説明

固体電解コンデンサおよびその製造方法

【課題】等価直列抵抗(ESR)が低く、誘電損失の小さい固体電解コンデンサおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】弁作用金属粉末を成形、焼結してなる焼結体1の表面に形成した誘電体皮膜2上に固体電解質層3、カーボン層4および導電体層5を順次形成したコンデンサ素子20に、導電性接着剤を介して陰極端子を接続する固体電解コンデンサにおいて、前記固体電解質層3と前記カーボン層4との界面部、前記カーボン層4と前記導電体層5との界面部および前記導電体層5と前記導電性接着剤との界面部の少なくとも1つの界面部に、前記界面に沿って導電性ナノ粒子11aのみで形成されたナノ導電体層11を有することを特徴とする固体電解コンデンサである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体電解コンデンサおよびその製造方法に関するものであり、特に、ESRが低く、誘電損失が小さい固体電解コンデンサおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、固体電解コンデンサは、以下のような方法によって製造されている。まず、タンタル、ニオブ、アルミニウム等の弁作用金属粉末を加圧成形し、焼結して得られたリード線を有する焼結体に、陽極酸化等によって酸化皮膜を形成する。その後、この酸化皮膜上に二酸化マンガンあるいは導電性高分子からなる固体電解質層を形成する。続いて、固体電解質層上にカーボン層を形成し、さらに、銀、金、銅の金属粒子を含有する導電性ペーストを塗布して導電体層を形成することで、コンデンサ素子を形成する。
その後、リード線と陽極端子を溶接により接続し、導電体層と陰極端子とを導電性接着剤で接続し、その後トランスファーモールドを行い、固体電解コンデンサを得る。
【0003】
近年、高周波特性の優れた、等価直列抵抗(ESR)が低く、かつ誘電損失の小さい固体電解コンデンサが要望されている。この要望に応えるべく、固体電解質である二酸化マンガン、あるいは導電性高分子の導電率向上の取り組みがなされているが、このような取り組みの中で固体電解質の導電率を向上させても、ESRの値が推定値まで低下しない問題が発生している。詳細な検証の結果、製品である固体電解コンデンサのESRは、固体電解コンデンサの充放電電流の導電経路における各部材の抵抗の合計値に比較してはるかに大きいことが判明している。
さらに、ESRが推定値より高い原因が、固体電解質層とカーボン層、または、カーボン層と導電体層との密着性や接触面積といった界面に起因する抵抗であることが判明している。そこで、カーボン層にカーボンナノチューブを含有させて、固体電解質層とカーボン層との密着性を改善させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、従来のマイクロオーダーの導電性粒子を含有させた導電体層では、カーボン層のカーボン粒子と導電体層の導電性粒子の接触面積が小さく、接触抵抗が大きくなるため、固体電解コンデンサのESRが高くなり、誘電損失も大きくなるという問題があった。
そこで、これらの問題を改善するために、導電体層を多層構造にして改善を図る方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。具体的には、導電体粒子の粒径が比較的小さい導電性ペーストを塗布した後に、比較的粒径の大きい導電性粒子を含む導電性ペーストを塗布して導電体層を形成する方法が提案されている。
また、導電体層形成時の熱処理温度を適正化させる方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
さらには、導電体層形成時に使用する導電性ペーストの導電体粒子をナノオーダーの粒径の小さいものに変えたり、マイクロオーダーの粒径の大きいものとナノオーダーの小さいものを混合したり、する方法が提案されている(例えば、特許文献4、5参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−86464号公報
【特許文献2】特開2006−13031号公報
【特許文献3】特開2005−109247号公報
【特許文献4】特開2005−93741号公報
【特許文献5】特開2006−253169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献に記載の技術では、固体電解質層とカーボン層との界面部、またはカーボン層と導電体層との界面部および導電体層と導電性接着剤との界面部に起因する界面抵抗を十分に低下させている状況にあるとはいえず、固体電解コンデンサのESRの低減に関して改善の余地が残されていた。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、等価直列抵抗(ESR)が低く、かつ誘電損失の小さな固体電解コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、
弁作用金属粉末を成形、焼結してなる焼結体の表面に形成した誘電体皮膜上に固体電解質層、カーボン層および導電体層を順次形成したコンデンサ素子に、導電性接着剤を介して陰極端子を接続する固体電解コンデンサにおいて、
前記固体電解質層と前記カーボン層との界面部、前記カーボン層と前記導電体層との界面部および前記導電体層と前記導電性接着剤との界面部の少なくとも1つの界面部に、導電性ナノ粒子のみで形成されたナノ導電体層を有することを特徴とする固体電解コンデンサである。
このように構成された発明によれば、上記各界面部の少なくとも1つの界面部に、導電性ナノ粒子のみで形成されたナノ導電体層を有している。すなわち、それぞれの界面にナノオーダーの超微細な導電性ナノ粒子のみからなる導電体層を形成することにより、各層間の接触面積が大きくなるため、密着性が向上して界面抵抗が低減する。よって、ESRを低くできると共に、誘電損失を小さくすることができる。
【0009】
好ましくは、前記ナノ導電体層は、平均粒径が1〜50nmである導電性ナノ粒子を堆積させた堆積ナノ導電体層であり、前記ナノ導電体層に沿って形成され、前記堆積ナノ導電体層を構成する前記導電性ナノ粒子を保持する導電性コーティング膜をさらに有し、前記ナノ導電体層および前記導電性コーティング膜が、前記カーボン層と前記導電体層との界面部に形成されたことを特徴とする固体電解コンデンサである。
【0010】
好ましくは、前記導電性ナノ粒子は、平均粒径が5〜20nmであることを特徴とする固体電解コンデンサである。
【0011】
好ましくは、前記ナノ導電体層は、平均層の厚さが0.3〜1.0μmであることを特徴とする固体電解コンデンサである。
【0012】
さらに好ましくは、前記ナノ導電体層は、ガス雰囲気中で導電性物質を蒸発させ、ガスとの衝突により冷却凝縮させて前記導電性ナノ粒子を形成し、前記導電性ナノ粒子を前記界面部に堆積させて形成され、前記ナノ導電体層を形成した後に、高真空中で導電性物質を蒸発させ、前記導電性物質を前記ナノ導電体層の表面に薄膜状に凝着させて導電性コーティング膜を形成することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ESRが低く、誘電損失の小さい固体電解コンデンサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明に係る固体電解コンデンサについて説明する。
【0015】
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1〜10によるコンデンサ素子を示す縦断面模式図である。図1(a)は、コンデンサ素子の全体を示す縦断面模式図である。図1(b)は、図1(a)の円形部分を拡大した拡大模式図である。図1(c)は、図1(b)の円形部分を拡大した拡大図である。
まず、弁作用金属粉末としてタンタル粉末を加圧成形し、焼結によりタンタル多孔質焼結体1を形成した。焼結体1は、タンタル製の陽極導出線9が引き出されている。そして、陽極酸化を行うことで焼結体1の表面に誘電体皮膜(タンタル酸化皮膜)2を形成した。
【0016】
次に、この陽極酸化した焼結体素子を硝酸マンガン溶液に含浸し、熱分解により二酸化マンガンを析出させた。この含浸−熱分解の操作を10回繰り返して二酸化マンガンの固体電解質層3を形成した。その後、バインダー樹脂4bを有し、カーボン粒子4aを分散させた液に、誘電体皮膜2および固体電解質層3を形成した焼結体1を浸漬塗布した後引き上げて、200℃で熱処理してカーボン層4を形成した。
【0017】
その後、カーボン層4の表面に、ナノオーダーの粒径を有する導電性ナノ粒子11aを堆積させて、堆積ナノ導電体層110を形成した。本実施例では、堆積ナノ導電体層110は、ナノ粒子合成手法の1つとして、気相法であるガス中蒸着法によって形成した。すなわち、不活性ガス雰囲気中で銀の小片(導電性物質)を蒸発させ、不活性ガスとの衝突により冷却凝縮させて、平均粒径5nmの銀ナノ粒子(導電性ナノ粒子)11aを合成し、銀ナノ粒子11aをカーボン層4表面に沿って堆積させ、平均層厚さが0.5μmの堆積ナノ導電体層110を形成した。
【0018】
さらに、堆積ナノ導電体層110の表面上に、銀を真空蒸着法にて蒸着させて、平均層厚さが0.2μmの導電性コーティング膜111を形成した。すなわち、銀の小片(導電性物質)を高真空中で加熱蒸発させ、銀ナノ粒子11aを堆積ナノ導電体層110の表面に薄膜として凝着させて、導電性コーティング膜111を形成した。これにより、先に堆積させた堆積ナノ導電体層110の銀をコーティングして保持させ、堆積ナノ導電体層110と導電性コーティング膜111を有するナノ導電体層11を形成した。すなわち、カーボン層4と導電体層5との界面部にナノオーダーの粒径を有するナノ導電体層11を形成した。
【0019】
その後、平均粒径1.2μmの銀マイクロ粒子(導電性マイクロ粒子)5aとバインダー樹脂5bとを含む導電性ペーストを塗布し、200℃で1時間乾燥させ、導電体層5を形成した。これにより、コンデンサ素子20を作製した。
【0020】
ここで、コンデンサ素子20の上面20a(陽極導出線9が植立している面)は、固体電解質層(二酸化マンガン層)3が薄い状態となっている。そのため、導電性ナノ粒子11aを堆積等させる処理工程で、陽極導出線9およびコンデンサ素子上面20aに導電性ナノ粒子11aが堆積すると、ナノ粒子11aが固体電解質層3の空隙から侵入して、ショート不良を発生させるおそれがある。
そこで、陽極導出線9およびコンデンサ素子上面20aに、バリアー層(マスキング)を形成すべく絶縁樹脂を塗布して(図示は省略する)、バリアー層上に、導電性ナノ粒子11aを堆積して堆積ナノ導電体層110を形成する処理を行う。
【0021】
(実施例2〜5)
カーボン層4上に形成するナノ導電体層11の銀ナノ粒子11aを、各々平均粒径1nm、10nm、20nm、50nmとした。それ以外は実施例1と同じ作製条件とした。
【0022】
(実施例6〜9)
カーボン層4上に形成するナノ導電体層11の堆積ナノ導電体層110の平均層厚さを、各々0.1μm、0.3μm、1.0μm、5.0μmとした。それ以外は実施例1と同じ作製条件とした。
【0023】
(実施例10)
図2は、本発明の実施例10によるコンデンサ素子を示す縦断面模式図である。図2(a)は、コンデンサ素子の全体を示す全体縦断面図である。図2(b)は、図2(a)の円形部分を拡大した拡大模式図である。図2(c)は、図2(b)の円形部分を拡大した拡大図である。
平均粒径5nmの銀ナノ粒子11aをカーボン層4表面に堆積させ、平均層厚さが0.5μmの堆積ナノ導電体層110を形成した。なお、真空蒸着による導電性コーティング膜111の形成は行わなかった以外は実施例1と同じ作製条件とした。
【0024】
(従来例1)
図3は、従来例1によるコンデンサ素子を示す縦断面模式図である。図3(a)は、コンデンサ素子を拡大した全体縦断面図である。図3(b)は、図3(a)の円形部分を拡大した拡大模式図である。図3(c)は、図3(b)の円形部分を拡大した拡大図である。
実施例1と同様の方法で、カーボン層4まで形成した後、従来の1.2μmの平均粒径をもつ銀マイクロ粒子5aを含む導電性ペーストに、カーボン層4形成後のもの(焼結体1+誘電体皮膜2+固体電解質層3+カーボン層4)を浸漬塗布して、カーボン層4の表面に沿って導電体層5を形成した。すなわち、カーボン層4形成後にナノオーダーの粒径を有する銀ナノ粒子11aの堆積と銀蒸着を行わなかった以外は実施例1と同じ作製条件とした。
【0025】
(従来例2)
図4は、従来例2によるコンデンサ素子を示す縦断面模式図である。図4(a)は、コンデンサ素子を拡大した全体縦断面模式図である。図4(b)は、図4(a)の円形部分を拡大した拡大模式図である。図4(c)は、図4(b)の円形部分を拡大した拡大図である。
実施例1と同様の方法で、カーボン層4を形成した後、従来の1.2μmの平均粒径を有する銀マイクロ粒子5aと平均粒径5nmを有する銀ナノ粒子11aとを混合させた導電性ペーストに、カーボン層4形成後のもの(焼結体1+誘電体皮膜2+固体電解質層3+カーボン層4)を浸漬塗布して、カーボン層4の表面に沿って、導電体層50を形成した。すなわち、カーボン層4形成後にナノオーダーの銀ナノ粒子11aの堆積と銀蒸着を行わなかった以外は実施例1と同じ作製条件とした。
【0026】
(従来例3)
図5は、従来例3によるコンデンサ素子を示す縦断面模式図である。図5(a)は、コンデンサ素子を拡大した全体縦断面模式図である。図5(b)は、図5(a)の円形部分を拡大した拡大模式図である。図5(c)は、図5(b)の円形部分を拡大した拡大図である。
実施例1と同様の方法で、カーボン層4を形成した後、平均粒径5nmのナノオーダーの粒径を有する銀ナノ粒子11aを80%含んだバインダー樹脂5bを有する導電性ペーストに、カーボン層4形成後のもの(焼結体1+誘電体皮膜2+固体電解質層3+カーボン層4)を浸漬塗布して、200℃で1時間乾燥させ、第一の導電体層51を形成した。その後、平均粒径1.2μmの銀マイクロ粒子5aを含む導電性ペーストを塗布し、同様に200℃で1時間乾燥させ、第二の導電体層5を形成した。すなわち、カーボン層4形成後にナノオーダーの粒径を有する銀ナノ粒子11aの堆積と銀蒸着を行わなかった以外は実施例1と同じ作製条件とした。
【0027】
図6は、固体電解コンデンサを示す断面模式図である。
実施例1〜10および従来例1〜3によるコンデンサ素子20の導電体層5と陰極端子7とを導電性接着剤6を介して接続し、それと同時に陽極導出線9と陽極端子8とを抵抗溶接により接続した。続いて、トランスファーモールド法により、外装10で封止した。以上の工程により、固体電解コンデンサ21を作製した。
そして、それぞれの固体電解質コンデンサ21において、100kHzでのESR[mΩ]と120Hzでの誘電損失[%]を比較した。各条件100個のデータの平均値を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
表1に示すとおり、実施例1〜10は、いずれも従来例1〜3よりESRが低く、誘電損失も小さいことが分かる。
【0030】
ここで、堆積ナノ導電体層110の導電性ナノ粒子11aの平均粒径を1〜50nmとすることにより、ESRが低く、誘電損失が少ない固体電解コンデンサを得ることができ(実施例1〜5)、特に平均粒径を5〜20nmとすることがより好ましい(実施例1、3、4)。このように、導電性ナノ粒子の平均粒径を5〜20nmとすることで、好適な結果が得られる理由は以下のように考察される。すなわち、上記のように導電性ナノ粒子の平均粒径を設定することで、粒径が小さくなり過ぎることに起因して発生する各導電性ナノ粒子の凝集を防止しながらも、過度に粒径が大きくないことからカーボン粒子の周囲に導電性ナノ粒子を均一に堆積させることが可能となるものと考察される。
【0031】
さらに、堆積ナノ導電体層110の平均堆積層厚さを0.1〜5.0μmとすることにより、ESRと誘電損失が少ない固体電解コンデンサを得ることができ(実施例6〜9)、特に平均堆積層厚さを0.3〜1.0μmとすることがより好ましい(実施例7、8)。このように、堆積ナノ導電体層の平均層厚さを0.1〜5.0μmとすることで、好適な結果が得られる理由は以下のように考察される。すなわち、堆積ナノ導電体層の平均層厚さを上記のように設定することで、平均層厚さが小さくなり過ぎることに起因して発生する導電性ナノ粒子の堆積むらを防止しながらも、過度に平均層厚さが大きくないことから、堆積ナノ導電体層の界面部(カーボン層と導電体層との界面部)からの欠落を防止することができる(平均層厚さが大きくなり過ぎると、界面部に対して堆積ナノ導電体層を保持させることが困難となる)ものと考察される。
【0032】
加えて、実施例10のように導電性コーティング膜111を省略した場合でも、従来例に対して有利なESRおよび誘電損失を得ることができるが、カーボン層4上にナノオーダーの粒径を有する銀ナノ粒子11aを均一かつ安定して保持する観点からは、実施例1〜9のように、堆積ナノ導電体層110を形成した後に、導電性コーティング膜111を形成することがより好ましい。
【0033】
図7および図8は、実施例1のカーボン層4およびナノ導電体層11を示し、図7はSEM像、図8はTEM像である。図7に示すように、カーボン層4上全体に均一に銀ナノ導電体層11が形成されている。また、図8に示すように、カーボン粒子4aの周囲にナノオーダーの粒径を有する銀ナノ粒子11aが付着し保持されている。このため、その後に形成される導電体層5との接合性も改善する。
【0034】
カーボン層4の表面にナノオーダーの銀ナノ粒子11aを堆積させ、銀蒸着により保持した層(堆積ナノ導電体層および導電性コーティング膜)110,111を形成することで、カーボン層に対する接触面積が大きくなり、その後に形成される導電性ペースト層(導電体層)5との接合性も改善される。この結果、界面部における界面抵抗を十分に低減することができ、層間の密着性が向上するため、ESRの低く、誘電損失の小さい固体電解コンデンサを得ることができる。
【0035】
従来例3もカーボン層4上にナノオーダーの銀ナノ粒子11aを含む第一の層51を形成させ接触面積の拡大を試みているが、導電性ペーストから導電体層51を形成するため、カーボン層4と導電体層5との界面に少なからず導電性ナノ粒子11aを保持する絶縁体のバインダー樹脂5bとの接触部分が発生する。よって、導電性ナノ粒子のみでナノ導電体層を形成する本発明の実施例の方が、下地であるカーボン層4、強いてはその後に形成される導電体ペースト層(導電体層)5との接触面積をより大きくできるため、優れている。
【0036】
なお、上記実施例では、固体電解質3に二酸化マンガンを使用したが、導電性高分子でも同等の効果が得られる。
【0037】
また、上記実施例では、カーボン層4と導電体層(銀層)5との界面部に導電性ナノ粒子11aを形成したが、二酸化マンガンや導電性高分子といった固体電解質層3とカーボン層4との界面部に、あるいは導電体層(導電性ペースト層)5と陰極端子7の接続に使用する導電性接着剤との界面部に用いても、各層間の接触面積をより大きくできるため同様の効果が得られる。
すなわち、固体電解質層3とカーボン層4との界面部、カーボン層4と導電体層5との界面部および導電体層5と接着層6との界面部の少なくとも1つの界面部に導電性ナノ粒子11aを堆積することにより、本発明の効果が得られる。
【0038】
さらに、上記実施例では、導電性粒子5a,11aを銀としたが、導電性粒子5a、11aはカーボン、銀、金、銅の中から選択される少なくとも1種の元素を用いても同様の効果が得られる。
【0039】
加えて、導電性ペースト(導電体層)5は、平均粒径が1.2μmの銀粒子5aのみからなるものに限られない。すなわち、ナノオーダーの粒径を有する銀ナノ粒子11aを含有する導電性ペースト(導電体層)5を使用し、本発明と組み合わせれば、より低いESRの固体電解コンデンサを得ることができるのは当然であろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例1〜9によるコンデンサ素子を示す縦断面模式図である。
【図2】本発明の実施例10によるコンデンサ素子を示す縦断面模式図である。
【図3】従来例1によるコンデンサ素子を示す縦断面模式図である。
【図4】従来例2によるコンデンサ素子を示す縦断面模式図である。
【図5】従来例3によるコンデンサ素子を示す縦断面模式図である。
【図6】固体電解コンデンサを示す断面模式図である。
【図7】実施例1のカーボン層およびナノ導電体層を示すSEM像である。
【図8】実施例1のカーボン層およびナノ導電体層を示すTEM像である。
【符号の説明】
【0041】
1 焼結体
2 誘電体皮膜
3 固体電解質層
4 カーボン層
4a カーボン粒子
4b カーボン層のバインダー樹脂
5 導電体層
5a 導電性マイクロ粒子
5b 導電体層のバインダー樹脂
6 導電性接着剤
7 陰極端子
8 陽極端子
9 陽極導出線
10 外装
11 ナノ導電体層
11a 導電性ナノ粒子
110 堆積ナノ導電体層
111 導電性コーティング膜
20 コンデンサ素子
20a コンデンサ素子の上面
21 固体電解コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁作用金属粉末を成形、焼結してなる焼結体の表面に形成した誘電体皮膜上に、固体電解質層、カーボン層および導電体層を順次形成したコンデンサ素子に、導電性接着剤を介して陰極端子を接続する固体電解コンデンサにおいて、
前記固体電解質層と前記カーボン層との界面部、前記カーボン層と前記導電体層との界面部および前記導電体層と前記導電性接着剤との界面部の少なくとも1つの界面部に、導電性ナノ粒子のみで形成されたナノ導電体層を有することを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記ナノ導電体層は、平均粒径が1〜50nmである導電性ナノ粒子を堆積させた堆積ナノ導電体層であることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記ナノ導電体層に沿って形成され、前記堆積ナノ導電体層を構成する前記導電性ナノ粒子を保持する導電性コーティング膜をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
前記ナノ導電体層および前記導電性コーティング膜が、前記カーボン層と前記導電体層との界面部に形成されたことを特徴とする請求項2または3に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
前記導電性ナノ粒子は、平均粒径が5〜20nmであることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】
前記ナノ導電体層は、平均層厚さが0.3〜1.0μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項7】
弁作用金属粉末を成形、焼結してなる焼結体の表面に誘電体皮膜を形成した後、該誘電体皮膜上に固体電解質層、カーボン層および導電体層を順次形成したコンデンサ素子に、導電性接着剤を介して陰極端子を接続する固体電解コンデンサの製造方法において、
前記固体電解質層と前記カーボン層との界面部、前記カーボン層と前記導電体層との界面部および前記導電体層と前記導電性接着剤との界面部の少なくとも1つの界面部に、導電性ナノ粒子のみで形成されたナノ導電体層を形成することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項8】
前記ナノ導電体層は、
ガス雰囲気中で導電性物質を蒸発させ、ガスとの衝突により冷却凝縮させて前記導電性ナノ粒子を形成し、前記導電性ナノ粒子を前記界面部に堆積させて形成されることを特徴とする請求項7に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項9】
前記ナノ導電体層を形成した後に、高真空中で導電性物質を蒸発させ、前記導電性物質を前記ナノ導電体層の表面に薄膜状に凝着させて導電性コーティング膜を形成することを特徴とする請求項8に記載の固体電解コンデンサの製造方法。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−252881(P2009−252881A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97041(P2008−97041)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)