】
また、本発明に係る回転部のアース構造は、前記回転軸が前記固定部に、前記軸受けが前記回転部にそれぞれ設けられ、前記アース配線の前記回転軸側の端部に、前記回転部に固定されて弾性変形した状態で前記回転軸に接触する導電性アース部材が設けられたものである。
【0011】
また、本発明に係る回転部のアース構造は、前記固定部が、画像読取装置を構成する自動原稿搬送装置の装置本体であって、前記回転部が、前記装置本体に対して開閉可能に設けられた外装カバーであることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明に係る回転部のアース構造は、前記回転部が有する金属製の部材が、前記原稿を搬送する送りローラのローラ軸であることを特徴とするものである。尚、本発明に係る送りローラとは、原稿を搬送経路に沿って下流側へ送るローラ全般を意味し、セパレートローラ、ピックアップローラ、第1従動ローラ、及び第2従動ローラ等を含むものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る回転部のアース構造によれば、回転部が有する金属製の部材をアースするためのアース配線が、回転部と固定部の間を跨がないので、回転部の回転時に回転部アース線が屈曲し或いは引っ張られて延びることによって回転部のアースが不安定化することがない。また、長期に渡って回転部の回転を繰り返しても、アース配線がダメージを受けることがない。更に、アース配線の全体が回転部の内部に収容されるので、アース配線が回転部の外部に剥き出しになって美観が損なわれることもない。
【0014】
また、本発明に係る回転部のアース構造によれば、回転軸が固定部に軸受けが回転部にそれぞれ設けられ、アース配線の回転軸側の端部に導電性アース部材が設けられたので、回転部の回転動作時に軸受けの内部で回転軸が若干動いても、回転軸の動きに追従して導電性アース部材が弾性変形することにより、導電性アース部材が回転軸に接触した状態が維持される。これにより、アース配線と回転軸との電気的な接続が、回転部の回転動作によって不安定になるのを防止することができる。
【0015】
また、本発明に係る回転部のアース構造によれば、固定部が自動原稿搬送装置の装置本体であって、回転部が装置本体に対して開閉可能に設けられた外装カバーである。従って、装置本体に収容された電気部品に電流が流れて磁界が発生しても、外装カバーに取り付けられた金属製の部材がアンテナとして機能しにくく、放射ノイズの発生が抑制される。これにより、放射ノイズの影響を受けて画像読取装置の読取画質が劣化するのを防止することができる。
【0016】
また、本発明に係る回転部のアース構造によれば、回転部が有する金属製の部材が、送りローラのローラ軸である。従って、回転時に生じる静電気が溜まって特にアンテナとして機能しやすいローラ軸をアースすることにより、放射ノイズの発生をより確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
まず、本発明の実施例に係る回転部のアース構造について、図面に基づいて説明する。本実施例に係る回転部のアース構造は、画像読取装置の一部を構成するADFに適用される。本実施例に係るADFの外観は、図7に示す従来のADF70の外観と同様であるため、同じ符号を使用する。ADF70は、装置本体73(固定部)と、読み取るべき原稿72がセットされる原稿トレイ71と、この原稿トレイ71の下方に設けられ読み取り後の原稿72が排出される排紙トレイ(不図示)と、装置本体73の上部にヒンジ機構75を介して開閉可能に設けられた外装カバー74(回転部)とを備えている。このように外装カバー74を開閉可能とすることにより、原稿詰まりが発生した場合には、外装カバー74を開いて詰まった原稿72を除去できるようになっている。
【0018】
ここで、図1は、図7から外装カバー74を開いた状態を示す概略斜視図である。装置本体73の表面には、原稿トレイ71から排紙トレイに至る横U字形状の搬送経路1が設けられている。この搬送経路1の最上流部には、リタードローラ2が回転可能に設けられている。そして、このリタードローラ2より下流側の位置には、原稿72を下流側へ搬送するための第1搬送ローラ3及び第2搬送ローラ4が回転可能に設けられている。尚、図1には横U字形状の搬送経路1のうち上半分だけを図示しているが、搬送経路1の下半分にも同様に搬送ローラが適宜の間隔で設けられている。また、図1に詳細は示さないが、装置本体73の内部には、リタードローラ2及び各搬送ローラ3,4等を駆動するための各種電気部品が収容されている。
【0019】
また、図2は、図7から外装カバー74を取り外した状態において、原稿搬送方向に向かって右側のヒンジ機構75を拡大した概略斜視図である。装置本体73の側部には、ヒンジ機構75を構成する金属製の回転軸5が、原稿搬送方向と略直交する方向に突出して設けられている。ここで、図2に詳細は示さないが、この回転軸5は、装置本体73に電気的に接続され、この装置本体73は基準となる電位面に対してアースされている。これにより、回転軸5は基準電位面に対して電気的に接続された状態となっている。尚、図7に示す原稿搬送方向に向かって左側のヒンジ機構75についても、これを構成する回転軸5が、右側のヒンジ機構75の回転軸5と向かい合うようにして、装置本体73の側部に突出して設けられている。尚、回転軸5は、金属製に限られず例えば導電性を有する樹脂によって形成してもよい。
【0020】
一方、図3は、外装カバー74を装置本体73から取り外して裏返した状態を示す概略斜視図である。外装カバー74は、樹脂等を薄板状に成型してなるカバー本体6と、このカバー本体6の内側面7に原稿搬送方向に沿って設けられた左右一対の側壁8と、各側壁8の最下流部に設けられた左右一対の軸受け9と、左右の側壁8によって挟まれた領域における最上流側の位置に設けられた給紙ユニット10と、この給紙ユニット10より下流側の位置に設けられた第1従動ローラ11及び第2従動ローラ12と、給紙ユニット10と第1従動ローラ11の間の位置に設けられた補強ステー13と、外装カバー74をアースするためのアース配線14とを備えている。
【0021】
前記左右一対の軸受け9は、装置本体73の回転軸5と共にヒンジ機構75を構成するものである。この軸受け9は、図3に示すように、樹脂等からなる細長の部材であって、その一端部を貫通して回転軸5を挿入するための挿入孔15が形成されている。ここで、この挿入孔15は、その径が回転軸5と略同径に、且つその長さが回転軸5の突出長より若干長く形成されている。また、軸受け9の挿入孔15側の端部は円弧状に形成され、外装カバー74の開閉時に装置本体73に干渉しないようになっている。このように構成される一対の軸受け9は、カバー本体6の内側面7における最下流側の位置にそれぞれ固定され、挿入孔15の形成された側の端部がカバー本体6の縁部より若干外側に突出している。
【0022】
前記給紙ユニット10は、原稿トレイ71にセットされた原稿72を1枚ずつ搬送経路1に繰り込むためのものである。この給紙ユニット10は、図3に示すように、原稿トレイ71にセットされた原稿72の束から最上部に位置する数枚を取り出すピックアップローラ16と、取り出された数枚の原稿72から最上紙だけを分離するセパレートローラ17とから構成される。セパレートローラ17は、回転駆動される金属製のローラ軸18の略中央に樹脂製のローラ本体19が設けられたものであって、外装カバー74を閉じた時にローラ本体19が前記リタードローラ2に密着する位置に設置されている。一方、ピックアップローラ16は、金属製のローラ軸20の両端部に樹脂製のローラ本体21がそれぞれ設けられたものであって、セパレートローラ17のローラ軸18に取り付けられた左右一対のピックアップアーム22によってローラ軸18の両端が回転可能に支持されるとともに、ベルト伝達機構23によってセパレートローラ17のローラ軸18の回転がピックアップローラ16のローラ軸18に伝達されるようになっている。
【0023】
このように構成される給紙ユニット10は、原稿72の読取動作を行わない時は、セパレートローラ17及びピックアップローラ16の回転が停止し、ピックアップアーム22はピックアップローラ16を上方に持ち上げて原稿72から離した状態となっている。一方、原稿72の読取動作が開始されると、セパレートローラ17が駆動され、その回転がベルト伝達機構23によってピックアップローラ16に伝達されることにより、ピックアップローラ16も回転を開始する。また、セパレートローラ17の回転に伴って、ピックアップアーム22がピックアップローラ16を下降させるように回転する。そして、回転しながら下降してきたピックアップローラ16が原稿72に接触することにより、最上紙から数枚が取り出され、セパレートローラ17とリタードローラ2のニップ部へと送り込まれる。ここで、セパレートローラ17は原稿72を下流側へ搬送する方向に回転するのに対し、リタードローラ2はこれと逆方向に回転することにより、ニップ部に送り込まれた数枚の原稿72から最上紙だけが分離されて搬送経路1へ送り込まれる。このようにして、原稿トレイ71の上の原稿72が順次搬送経路1へ繰り込まれる。
【0024】
前記第1従動ローラ11及び第2従動ローラ12は、装置本体73の第1搬送ローラ3及び第2搬送ローラ4と協働して、原稿72を搬送経路1に沿って下流側に搬送するためのものである。第1従動ローラ11は、図3に示すように、金属製のローラ軸24に沿って樹脂製のローラ本体25が複数個設けられたものである。このように構成される第1従動ローラ11は、カバー本体6の内側面7に所定間隔で固定された支持部材26によって回転可能に支持されている。同様に、第2従動ローラ12も、金属製のローラ軸27に沿って樹脂製のローラ本体28が複数個設けられたものであって、カバー本体6の内側面7に固定された支持部材29によって回転可能に支持されている。そして、外装カバー74を閉じた時に、第1従動ローラ11のローラ本体25が第1搬送ローラ3に密着し、第2従動ローラ12のローラ本体28が第2搬送ローラ4に密着する。これにより、各搬送ローラ3,4が駆動されると各従動ローラ11,12がこれに従って回転するので、各搬送ローラ3,4と各従動ローラ11,12とで原稿72をニップして下流側へ搬送することができる。
【0025】
前記補強ステー13は、カバー本体6を構造的に補強するためのものである。この補強ステー13は、図3に示すように、金属製の長尺な部材であって、左右の側壁8の間隔と略等しい長さを有している。このように構成される補強ステー13は、給紙ユニット10と第1従動ローラ11の間の位置に、その両端部を左右の側壁8にそれぞれ密着させるようにして配置され、ネジ30を用いてカバー本体6の内側面7に固定されている。
【0026】
前記アース配線14は、外装カバー74に取り付けられた金属製の部材を電気的にアースするためのものである。このアース配線14は、図3に示すように、カバー本体6の内側に原稿搬送方向に平行するように取り付けられた接続板31と、この接続板31に一端部が電気的に接続された電気配線32と、この電気配線32の他端部に設けられた導電性アース部材33と、を備えている。
【0027】
接続板31は、外装カバー74に取り付けられた金属製の部材を電気的に接続するためのものであって、図3に示すように、細長な矩形形状を有する金属製の平板部材である。この接続板31は、下方から支持されることにより、その長手方向一端部がセパレートローラ17のローラ軸18に、長手方向中央部が第1従動ローラ11のローラ軸24に、長手方向他端部が第2従動ローラ12のローラ軸27に、それぞれ下方から接触している。更に、接続板31は、補強ステー13の上面に密着した状態でネジ30を用いて補強ステー13に固定されている。これにより、金属製の部材であるセパレートローラ17のローラ軸18、第1従動ローラ11のローラ軸24、第2従動ローラ12のローラ軸27、及び補強ステー13が、接続板31を介して電気的に接続されている。尚、接続板31を用いて接続される金属製の部材が本実施例に限定されないのはもちろんである。
【0028】
導電性アース部材33は、外装カバー74の開閉動作に影響を受けることなく、電気配線32の一端を装置本体73の回転軸5に確実に接続するためのものである。ここで、図5は、導電性アース部材33の外観を示す概略斜視図である。導電性アース部材33は、金属製の薄板材を打ち抜き加工及び折り曲げ加工して形成したものであって、カバー本体6に取り付けられる取付部35と、軸受け9及び側壁8に密着される密着部36と、軸受け9の挿入孔15に挿入される挿入部37と、を有している。取付部35は、平面視で略矩形形状を有し、その中央部を貫通してネジ挿通孔38が形成されている。密着部36は、取付部35の一端縁から取付部35と略90°の角度をなして起立し、図4に示す側壁8及び軸受け9の形状に合わせて、その一部が斜めに切り落とされている。また、挿入部37は、密着部36の先端から密着部36と略90°の角度をなして取付部35と逆方向へ延び、その幅は挿入孔15の径より小さく、その長さは挿入孔15の長さと同程度かそれより若干短く形成されている。尚、導電性アース部材33は、金属製に限られず例えば導電性を有する樹脂によって形成してもよい。
【0029】
このように構成される導電性アース部材33は、図4に示すように、その挿入部37が軸受け9の挿入孔15に挿入され、且つその密着部36が軸受け9及び側壁8に密着された状態で、その取付部35が取付用ボス40の上に固定される。この取付用ボス40は、カバー本体6の内側面7であって軸受け9より若干内側の位置に突出して設けられた略円柱形状の部材であって、図4に詳細は示さないが、その上面から所定の深さのネジ孔が形成されている。取付部35は、ネジ39が図5に示すネジ挿通孔38を通してボス取付部35のネジ孔にねじ込まれることにより、カバー本体6に固定される。このように、導電性アース部材33を軸受け9及び側壁8に密着させて取り付けることにより、導電性アース部材33が搬送経路1を搬送される原稿72の邪魔にならないという利点がある。尚、取付用ボス40を設けることなく、導電性アース部材33をカバー本体6に直接固定してもよい。
【0030】
電気配線32は、接続板31と導電性アース部材33とを電気的に接続するためのものである。この電気配線32の一端は、図3に示すように、接続板31を補強ステー13に固定するネジによって接続板31の上面に固定されることにより、接続板31に対して電気的に接続される。また、電気配線32の他端は、図4に示すように、導電性アース部材33を取付用ボス40に固定するネジ39によって導電性アース部材33の取付部35に固定されることにより、導電性アース部材33に対して電気的に接続される。更に、電気配線32の中間部は、図3に示すように、補強ステー13をカバー本体6に固定するネジ30によって補強ステー13の上面に電気的に接続される。これにより、外装カバー74に取り付けられた複数の金属製の部材は、接続板31及び電気配線32を介して導電性アース部材33に電気的に接続される。尚、電気配線32の中間部を補強ステー13に電気的に接続することにより、補強ステー13と導電性アース部材33をより確実に電気的に接続することができるという利点がある。加えて、電気配線32の中間部を補強ステー13に固定して電気配線32の弛みを少なくすれば、外装カバー74の開閉動作時に、電気配線32が各種ローラ等に絡むことを防止できるという利点もある。
【0031】
尚、複数の金属製の部材を導電性アース部材33に電気的に接続する手段は、本実施例のように接続板31と1本の電気配線32を用いる方法に限られず、例えば電気配線32の一端側を複数に分岐させ、接続板31を介することなく、分岐した各端部を各金属製の部材に直接接続してもよい。また、各金属製の部材と導電性アース部材33とを、別々の電気配線32を用いて個別に接続してもよい。また、本発明に係る電気配線32とは、導電性を有する部材であれば足り、金属からなる棒状または板状の部材、或いはコイルバネ等も含む広い概念である。
【0032】
以上のように構成される外装カバー74は、図3に示す左右の軸受け9の挿入孔15に対し、図2に示す装置本体73の左右の回転軸5を、軸受け9の外側からそれぞれ挿入させることにより、装置本体73に装着される。これにより、各回転軸5が各軸受け9によって回転可能に支持されるので、外装カバー74を回転軸5廻りに回転させることで開閉することができる。ここで、図6は、回転軸5の軸受け9への挿入を模式的に示す概略縦断面図である。図6Aに示すように、軸受け9は、回転軸5が挿入されない状態では、その挿入孔15に対し内側から前記導電性アース部材33の挿入部37が挿入されている。この時、前述のように挿入部37の長さは挿入孔15の長さと同程度かそれより若干短く形成されているので、図6Aに示すように、挿入部37の先端は挿入孔15の内部に位置している。
【0033】
そして、図6Aの状態から、軸受け9の挿入孔15に対して外側から回転軸5を挿入させると、図6Bに示すように回転軸5が挿入部37の先端に接触した後、導電性アース部材33は軸受け9の内側方向への力を回転軸5から受ける。ここで、前述のように導電性アース部材33は薄板材からなる弾性変形しやすい部材である。従って、回転軸5から力を受けた導電性アース部材33は、図6Cに示すように、その密着部36が後方に反り返るように弾性変形し、元の形状に復帰しようとする自らの弾性により、挿入部37の先端を回転軸5に押し付けた状態となる。これにより、外装カバー74に取り付けられた複数の金属製の部材が、接続板31と電気配線32と導電性アース部材33を介して、装置本体73の回転軸5に電気的に接続される。そして、前述のように回転軸5は基準電位面に電気的に接続されているので、前記複数の金属製の部材は基準電位面に電気的に接続されることによりアースされる。これにより、装置本体73に収容された電気部品に電流が流れて磁界が発生しても、外装カバー74に取り付けられた金属製の部材はアンテナとして機能しにくく、放射ノイズの発生が抑制される。もちろん、外装カバー74の内側に電気部品を取り付けた場合でも、同様の効果が得られる。
【0034】
また、このような外装カバー74のアース構造によれば、外装カバー74の開閉動作時に軸受け9の挿入孔15の内部で回転軸5が若干動いても、回転軸5の動きに追従して導電性アース部材33が弾性変形し或いは元の形状に復帰することにより、挿入部37の先端が回転軸5に接触した状態が維持される。また、外装カバー74をアースするためのアース配線14が、図7に示す外装カバー74と装置本体73の境界82を跨がないので、外装カバー74の開閉動作時にアース配線14が屈曲し或いは引っ張られて伸びることによって外装カバー74のアースが不安定化することがない。また、長期に渡って外装カバー74の開閉動作を繰り返しても、アース配線14がダメージを受けることがない。更に、アース配線14の全体が外装カバー74の内部に収容されるので、アース配線14が外部に剥き出しになってADF70の美観が損なわれることもない。
【0035】
尚、導電性アース部材33の形状は、本実施例に限られず適宜設計変更が可能である。例えば、図に詳細は示さないが、導電性アース部材33を取付部35と密着部36だけで構成する一方、回転軸5の長さを挿入孔15の長さより長く形成し、回転軸5を挿入孔15に貫通させて反対側から突出した部分によって密着部36を押して弾性変形させてもよい。また、本実施例では導電性アース部材33を介して電気配線32の一端を回転軸5に接続したが、導電性アース部材33を介さずに、例えば電気配線32の一端を挿入孔15の内部に差し込んだ状態としておき、挿入孔15の逆側から挿入した回転軸5の先端を接触させてもよい。しかし、本実施例のように導電性アース部材33をその弾性によって回転軸5に押し付けた方が、アース配線14の一端と回転軸5との電気的な接続が、外装カバー74の開閉動作によって影響を受けにくいという利点がある。
【0036】
また、本実施例では、図7において原稿搬送方向に向かって右側のヒンジ部75を介して外装カバー74をアースしたが、これに限られず、原稿搬送方向に向かって左側のヒンジ部を介して、或いは原稿搬送方向に向かって左右両側のヒンジ部75を介して、外装カバー74をアースすることも可能である。更に、本実施例では、ヒンジ機構75を構成する回転軸5を装置本体73に設け、軸受け9を外装カバー74に設けたが、これとは逆に、回転軸5を外装カバー74に設け、軸受け9を装置本体73に設けてもよい。この場合、導電性アース部材33を介さずに、電気配線32の一端を回転軸5に直接接続することができる。また、本実施例では、コピーファクシミリ複合機に装備されたADF70を例に説明したが、このADF70をコピー専用機やファクシミリ専用機に装備することももちろん可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る回転部のアース構造は、ADFに適用可能なだけでなく、基準電位面にアースされた固定部と、この固定部に対してヒンジを介して回転可能に設けられた回転部とを備えていれば、任意の装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例に係るADF70の外装カバー74を開いた状態を示す概略斜視図。
【図2】外装カバー74を取り外したADF70について、原稿搬送方向に向かって右側のヒンジ機構75を拡大した概略斜視図
【図3】外装カバー74を装置本体73から取り外して裏返した状態を示す概略斜視図。
【図4】図3において原稿搬送方向に向かって左側の軸受け9周辺を拡大した部分拡大斜視図。
【図5】導電性アース部材33の外観を示す概略斜視図。
【図6】回転軸5の軸受け9への挿入を模式的に示す概略縦断面図。
【図7】従来のADF70の外観を示す概略斜視図。
【図8】従来の外装カバー74を装置本体73から取り外して裏返した状態を示す概略斜視図。
【符号の説明】
【0039】
5 回転軸
9 軸受け
13 補強ステー(金属製の部材)
14 アース配線
18 ローラ軸(金属製の部材)
24 ローラ軸(金属製の部材)
27 ローラ軸(金属製の部材)
33 導電性アース部材
70 ADF(自動原稿搬送装置)
73 装置本体(固定部)
74 外装カバー(回転部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電位面に接地された固定部と、
金属製の部材を有する回転部と、
前記固定部及び前記回転部のうち少なくともいずれか一方に設けられた電気部品と、
前記固定部及び前記回転部のうちいずれか一方に突出して設けられ、前記固定部に電気的に接続された導電性を有する回転軸と、
前記固定部及び前記回転部のうちいずれか他方に設けられ前記回転軸を回転可能に支持する軸受けと、
前記回転部が有する金属製の部材と前記回転軸とを電気的に接続するアース配線と、
を備えることを特徴とする回転部のアース構造。
【請求項2】
前記回転軸が前記固定部に、前記軸受けが前記回転部にそれぞれ設けられ、
前記アース配線の前記回転軸側の端部に、前記回転部に固定されて弾性変形した状態で前記回転軸に接触する導電性アース部材が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の回動部のアース構造。
【請求項3】
前記固定部が、画像読取装置を構成する自動原稿搬送装置の装置本体であって、前記回転部が、前記装置本体に対して開閉可能に設けられた外装カバーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転部のアース構造。
【請求項4】
前記回転部が有する金属製の部材が、前記原稿を搬送する送りローラのローラ軸であることを特徴とする請求項3に記載の回転部のアース構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−122359(P2010−122359A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294416(P2008−294416)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】