説明

回転電機の回転子

【課題】組み立てがし易く、磁気特性が良好、且つ回転電機の特性向上にともなう、回転子の高速化に耐えうる強固な保持力を有する構造を提供する。
【解決手段】鋼板を積層した回転コア20と、回転コア20に設けた永久磁石21を備える回転機の回転子8において、外周から内方に向かって窪む回転コア20に設けた永久磁石21を取り付ける磁石取付け凹溝25と、磁石取付け凹溝25に存在する永久磁石21を外周側から支える磁石支部材22を有し、回転コア21の軸方向両端側に固定コア23を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石を備える回転電機の回転子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
永久磁石を備える回転電機の回転子は、例えば、特許文献1,特許文献2に記載されている。特許文献1,2に示される回転電機の回転子は、電磁鋼板を積層した回転コアと、回転コアに形成されている磁石挿入穴に埋め込んだ永久磁石を有する構造をしている。
【0003】
この永久磁石を備えた電動機は近年、家庭電器品に多く用いられる。洗濯乾燥機では送風機の駆動用として永久磁石の電動機が使用される。送風機は、高速かつ高圧の送風が要求されるため電動機の回転数は10000〜20000r/minに達する。また、永久磁石の電動機には高効率、高出力といった高い性能と、製品本体のコンパクト化に合わせ小型化が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−219944号公報
【特許文献2】特開2008−236866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
永久磁石を備える電動機(回転電機)の回転子では、上記特許文献1,2にも示されているように回転コアに設けた挿入穴に永久磁石を埋め込む構成が多く採用されている。高速回転での遠心力に耐えるのに挿入穴に永久磁石を埋め込む構成は好適である。
【0006】
しかし、磁気特性や組み立て性では不利な面がある。回転コアの挿入穴に永久磁石を差し込む組み立では、焼結形成された永久磁石に損傷(欠け,折れ)が生じないようにしなければならない。差し込みがし易いように挿入穴を大きめにすると、永久磁石と挿入穴との間に隙間ができ、磁束の流れが悪くなる。
【0007】
また、永久磁石が埋め込まれた挿入穴は回転コアの外周のところが閉じられているので磁束漏れにより磁気特性が低下する。例えば、永久磁石として、フェライト永久磁石を用いた場合は、ネオジ永久磁石に比べて透磁率が低いため、磁束漏れの影響がより大きくなる。
【0008】
特に、洗濯乾燥機の送風機等に利用される場合、電動機を高速で回転させるため、回転子の遠心力に負けない永久磁石の保持力も求められる。
【0009】
上記の課題に鑑み、本発明は、組み立てがし易く、磁気特性が良好な回転電機の回転子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、鋼板を積層した回転コアと、前記回転コアに設けた永久磁石を備える回転機の回転子において、外周から内方に向かって窪む前記回転コアに設けた前記永久磁石を取り付ける磁石取付け凹溝と、前記磁石取付け凹溝に存在する前記永久磁石を外周側から支える磁石支部材を有し、前記回転コアの軸方向両端側に固定コアを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外周から内方に向かって窪む回転コアに設けた磁石取付け凹溝に永久磁石を取り付け、その永久磁石を磁石支部材で外周側から支えるようにしたので、組み立てがし易い。また、磁石支部材が永久磁石を介して回転コアとはつながらずに離間しているので、磁束漏れが生じず、磁気特性が良好となり、回転電機が高速で運転されても永久磁石と鋼板を積層した磁石支部材が強固に保持される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る電動機(回転電機)を組み込んだ送風機の断面図である。
【図2】本発明の実施例に係るもので、回転電機の回転子の斜視図である。
【図3】本発明の実施例に係るもので、回転電機の回転子を分解して示した展開斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
まず、図1に示す送風機について述べる。この送風機は、ドラム式洗濯乾燥機に備える乾燥装置に用いられているが、ドラム式ではない所謂縦型洗濯乾燥機や、洗濯機能を持たない衣類乾燥機にも適用できる。この種の乾燥装置では高速かつ高圧の送風が要求され、電動機の回転数は10000〜20000r/minに達する。これに加え、騒音が少なく、高効率,高出力,小型化が求められるため、永久磁石の電動機を駆動源として採用するのが多い。
【0014】
さて、送風機は電動機(回転電機)1と送風部2を有する。送風部2は、遠心ファン3と、遠心ファン3が収まるファンケーシング4を有する。ファンケーシング4は、遠心ファン3の中央に向くところに設けた吸込口5と、ファンケーシング4の外周側に設けた吐出口6を有する。遠心ファン3は電動機(回転電機)1の回転軸7に固定支持され、10000〜20000r/minの高速回転で駆動される。この高速回転により、吸込口5から吸引された空気は遠心ファン3で加圧され、吐出口6から勢いよく送風される。
【0015】
電動機(回転電機)1は、図1に示すように、回転子8と、固定子9と、ハウジング10A,10Bと、回転軸7を回転自在に支持する軸受11A,11Bを有する。ここで電動機(回転電機)1の回転子8について、図2,図3を引用して説明する。
【0016】
電動機(回転電機)1の回転子8は、電磁鋼板等の鋼板を積層した回転コア20と、永久磁石21と、電磁鋼板等の鋼板を積層した磁石支部材22と、電磁鋼板等の鋼板を用いた固定コア板23を有する。ここで、磁石支部材22は、永久磁石21を介して、回転コア20と離間している。また、回転コア20および固定コア板23は中心に軸挿入穴24を有し、この軸挿入穴24に回転軸7が圧入される。回転軸7は、外周にステーキング加工が施され、回転コア20と回転軸7との回り止めになっている。磁石支部材22は永久磁石21の固定子9への磁路となる。永久磁石21は低透磁率材を用いたフェライト永久磁石である。高透磁率材のネオジ永久磁石を用いてもよい。
【0017】
次に、図3に示すように、回転コア20は外周から内方に向かって窪む磁石取付け凹溝25を有する。この磁石取付け凹溝25はV字形状であるが、回転コア20の外周側から内側に向かって狭まる形状であれば、U字形状,円弧形状を含む種々の形状を採用できる。永久磁石21は磁石取付け凹溝25に嵌合するV字形状で、厚みは底部から先端部に亘り同じ寸法にしているが変えることも可能である。
【0018】
磁石支部材22は永久磁石21の外周側に嵌合するようにV字形状をしているが、外周は円弧形状になっている。永久磁石21は、磁石取付け凹溝25との接合面および磁石支部材22との接合面に接着剤(図示せず)を塗布してもよい。永久磁石21は磁石取付け凹溝25および磁石支部材22と隙間なく接合するので、磁束の流れが良好になる。
【0019】
磁石取付け凹溝25は、回転コア20の外周側から内側に向かって狭まる形状にしたので、永久磁石21を回転コア20の外周側から嵌め込む簡単な組み立てができる。永久磁石21の外周面側は、磁石取付け凹溝25と同様に外周側から内側に向かって狭まる形状になっているので、磁石支部材22を永久磁石21の外周側から嵌め込む簡単な組み立てができる。
【0020】
また、この組み立ては、回転コアの挿入穴に永久磁石を差し込む組み立とは違うので永久磁石の損傷(欠け,折れ)が生じる恐れがない。
【0021】
固定コア板23は、回転コア20の軸方向両端側および軸方向中間に設けられ、回転コア20,磁石支部材22,永久磁石21を軸方向に挟持する。そして、固定コア板23と磁石支部材22に設けた通穴26A,26Bに鋼の支棒体(図示せず)を挿入し、支棒体が脱落しないように固定コア板23の外側端面で支棒体をカシメる。
【0022】
このような構成により、永久磁石21は磁石支部材22によって外周から支えられ、磁石支部材22は支棒体によって固定コア板23に支えられるので、永久磁石21と磁石支部材22は回転子8が10000〜20000r/minの高速回転で回る遠心力に飛ばされずに支えられる。
【0023】
また、回転子の軸方向両端側および中間に設ける固定コア板23の枚数は、必要に応じ、任意とし、中間に設ける固定コア板23の挿入箇所、挿入数量も必要に応じ、任意とする。
【0024】
このため、磁束漏れが生じず、磁気特性が良好になり、電動機の性能を向上させるため、回転子の軸方向への寸法延長、および回転子の更なる回転数アップによる遠心力にも耐えられる構造とすることができる。
【0025】
すなわち、永久磁石21の両端外周側は特許文献1,2に記載された電動機とは異なり、積層された電磁鋼板で包まれない開放された構成であるので磁束漏れが生じず、低透磁率材を用いたフェライト永久磁石でも高速回転による遠心力にも耐える強力な保持力を備えた回転子を有する電動機を提供できる。
【0026】
また、上記実施例では、軸方向両端側および中間に設ける固定コア板の大きさや形状が回転コア,永久磁石,磁石支部材と同じにしているが、違う形状や大きさにすることも可能である。
【符号の説明】
【0027】
7 回転軸
8 回転子
20 回転コア
21 永久磁石
22 磁石支部材
23 固定コア板
24 軸挿入穴
25 磁石取付け凹溝
26A,26B 通穴
30 コア挟持部
31 磁石支部材挟持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板を積層した回転コアと、前記回転コアに設けた永久磁石を備える回転機の回転子において、外周から内方に向かって窪む前記回転コアに設けた前記永久磁石を取り付ける磁石取付け凹溝と、前記磁石取付け凹溝に存在する前記永久磁石を外周側から支える磁石支部材を有し、前記回転コアの軸方向両端側に前記回転コアを挟持する固定コアを設けたことを特徴とする回転電機の回転子。
【請求項2】
請求項1記載の回転電機の回転子において、
前記回転コアの軸方向両端側に加えて、回転子の中間にも固定コアを設けたことを特徴とする回転電機の回転子。
【請求項3】
請求項1記載の回転電機の回転子において、
前記回転コアの軸方向両端側に設けられる固定コアの間にも、別の複数の固定コアを有することを特徴とする回転電機の回転子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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