説明

回転駆動装置

【課題】
本発明は自動車用エンジンに外部から回転駆動力を与える回転駆動装置に関し、エンジンとモータの回転軸を高精度かつ容易に調整して連結する。
【解決手段】
イケール130と面板140を備え、イケール130に対し面板140をエンジン10の位置ずれに倣って位置ずれさせてエンジン10を面板140に固定し、次に、イケール130と面板140を貫く位置決めシャフトにより、面板140をイケール130に対し位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用エンジンに外部から回転駆動力を与える回転駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用エンジンの試験とし、エンジンを着火させた状態で種々の試験を行なうファイヤリングテストがあるが、エンジン運転時の排気ガスや騒音等の問題が生じまた燃料の漏れなど作業環境問題も生じることから、最近では、エンジンを量産する工程における検査工程などでは、エンジンを着火せずに外力で回転駆動させながら試験を行なうモータリングテストが注目されている。このモータリングテストでは、エンジンの主軸に設けられたリングギアを、モータを用いて、起動時のみでなく常に外力で回転させながら試験が行なわれる。
【0003】
エンジンは、クレーンなどにより、装置に設置されたパレットと呼ばれる搬送台上に載置されて搬送されるが、モータリングテストを行なうにあたっては、このエンジンに回転駆動力を与えるモータは、そのパレットに載置されて搬送されてきたエンジンのリングギアに、カップリング等を用いて、手作業により連結されている。この連結にあたっては、エンジンのリングギアの回転軸とモータの回転軸とを高精度に合わせる必要があり、多大な時間を要し、次々と量産されてくるエンジンを効率良く試験するのが困難であった。
【0004】
特許文献1には、エンジンとモータとの連結を容易にするための工夫が提案されているが、回転軸を高精度に合わせるときの手作業が多少楽になるものの、多大な労力の手作業を要するという点を根本的に解決するものではない。
【特許文献1】特開平9−126951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、エンジンとモータの回転軸を高精度かつ容易に調整して連結することのできる機構を備えた回転駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の回転駆動装置は、自動車用エンジンに外部から回転駆動力を与える回転駆動装置において、
モータにより回転駆動されてエンジンに回転駆動力を伝達する主軸と、
上記主軸に対し、その主軸の軸方向に対する垂直な方向について位置決めがなされた第1の部材と、
上記第1の部材に、上記主軸の軸方向に対し垂直な面内で移動自在に支持され、その面内で移動することにより、搬送されてきたエンジンの位置ずれに倣って上記第1の部材に対し位置ずれを生じ、その位置ずれを生じたままエンジンを支持する第2の部材と、
上記第1の部材と上記第2の部材を上記軸方向に貫いて、第2の部材を、その第2の部材に支持されたエンジンごと第1の部材に位置決めする位置決めシャフトと、
上記第1の部材に上記第2の部材を介して位置決めされたエンジンに上記主軸を連結する連結部材とを備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の回転駆動装置は、上記第1の部材と第2の部材を備え、第1の部材に対し第2の部材を、エンジンの位置ずれに倣って位置ずれさせてエンジンを第2の部材に固定し、今度は位置決めシャフトにより第2の部材を第1の部材に対し位置決めするようにしたため、エンジンを主軸に高精度かつ容易に位置決めして連結することができる。またこの動作全てを自動化することも可能である。
【0008】
ここで、上記本発明の回転駆動装置において、上記連結部材に作用して上記主軸とエンジンを切り離し、離間することによってその連結部材に上記主軸とエンジンを連結させる連結制御部材を備えることが好ましい。
【0009】
こうすることにより、主軸とエンジンは連結部材を介して連結されるとともにその連結を制御する連結制御部材を離間させた状態で主軸を回転させてエンジンを回転駆動することができる。
【0010】
また、上記本発明の回転駆動装置において、非回転時の主軸を支持しその主軸の回転に先立ってはその主軸から離間する主軸支持部材を備えることが好ましい。
【0011】
主軸をエンジンに連結するにあたっては、主軸とエンジンの回転軸はかなりの高精度で一致するように調整されるが、位置ずれ誤差をゼロにするには、各部材を極めて高い精度で製作して極めて高い精度で組立てる必要があり、現実的ではなく、ある程度の誤差は許容し、主軸とエンジンとの間をフレキシブルカップリングを介して連結するのが現実的である。この場合に、主軸とエンジンとが連結されていないときは、そのフレキシブルカップリングの影響で、主軸の、エンジンとの連結部分先端が垂れ下がるおそれがあり、これを支える主軸支持部材が必要となる場合がある。このような非回転時には主軸を支持する主軸支持部材を設け、主軸がエンジンと連結されて回転するときにはその主軸支持部材を離間した状態におくことにより、回転時には、主軸に余計な部材(主軸支持部材)が離間した状態にあるため、スムーズな回転駆動が可能となる。
【0012】
さらに、本発明の回転駆動装置において、エンジンを載置してそのエンジンを上記第2の部材に向けて搬送する搬送部材を備えることが好ましい。
【0013】
このような搬送部材を備えることにより、エンジンのモータリングテストが一層容易となる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、主軸をエンジンの回転軸を高精度かつ容易に調整して連結することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態としての回転駆動装置の全体構成図である。
【0017】
この図1には、リングギア11を備えたエンジン10を搬送するパレット110、モータ121が連結した主軸120、この主軸120の回転軸120aに対し垂直な方向について主軸120に対し位置決めされたイケール130、イケール130に、回転軸120aに対し垂直な面内で移動自在に支持された面板140が示されている。ここで、パレット110は、本発明にいう搬送部材の一例に相当し、イケール130は、本発明にいう第1の部材の一例に相当し、面板140は本発明にいう第2の部材に相当する。
【0018】
図2は、図1に示す全体構成図のうちのパレット110の部分を取り出して示した図である。
【0019】
エンジン10には、周囲11aにギアが設けられたリングギア11が備えられており、このエンジン10は、クレーン(図示せず)で吊り上げられてパレット110に載置され、コロ151の上を、図に示す矢印A方向に搬送される。エンジン10を載せてコロ121の上を矢印A方向に搬送されてきたパレット110は、その先端が当接部材152の当接部152aに突き当たって停止し、当接部材152に固定されたシリンダ153の軸153aがパレット110の位置決め穴110aに貫入してそのパレット110が当接部材152に位置決めされる。その状態のままシリンダ154の軸154aがゆっくりと伸び、パレット110が所定の位置までゆっくりと進行する。
【0020】
ここで、パレット110は、シリンダ155の作用により上に持ち上げられて上下方向の高さ調整が行なわれ、また、シリンダ156の作用により後退が防止されるようになっている。
【0021】
また、この図2には、エンジン10に冷却水を通すための通水孔157が示されている。この通水孔157は、エンジン10との間が可撓性のホース(図示せず)で連結される。
【0022】
パレット110は、正規の位置まで進行すると、パレット位置決めピン158がパレット110の位置決め穴110bに嵌入してパレット110が位置決めされ、このときに通水孔157もパレット側の通水孔112と連結する。
【0023】
図3は、エンジン側から見たイケールとそのイケールに支持された面板を示す図である。
【0024】
面板140は、4カ所の面板固定部141において、イケール130に、図3の上下左右(図1に示す主軸120の回転軸120aに対し垂直な面内)で遊動自在に固定されている。この面板140は、バネ142により、イケール130のほぼ中央に位置決めされるとともに、上下左右に移動自在となっており、ストッパ143により、その上下左右の移動範囲が制限されている。
【0025】
面板140の中央には、エンジン10のリングギア11(図1、図2参照)が入り込むエンジン取付穴144が設けられており、このエンジン取付穴144に入り込んだリングギア11には、この図面の裏側から主軸120(図1参照)が連結される。
【0026】
エンジン10は、そのリングギア11がエンジン取付穴144に入り込む際に、そのエンジン10の一部(クランクブロック)が、先端がテーパ状に形成されたクランクブロック支持爪145に乗り上げ、エンジン10がパレット110(図1、図2参照)から数mm程度持ち上げられた状態となる。また、これとともに、ロケートピン146が面板140から突出してエンジン10に設けられた穴に入り込み、エンジン10と面板140が位置決めされる。尚、ここにはロケートピン146は2カ所に示されているが、これはエンジンの種別によってエンジン10に設けられた穴の位置が異なるためであり、実際の位置決めにあたり面板140から突出して位置決めに用いられるのは、それら2カ所のうちの1カ所のロケートピンである。ここでの位置決めにあたっては、エンジン10はパレット110上に載置され位置誤差を持って面板140に近づくため、エンジン10がクランクブロック支持爪145に乗り上げてロケートピン146で位置決めされる際は、エンジン10の位置ずれ分だけ面板140が上下左右に移動し、イケール130に対し面板140が位置ずれした状態のまま、面板140とエンジン10が位置決めされる。
【0027】
このようにして面板140に対し位置決めされたエンジン10は、ワーククランプロッド147が図1に示すモータ149により回転して、その先端に固定されたクランプ爪148を回し、そのクランプ爪148でエンジン10が面板140に固定される。
【0028】
以上のようにして、先ずは、エンジン10が面板140に対し位置決めされて固定される。ただし、この状態では面板140はイケール130に対しては位置ずれを有し、図1に示す主軸120はイケール130に対し位置決めされているため、このままでは主軸120の回転軸とエンジン10の回転軸はずれたままとなっている。
【0029】
次に、イケール130に対する面板140の位置決めについて説明する。
【0030】
面板140には、図3に示す面板芯出し穴171が形成されている。
【0031】
図4は、面板芯出し穴の部分の断面図である。
【0032】
面板140の裏面側にはイケール130が接し、面板芯出し穴171には、リテーナ130の位置決め穴131が連通しており、シリンダ172の作用によりロケートシャフト173が距離Lだけ図4の右側に移動して、そのロケートシャフト173の先端部分がリテーナ130の位置決め穴131および面板140の面板芯出し穴171に嵌入する。この嵌入にあたっては、面板140はイケール130に対し位置ずれを生じているため、この位置ずれがあってもロケートシャフト173の先端部分が面板芯出し穴171にスムーズに嵌入できるよう、面板芯出し穴171のイケール130側に寄ったエッジ部分にはテーパ面171aが形成されるとともに、ロケートシャフト173には玉軸受用鋼球174が備えられており、玉軸受用鋼球174がテーパ面171aに干渉して面板140をイケール130に対し位置決めしながらロケートシャフト173の先端部分が面板芯出し穴171に嵌入する。これにより、面板140が、その面板140にエンジン10を固定したままイケール130に対し位置決めされる。エンジン10は面板140に対し位置決めされた状態で面板140に固定されているため、ロケートシャフト173により面板140がイケール130に対し位置決めされることで面板140に固定されたエンジン10もイケールに対し位置決めされ、これにより主軸120の回転軸と、エンジン10の回転軸が一致することになる。
【0033】
図5は、主軸まわりを示した断面図である。
【0034】
以上のようにして位置決めした後、主軸120とエンジン10のリングギア11が連結される。この図5では、回転軸120aの上半分は主軸120とリングギア11が非連結の状態を示しており、回転軸120aの下半分は、主軸120とリングギア11が連結された状態を示している。
【0035】
主軸120は、図1に示すようにモータ121に連結されており、フレキシブル継手122、チャックホルダ180、および連結部材181を介して、エンジン10のリングギア11に連結され、モータ121の回転により主軸120が回転し、エンジン10のリングギア11を回転させるように構成されている。
【0036】
連結部材181は、その先端にワーククランプヅメ182が設けられており、連結部材181が回動軸183を中心に回動することによりワーククランプヅメ182がリングギア11に着脱する。この連結部材181は、回転軸120aを中心に回転した位置に、合計3カ所設けられている。
【0037】
図6は、リングギアとワーククランプヅメとの関係を示した図である。
【0038】
リングギア11にはその外周11aにギアが設けられており、一方ワーククランプヅメ182にはそのギアの歯と噛合する歯が設けられている。ワーククランプヅメ182は、連結部材181の回動によりリングギア11の外周11aに接触する方向に移動してリングギア11を着脱し、リングギア11に装着された状態ではそのワーククランプヅメ182の歯がリングギア11の外周11aの歯と噛合した状態となり、主軸120(図5参照)が回転するとその回転によりワーククランプヅメ182がその主軸120の回転軸のまわりに公転してリングギア11を回転駆動する。
【0039】
図5に戻って説明を続ける。
【0040】
連結部材181はスライド部材185がその連結部材181側にスライドすることによってその連結部材181の後端部分がスライド部材185に乗り上げて、ワーククランプヅメ182がリングギア11の外周11aに装着される方向に回動する。また、このスライド部材185は、バネ184により連結部材181側にスライドする方向に付勢されている。ここで、図5の回転軸120aの上側に示すように、連結制御部材190の先端の係合部191がスライド部材185に係合してスライド部材185を図の左側に引くことにより、連結部材181が、ワーククランプヅメ182がリングギア11から離れる方向に回動する。一方、回転軸120aの下側に示すように連結制御部材190は、スライド部材185との係合を解くことによりスライド部材185がバネ184の付勢力で連結部材181の後端部の下に入り込み、これによりワーククランプヅメ182がリングギア11に装着される。したがって、主軸120が回転してエンジン10を回転させている状態では、連結制御部材190はその回転体から離間した状態にある。
【0041】
また、主軸120は、フレキシブル継手122を介してチャックホルダ180に連結されているが、このチャックホルダ180は、回転軸120aの上側に示すように、チャックホルダ固定部材200に、その先端に設けられた支持部202で支持されて、自重による偏心が防止されている。連結部材181の先端のワーククランプヅメ182がリングギア11に装着された状態では自重による偏心のおそれはなく、このときには、図1に示すシリンダ202の作用により、図5の回転軸120aの下側に示すように、チャックホルダ固定部材200が図5の左側に移動してその支持部202がチャックホルダ180から離れる。したがって、主軸120が回転してエンジン10が回転しているときは、チャックホルダ固定部材200も回転体から離間した状態にある。
【0042】
以上のようにして、エンジン10が面板140に固定され、その面板140のイケール130に対する位置ずれが、エンジン10のリングギア11の回転軸が主軸120の回転軸と一致するように補正され、主軸120とエンジン10のリングギア11とが連結されて回転することにより、モータリングテストが行なわれる。テスト終了後はこれと逆の手順で、エンジン10が再びパレット110に載置されてこの回転駆動装置100から離れた場所に移送される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態としての回転駆動装置の全体構成図である。
【図2】図1に示す全体構成図のうちのパレットの部分を取り出して示した図である。
【図3】エンジンの側から見たイケールとそのイケールに支持された面板を示す図である。
【図4】面板芯出し穴の部分の断面図である。
【図5】主軸まわりを示した断面図である。
【図6】リングギアとワーククランプヅメとの関係を示した図である。
【符号の説明】
【0044】
10 エンジン
11 リングギア
110 パレット
120 主軸
130 イケール
140 面板
180 チャックホルダ
181 連結部材
190 連結制御部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用エンジンに外部から回転駆動力を与える回転駆動装置において、
モータにより回転駆動されてエンジンに回転駆動力を伝達する主軸と、
前記主軸に対し、該主軸の軸方向に対する垂直な方向について位置決めがなされた第1の部材と、
前記第1の部材に、前記主軸の軸方向に対し垂直な面内で移動自在に支持され、該面内で移動することにより、搬送されてきたエンジンの位置ずれに倣って該第1の部材に対し位置ずれを生じ、該位置ずれを生じたまま該エンジンを支持する第2の部材と、
前記第1の部材と前記第2の部材を前記軸方向に貫いて、該第2の部材を、該第2の部材に支持されたエンジンごと該第1の部材に位置決めする位置決めシャフトと、
前記第1の部材に前記第2の部材を介して位置決めされたエンジンに前記主軸を連結する連結部材とを備えたことを特徴とする回転駆動装置。
【請求項2】
前記連結部材に作用して前記主軸と前記エンジンを切り離し、離間することによって該連結部材に該主軸と該エンジンを連結させる連結制御部材を備えたことを特徴とする請求項1記載の回転駆動装置。
【請求項3】
非回転時の前記主軸を支持し該主軸の回転に先立って該主軸から離間する主軸支持部材を備えたことを特徴とする請求項1記載の回転駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−145317(P2006−145317A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334066(P2004−334066)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)
【Fターム(参考)】