説明

図形修正装置

【課題】1つの修正指示図形の入力に基づいて修正対象図形の削り取り及び拡張を実行する図形修正装置を提供する。
【解決手段】図形修正装置10aは、修正対象図形入力部1、表示部2、修正指示図形入力部3、修正部7から構成される。修正部7は、分割部4、選択部5、拡張部6を含む。修正部7は、1つの修正指示図形に基づいて修正対象図形の一部の領域を削り取るとともに、一部の領域を拡張することにより、修正後図形を生成する。分割部4は、修正指示図形に基づいて修正対象図形を複数の分割図形に分割し、複数の分割図形を選択部5に出力する。選択部5は、入力される複数の分割図形の1つを選択し、選択図形を拡張部6に出力する。拡張部6は、修正指示図形に基づいて選択図形を拡張し、拡張した選択図形を修正後図形とし、修正後図形を表示部2に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面図形や立体図形の修正処理を行う図形修正装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、平面図形や立体図形を簡単に修正するため、様々な手法が提案されている。これら従来の手法としては、(1)ユーザが入力装置を介して1つの平面図形に対して修正線を入力することにより、修正線に基づいて2次元領域を削り取る又は2次元領域を拡張する第1の手法、(2)ユーザが入力装置を介して複数の平面図形に対して修正線を入力することにより、修正線に基づいて2次元領域を削り取る又は複数の平面図形を接続する第2の手法、あるいは、(3)ユーザが入力装置を介して立体図形に対して修正線を入力することにより、修正線に基づいて3次元領域を削り取る又は3次元領域を拡張する第3の手法などがある。
【0003】
第1の手法を採用するものとしては、特許文献1がある。特許文献1では、装置が、追加された修正線によって分割された領域の重心を求め、求めた重心によって削り取るか又は拡張するかを判定する。
第2の手法を採用するものとしては、特許文献2がある。特許文献2では、装置が、追加された修正線が同一の平面図形上にあるか異なる平面図形上にあるかを求め、求めた図形と修正指示図形との関係によって領域を削り取るか又は図形を接続するかを判定する。
第3の手法を採用するものとしては、特許文献3がある。特許文献3では、装置が、立体図形に追加された修正線の端点が立体図形内にあるか立体図形外にあるかを求め、求めた立体図形と修正線の端点の関係によって領域を削り取るか拡張するかを判定する。尚、特許文献3では、第1の手法も採用されている。
特許文献1乃至3によれば、ユーザが、修正線を削り取りに使うのか又は拡張に使うのか(あるいは2つの図形を接続するのか)を選ぶ必要がないので、平面図形や立体図形の修正作業が簡便になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−501178号公報
【特許文献2】特開平3−218582号公報
【特許文献3】国際公開2005−104041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の特許文献1乃至3では、いずれも削り取り及び拡張を1つの修正線によって行なうことができないため、直感的な修正作業の妨げになっている。
【0006】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすることは、1つの修正指示図形の入力に基づいて修正対象図形の削り取り及び拡張を実行する図形修正装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明は、修正対象図形を表示し、前記修正対象図形の一部と重畳する修正指示図形の入力に基づいて前記修正対象図形を修正する図形修正装置であって、前記修正指示図形に基づいて前記修正対象図形を複数の分割図形に分割する分割手段と、前記分割図形のいずれか1つを選択図形として選択する選択手段と、前記選択図形を拡張し、前記修正対象図形の修正後の図形である修正後図形とする拡張手段と、を備えることを特徴とする図形修正装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、1つの修正指示図形の入力に基づいて修正対象図形の削り取り及び拡張を実行する図形修正装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図形修正装置10のハードウエア構成図
【図2】図形修正装置10aの機能構成図(第1の実施の形態)
【図3】図形修正処理の流れを示すフローチャート(第1の実施の形態)
【図4】分割部4の詳細を示す図(第1の実施の形態)
【図5】選択部5の詳細を示す図(第1の実施の形態)
【図6】拡張部6の詳細を示す図(第1の実施の形態)
【図7】図形修正処理の1例を示す図(第1の実施の形態)
【図8】修正対象図形20aと修正指示図形30aの重畳画像を示す図(第1の実施の形態)
【図9】図形修正装置10bの機能構成図(第2の実施の形態)
【図10】図形修正処理の流れを示すフローチャート(第2の実施の形態)
【図11】図形修正処理の1例を示す図(第2の実施の形態)
【図12】修正対象図形20bと修正指示図形30bの重畳画像を示す図(第2の実施の形態)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
以下では、図形とは、平面図形又は立体図形を意味する。より詳細には、図形とは、直線、曲線、楕円、楕円体、長方形及び直方体などの幾何図形、幾何図形の組み合わせ、並びに、それらの輪郭及び閉領域を意味する。また、処理対象は、画像(静止画像又は動画像)データに含まれる対象物、数値データを可視化することにより得られる画像データに係る注目領域、平面分布図及び空間分布図に係る注目領域など、図形として切り出し可能であれば特に制限はない。
【0011】
最初に、図1を参照しながら、図形修正装置10のハードウエア構成について説明する。尚、図1のハードウエア構成は一例であり、用途、目的に応じて様々な構成を採ることが可能である。
【0012】
図形修正装置10は、図形の修正処理を行うコンピュータである。
図形修正装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、主メモリ12、記憶装置13、表示メモリ15、コントローラ16、表示装置17、マウス18、キーボード19等を備え、各部はバス14を介して接続されている。
【0013】
CPU11は、主メモリ12または記憶装置13等に格納されるプログラムを主メモリ12のRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス14を介して接続された各部を駆動制御し、図形修正装置10が行う各種処理を実現する。CPU11は、本発明の実施の形態において、図形修正処理を実行する。
【0014】
主メモリ12は、ROM(Read Only Memory)、RAM( Access Memory)等により構成される。ROMは、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。また、RAMは、ROM、記憶装置13等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、CPU11が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0015】
記憶装置13は、HDD(ハードディスクドライブ)や他の記録媒体へのデータの読み書きを行う装置であり、CPU11が実行するプログラム、プログラムの実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OSに相当する制御プログラムや、後述する処理を実行するためのアプリケーションプログラムが格納されている。これらの各プログラムコードは、CPU11により必要に応じて読み出されて主メモリ12のRAMに移され、各種の手段として実行される。
【0016】
表示メモリ15は、CPU11から入力される表示データを一時的に蓄積するバッファである。蓄積された表示データは所定のタイミングで表示装置17に出力される。
表示装置17は、液晶パネル、CRTモニタ等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路で構成され、表示メモリ15を介してCPU11に接続される。表示装置17はCPU11の制御により表示メモリ15に蓄積された表示データをディスプレイ装置に表示する。
【0017】
コントローラ16は、マウス18をバス14に接続させるためのインタフェースであり、マウス18とのデータの送受信を行う。
マウス18、キーボード19は、入力装置であり、ユーザからの指示を受け付けて、データの入力を行う。
ユーザは、表示装置17、マウス18、キーボード19等を使用して対話的に図形修正装置10を操作する。
尚、入力装置は、マウス18、キーボード19に限られず、トラックボール、タッチパネル等であっても良い。
【0018】
<第1の実施の形態>
以下、図2〜図8を参照しながら、第1の実施の形態に係る図形修正装置10aについて説明する。
図形修正装置10aは、内部に孔がない図形を修正対象図形とし、入力される1つの修正指示図形に基づいて、修正対象図形の削り取り及び拡張を行う。
【0019】
以下では、説明を簡単にする為、修正対象図形及び修正指示図形は2値画像とし、各図形を構成する画素を真値(図7等では白として図示)、背景を構成する画素を偽値(図7等では黒として図示)とする。
但し、基になる画像は、グレースケール画像であってもカラー画像であっても良い。
【0020】
最初に、図2〜図6を参照しながら、図形修正装置10aの構成及び図形修正処理について説明する。
図2に示すように、図形修正装置10aは、修正対象図形入力部1、表示部2、修正指示図形入力部3、修正部7から構成される。修正部7は、分割部4、選択部5、拡張部6を含む。
図形修正装置10aのコントローラ16、マウス18、キーボード19等は、CPU11による制御によって、修正指示図形入力部3として機能する。図形修正装置10aの表示メモリ15、表示装置17は、CPU11による制御によって、表示部2として機能する。図形修正装置10aのCPU11は、記憶装置13に記憶されているプログラムを主メモリ12のRAMに読み出して実行することにより、修正部7として機能する。
【0021】
修正対象図形入力部1は、ユーザがマウス18等の入力装置を介して行う指示に従い、例えば、記憶装置13等に記憶されている修正対象図形を入力し、表示部2、分割部4に出力する。
修正指示図形入力部3は、ユーザがマウス18等の入力装置を介して表示装置17に描画させる修正指示図形を入力し、表示部2、分割部4、拡張部6に出力する。ここで、修正指示図形の一部の領域は、修正対象図形の一部の領域と重畳する(共通の画素を含む。)ものとする。仮に修正指示図形が修正対象図形と重畳しない場合、修正対象図形は修正されない。
表示部2は、入力される各種の図形を表示する。
【0022】
修正部7は、1つの修正指示図形に基づいて修正対象図形の一部の領域を削り取るとともに、一部の領域を拡張することにより、修正対象図形の修正後の図形(以下、「修正後図形」と表記する。)を生成する。
分割部4は、修正指示図形に基づいて修正対象図形を複数の小図形(以下、「分割図形」と表記する。)に分割し、複数の分割図形を選択部5に出力する。
選択部5は、入力される複数の分割図形の1つを選択し、選択した分割図形(以下、「選択図形」と表記する。)を拡張部6に出力する。選択されない分割図形は、「削り取り」の対象となり、修正後図形に含まれない。
拡張部6は、修正指示図形に基づいて選択図形を拡張し、拡張した選択図形を修正後図形とし、修正後図形を表示部2に出力する。
【0023】
図3は、図形修正装置10aによる図形修正処理の手順を示している。
最初に、ユーザの指示に従い、修正対象図形入力部1が修正対象図形を入力し、表示部2(表示装置17)が、CPU11の制御により、修正対象図形を表示する(S101)。
次に、ユーザが、マウス18等の入力装置を介して表示装置17に修正指示図形を描画させることにより、修正指示図形入力部3が修正指示図形を入力する(S102)。
次に、修正部7(CPU11)が、S102にて入力される修正指示図形に基づいて修正対象図形を修正し、修正後図形を生成する(S103)。
最後に、表示部2(表示装置17)が、CPU11の制御により、修正後図形を表示する(S104)。
【0024】
ユーザは、S104における修正結果を見ながら、必要に応じて処理を繰り返すことができる。処理を繰り返す場合、図形修正装置10aは、S104における修正後図形を、S101における修正対象図形として入力する。
【0025】
図4は、分割部4の詳細を示している。分割部4は、論理否定部41及び論理積部42を含む。
論理否定部41は、修正指示図形入力部3から入力される修正指示図形の真偽値を反転し、論理積部42に出力する。
論理積部42は、論理否定部41によって真偽値が反転される修正指示図形と、修正対象図形との論理積を算出し、選択部5に出力する。
【0026】
例えば、修正指示図形が、修正対象図形の一部を横断する曲線の場合、論理積部42から出力される論理積算出結果は、真値の画素が連結していない複数の島、すなわち複数の分割図形を含むものとなる。
【0027】
図5は、選択部5の詳細を示している。選択部5は、図形面積算出部51及び最大面積図形選択部52を含む。
図形面積算出部51は、分割部4の論理積部42から出力される複数の分割図形を入力し、各分割図形の面積を算出し、分割図形と面積算出結果とを対応付けて、最大面積図形選択部52に出力する。面積の算出処理は、公知の手法を用いることができる。例えば、図形面積算出部51は、最初に、全ての画素を探索し、分割図形ごとに異なるラベルを画素に付す処理(ラベリング処理)を行う。そして、図形面積算出部51は、ラベルごとに画素数を計数することによって面積を算出する。
最大面積図形選択部52は、図形面積算出部51から出力される面積算出結果に基づいて、最大の面積を有する分割図形を選択図形とし、選択図形を拡張部6に出力する。
【0028】
選択部5の処理によって、ユーザが、マウス18等の入力装置を介して、どの部分を削り取り、どの部分を残すかということを指示する必要がなく、修正作業が簡便になる。
【0029】
図6は、拡張部6の詳細を示している。拡張部6は、論理和部61及び埋立部62を含む。
論理和部61は、選択部5の最大面積図形選択部52から出力される選択図形と、修正指示図形と論理和を算出し、埋立部62に出力する。
例えば、修正指示図形が、修正対象図形の入江領域(背景が鋭角に修正対象図形に入り込んでいる領域)を塞ぐような曲線の場合、論理和部61から出力される論理和算出結果は、内部に孔(背景である偽値の画素が連結している領域)があり、かつ全ての真値の画素が連結している図形となる。
【0030】
埋立部62は、論理和部61から出力される論理和算出結果である図形の内部に存在する孔の画素を真値に置き換える、すなわち内部に存在する孔を埋める。埋立処理は、公知の手法を用いることができる。例えば、埋立部62は、論理和算出結果である図形の真偽値を反転し、反転後の真値の画素が連結している各領域をラベリングする。次に、埋立部62は、ラベルごとの画素数を計数することにより面積を算出し、面積が最大の領域を背景領域とする。そして、埋立部62は、背景領域を除く残りのラベルが付されている領域と、論理和部61から出力される論理和算出結果である図形との論理和を算出する。
【0031】
尚、背景領域の選択条件としては、「面積最大の領域」に代えて、「全体領域の端部の画素を含む領域」(但し、修正対象図形が、全体領域の端部の画素を含まないように表示させておくことが前提となる。)としても良い。また、修正指示図形が、円や楕円などの閉曲線の場合、背景領域の選択条件は、「閉曲線の外部領域」としても良い。
【0032】
拡張部6の処理によって、ユーザが、マウス18等の入力装置を介して、どの部分を拡張し、どの部分を拡張しないかということを指示する必要がなく、修正作業が簡便になる。
更に、選択部5及び拡張部6の処理によって、1つの修正指示図形によって、修正対象図形の「削り取り」及び「拡張」が実行される。
【0033】
次に、図7、図8を参照しながら、図形修正装置10aによる図形修正処理の1例について説明する。
図7、図8に示す例では、修正指示図形が、修正対象図形の一部を横断し、かつ、修正対象図形の入江領域を塞ぐような曲線である。従って、前述した通り、分割部4の論理積部42から出力される論理積算出結果は、複数の分割図形を含むものとなる。また、拡張部6の論理和部61から出力される論理和算出結果は、内部に孔があり、かつ全ての真値が連結している図形となる。
【0034】
図7に示すように、修正対象図形20aは、3箇所の入り江を有する図形である。また、修正指示図形30aは、1本の曲線であり、端部は連結していない(閉曲線ではない)。
図8では、修正対象図形20aの内部に斜線を付し、修正指示図形30aを白線とし、修正対象図形20aと修正指示図形30aの位置関係を図示している。図8に示すように、修正指示図形30aは、修正対象図形20aの一部と重畳している。より詳細には、修正指示図形30aは、修正対象図形20aの2箇所の入り江を塞ぎ、かつ、2箇所の入り江に挟まれている凸部を横断している。
【0035】
図7に示すように、分割部4は、修正指示図形30aの論理否定101及び修正対象図形20aとの論理積102を算出する。論理積102は、真値の画素(図7では白の画素)が連結していない2つの島、すなわち2つの分割図形が含まれている。このように、分割部4は、修正指示図形30aを境界とし、修正対象図形20aを分割する。
次に、選択部5は、面積最大の図形を選択し、選択図形103とする。選択図形103は、修正対象図形20aの凸部が削り取られている。このように、選択部5は、修正指示図形30aの一部を削り取る。
次に、拡張部6は、選択図形103及び修正指示図形30aの論理和104を算出し、埋立処理を行い、修正後図形105を生成する。修正後図形105は、2箇所の入り江が埋められている。このように、拡張部6は、修正対象図形20aの一部を拡張する。
尚、図形修正装置10aは、必要に応じて、修正後図形105の輪郭部分に対して平滑化処理(スムージング処理)を施しても良い。
【0036】
以上、第1の実施の形態に係る図形修正装置10aによれば、1つの修正指示図形に基づいて、内部に孔がない修正対象図形の削り取りと拡張を合わせて実行する。これによって、ユーザは、直感的な図形修正作業ができる。
尚、前述の例では、選択部5は、面積最大の分割図形を選択図形とするとしたが、これに限られるものではなく、ユーザが、マウス18等の入力装置を介して、選択図形を決定するように構成することも有用である。またた、修正指示図形が、円や楕円などの閉曲線の場合、選択図形の選択条件は、「閉曲線の内部」としても良い。
【0037】
また、修正対象図形は2値画像としたが、これに限るものではなく、多値画像(グレースケール画像、カラー画像)であれば、閾値処理により2値化すれば良く、2次元に分布するデータであれば分布密度を2値化して扱えば良く、輪郭を示す座標群データであれば、輪郭によって囲まれる領域を真値とし、その外側を偽値として2値化して扱えば良い。いずれの2値化処理も、公知の手法を適用できる。
また、色空間分布図、立体画像、動画像から検出する時系列輪郭など3次元によって表現される図形の場合、当業者が3次元の立体を表示する際に通常行なう処理、いわゆる投影処理を実行して表示し、投影される像を見ながらユーザが修正指示図形を入力し、修正指示図形を投影方向に向かって3次元化し、3次元の修正対象図形と3次元化の修正指示図形とによって前述した処理と同様の処理を行えばよい。
【0038】
<第2の実施の形態>
以下、図9〜図12を参照しながら、第2の実施の形態に係る図形修正装置10bについて説明する。
図形修正装置10bは、内部に孔がある図形を修正対象図形とし、入力される1つの修正指示図形に基づいて、修正対象図形の削り取り及び拡張を行う。
尚、第1の実施の形態と同じ要素には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0039】
最初に、図9、図10を参照しながら、図形修正装置10bの構成及び図形修正処理について説明する。
図9に示すように、図形修正装置10bは、修正対象図形入力部1、表示部2、修正指示図形入力部3、修正部7、孔抽出部8、孔復元部9から構成される。
図形修正装置10aのCPU11は、記憶装置13に記憶されているプログラムを主メモリ12のRAMに読み出して実行することにより、修正部7に加えて、孔抽出部8、孔復元部9として機能する。
【0040】
修正対象図形入力部1は、修正対象図形を入力し、表示部2、修正部7、孔抽出部8に出力する。
修正指示図形入力部3は、修正指示図形を入力し、表示部2、修正部7に出力する。
【0041】
孔抽出部8は、修正対象図形の内部に存在する孔を抽出し、抽出した孔を孔復元部9に出力する。より詳細には、孔抽出部8は、修正対象図形の真偽値を反転し、反転後の真値の画素が連結している各領域をラベリングする。次に、孔抽出部8は、ラベルごとの画素数を計数することにより面積を算出し、面積が最大の領域を背景領域とする。次に、孔抽出部8は、背景領域を除く残りのラベルが付されている領域の論理否定を算出し、算出結果を孔復元部9に出力する。
尚、背景領域の選択条件としては、「面積最大の領域」に代えて、「全体領域の端部の画素を含む領域」(但し、修正対象図形が、全体領域の端部の画素を含まないように表示させておくことが前提となる。)としても良い。また、修正対象図形の輪郭が、閉曲線の場合、背景領域の選択条件は、「修正対象図形の輪郭の外部領域」としても良い。
【0042】
孔復元部9は、孔抽出部8によって抽出された孔を修正後図形に復元し、復元結果を表示部2に出力する。より詳細には、孔復元部9は、修正部7から出力される修正後図形と、孔抽出部8によって抽出された孔との論理積を算出し、算出結果を表示部2に出力する。
孔抽出部8及び孔復元部9の処理によって、修正部7の処理によって埋められてしまう修正対象図形の内部の孔を復元し、表示部2に出力することができる。
【0043】
図10は、図形修正装置10bによる図形修正処理の手順を示している。
最初に、ユーザの指示に従い、修正対象図形入力部1が修正対象図形を入力し、表示部2(表示装置17)が、CPU11の制御により、修正対象図形を表示する(S201)。
次に、ユーザが、マウス18等の入力装置を介して修正指示図形の入力を指示することにより、修正指示図形入力部3が修正指示図形を入力する(S202)。
次に、孔抽出部8(CPU11)が、S201にて入力される修正対象図形の内部に存在する孔を抽出する(S203)。
次に、修正部7(CPU11)が、S202にて入力される修正指示図形に基づいて修正対象図形を修正し、修正後図形を生成する(S204)。
次に、孔復元部9(CPU11)が、S203にて抽出される修正対象図形の内部に存在する孔を、S204にて生成される修正後図形に復元する(S205)。
最後に、表示部2(表示装置17)が、CPU11の制御により、S205にて孔が復元される修正後図形を表示する(S206)。
【0044】
ユーザは、S206における修正結果を見ながら、必要に応じて処理を繰り返すことができる。処理を繰り返す場合、図形修正装置10bは、S206における孔が復元された修正後図形を、S201における修正対象図形として入力する。
【0045】
次に、図11、図12を参照しながら、図形修正装置10bによる図形修正処理の1例について説明する。
図11、図12に示す例では、修正対象図形の内部に孔が存在する。修正指示図形については、第1の実施の形態と同様、修正対象図形の一部を横断し、かつ、修正対象図形の入江領域を塞ぐような曲線である。
【0046】
図11に示すように、修正対象図形20bは、3箇所の入り江を有し、内部の上方に1つの孔が存在する図形である。また、修正指示図形30bは、1本の曲線であり、端部は連結していない(閉曲線ではない)。
図12では、修正対象図形20bの内部(但し、孔は除く。)に斜線を付し、修正指示図形30bを白線とし、修正対象図形20bと修正指示図形30bの位置関係を図示している。図12に示すように、修正指示図形30bは、修正対象図形20bの一部と重畳している。より詳細には、修正指示図形30bは、修正対象図形20bの2箇所の入り江を塞ぎ、かつ、2箇所の入り江に挟まれている凸部を横断している。
【0047】
図11に示すように、修正部7は、修正対象図形20b及び修正指示図形30bに基づいて、修正後図形106を生成する。
次に、孔抽出部8は、修正対象図形20bの論理否定107を算出し、例えば、面積最大の領域を背景とし、背景を除く領域を孔108として選択し、選択された孔108の論理否定109を算出し、孔復元部9に出力する。このように、孔抽出部8は、修正対象図形20bの内部に存在する孔を抽出する。
次に、孔復元部9は、修正部7によって生成される修正後図形106と、孔抽出部8によって抽出される孔109との論理積110を算出し、表示部2に出力する。このように、孔復元部9は、修正後図形106では消失していた孔109を復元する。
尚、図形修正装置10bは、必要に応じて、孔復元後の修正後図形の輪郭部分に対して平滑化処理(スムージング処理)を施しても良い。
【0048】
以上、第2の実施の形態に係る図形修正装置10bによれば、1つの修正指示図形に基づいて、内部に孔がある修正対象図形の削り取りと拡張を合わせて実行し、修正部7の処理において消失してしまう内部の孔を復元する。これによって、ユーザは、直感的な図形修正作業ができる。また、図形修正装置10bによれば、内部に消失させたくない孔が存在する場合にも、誤って消失させてしまうという不具合が生じない。
【0049】
本発明によれば、1つの修正指示図形によって修正対象図形の削り取りと拡張ができ、直感的な図形修正作業ができる。特に、各種の算出処理を論理演算(論理和、論理積、論理否定等)によって行う為、計算処理を高速に実行することができる。更に、本発明では、基のデータを2値化し、2値画像として取り扱うので、非常に広範囲のデータに対して汎用的に適用できる。
【0050】
本発明は、コンピュータ支援設計によって扱う図形の修正や、地下資源探査に必要な地下構造物の切り出し、画像編集や動画編集やフォント設計に使用される輪郭修正技術、経済分析や金融取引などの統計解析でのデータ抽出結果の修正、クロマキー処理などに代表される色空間での色分離技術などに応用できる。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る図形修正装置の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0052】
1………修正対象図形入力部
2………表示部
3………修正指示図形入力部
4………分割部
5………選択部
6………拡張部
7………修正部
8………孔抽出部
9………孔復元部
10、10a、10b………図形修正装置
20a、20b………修正対象図形
30a、30b………修正指示図形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
修正対象図形を表示し、前記修正対象図形の一部と重畳する修正指示図形の入力に基づいて前記修正対象図形を修正する図形修正装置であって、
前記修正指示図形に基づいて前記修正対象図形を複数の分割図形に分割する分割手段と、
前記分割図形のいずれか1つを選択図形として選択する選択手段と、
前記選択図形を拡張し、前記修正対象図形の修正後の図形である修正後図形とする拡張手段と、
を備えることを特徴とする図形修正装置。
【請求項2】
前記修正対象図形の内部に存在する孔を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段によって抽出された孔を前記修正後図形に復元する復元手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の図形修正装置。
【請求項3】
前記分割手段は、前記修正指示図形の論理否定及び前記修正対象図形の論理積を算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の図形修正装置。
【請求項4】
前記選択手段は、最大の面積を有する前記分割図形を前記選択図形として選択することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の図形修正装置。
【請求項5】
前記拡張手段は、前記選択図形及び前記修正指示図形の論理和を算出し、算出結果の内部に存在する孔を埋めることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の図形修正装置。
【請求項6】
前記復元手段は、前記修正後図形及び前記抽出手段によって抽出された孔の論理積を算出することを特徴とする請求項2に記載の図形修正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−63811(P2012−63811A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205163(P2010−205163)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】