説明

固体電解質形COセンサ

【課題】ガス機器に内蔵ないしその近傍に配置し、燃焼排ガスその他のガス中のCO濃度を直接測定し、ガス機器の性能向上やガス雰囲気の安全性向上を図る固体電解質形COセンサを得る。
【解決手段】酸素イオン伝導性固体電解質を挟んでCOの酸化に不活性な電極とCOの酸化に活性な電極からなるCOセンサであって、前記酸素イオン伝導性固体電解質としてLSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)にFe族元素を添加した固体電解質材料で構成されてなる固体電解質形COセンサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼排ガスその他のガス中のCO(一酸化炭素)濃度を直接測定するための固体電解質形COセンサであって、ガス機器に内蔵ないし近傍に配置し、ガス機器の性能向上やガス雰囲気の安全性向上を図ることができる固体電解質形COセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス器具などの燃焼器が不完全燃焼を起すとCOが発生し、また温度が低下し、さらには炎の大きさが変化したり、酸素濃度が低下したりする。そこでこれらの現象に着目して、COセンサや熱電対、あるいはフレームロッド、酸素センサなどを用いて不完全燃焼を検知する方法が知られている。そのうち熱電対、酸素センサ、フレームロッドによる不完全燃焼の検知は、小型の湯沸かし器のような燃焼負荷変動の小さい燃焼器に有効である。
【0003】
しかし、大型の湯沸かし器のような負荷変動の大きい燃焼器については負荷変動に伴って火炎の形状や火炎中の酸素濃度が大きく変化する。このため、火炎の形状や火炎中の酸素濃度の変化を検知するセンサを用いるその方法では不完全燃焼を誤認識するおそれがある。これに対して、COセンサを用いてCOを直接検知する方法には、そのような問題がない。
【0004】
ところで、燃焼器からの排ガス中の可燃性ガスであるCOを測定するCOセンサには半導体式、触媒燃焼式、あるいは固体電解質式といったものが知られている。このうち固体電解質式COセンサは、COが無いときは固体電解質の両側に設けられた電極上の吸着物質に差がないため起電力が発生しないが、可燃性ガスであるCOが存在すると酸化触媒(=CO酸化触媒)が有る側の電極上でCOと酸素との電気化学的な反応を生じて起電力が発生するという原理を利用するものである。
【0005】
このCOセンサを燃焼器から排出される排ガス中に取付けると、燃焼負荷が変動しても、可燃性ガスであるCOが発生しない限り、両電極の吸着物質に差がないために起電力は生じない。
これに対して、不完全燃焼により排ガス中に可燃性ガスであるCOガスが発生した場合には、両電極の吸着物質に差は無いが酸化触媒がある側の電極上ではCOと酸素の反応が生じるために起電力すなわちセンサ出力が発生する。したがって、排ガス用の不完全燃焼検知センサとして使える。
【0006】
図12は固体電解質式のCO等の可燃性ガス検知素子(すなわち可燃性ガスがCOであるとCOセンサになる)を説明する図である(特公昭58−4985号公報)。酸素イオン導電性固体電解質11はZrO2−Y23からなり、その上下両面には、白金電極12、13が被着されており、そのうち一方の電極12は可燃性ガスを酸化する触媒である白金アルミナ触媒14で覆われている。この素子は、ヒーター15によって200〜700℃に保ち、可燃性ガスを含む空気は矢印17の方向に流入し、両電極12、13間に発生した起電力を指示器16に標示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭58−4985号公報
【0008】
この素子に微量の可燃性ガスを含む空気を接触させると、電極13は可燃性ガス含む空気と直接接触する。一方の電極12は酸化触媒14で覆われているので、空気中に含まれる可燃性ガスは酸化触媒14によって酸化される。このため、空気中に含まれる可燃性ガスは電極12に到達せず、その結果、両電極12、13間には起電力が生じる。
【0009】
すなわち、図12(b)に示すように、例えば可燃性ガスであるCOは、窒素や酸素に比べて、固体電解質21、電極22及びガスからなる3相界面23に、よりよく吸着される。そのために、酸素の吸着が阻害されるのと同時に、下記式(1)で示される電気化学反応が生じる。一方、電極24を覆った酸化触媒25では、空気中に含まれる微量のCOは、当該酸化触媒25で酸化されるので電極24には到達せず、3相界面26には可燃性ガスを含まない、ほぼ空気組成のガスが到達し、反応式(2)で示される反応のみが進行する。
【0010】
【化1】

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、燃焼排ガスその他のガス中のCO(一酸化炭素)濃度を直接測定するための固体電解質形COセンサを提供することを目的とし、ガス機器に内蔵ないし近傍に配置し、ガス機器の性能向上やガス雰囲気の安全性向上を図ることができる固体電解質形COセンサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明(1)は、酸素イオン伝導性固体電解質を挟んでCOの酸化に不活性な電極とCOの酸化に活性な電極からなるCOセンサであって、前記酸素イオン伝導性固体電解質がLSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)からなる材料で構成されてなることを特徴とする固体電解質形COセンサである。
【0013】
本発明(2)は、酸素イオン伝導性固体電解質を挟んでCOの酸化に不活性な電極とCOの酸化に活性な電極からなるCOセンサであって、前記酸素イオン伝導性固体電解質がLSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)にFe族元素を添加してなる材料で構成されてなることを特徴とする固体電解質形COセンサである。
【0014】
本発明(3)は、請求項2の固体電解質形COセンサにおいて、前記酸素イオン伝導性固体電解質であるLSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)に添加したFe族元素がFeであることを特徴とする固体電解質形COセンサである。
【0015】
本発明(4)は、酸素イオン伝導性固体電解質を挟んでCOの酸化に不活性な電極とCOの酸化に活性な電極からなるCOセンサであって、前記酸素イオン伝導性固体電解質が化学式:La0.8Sr0.2Ga1-XFeX3(x=0.1〜0.3)で示される材料で構成されてなることを特徴とする固体電解質形COセンサである。
【0016】
本発明(5)は、酸素イオン伝導性固体電解質を挟んでCOの酸化に不活性な電極とCOの酸化に活性な電極からなるCOセンサであって、前記酸素イオン伝導性固体電解質がLSGFe8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Fe0.23)からなる材料で構成されてなることを特徴とする固体電解質形COセンサである。
【0017】
本発明(6)は、酸素イオン伝導性固体電解質を挟んでCOの酸化に不活性な電極とCOの酸化に活性な電極からなるCOセンサであって、前記酸素イオン伝導性固体電解質がLSGFe8273(La0.8Sr0.2Ga0.7Fe0.33)からなる材料で構成されてなることを特徴とする固体電解質形COセンサである。
【0018】
本発明(7)は、酸素イオン伝導性固体電解質を挟んでCOの酸化に不活性な電極とCOの酸化に活性な電極からなるCOセンサであって、前記酸素イオン伝導性固体電解質がLSGFe828515(La0.8Sr0.2Ga0.85Fe0.153)からなる材料で構成されてなることを特徴とする固体電解質形COセンサである。
【0019】
本発明(8)は、酸素イオン伝導性固体電解質を挟んでCOの酸化に不活性な電極とCOの酸化に活性な電極からなるCOセンサであって、前記酸素イオン伝導性固体電解質がLSGFe8291(La0.8Sr0.2Ga0.9Fe0.13)からなる材料で構成されてなることを特徴とする固体電解質形COセンサである。
【0020】
本発明(9)は、本発明(1)〜(7)のいずれかの固体電解質形COセンサにおいて、前記COの酸化に不活性な電極がITO+Au10wt%からなる材料で構成されてなることを特徴とする固体電解質形COセンサである。
【0021】
ITO+Au10wt%は好ましい例であるが、本発明に係る固体電解質形COセンサにおける「COの酸化に不活性な電極」の構成材料はそれに限定されない。
【0022】
本発明(10)は、本発明(1)〜(8)のいずれかの固体電解質形COセンサにおいて、前記COの酸化に活性な電極がRuO2+LSC64(La0.6Sr0.4Co0.23)からなる材料で構成されてなることを特徴とする固体電解質形COセンサである。
【0023】
本発明(11)は、本発明(1)〜(9)のいずれかの固体電解質形COセンサにおいて、前記COの酸化に活性な電極が「RuO2+LSC64(La0.6Sr0.4Co0.23)」にPt及び/又はPdを添加した材料で構成されてなることを特徴とする固体電解質形COセンサである。
【0024】
それら「RuO2+LSC64(La0.6Sr0.4Co0.23)からなる材料」や「RuO2+LSC64(La0.6Sr0.4Co0.23)にPt及び/又はPdを添加した材料」は好ましい例であるが、本発明に係る固体電解質形COセンサにおける「COの酸化に活性な電極」の構成材料はそれら材料に限定されない。
【発明の効果】
【0025】
本発明の固体電解質形COセンサによれば、燃焼排ガスその他のガス中のCO濃度を直接測定し、ガス機器の性能向上やガス雰囲気の安全性向上を図る固体電解質形COセンサを得る。本発明の固体電解質形COセンサによれば、ガス機器に内蔵ないし近傍に配置し、燃焼排ガスその他のガス中のCO濃度を直接測定することにより、ガス機器の性能向上やガス雰囲気の安全性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、表1に対応し、酸素イオン伝導膜の構成材料LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)に対してそれぞれCu、Ru、Ni、CoまたはFeを添加した試料についての、試験ガス中CO濃度如何による計測電流値の変化をグラフ化した図である。
【図2】図2は〈試験ガス中のCO濃度如何によるCO感度の計測〉の結果を示す図で、試験ガス中の各CO濃度に対応する計測電流値の変化をグラフ化した図である。
【図3】図3は〈(その2)LSGMFe828515(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.05Fe0.153)の試料を用いて作製したCOセンサ:試験ガス中のCO濃度如何によるCO感度の計測:300〜500℃〉の結果を示す図で、試験ガス中の各CO濃度に対応する計測電流値の変化をグラフ化した図である。
【図4】図4は〈(その3)LSGFe8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Fe0.23)の試料を用いて作製したCOセンサ:試験ガス中のCO濃度如何によるCO感度の計測:300〜500℃〉の結果を示す図で、試験ガス中の各CO濃度に対応する計測電流値の変化をグラフ化した図である。
【図5】図5は〈(その4)LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)へのFeの添加含有量如何によるCO感度:400℃〉の試験結果を示す図である。
【図6】図6は、以上の試験で計測したGaとFeとの組成比が異なる4種類のLSGFeを用いて作製したCOセンサについて、計測温度とCO感度の関係を示した図である。
【図7】図7は、La0.8Sr0.2Ga1-XFeX3(x=0.1、0.15、0.2、0.3)を用いて作製したCOセンサについて、温度400℃でのCO感度を示した図である。
【図8】図8は、COに活性な電極としての「LSC64+RuO2」と、これに添加金属としてPd、Pt、Agをそれぞれ、または併用して添加した電極を用いて作製したCOセンサについて、試験ガス中のCO濃度とCO感度の関係を示した図である。
【図9】図9は、COに活性な電極としての「LSC64+RuO2」にPt、Pd、Niをそれぞれ添加した電極を用いて作製したCOセンサについて、温度400〜500℃とCO感度の関係を示した図である。
【図10】図10は、500℃、400℃の各温度において、COに活性な電極としてのPtを添加しない「LSC64+RuO2」を用いて作製したCOセンサと、「LSC64+RuO2」にPtを添加した電極を用いて作製したCOセンサについて、CO感度の関係を示した図である。
【図11】図11は、LSGFe828515(La0.8Sr0.2Ga0.85Fe0.153)を電解質として作製したCOセンサの400℃におけるCO、H2、CH4、CO2に対する応答特性を計測し、試験ガス中の各CO濃度に対応する計測電流値の変化をグラフ化した図である。
【図12】図12は、固体電解質式のCO等の可燃性ガス検知素子(すなわち可燃性ガスがCOだとCOセンサとなる)を説明する図である(特公昭58−4985号公報)。
【図13】図13は、本発明に至るまでに使用したセンサ素子(試験用COセンサ)についてのCO感度計測の原理および、混成電位または電極過電圧の変化を電流値の変化として出力させて検知する手法、等を説明する図である。
【図14】図14は、試験用COセンサについて電源に計測器を配置する態様を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〈微量なCOを検出できるCO活性電極、酸素イオン電導膜、CO不活性電極の探索〉
前述特許文献1に記載の固体電解質式のCO等の可燃性ガス検知素子は一例であるが、本発明者らは燃焼排ガス等のガス中の微量なCOを検出できるCO活性電極、酸素イオン伝導性固体電解質膜、CO不活性電極について追求し、良好な特性を有する組成つまり良好な特性を有する組成を持つ材料を見い出した。以下、その経過を含めて順次説明する。
【0028】
(1)検討のベースとなったCO活性電極、酸素イオン電導膜、CO不活性電極の組み合わせについて
図13に示すとおり、本発明に係る固体電解質形COセンサは、酸素イオン伝導性固体電解質膜の両面にそれぞれ「COの酸化に活性な電極(=CO活性電極)」と「COの酸化に不活性な電極(=CO不活性電極)」とを設ける。そして、酸素イオン伝導性固体電解質膜すなわち酸素イオン伝導体により酸素イオン(O2-)をポンピングし、ポンピングした酸素イオン(O2-)によるCOの酸化を進め、この際に発生する混成電位(または電極過電圧)の差を電流値の変化、電圧値の変化として出力させ、検知するものである。
【0029】
図14は試験用COセンサ等について電源に計測器を配置する態様を示す図である。図14(a)は電源に計測器(電圧計または電流計)を配置する態様を示し、図14(a)に示す計測器のうち電源に電流計Aを配置する態様を図14(b)に示している。
【0030】
酸素イオン伝導体である固体電解質として高酸素イオン伝導体であるLSGM9182(La0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.23)を用い、CO不活性電極として金を用い、CO活性電極としてRuO2を用いたところ、CO不活性電極には金にITO系酸化物を添加したもの〔In23(酸化第二インジウム)95mol%、SnO2(酸化第二スズ)5mol%にAu(金)を10wt%添加〕、CO活性電極にはRuO2にLSC系酸化物を添加したもの〔LSC64(=La0.6Sr0.4Co0.23)にRuO2(二酸化ルテニウム)を添加したもの〕がCO感度が向上した。
【0031】
ここで、酸素イオン伝導膜については、LSGM9182(La0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.23)に比べて、LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)の方がCO感度が向上した。そこで、CO不活性電極はITO955+Au10wt%、CO活性電極はLSC64+RuO2とし、酸素イオン伝導膜はLSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)の組成のものを基本にし、さらに高感度な酸素イオン伝導膜の探索を行った。
【0032】
(2)LSGM8282への金属添加についての検討
LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)と、当該LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)にFe、Co、Ni、Ru、Cuを添加した試料を作製し、CO感度を試験、調査した。その結果、Feを添加したものが最も効果が大きかった。表1はその結果である。
【0033】
表1はその結果である。表1には温度400℃での計測値を示している。表1中、CO不活性電極、酸素イオン伝導膜、CO活性電極の構成材料は以下のとおりである。
【0034】
CO不活性電極として“ITO955+Ag10wt%〔In23(酸化第二インジウム)95mol%、SnO2(酸化第二スズ)5mol%にAu(金)を10wt%を添加したもの〕を用いた。CO不活性電極は、ガス中のCO分と反応してCO2に変える機能(触媒作用)を有しない電極である。
【0035】
酸素イオン伝導膜の構成材料は「LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)、「LSGMCu828155(=La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Cu0.053)」、「LSGMRu828155(=La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Ru0.053)」、「LSGMCo828155(=La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Co0.053)」、「LSGMNi828155(=La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Ni0.053)」、「LSGMFe828155(=La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Fe0.053)」である。
【0036】
これら式中、各元素について付している添数字は組成比(モル比)である。一例としてLa0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Fe0.053を例に言えば、La:Sr:Ga:Mg:Fe:Oのモル比が0.8:0.2:0.8:0.15:0.05:3であることを意味し、「LSGMFe828155」と略記している。
【0037】
CO活性電極はRuO2−LSC64、すなわち〔LSC64(=La0.6Sr0.4Co0.23)にRuO2を添加したもの〕である。CO活性電極は、ガス中のCO分と反応してCO2に変える機能(触媒作用)を有する電極である。
【0038】
【表1】

【0039】
表1中、(1)のとおり、CO不活性電極として“ITO955+Au10wt%〔In23(酸化第二インジウム)95mol%、SnO2(酸化第二スズ)5mol%にAu(金)を10wt%を添加したもの〕を用い、酸素イオン伝導体である固体電解質として高酸素イオン伝導体であるLSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)を用い、CO活性電極として“RuO2+LSC64”系酸化物を添加したものを用いて作製したCOセンサは、CO感度=90μA(μA=単位濃度変化当たりの電流値)であり、良好な電流値を示している。
【0040】
CO不活性電極と、CO活性電極については同じくして、酸素イオン伝導体である固体電解質として、高酸素イオン伝導体であるLSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)にそれぞれCu、Ru、Ni、Co、Feを添加したものを用いてCOセンサを作製し、CO感度試験を実施した。以下(2)〜(6)はその結果である。
【0041】
〈(2)LSGMCu828155を用いたCOセンサ〉
高酸素イオン伝導体:LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)にCuを添加したLSGMCu828155(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Cu0.053)を用いたCOセンサのCO感度=0μAであり、COセンサとして不適であることを示している。
【0042】
〈(3)LSGMRu828155を用いたCOセンサ〉
高酸素イオン伝導体:LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)にRuを添加したLSGMRu828155(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Ru0.053)を用いて作製し、CO感度試験を実施した。COセンサのCO感度は17μAであり、LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)を用いたCOセンサの感度よりも小さいことを示している。
【0043】
〈(4)LSGMNi828155を用いたCOセンサ〉
高酸素イオン伝導体:LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)にNiを添加したLSGMNi828155(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Ni0.053)を用いたCOセンサのCO感度は88μAであり、LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)を用いたCOセンサの感度とほぼ同等の感度を示している。
【0044】
〈(5)LSGMCo828155を用いたCOセンサ〉
高酸素イオン伝導体:LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)にCoを添加したLSGMCo828155(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Co0.053)を用いたCOセンサのCO感度は189μAであり、LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)を用いたCOセンサの感度の倍の感度を示している。
【0045】
〈(6)LSGMFe828155を用いたCOセンサ〉
高酸素イオン伝導体:LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)にFeを添加したLSGMFe828155(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Fe0.053)を用いたCOセンサのCO感度は672μAであり、LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)を用いたCOセンサの感度に対して格段に優れた感度を示している。
【0046】
図1は、表1に対応し、酸素イオン伝導膜の構成材料LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)に対してそれぞれCu、Ru、Ni、CoまたはFeを添加した試料についての、試験ガス中CO濃度如何による計測電流値の変化をグラフ化した図である。図1中、横軸は試験ガス中のCO濃度(ppm)であり、縦軸は各試料について計測された電流値(μA)である。
ここで、図1中、横軸は対数目盛で示し、電流値の単位として示す“decade”との記載は“単位濃度当たり”の意味である。この点、他の図における当該記載についても同様である。
【0047】
図1のとおり、構成材料LSGM8282にFeを添加した試料の電流値が試験ガス中CO濃度の増加に伴い大きく増加する。このことは、試験ガス中のCO濃度の増加に応じて電流値が敏感に計測されることを意味している。すなわち、構成材料LSGM8282にFeを添加した試料では、試験ガス中CO濃度如何に対応して特に良好な計測感度を示し、より正確な試験ガス中CO濃度を計測できることを意味している。
【0048】
〈試験ガス中のCO濃度如何によるCO感度の計測〉
LSGMFe828155(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Fe0.053)の試料を用いて作製したCOセンサについて、試験ガス中CO濃度如何による計測電流値の変化を計測した。すなわち、酸素イオン伝導膜の構成材料につき、表1中最も高CO感度であった、LSGMFe828155(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Fe0.053)の試料を用いて作製したCOセンサについて、試験中、試験ガス中のCO濃度を所定時間ごとに50ppm、100ppm、500ppm、1030ppmと変え、各CO濃度の試験ガス雰囲気を所定時間維持し、電流値の変化を計測した。試験ガス雰囲気温度は400℃とした。
【0049】
図2はその結果で、試験ガス中の各CO濃度に対応する計測電流値の変化をグラフ化した図である。試験用の各COセンサは、400℃の各試験ガスの雰囲気中に置かれ、雰囲気中のCO濃度に対応した電流量が計測される。図2のとおり、LSGMFe828155(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Fe0.053)の試料を用いて作製したCOセンサは、試験ガス中の段階的なCO濃度に対応して計測される電流値も段階的に大きくなり、良好なCO計測感度を示し、電流値に対応してより正確な試験ガス中CO濃度を計測できることを示している。
【0050】
〈LSGMへのFeの添加量の最適化の検討〉
LSGMへのFeの添加量の最適化について検討した。酸素イオン伝導膜の組成について、Mgを減らし、Fe添加量を増加させた試料を用いてCOセンサを作製し、CO感度を調査した。表2はその結果である。
【0051】
【表2】

【0052】
表2から、以下の事実が明らかである。(a)LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)中のMgの0.05モルをFeに置き換えた(つまり、Mgの0.05モルを減らし、Feを0.05モル添加した)LSGMFe828155(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Fe0.053)の電流値(CO感度に比例する)は、温度300℃で2μA、温度400℃で18μAであるが、温度500℃で176μAに改善されている。
【0053】
(b)LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)中のMgの0.1モルをFeに置き換えた(つまり、Mg0.2モルのうち0.1モルに代えて、Feを0.1モル添加した)LSGMFe82811(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.1Fe0.13)の電流値は、温度300℃で47μA、温度400℃で90μAであるが、温度500℃では183μAに改善されている。
【0054】
(c)LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)中のMgの0.15モルをFeに置き換えた(つまり、Mgの0.2モルのうち0.15モルに代えてFeを0.15モル添加した)LSGMFe828515(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.05Fe0.153)の電流値は、温度300℃で136μA、温度400℃で138μA、温度500℃で658μAに改善されている。
【0055】
(d)LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)中のMgの0.2モルをFeに置き換えた(つまり、Mgの0.2モルの全部に代えてFeを0.2モル添加した)LSGFe8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Fe0.23)の電流値は、温度300℃で556μA、温度400℃で2342μA、温度500℃で4681μAに改善されている。
【0056】
これら(a)〜(d)の結果から、Feの添加量が増加するほど流れる電流値が増え、CO感度が向上している。そのうち(d)、すなわちMgをFeに全置換したものが最も高いCO感度となっている。
【0057】
〈(その1)LSGMFe828515(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.05Fe0.153)の試料を用いて作製したCOセンサ:試験ガス中のCO濃度如何によるCO感度の計測:300〜500℃〉
LSGMFe828515(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.05Fe0.153)の試料を用いて作製したCOセンサについて、試験ガス中CO濃度如何による計測電流値の変化を計測した。すなわち、CO不活性電極材料、酸素イオン伝導膜の構成材料、CO活性電極材料につき、表2中(10)〜(12)に示す材料を用いて作製したCOセンサを使用し、温度300〜500℃において、試験中、試験ガス中のCO濃度を所定時間ごとに50ppm、100ppm、500ppm、1030ppmと変え、各CO濃度の試験ガス雰囲気を所定時間維持し、CO濃度を計測した。
【0058】
図3はその結果で、試験ガス中の各CO濃度に対応する計測電流値の変化をグラフ化した図である。試験用の各COセンサは、300℃、400℃、500℃の各温度の試験ガスの雰囲気中に置かれ、雰囲気中のCO濃度に対応した電流量が計測される。
【0059】
図3のとおり、LSGMFe828515(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.05Fe0.153)の試料を用いて作製したCOセンサは、300℃、400℃、500℃の各温度で良好な電流値を示し、特に500℃と言う温度で非常に良好な電流値を示し、その電流値は試験ガス中CO濃度の増加に伴い増加している。
【0060】
〈(その2)LSGFe8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Fe0.23)の試料を用いて作製したCOセンサ:試験ガス中のCO濃度如何によるCO感度の計測:300〜500℃〉
LSGFe8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Fe0.23)の試料を用いて作製したCOセンサについて、試験ガス中CO濃度如何による計測電流値の変化を計測した。すなわち、CO不活性電極材料、酸素イオン伝導膜の構成材料、CO活性電極材料につき、表2中(13)〜(15)に示す材料を用いて作製したCOセンサを使用し、温度300〜500℃において、試験中、試験ガス中のCO濃度を所定時間ごとに103ppm、103.3ppm、103.46ppm、103.6ppm、103.7ppmと変え、各CO濃度の試験ガス雰囲気を所定時間維持し、電流値を計測した。
【0061】
図4はその結果で、試験ガス中の各CO濃度に対応する計測電流値の変化をグラフ化した図である。試験用の各COセンサは、300℃、400℃、500℃の各温度の試験ガスの雰囲気中に置かれ、雰囲気中のCO濃度に対応した電流量が計測される。
【0062】
図4のとおり、LSGFe8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Fe0.23)の試料を用いて作製したCOセンサは、300〜500℃の温度で良好な電流値を示し、特に400〜500℃と言う温度で非常に良好な電流値を示し、その電流値は試験ガス中CO濃度の増加に伴い増加している。
【0063】
〈(その3)LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)へのFeの添加含有量如何によるCO感度:400℃〉
LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)に対するFeの添加量如何によるCO感度を試験した。図5に温度400℃での試験結果を示している。
【0064】
CO感度について見ると、図5のとおり、LSGMFe828155(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Fe0.053)では殆どCO感度はなく、LSGMFe82811(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.1Fe0.13)でのCO感度は100μAである。これに対して、LSGMFe828515(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.05Fe0.153)でのCO感度は200μAとなり、LSGFe8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Fe0.23)でのCO感度は1750μAとなる。
【0065】
このように、LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)中Mgの全量をFeに置き換えることによりCO感度に優れたCOセンサが構成できる。
【0066】
以上(その1)〜(その3)での検討結果からして、LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)中のMgの一部ないし全部をFeにて置換してなる複合酸化物は、固体電解質形COセンサにおける酸素イオン伝導体である固体電解質として有用であることが明らかである。そのうち特に、Mgの全部をFeにて置換してなる複合酸化物はCO感度の点で優れた特性を備えている。
【0067】
以下(その4)では、LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)中のMgの全部をFeに置換した複合酸化物について、試験ガス中のCO濃度如何によるCO感度についての試験結果を説明する。
【0068】
酸素イオン伝導膜の組成についてFeの割合を変えた試料を用いて作製したCOセンサについて、試験ガス中CO濃度如何による計測電流値の変化を計測した。表3はその結果である。表3のとおり、〈LSGFe8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Fe0.23)〉、〈LSGFe8273(La0.8Sr0.2Ga0.7Fe0.33)〉、〈LSGFe828515(La0.8Sr0.2Ga0.85Fe0.153)〉、〈LSGFe8291(La0.8Sr0.2Ga0.9Fe0.13)〉のいずれの酸素イオン伝導体を用いたCOセンサでも良好なCO感度が得られるが、表3中(7)〜(9)の箇所に示すように、Feの添加量15%(モル%)で最もCO感度の向上が見られた。
【0069】
【表3】

【0070】
〈(その5)LSGFe8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Fe0.23)等、Mgの全部をFeに置換した複合酸化物を用いたCOセンサによる試験ガス中のCO濃度如何によるCO感度の計測〉
【0071】
〈GaとFeの組成比が異なるLSGFeについての計測温度とCO感度に係る試験〉
図6は、以上の試験で計測したGaとFeとの組成比が異なる4種類のLSGFeを用いて作製したCOセンサについて、計測温度とCO感度の関係を示した図である。図6のとおり、LSGFe828515(La0.8Sr0.2Ga0.85Fe0.153)が300℃、400℃、500℃とも、最も良好なCO感度を示し、LSGFe8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Fe0.23)がそれに準じている。
【0072】
〈La0.8Sr0.2Ga1-XFeX3(x=0.1、0.15、0.2、0.3)を用いて作製したCOセンサのCO感度:400℃〉
LSGFeにおけるFeの添加量すなわちLa0.8Sr0.2Ga1-XFeX3(x=0.1、0.15、0.2、0.3)を用いて作製したCOセンサにおけるCO感度を試験した。図7に温度400℃での試験結果を示している。
【0073】
CO感度について見ると、図7のとおり、LSGFe8291(La0.8Sr0.2Ga0.9Fe0.13)を用いたCOセンサのCO感度は6.9mAであるが、LSGFe828515(La0.8Sr0.2Ga0.85Fe0.153)を用いたCOセンサのCO感度は12.9mAとなり、LSGFe8273(La0.8Sr0.2Ga0.7Fe0.33)を用いたCOセンサのCO感度は7.0mAとなる。
【0074】
図7の事実を基に、酸素イオン伝導性固体電解質であるLSGFeについて7mA前後以上のCO感度を得る範囲の組成を化学式で示すとLa0.8Sr0.2Ga1-XFeX3(x=0.1〜0.3)と記載することができる。
【0075】
このように、LSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)その他、La、Sr、Ga、Mgを含む複合酸化物のうち、Mgの全量をFeに置き換えることによりCO感度に優れたCOセンサが構成できる。
【0076】
〈COに活性な電極の最適化について〉
本発明に係るCOセンサは、酸素イオン伝導性固体電解質を挟んでCOの酸化に活性な電極とCOの酸化に不活性な電極とで構成される。
以上では、COの酸化に不活性な電極としてITO+Au10wt%を使用し、COに活性な電極としてRuO2+LSC64(La0.6Sr0.4Co0.23)を使用する態様について説明したが、以下において、COに活性な電極の最適化について説明する。
【0077】
COに不活性な電極:ITO+Au10wt%、酸素イオン伝導性固体電解質:LSGMFe828155において、COに活性な電極:LSC64+RuO2に貴金属を添加した試料を作製し、CO感度を調査した。表4において、COに不活性な電極:ITO+Au10wt%と酸素イオン伝導性固体電解質:LSGMFe828155とCOに活性な電極との組み合わせにおいて、COに活性な電極の構成材料について各種選んで構成したCOセンサについての試験結果を示している。
【0078】
【表4】

【0079】
表4中(1)〜(3)のとおり、COに活性な電極としてLSC64+RuO2を用いたCOセンサのCO感度は300℃で2μA、400℃で18μA、500℃で176μAである。これに対して、表4中(4)のとおり、COに活性な電極としてLSC64+RuO2にPdとPtを添加したものを用いたCOセンサのCO感度は400℃で56μAであり、より良好である。
【0080】
表4中(5)〜(7)のとおり、COに活性な電極としてLSC64+RuO2にPtを添加したものを用いたCOセンサのCO感度は300℃で5μA、400℃で50μA、500℃で98μAであり、より良好である。表4中(8)〜(10)のとおり、COに活性な電極としてLSC64+RuO2にAgを添加したものを用いたCOセンサのCO感度は300℃で2μA、400℃で14μA、500℃で27μAであり、LSC64+RuO2を用いたCOセンサに対して改善効果はないと解される。
【0081】
〈(その一)COに活性な電極としてLSC64+RuO2にPtを添加した電極を用いたCOセンサについて、試験ガス中のCO濃度如何によるCO感度の計測〉では(a)COに活性な電極としてRuO2−Pt1wt%/LSC64(La0.6Sr0.4Co0.23)を用いたのに対して、〈(その二)COに活性な電極としてLSC64+RuO2にAgを添加した電極を用いたCOセンサについて、試験ガス中のCO濃度如何によるCO感度の計測〉では(a)COに活性な電極としてRuO2−Ag1wt%/LSC64(La0.6Sr0.4Co0.23)を用いた点で異なる。
【0082】
計測電流値は、〈(その一)COに活性な電極(=COの酸化に活性な電極)としてLSC64+RuO2にPtを添加した電極を用いたCOセンサについて、試験ガス中のCO濃度如何によるCO感度の計測〉のように(a)COに活性な電極として「RuO2−Pt1wt%」を用いたCOセンサの方が大きいが、「RuO2−Ag1wt%」を使用した〈(その二)COに活性な電極としてLSC64+RuO2にAgを添加した電極を用いたCOセンサについて、試験ガス中のCO濃度如何によるCO感度の計測〉のCOセンサの方も、「RuO2−Pt1wt%」を用いたCOセンサよりも下回るが、良好な計測電流値を示している。
【0083】
図8は、以上の試験で400℃で計測した、COに活性な電極としての「LSC64+RuO2」と、これに添加金属としてPt、Pd、Agをそれぞれ、または併用して添加した電極を用いて作製したCOセンサについて、試験ガス中のCO濃度とCO感度の関係を示した図である。本COセンサは、酸素イオン伝導性固体電解質としてLSGMFe828155(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Fe0.053)を用い、COに不活性な電極(=COの酸化に不活性な電極)としてITO+Au10wt%を使用している。
【0084】
図8のとおり、試験ガス中いずれのCO濃度でも「RuO2−(Pt1wt%)LSC64」を用いたCOセンサが良好な計測電流値を示している。「RuO2−(Pd10wt%+Pt5wt%)LSC64」、「RuO2−(Ag1wt%)LSC64」、「RuO2−LSC64」は試験ガスが低濃度CO域ではほぼ同等であるが、高濃度CO域では「RuO2−(Pd10wt%+Pt5wt%)LSC64」を用いたCOセンサが良好な計測電流値を示している。
【0085】
図9は、COに活性な電極としての「LSC64+RuO2」にPt、Pd、Niをそれぞれ添加した電極を用いて作製したCOセンサについて、温度400〜500℃とCO感度の関係を示した図である。これら各COセンサは、酸素イオン伝導性固体電解質としてLSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)を用い、COに不活性な電極(=COの酸化に不活性な電極)としてITO+Au10wt%を使用している。
【0086】
図9のとおり、温度400〜500℃において、Ptを添加した電極を用いて作製したCOセンサのCO感度が最も大きく、Pd、Niをそれぞれ添加した電極を用いて作製したCOセンサについても、添加無しの「RuO2−LSC64」を用いて作製したCOセンサに対して改善されている。
【0087】
図10は、500℃、400℃の各温度において、COに活性な電極としてのPtを添加しない「LSC64+RuO2」を用いて作製したCOセンサと、「LSC64+RuO2」にPtを添加した電極を用いて作製したCOセンサについて実測した、CO感度の関係を示した図である。各COセンサは、酸素イオン伝導性固体電解質としてLSGMFe828155(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Fe0.053)を用い、COに不活性な電極(=COの酸化に不活性な電極)としてITO+Au10wt%を使用している。
【0088】
図10のとおり、500℃、400℃の各温度において、いずれも、Ptを添加した電極を用いて作製したCOセンサのCO感度が大きく、COに活性な電極としての「LSC64+RuO2」からなる電極に対するPtの添加効果が認められる。
【0089】
〈LSGMFe828155(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Fe0.053)を電解質として作製したCOセンサの400℃におけるCO、H2、CH4、CO2に対する応答特性〉
LSGMFe828155(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Fe0.053)を電解質として作製したCOセンサの400℃におけるCO、H2、CH4、CO2に対する応答特性を計測した。COに活性な電極として「LSC64+RuO2」にPtを添加した電極を用い、COに不活性な電極(=COの酸化に不活性な電極)としてITO+Au10wt%を使用している。
【0090】
図11はその結果で、試験ガス中の各Gas濃度に対応する計測電流値の変化をグラフ化した図である。試験用のCOセンサは、400℃の各試験ガスの雰囲気中に置かれ、各雰囲気中のCO濃度に対応した電流量が計測される。図11のとおり、LSGMFe828155(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Fe0.053)を電解質として作製したCOセンサは、試験ガス中のCOに対する選択応答性が高い。これに対して、H2、CH4、CO2については、H2に対する応答性が僅かにあるだけで、CH4、CO2については殆ど応答しない。このように、本発明に係る固体電解質形COセンサは、ガス中のCOに対する選択性が高く、良好なCO計測感度を有している。
【符号の説明】
【0091】
11 酸素イオン導電性固体電解質
12、13 白金電極
14 白金アルミナ触媒
15 ヒーター
16 起電力指示器
17 可燃性ガスを含む空気の方向
21 固体電解質
22、24 電極
23 3相界面
25 電極24を覆った酸化触媒


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素イオン伝導性固体電解質を挟んでCOの酸化に不活性な電極とCOの酸化に活性な電極からなるCOセンサであって、前記酸素イオン伝導性固体電解質がLSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)からなる材料で構成されてなることを特徴とする固体電解質形COセンサ。
【請求項2】
酸素イオン伝導性固体電解質を挟んでCOの酸化に不活性な電極とCOの酸化に活性な電極からなるCOセンサであって、前記酸素イオン伝導性固体電解質がLSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)にFe族元素を添加してなる材料で構成されてなることを特徴とする固体電解質形COセンサ。
【請求項3】
請求項2に記載の固体電解質形COセンサにおいて、前記酸素イオン伝導性固体電解質であるLSGM8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23)に添加したFe族元素がFeであることを特徴とする固体電解質形COセンサ。
【請求項4】
酸素イオン伝導性固体電解質を挟んでCOの酸化に不活性な電極とCOの酸化に活性な電極からなるCOセンサであって、前記酸素イオン伝導性固体電解質が化学式:La0.8Sr0.2Ga1-XFeX3(x=0.1〜0.3)で示される材料で構成されてなることを特徴とする固体電解質形COセンサ。
【請求項5】
酸素イオン伝導性固体電解質を挟んでCOの酸化に不活性な電極とCOの酸化に活性な電極からなるCOセンサであって、前記酸素イオン伝導性固体電解質がLSGFe8282(La0.8Sr0.2Ga0.8Fe0.23)からなる材料で構成されてなることを特徴とする固体電解質形COセンサ。
【請求項6】
酸素イオン伝導性固体電解質を挟んでCOの酸化に不活性な電極とCOの酸化に活性な電極からなるCOセンサであって、前記酸素イオン伝導性固体電解質がLSGFe8273(La0.8Sr0.2Ga0.7Fe0.33)からなる材料で構成されてなることを特徴とする固体電解質形COセンサ。
【請求項7】
酸素イオン伝導性固体電解質を挟んでCOの酸化に不活性な電極とCOの酸化に活性な電極からなるCOセンサであって、前記酸素イオン伝導性固体電解質がLSGFe828515(La0.8Sr0.2Ga0.85Fe0.153)からなる材料で構成されてなることを特徴とする固体電解質形COセンサ。
【請求項8】
酸素イオン伝導性固体電解質を挟んでCOの酸化に不活性な電極とCOの酸化に活性な電極からなるCOセンサであって、前記酸素イオン伝導性固体電解質がLSGFe8291(La0.8Sr0.2Ga0.9Fe0.13)からなる材料で構成されてなることを特徴とする固体電解質形COセンサ。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体電解質形COセンサにおいて、前記COの酸化に不活性な電極がITO+Au10wt%からなる材料で構成されてなることを特徴とする固体電解質形COセンサ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の固体電解質形COセンサにおいて、前記COの酸化に活性な電極がRuO2+LSC64(La0.6Sr0.4Co0.23)からなる材料で構成されてなることを特徴とする固体電解質形COセンサ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の固体電解質形COセンサにおいて、前記COの酸化に活性な電極が「RuO2+LSC64(La0.6Sr0.4Co0.23)」にPt及び/又はPdを添加した材料で構成されてなることを特徴とする固体電解質形COセンサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−42222(P2012−42222A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180957(P2010−180957)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】