固体電解コンデンサ
固体電解コンデンサ(A1)は、弁作用金属からなる多孔質焼結体(1)と、この多孔質焼結体から突出する内部陽極端子(11a、11b)と、この内部陽極端子よりも下方に位置するとともに、面実装に利用される底面を有している外部陽極端子(21a、21b)と、を備える。内部陽極端子(11a、11b)は、多孔質焼結体(1)の高さ方向中央よりも下方に設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁作用金属からなる多孔質焼結体を備えた固体電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、固体電解コンデンサは、たとえばCPUなどのデバイスから発生するノイズ除去や、電子機器への電源系の安定化のために用いられる。図11は、下記特許文献1に開示された固体電解コンデンサを示す。図示された固体電解コンデンサXは、弁作用を有する金属材料(以下、単に「弁作用金属」と言う)の多孔質焼結体90を備えている。陽極ワイヤ91は、その一部が多孔質焼結体90内に埋設するように設けられている。陽極ワイヤ91のうち多孔質焼結体90から突出した部分が内部陽極端子91aとなっている。導電性樹脂92は、多孔質焼結体90上に形成されており、陰極を構成している。導体部材93,94は、それぞれ内部陽極端子91aおよび導電性樹脂92と導通している。導体部材93,94のうち、保護樹脂95から露出した部分が、外部接続用の外部陽極端子93aおよび外部陰極端子94aとなる。ノイズ除去や電源系の安定化のためには、固体電解コンデンサXの高周波数特性の向上が必要である。
【0003】
【特許文献1】特開2003−163137号公報
【0004】
一般に、固体電解コンデンサのインピーダンスZの周波数特性は、以下の数式1により決定される。
【0005】
【数1】
【0006】
上記の式から理解されるように、自己共振点よりも周波数の低い低周波数領域においては、1/ωCが支配的である。そのために同領域では、固体電解コンデンサの大容量化によりインピーダンスを小さくすることができる。一方、自己共振点付近の周波数領域(高周波数領域)においては、抵抗Rが支配的である。そのために、固定電解コンデンサの低ESR(等価直列抵抗)化を図ることが望ましい。さらに、自己共振点よりも周波数の高い超高周波数領域においては、ωLが支配的となる。そのために、固体電解コンデンサの低ESL(等価直列インダクタンス)化が求められる。
【0007】
上述した従来の固体電解コンデンサXにおいても、種々の方法で低ESR化および低ESL化が図られている。具体的には、多孔質焼結体90の形状や陽極ワイヤ91の形状を改善すること、あるいは多孔質焼結体90内に形成される固体電解質層の材質を改善することにより、低ESR化および低ESL化が図られている。
【0008】
しかしながら、近年、CPUは高クロック化される傾向にあり、それに応じて、発生するノイズの周波数も、より高い周波数成分を含むものとなっている。また、電子機器の高速化およびデジタル化に伴い、高速応答が可能な電源系が必要となっている。これらの用途に用いられる固体電解コンデンサに対しては、さらなる低ESL化が望まれる。
【0009】
このような状況の下、上述した固体電解コンデンサXには次のような問題がある。すなわち、多孔質焼結体90や陽極ワイヤ91の形状を改善してそれらのインダクタンスを小さくしても、これら以外の部材(たとえば導体部材93,94)のインダクタンスが大きいままとされている。しかしながら、このようなことでは、上記低ESL化の要請に十分に応えることはできない。つまり、固体電解コンデンサXにおいては、デバイス全体として低ESL化を図るという点において未だ改善する余地があった。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものである。そこで、本発明は、低ESL化が可能な固体電解コンデンサを提供することをその課題とする。
【0011】
本発明によって提供される固体電解コンデンサは、弁作用金属からなる多孔質焼結体と、上記多孔質焼結体から突出する内部陽極端子と、上記内部陽極端子よりも下方に位置するとともに、面実装に利用される底面を有している外部陽極端子と、を備えている。上記内部陽極端子は、上記多孔質焼結体の高さ方向中央よりも下方に設けられている。たとえば、上記内部陽極端子は、上記多孔質焼結体の底面に接するように当該多孔質焼結体内に埋設されていてもよい。あるいは、上記内部陽極端子は、上記多孔質焼結体の外部から当該多孔質焼結体の底面に固定されていてもよい。
【0012】
このような構成によれば、上記外部陽極端子から上記内部陽極端子までの距離を小さくすることができる。上記固体電解コンデンサとこのコンデンサが実装される基板との間を流れる電流の経路において、上記外部陽極端子と上記内部陽極端子との間の部分は、上下方向に起立した部分となる。このような起立した部分は、高調波成分を含むような高周波数領域の交流電流に対して、インダクタンスとして働き、上記固体電解コンデンサ全体のインピーダンスを大きくする原因となる。したがって、上記起立した部分を小さくすることにより、インダクタンスを小さくし、高周波数領域における低ESL化を図ることができる。
【0013】
好ましくは、上記多孔質焼結体としては、複数の扁平状焼結体要素からなる。これらの焼結体要素は、起立した姿勢でそれらの厚み方向に積層されている。このような構成によれば、コンデンサを構成する多孔質焼結体の体積を大きくし、大容量化を図ることができる。また、上記各焼結体要素は、扁平であるためにその内部を流れる電流の経路が短くなり、低ESL化に有利である。さらに、複数の焼結体要素を起立した状態でそれらの厚み方向に積層することで、各焼結体要素に設けられた内部陽極端子を固体電解コンデンサの下方寄りに配置することが可能となる。これにより、各内部陽極端子は、外部陽極端子を基準として低い位置に設けられることとなり、コンデンサの大容量化と低ESL化とを図るのに好適である。
【0014】
好ましくは、本発明の固体電解コンデンサは、上記多孔質焼結体の下面に接合され、かつ少なくともその一部が外部陰極端子として機能する陰極金属板をさらに具備している。この場合、上記外部陽極端子の底面および上記外部陰極端子の底面は、相互に面一状である。
【0015】
このような構成によれば、上記陰極金属板は、上下方向において大きく嵩張ることがない。このため、上記外部陽極端子の底面を上記多孔質焼結体に近い位置に配置することが可能であり、上記外部陽極端子の底面から上記内部陽極端子までの距離をさらに小さくすることができる。したがって、上記固体電解コンデンサの低ESL化に適している。また、上記外部陽極端子および外部陰極端子の底面が面一状であるために、上記固体電解コンデンサを面実装するのに便利である。
【0016】
好ましくは、上記陰極金属板は、中央部と、上記外部陰極端子として機能する縁部とを含んでいる。上記中央部および上記縁部の間には段差が設けられている。上記中央部は、上記多孔質焼結体に接合された上面、および、樹脂により覆われた下面を含んでいる。
【0017】
このような構成によれば、コンデンサを構成する部品点数を少なくするとともに、上記外部陰極端子と上記多孔質焼結体との間の低抵抗化および低インダクタンス化を図ることができる。さらに、上記中央部は樹脂により外部と絶縁される。このために、上記固体電解コンデンサが実装される基板の一部と、上記中央部とが不当に導通することを回避することができる。
【0018】
好ましくは、上記内部陽極端子は、第1陽極棒および第2陽極棒からなる。これら第1陽極棒および第2陽極棒は、上記多孔質焼結体から互いに異なる方向に突出している。
【0019】
このように複数の陽極棒を使用する構成によれば、これら陽極棒に分散して電流が流れるために、低ESR化および低ESL化を図るのに有利である。また、各陽極棒の突出方向を相違させることにより、各陽極棒を上記多孔質焼結体における下方寄りに設けて低ESL化を図るのに適している。これとは異なり、全ての陽極棒が同一方向に突出している場合には、これら陽極棒が上記多孔質焼結体の同一面に集中して設けられることとなる。その結果、すべての陽極棒を上記多孔質焼結体の下方寄りに配置することが困難となる。
【0020】
さらには、第1および第2の陽極棒をそれぞれ入力用および出力用の内部陽極端子とすることにより、いわゆる三端子型(もしくは四端子型)の固体電解コンデンサとして構成することが可能であり、高周波数特性の向上を図ることができる。
【0021】
好ましくは、上記第1陽極棒および第2陽極棒は、互いに逆方向に突出している。このような構成によれば、上記第1陽極棒および第2陽極棒を相互に離間して配置し、上記多孔質焼結体における下方寄りに設けるのに好適である。たとえば、複数の焼結体要素を各々が起立した姿勢で積層する場合には、上記第1および第2陽極棒の突出方向を、上記焼結体要素の積層方向に対して直行する方向とする。これにより、上記第1および第2陽極棒を、各焼結体要素の下方寄りに適切に設けることができる。
【0022】
好ましくは、本発明の固体電解コンデンサは、上記第1陽極棒および第2陽極棒を相互に接続する導体部材をさらに具備している。
【0023】
このような構成によれば、上記第1陽極棒および第2陽極棒を電気的に並列とすることが可能であり、低抵抗化に有利である。また、三端子型あるいは四端子型の固体電解コンデンサにおいては、上記導体部材を利用して、回路電流が上記多孔質焼結体を迂回して流れることを可能とするバイパス電流経路を形成することができる。たとえば、このバイパス電流経路の抵抗を、上記多孔質焼結体の抵抗よりも小さくすることにより、回路電流の直流成分を上記バイパス電流経路に迂回させて、上記多孔質焼結体における発熱を抑制することができる。
【0024】
好ましくは、上記導体部材は、上記多孔質焼結体の少なくとも一部を覆う金属カバーを含んでいる。
【0025】
このような構成によれば、上記金属カバーにより上記多孔質焼結体を保護することが可能である。上記金属カバーは、たとえば上記多孔質焼結体を保護するための手段である保護樹脂と比べて、機械的強度が高い。このため、上記多孔質焼結体に発熱が生じても、上記固体電解コンデンサ全体が不当に撓むことを抑制することができる。また、金属カバーは、保護樹脂よりも熱伝導性に優れているために、上記多孔質焼結体に発生した熱を放散するのに適している。したがって、上記固体電解コンデンサの許容電力損失を向上するのに好適である。
【0026】
好ましくは、上記導体部材は、陽極金属板を含んでいる。この陽極金属板は、上記多孔質焼結体の下面に絶縁体を介して積層されるとともに、外部陽極端子ととして機能する部分を含んでいる。
【0027】
このような構成によれば、上記陽極金属板は、段差部などを有しない平板状とすることが可能であり、上記第1陽極棒および第2陽極棒間のインダクタンスを小さくすることができる。
【0028】
好ましくは、本発明の固体電解コンデンサは、上記多孔質焼結体と上記絶縁体との間に介在する陰極金属板をさらに具備している。この陰極金属板は、外部陰極端子として機能する部分を含んでいる。
【0029】
このような構成によれば、固体電解コンデンサが実装される基板と上記陽極金属板との距離を小さくすることが可能である。したがって、上記基板と上記陽極金属板との間を流れる電流の経路が短くなり、そのインダクタンスを小さくするのに有利である。
【0030】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施例に基づく固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図2】図1の固体電解コンデンサを示す斜視図である。
【図3】本発明の第2実施例に基づく固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図4】図3の固体電解コンデンサの要部を示す斜視図である。
【図5】本発明の第3実施例に基づく固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】第3実施例の固体電解コンデンサを示す斜視図である。
【図8】第3実施例の固体電解コンデンサの要部を示す分解斜視図である。
【図9】本発明の第4実施例に基づく固体電解コンデンサを示す斜視図である。
【図10】本発明第5実施例に基づく固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図11】本発明に基づく固体電解コンデンサの変形例を示す図である。
【図12】本発明に基づく固体電解コンデンサの別の変形例を示す図である。
【図13】従来の固体電解コンデンサを示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0033】
図1および図2は、本発明の第1実施例に基づく固体電解コンデンサを示している。図示された固体電解コンデンサA1は、4つの多孔質焼結体(焼結体要素)1および8本の陽極ワイヤ(陽極棒)10a,10bを備えており、保護樹脂51によりこれらの多孔質焼結体1が覆われた構成とされている。なお、図2においては、保護樹脂51は、省略されている。
【0034】
4つの多孔質焼結体1は、弁作用金属であるニオブの粉末を矩形の板状に加圧成形し、これを焼結することにより形成されている。各多孔質焼結体1の内部細孔および外表面には、誘電体層(図示略)が形成されており、さらにこの誘電体層上に固体電解質層(図示略)が形成されている。各多孔質焼結体1の材質としては、弁作用金属であればよく、ニオブに代えてたとえばタンタルを用いても良い。4つの多孔質焼結体1は、いわゆる縦置きの姿勢でこれらの厚み方向に積層されている。各多孔質焼結体1どうしは、導電性樹脂35により接合されている。導電性樹脂35に代えて、たとえば銀ペーストを用いることができる。
【0035】
8本の陽極ワイヤ10a,10bは、多孔質焼結体1と同様に、弁作用金属製であり、たとえばニオブ製である。これらのうち、4本の入力用の陽極ワイヤ10aは、4つの多孔質焼結体1の一側面1aからそれぞれの多孔質焼結体1内に進入しており、4本の出力用の陽極ワイヤ10bは、他の側面1bからそれぞれの多孔質焼結体1内に進入している。これらの入力用および出力用の陽極ワイヤ10a,10bのうち多孔質焼結体1から突出する部分が、入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bである。これらの内部陽極端子11a,11bは、各多孔質焼結体1の高さ方向における中心よりも下方に設けられている。入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bのそれぞれは、導体部材22a,22bを介して、入力用および出力用の外部陽極端子21a,21bに導通している。入力用および出力用の外部陽極端子21a,21bの一部は、後述する保護樹脂51により覆われており、これらの露出した部分21a’,21b’は、固体電解コンデンサA1を面実装するために利用される。
【0036】
陰極金属板31は、多孔質焼結体1の下面に設けられており、多孔質焼結体1上に形成された固体電解質層(図示略)に導通している。陰極金属板31の材質としては、Cu合金、Ni合金などが用いられている。陰極金属板31は、両端縁部と、中央部31cとに段差を生じるように折り曲げられており、これらの両端縁部が入力用および出力用の外部陰極端子31a,31bとなっている。中央部31cの上面は、多孔質焼結体1の固体電解質層と導電性樹脂35を介して接着されており、中央部31cの下面は、後述する保護樹脂51により覆われている。入力用および出力用の外部陰極端子31a,31bの下面31a’,31b’は、固体電解コンデンサA1を面実装するために用いられる。このように、固体電解コンデンサA1は、入力用および出力用の外部陽極端子21a,21bと、入力用および出力用の外部陰極端子31a,31bとを備えた、いわゆる四端子型の固体電解コンデンサとして構成されている。
【0037】
保護樹脂51は、多孔質焼結体1、陽極ワイヤ10a,10bなどを覆うことにより、これらを保護するためのものである。保護樹脂51は、たとえばエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を用いて形成される。
【0038】
次に、固体電解コンデンサA1の作用について説明する。
【0039】
固体電解コンデンサA1が、たとえばノイズ除去に用いられる場合には、回路電流に含まれる交流成分が、外部陽極端子21a,21bから内部陽極端子11a,11bを通して多孔質焼結体1へと流れ込む。また、電源供給に用いられる場合には、多孔質焼結体1に蓄えられた電気エネルギーが、急激な立ち上がりを有する電流となって出力用の内部陽極端子11bを通って出力用の外部陽極端子21bから放出される。いずれの場合においても、高周波数領域の交流電流もしくはこれに相当する電流が、外部陽極端子21a,21bと多孔質焼結体1との間を内部陽極端子11a,11bおよび導体部材22a,22bを介して流れることとなる。これらの電流経路のうち、導体部材22a,22bにより構成された部分は、上下方向に起立した部分であり、その前後において電流の流れる方向が転換される部分となっている。このような部分は、その長さが長いほど、たとえば高調波を含むような高周波数領域の交流電流に対して、その周辺の部分と比べて大きなインダクタンスを有することとなる。本実施例においては、内部陽極端子11a,11bを多孔質焼結体1の高さ方向中央よりも下方に設けることにより、内部陽極端子11a,11bと外部陽極端子21a,21bとの距離が縮小化されており、導体部材22a,22bは高さが低いものとなっている。したがって、上記起立した部分のインダクタンスが小さく、固体電解コンデンサA1全体の低ESL化が可能であり、高周波数領域におけるノイズ除去特性や電源供給の高速応答性の向上を図ることができる。
【0040】
次に、固体電解コンデンサA1は、4つの多孔質焼結体1を備えているために、多孔質焼結体1の体積を大きくして大容量化を図ることができる。また、各多孔質焼結体1が薄型であることにより、各陽極ワイヤ10a,10bのうち各多孔質焼結体1に進入した部分と、各多孔質焼結体1の外表面に形成された導電性樹脂35との距離が小さい。したがって、各多孔質焼結体1内を流れる電流の経路が短くなり、低ESR化と低ESL化とを図ることができる。さらに、4つの多孔質焼結体1は、それぞれが縦置きの姿勢とされている。たとえば、本実施例とは異なり、複数の薄型の多孔質焼結体が横置きの姿勢で上下方向に積層された場合には、上位に配置された多孔質焼結体に設けられた内部陽極端子は、下位に配置された多孔質焼結体に設けられた内部陽極端子よりも、外部陽極端子との距離が大きいものとなる。本実施例においては、各内部陽極端子11a,11bを各多孔質焼結体1の下方寄りに設けることにより、いずれの内部陽極端子11a,11bについても、外部陽極端子21a,21bとの距離を小さくすることができる。したがって、固体電解コンデンサA1の低ESL化に好適である。
【0041】
また、4本ずつの入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bは、互いに電気的に並列とされているために、ノイズ除去や電源供給が行われる際には、電流が各内部陽極端子11a,11bに分散して流れることとなる。したがって、低ESR化および低ESL化に有利である。さらに、入力用の内部陽極端子11aと出力用の内部陽極端子11bとは、各多孔質焼結体1のうち互いに反対向きの面に設けられており、それぞれの突出する方向が反対である。したがって、たとえば、すべての内部陽極端子の突出方向が同一とされた構成と比べて、入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bが、各多孔質焼結体1の一部に集中して設けられることを回避可能であり、すべての入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bを各多孔質焼結体1の下方寄りに設けるのに適している。
【0042】
陰極金属板31は、全体形状が平板状であり上下方向に大きく嵩張らない。陰極金属板31は、各多孔質焼結体1と、たとえば固体電解コンデンサA1が実装される基板との間に配置されるものであるために、各多孔質焼結体1と上記基板とを近づけることが可能である。したがって、各内部陽極端子11a,11bと外部陽極端子21a,21bとの距離を小さくして低ESL化を図るのに有利である。
【0043】
外部陰極端子31a,31bは、ともに陰極金属板31の一部であるために、これらの間の抵抗とインダクタンスとを小さくすることができる。したがって、四端子型の構造とされた固体電解コンデンサA2において、陰極側の低ESR化および低ESL化を図るのに有利である。また、陰極金属板31の中央部31cは、保護樹脂51により覆われているために、固体電解コンデンサA2が実装される基板の配線パターンなどと不当に導通することを回避可能である。したがって、固体電解コンデンサA2の機能を適切に発揮させるのに好ましい。
【0044】
図3〜図10は、本発明の他の実施例を示している。なお、これらの図において、上記第1実施例と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
【0045】
図3および図4は、本発明の第2実施例に基づく固体電解コンデンサを示す。図示された固体電解コンデンサA2は、入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bどうしを導通させる金属カバー23を備えており、この点が上述した固体電解コンデンサA1と異なっている。
【0046】
金属カバー23は、たとえば銅製であり、4つの多孔質焼結体1を収容する。この金属カバー23の両端部には、入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bに嵌合可能な4つずつの凹部23bが形成されている。金属カバー23と入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bとは、これらの凹部23bを利用してたとえば溶接により接合されている。このことにより、入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bは、金属カバー23により導通している。金属カバー23は、多孔質焼結体1の材質であるニオブよりも導電性の高い銅製であり、かつ多孔質焼結体1と同程度の幅広に形成されていることにより、比較的低抵抗とされている。また、金属カバー23の上板部には、複数の孔部23aが形成されており、保護樹脂51を形成する際に、その材料としての液体樹脂を金属カバー23と多孔質焼結体1の間の領域に容易に浸入させることができる。
【0047】
樹脂製フィルム52は、金属カバー23と導電性樹脂35との絶縁を図るためのものであり、金属カバー23および導電性樹脂35に接着剤(図示略)により接着されている。この樹脂フィルム52として、ポリイミド系フィルム(たとえばデュポン社製カプトン(登録商標)フィルム)を用いることができる。ポリイミド系フィルムは、耐熱性と絶縁性とに優れているために、固体電解コンデンサA2の製造工程において、比較的高温となる処理を施しても変質するなどの虞れが少なく、金属カバー23と導電性樹脂35との絶縁を高めるのにも好適である。
【0048】
上記第2実施例によれば、入力用および出力用の内部陽極端子11a,11b間には、多孔質焼結体1を迂回するように回路電流を流すことを可能とするバイパス電流経路が形成されている。金属カバー23は、多孔質焼結体1と同程度の幅とすることが可能であり、導電性の高い銅を材料として形成されているために、その抵抗を小さくすることが可能である。回路電流が入力用の内部陽極端子11aから出力用の内部陽極端子11bへと流れる際に、たとえばノイズとしての交流成分を多孔質焼結体1へと導き、それ以外の直流成分を上記バイパス電流経路を経由して流すことが可能である。したがって、たとえば、ノイズ除去や電源供給をする対象となる回路にHDDなどの直流の大電流を必要とする機器が備えられている場合にも、このような大電流が多孔質焼結体1に流れることにより多孔質焼結体1が過度に発熱することを回避することができる。また、固体電解コンデンサA2が、電源供給に用いられる場合には、多孔質焼結体1に蓄えられた電気エネルギーを、出力用の内部陽極端子11bからだけでなく、入力用の内部陽極端子11aから金属カバー23を介して放出することが可能である。したがって、電源供給の大電流化および高速応答化を図ることができる。
【0049】
金属カバー23は、機械的強度が十分に高く、多孔質焼結体1が発熱しても、固体電解コンデンサA2全体が大きく歪むことを回避することができる。このため、保護樹脂51にクラックが発生することなどを適切に回避し、多孔質焼結体1が外気に触れることを防止可能である。また、金属カバー23は、保護樹脂51よりも熱伝導性に優れている。このため、多孔質焼結体1から外部への放熱を促進することができる。これらにより、固体電解コンデンサA2の許容電力損失を高めることが可能であり、大容量の電力供給に対応するのに好適である。
【0050】
図5〜図8は、本発明の第3実施例に基づく固体電解コンデンサを示す。図示された固体電解コンデンサA3においては、陽極金属板24により入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bの導通が図られている点が、上述した固体電解コンデンサA2と異なる。なお、図7および図8においては、保護樹脂51は、省略されている。
【0051】
固体電解コンデンサA3は、陽極金属板24および陰極金属板31を備えている。陰極金属板31は、その中央部31cにおいて多孔質焼結体1の底面に導電性樹脂35を介して接着されており、多孔質焼結体1内に形成された固体電解質層(図示略)に導通している。この陰極金属板31には、中央部31cから延出するように2つの延出部が設けられており、これらの延出部が外部陰極端子31aとなっている。
【0052】
陽極金属板24は、樹脂製フィルム52を介して陰極金属板31の中央部31cの下面に積層されている。陽極金属板24の両端付近には、導体部材22a,22bが接合されており、入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bと導通している。このことにより、入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bは、陽極金属板24を介して導通しており、入力用および出力用の内部陽極端子11a,11b間には、バイパス電流経路が形成されている。陽極金属板24には、2つの延出部が設けられており、これらの延出部が入力用および出力用の外部陽極端子24a,24bとなっている。陰極金属板31の中央部31cと外部陰極端子31aとの間には段差が設けられており、外部陽極端子24a,24bと外部陰極端子31aとは、互いの底面が面一状とされている。陽極金属板24および陰極金属板31の材質としては、Cu合金、Ni合金などが用いられている。
【0053】
上記第3実施例によれば、陽極金属板24および陰極金属板31はいずれも略平板状であり、樹脂製フィルム52も厚さを小さくすることが容易であるため、これらが積層された部分の高さを小さくすることができる。固体電解コンデンサA3には、電流経路として、外部陽極端子24a,24bおよび多孔質焼結体1間と、外部陰極端子31aおよび多孔質焼結体1間と、上記バイパス電流経路とが形成されているが、これらの電流経路はすべて固体電解コンデンサA3の底面からの高さが低いものとなっており、たとえば入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bの高さと同程度もしくはそれより低いものとなっている。したがって、これらの電流経路の交流電流に対するインダクタンスを小さくして低ESL化を図るのに有利である。
【0054】
また、固体電解コンデンサA3の製造工程において、陽極金属板24、樹脂製フィルム52、陰極金属板31および導体部材22a,22bを、あらかじめ一体の部品として組み上げておき、多孔質焼結体1を形成した後に、多孔質焼結体1と上記一体部品とを一括して接合することが可能である。このような構成は、多孔質焼結体1を形成した後に、外部陽極端子や外部陰極端子を設けるための複数の部材を多孔質焼結体1に順次接合する場合と比べて、製造工程を簡略化することが可能であり、生産性の向上を図ることができる。
【0055】
本発明に係る固体電解コンデンサに用いられる多孔質焼結体としては、上述したように、複数の薄型の多孔質焼結体(焼結体要素)が積層されたものが好ましい。しかしながら、本発明はこれに限定されず、図9に示された固体電解コンデンサA4のように、1つの多孔質焼結体1を有する構成としても良い。この場合においても、内部陽極端子11a,11bを多孔質焼結体1の下方寄りに設けることにより、低ESL化を図ることができる。また、入力用の内部陽極端子11aと出力用の内部陽極端子11bの突出方向は、反対であることが望ましいが、これに限定されず、たとえばそれらの突出方向が互いに直交する構成としても良い。
【0056】
図10は、いわゆる二端子型の固体電解コンデンサとして構成された実施例を示している。この固体電解コンデンサA5は、内部陽極端子11に導通する外部陽極端子21aと、外部陽極端子31aとを備えている。上述したように、入力用および出力用の内部陽極端子を備えた構成は、ノイズ除去および電源供給における高周波数特性を向上させるのに好ましいが、本実施例のように、二端子型の構造においても、内部陽極端子11が多孔質焼結体1の下方寄りに設けられた構成とすることにより、低ESL化に有利であるという作用を発揮することができる。
【0057】
本発明に係る固体電解コンデンサは、上述した実施例に限定されるものではない。本発明に係る固体電解コンデンサの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0058】
本発明によれば、図11に示すように、各陽極棒10a,10bを焼結体要素1の底面に接するように当該焼結体要素内に埋設してもよい。これ以外の点において、図11に示す構成は、図1に示す構成と実質的に同じである。なお、図11では、保護樹脂51の図示は省略している。上述した実施例の場合と同様に、各陽極棒の断面は、円形に限らず、矩形状あるいはその他の形状であってもよい。
【0059】
さらに本発明によれば、図12に示すように、各陽極棒10a,10bの一端を焼結体要素1の外部から当該焼結体要素の底面に固定した構成としてもよい。同図において、左側の陽極棒10aは、外部陽極端子21aに直接的に接続されているが、右側の陽極棒10bは、もう一方の外部陽極端子21bに対して間接的に、すなわち導体部材22bを介して接続されている。このような構成は単なる一例であって、本発明によれば、双方の陽極棒10a,10bを、外部陽極端子21a,21bに対して直接的に接続してもよいし、間接的に接続してもよい。各陽極棒10a,10bの断面は、好ましくは矩形状であるが、これに限定されるわけではない。図12においても、保護樹脂51の図示は省略している。焼結体要素1が酸化ニオブからなる場合には、図11あるいは図12の構成を容易にとることができる。
【0060】
上述したように、各陽極棒10a,10bの位置は、多孔質焼結体1の高さ方向における中央よりも下方であればよい。また、陽極棒の本数および形状は、上述した実施例に限定されず、種々に変更自在である。コンデンサの構造は、上述した実施例に限定されず、いわゆる三端子型や貫通型であってもよい。
【0061】
多孔質焼結体および内部陽極端子の材質は、ニオブや酸化ニオブあるいはタンタルなど、弁作用を有する金属材料であればよい。本発明に係る固体電解コンデンサは、上述した用途に限らず、その他の用途に適用してもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁作用金属からなる多孔質焼結体を備えた固体電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、固体電解コンデンサは、たとえばCPUなどのデバイスから発生するノイズ除去や、電子機器への電源系の安定化のために用いられる。図11は、下記特許文献1に開示された固体電解コンデンサを示す。図示された固体電解コンデンサXは、弁作用を有する金属材料(以下、単に「弁作用金属」と言う)の多孔質焼結体90を備えている。陽極ワイヤ91は、その一部が多孔質焼結体90内に埋設するように設けられている。陽極ワイヤ91のうち多孔質焼結体90から突出した部分が内部陽極端子91aとなっている。導電性樹脂92は、多孔質焼結体90上に形成されており、陰極を構成している。導体部材93,94は、それぞれ内部陽極端子91aおよび導電性樹脂92と導通している。導体部材93,94のうち、保護樹脂95から露出した部分が、外部接続用の外部陽極端子93aおよび外部陰極端子94aとなる。ノイズ除去や電源系の安定化のためには、固体電解コンデンサXの高周波数特性の向上が必要である。
【0003】
【特許文献1】特開2003−163137号公報
【0004】
一般に、固体電解コンデンサのインピーダンスZの周波数特性は、以下の数式1により決定される。
【0005】
【数1】
【0006】
上記の式から理解されるように、自己共振点よりも周波数の低い低周波数領域においては、1/ωCが支配的である。そのために同領域では、固体電解コンデンサの大容量化によりインピーダンスを小さくすることができる。一方、自己共振点付近の周波数領域(高周波数領域)においては、抵抗Rが支配的である。そのために、固定電解コンデンサの低ESR(等価直列抵抗)化を図ることが望ましい。さらに、自己共振点よりも周波数の高い超高周波数領域においては、ωLが支配的となる。そのために、固体電解コンデンサの低ESL(等価直列インダクタンス)化が求められる。
【0007】
上述した従来の固体電解コンデンサXにおいても、種々の方法で低ESR化および低ESL化が図られている。具体的には、多孔質焼結体90の形状や陽極ワイヤ91の形状を改善すること、あるいは多孔質焼結体90内に形成される固体電解質層の材質を改善することにより、低ESR化および低ESL化が図られている。
【0008】
しかしながら、近年、CPUは高クロック化される傾向にあり、それに応じて、発生するノイズの周波数も、より高い周波数成分を含むものとなっている。また、電子機器の高速化およびデジタル化に伴い、高速応答が可能な電源系が必要となっている。これらの用途に用いられる固体電解コンデンサに対しては、さらなる低ESL化が望まれる。
【0009】
このような状況の下、上述した固体電解コンデンサXには次のような問題がある。すなわち、多孔質焼結体90や陽極ワイヤ91の形状を改善してそれらのインダクタンスを小さくしても、これら以外の部材(たとえば導体部材93,94)のインダクタンスが大きいままとされている。しかしながら、このようなことでは、上記低ESL化の要請に十分に応えることはできない。つまり、固体電解コンデンサXにおいては、デバイス全体として低ESL化を図るという点において未だ改善する余地があった。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものである。そこで、本発明は、低ESL化が可能な固体電解コンデンサを提供することをその課題とする。
【0011】
本発明によって提供される固体電解コンデンサは、弁作用金属からなる多孔質焼結体と、上記多孔質焼結体から突出する内部陽極端子と、上記内部陽極端子よりも下方に位置するとともに、面実装に利用される底面を有している外部陽極端子と、を備えている。上記内部陽極端子は、上記多孔質焼結体の高さ方向中央よりも下方に設けられている。たとえば、上記内部陽極端子は、上記多孔質焼結体の底面に接するように当該多孔質焼結体内に埋設されていてもよい。あるいは、上記内部陽極端子は、上記多孔質焼結体の外部から当該多孔質焼結体の底面に固定されていてもよい。
【0012】
このような構成によれば、上記外部陽極端子から上記内部陽極端子までの距離を小さくすることができる。上記固体電解コンデンサとこのコンデンサが実装される基板との間を流れる電流の経路において、上記外部陽極端子と上記内部陽極端子との間の部分は、上下方向に起立した部分となる。このような起立した部分は、高調波成分を含むような高周波数領域の交流電流に対して、インダクタンスとして働き、上記固体電解コンデンサ全体のインピーダンスを大きくする原因となる。したがって、上記起立した部分を小さくすることにより、インダクタンスを小さくし、高周波数領域における低ESL化を図ることができる。
【0013】
好ましくは、上記多孔質焼結体としては、複数の扁平状焼結体要素からなる。これらの焼結体要素は、起立した姿勢でそれらの厚み方向に積層されている。このような構成によれば、コンデンサを構成する多孔質焼結体の体積を大きくし、大容量化を図ることができる。また、上記各焼結体要素は、扁平であるためにその内部を流れる電流の経路が短くなり、低ESL化に有利である。さらに、複数の焼結体要素を起立した状態でそれらの厚み方向に積層することで、各焼結体要素に設けられた内部陽極端子を固体電解コンデンサの下方寄りに配置することが可能となる。これにより、各内部陽極端子は、外部陽極端子を基準として低い位置に設けられることとなり、コンデンサの大容量化と低ESL化とを図るのに好適である。
【0014】
好ましくは、本発明の固体電解コンデンサは、上記多孔質焼結体の下面に接合され、かつ少なくともその一部が外部陰極端子として機能する陰極金属板をさらに具備している。この場合、上記外部陽極端子の底面および上記外部陰極端子の底面は、相互に面一状である。
【0015】
このような構成によれば、上記陰極金属板は、上下方向において大きく嵩張ることがない。このため、上記外部陽極端子の底面を上記多孔質焼結体に近い位置に配置することが可能であり、上記外部陽極端子の底面から上記内部陽極端子までの距離をさらに小さくすることができる。したがって、上記固体電解コンデンサの低ESL化に適している。また、上記外部陽極端子および外部陰極端子の底面が面一状であるために、上記固体電解コンデンサを面実装するのに便利である。
【0016】
好ましくは、上記陰極金属板は、中央部と、上記外部陰極端子として機能する縁部とを含んでいる。上記中央部および上記縁部の間には段差が設けられている。上記中央部は、上記多孔質焼結体に接合された上面、および、樹脂により覆われた下面を含んでいる。
【0017】
このような構成によれば、コンデンサを構成する部品点数を少なくするとともに、上記外部陰極端子と上記多孔質焼結体との間の低抵抗化および低インダクタンス化を図ることができる。さらに、上記中央部は樹脂により外部と絶縁される。このために、上記固体電解コンデンサが実装される基板の一部と、上記中央部とが不当に導通することを回避することができる。
【0018】
好ましくは、上記内部陽極端子は、第1陽極棒および第2陽極棒からなる。これら第1陽極棒および第2陽極棒は、上記多孔質焼結体から互いに異なる方向に突出している。
【0019】
このように複数の陽極棒を使用する構成によれば、これら陽極棒に分散して電流が流れるために、低ESR化および低ESL化を図るのに有利である。また、各陽極棒の突出方向を相違させることにより、各陽極棒を上記多孔質焼結体における下方寄りに設けて低ESL化を図るのに適している。これとは異なり、全ての陽極棒が同一方向に突出している場合には、これら陽極棒が上記多孔質焼結体の同一面に集中して設けられることとなる。その結果、すべての陽極棒を上記多孔質焼結体の下方寄りに配置することが困難となる。
【0020】
さらには、第1および第2の陽極棒をそれぞれ入力用および出力用の内部陽極端子とすることにより、いわゆる三端子型(もしくは四端子型)の固体電解コンデンサとして構成することが可能であり、高周波数特性の向上を図ることができる。
【0021】
好ましくは、上記第1陽極棒および第2陽極棒は、互いに逆方向に突出している。このような構成によれば、上記第1陽極棒および第2陽極棒を相互に離間して配置し、上記多孔質焼結体における下方寄りに設けるのに好適である。たとえば、複数の焼結体要素を各々が起立した姿勢で積層する場合には、上記第1および第2陽極棒の突出方向を、上記焼結体要素の積層方向に対して直行する方向とする。これにより、上記第1および第2陽極棒を、各焼結体要素の下方寄りに適切に設けることができる。
【0022】
好ましくは、本発明の固体電解コンデンサは、上記第1陽極棒および第2陽極棒を相互に接続する導体部材をさらに具備している。
【0023】
このような構成によれば、上記第1陽極棒および第2陽極棒を電気的に並列とすることが可能であり、低抵抗化に有利である。また、三端子型あるいは四端子型の固体電解コンデンサにおいては、上記導体部材を利用して、回路電流が上記多孔質焼結体を迂回して流れることを可能とするバイパス電流経路を形成することができる。たとえば、このバイパス電流経路の抵抗を、上記多孔質焼結体の抵抗よりも小さくすることにより、回路電流の直流成分を上記バイパス電流経路に迂回させて、上記多孔質焼結体における発熱を抑制することができる。
【0024】
好ましくは、上記導体部材は、上記多孔質焼結体の少なくとも一部を覆う金属カバーを含んでいる。
【0025】
このような構成によれば、上記金属カバーにより上記多孔質焼結体を保護することが可能である。上記金属カバーは、たとえば上記多孔質焼結体を保護するための手段である保護樹脂と比べて、機械的強度が高い。このため、上記多孔質焼結体に発熱が生じても、上記固体電解コンデンサ全体が不当に撓むことを抑制することができる。また、金属カバーは、保護樹脂よりも熱伝導性に優れているために、上記多孔質焼結体に発生した熱を放散するのに適している。したがって、上記固体電解コンデンサの許容電力損失を向上するのに好適である。
【0026】
好ましくは、上記導体部材は、陽極金属板を含んでいる。この陽極金属板は、上記多孔質焼結体の下面に絶縁体を介して積層されるとともに、外部陽極端子ととして機能する部分を含んでいる。
【0027】
このような構成によれば、上記陽極金属板は、段差部などを有しない平板状とすることが可能であり、上記第1陽極棒および第2陽極棒間のインダクタンスを小さくすることができる。
【0028】
好ましくは、本発明の固体電解コンデンサは、上記多孔質焼結体と上記絶縁体との間に介在する陰極金属板をさらに具備している。この陰極金属板は、外部陰極端子として機能する部分を含んでいる。
【0029】
このような構成によれば、固体電解コンデンサが実装される基板と上記陽極金属板との距離を小さくすることが可能である。したがって、上記基板と上記陽極金属板との間を流れる電流の経路が短くなり、そのインダクタンスを小さくするのに有利である。
【0030】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施例に基づく固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図2】図1の固体電解コンデンサを示す斜視図である。
【図3】本発明の第2実施例に基づく固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図4】図3の固体電解コンデンサの要部を示す斜視図である。
【図5】本発明の第3実施例に基づく固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】第3実施例の固体電解コンデンサを示す斜視図である。
【図8】第3実施例の固体電解コンデンサの要部を示す分解斜視図である。
【図9】本発明の第4実施例に基づく固体電解コンデンサを示す斜視図である。
【図10】本発明第5実施例に基づく固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図11】本発明に基づく固体電解コンデンサの変形例を示す図である。
【図12】本発明に基づく固体電解コンデンサの別の変形例を示す図である。
【図13】従来の固体電解コンデンサを示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0033】
図1および図2は、本発明の第1実施例に基づく固体電解コンデンサを示している。図示された固体電解コンデンサA1は、4つの多孔質焼結体(焼結体要素)1および8本の陽極ワイヤ(陽極棒)10a,10bを備えており、保護樹脂51によりこれらの多孔質焼結体1が覆われた構成とされている。なお、図2においては、保護樹脂51は、省略されている。
【0034】
4つの多孔質焼結体1は、弁作用金属であるニオブの粉末を矩形の板状に加圧成形し、これを焼結することにより形成されている。各多孔質焼結体1の内部細孔および外表面には、誘電体層(図示略)が形成されており、さらにこの誘電体層上に固体電解質層(図示略)が形成されている。各多孔質焼結体1の材質としては、弁作用金属であればよく、ニオブに代えてたとえばタンタルを用いても良い。4つの多孔質焼結体1は、いわゆる縦置きの姿勢でこれらの厚み方向に積層されている。各多孔質焼結体1どうしは、導電性樹脂35により接合されている。導電性樹脂35に代えて、たとえば銀ペーストを用いることができる。
【0035】
8本の陽極ワイヤ10a,10bは、多孔質焼結体1と同様に、弁作用金属製であり、たとえばニオブ製である。これらのうち、4本の入力用の陽極ワイヤ10aは、4つの多孔質焼結体1の一側面1aからそれぞれの多孔質焼結体1内に進入しており、4本の出力用の陽極ワイヤ10bは、他の側面1bからそれぞれの多孔質焼結体1内に進入している。これらの入力用および出力用の陽極ワイヤ10a,10bのうち多孔質焼結体1から突出する部分が、入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bである。これらの内部陽極端子11a,11bは、各多孔質焼結体1の高さ方向における中心よりも下方に設けられている。入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bのそれぞれは、導体部材22a,22bを介して、入力用および出力用の外部陽極端子21a,21bに導通している。入力用および出力用の外部陽極端子21a,21bの一部は、後述する保護樹脂51により覆われており、これらの露出した部分21a’,21b’は、固体電解コンデンサA1を面実装するために利用される。
【0036】
陰極金属板31は、多孔質焼結体1の下面に設けられており、多孔質焼結体1上に形成された固体電解質層(図示略)に導通している。陰極金属板31の材質としては、Cu合金、Ni合金などが用いられている。陰極金属板31は、両端縁部と、中央部31cとに段差を生じるように折り曲げられており、これらの両端縁部が入力用および出力用の外部陰極端子31a,31bとなっている。中央部31cの上面は、多孔質焼結体1の固体電解質層と導電性樹脂35を介して接着されており、中央部31cの下面は、後述する保護樹脂51により覆われている。入力用および出力用の外部陰極端子31a,31bの下面31a’,31b’は、固体電解コンデンサA1を面実装するために用いられる。このように、固体電解コンデンサA1は、入力用および出力用の外部陽極端子21a,21bと、入力用および出力用の外部陰極端子31a,31bとを備えた、いわゆる四端子型の固体電解コンデンサとして構成されている。
【0037】
保護樹脂51は、多孔質焼結体1、陽極ワイヤ10a,10bなどを覆うことにより、これらを保護するためのものである。保護樹脂51は、たとえばエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を用いて形成される。
【0038】
次に、固体電解コンデンサA1の作用について説明する。
【0039】
固体電解コンデンサA1が、たとえばノイズ除去に用いられる場合には、回路電流に含まれる交流成分が、外部陽極端子21a,21bから内部陽極端子11a,11bを通して多孔質焼結体1へと流れ込む。また、電源供給に用いられる場合には、多孔質焼結体1に蓄えられた電気エネルギーが、急激な立ち上がりを有する電流となって出力用の内部陽極端子11bを通って出力用の外部陽極端子21bから放出される。いずれの場合においても、高周波数領域の交流電流もしくはこれに相当する電流が、外部陽極端子21a,21bと多孔質焼結体1との間を内部陽極端子11a,11bおよび導体部材22a,22bを介して流れることとなる。これらの電流経路のうち、導体部材22a,22bにより構成された部分は、上下方向に起立した部分であり、その前後において電流の流れる方向が転換される部分となっている。このような部分は、その長さが長いほど、たとえば高調波を含むような高周波数領域の交流電流に対して、その周辺の部分と比べて大きなインダクタンスを有することとなる。本実施例においては、内部陽極端子11a,11bを多孔質焼結体1の高さ方向中央よりも下方に設けることにより、内部陽極端子11a,11bと外部陽極端子21a,21bとの距離が縮小化されており、導体部材22a,22bは高さが低いものとなっている。したがって、上記起立した部分のインダクタンスが小さく、固体電解コンデンサA1全体の低ESL化が可能であり、高周波数領域におけるノイズ除去特性や電源供給の高速応答性の向上を図ることができる。
【0040】
次に、固体電解コンデンサA1は、4つの多孔質焼結体1を備えているために、多孔質焼結体1の体積を大きくして大容量化を図ることができる。また、各多孔質焼結体1が薄型であることにより、各陽極ワイヤ10a,10bのうち各多孔質焼結体1に進入した部分と、各多孔質焼結体1の外表面に形成された導電性樹脂35との距離が小さい。したがって、各多孔質焼結体1内を流れる電流の経路が短くなり、低ESR化と低ESL化とを図ることができる。さらに、4つの多孔質焼結体1は、それぞれが縦置きの姿勢とされている。たとえば、本実施例とは異なり、複数の薄型の多孔質焼結体が横置きの姿勢で上下方向に積層された場合には、上位に配置された多孔質焼結体に設けられた内部陽極端子は、下位に配置された多孔質焼結体に設けられた内部陽極端子よりも、外部陽極端子との距離が大きいものとなる。本実施例においては、各内部陽極端子11a,11bを各多孔質焼結体1の下方寄りに設けることにより、いずれの内部陽極端子11a,11bについても、外部陽極端子21a,21bとの距離を小さくすることができる。したがって、固体電解コンデンサA1の低ESL化に好適である。
【0041】
また、4本ずつの入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bは、互いに電気的に並列とされているために、ノイズ除去や電源供給が行われる際には、電流が各内部陽極端子11a,11bに分散して流れることとなる。したがって、低ESR化および低ESL化に有利である。さらに、入力用の内部陽極端子11aと出力用の内部陽極端子11bとは、各多孔質焼結体1のうち互いに反対向きの面に設けられており、それぞれの突出する方向が反対である。したがって、たとえば、すべての内部陽極端子の突出方向が同一とされた構成と比べて、入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bが、各多孔質焼結体1の一部に集中して設けられることを回避可能であり、すべての入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bを各多孔質焼結体1の下方寄りに設けるのに適している。
【0042】
陰極金属板31は、全体形状が平板状であり上下方向に大きく嵩張らない。陰極金属板31は、各多孔質焼結体1と、たとえば固体電解コンデンサA1が実装される基板との間に配置されるものであるために、各多孔質焼結体1と上記基板とを近づけることが可能である。したがって、各内部陽極端子11a,11bと外部陽極端子21a,21bとの距離を小さくして低ESL化を図るのに有利である。
【0043】
外部陰極端子31a,31bは、ともに陰極金属板31の一部であるために、これらの間の抵抗とインダクタンスとを小さくすることができる。したがって、四端子型の構造とされた固体電解コンデンサA2において、陰極側の低ESR化および低ESL化を図るのに有利である。また、陰極金属板31の中央部31cは、保護樹脂51により覆われているために、固体電解コンデンサA2が実装される基板の配線パターンなどと不当に導通することを回避可能である。したがって、固体電解コンデンサA2の機能を適切に発揮させるのに好ましい。
【0044】
図3〜図10は、本発明の他の実施例を示している。なお、これらの図において、上記第1実施例と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
【0045】
図3および図4は、本発明の第2実施例に基づく固体電解コンデンサを示す。図示された固体電解コンデンサA2は、入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bどうしを導通させる金属カバー23を備えており、この点が上述した固体電解コンデンサA1と異なっている。
【0046】
金属カバー23は、たとえば銅製であり、4つの多孔質焼結体1を収容する。この金属カバー23の両端部には、入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bに嵌合可能な4つずつの凹部23bが形成されている。金属カバー23と入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bとは、これらの凹部23bを利用してたとえば溶接により接合されている。このことにより、入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bは、金属カバー23により導通している。金属カバー23は、多孔質焼結体1の材質であるニオブよりも導電性の高い銅製であり、かつ多孔質焼結体1と同程度の幅広に形成されていることにより、比較的低抵抗とされている。また、金属カバー23の上板部には、複数の孔部23aが形成されており、保護樹脂51を形成する際に、その材料としての液体樹脂を金属カバー23と多孔質焼結体1の間の領域に容易に浸入させることができる。
【0047】
樹脂製フィルム52は、金属カバー23と導電性樹脂35との絶縁を図るためのものであり、金属カバー23および導電性樹脂35に接着剤(図示略)により接着されている。この樹脂フィルム52として、ポリイミド系フィルム(たとえばデュポン社製カプトン(登録商標)フィルム)を用いることができる。ポリイミド系フィルムは、耐熱性と絶縁性とに優れているために、固体電解コンデンサA2の製造工程において、比較的高温となる処理を施しても変質するなどの虞れが少なく、金属カバー23と導電性樹脂35との絶縁を高めるのにも好適である。
【0048】
上記第2実施例によれば、入力用および出力用の内部陽極端子11a,11b間には、多孔質焼結体1を迂回するように回路電流を流すことを可能とするバイパス電流経路が形成されている。金属カバー23は、多孔質焼結体1と同程度の幅とすることが可能であり、導電性の高い銅を材料として形成されているために、その抵抗を小さくすることが可能である。回路電流が入力用の内部陽極端子11aから出力用の内部陽極端子11bへと流れる際に、たとえばノイズとしての交流成分を多孔質焼結体1へと導き、それ以外の直流成分を上記バイパス電流経路を経由して流すことが可能である。したがって、たとえば、ノイズ除去や電源供給をする対象となる回路にHDDなどの直流の大電流を必要とする機器が備えられている場合にも、このような大電流が多孔質焼結体1に流れることにより多孔質焼結体1が過度に発熱することを回避することができる。また、固体電解コンデンサA2が、電源供給に用いられる場合には、多孔質焼結体1に蓄えられた電気エネルギーを、出力用の内部陽極端子11bからだけでなく、入力用の内部陽極端子11aから金属カバー23を介して放出することが可能である。したがって、電源供給の大電流化および高速応答化を図ることができる。
【0049】
金属カバー23は、機械的強度が十分に高く、多孔質焼結体1が発熱しても、固体電解コンデンサA2全体が大きく歪むことを回避することができる。このため、保護樹脂51にクラックが発生することなどを適切に回避し、多孔質焼結体1が外気に触れることを防止可能である。また、金属カバー23は、保護樹脂51よりも熱伝導性に優れている。このため、多孔質焼結体1から外部への放熱を促進することができる。これらにより、固体電解コンデンサA2の許容電力損失を高めることが可能であり、大容量の電力供給に対応するのに好適である。
【0050】
図5〜図8は、本発明の第3実施例に基づく固体電解コンデンサを示す。図示された固体電解コンデンサA3においては、陽極金属板24により入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bの導通が図られている点が、上述した固体電解コンデンサA2と異なる。なお、図7および図8においては、保護樹脂51は、省略されている。
【0051】
固体電解コンデンサA3は、陽極金属板24および陰極金属板31を備えている。陰極金属板31は、その中央部31cにおいて多孔質焼結体1の底面に導電性樹脂35を介して接着されており、多孔質焼結体1内に形成された固体電解質層(図示略)に導通している。この陰極金属板31には、中央部31cから延出するように2つの延出部が設けられており、これらの延出部が外部陰極端子31aとなっている。
【0052】
陽極金属板24は、樹脂製フィルム52を介して陰極金属板31の中央部31cの下面に積層されている。陽極金属板24の両端付近には、導体部材22a,22bが接合されており、入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bと導通している。このことにより、入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bは、陽極金属板24を介して導通しており、入力用および出力用の内部陽極端子11a,11b間には、バイパス電流経路が形成されている。陽極金属板24には、2つの延出部が設けられており、これらの延出部が入力用および出力用の外部陽極端子24a,24bとなっている。陰極金属板31の中央部31cと外部陰極端子31aとの間には段差が設けられており、外部陽極端子24a,24bと外部陰極端子31aとは、互いの底面が面一状とされている。陽極金属板24および陰極金属板31の材質としては、Cu合金、Ni合金などが用いられている。
【0053】
上記第3実施例によれば、陽極金属板24および陰極金属板31はいずれも略平板状であり、樹脂製フィルム52も厚さを小さくすることが容易であるため、これらが積層された部分の高さを小さくすることができる。固体電解コンデンサA3には、電流経路として、外部陽極端子24a,24bおよび多孔質焼結体1間と、外部陰極端子31aおよび多孔質焼結体1間と、上記バイパス電流経路とが形成されているが、これらの電流経路はすべて固体電解コンデンサA3の底面からの高さが低いものとなっており、たとえば入力用および出力用の内部陽極端子11a,11bの高さと同程度もしくはそれより低いものとなっている。したがって、これらの電流経路の交流電流に対するインダクタンスを小さくして低ESL化を図るのに有利である。
【0054】
また、固体電解コンデンサA3の製造工程において、陽極金属板24、樹脂製フィルム52、陰極金属板31および導体部材22a,22bを、あらかじめ一体の部品として組み上げておき、多孔質焼結体1を形成した後に、多孔質焼結体1と上記一体部品とを一括して接合することが可能である。このような構成は、多孔質焼結体1を形成した後に、外部陽極端子や外部陰極端子を設けるための複数の部材を多孔質焼結体1に順次接合する場合と比べて、製造工程を簡略化することが可能であり、生産性の向上を図ることができる。
【0055】
本発明に係る固体電解コンデンサに用いられる多孔質焼結体としては、上述したように、複数の薄型の多孔質焼結体(焼結体要素)が積層されたものが好ましい。しかしながら、本発明はこれに限定されず、図9に示された固体電解コンデンサA4のように、1つの多孔質焼結体1を有する構成としても良い。この場合においても、内部陽極端子11a,11bを多孔質焼結体1の下方寄りに設けることにより、低ESL化を図ることができる。また、入力用の内部陽極端子11aと出力用の内部陽極端子11bの突出方向は、反対であることが望ましいが、これに限定されず、たとえばそれらの突出方向が互いに直交する構成としても良い。
【0056】
図10は、いわゆる二端子型の固体電解コンデンサとして構成された実施例を示している。この固体電解コンデンサA5は、内部陽極端子11に導通する外部陽極端子21aと、外部陽極端子31aとを備えている。上述したように、入力用および出力用の内部陽極端子を備えた構成は、ノイズ除去および電源供給における高周波数特性を向上させるのに好ましいが、本実施例のように、二端子型の構造においても、内部陽極端子11が多孔質焼結体1の下方寄りに設けられた構成とすることにより、低ESL化に有利であるという作用を発揮することができる。
【0057】
本発明に係る固体電解コンデンサは、上述した実施例に限定されるものではない。本発明に係る固体電解コンデンサの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0058】
本発明によれば、図11に示すように、各陽極棒10a,10bを焼結体要素1の底面に接するように当該焼結体要素内に埋設してもよい。これ以外の点において、図11に示す構成は、図1に示す構成と実質的に同じである。なお、図11では、保護樹脂51の図示は省略している。上述した実施例の場合と同様に、各陽極棒の断面は、円形に限らず、矩形状あるいはその他の形状であってもよい。
【0059】
さらに本発明によれば、図12に示すように、各陽極棒10a,10bの一端を焼結体要素1の外部から当該焼結体要素の底面に固定した構成としてもよい。同図において、左側の陽極棒10aは、外部陽極端子21aに直接的に接続されているが、右側の陽極棒10bは、もう一方の外部陽極端子21bに対して間接的に、すなわち導体部材22bを介して接続されている。このような構成は単なる一例であって、本発明によれば、双方の陽極棒10a,10bを、外部陽極端子21a,21bに対して直接的に接続してもよいし、間接的に接続してもよい。各陽極棒10a,10bの断面は、好ましくは矩形状であるが、これに限定されるわけではない。図12においても、保護樹脂51の図示は省略している。焼結体要素1が酸化ニオブからなる場合には、図11あるいは図12の構成を容易にとることができる。
【0060】
上述したように、各陽極棒10a,10bの位置は、多孔質焼結体1の高さ方向における中央よりも下方であればよい。また、陽極棒の本数および形状は、上述した実施例に限定されず、種々に変更自在である。コンデンサの構造は、上述した実施例に限定されず、いわゆる三端子型や貫通型であってもよい。
【0061】
多孔質焼結体および内部陽極端子の材質は、ニオブや酸化ニオブあるいはタンタルなど、弁作用を有する金属材料であればよい。本発明に係る固体電解コンデンサは、上述した用途に限らず、その他の用途に適用してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁作用金属からなる多孔質焼結体と、
上記多孔質焼結体から突出する内部陽極端子と、
上記内部陽極端子よりも下方に位置するとともに、面実装に利用される底面を有している外部陽極端子と、
を備えた固体電解コンデンサであって、
上記内部陽極端子は、上記多孔質焼結体の高さ方向中央よりも下方に設けられていることを特徴とする、固体電解コンデンサ。
【請求項2】
上記多孔質焼結体は、複数の扁平状焼結体要素からなり、これらの焼結体要素は、起立した姿勢でそれらの厚み方向に積層されている、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
上記多孔質焼結体の下面に接合され、かつ少なくともその一部が外部陰極端子として機能する陰極金属板をさらに具備する構成において、上記外部陽極端子の底面および上記外部陰極端子の底面は、相互に面一状である、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
上記陰極金属板は、中央部と、上記外部陰極端子として機能する縁部と、を含んでおり、上記中央部および上記縁部の間には段差が設けられており、上記中央部は、上記多孔質焼結体に接合された上面、および、樹脂により覆われた下面を含んでいる、請求項3に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
上記内部陽極端子は、第1陽極棒および第2陽極棒からなり、
上記第1陽極棒および上記第2陽極棒は、上記多孔質焼結体から互いに異なる方向に突出している、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】
上記第1陽極棒および第2陽極棒は、互いに逆方向に突出している、請求項5に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項7】
上記第1陽極棒および上記第2陽極棒を相互に接続する導体部材をさらに具備する、請求項5に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項8】
上記導体部材は、上記多孔質焼結体の少なくとも一部を覆う金属カバーを含んでいる、請求項7に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項9】
上記導体部材は、陽極金属板を含んでおり、この陽極金属板は、上記多孔質焼結体の下面に絶縁体を介して積層されるとともに、外部陽極端子として機能する部分を含んでいる、請求項7に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項10】
上記多孔質焼結体と上記絶縁体との間に介在する陰極金属板をさらに具備しており、この陰極金属板は、外部陰極端子として機能する部分を含んでいる、請求項9に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項11】
上記多孔質焼結体は、上記高さ方向に相互に離間した上面および底面を有しており、上記内部陽極端子は、上記底面に接するように上記焼結体内に埋設されている、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項12】
上記多孔質焼結体は、上記高さ方向に相互に離間した上面および底面を有しており、上記内部陽極端子は、上記多孔質焼結体の外部から上記底面に固定されている、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項1】
弁作用金属からなる多孔質焼結体と、
上記多孔質焼結体から突出する内部陽極端子と、
上記内部陽極端子よりも下方に位置するとともに、面実装に利用される底面を有している外部陽極端子と、
を備えた固体電解コンデンサであって、
上記内部陽極端子は、上記多孔質焼結体の高さ方向中央よりも下方に設けられていることを特徴とする、固体電解コンデンサ。
【請求項2】
上記多孔質焼結体は、複数の扁平状焼結体要素からなり、これらの焼結体要素は、起立した姿勢でそれらの厚み方向に積層されている、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
上記多孔質焼結体の下面に接合され、かつ少なくともその一部が外部陰極端子として機能する陰極金属板をさらに具備する構成において、上記外部陽極端子の底面および上記外部陰極端子の底面は、相互に面一状である、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
上記陰極金属板は、中央部と、上記外部陰極端子として機能する縁部と、を含んでおり、上記中央部および上記縁部の間には段差が設けられており、上記中央部は、上記多孔質焼結体に接合された上面、および、樹脂により覆われた下面を含んでいる、請求項3に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
上記内部陽極端子は、第1陽極棒および第2陽極棒からなり、
上記第1陽極棒および上記第2陽極棒は、上記多孔質焼結体から互いに異なる方向に突出している、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】
上記第1陽極棒および第2陽極棒は、互いに逆方向に突出している、請求項5に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項7】
上記第1陽極棒および上記第2陽極棒を相互に接続する導体部材をさらに具備する、請求項5に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項8】
上記導体部材は、上記多孔質焼結体の少なくとも一部を覆う金属カバーを含んでいる、請求項7に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項9】
上記導体部材は、陽極金属板を含んでおり、この陽極金属板は、上記多孔質焼結体の下面に絶縁体を介して積層されるとともに、外部陽極端子として機能する部分を含んでいる、請求項7に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項10】
上記多孔質焼結体と上記絶縁体との間に介在する陰極金属板をさらに具備しており、この陰極金属板は、外部陰極端子として機能する部分を含んでいる、請求項9に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項11】
上記多孔質焼結体は、上記高さ方向に相互に離間した上面および底面を有しており、上記内部陽極端子は、上記底面に接するように上記焼結体内に埋設されている、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項12】
上記多孔質焼結体は、上記高さ方向に相互に離間した上面および底面を有しており、上記内部陽極端子は、上記多孔質焼結体の外部から上記底面に固定されている、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【国際公開番号】WO2005/083729
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510482(P2006−510482)
【国際出願番号】PCT/JP2005/003192
【国際出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2005/003192
【国際出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
[ Back to top ]