回転電機の固定子
【課題】コイル導体の外周に設けられ絶縁層と、その外周に設けられた低抵抗のコロナシールド層との境界部分に発生する部分放電に起因したコロナシールド層の消失を確実に防止し、信頼性の高い回転電機の固定子を提供する。
【解決手段】固定子コイル3が熱硬化性樹脂で含浸、硬化された状態で固定子鉄心1のスロット2内に装着された固定子であって、マイカ12aと樹脂が含浸または透過する裏打ち材12bとからなる絶縁テープ12がコイル導体5の外周に多層にわたって巻装されて絶縁層7が構成され、この絶縁層7のコロナシールド層8と対面する少なくとも最外周に位置する絶縁テープ12は、裏打ち材12bを内周側に、マイカ12aを外周側にして巻装されている。
【解決手段】固定子コイル3が熱硬化性樹脂で含浸、硬化された状態で固定子鉄心1のスロット2内に装着された固定子であって、マイカ12aと樹脂が含浸または透過する裏打ち材12bとからなる絶縁テープ12がコイル導体5の外周に多層にわたって巻装されて絶縁層7が構成され、この絶縁層7のコロナシールド層8と対面する少なくとも最外周に位置する絶縁テープ12は、裏打ち材12bを内周側に、マイカ12aを外周側にして巻装されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転電機の固定子に係り、特には高電圧回転電機の固定子において、固定子鉄心のスロット内に配置される固定子コイルの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、回転電機の固定子は、固定子鉄心のスロット内に固定子コイルが収納されて構成されている。特に、高電圧回転電機に使用される固定子は、図10に示すように、コイル導体5の外周部に対地主絶縁層(以下、単に絶縁層という)7が形成され、さらに、この絶縁層7の外周部のスロット収納箇所に対応する部分に低抵抗のコロナシールド層8が形成されている。そして、この固定子コイルをスロット内に装着するために、この固定子コイル全体にエポキシ樹脂などの熱硬化性の絶縁樹脂を真空加圧含浸し、さらに加熱処理が行われて樹脂が硬化される。
【0003】
ここに、上記の絶縁層7は、コイル導体5を固定子鉄心1から電気的に絶縁するためのもので、対地絶縁の信頼性を高める観点から、コイル導体5の周りに絶縁テープ12をその幅方向の一部が互いに重複するように螺線状に巻回する、いわゆる重ね巻きを繰り返して積層することで所定の厚さに形成されている。
【0004】
この場合に使用される絶縁テープ12は、図11に示すように、例えば耐部分放電特性に優れたマイカ12aと補強用の裏打ち材側12bとを接着剤等で一体接合してなるもので、裏打ち材12bとしては、例えばガラス繊維や高分子繊維の織布あるいは不織布が使用されている。そして、従来は、コイル導体5側から固定子鉄心1側の全層にわたって、絶縁テープ12を構成するマイカ12aが内周側に、裏打ち材12bが外周側なるように巻回することで絶縁層7を形成している。
【0005】
一方、低抵抗のコロナシールド層8は、固定子コイルをスロットに収納した際に固定子鉄心1と絶縁層7との間の電位差によって両者1,7間でコロナ放電が生じるのを防ぐためのもので、絶縁テープ12の場合と同様、絶縁層7の周りに導電性テープ14を重ね巻きして構成されている。
【0006】
この場合に使用される導電性テープ14としては、例えばガラス繊維や高分子繊維の織布あるいは不織布に、カーボンやグラファイト等の導電性材料の粉末あるいはファイバを樹脂に混入した塗料を塗布または含侵するなどして構成されている。
【0007】
ところで、上記のように、コイル導体5の外周部に絶縁層7や低抵抗のコロナシールド層8が形成された後に、固定子コイル全体に熱硬化性の絶縁樹脂を含浸した後に加熱処理を行う場合、その樹脂含浸時や硬化時において樹脂の一部が漏出し、絶縁層7の内部、あるいは絶縁層7とコロナシールド層8との境界部分に空隙が生じることがある。特に、例えば、絶縁テープ12の裏打ち材12bが目の粗い織布や不織布でできている場合、図11に示すように、織布の網目や不織布の繊維の隙間に含侵された樹脂が漏出した際に空隙v1ができ易い。また、絶縁テープ12や導電性テープ14を重ね巻きすると、各テープ12,14の幅方向の端部に生じる段差部にも空隙v2,v3が生じ易い。そして、このような空隙v1〜v3が生じると、運転中の高電圧によってそれらの空隙v1〜v3で放電が発生し易くなる。
【0008】
絶縁層7の内部に樹脂漏出に起因した空隙が生じても、その周りが耐部分放電特性に優れたマイカ12aで内外が囲まれているので、部分放電の影響は比較的軽微である。しかし、図10に示すように、絶縁層7とコロナシールド層8との境界部分に近接した箇所に空隙v1〜v3が生じると、その空隙v1〜v3で発生した放電によってコロナシールド層8が侵食されて消失し、コロナシールド効果がなくなることがある。
【0009】
特に、コロナシールド層8に直面している最外層の絶縁テープ12の裏打ち材12bの網目等にできた空隙v1で部分放電が発生すると、この空隙v1はコロナシールド層8に直接対面しているため、コロナシールド層8の導電性を示すカーボンやグラファイトなどが放電により分解、消失し、コロナシールド層8の一部に低抵抗を示さない絶縁性の部分が出現する。その結果、絶縁層7と固定子鉄心1との間でさらに大きな放電が発生し、絶縁層7が損傷を受けて最終的に絶縁破壊を起こすなどの恐れがある。さらに、空気冷却の場合にはオゾンや硝酸が発生するなどの不具合が起こる。
【0010】
その対策として、従来技術では、高分子フィルム基材の一方面側に集成マイカ層を、他方面側に半導電性層をそれぞれ貼り合わせて一体形成してなる半導電性のフィルムテープを使用し、このフィルムテープを半導電性層が外側になるようにして絶縁層の周りに重ね巻きすることにより、コロナシールド層を形成するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
【特許文献1】特開平8−237916公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1に記載されている従来技術では、半導電性のフィルムテープを構成する集成マイカ層が耐部分放電特性に優れているので、部分放電の影響を低減でき、また、高分子フィルム基材は樹脂が透過しないので、含浸樹脂を加熱硬化する際に、含浸樹脂の一部が固定子コイルから漏出して絶縁層の内部や絶縁層とコロナシールド層との境界部分に空隙が形成されるなどの不具合発生をある程度まで低減することができる。
【0013】
しかしながら、フィルムテープの構成素材である高分子フィルム基材は、樹脂が透過しないのでコロナシールド層の表面からの樹脂の含浸経路が集成マイカ層からのみに限定されることになる。このため、コロナシールド層を経由して絶縁層へ樹脂を含浸し難く、含浸不良が発生する恐れがあるとともに、含浸処理時間が徒に長くなるなどの不具合を生じる。特に、100MW以上の大容量の回転機においては、固定子コイルが大きく長くなると、これに伴って絶縁層7の厚さが厚くなるため、絶縁層の外周に高分子フィルム基材を備えたフィルムテープが巻装されていると、一層含浸不良を生じる可能性があり、信頼性のある固定子を製作することが非常に困難になる。
【0014】
上記のことは含浸樹脂が貫通できないフィルムテープであれば、特許文献1記載のような構成のものに限らず、樹脂漏れ防止のために絶縁性のフィルムテープを巻回する場合でも、フィルムテープが絶縁層の外周を覆う状態であれば、樹脂含浸不良の恐れがあり、好ましくないことは同様である。
【0015】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、良好な樹脂含浸性を確保しつつ、コロナシールド層の直下に樹脂漏れ等に起因した空隙が形成され難くして、コロナシールド層の消失を有効に防止することにより、信頼性の高い回転電機の固定子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、コイル導体と、このコイル導体の外周に設けられた絶縁層と、この絶縁層の外周に設けられた低抵抗のコロナシールド層とを有する固定子コイルを有し、この固定子コイルが熱硬化性樹脂で含浸、硬化された状態で固定子鉄心のスロット内に装着されている回転電機の固定子において、上記絶縁層は、マイカと樹脂が含浸または透過する裏打ち材とから構成された絶縁テープが上記コイル導体の外周に多層にわたって巻装されてなり、この絶縁層を構成する少なくとも最外周に位置する絶縁テープは、上記裏打ち材を内周側に、マイカを外周側にして巻装されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
この発明の回転電機における固定子は、コイル導体と、このコイル導体の外周に設けられ絶縁層と、この絶縁層の外周に設けられた低抵抗のコロナシールド層とを有する固定子コイルを有し、この固定子コイルが熱硬化性樹脂で含浸、硬化された状態で固定子鉄心のスロット内に装着されているもので、上記絶縁層は、マイカと樹脂が含浸または透過する裏打ち材とから構成された絶縁テープが上記コイル導体の外周に多層にわたって巻装されてなり、この絶縁層を構成する少なくとも最外周に位置する絶縁テープは、上記裏打ち材を内周側に、マイカを外周側にして巻装されているため、低抵抗のコロナシールド層にはマイカが直面するので、コロナシールド層の直下の空隙で発生する部分放電によってコロナシールド層が喪失するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1の回転電機の固定子において、固定子鉄心のスロットに固定子コイルを装着した状態の一部を示す斜視図、図2は固定子コイルを固定子鉄心のスロットに装着した状態の一部を示す断面図、図3はコイル導体の上に形成される絶縁層を構成するために使用される絶縁テープの断面図、図4は図3の絶縁テープを裏打ち材側から見た斜視図である。また、図5は図2の符号Aで示す部分を時計方向に90°回転して見た状態を拡大して模式的に示す断面図である。
【0019】
この実施の形態1の回転電機の固定子は、固定子鉄心1に設けられているスロット2に固定子コイル3が収納されるとともに、固定子コイル3の端部はスロット2の外部に引き出されている。この固定子コイル3は、絶縁被覆された素線導体が複数本束ねられてなるコイル導体5と、このコイル導体5の上下部にあるレーベル転位部の空間を埋める詰め物6とを有し、このコイル導体5および詰め物6の外周に絶縁層7が形成されている。
【0020】
また、固定子コイル3のスロット2内の装着箇所には、絶縁層7の外周に低抵抗のコロナシールド層8が形成されている。さらに、固定子コイル3のスロット2から突出した部分には、絶縁層7を覆いかつ低抵抗のコロナシールド層8と連接して高抵抗のコロナシールド層9が形成されている。また、絶縁層7およびコロナシールド層8,9に対してエポキシ樹脂等の熱硬化性の樹脂が含浸、硬化されている。
なお、符号10は固定子コイル3がスロット2からはみ出すのを防止するためのくさびである。
【0021】
上記の絶縁層7は、コイル導体5を固定子鉄心1から電気的に絶縁するためのもので、コイル導体5および詰め物6の周囲を覆うように、耐部分放電特性に優れた絶縁テープ12をその幅方向の一部が互いに重複するように螺線状に巻き付ける、いわゆる重ね巻きすることにより所定の厚さに形成されている。
【0022】
この場合に使用される絶縁テープ12は、例えば、マイカ粉を抄造してなるマイカ12aと、ガラス等の無機繊維、あるいは非熱収縮性のポリエステルやポリアミド等の高分子繊維の織布または不織布からなる樹脂が含浸または透過する補強用の裏打ち材12bとを有し、両者12a,12bが接着剤等で一体的に接合されてなる。
【0023】
そして、この実施の形態1の絶縁層7の特徴として、コロナシールド層8側の最外周に位置する絶縁テープ12は、マイカ12aが外周側に、裏打ち材12bが内周側となるように巻回され、それ以外の箇所の絶縁テープ12は、逆に裏打ち材12bが外周側に、マイカ12aが内周側となるように巻回されて所定の厚さになるようにしている。
【0024】
一方、上記のコロナシールド層8は、固定子コイル3をスロット2に装着した際に、絶縁層7とスロット2との間の電位差によってコロナ放電が発生するのを防止するためのもので、導電性テープ14を絶縁層7の周りに重ね巻きすることにより構成されている。
【0025】
この場合に使用される導電性テープ14は、例えば、ガラス等の無機繊維、あるいは非熱収縮性のポリエステル、ポリアミド等の高分子繊維からなる織布または不織布で形成された基材に対して、カーボンやグラファイト、鉄粉、酸化鉄などの導電性材料の粉末またはファイバを樹脂に混入してなる塗料を塗布あるいは含浸したもの、あるいは非熱収縮性の高分子繊維とカーボン繊維を一緒に漉いた混抄物からなる。なお、基材としてフィルムテープを使用するのは、樹脂の含侵性を阻害するので大容量の回転電機においては好ましくない。
【0026】
また、高抵抗のコロナシールド層9は、スロット2から引き出された固定子コイル3の低抵抗のコロナシールド層8端部の放電を防止するためのもので、従来と同様の構成のもが特別な制限なく使用することができる。
【0027】
上記構成の固定子コイル3を製造する際には、まず、絶縁被覆された素線導体を所定の長さに切断後、レーベル転位のために素線導体に曲げ加工を施して所定本数を束ねてコイル導体5を製作する。このとき、コイル導体5の上下にはレーベル転位による段差がついているため、樹脂を半硬化状態にした詰め物6をのせ、加熱成形して所定の形状に整える。
【0028】
そして、コイル導体5の周囲に絶縁テープ12を多数回(例えば、10〜15回)重ね巻きして絶縁層7を形成する。その際、絶縁テープ12は、コイル導体5側からコロナシールド層8側に向けて、裏打ち材12bが外周側に、マイカ12aが内周側となるように重ね巻きを所定回数分繰り返して所定の厚さにするが、コロナシールド層8側に位置する最外周の絶縁テープ12については、マイカ12aが外周側に、裏打ち材12bが内周側となるように巻き付ける。
【0029】
次に、固定子鉄心1のスロット2に対応する箇所に導電性テープ14を重ね巻きすることにより低抵抗のコロナシールド層8を形成する。さらに、固定子コイル3の端部には低抵抗のコロナシールド層8と連接して高抵抗のコロナシールド層9を形成する。
【0030】
こうして、コイル導体5の外周部に絶縁層7やコロナシールド層8が形成された後に、固定子コイル3を含浸タンクに入れて、エポキシ樹脂等の熱硬化性の樹脂を真空加圧して含浸する。続いて、コロナシールド層8および絶縁層7に十分に樹脂が含浸してから含浸タンクから取り出し、次に乾燥炉に入れて全体を加熱して硬化させる。引き続いて、樹脂が含浸、硬化された固定子コイル3のコロナシールド層8の形成箇所を固定子鉄心1のスロット2内に収納する。
【0031】
上記のように、固定子コイル3全体に熱硬化性の絶縁樹脂を含浸後、加熱処理を行う際、含浸樹脂は粘度が低下するため流動しやすくなり、含浸樹脂の一部が漏出する恐れがある。この漏出は固定子コイル3の表面付近で発生し易く、絶縁テープ12の裏打ち材12bが目の粗い織布や不織布でできている場合には、その織布の網目や不織布の繊維の隙間に空隙ができ易い。
【0032】
しかし、この実施の形態1では、図5に示したように、絶縁層7の最外周の絶縁テープ12については、マイカ12aを外周側に、裏打ち材12bを内周側にして巻装しているので、運転中に高電圧が加わっても空隙による放電が発生し難くなり、コロナシールド層8の消失現象を抑制することができる。
【0033】
すなわち、絶縁層7の最外周に位置する絶縁テープ12の裏打ち材12bとマイカ12aとを通常とは逆に、裏打ち材12bを内周側に、マイカ12a層を外周側に配置して巻装すれば、コロナシールド層8と直接面しているのは裏打ち材12bではなくマイカ12aであるので、コロナシールド層8は、裏打ち材12bの織布の網目や不織布の繊維とは直接に接しない。したがって、含浸樹脂の漏出によって裏打ち材12bの織布の網目や不織布の繊維の隙間にできる可能性がある空隙と接することがない。また、マイカ12aは微細なマイカ箔片により形成されているので、裏打ち材12b側に比べてはるかに平滑であり、裏打ち材12bの網目のような比較的大きな空隙もなく、また樹脂の保持性も良いため空隙を形成し難い。
【0034】
このように、この実施の形態1によれば、絶縁層7の最外周の絶縁テープ12の裏打ち材12bに図11に示したような空隙v1が形成されたとしても、その空隙v1はコロナシールド層8に直接に上下で接することはなく、空隙v1とコロナシールド層8との間には常にマイカ12aが介在した状態になる。このため、空隙v1で発生する部分放電はマイカ12aが遮り、コロナシールド層8の消失現象が抑制される。さらに、絶縁層7を構成するための絶縁テープ12の層数は、従来の構成と変わらない層数を維持できるため、短時間破壊電圧や長期荷電寿命特性も何ら問題は生じない。
【0035】
なお、この実施の形態1では、コロナシールド層8側の最外周に位置する絶縁テープ12のみをマイカ12aが外周側に、裏打ち材12bが内周側となるように巻き付け、それ以外の箇所の絶縁テープ12は裏打ち材12bが外周側に、マイカ12aが内周側となるように巻き付けている。このようにすれば、絶縁層7を構成する最内周の絶縁テープ12は、マイカ12aがコイル導体5に直接接するので、コイル導体5と絶縁層7との間に生じる放電も抑制できるために一層好ましいが、絶縁層7の全厚さ方向にわたってマイカ12aが外周側に、裏打ち材12bが内周側となるように絶縁テープ12を巻き付けることも可能である。
【0036】
実施の形態2.
図6は本発明の実施の形態2における回転電機の固定子の要部を模式的に示す断面図であり、図1ないし図5に示した実施の形態1と対応する構成部分には同一の符号を付す。
【0037】
この実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、絶縁層7を構成する絶縁テープ12において、その最外周に巻回された絶縁テープ12は、マイカ12aを外周側に、裏打ち材12bを内周側にして巻き付けられているが、この実施の形態2の特徴として、この最外周の絶縁テープ12は、重ね巻きするのではなく、幅方向の各端面同士が互いに対面するように突き合わせ状態で螺線状に巻回する、いわゆる突き合わせ巻きされていることである。
その他の構成は、上記の実施の形態1と同様であるから、ここでは詳しい説明は省略する。
【0038】
この実施の形態2においても、上記実施の形態1と同様に、最外周の絶縁テープ12においてコロナシールド層8と直接面するのはマイカ12aであるため、裏打ち材12b側で主に生じる空隙に起因した部分放電はマイカ12aが遮り、コロナシールド層8の消失現象が抑制される。
【0039】
さらに、図10に示した従来技術では、絶縁テープ12を重ね巻きして絶縁層7を形成しているので、絶縁テープ12の幅方向の端部に生じる段差部にも空隙v2が生じている。これに対して、この実施の形態2では、最外周の絶縁テープ12を突き合わせ巻きしているため、段差部に起因した空隙v2は形成されず、したがって、このような空隙v2による部分放電が発生しなくなり、コロナシールド層8の消失現象を抑制することができる。
【0040】
なお、工作性を考慮して100〜500mm程度の比較的幅の広い絶縁テープ12を用いる場合にも、この実施の形態2のように、絶縁テープ12の幅方向端部を突き合わせた状態で巻き付ければ、段差部が形成される箇所がより一層少なくなるので、従来よりも空隙の発生を少なくすることができる。
【0041】
実施の形態3.
図7は本発明の実施の形態3における回転電機の固定子の要部を模式的に示す断面図であり、図1ないし図5に示した実施の形態1と対応する構成部分には同一の符号を付す。
【0042】
この実施の形態3の特徴は、最外周の絶縁テープ12として、通常巻回している20〜40mm程度の幅の狭いものを使用するのではなく、100mm以上の幅の広い絶縁テープ12を使用している。そして、この絶縁テープ12をコイル導体5の軸方向に沿って順次連続して配置するとともに、各絶縁テープ12については、マイカ12aを外周側に、裏打ち材12bを内周側にし、かつ、コイル導体5の軸方向と直交する周方向に沿って、1周巻く間に軸方向の位置がずれないで、周方向の端部が所定の幅だけ重なり円筒を形成するように巻き付けられている。なお、このように巻くことを海苔巻状とも言う。
その他の構成は、上記の実施の形態1と同様であるから、ここでは詳しい説明は省略する。
【0043】
この実施の形態3においても、上記実施の形態1と同様に、最外周の絶縁テープ12においてコロナシールド層8と直接面するのはマイカ12aであるため、裏打ち材12b側で主に生じる空隙に起因した部分放電はマイカ12aが遮り、コロナシールド層8の消失現象が抑制される。
【0044】
さらに、この実施の形態3では、各々の最外周の絶縁テープ12は、コイル導体5の軸方向に沿う幅分の長さの間には軸方向の段差部が1箇所あるだけであり、絶縁テープ12を重ね巻きする場合に比べて段差部が形成される箇所が一層少なくなる。このため、段差部にできる空隙をさらに削減することができる。特に、スロット2内に収納される固定子コイル3の直線部全長にわたる幅を有する1枚の絶縁テープ12を用いれば、絶縁層7の最外周の絶縁テープ12の段差部を完全に無くすことができ、空隙を削減できる。このため、コロナシールド層8の消失が発生しない信頼性の高い固定子コイル3を提供することが可能となる。
【0045】
実施の形態4.
図8は本発明の実施の形態4における回転電機の固定子の要部を模式的に示す断面図であり、図6に示した実施の形態2と対応する構成部分には同一の符号を付す。
【0046】
この実施の形態4では、実施の形態2の場合と同様に、絶縁層7を形成する最外周の絶縁テープ12として、マイカ12aを外周側に、裏打ち材12bを内周側にして突き合わせ巻きされているが、さらにこの実施の形態4の特徴として、この絶縁層7の外周に設けられているコロナシールド層8についても、その樹脂が含浸または透過する導電性テープ14の幅方向の各端面同士が互いに対面するように突き合わせ巻きされていることである。
なお、その他の構成は上記実施の形態2と同様であるから、ここでは詳しい説明は省略する。
【0047】
この実施の形態4においても、上記実施の形態2と同様に、最外周の絶縁テープ12においてコロナシールド層8と直接面するのはマイカ12aであるため、裏打ち材12b側で主に生じる空隙に起因した部分放電はマイカ12aが遮り、コロナシールド層8の消失現象が抑制される。
【0048】
さらに、この実施の形態4では、コロナシールド層8を形成する導電性テープ14も突き合わせ巻きしているので、図10に示した従来技術のように、導電性テープ14の幅方向の端部に生じる段差部による空隙v3は形成されないので、このような空隙v3に起因した部分放電が発生しなくなる。したがって、コロナシールド層8の消失現象を一層抑制することができ、信頼性の高い固定子コイル3を提供することができる。
【0049】
なお、この実施の形態4では、実施の形態2に示した絶縁層7の構成を前提として説明したが、これに限らず、実施の形態3の絶縁層7の構成を前提として、コロナシールド層8の導電性テープ14を突き合わせ巻きした構成とすることも可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0050】
実施の形態5.
図9は本発明の実施の形態5における回転電機の固定子の要部を模式的に示す断面図であり、図8に示した実施の形態4と対応する構成部分には同一の符号を付す。
【0051】
この実施の形態5では、実施の形態4と同様に、絶縁層7を構成する絶縁テープ12において、その最外周の絶縁テープ12は、マイカ12aを外周側に、裏打ち材12bを内周側にして突き合わせ巻きされ、この絶縁層7の外周にコロナシールド層8を形成する導電性テープ14も突き合わせ巻きされているが、さらに、この実施の形態5の特徴として、このコロナシールド層8の外周に、樹脂が含浸または透過する導電性テープ14を重ね巻きして第2のコロナシールド層16が設けられていることである。
その他の構成は、上記の実施の形態4と同様であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0052】
この実施の形態5においても、上記実施の形態4と同様に、絶縁層7を形成する最外周の絶縁テープ12においてコロナシールド層8と直接面するのはマイカ12aであるため、裏打ち材12b側で主に生じる空隙に起因した部分放電はマイカ12aが遮り、コロナシールド層8の消失現象が抑制される。また、最外周の絶縁テープ12は突き合わせ巻きされているため、絶縁テープ12の幅方向の端部に生じる段差部による空隙も形成されないので、この空隙に起因した部分放電も発生しない。さらに、コロナシールド層8を形成する導電性テープ14も突き合わせ巻きされているため、導電性テープ14の幅方向の端部に生じる段差部による空隙も形成されないので、この空隙に起因する部分放電も発生しない。
【0053】
しかも、この実施の形態5では、コロナシールド層8が導電性テープ14を突き合わせ巻きして構成されているために、互いの付き合せ端部の電気的接続が不十分になる恐れがあるが、その場合でも、その外周に設けられている第2のコロナシールド層16は、導電性テープ14を重ね巻きして形成されているので、その内周側のコロナシールド層8の導電性テープは、コイル導体5の軸方向に沿って第2のコロナシールド層16を経由して電気的に接続される。このため、電気特性である誘電正接の悪化を招くことはなく、したがって、部分放電が一層抑制される上に、誘電正接の悪化を防ぐことができるため、信頼性の高い固定子を提供することが可能となる。
【0054】
なお、この実施の形態5では、実施の形態4(図8)に示した構成を前提として説明したが、絶縁層7を形成する最外周の絶縁テープ12については、絶縁テープ12を突き合わせ巻きする代わりに、実施の形態3と同様に、絶縁テープ12を海苔巻状に巻き付けた構成とすることも可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0055】
また、本発明は上記の実施の形態1〜5の構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において各種の変形を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態1の回転電機の固定子において、固定子鉄心のスロットに固定子コイルを装着した状態の一部を示す斜視図である。
【図2】同固定子において、固定子コイルを固定子鉄心のスロットに装着した状態の一部を示す断面図である。
【図3】コイル導体の上に形成される絶縁層を構成するために使用される絶縁テープの断面図である。
【図4】図3の絶縁テープを裏打ち材側から見た斜視図である。
【図5】図2の符号Aで示す部分を時計方向に90°回転して見た状態を拡大して模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2における回転電機の固定子の要部を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態3における回転電機の固定子の要部を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態4における回転電機の固定子の要部を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態5における回転電機の固定子の要部を模式的に示す断面図である。
【図10】従来の回転電機の固定子の要部を模式的に示す断面図である。
【図11】従来の回転電機の固定子において、固定子コイルの絶縁層を構成するために使用される絶縁テープを裏打ち材側から見た場合の空隙発生状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1 固定子鉄心、2 スロット、3 固定子コイル、5 コイル導体、7 絶縁層、
8 低抵抗のコロナシールド層、12 絶縁テープ、12a マイカ、
12b 裏打ち材、14 導電性テープ、16 第2のコロナシールド層。
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転電機の固定子に係り、特には高電圧回転電機の固定子において、固定子鉄心のスロット内に配置される固定子コイルの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、回転電機の固定子は、固定子鉄心のスロット内に固定子コイルが収納されて構成されている。特に、高電圧回転電機に使用される固定子は、図10に示すように、コイル導体5の外周部に対地主絶縁層(以下、単に絶縁層という)7が形成され、さらに、この絶縁層7の外周部のスロット収納箇所に対応する部分に低抵抗のコロナシールド層8が形成されている。そして、この固定子コイルをスロット内に装着するために、この固定子コイル全体にエポキシ樹脂などの熱硬化性の絶縁樹脂を真空加圧含浸し、さらに加熱処理が行われて樹脂が硬化される。
【0003】
ここに、上記の絶縁層7は、コイル導体5を固定子鉄心1から電気的に絶縁するためのもので、対地絶縁の信頼性を高める観点から、コイル導体5の周りに絶縁テープ12をその幅方向の一部が互いに重複するように螺線状に巻回する、いわゆる重ね巻きを繰り返して積層することで所定の厚さに形成されている。
【0004】
この場合に使用される絶縁テープ12は、図11に示すように、例えば耐部分放電特性に優れたマイカ12aと補強用の裏打ち材側12bとを接着剤等で一体接合してなるもので、裏打ち材12bとしては、例えばガラス繊維や高分子繊維の織布あるいは不織布が使用されている。そして、従来は、コイル導体5側から固定子鉄心1側の全層にわたって、絶縁テープ12を構成するマイカ12aが内周側に、裏打ち材12bが外周側なるように巻回することで絶縁層7を形成している。
【0005】
一方、低抵抗のコロナシールド層8は、固定子コイルをスロットに収納した際に固定子鉄心1と絶縁層7との間の電位差によって両者1,7間でコロナ放電が生じるのを防ぐためのもので、絶縁テープ12の場合と同様、絶縁層7の周りに導電性テープ14を重ね巻きして構成されている。
【0006】
この場合に使用される導電性テープ14としては、例えばガラス繊維や高分子繊維の織布あるいは不織布に、カーボンやグラファイト等の導電性材料の粉末あるいはファイバを樹脂に混入した塗料を塗布または含侵するなどして構成されている。
【0007】
ところで、上記のように、コイル導体5の外周部に絶縁層7や低抵抗のコロナシールド層8が形成された後に、固定子コイル全体に熱硬化性の絶縁樹脂を含浸した後に加熱処理を行う場合、その樹脂含浸時や硬化時において樹脂の一部が漏出し、絶縁層7の内部、あるいは絶縁層7とコロナシールド層8との境界部分に空隙が生じることがある。特に、例えば、絶縁テープ12の裏打ち材12bが目の粗い織布や不織布でできている場合、図11に示すように、織布の網目や不織布の繊維の隙間に含侵された樹脂が漏出した際に空隙v1ができ易い。また、絶縁テープ12や導電性テープ14を重ね巻きすると、各テープ12,14の幅方向の端部に生じる段差部にも空隙v2,v3が生じ易い。そして、このような空隙v1〜v3が生じると、運転中の高電圧によってそれらの空隙v1〜v3で放電が発生し易くなる。
【0008】
絶縁層7の内部に樹脂漏出に起因した空隙が生じても、その周りが耐部分放電特性に優れたマイカ12aで内外が囲まれているので、部分放電の影響は比較的軽微である。しかし、図10に示すように、絶縁層7とコロナシールド層8との境界部分に近接した箇所に空隙v1〜v3が生じると、その空隙v1〜v3で発生した放電によってコロナシールド層8が侵食されて消失し、コロナシールド効果がなくなることがある。
【0009】
特に、コロナシールド層8に直面している最外層の絶縁テープ12の裏打ち材12bの網目等にできた空隙v1で部分放電が発生すると、この空隙v1はコロナシールド層8に直接対面しているため、コロナシールド層8の導電性を示すカーボンやグラファイトなどが放電により分解、消失し、コロナシールド層8の一部に低抵抗を示さない絶縁性の部分が出現する。その結果、絶縁層7と固定子鉄心1との間でさらに大きな放電が発生し、絶縁層7が損傷を受けて最終的に絶縁破壊を起こすなどの恐れがある。さらに、空気冷却の場合にはオゾンや硝酸が発生するなどの不具合が起こる。
【0010】
その対策として、従来技術では、高分子フィルム基材の一方面側に集成マイカ層を、他方面側に半導電性層をそれぞれ貼り合わせて一体形成してなる半導電性のフィルムテープを使用し、このフィルムテープを半導電性層が外側になるようにして絶縁層の周りに重ね巻きすることにより、コロナシールド層を形成するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
【特許文献1】特開平8−237916公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1に記載されている従来技術では、半導電性のフィルムテープを構成する集成マイカ層が耐部分放電特性に優れているので、部分放電の影響を低減でき、また、高分子フィルム基材は樹脂が透過しないので、含浸樹脂を加熱硬化する際に、含浸樹脂の一部が固定子コイルから漏出して絶縁層の内部や絶縁層とコロナシールド層との境界部分に空隙が形成されるなどの不具合発生をある程度まで低減することができる。
【0013】
しかしながら、フィルムテープの構成素材である高分子フィルム基材は、樹脂が透過しないのでコロナシールド層の表面からの樹脂の含浸経路が集成マイカ層からのみに限定されることになる。このため、コロナシールド層を経由して絶縁層へ樹脂を含浸し難く、含浸不良が発生する恐れがあるとともに、含浸処理時間が徒に長くなるなどの不具合を生じる。特に、100MW以上の大容量の回転機においては、固定子コイルが大きく長くなると、これに伴って絶縁層7の厚さが厚くなるため、絶縁層の外周に高分子フィルム基材を備えたフィルムテープが巻装されていると、一層含浸不良を生じる可能性があり、信頼性のある固定子を製作することが非常に困難になる。
【0014】
上記のことは含浸樹脂が貫通できないフィルムテープであれば、特許文献1記載のような構成のものに限らず、樹脂漏れ防止のために絶縁性のフィルムテープを巻回する場合でも、フィルムテープが絶縁層の外周を覆う状態であれば、樹脂含浸不良の恐れがあり、好ましくないことは同様である。
【0015】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、良好な樹脂含浸性を確保しつつ、コロナシールド層の直下に樹脂漏れ等に起因した空隙が形成され難くして、コロナシールド層の消失を有効に防止することにより、信頼性の高い回転電機の固定子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、コイル導体と、このコイル導体の外周に設けられた絶縁層と、この絶縁層の外周に設けられた低抵抗のコロナシールド層とを有する固定子コイルを有し、この固定子コイルが熱硬化性樹脂で含浸、硬化された状態で固定子鉄心のスロット内に装着されている回転電機の固定子において、上記絶縁層は、マイカと樹脂が含浸または透過する裏打ち材とから構成された絶縁テープが上記コイル導体の外周に多層にわたって巻装されてなり、この絶縁層を構成する少なくとも最外周に位置する絶縁テープは、上記裏打ち材を内周側に、マイカを外周側にして巻装されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
この発明の回転電機における固定子は、コイル導体と、このコイル導体の外周に設けられ絶縁層と、この絶縁層の外周に設けられた低抵抗のコロナシールド層とを有する固定子コイルを有し、この固定子コイルが熱硬化性樹脂で含浸、硬化された状態で固定子鉄心のスロット内に装着されているもので、上記絶縁層は、マイカと樹脂が含浸または透過する裏打ち材とから構成された絶縁テープが上記コイル導体の外周に多層にわたって巻装されてなり、この絶縁層を構成する少なくとも最外周に位置する絶縁テープは、上記裏打ち材を内周側に、マイカを外周側にして巻装されているため、低抵抗のコロナシールド層にはマイカが直面するので、コロナシールド層の直下の空隙で発生する部分放電によってコロナシールド層が喪失するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1の回転電機の固定子において、固定子鉄心のスロットに固定子コイルを装着した状態の一部を示す斜視図、図2は固定子コイルを固定子鉄心のスロットに装着した状態の一部を示す断面図、図3はコイル導体の上に形成される絶縁層を構成するために使用される絶縁テープの断面図、図4は図3の絶縁テープを裏打ち材側から見た斜視図である。また、図5は図2の符号Aで示す部分を時計方向に90°回転して見た状態を拡大して模式的に示す断面図である。
【0019】
この実施の形態1の回転電機の固定子は、固定子鉄心1に設けられているスロット2に固定子コイル3が収納されるとともに、固定子コイル3の端部はスロット2の外部に引き出されている。この固定子コイル3は、絶縁被覆された素線導体が複数本束ねられてなるコイル導体5と、このコイル導体5の上下部にあるレーベル転位部の空間を埋める詰め物6とを有し、このコイル導体5および詰め物6の外周に絶縁層7が形成されている。
【0020】
また、固定子コイル3のスロット2内の装着箇所には、絶縁層7の外周に低抵抗のコロナシールド層8が形成されている。さらに、固定子コイル3のスロット2から突出した部分には、絶縁層7を覆いかつ低抵抗のコロナシールド層8と連接して高抵抗のコロナシールド層9が形成されている。また、絶縁層7およびコロナシールド層8,9に対してエポキシ樹脂等の熱硬化性の樹脂が含浸、硬化されている。
なお、符号10は固定子コイル3がスロット2からはみ出すのを防止するためのくさびである。
【0021】
上記の絶縁層7は、コイル導体5を固定子鉄心1から電気的に絶縁するためのもので、コイル導体5および詰め物6の周囲を覆うように、耐部分放電特性に優れた絶縁テープ12をその幅方向の一部が互いに重複するように螺線状に巻き付ける、いわゆる重ね巻きすることにより所定の厚さに形成されている。
【0022】
この場合に使用される絶縁テープ12は、例えば、マイカ粉を抄造してなるマイカ12aと、ガラス等の無機繊維、あるいは非熱収縮性のポリエステルやポリアミド等の高分子繊維の織布または不織布からなる樹脂が含浸または透過する補強用の裏打ち材12bとを有し、両者12a,12bが接着剤等で一体的に接合されてなる。
【0023】
そして、この実施の形態1の絶縁層7の特徴として、コロナシールド層8側の最外周に位置する絶縁テープ12は、マイカ12aが外周側に、裏打ち材12bが内周側となるように巻回され、それ以外の箇所の絶縁テープ12は、逆に裏打ち材12bが外周側に、マイカ12aが内周側となるように巻回されて所定の厚さになるようにしている。
【0024】
一方、上記のコロナシールド層8は、固定子コイル3をスロット2に装着した際に、絶縁層7とスロット2との間の電位差によってコロナ放電が発生するのを防止するためのもので、導電性テープ14を絶縁層7の周りに重ね巻きすることにより構成されている。
【0025】
この場合に使用される導電性テープ14は、例えば、ガラス等の無機繊維、あるいは非熱収縮性のポリエステル、ポリアミド等の高分子繊維からなる織布または不織布で形成された基材に対して、カーボンやグラファイト、鉄粉、酸化鉄などの導電性材料の粉末またはファイバを樹脂に混入してなる塗料を塗布あるいは含浸したもの、あるいは非熱収縮性の高分子繊維とカーボン繊維を一緒に漉いた混抄物からなる。なお、基材としてフィルムテープを使用するのは、樹脂の含侵性を阻害するので大容量の回転電機においては好ましくない。
【0026】
また、高抵抗のコロナシールド層9は、スロット2から引き出された固定子コイル3の低抵抗のコロナシールド層8端部の放電を防止するためのもので、従来と同様の構成のもが特別な制限なく使用することができる。
【0027】
上記構成の固定子コイル3を製造する際には、まず、絶縁被覆された素線導体を所定の長さに切断後、レーベル転位のために素線導体に曲げ加工を施して所定本数を束ねてコイル導体5を製作する。このとき、コイル導体5の上下にはレーベル転位による段差がついているため、樹脂を半硬化状態にした詰め物6をのせ、加熱成形して所定の形状に整える。
【0028】
そして、コイル導体5の周囲に絶縁テープ12を多数回(例えば、10〜15回)重ね巻きして絶縁層7を形成する。その際、絶縁テープ12は、コイル導体5側からコロナシールド層8側に向けて、裏打ち材12bが外周側に、マイカ12aが内周側となるように重ね巻きを所定回数分繰り返して所定の厚さにするが、コロナシールド層8側に位置する最外周の絶縁テープ12については、マイカ12aが外周側に、裏打ち材12bが内周側となるように巻き付ける。
【0029】
次に、固定子鉄心1のスロット2に対応する箇所に導電性テープ14を重ね巻きすることにより低抵抗のコロナシールド層8を形成する。さらに、固定子コイル3の端部には低抵抗のコロナシールド層8と連接して高抵抗のコロナシールド層9を形成する。
【0030】
こうして、コイル導体5の外周部に絶縁層7やコロナシールド層8が形成された後に、固定子コイル3を含浸タンクに入れて、エポキシ樹脂等の熱硬化性の樹脂を真空加圧して含浸する。続いて、コロナシールド層8および絶縁層7に十分に樹脂が含浸してから含浸タンクから取り出し、次に乾燥炉に入れて全体を加熱して硬化させる。引き続いて、樹脂が含浸、硬化された固定子コイル3のコロナシールド層8の形成箇所を固定子鉄心1のスロット2内に収納する。
【0031】
上記のように、固定子コイル3全体に熱硬化性の絶縁樹脂を含浸後、加熱処理を行う際、含浸樹脂は粘度が低下するため流動しやすくなり、含浸樹脂の一部が漏出する恐れがある。この漏出は固定子コイル3の表面付近で発生し易く、絶縁テープ12の裏打ち材12bが目の粗い織布や不織布でできている場合には、その織布の網目や不織布の繊維の隙間に空隙ができ易い。
【0032】
しかし、この実施の形態1では、図5に示したように、絶縁層7の最外周の絶縁テープ12については、マイカ12aを外周側に、裏打ち材12bを内周側にして巻装しているので、運転中に高電圧が加わっても空隙による放電が発生し難くなり、コロナシールド層8の消失現象を抑制することができる。
【0033】
すなわち、絶縁層7の最外周に位置する絶縁テープ12の裏打ち材12bとマイカ12aとを通常とは逆に、裏打ち材12bを内周側に、マイカ12a層を外周側に配置して巻装すれば、コロナシールド層8と直接面しているのは裏打ち材12bではなくマイカ12aであるので、コロナシールド層8は、裏打ち材12bの織布の網目や不織布の繊維とは直接に接しない。したがって、含浸樹脂の漏出によって裏打ち材12bの織布の網目や不織布の繊維の隙間にできる可能性がある空隙と接することがない。また、マイカ12aは微細なマイカ箔片により形成されているので、裏打ち材12b側に比べてはるかに平滑であり、裏打ち材12bの網目のような比較的大きな空隙もなく、また樹脂の保持性も良いため空隙を形成し難い。
【0034】
このように、この実施の形態1によれば、絶縁層7の最外周の絶縁テープ12の裏打ち材12bに図11に示したような空隙v1が形成されたとしても、その空隙v1はコロナシールド層8に直接に上下で接することはなく、空隙v1とコロナシールド層8との間には常にマイカ12aが介在した状態になる。このため、空隙v1で発生する部分放電はマイカ12aが遮り、コロナシールド層8の消失現象が抑制される。さらに、絶縁層7を構成するための絶縁テープ12の層数は、従来の構成と変わらない層数を維持できるため、短時間破壊電圧や長期荷電寿命特性も何ら問題は生じない。
【0035】
なお、この実施の形態1では、コロナシールド層8側の最外周に位置する絶縁テープ12のみをマイカ12aが外周側に、裏打ち材12bが内周側となるように巻き付け、それ以外の箇所の絶縁テープ12は裏打ち材12bが外周側に、マイカ12aが内周側となるように巻き付けている。このようにすれば、絶縁層7を構成する最内周の絶縁テープ12は、マイカ12aがコイル導体5に直接接するので、コイル導体5と絶縁層7との間に生じる放電も抑制できるために一層好ましいが、絶縁層7の全厚さ方向にわたってマイカ12aが外周側に、裏打ち材12bが内周側となるように絶縁テープ12を巻き付けることも可能である。
【0036】
実施の形態2.
図6は本発明の実施の形態2における回転電機の固定子の要部を模式的に示す断面図であり、図1ないし図5に示した実施の形態1と対応する構成部分には同一の符号を付す。
【0037】
この実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、絶縁層7を構成する絶縁テープ12において、その最外周に巻回された絶縁テープ12は、マイカ12aを外周側に、裏打ち材12bを内周側にして巻き付けられているが、この実施の形態2の特徴として、この最外周の絶縁テープ12は、重ね巻きするのではなく、幅方向の各端面同士が互いに対面するように突き合わせ状態で螺線状に巻回する、いわゆる突き合わせ巻きされていることである。
その他の構成は、上記の実施の形態1と同様であるから、ここでは詳しい説明は省略する。
【0038】
この実施の形態2においても、上記実施の形態1と同様に、最外周の絶縁テープ12においてコロナシールド層8と直接面するのはマイカ12aであるため、裏打ち材12b側で主に生じる空隙に起因した部分放電はマイカ12aが遮り、コロナシールド層8の消失現象が抑制される。
【0039】
さらに、図10に示した従来技術では、絶縁テープ12を重ね巻きして絶縁層7を形成しているので、絶縁テープ12の幅方向の端部に生じる段差部にも空隙v2が生じている。これに対して、この実施の形態2では、最外周の絶縁テープ12を突き合わせ巻きしているため、段差部に起因した空隙v2は形成されず、したがって、このような空隙v2による部分放電が発生しなくなり、コロナシールド層8の消失現象を抑制することができる。
【0040】
なお、工作性を考慮して100〜500mm程度の比較的幅の広い絶縁テープ12を用いる場合にも、この実施の形態2のように、絶縁テープ12の幅方向端部を突き合わせた状態で巻き付ければ、段差部が形成される箇所がより一層少なくなるので、従来よりも空隙の発生を少なくすることができる。
【0041】
実施の形態3.
図7は本発明の実施の形態3における回転電機の固定子の要部を模式的に示す断面図であり、図1ないし図5に示した実施の形態1と対応する構成部分には同一の符号を付す。
【0042】
この実施の形態3の特徴は、最外周の絶縁テープ12として、通常巻回している20〜40mm程度の幅の狭いものを使用するのではなく、100mm以上の幅の広い絶縁テープ12を使用している。そして、この絶縁テープ12をコイル導体5の軸方向に沿って順次連続して配置するとともに、各絶縁テープ12については、マイカ12aを外周側に、裏打ち材12bを内周側にし、かつ、コイル導体5の軸方向と直交する周方向に沿って、1周巻く間に軸方向の位置がずれないで、周方向の端部が所定の幅だけ重なり円筒を形成するように巻き付けられている。なお、このように巻くことを海苔巻状とも言う。
その他の構成は、上記の実施の形態1と同様であるから、ここでは詳しい説明は省略する。
【0043】
この実施の形態3においても、上記実施の形態1と同様に、最外周の絶縁テープ12においてコロナシールド層8と直接面するのはマイカ12aであるため、裏打ち材12b側で主に生じる空隙に起因した部分放電はマイカ12aが遮り、コロナシールド層8の消失現象が抑制される。
【0044】
さらに、この実施の形態3では、各々の最外周の絶縁テープ12は、コイル導体5の軸方向に沿う幅分の長さの間には軸方向の段差部が1箇所あるだけであり、絶縁テープ12を重ね巻きする場合に比べて段差部が形成される箇所が一層少なくなる。このため、段差部にできる空隙をさらに削減することができる。特に、スロット2内に収納される固定子コイル3の直線部全長にわたる幅を有する1枚の絶縁テープ12を用いれば、絶縁層7の最外周の絶縁テープ12の段差部を完全に無くすことができ、空隙を削減できる。このため、コロナシールド層8の消失が発生しない信頼性の高い固定子コイル3を提供することが可能となる。
【0045】
実施の形態4.
図8は本発明の実施の形態4における回転電機の固定子の要部を模式的に示す断面図であり、図6に示した実施の形態2と対応する構成部分には同一の符号を付す。
【0046】
この実施の形態4では、実施の形態2の場合と同様に、絶縁層7を形成する最外周の絶縁テープ12として、マイカ12aを外周側に、裏打ち材12bを内周側にして突き合わせ巻きされているが、さらにこの実施の形態4の特徴として、この絶縁層7の外周に設けられているコロナシールド層8についても、その樹脂が含浸または透過する導電性テープ14の幅方向の各端面同士が互いに対面するように突き合わせ巻きされていることである。
なお、その他の構成は上記実施の形態2と同様であるから、ここでは詳しい説明は省略する。
【0047】
この実施の形態4においても、上記実施の形態2と同様に、最外周の絶縁テープ12においてコロナシールド層8と直接面するのはマイカ12aであるため、裏打ち材12b側で主に生じる空隙に起因した部分放電はマイカ12aが遮り、コロナシールド層8の消失現象が抑制される。
【0048】
さらに、この実施の形態4では、コロナシールド層8を形成する導電性テープ14も突き合わせ巻きしているので、図10に示した従来技術のように、導電性テープ14の幅方向の端部に生じる段差部による空隙v3は形成されないので、このような空隙v3に起因した部分放電が発生しなくなる。したがって、コロナシールド層8の消失現象を一層抑制することができ、信頼性の高い固定子コイル3を提供することができる。
【0049】
なお、この実施の形態4では、実施の形態2に示した絶縁層7の構成を前提として説明したが、これに限らず、実施の形態3の絶縁層7の構成を前提として、コロナシールド層8の導電性テープ14を突き合わせ巻きした構成とすることも可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0050】
実施の形態5.
図9は本発明の実施の形態5における回転電機の固定子の要部を模式的に示す断面図であり、図8に示した実施の形態4と対応する構成部分には同一の符号を付す。
【0051】
この実施の形態5では、実施の形態4と同様に、絶縁層7を構成する絶縁テープ12において、その最外周の絶縁テープ12は、マイカ12aを外周側に、裏打ち材12bを内周側にして突き合わせ巻きされ、この絶縁層7の外周にコロナシールド層8を形成する導電性テープ14も突き合わせ巻きされているが、さらに、この実施の形態5の特徴として、このコロナシールド層8の外周に、樹脂が含浸または透過する導電性テープ14を重ね巻きして第2のコロナシールド層16が設けられていることである。
その他の構成は、上記の実施の形態4と同様であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0052】
この実施の形態5においても、上記実施の形態4と同様に、絶縁層7を形成する最外周の絶縁テープ12においてコロナシールド層8と直接面するのはマイカ12aであるため、裏打ち材12b側で主に生じる空隙に起因した部分放電はマイカ12aが遮り、コロナシールド層8の消失現象が抑制される。また、最外周の絶縁テープ12は突き合わせ巻きされているため、絶縁テープ12の幅方向の端部に生じる段差部による空隙も形成されないので、この空隙に起因した部分放電も発生しない。さらに、コロナシールド層8を形成する導電性テープ14も突き合わせ巻きされているため、導電性テープ14の幅方向の端部に生じる段差部による空隙も形成されないので、この空隙に起因する部分放電も発生しない。
【0053】
しかも、この実施の形態5では、コロナシールド層8が導電性テープ14を突き合わせ巻きして構成されているために、互いの付き合せ端部の電気的接続が不十分になる恐れがあるが、その場合でも、その外周に設けられている第2のコロナシールド層16は、導電性テープ14を重ね巻きして形成されているので、その内周側のコロナシールド層8の導電性テープは、コイル導体5の軸方向に沿って第2のコロナシールド層16を経由して電気的に接続される。このため、電気特性である誘電正接の悪化を招くことはなく、したがって、部分放電が一層抑制される上に、誘電正接の悪化を防ぐことができるため、信頼性の高い固定子を提供することが可能となる。
【0054】
なお、この実施の形態5では、実施の形態4(図8)に示した構成を前提として説明したが、絶縁層7を形成する最外周の絶縁テープ12については、絶縁テープ12を突き合わせ巻きする代わりに、実施の形態3と同様に、絶縁テープ12を海苔巻状に巻き付けた構成とすることも可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0055】
また、本発明は上記の実施の形態1〜5の構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において各種の変形を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態1の回転電機の固定子において、固定子鉄心のスロットに固定子コイルを装着した状態の一部を示す斜視図である。
【図2】同固定子において、固定子コイルを固定子鉄心のスロットに装着した状態の一部を示す断面図である。
【図3】コイル導体の上に形成される絶縁層を構成するために使用される絶縁テープの断面図である。
【図4】図3の絶縁テープを裏打ち材側から見た斜視図である。
【図5】図2の符号Aで示す部分を時計方向に90°回転して見た状態を拡大して模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2における回転電機の固定子の要部を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態3における回転電機の固定子の要部を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態4における回転電機の固定子の要部を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態5における回転電機の固定子の要部を模式的に示す断面図である。
【図10】従来の回転電機の固定子の要部を模式的に示す断面図である。
【図11】従来の回転電機の固定子において、固定子コイルの絶縁層を構成するために使用される絶縁テープを裏打ち材側から見た場合の空隙発生状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1 固定子鉄心、2 スロット、3 固定子コイル、5 コイル導体、7 絶縁層、
8 低抵抗のコロナシールド層、12 絶縁テープ、12a マイカ、
12b 裏打ち材、14 導電性テープ、16 第2のコロナシールド層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル導体と、このコイル導体の外周に設けられ絶縁層と、この絶縁層の外周に設けられた低抵抗のコロナシールド層とを有する固定子コイルを有し、この固定子コイルが熱硬化性樹脂で含浸、硬化された状態で固定子鉄心のスロット内に装着されている回転電機の固定子において、
上記絶縁層は、マイカと樹脂が含浸または透過する裏打ち材とから構成された絶縁テープが上記コイル導体の外周に多層にわたって巻装されてなり、この絶縁層を構成する少なくとも最外周に位置する絶縁テープは、上記裏打ち材を内周側に、マイカを外周側にして巻装されていることを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項2】
上記絶縁層を構成する少なくとも最外周に位置する絶縁テープは、その幅方向の各端面が互いに対面するように突き合わせた状態で螺線状に巻装されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機の固定子。
【請求項3】
上記絶縁層を構成する少なくとも最外周に位置する絶縁テープは、コイル導体の軸方向と直交する周方向に沿って円筒を形成するように巻装されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機の固定子。
【請求項4】
上記コロナシールド層は、樹脂が含浸または透過する導電性テープをその幅方向の各端面が互いに対面するように突き合わせた状態で螺線状に巻装されて構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の回転電機の固定子。
【請求項5】
上記コロナシールド層の外周には低抵抗の第2のコロナシールド層が形成され、この第2のコロナシールド層は、樹脂が含浸または透過する導電性テープをその幅方向の一部が互いに重なり合った状態で螺線状に巻装されていることを特徴とする請求項4に記載の回転電機の固定子。
【請求項1】
コイル導体と、このコイル導体の外周に設けられ絶縁層と、この絶縁層の外周に設けられた低抵抗のコロナシールド層とを有する固定子コイルを有し、この固定子コイルが熱硬化性樹脂で含浸、硬化された状態で固定子鉄心のスロット内に装着されている回転電機の固定子において、
上記絶縁層は、マイカと樹脂が含浸または透過する裏打ち材とから構成された絶縁テープが上記コイル導体の外周に多層にわたって巻装されてなり、この絶縁層を構成する少なくとも最外周に位置する絶縁テープは、上記裏打ち材を内周側に、マイカを外周側にして巻装されていることを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項2】
上記絶縁層を構成する少なくとも最外周に位置する絶縁テープは、その幅方向の各端面が互いに対面するように突き合わせた状態で螺線状に巻装されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機の固定子。
【請求項3】
上記絶縁層を構成する少なくとも最外周に位置する絶縁テープは、コイル導体の軸方向と直交する周方向に沿って円筒を形成するように巻装されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機の固定子。
【請求項4】
上記コロナシールド層は、樹脂が含浸または透過する導電性テープをその幅方向の各端面が互いに対面するように突き合わせた状態で螺線状に巻装されて構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の回転電機の固定子。
【請求項5】
上記コロナシールド層の外周には低抵抗の第2のコロナシールド層が形成され、この第2のコロナシールド層は、樹脂が含浸または透過する導電性テープをその幅方向の一部が互いに重なり合った状態で螺線状に巻装されていることを特徴とする請求項4に記載の回転電機の固定子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−118590(P2009−118590A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286923(P2007−286923)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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