説明

回転電機用ロータ

【課題】低コストで回転電機の出力トルクを向上することが可能な回転電機用ロータを提供する。
【解決手段】回転電機用ロータRは、ロータ軸RSと一体回転するように固定され、円筒コアの外周面に軸方向と平行に扇形で切り欠いた切欠部11を有する第1コア1と、当該第1コア1と離間して配置され、軸方向に貫通する貫通孔22が形成された第2コア2と、貫通孔22に貫通される金属の磁性体からなる貫通ピン3と、第1コア1と第2コア2との間に軸方向と平行に配置される永久磁石PMと、第1コア1と第2コア2との間に永久磁石PMを配置した状態で軸方向両側から貫通ピン3が挿入される一対のエンドプレートEPと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータコアと当該ロータコアと一体回転するロータ軸とを有する回転電機用ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な機器の動力源として回転電機が広く利用されている。このような回転電機は、コイルを有するステータと永久磁石を有するロータとを備えて構成される。特に、永久磁石は、ロータが有するロータコアにロータ軸と平行に設けられる磁石貫通孔に挿入して配置される。このようなロータを高速回転するには、ロータコアに所定の機械的強度を確保する必要がある。この機械的強度は、ロータコアの軸方向視において、磁石貫通孔とロータコアの外周面(外周縁)との間に形成されるアウターブリッジの幅寸法を大きくすることにより確保されてきた。しかしながら、アウターブリッジの幅寸法を大きくすると、永久磁石の漏れ磁束が増大し、回転電機の出力トルクが低下するといった問題があった。このような回転電機の出力トルクの低下を防止するためには、アウターブリッジの幅寸法を小さくする以外に、ロータコアの軸方向視において、互いに隣接する2つの磁石貫通孔の短辺間に形成されるセンターブリッジの幅寸法を小さくすることも有効である。
【0003】
そこで、アウターブリッジ及びセンターブリッジの幅寸法を小さくしつつ、ロータコアの機械的強度を高める技術開発が行われてきた。そのような技術の一つとして、下記に出典を示す特許文献1に記載のものがある。
【0004】
特許文献1に記載の永久磁石回転電機の回転子(ロータ)は、永久磁石に形成された凹部とコアに形成された凸部とを嵌合させることにより、遠心力に対する強度を確保している。これにより、アウターブリッジの幅寸法を小さくすることが可能とされる。また、永久磁石は、上記嵌合により位置決めされた状態で保持される。これにより、互いに隣接する一対の永久磁石の短辺間に空隙部を形成し、センターブリッジを無くすことが可能とされる。
【0005】
しかしながら、当該永久磁石回転電機の回転子は、アウターブリッジを有して構成されているので、回転電機の出力トルクの改善は十分ではない。また、空隙部を設けてセンターブリッジを無くしているが、永久磁石と嵌合するコアの凸部に隣接する部分が当該凸部とは逆方向に突出するため、上記空隙部(互いに隣接する永久磁石の間隔)が狭くなり回転電機の出力トルクの改善は十分ではない。更に、永久磁石に凹部を形成する必要があるため、一般的な形状(例えば四角形)の永久磁石を用いることができず、製造コストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−336671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、低コストで回転電機の出力トルクを向上することが可能な回転電機用ロータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る回転電機用ロータの特徴構成は、ロータ軸と一体回転するように固定され、円筒コアの外周面に軸方向と平行に扇形で切り欠いた切欠部を有する第1コアと、前記第1コアと離間して配置され、軸方向に貫通する貫通孔が形成された第2コアと、前記貫通孔に貫通される金属の磁性体からなる貫通ピンと、前記第1コアと前記第2コアとの間に軸方向と平行に配置される永久磁石と、前記第1コアと前記第2コアとの間に前記永久磁石を配置した状態で軸方向両側から前記貫通ピンが挿入される一対のエンドプレートと、を備えている点にある。
【0009】
このような特徴構成とすれば、第1コアと第2コアとを完全に分離して配置することができる。このため、互いに隣接する永久磁石の短辺間を仕切るセンターブリッジ及び永久磁石とロータコアの外周面とを仕切るアウターブリッジの双方を無くすことができる。したがって、永久磁石の漏れ磁束の影響を受けないようにすることができるので、回転電機の出力トルクの低下を防止できる。また、第1コア及び第2コアは従来のプレス加工を用いて形成することができ、一般的な形状(例えば四角形)の永久磁石を用いることができるので低コストで出力トルクの向上を実現できる。
【0010】
また、前記貫通ピンが軟磁性体であると好適である。
【0011】
このような構成とすれば、軟磁性体はヒステリシス特性に優れているので、回転電機の出力トルクを向上することができる。
【0012】
また、前記貫通ピンが板状の金属の磁性体を積層して形成され、積層方向が径方向と交差するように配置されると好適である。
【0013】
このような構成とすれば、金属の磁性体を用いて貫通ピンを容易に形成できると共に、回転電機用ロータに生じる遠心力に基づき貫通ピンが歪みを生じ難くすることができる。
【0014】
また、前記貫通ピンが絶縁皮膜で覆われていると好適である。
【0015】
このような構成とすれば、貫通ピンに起因するうず電流の発生を抑制できる。したがって、回転電機の出力トルクの低下を防止できる。
【0016】
また、前記第1コアの切欠部が有する切欠面と前記切欠面に対向する前記第2コアの対向面との夫々に、前記永久磁石の一部が収容される凹溝が形成されていると好適である。
【0017】
このような構成とすれば、第1コア及び第2コアの双方に形成された凹溝で永久磁石の一部を収容するので、永久磁石を第1コア及び第2コアに対して位置決めをした状態で確実に固定することができる。したがって、回転電機用ロータの回転に応じて遠心力が生じても、永久磁石が第1コアと第2コアとの間から抜け出ることを防止できる。
【0018】
また、前記貫通ピンが前記第2コアを径方向中心側に押し付ける押付手段を備えていると好適である。
【0019】
このような構成とすれば、第2コアを介して永久磁石を第1コア側に押し付けることができるので、回転電機用ロータの回転に応じて生じる遠心力に抗して、永久磁石が第1コアと第2コアとの間から抜け出ることを防止できる。
【0020】
また、前記貫通ピンが、径方向に沿って湾曲して形成されていると好適である。
【0021】
このような構成とすれば、貫通ピンに付勢力を与えることができる。したがって、永久磁石を第1コアに押し付けることができるので、回転電機用ロータの回転に応じて生じる遠心力に抗して、永久磁石が第1コアと第2コアとの間から抜け出ることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】回転電機用ロータの概略構成を示す斜視図である。
【図2】第1ロータコアと第2ロータコアとの配置関係について示す図である。
【図3】その他の実施形態に係る貫通ピンの形態について示す図である。
【図4】その他の実施形態に係る貫通ピンの形態について示す図である。
【図5】その他の実施形態に係る貫通ピンの形態について示す図である。
【図6】その他の実施形態に係る貫通ピンの形態について示す図である。
【図7】貫通ピンを複数用いた場合の例を示す図である。
【図8】その他の実施形態に係る永久磁石の配置について示す図である。
【図9】その他の実施形態に係る貫通ピンについて示す図である。
【図10】その他の実施形態に係る貫通ピンについて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る回転電機用ロータR(以下「ロータR」とする)に関して説明する。詳細は後述するが、本ロータRは、永久磁石PMに隣接するセンターブリッジ及びアウターブリッジを無くして回転電機の性能(出力トルク)を向上することが可能なように構成されている。以下に図を用いて説明する。
【0024】
図1には本実施形態に係るロータRが示される。図示はしないが、ロータRはステータと共に回転電機に配設される。ロータRは径方向中心部にロータ軸RSが貫通挿入され、当該ロータ軸RSは回転電機のケース本体に回転可能に支持される。ステータは、ロータRの外周面と所定のギャップを有してロータRの径方向外側に配置され、ケース本体に固定される。本実施形態に係るロータRには永久磁石PMが配置され、ステータにはコイルが配置される。以下では、本発明に係るロータRを中心に説明する。
【0025】
本ロータRは、第1コア1、第2コア2、貫通ピン3、ロータ軸RS、永久磁石PM、エンドプレートEPを備えて構成される。第1コア1は、円筒コアの外周面に軸方向と平行に扇形で切り欠いた切欠部11を有する。ここで、第1コア1は、複数の板状鋼板を積層して構成される。このような板状鋼板は、円環板状のコアの外周面を扇形で切り欠いて形成される。このような扇形で切り欠いた部分が、切欠部11に相当する。本実施形態では、切欠部11は円環板状のコアの外周面に沿って8つ形成される。このような切欠部11を有する板状コアは、板状鋼板を所定の形状の金型を用いてプレス加工により形成される。第1コア1は、このようにプレス加工により形成された板状コアを切欠部11が軸方向に整列するように積層して形成される。したがって、切欠部11は第1コア1の軸方向と平行に配置された状態となる。また、第1コア1の径方向中心部には、軸方向に貫通する貫通孔12が形成される。貫通孔12の内周面には、スプライン溝12Aが形成される。
【0026】
ロータ軸RSは、第1コア1と一体回転するように固定される。ロータ軸RSの外周面には、スプライン溝RSAが形成される。ロータ軸RSは貫通孔12に挿入され、互いのスプライン溝12A、RSAにより嵌合固定される。これにより、第1コア1とロータ軸RSとが一体回転することが可能となる。
【0027】
第2コア2は、第1コア1と離間して配置され、軸方向に貫通する貫通孔22が形成される。上述のように、切欠部11は、軸方向視において扇型で形成される。本実施形態における第2コア2は、ロータRの回転中に空気抵抗となって回転損失が生じないように、扇形の切欠部11に収容可能に構成される。また、貫通孔22は扇形の軸方向中央部を貫通するように形成される。本実施形態では貫通孔22は長方形で形成され、当該長方形が有する一対の短辺が、ロータRの径方向に対して直交するように配置される。
【0028】
このような第2コア2は、板状鋼板を基材として所定の形状の金型を用いてプレス成形されたコアを軸方向に積層して形成される。したがって、第2コア2は、第1コアの切欠部11と平行に配置される。ここで、詳細は後述するが、第1コア1と第2コア2との間には、永久磁石PMが配置される。すなわち、第1コア1と第2コア2とにより、永久磁石PMが挟持される。
【0029】
貫通ピン3は、貫通孔22に貫通される金属の磁性体から構成される。上述のように、第2コア2の中央部には軸方向に貫通する、軸方向視が長方形の貫通孔22が形成される。このため、貫通ピン3も軸方向視が長方形で構成される。また、貫通孔22は、長方形が有する一対の短辺がロータRの径方向に対して直交するように配置されているので、貫通ピン3も一対の短辺がロータRの径方向に対して直交するように配置される。このため、貫通ピン3のロータRの回転に応じて生じる遠心力に対する強度を強くすることができる。また、貫通ピン3は、金属の磁性体から構成される。このような金属の磁性体としては、純鉄、ケイ素鋼、鉄アルミ合金等を用いると好適である。
【0030】
永久磁石PMは、第1コア1と第2コア2との間に軸方向に平行に配置される。第1コア1及び第2コア2は、軸方向に延設して設けられる。これにしたがい、永久磁石PMも軸方向に延設して配置される。図2には、第1コア1と第2コア2との配置関係が示される。図2に示されるように、切欠部11は軸方向視が扇形で形成される。この扇形の一対の平面部分(上述の円弧部分以外の部分)が、切欠面13に相当する。また、第2コア2も軸方向視が扇形で形成される。第2コア2が有する一対の平面部分は、第1コア1の切欠面13に対向して配置され、対向面21となる。このような切欠面13と対向面21との間には、ロータ軸方向に平行に長尺状の永久磁石PMが配置される。このように、第1コア1と第2コア2との間には永久磁石PMが配置され、第1コア1と第2コア2とが完全に離間した状態とされる。したがって、第1コア1と第2コア2との間には、センターブリッジ及びアウターブリッジを備えずに構成することができる。なお、永久磁石PMは、第1コア1及び第2コア2との間に接着剤や硬化樹脂等を用いて固定すると好適である。これにより、永久磁石PMがロータRの回転に応じて生じる遠心力により位置ずれすることを防止できる。なお、第1コア1、第2コア2、永久磁石PMは、図1においては、一組しか記載していないが、実際には切欠部11毎に(すなわち、図1においては、合計8組)備えられる。
【0031】
図1に戻り、エンドプレートEPは、一対からなり、第1コア1及び第2コア2との間に永久磁石PMを配置した状態で軸方向両側から貫通ピン3が挿入される。図1に示されるように第1コア1及び第2コア2の軸方向両側にエンドプレートEPが配置される。したがって、エンドプレートEPは一対からなる。一対のエンドプレートEPは、径方向中央部にロータ軸貫通孔EP1を有し、当該ロータ軸貫通孔EP1にロータ軸RSが貫通挿入される。また、一対のエンドプレートEPは、ロータ軸RSと一体回転可能に構成される。このような一体回転を実現するために、ロータ軸貫通孔EP1の内周面にスプライン溝EPAを形成し、当該スプライン溝EPAがロータ軸RSのスプライン溝RSAとスプライン嵌合することにより構成すると好適である。また、このようなエンドプレートEPとしては、比強度が高く、且つ非磁性であることが好ましく、Ti合金、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)、ジュラルミン等が好適である。また、エンドプレートEP及び第1コア1からロータ軸RSが抜けないように、一対のエンドプレートEPを装着後、ロータ軸RCの挿入方向他方側を例えばクリップ30で挟持すると好適である。
【0032】
エンドプレートEPは、第1コア1と第2コア2との間に永久磁石PMを挟んだ状態で第2コア2の貫通孔22と対向する位置に孔部EP2が形成される。したがって、貫通孔22と孔部EP2とは、軸方向に一致するように形成される。本実施形態では、切欠部11は周方向に沿って8つ形成され、切欠部11の中央部には貫通孔22が1つずつ形成される。このため、貫通孔22は周方向に沿って8つ形成される。孔部EP2は、貫通孔22と対向して周方向に沿って8つ形成される。
【0033】
上述のように、第2コア2の貫通孔22には軸方向に貫通ピン3が貫通挿入される。また、第1コア1の切欠部11に永久磁石PMが配置され、当該永久磁石PMに第2コア2が配置される。一対のエンドプレートEPは、このような状態における第2コア2の貫通孔22に貫通挿入されている貫通ピン3を孔部EP2に挿入するよう軸方向両側に配置される。これにより、第2コア2が径方向外側に位置ずれしないようにすることができる。なお、図示はしないが、貫通ピン3が孔部EP2及び貫通孔22から軸方向に抜けないように、エンドプレートEPの軸方向外側で貫通ピン3をナット(図示せず)で留める構成にすると好適である。また、エンドプレートEPの軸方向外側で貫通ピン3をかしめて抜けないようにするように構成することも可能である。
【0034】
このように、本ロータRによれば、第1コア1と第2コア2とを完全に分離して配置することができる。このため、互いに隣接する永久磁石PMの短辺間を仕切るセンターブリッジ及び永久磁石PMとロータコアの外周面とを仕切るアウターブリッジの双方を無くすことができる。したがって、永久磁石PMの漏れ磁束の影響を受けないようにすることができるので、回転電機の出力トルクの低下を防止できる。また、第1コア1及び第2コア2は従来のプレス加工を用いて形成することができ、一般的な形状(例えば四角形)の永久磁石PMを用いることができるので低コストで出力トルクの向上を実現できる。
【0035】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、貫通ピン3が金属の磁性体からなるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、貫通ピン3を軟磁性体で構成すると好適である。軟磁性体はヒステリシス特性に優れているので、所望する特性を容易に実現することができる。
【0036】
上記実施形態では、貫通ピン3は軸方向視が四角形で構成されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、図3に示されるような楕円状のものを用いることが可能である。係る場合には、楕円の長軸方向がロータRの径方向と一致するように配置すると好適である。このような構成であれば、貫通ピン3の遠心力に対する強度を強くすることができる。また、例えば、図4(a)に示されるように貫通ピン3が板状の金属の磁性体を積層して形成されると好適である。係る場合には、積層方向が径方向と交差するように配置すると好適である。このような構成であれば、貫通ピン3を容易に構成できると共に、遠心力に対して折れにくくすることができる。また、図5に示されるようにシート状の磁性体をロール状に巻いて構成することも可能である。係る場合には、ロール状に巻かれた磁性体がシート状に延びようとするので、貫通孔22の内周面に押し付けられる。したがって、貫通ピン3が貫通孔22から抜けないように、ナットを用いたりかしめたりする必要がなくなる。
【0037】
また、図6に示されるように、貫通ピン3を絶縁皮膜31で覆うと好適である。これにより貫通ピン3と第2コア2とを絶縁分離することができるので、貫通ピン3に起因するうず電流の発生を防止できる。したがって、回転電機の出力トルクの低下を防止できる。
【0038】
また、上記実施形態では、第2コア2に対して1本の貫通ピン3が貫通されるように説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。図7に示されるように、第2コア2に対して複数の貫通ピン3を貫通するように構成することも可能である。係る場合、夫々の貫通ピン3は一点鎖線で示されるロータRの径方向に沿って配設されると好適である。
【0039】
上記実施形態では、永久磁石PMが第1コア1と第2コア2とに挟持されてあるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、図8に示されるように、第1コア1の切欠部11が有する切欠面13と切欠面13に対向する対向面21との夫々に、永久磁石PMの一部が収容される凹溝14、23を形成すると好適である。これにより、ロータRの回転に応じて生じる遠心力により、永久磁石PMが第1コア1と第2コア2との隙間から抜けることを防止できる。
【0040】
上記実施形態では、貫通ピン3がエンドプレートEPの孔部EP2に貫通挿入されるとして説明した。このような貫通ピン3が、第2コア2を径方向中心側に押し付ける押付手段3Aを備えると好適である。係る場合、図9(a)に示されるように貫通ピン3の軸方向両端部の径方向外側の角部をカットして押付手段3Aを形成し、貫通ピン3の軸方向中心部をエンドプレートEPの孔部EP2の軸方向中心部よりも径方向外側にずらして構成すると良い。このような構成とすることにより、図9(b)に示されるようにエンドプレートEPを装着することで、貫通ピン3を径方向中央側に押し付けることが可能となる。したがって、図9(b)に示される矢印のように、貫通ピン3により第2コア2及び永久磁石PMの軸方向全領域を径方向中央側に押し付けることができるので、永久磁石PMの位置ずれを防止できる。
【0041】
また、貫通ピン3を、径方向に沿って湾曲して形成することも可能である。図10(a)には、貫通ピン3が、径方向中央側を凸形状とする弓型状に形成されている例が示される。このように構成することにより、図10(b)に示されるようにエンドプレートEPを装着することで、貫通ピン3により第2コア2及び永久磁石PMを径方向中央側に押し付けることが可能となる。したがって、図10(b)に示される矢印のように、貫通ピン3により第2コア2及び永久磁石PMの軸方向中央領域を径方向中央側に押し付けることができるので、永久磁石PMの位置ずれを防止できる。また、上述の押付手段3Aと共に、貫通ピン3を湾曲して形成することにより、貫通ピン3の軸方向両端側も径方向中央側に押し付けることもできる。
【0042】
また、図示はしないが、径方向外側を凸形状とする弓型状で貫通ピン3を形成することも可能である。係る場合には、貫通ピン3により第2コア2及び永久磁石PMの軸方向両端側を径方向中央側に押し付けることが可能となる。したがって、貫通ピン3により永久磁石PMの位置ずれを防止できる。更には、弓型以外の形状で径方向に沿って湾曲するように形成することも当然に可能である。係る場合であっても、永久磁石PMを第1コア1に押し付けることができるので、永久磁石PMの位置ずれを防止することは可能である。
【0043】
本発明は、ロータコアと当該ロータコアと一体回転するロータ軸とを有する回転電機用ロータに用いることが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1:第1コア
2:第2コア
RS:ロータ軸
11:切欠部
13:切欠面
21:対向面
PM:永久磁石
EP:エンドプレート
3:貫通ピン
R:ロータ(回転電機用ロータ)
14:凹溝
23:凹溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ軸と一体回転するように固定され、円筒コアの外周面に軸方向と平行に扇形で切り欠いた切欠部を有する第1コアと、
前記第1コアと離間して配置され、軸方向に貫通する貫通孔が形成された第2コアと、
前記貫通孔に貫通される金属の磁性体からなる貫通ピンと、
前記第1コアと前記第2コアとの間に軸方向と平行に配置される永久磁石と、
前記第1コアと前記第2コアとの間に前記永久磁石を配置した状態で軸方向両側から前記貫通ピンが挿入される一対のエンドプレートと、
を備える回転電機用ロータ。
【請求項2】
前記貫通ピンが軟磁性体である請求項1に記載の回転電機用ロータ。
【請求項3】
前記貫通ピンが板状の金属の磁性体を積層して形成され、積層方向が径方向と交差するように配置される請求項1又は2に記載の回転電機用ロータ。
【請求項4】
前記貫通ピンが絶縁皮膜で覆われている請求項1から3のいずれか一項に記載の回転電機用ロータ。
【請求項5】
前記第1コアの切欠部が有する切欠面と前記切欠面に対向する前記第2コアの対向面との夫々に、前記永久磁石の一部が収容される凹溝が形成されている請求項1から4のいずれか一項に記載の回転電機用ロータ。
【請求項6】
前記貫通ピンが前記第2コアを径方向中心側に押し付ける押付手段を備えている請求項1から5のいずれか一項に記載の回転電機用ロータ。
【請求項7】
前記貫通ピンが、径方向に沿って湾曲して形成されている請求項1から6のいずれか一項に記載の回転電機用ロータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−10556(P2012−10556A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146500(P2010−146500)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】