説明

固体電解コンデンサおよびその製造方法

【課題】導電性高分子の配向性が高く、ESR特性に優れた固体電解コンデンサおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】固体電解コンデンサは、粗面化された弁作用金属箔2の表面に、酸化皮膜2a、導電性高分子からなる固体電解質層7が順次形成された構造を有しており、固体電解質層7は、導電性高分子を包接するホスト分子を含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子からなる固体電解質層を有する固体電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサは、アルミニウム、タンタル、ニオブ等の弁作用金属からなり、表面に多数のエッチングピットや微細孔が形成された陽極箔または焼結体を備えており、陽極体の表面には、誘電体となる酸化皮膜が形成されている。
この酸化皮膜からの電気的な引き出しは、導電性を有する電解質によって行われており、電解コンデンサにおける真の陰極は、この電解質が担っている。
この真の陰極として機能する電解質は、電解コンデンサの電気特性に大きな影響を及ぼすため、様々な種類の電解質が採用された電解コンデンサが提案されている。
【0003】
このような電解コンデンサのうち、固体電解コンデンサは、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などの導電性高分子を電解質として用いるものであり、液状の電解質を用いた電解コンデンサと比較して高周波領域におけるインピーダンス特性に優れている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
導電性高分子は、電子受容性の物質(ドーパント)を有しており、このドーパントが高分子鎖から電子を引き抜いて、高分子内に正孔(キャリア)を発生させることにより、高分子は導電性を有する。
また、このような導電性高分子は、モノマーを化学酸化重合することによって形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001―189242号公報
【特許文献2】特開2001―148328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、導電性高分子は、高分子鎖が規則的に配列されない(配向性がない)ため、上述したような固体電解コンデンサでは、導電性高分子の導電性が十分に発揮されていなかった。そこで、導電性高分子の配向性を高めて、固体電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR)を低減させる方法が望まれていた。
【0007】
本発明の目的は、導電性高分子の配向性が高く、ESR特性に優れた固体電解コンデンサおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の固体電解コンデンサは、弁作用金属粉末を成形後、焼結することにより形成された焼結体、または粗面化された弁作用金属箔の表面に、酸化皮膜と、導電性高分子からなる固体電解質層が順次形成された固体電解コンデンサであって、前記固体電解質層が、前記導電性高分子を包接するホスト分子を含むことを特徴とする。
【0009】
一般的に、包接(クラスレイト)とは、三次元構造体を構成する分子または分子の集合体(以下、ホスト分子という)の内部に形成される空間(キャビティ)に、別の原子や分子(以下、ゲスト分子という)が入りこむことをいう。具体的には、ホスト分子とゲスト分子とを直接接触させたり、ゲスト分子の溶液にホスト分子を溶かした後、ホスト分子を再結晶化することなどによって、ゲスト分子はホスト分子のキャビティに取り込まれる。
【0010】
上記の構成によると、導電性高分子がホスト分子に包接されるため、導電性高分子をホスト分子の構造に従って規則的に配列させることができる。
そのため、固体電解質層の導電性が高くなり、固体電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR)を低減することができる。
【0011】
前記導電性高分子は、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、およびポリエチレンジオキシチオフェンのうちの何れかであることが好ましい。これらの導電性高分子は、導電性および耐熱性に優れているからである。
【0012】
本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、弁作用金属粉末を成形後、焼結することによって形成された焼結体、または粗面化された弁作用金属箔の表面に、酸化皮膜を形成してコンデンサ素子を形成後、前記酸化皮膜の表面に導電性高分子からなる固体電解質層を形成する固体電解コンデンサの製造方法であって、前記固体電解質層を形成する工程において、前記導電性高分子をホスト分子に包接させることを特徴とする。
【0013】
固体電解質層を形成する工程において使用する導電性高分子またはモノマーを含む溶液に、ホスト分子を添加するなどの方法によって、導電性高分子はホスト分子に包接される。
これにより、導電性高分子がホスト分子の構造に従って規則的に配列されるため、固体電解質層の導電性が高くなり、固体電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR)を低減することができる。
【0014】
本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、前記固体電解質層を形成する工程において、前記コンデンサ素子を、モノマーと酸化剤との混合溶液に浸漬、または、モノマー溶液と酸化剤溶液とに順次浸漬して、前記モノマーを化学酸化重合しており、前記混合溶液または前記モノマー溶液に、前記ホスト分子を添加してもよい。
【0015】
本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、前記固体電解質層を形成する工程において、前記コンデンサ素子を、予め重合した導電性高分子を分散させた導電性高分子溶液に浸漬して、溶媒を蒸発させており、前記導電性高分子溶液に、前記ホスト分子を添加してもよい。
【0016】
本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、前記固体電解質層を形成する前に、前記酸化皮膜の表面に、前記ホスト分子を付着させてもよい。
【0017】
上述した本発明の固体電解コンデンサ、および、本発明の固体電解コンデンサの製造方法において、前記ホスト分子としては、例えば、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン)、4,4-ヒドロキシフェニル安息香酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、シクロペンタジエン系化合物とオレフィン系化合物とのディールスアルダー付加体、または胆汁酸が挙げられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、導電性高分子はホスト分子に包接されているため、導電性高分子はホスト分子の構造に従って規則的に配列されている。
そのため、固体電解質層の導電性が高くなり、固体電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR)を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る固体電解コンデンサのコンデンサ素子の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る固体電解コンデンサの構成を示す概念図である。
【図3】本発明の実施形態に係る固体電解コンデンサの製造工程を示すフローチャートである。
【図4】他の実施形態に係る固体電解コンデンサの製造工程を示すフローチャートである。
【図5】他の実施形態に係る固体電解コンデンサの製造工程を示すフローチャートである。
【図6】他の実施形態に係る固体電解コンデンサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、粗面化された弁作用金属箔を用いた固体電解コンデンサに本発明を適用した一例について説明する。
【0021】
本実施形態の固体電解コンデンサ1は、コンデンサ素子6と、このコンデンサ素子6を収納する外装ケース(図示省略)と、外装ケースの開口部を封止する封口材(図示省略)とから構成されている。
【0022】
図1に示すように、コンデンサ素子6は、陽極箔2と陰極箔3とがセパレータ4を介して巻回された構造を有する。
【0023】
陽極箔2は、アルミニウム等の弁作用金属で形成されている。図2に示すように、この陽極箔2の表面は、エッチング処理により粗面化(エッチングピット形成)されるとともに、陽極酸化(化成)による陽極酸化皮膜2aが形成されている。
また、陰極箔3も、陽極箔2と同様にアルミニウム等の弁作用金属からなり、その表面は粗面化されるとともに自然酸化皮膜3aが形成されている。
なお、本発明の弁作用金属箔および酸化皮膜は、それぞれ陽極箔2および陽極酸化皮膜2aに相当する。
【0024】
陽極箔2および陰極箔3にはそれぞれリードタブ(図示省略)が接続されており、陽極箔2および陰極箔3からはこのリードタブを介してリード線5がそれぞれ引き出されている。
【0025】
セパレータ4は、多孔質体であって、具体的には、例えば、マニラ紙やヘンプ紙等の紙繊維や、これらの紙繊維にガラス繊維、樹脂繊維が混抄されたものが用いられている。
【0026】
また、図2に示すように、セパレータ4の両面には導電性高分子からなる固体電解質層7が形成されている。つまり、陽極箔2とセパレータ4との間、および陰極箔3とセパレータ4との間に固体電解質層7が挟持されている。
導電性高分子としては、導電性および耐熱性に優れたポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、またはポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等が用いられ、これらは、モノマーの化学酸化重合により形成されている。
【0027】
また、固体電解質層7は、導電性高分子を包接するホスト分子を含んでいる。ホスト分子は、固体電解質層7全体に含まれている。ホスト分子が導電性高分子を包接していることにより、導電性高分子は、ホスト分子の構造に従って規則的に配列されている。
【0028】
ホスト分子としては、導電性高分子を包接可能であって、導電性高分子を包接した状態で規則的に配列されるものであれば、1つの分子の内部に形成された空間(キャビティ)にゲスト分子を取り込むものであっても、複数の分子の間に形成された空間(キャビティ)にゲスト分子を取り込むものであってもよい。
また、ホスト分子のキャビティの構造は、いわゆる筒状構造、層状構造、格子状構造のいずれであってもよい。
ホスト分子は、具体的には、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン)、4,4−ヒドロキシフェニル安息香酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等の4−ヒドロキシフェニル基を有する化合物、シクロペンタジエン系化合物とオレフィン系化合物とのディールスアルダー付加体、または胆汁酸が好ましい。これらのホスト分子は、層状構造の分子集合体の層間に形成される空間に、ゲスト分子を包接するものである。
【0029】
次に、固体電解コンデンサ1の製造工程について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0030】
まず、陽極箔2および陰極箔3を、表面にエッチング処理して粗面化する。その後、粗面化された陽極箔2の表面に化成処理を施して陽極酸化皮膜2aを形成する。陰極箔3には、耐水性処理および/または熱処理にて自然酸化皮膜3aが形成される(酸化皮膜形成工程)。なお、自然酸化皮膜に替えて、チタン等の弁金属または弁金属化合物を蒸着させたり、カーボン等を担持させてもよい。
【0031】
そして、陽極箔2と陰極箔3とを所定の寸法に裁断後、それぞれにリードタブを介してリード線5を接続するとともに、陽極箔2と陰極箔3とをセパレータ4を介して巻回し、円柱状のコンデンサ素子6を作製する(電極箔巻回工程)。
【0032】
その後、アジピン酸アンモニウム水溶液中で、コンデンサ素子6に電圧を印加して素子化成(切り口化成)を行った後、コンデンサ素子6を加熱して、セパレータ4の炭化処理を行う(切り口化成・炭化処理)。
【0033】
次に、コンデンサ素子6を、酸化剤溶液に浸漬し、引き上げて乾燥する(酸化剤溶液浸漬工程)。なお、酸化剤溶液または後述するモノマー溶液には、ドーパントを添加する。また、ドーパントを添加する代わりに、酸化剤として、ドーパントを兼ねる酸化剤を用いてもよい。
【0034】
次に、コンデンサ素子6を、モノマー溶液に浸漬する(モノマー溶液浸漬工程)。このモノマー溶液には、ホスト分子が添加されて溶解している。ホスト分子の添加量は、例えば、モノマーに対して25wt%以下であることが好ましく、特に、10wt%前後であることが好ましい。また、溶媒としては、例えば、i−プロパノールを用いる。
【0035】
続いて、コンデンサ素子6を所定の温度で一定時間加熱し、モノマーを酸化剤によって化学重合させて、導電性高分子を形成する(重合工程)。これにより、陽極箔2と陰極箔3との間に、固体電解質層7が形成される。
なお、上述の酸化剤溶液浸漬工程から重合工程までを、固体電解質層形成工程とする。
【0036】
また、この固体電解質層形成工程において、ホスト分子は、重合により形成された導電性高分子を包接する。
ホスト分子として、例えば、上述した4−ヒドロキシフェニル基を有する化合物、シクロペンタジエン系化合物とオレフィン系化合物とのディールスアルダー付加体、または胆汁酸を用いた場合、重合工程において、コンデンサ素子6を加熱後、冷却することにより、溶液中に溶けていたホスト分子が再結晶化される(つまり、分子が集まって、規則的・周期的に配列される)。この再結晶化と同時に、導電性高分子はホスト分子のキャビティに取り込まれる。
【0037】
以上の工程により得られた固体電解質層7を有するコンデンサ素子6を、外装ケースに収納して、リード線5を外部に引き出した状態で外装ケースの開口部を封口材で密封する(組立工程)。最後に、高温雰囲気下において、所定の電圧を印加してエージング処理を行い、固体電解コンデンサ1の製造工程を完了する。
【0038】
以上説明した固体電解コンデンサ1では、導電性高分子は、ホスト分子に包接されているため、ホスト分子の構造に従って規則的に配列されている。
そのため、固体電解質層7の導電性が高くなり、固体電解コンデンサ1の等価直列抵抗(ESR)を低減することができる。
【0039】
また、上述したように、ホスト分子は固体電解質層7全体に含まれるため、固体電解質層7の導電性が向上する。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上記実施形態は以下のように変更して実施することができる。
【0041】
1]例えば、固体電解質層形成工程において、コンデンサ1の製造工程において、コンデンサ素子6を、モノマー溶液に浸漬した後、酸化剤溶液に浸漬してもよく(変更形態1)、モノマーと酸化剤との混合溶液に浸漬してもよい(変更形態2)。これらの場合、モノマー溶液または混合溶液にホスト分子を添加する。
【0042】
2]また、図4に示すように、固体電解質層形成工程の前に、水または有機溶媒中にホスト分子を溶解したホスト分子溶液にコンデンサ素子6を浸漬する工程(ホスト分子溶液浸漬工程)を追加したときは、モノマー溶液にはホスト分子を添加しなくてもよい(変更形態3)。
このホスト分子溶液浸漬工程により、ホスト分子は、酸化皮膜2a、3aの表面に付着するとともに、セパレータ4に含浸される。その後、モノマー溶液浸漬工程において、酸化皮膜2a、3aおよびセパレータ4に付着したホスト分子の一部は、モノマー溶液に溶解し、この状態で重合することにより、ホスト分子は導電性高分子を包接する。したがって、ホスト分子は、少なくとも固体電解質層7の酸化皮膜2a、3aおよびセパレータ4の境界付近に存在するが、固体電解質層7のほぼ全体に分散させることも可能である。
【0043】
3]また、図5に示すように、固体電解質層形成工程は、予め重合した導電性高分子が分散された導電性高分子溶液(例えば、PEDOT/PSS分散液)に浸漬して、その後、溶媒を蒸発させることにより、固体電解質層7を形成する方法であってもよい。
この場合、図5に示すように、導電性高分子溶液にホスト分子を添加することにより、固体電解質層7にホスト分子を含有させてもよい(変更形態4)。ホスト分子の添加量は、例えば、導電性高分子を形成するためのモノマーに対して、50wt%以下であることが好ましい。
また、変更形態3のように、固体電解質層形成工程の前に、ホスト分子溶液浸漬工程を追加することにより、固体電解質層7にホスト分子を含有させてもよい(変更形態5)。
【0044】
以上説明した前記実施形態および前記変更形態1〜5では、粗面化された弁作用金属箔を用いた巻回型の固体電解コンデンサに、本発明を適用した例を挙げて説明したが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、弁作用金属箔を用いた積層型の固体電解コンデンサや、図6に示すような、弁作用金属からなる焼結体を用いた固体電解コンデンサ10にも適用できる。
【0045】
固体電解コンデンサ10は、表面に酸化皮膜11aが形成された略直方体状の焼結体11と、酸化皮膜11aの表面に順次形成された、固体電解質層12、カーボン層13および銀層14と、銀層14に導電性接着剤15を介して接続された陰極リードフレーム16と、焼結体11にその一端部が埋設されている陽極リード17と、陽極リード17に接続された陽極リードフレーム18と、外装樹脂19とから構成されている。なお、酸化皮膜11aが形成された焼結体11が、本発明のコンデンサ素子に相当する。
【0046】
固体電解コンデンサ10は、以下の製造工程によって製造される。
まず、陽極リード17を一部埋設した状態で、弁作用金属粉末を略直方体状に成形した後、焼結することによって焼結体11を形成する。この焼結体11を、リン酸水溶液等の化成液に浸漬しながら電圧を印加して、焼結体11の表面に陽極酸化(化成)による酸化皮膜11aを形成する。
【0047】
以上により作製されたコンデンサ素子を、酸化剤溶液と、ホスト分子が添加されたモノマー溶液に順次浸漬して、化学酸化重合により、酸化皮膜11aの表面に、ホスト分子を含む固体電解質層12を形成する。
なお、ホスト分子を含む固体電解質層を形成する方法としては、前記変更形態1〜5と同様の方法を用いてもよい。
【0048】
その後、固体電解質層12の表面に、カーボンペースト、銀ペーストを順次塗布、乾燥して、カーボン層13および銀層14を順次形成し、この銀層14に陰極リードフレーム16を接続する。そして、陽極リード17に陽極リードフレーム18を接続した後、トランスファーモールドにより外装樹脂19を施す。
【0049】
次に、本発明の具体的な実施例を従来例と合わせて説明する。
【0050】
[実施例]
実施例1〜3として、前記実施形態の固体電解コンデンサの製造工程において、モノマー溶液に、表1に示す配合比で、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ホスト分子)を添加して、固体電解コンデンサを作製した。
【0051】
[従来例]
従来例として、モノマー溶液にホスト分子を添加しない点以外は、実施例と同様の方法で、固体電解コンデンサを作製した。
【0052】
なお、上記の実施例1〜3および従来例において、導電性高分子としては、PEDOTを使用した。また、各固体電解コンデンサは、定格電圧2.5V、静電容量1200μFとした。
【0053】
上記の実施例1〜3および従来例の固体電解コンデンサの初期の電気特性(静電容量、ESRおよび漏れ電流)を測定した。その結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1に示すように、固体電解質層がホスト分子を含有する実施例1〜3は、固体電解質層がホスト分子を含有しない従来例に比べて、ESR、静電容量、漏れ電流の値が良好となっている。
また、その中でも、モノマーとホスト分子との配合比が10:1(モノマーに対するホスト分子の添加量10wt%)の実施例2は、実施例1、3に比べてESRが低減されており、より改善されていることが分かる。
【0056】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではない。
【0057】
例えば、上記実施例においては、導電性高分子としてPEDOTを用いたが、ポリアニリン、ポリピロールまたはポリチオフェンを用いた場合にも同様の効果が得られる。
【0058】
また、上記実施例においては、ホスト分子として、4−ヒドロキシフェニル基を有する化合物を用いたが、シクロペンタジエン系化合物とオレフィン系化合物とのディールスアルダー付加体、または胆汁酸を用いても同様の効果が得られる。
【0059】
また、上述した変更形態1〜5の方法で製造された固体電解コンデンサであっても、同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0060】
1 固体電解コンデンサ
2 陽極箔(弁作用金属箔)
2a 陽極酸化皮膜
3 陰極箔
3a 自然酸化皮膜
4 セパレータ
5 リード線
6 コンデンサ素子
7 固体電解質層
10 固体電解コンデンサ
11 焼結体
11a 酸化皮膜
12 固体電解質層
13 カーボン層
14 銀層
15 導電性接着剤
16 陰極リ−ドフレーム
17 陽極リード
18 陽極リードフレーム
19 外装樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁作用金属粉末を成形後、焼結することにより形成された焼結体、または粗面化された弁作用金属箔の表面に、酸化皮膜と、導電性高分子からなる固体電解質層が順次形成された固体電解コンデンサであって、
前記固体電解質層が、前記導電性高分子を包接するホスト分子を含むことを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記ホスト分子が、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン)、4,4−ヒドロキシフェニル安息香酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、シクロペンタジエン系化合物とオレフィン系化合物とのディールスアルダー付加体、または胆汁酸であることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記導電性高分子が、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンおよびポリエチレンジオキシチオフェンのうちの何れかであることを特徴とする請求項1または2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
弁作用金属粉末を成形後、焼結することによって形成された焼結体、または粗面化された弁作用金属箔の表面に、酸化皮膜を形成してコンデンサ素子を形成後、前記酸化皮膜の表面に導電性高分子からなる固体電解質層を形成する固体電解コンデンサの製造方法であって、
前記固体電解質層を形成する工程において、前記導電性高分子をホスト分子に包接させることを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項5】
前記固体電解質層を形成する工程において、
前記コンデンサ素子を、モノマーと酸化剤との混合溶液に浸漬、または、モノマー溶液と酸化剤溶液とに順次浸漬して、前記モノマーを化学酸化重合しており、
前記混合溶液または前記モノマー溶液に、前記ホスト分子を添加することを特徴とする請求項4に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項6】
前記固体電解質層を形成する工程において、
前記コンデンサ素子を、予め重合した導電性高分子を分散させた導電性高分子溶液に浸漬して、溶媒を蒸発させており、
前記導電性高分子溶液に、前記ホスト分子を添加することを特徴とする請求項4に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項7】
前記固体電解質層を形成する前に、前記酸化皮膜の表面に、前記ホスト分子を付着させることを特徴とする請求項4に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項8】
前記ホスト分子が、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン)、4,4−ヒドロキシフェニル安息香酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、シクロペンタジエン系化合物とオレフィン系化合物とのディールスアルダー付加体、または胆汁酸であることを特徴とする請求項4〜7の何れかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−219468(P2010−219468A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67516(P2009−67516)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)