説明

固体電解コンデンサの製造装置

【課題】均一な固体電解質層を安定して形成し、かつ生産性、メンテナンス性に優れた固体電解コンデンサの製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】陽極体1に陽極電極5を貼り付ける接合部と、この陽極体1を重合槽3の重合液4に送り込む供給部と、重合液4中の陽極体1の幅方向両端に非接触状態で配設された陰極電極7からなり、重合液4中で陽極電極5と陰極電極7に電源13から電圧を印加して電解重合を行って導電性高分子からなる固体電解質層を形成する構成により、重合液4の循環が良好になって生産性が向上し、重合槽3内壁への導電性高分子の生成付着や陰極電極7の実効面積の変化を抑制して固体電解質層が均一に形成でき、さらに陰極電極7の一端を導電板8で連結して重合槽3外部で支持する構成により、陰極電極7の除去を容易にしてメンテナンス性向上が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器に使用されるコンデンサの中で、特に、導電性高分子を固体電解質に用いた固体電解コンデンサを製造する際に、上記固体電解質を電解重合により形成するのに最適な固体電解コンデンサの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高周波化に伴い、これらに使用されるコンデンサとしても高周波領域における低インピーダンス化を実現するために、電解重合により得られる高電導度の導電性高分子を固体電解質として用いた固体電解コンデンサが提案され、種々検討されている。
【0003】
図6はこの種の従来の固体電解コンデンサの固体電解質を電解重合により層状に形成するための固体電解コンデンサの製造装置の構成を示した正面断面図、図7は同側面断面図であり、図6と図7において、30は重合槽、31はこの重合槽30の搬送方向に沿って複数が定間隔で設けられた堰であり、この堰31によって重合槽30を搬送方向と交差する方向に複数の槽が夫々独立して形成された構成にするようにしたものである。32はこの重合槽30の各槽内に充填された重合液であり、この重合液32は固体電解質の骨格となる高分子のモノマーと導電性を付与するドーパントから構成されているものである。
【0004】
33は図示しない供給部から連続して供給される帯状の電極箔からなる陽極体であり、この陽極体33は上記重合槽30の堰31により仕切られて独立した複数の槽に夫々供給されるものである。34は上記陽極体33の上面に貼り付けられた陽極電極、35はこの陽極電極34に電源36を介して給電を行うための給電ローラであり、この給電ローラ35は上記陽極電極34を陽極体33に押し当てて貼り付ける役割も兼ねているものである。
【0005】
37は上記陽極電極34の対極となる陰極電極であり、この陰極電極37は上記各堰31を介して隣接する独立した個々の槽に配設されるように断面コ字状に形成されると共に、先端部が上記陽極体33に貼り付けられた陽極電極34に向かうように傾斜が設けられており、このように構成された複数の陰極電極37は平板状の導電性金属棒38によって一体に接続され、かつ、上記電源36に接続されているものである。
【0006】
39は上記堰31を介して独立した個々の槽に配設されるスペーサであり、個々の槽に充填された重合液32の蒸発を防止する目的のものである。40は重合液供給部、41は重合液排出部、42は入口側搬送ローラ、43は出口側搬送ローラである。
【0007】
このように構成された従来の固体電解コンデンサの製造装置は、陽極電極34を上面に貼り付けた陽極体33を重合液供給部40側から投入して入口側搬送ローラ42を経由して重合槽30内の各槽内の重合液32内に夫々浸漬して搬送させると共に、電源36から陽極電極34と陰極電極37間に電圧を印加し、上記陽極電極34を重合の開始点として電解重合を行い、陽極体33の表面に導電性高分子からなる固体電解質層を形成した後、出口側搬送ローラ43を経由して重合液排出部41側へ取り出すように構成されたものであった。
【0008】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2000−200734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記従来の固体電解コンデンサの製造装置では、堰31により夫々独立した槽に配設された一対の陰極電極37間には、電解重合を制御するために設定した電圧の電位差、電圧変動等による微小な電位差が生じているために堰31の上部にまで重合液32が浸透し、このために陰極電極37どうしが重合液32と接触することによって陰極電極37に導電性高分子が生成付着し、これを起点として堰31や重合槽30の内壁にまで導電性高分子が生成付着してしまう。このために陰極電極37の実効面積が変化し、陽極体33に対して固体電解質層の形成が均一にできないという課題があった。
【0010】
また、重合槽30を堰31によって夫々独立した狭い槽にした構成のため、この独立した狭い槽の中を循環させる重合液32の量を増やすと槽から溢れ出してしまうために重合液32の循環量を増やすことが難しく、これにより、電解重合反応を連続して行うことにより重合液32の組成が変化して均一な固体電解質層を形成することが困難であるという課題があった。
【0011】
さらに、上記堰31や重合槽30の内壁に付着した導電性高分子を除去するのが困難であり、薬品を用いて溶解する場合には発煙硝酸等の高濃度酸を用いなければならないために、製造装置が設置された現場において作業することは極めて難しく、また、ブラシを用いて除去する場合には、導電性高分子の付着強度が高いことに加え、各陽極体33毎に堰31が設けられ、かつ、各堰31間が狭いために除去作業が困難で時間が掛かり、生産性が悪いという課題があった。
【0012】
本発明はこのような従来の課題を解決し、導電性高分子からなる固体電解質層を陽極体に均一に形成することができ、かつ、生産性ならびにメンテナンス性に優れた固体電解コンデンサの製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明は、重合液が充填された上面開放の重合槽と、この重合槽内の重合液中に帯状の電極箔からなる陽極体を送り込む陽極体供給部と、上記陽極体が重合液中に浸漬される手前で陽極体の上面に帯状の陽極電極を貼り付ける陽極電極接合部と、この陽極電極が接合された状態で重合液中に浸漬されて搬送される陽極体の幅方向の両端に陽極体ならびに重合槽と夫々非接触状態で位置するように配設され、かつ、陽極体の搬送方向に沿って長尺状に形成された陰極電極と、上記陽極電極ならびに陰極電極間に電圧を印加する電源からなり、上記重合液中で陽極電極ならびに陰極電極間に電圧を印加した状態で陽極体を搬送することにより、電解重合によって導電性高分子からなる固体電解質層を陽極体の表面に形成するようにした構成のものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明による固体電解コンデンサの製造装置は、電解重合により導電性高分子からなる固体電解質層を形成するための陰極電極を陽極電極が貼り付けられた陽極体の幅方向の両端に陽極体ならびに重合槽と夫々非接触状態で配設した構成により、陰極電極の周辺には障害となるものが存在しないために重合液の循環が良好になり、重合液の循環量を増やして重合電流を高めることができるようになるために生産性の向上が図れるばかりでなく、重合槽の内壁に導電性高分子が生成付着したり、陰極電極の実効面積が変化したりすることを極めて小さくすることができるようになるため、陽極体に対して導電性高分子からなる固体電解質層を均一に形成することができるようになり、さらに、陽極体が下方に湾曲しても陽極体と陰極電極の距離を常に一定に保つことができるため、均一な固体電解質層を安定して形成することができるという効果が得られるものである。
【0015】
また、陽極体の両端に配設した複数の陰極電極の一端を導電板で連結し、この導電板を重合槽と分離して支持する構成にしたことにより、重合槽からの陰極電極の除去が容易に行えるようになるため、重合槽等に導電性高分子が不要に生成付着した場合でも、極めて容易に除去することが可能になり、メンテナンス性の向上を図ることができるという効果も得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施の形態)
以下、実施の形態を用いて、本発明の特に全請求項に記載の発明について説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施の形態による固体電解コンデンサの製造装置の構成を示した正面断面図、図2は同側面断面図、図3は同製造装置の分配槽に設けられた堰を示した斜視図、図4は同製造装置の重合液を循環させるための循環タンクの構成を示した断面図、図5は同製造装置により製造される固体電解コンデンサの陽極体を示した要部平面図である。
【0018】
図1〜図5において、1は本実施の形態による固体電解コンデンサの製造装置を用いて製造される陽極体であり、この陽極体1は厚さ0.1mmの帯状のアルミニウム箔からなり、表面を電気化学的に粗面化し、酸化アルミニウムの誘電体酸化皮膜を形成した後に所定の形状に打ち抜き加工し、両端に3mm×4mmの大きさの矩形部1aが形成され、この矩形部1aには、ステンレス、ニッケル等の金属に粘着樹脂を塗布した絶縁性テープ2が長手方向に連続して貼り付けられることにより、後述する導電性高分子からなる固体電解質層が形成される陰極部1bと陽極引き出し部1cに区分されている。また、上記陰極部1bに形成された誘電体酸化皮膜上には、硝酸マンガン水溶液を含浸させた後に熱分解することによって二酸化マンガンからなる導電層が形成されているものである。
【0019】
3は重合槽であり、この重合槽3は上面を開放した長尺状に構成されたものである。4はこの重合槽3内に充填されて電解重合を行うための重合液であり、本実施の形態においては、この重合液4として、ピロールモノマー0.2モル/リットル、アルキルナフタレンスルホネート0.1モル/リットル水溶液を用いたものである。
【0020】
5は帯状の陽極電極であり、この陽極電極5はリールに巻回された状態(図示せず)で図示しない供給部から供給され、同じくリールに巻回された状態で(図示せず)図示しない供給部から供給される帯状の陽極体1上に重なり合い、陽極電極5に電源13を介して給電を行うための給電ローラ6により陽極電極5を陽極体1上に押し付けて貼り付けるようにするものであり、このようにして貼り付けを終えた状態は図5に示すように、陽極体1の陽極引き出し部1cと絶縁性テープ2の一部を覆うように貼り付けられ、この状態で上記重合槽3内に送り込まれるものである。
【0021】
7は陰極電極であり、この陰極電極7はステンレスや白金、チタン等の金属、あるいはカーボンからなる導電体によって形成されると共に、上記陽極電極5が貼り付けられた状態で重合液4中に浸漬されて搬送される陽極体1の搬送方向に沿って長尺状に形成され、上記重合液4中で搬送される陽極体1の幅方向の両端に陽極体1ならびに重合槽3と夫々非接触状態で位置するように配設されたものであり、本実施の形態においては、上記陽極体1を搬送方向と交差する方向に定間隔で複数並設し、各陽極体1の幅方向の両端に陰極電極7が夫々同様に配設されるように構成したものである。
【0022】
また、上記陽極電極5と陰極電極7との最短距離は6〜16mmとし、これに対応して陽極体1の矩形部1aの端部と陰極電極7との最短距離は2〜12mmの範囲にするのが望ましい。この最短距離よりも小さい場合には矩形部1aと陰極電極7の間に乱流が発生し、陰極電極7から発生する気泡が陽極体1に付着するために好ましくなく、また最短距離よりも大きい場合には電解重合反応が遅くなるために好ましくないものである。
【0023】
また、上記陰極電極7の重合槽3内への浸漬は、少なくとも陽極体1より下方に配置されるようにすることが望ましく、好ましくは陽極体1の下面より10mm以上下方に位置させ、かつ、重合槽3の底面に接触しないように配置するのが良いものである。このように構成することにより、電解重合反応によって組成が変化した重合液4を陽極体1毎に分離して搬送方向に循環させることができるようになり、また、重合槽3の底部に導電性高分子が形成されることを防止することができるようになるものである。
【0024】
8は上記複数の陰極電極7の夫々の一端を連結した導電板、9はこの導電板8を支持する導電板支持脚であり、この導電板支持脚9は上記重合槽3と分離して外部に設けられることによって重合槽3と直接接触しないようにしているものである。
【0025】
10は上記重合槽3の上流側に設けられた供給槽、11はこの供給槽10に連結して設けられた分配槽であり、上記供給槽10内には重合液4が常に満杯状態になるように供給され、このように満杯状態になった重合液4は供給槽10と分配槽11間に設けられた堰10aから溢れ出て分配槽11内に流れ込み、さらに、この分配槽11内で満杯状態になった重合液4は分配槽11と重合槽3間に設けられた堰11aから溢れ出て重合槽3内に流れ込むように構成されているものである。
【0026】
また、上記堰11aは上端部に複数のスリット11bが等間隔で設けられており、このスリット11bは上記重合槽3内に配設された陰極電極7間の中心と夫々対応するように形成されているため、このスリット11bから分岐して流れ出た重合液4は各陰極電極7間の中心に向かって流れるようになるものである。
【0027】
12は上記重合槽3の下流側に設けられた排出槽であり、重合槽3に設けられた堰3aから溢れ出た重合液4がこの排出槽12内に流れ込み、後述する循環タンクを介してこの排出槽12から上記供給槽10へと重合液4を循環させるようにしているものである。
【0028】
13は電源であり、上記給電ローラ6と複数の陰極電極7を連結した導電板8間に所定の電圧を印加して電解重合を行うように構成されているものである。14は上記重合電極5が貼り付けられた陽極体1を重合液4中に案内する入口側搬送ローラ、15は電解重合を終えた陽極体1を重合液4から引き上げるための出口側搬送ローラ、16はこの出口側搬送ローラ15によって重合液4から引き上げられた陽極体1に貼り付けられた重合電極5を陽極体1から引き剥がす剥離ローラ、17はこの重合電極5が剥がされた陽極体1を搬送する搬送ローラである。
【0029】
18はポリ塩化ビニール系発泡樹脂板からなる矩形状の遮蔽板であり、この遮蔽板18は上記各陰極電極7間に夫々配設されることにより重合液4上に浮遊し、これによって重合液4の蒸発を防止して液面を安定に保つように設けられたものである。また、この遮蔽板18は重合液4の液面で陰極電極7との接触を防止するために、導電板8に図示しない絶縁樹脂製のロープで半固定状態にされているものである。
【0030】
19は上記排出槽12と供給槽10の経路の一部に設けられて重合液4を循環させる循環部を構成する循環タンクである。20は上記排出槽12から排出された重合液4(以下、旧液と呼ぶ)が循環タンク19内に上方から送り込まれる旧液流入管、20aはこの旧液流入管20内に送り込まれた旧液の一部を循環タンク19外へ強制的に排出するために旧液流入管20から分岐して設けられた旧液排出口である。21は新しい重合液4(以下、新液と呼ぶ)を循環タンク19内に上方から送り込むための新液流入管である。
【0031】
22は上記循環タンク19内で混合された旧液と新液(以下、混合重合液と呼ぶ)が送り出されるように循環タンク19の下方に設けられた混合重合液供給管、23はこの混合重合液供給管22の一部に設けられて混合重合液を上記供給槽10へ送り込むためのポンプ、22aはこの混合重合液供給管22内に送り込まれた混合重合液の一部を強制的に循環タンク19内に上方から送り込むために混合重合液供給管22から分岐して設けられた混合重合液循環口である。24は上記混合重合液供給管22と混合重合液循環口22aの流量を夫々調整するためのバルブである。
【0032】
25は循環タンク19内に配設されて重合液4の温度調整を行うためのヒーター、26は循環タンク19の外壁に設けられて重合液4の温度調整を行うための冷却ジャケットであり、このヒーター25ならびに冷却ジャケット26により重合液4の温度を常に所定の温度に保つように制御するものである。
【0033】
このように構成された本実施の形態による固体電解コンデンサの製造装置の動作について説明すると、まず、帯状のアルミニウム箔からなる陽極体1と帯状の陽極電極5を図示しない夫々の供給部から供給して重ね合わせ、給電ローラ6により陽極体1上に陽極電極5を貼り付け、この状態で入口側搬送ローラ14を経由して重合槽3内に充填された重合液4中に浸漬する。
【0034】
続いて、上記陽極体1を重合液4中を搬送させると共に、電源13から給電ローラ6と導電板8を介して各陰極電極7間に所定の電圧を印加することにより、陽極電極5を重合の開始点として電解重合反応が開始され、陽極体1に設けられた陰極部1bの表裏面全体にポリピロールの導電性高分子からなる固体電解質層が生成される。
【0035】
そして、約15分程度で所望の固体電解質層が形成され、出口側搬送ローラ15を経由して固体電解質層が形成された陽極体1が重合液4から引き上げられ、続いて剥離ローラ16によって陽極体1に貼り付けられていた陽極電極5が引き剥がされ、陽極体1のみが搬送ローラ17によって搬送され、図示しない次の工程へと送り込まれるものである。
【0036】
また、上記重合液4は供給槽10から分配槽11を経て重合槽3内に送り込まれ、電解重合反応に用いられた後に排出槽12に流れ込んで排出される。そして、循環タンク19により新しい重合液4が加えられて所定の組成と濃度の混合重合液が作製され、常に一定の組成と濃度に調合された状態で上記供給槽10に循環供給されるようになるものである。
【0037】
このように本実施の形態による固体電解コンデンサの製造装置は、電解重合により導電性高分子からなる固体電解質層を形成するための陰極電極7を陽極電極5が貼り付けられた陽極体1の幅方向の両端に非接触状態で配設した構成により、陰極電極7の周辺には障害となるものが存在しないために重合液4の循環が良好になって重合液4の循環量を従来の0.6〜0.8L/分から20〜25L/分へと飛躍的に増やすことができるようになり、これにより重合電流を大幅に高めることができるようになるために重合反応も従来の30分から15分へと半減することが可能になり、生産性を一挙に2倍にすることができるようになるものである。
【0038】
また、このように重合液4の循環量を飛躍的に増加させることにより、重合槽3の内壁に導電性高分子が生成付着したり、陰極電極7の実効面積が変化したりすることを極めて小さくすることができるようになるため、陽極体1に対して導電性高分子からなる固体電解質層を均一に形成することができるようになり、さらに、陽極体1が下方に湾曲しても陽極体1と陰極電極7の距離を常に一定に保つことができるため、均一な固体電解質層を安定して形成することができるという効果が得られるものである。
【0039】
また、陽極体1の両端に配設した複数の陰極電極7の一端を夫々導電板8で連結し、この導電板8を重合槽3の外部で支持する構成にしたことにより、重合槽3からの陰極電極7の除去が容易に行えるようになるため、重合槽3等に導電性高分子が不要に生成付着した場合でも、極めて容易に除去することが可能になり、メンテナンス性の向上を図ることができるという効果も得られるものである。
【0040】
また、このように大量の重合液4を循環させるための循環タンク19は、旧液排出口20aを設けることにより排出槽12から送り込まれた旧液を優先して排出するようにすると共に、混合重合液循環口22aを設けることにより混合重合液の組成と濃度をより安定するようにしており、これにより、重合反応により組成や濃度が変化した重合液4を常に一定の組成と濃度に調合した重合液4として循環させることができるようになるため、常に安定した固体電解質層の形成を行うことが可能になるものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明による固体電解コンデンサの製造装置は、均一な固体電解質層を安定して形成することができるばかりでなく、生産性とメンテナンス性を大きく向上させることができるという効果を有し、各種電子機器用として、特に、高周波領域における低インピーダンス化が要求される用途の固体電解コンデンサを製造する製造装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施の形態による固体電解コンデンサの製造装置の構成を示した正面断面図
【図2】同側面断面図
【図3】同製造装置の分配槽に設けられた堰を示した斜視図
【図4】同製造装置の重合液を循環させるための循環タンクを示した断面図
【図5】同製造装置により製造される固体電解コンデンサの陽極体を示した要部平面図
【図6】従来の固体電解コンデンサの製造装置の構成を示した正面断面図
【図7】同側面断面図
【符号の説明】
【0043】
1 陽極体
1a 矩形部
1b 陰極部
1c 陽極引き出し部
2 絶縁性テープ
3 重合槽
3a、10a、11a 堰
4 重合液
5 陽極電極
6 給電ローラ
7 陰極電極
8 導電板
9 導電板支持脚
10 供給槽
11 分配槽
11b スリット
12 排出槽
13 電源
14 入口側搬送ローラ
15 出口側搬送ローラ
16 剥離ローラ
17 搬送ローラ
18 遮蔽板
19 循環タンク
20 旧液流入管
20a 旧液排出口
21 新液流入管
22 混合重合液供給管
22a 混合重合液循環口
23 ポンプ
24 バルブ
25 ヒーター
26 冷却ジャケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合液が充填された上面開放の重合槽と、この重合槽内の重合液中に帯状の電極箔からなる陽極体を送り込む陽極体供給部と、上記陽極体が重合液中に浸漬される手前で陽極体の上面に帯状の陽極電極を貼り付ける陽極電極接合部と、この陽極電極が接合された状態で重合液中に浸漬されて搬送される陽極体の幅方向の両端に陽極体ならびに重合槽と夫々非接触状態で位置するように配設され、かつ、陽極体の搬送方向に沿って長尺状に形成された陰極電極と、上記陽極電極ならびに陰極電極間に電圧を印加する電源からなり、上記重合液中で陽極電極ならびに陰極電極間に電圧を印加した状態で陽極体を搬送することにより、電解重合によって導電性高分子からなる固体電解質層を陽極体の表面に形成するようにした固体電解コンデンサの製造装置。
【請求項2】
複数の陽極体を搬送方向と交差する方向に定間隔で並列に配設して電解重合を行うようにした請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造装置。
【請求項3】
複数の陰極電極の一端を夫々導電板で連結し、この導電板を重合槽と分離、または絶縁して支持するようにした請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造装置。
【請求項4】
定量の重合液が充填される供給槽と、この供給槽から溢れ出た重合液を重合槽内に設けられた各陰極電極間に対応して均等に供給するための堰を設けた分配槽とを重合槽の上流側に設けると共に、重合槽から溢れ出た重合液が流れ込む排出槽を重合槽の下流側に設け、上記排出槽と供給槽を連結し、この連結経路の一部に循環部を設けることにより重合槽内の重合液を循環させるようにした請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造装置。
【請求項5】
排出槽と供給槽を連結した経路の一部に設けた循環部は、重合液が充填されるタンクと、このタンク内に排出槽からの旧液が上方から送り込まれると共に旧液の一部をタンク外へ排出するための排出口が分岐して設けられた旧液流入管と、新しい重合液をタンク内に上方から送り込む新液流入管と、旧液と新液が混合された混合重合液をタンクの下方から排出してポンプを介して上記供給槽へ供給すると共に混合重合液の一部をタンク内に上方から送り込むための循環口が分岐して設けられた混合重合液供給管と、重合液の温度を調整するための温度制御部により構成された請求項4に記載の固体電解コンデンサの製造装置。
【請求項6】
陰極電極間に重合液に浮遊する遮蔽板を配設した請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造装置。
【請求項7】
陰極電極が、少なくとも陽極体の下方に配置した請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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