固体高分子型燃料電池
【課題】 固体高分子型燃料電池の正極ガス流路10及び負極ガス流路11は一般に成型金型で正極セパレータ及び負極セパレータに溝を形成して製作される。したがって、ガス流路の一辺は10mm以下に成型できず、ミクロンオーダの微細なパターンで作ることができず、ガスの流れが乱流となり、ガス利用効率が上がらず、電池出力が低くなる問題点があった。
【解決手段】 正極導電体4及び負極導電体5をマスクパターンで縞状又は島状に形成し、ガス流路10、11の一辺を10μ〜5mmに形成することでガスの流れを層流にし、ガス利用効率を上げるとともに電池出力を向上させた。
【解決手段】 正極導電体4及び負極導電体5をマスクパターンで縞状又は島状に形成し、ガス流路10、11の一辺を10μ〜5mmに形成することでガスの流れを層流にし、ガス利用効率を上げるとともに電池出力を向上させた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子型燃料電池に関し、特に高出力で長寿命の固体高分子型燃料電池の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器などの装置に搭載する固体高分子型燃料電池として、図11に示した構成のものが一般に知られている。図11は特開2004−281211号公報に記載された固体高分子型燃料電池の構成を示した断面図である。
【0003】
水素ガスを燃料とする固体高分子型燃料電池の各電極での反応は次の通りである。
【0004】
負極(アノード):H2→2H++2e−
正極(カソード):2H++1/2O2+2e−→H2O
トータル反応式 :H2+1/2O2→H2O
図11において、電解質膜1と、この電解質膜1を両側から挟むガス拡散電極としての正極導電体4及び負極導電体5と、この積層体を更に両側から挟み、正極導電体4及び負極導電体5とで酸素含有ガス及び燃料ガスの流路を形成するセパレータ6、7とセパレータ6、7の外側に配置され、正極導電体4及び負極導電体5の集電極となる集電板8、9とから構成されている。正極導電体4と電解質膜1の間及び負極導電体5と電解質膜1との間には、正極触媒反応層2、負極触媒反応層3(以下単に「反応層」と称す。)が形成されている。また正極導電体4側のセパレータ6には、複数のリブが形成されており、このリブが正極導電体4に当接することで酸素含有ガスの流路としての正極ガス流路10を形成する。一方、負極導電体5側のセパレータ7にも、複数のリブが形成されており、このリブが負極導電体5に当接することで燃料ガスの流路としての負極ガス流路11を形成する。
【0005】
固体高分子型燃料電池は、実際にはセパレータ7、負極導電体5、反応層3、電解質膜1、反応層2、正極導電体4、及びセパレータ6をこの順で積層してなる積層体を集電板8、9間に複数層配置して構成されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−281211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
反応層2、3は電極4、5としてのカーボンペーパー(又はカーボン布)上に形成される。そして、反応層2、3を形成した2枚の電極4、5を電解質膜1の両側に積層一体化することにより、膜/電極接合体が作製され、この膜/電極接合体を用いて燃料電池の組み立てが行われる。
【0008】
具体的には、触媒金属をカーボンブラック粉末に担持した粉末、パーフルオロスルホン酸ポリマー液、及び水またはエチルアルコールなどアルコールを混合してペースト状あるいはスラリー状としたものを予めパーフルオロスルホン酸ポリマー液で撥水処理したカーボンペーパーの上にスクリーン印刷法で数十μmの厚さに付着させて反応層2、3を形成し、熱処理を行って反応層2、3付きの電極4、5を作製、そして、この反応層2、3付き電極4、5間に電解質膜1を介在させて積層し、ホットプレス等により一体化して膜/電極接合体とする。
【0009】
この後、膜/電極接合体に正極ガス流路10、負極ガス流路11を成型金型の山で溝を作った正極セパレータ6と負極セパレータ7で挟んでいる。この従来法では、成型金型の山で正極ガス流路10及び負極ガス流路11を作るので、ガス流路の1辺を10mm以下に整形することができず、ミクロンオーダーの微細なパターンで作ることもできず、ガスの流れが層流ではなく乱流となり、抵抗が大きく流れが遅いため燃料であるガス供給量が少なくなり、またガス供給に分布ができ、ガス利用効率が上がらず、燃料電池の出力が低いという欠点があった。また、負極セパレータ7では、電解質膜1へ水を供給するため水素ガスを少量水蒸気加湿したガスを流すが、従来では乱流のため両者の混合比率が場所により異なり、これによっても燃料電池の出力が低いという欠点があった。また、セパレータ6、7が厚く、電池反応による発熱が逃げやすく、かつ温度分布がつきやすいので、これによっても燃料電池の出力が低いという欠点があった。さらに、セパレータ6、7が厚く周辺部にひずみができガスが漏れるリスクがあるため、ガス流路部分を薄くできなく、これが燃料電池全体を薄くできないという原因になっていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る固体高分子型燃料電池は、正極セパレータ及び正極導電体により形成され、正極ガスを流通させる正極ガス流路と、負極セパレータ及び負極導電体により形成され、負極ガスを流通させる負極ガス流路とを有する固体高分子型燃料電池であって、上記正極ガス流路及び負極ガス流路はガス流の方向と垂直な断面形状が方形であり、該方形の各辺の長さが10μ〜5mmに形成されるように構成したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、正極ガス流路及び負極ガス流路の各辺の長さを10μ〜5mmに形成したので、正極ガス及び負極ガスの流れが層流となり、正極ガス及び負極ガスのクロスオーバーを低減できて電解質膜の劣化を抑制できるので燃料電池の出力を高くすることができるとともに、寿命を長くすることができる。
【0012】
また、正極導電体及び負極導電体をマスクパターンで島状又は縞状に形成することにより、燃料電池全体を薄くすることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
まず、本発明では正極ガス流路10と負極ガス流路11とをマスクパターンを用いることにより、ミクロンオーダーで作製した。重力よりも摩擦力(空気抵抗・付着力など)、慣性力よりも粘性力、体積力よりも表面力(表面張力・界面張力)が極端に大きくなり、従来のマクロスケールとは全く異なるガスの挙動となる。この極細の流路の中では、流れるガスは層流という状態になる。また、層流を維持する条件として、種々の実験をして確認したところ、方形のガス流路における各1辺の長さには制約があり、10μ〜5mmの範囲とする必要があることが判った。なお、10μの制約には負極ガス流路11から水素と水蒸気混合ガスを流入するが、水素の浸透が劣化することにも関係する。また、5mmの制限には正極ガス流路10において水抜きが許容値を越えてしまうことにも関係する。
【0014】
本発明では、正極ガス流路10及び負極ガス流路11のガス流が層流支配なので、その流れの中で起こるすべての現象は、流れの速さ・流路の形状・流れるガスなどの条件が一定である限り極めて高度な再現性を持つ。この再現性を利用して、流れの速さ・流路の形状を制御することにより、ガス利用効率を上げ、燃料電池の出力を高くした。また、負極ガス流路11では、水素ガスを少量水蒸気加湿した混合ガス流が層流のため、水素ガスと水蒸気ガスの互いのガスへの拡散速度が極端に高くなることから、両ガスの混合が瞬時に完了する。このため、混合比率が場所によらず同一となり、これによっても燃料電池の出力を高くした。また、セパレータ6、7が薄く、電池反応による発熱が逃げにくくかつ温度分布がつかないので、これによっても燃料電池の出力を高くした。さらに、セパレータ6、7が薄く周辺部にひずみができずガスが漏れるリスクがないため、ガス流路部分を薄くでき、これにより燃料電池全体を薄くできた。
【0015】
一方、燃料電池では、反応層2、3の触媒及び電解質膜1とガスとの三相界面で電気化学反応を生起させるため、この反応場の拡大を図ることが発電効率の向上につながる。そして、この反応場の拡大のための一手段として、反応層2、3の有効表面積を大きくする工夫がなされており、そのために、触媒金属粉末としては、触媒金属単独の粉末ではなく、表面積の大きいカーボンブラック粉末に触媒金属を担持したものが用いられている。
【0016】
この触媒金属担持カーボンブラック粉末は、カーボンブラック粉末に例えば触媒金属である白金を含む試薬を付着させ、その後熱処理することにより製造されている。さらに、触媒有効表面積を大きくするため、カーボンブラック粉末を無電解メッキ処理することにより、触媒金属を担持させるなどがされている。
【0017】
しかしながら、種々な方法で触媒有効表面積を大きくしても、従来の構造では、酸素のクロスオーバーによる負極導電体5表面で発生する過酸化水素水で電解質膜1が劣化(スルホン基が活性を失い、カーボンとカーボンの結合が切れる)し、2万時間(約2年)位経ったところで、突然電圧がほぼ0Vになり、燃料電池として使用できなくなっていた。電解質膜1が劣化する主原因は、正極ガス流路10がミクロンオーダーの微細なパターンでないため、酸素ガス供給に分布ができ、高濃度部分で酸素クロスオーバー量が大きいことであることがわかった。また、若干ながら、負極ガス流路11がミクロンオーダーの微細なパターンでないため、水素ガス供給に分布ができ、高濃度部分で水素クロスオーバー量が大きいことも影響していることがわかった。そこで、本発明では、単一セル構造を図1に示すような構造にした。図1の構造では、正極触媒反応層2に対して正極導電体4を、島状、または縞状に面積比率で20%以上80%以下に配置した。なお、島状、または縞上のピッチは5mm以下である。負極側についても同様であり、製造方法は後述の実施例に記載する。
【0018】
次に、本発明の実施の形態に係る固体高分子型燃料電池の構成を図1により説明する。図1において、1は電解質膜、2は正極触媒反応層、3は負極触媒反応層、4は正極触媒反応層2上にマスクパターンにより形成された正極導電体、5は負極触媒反応層上にマスクパターンにより形成された負極導電体、6、7はセパレータ、8は正極集電板、9は負極集電板、10は正極導電体4上に正極セパレータ6を配置することにより、正極触媒反応層2、正極導電体4、及び正極セパレータ6で方形に形成された正極ガス流路、11は負極導電体5上に負極セパレータ7を配置することにより、負極触媒反応層3、負極導電体5、及び負極セパレータ7で方形に形成された負極ガス流路である。
【0019】
即ち、この実施の形態によれば正極ガス流路10から供給される酸素ガスまたは負極ガス流路11から供給される水素ガスのクロスオーバーを従来の0.1%から0.05%以下に低減し、電解質膜1の劣化をなくすことで、電圧が突然0Vになるまでの寿命を4倍以上にすることができた。正極ガス流路10または負極ガス流路11を反応層2、3の外側に形成することができ、燃料電池の薄型化、小型化およびそれを搭載する装置の小型化が達成できた。
【実施例1】
【0020】
以下、図1に示す構成の固体高分子型燃料電池の製造方法、各部材の材料の実施例1を説明する。
【0021】
実施例1では、マスクパターンニング方法の光露光の中の紫外露光の内、リフトオフ法の一例を記載する。光露光は後述する加熱式インプリントより位置合わせ精度が高い。
【0022】
まず、触媒金属、例えば正極側は白金系、負極側は白金とルテニウムの合金系を粒径0.1ミクロン以下のカーボンブラック粉末に担持した粉末、パーフルオロスルホン酸ポリマー液、及び水またはエチルアルコールなどアルコールを混合してペースト状あるいはスラリー状としたものを予めパーフルオロスルホン酸ポリマー液で撥水処理したガラス、銅などの板で支持した50μ厚みの電解質膜1の上に圧力約0.5Mpa以上でスクリーン印刷法、ナノインプリント法またはフレキシブルナノインプリント(FNI:インデンターによりホールを形成)法で十数μmの厚さに付着させて、乾燥後、圧力約0.5Mpa以上でプレスして、まず5μ厚みの正極触媒反応層2を形成した。そして、一度電解質膜1ごと支持板からはずし、裏返して支持板に載せ、電解質膜1上に圧力約0.5Mpa以上でスクリーン印刷法により正極触媒反応層2と同様5μ厚みの負極触媒反応層3を形成した。
【0023】
なお、正極触媒反応層2と負極触媒反応層3とを同時にスクリーン印刷、乾燥後、一対のロール間にロール間隙の隙間より厚い電解質膜1と正極及び負極触媒反応層2、3の一体膜を通すと加圧され隙間厚みとなるロールプレス機挟みこみ法などにより電解質膜1上に同時に形成しても良い。
【0024】
正極導電体1と負極導電体2は図2のようにマスクパターンをリフトオフ法で形成した。
【0025】
まず、前述した電解質膜1上に塗布した正極触媒反応層2または負極触媒反応層3に、真空中(1000pa以下)でマスクを用いて紫外灯(波長300〜400nm、本発明では365nm、光量3500mW)で紫外線照射量1J/cm2のマスク露光によりノボラックなどの芳香族系樹脂のポジ型フォトレジスト(東京応化工業製化学増幅型ポジ型ホトレジスト「TDUR―DP604」または化学増幅型ポジ型ホトレジスト「TDUR―P034」)12を形成した(図2(a)参照)。
【0026】
なお、反応層基板に対し、マスクパターンを介して縮小投影露光装置ニコンNSR―2005EX8A(ニコン社製)を用いて露光したのち、ホットプレート上で130°Cにて90秒間加熱処理を行い、次いで2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて現像処理し、純水にて洗浄することで、島状、または縞状のピッチが10μ〜8mmのホトレジストパターンを焼き付け、正極ガス流路10と負極ガス流路11部分のホトレジストパターンを得るようにしても良い。なお、深堀り、長さ/孔径のアスペクト比向上などのため、純水にて洗浄後CHF3ガスまたはO2+ガスで、反応性イオンエッチング(RIE)を実施しても良い。得られたそれぞれのレジストパターン12をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察したところ、全てのパターン下部の断面はいずれも垂直であった。
【0027】
なお、紫外光のフォトレジスト12には、ポリメチルメタクリレート(PMMA)など飽和脂肪族系樹脂、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのシリコンゴムまたはポリビニールフェノール、フェノール樹脂、ポリスチレン(PS)、脂環族メタクリレート樹脂、ポリイミド、脂肪族ポリイミドなどであっても良い。
【0028】
次に、レジスト除去したレジストパターン上に正極導電体4または負極導電体5となるカーボン塗料またはカーボンインキ13を塗布・乾燥する(図2(b)参照)。
【0029】
次に、40°Cのエチレンカーボネート(EC:融点36°C)の溶液中またはアセトン中へ、正極導電体4と負極導電体5をパターン積層した正極触媒反応層2と負極触媒反応層3を侵漬しレジスト12を溶解する(図2(c)参照)。レジスト溶解性を上げるため、正極触媒反応層2と負極触媒反応層3への溶解液の圧力を上げるなどをしても良い。
【0030】
なお、レジスト溶解液14には、BTA(ベンゾトリアゾール)、NMP、アルキルベンゼンスルフォン酸、フェノール、ラウリル硫酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、または有機スルフォン酸やアルキレングリコールなどを主成分とする剥離液または硫酸過水(H2SO4+H2O2→H2SO5+H2O)または高濃度オゾン水(150ppm)またはソルファイン−リンス310または超臨界CO2溶解液またはエタノールアミン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノン、1,1,1−トリメチルアセトンなどのケトン類や、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール又はジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、あるいはこれらのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体や、ジオキサンのような環状エーテル類や、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類、有機アミン系などを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。乾式溶解ガスでは、真空中、ジクロロメタンをレジストに吹き付ける方法でも良い。
【0031】
最後に純水またはエタノールでスプレーすることで正極ガス流路10と負極ガス流路11部のレジストが溶解した部分の不要なカーボンを除去し、電解質膜1と電極導電体4、5と電極反応層2、3の接合体を作製した(図2(d)参照)。この接合体をセパレータ6、7とホットプレス等により積層一体化することにより、図1に示すような燃料電池の組み立てを行なった。
【0032】
なお、紫外露光の他に、ArFレーザー露光、KrFレーザー露光、F2レーザー露光、電子線露光、高圧水銀露光、X線露光、キセノン露光でも良い。ArFレーザー露光の場合、レジストは、ドライエッチング耐性に優れた2−メチルアダマンチルメタクリレート(2−MAdMA)+メバロニックラクトン(MLMA)を用いる。KrFレーザー露光の場合、アダマンチルメタクリレート(AdMA)と、KrFレジストの反応性基として広く用いられているt−ブチルメタクリレート(t−BMA)の共重合体)を用いる。電子線露光の場合、炭素系レジストまたはポリシロキサン誘導体レジストを用いる。
【実施例2】
【0033】
実施例2では、マスクパターンニング方法の光露光における紫外露光の内、グラビア印刷による方法の一例を述べる。
【0034】
正極導電体4と負極導電体5のカーボンパターニングを以下のように実施した。まず、グラビアポジを作った。次に、重クロム酸カリウムで感光性をもたせたカーボンティッシュに、このポジを紫外線で露光し焼き付けた。次に、露光したカーボンティッシュをまず正極導電体4として、電解質膜1と正極触媒反応層2の接合体に接着し、温水で未硬化のゼラチンを洗い流すと、正極触媒反応層2上にポジのゼラチン・レリーフ残存カーボン正極導電体4形成した。次に裏返して同様にしてカーボン負極導電体5を形成した。最後に、この電解質膜1と電極導電体4、5と電極触媒反応層2、3の接合体を用いて、実施例1のようにして燃料電池の組み立てを行った。
【0035】
なお、この他にマスクを用いた光露光は、カーボントナーをマスク越しに、超高圧水銀灯、キセノンランプなどによるフラッシュで焼き付ける方法などであっても良い。
【実施例3】
【0036】
実施例3では、マスクパターンニング方法の湿式方法の一例を述べる。
【0037】
本発明の工程図は、電極を上面から見た場合を図3、図3のA−Aでの断面図を図4に示す。
【0038】
まず、図3に示すように、カーボン15に分散材16と捕捉材17を混ぜたカーボンインクまたはカーボンインキを、一定速度で移動している電極触媒反応層2、3または電極にインジェット方式で横方向には非常に狭い間隔で、縦方向には横方向よりは広い間隔でプリントする。これを加熱することで、分散材16を捕捉材17が捕捉、化学反応でどちらも分解・蒸発することでカーボンインク15が露出、少しだれることにより、横方向のカーボンインク15は連結し、縦方向は連結しないため、図4に示すように電極ガス流路が成形される。
【0039】
その後、電解質膜1と電極導電体4、5及び電極反応層2、3との接合体を用いて、実施例1のようにして燃料電池の組み立てを行った。
【0040】
実施例3では、カーボンインク15に加熱により乾燥する熱乾燥型を使用したが、溶剤の蒸発で乾燥する蒸発乾燥型、空気中の酸素と結合して乾燥する酸化乾燥型、2種類のインクを混合することで乾燥する2液反応型であっても良い。また、酢酸レジストやメッキレジストで使用されるレジストカーボンインクでも良い。
【0041】
また、電極ガス流路10、11成形方法としてはブロックコポリマーの自己組織化または自己組織化単分子膜(SAM)によるナノパターニング法をしても良い。
【0042】
なお、湿式方法としては、この他にカーボン塗布膜を熱転写でパターニングする方法などであっても良い。
【実施例4】
【0043】
実施例4では、マスクパターンニング方法の乾式方法の一例を述べる。
【0044】
電解質膜1上に塗布した正極触媒反応層2と負極触媒反応層3に、ミクロンオーダーの穴のあいたマスク上からカーボン塗料(ペースト)を塗布・乾燥し、まず、正極導電体4、次に負極導電体5を作製する。その後、マスクを剥離し、電解質膜1と電極導電体4、5と電極触媒反応層2、3の接合体を用いて、実施例1のようにして燃料電池の組み立てを行った。
【実施例5】
【0045】
実施例5では、マスクパターンニング方法の乾式方法の一例を述べる。
【0046】
フォトリソマスキングを用いたマイクロブラスト加工を実施した。電解質膜1上に触媒を含むカーボンを塗布した正極触媒反応層2と負極触媒反応層3に、マスキング材となるドライフィルムをラミネートし、フォトマスクを介して紫外線を照射、弱アルカリ液にて現像、乾燥し、まず正極導電体4、次に負極導電体5を形成した。その後、0.5μ程度のアルミナ砥石を用いてマイクロブラスト法にてパターン加工し、マスクの無い部分を選択的に除去した。加工後はマスクを剥離し、洗浄後、電解質膜1と電極導電体4、5と電極触媒反応層2、3の接合体を用いて、実施例1のようにして燃料電池の組み立てを行った。
【実施例6】
【0047】
実施例6では、マスクパターンニング方法にモールドを用いた転写による方法の一例を述べる。
【0048】
モールドの材料にニッケル、タンタルなどの金属を使用して、マスクパターンを持った金型を作成した。また、モールドの剥離性を良くするために金型にフッ素処理を実施、未処理の金型に対して、水の接触角を20度→90度、応力(荷重P[N]/接触面積A[mm2])を0.19→1.02Mpaに向上させた。この金型に、樹脂粘度が高くても射出成型が可能なポリフェニレンサルファイド(pps:ポリフェニレンスルフィドともいう)などの熱可塑性樹脂に触媒を含む導電性カーボンを混合、スラリーとし、シリコンモールドに流し込み、電解質膜上に250°C(180〜400°C)以上加熱、プレス(プレス圧は約13Mpa)した後105°C(88〜140°C)以下で冷却し、非結晶化させ、金属モールドをリリースさせ、深堀り、長さ/孔径のアスペクト比向上などのため必要であればその後CHF3ガスまたはO2+ガスによる反応性イオンエッチング(RID)を実施、正極触媒反応層2と負極触媒反応層3を同時にまたは各層別に作成した。剥離荷重は0.1〜15KN、剥離速度は1〜1000μm/secで実施した。
【0049】
なお、実施例6ではPPSを使用したが、ポリメチルメタクリレート(PMMA:東京応化工業製OEBR−1000)でも良い。この場合は、加熱は200°C(180〜400°C)以上加熱、プレスした後105°C(88〜140°C)以下で冷却する。その他、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのシリコンゴム、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ドデシルアミン、ステアリルアミン、エラステックEPDM、熱可塑性エラストマー(TPE)、フェノール、アクリル、フッ素樹脂、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂(PEEK)、高密度ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン、ポリスチレン、フェノキシ樹脂、ABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの三元共重合体)、AES(アクリロニトリル、エチレンプロピレンゴム、スチレンの三元共重合体)、AS(アクリロニトリル、スチレンの共重合体)、ポリアリレート(PAR)、EPDM(エチレン、プロピレン、ジエンの三元共重合体)、その他のポリオレフィン、ウレタン、超高分子量ポリエチレン、PEワックス、αオレフィン、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタンエラストマー、エラストマー、シクロオレフィンポリマー、塩化ビニル(PVC)、液晶ポリマーなどの熱可塑性樹脂でも良い。
【0050】
装置は本実施例では三井電機精機(株)のナノインプリント装置を使用したが、装置はフレキシブルナノインプリント(FNI)装置、ホットエンボス装置、ローラープリント装置、光硬化リアクションインジェクションモールディング(RIM)装置、熱硬化RIM装置、マイクロコンタクト・プリンティング(μCP)装置、M−FPPR(Mold For Fine Pitch Patterning)装置でも良い。
【0051】
その後、電解質膜1と電極導電体4、5と電極触媒反応層2、3の接合体を用いて、実施例1のようにして燃料電池の組み立てを行った。
【0052】
なお、樹脂粘度が低く、導電性カーボンを高充填可能な、エポキシ、フェノール、シリコン樹脂(シリコーン)、ポリイミド、ジアリルフタレート、ポリエステル、フェノール、ベンゾオキサジン、ポリフェニレンエーテル、ポリアミドイミドなどの熱硬化性樹脂またはセルロースアセテート(東洋合成工業(株)社製商品名PAK01)などの光硬化性樹脂に触媒を含むカーボンを混合、超臨界炭酸ガスの使用により、樹脂の流動性を高めたスラリーを流し込み、電解質膜1上にパターン転写により塗布、その後加熱接着、プレス接着または光硬化させることにより、正極触媒反応層2と負極触媒反応層3を同時にまたは各層別に作成しても良い。
【0053】
また、モールドの材料は上記、金属(ニッケル、タンタル、シリコン)以外でも、炭化珪素(SiC)、窒化珪素(Si3N4)、酸化シリコン(SiO2)、フッ素樹脂、石英などであっても良い。
【0054】
また、成型方法が熱硬化や加熱冷却のかわりに紫外線(UV)、電子線(EV)、ArFレーザー、KrFレーザー、水銀灯、キセノン灯を用いた光硬化を使用しても良い。
【0055】
図5に、実施例1〜6で製作した正極及び負極ガス流路の一辺のピッチを10μと5mmとした場合の燃料電池の出力特性と従来例のピッチが10mmの燃料電池の出力特性を示した。この図から、上記のいずれの製造方法でも、燃料電池の単位電流密度あたりの出力電圧、すなわち燃料電池の出力が従来例より上がっていることがわかった。これは、正極ガス流路10と負極ガス流路11をミクロンオーダーで作製することにより、ガス利用率が上がったためである。
【0056】
なお、正極導電体4と負極導電体5のパターン製造方法は、実施例1〜6以外の方法、例えばタンポ印刷、凸版印刷、凹版印刷、平板印刷、オフセット印刷、型成型、マスキングによる沈積法またはスプレー法でも良い。
【実施例7】
【0057】
本発明の構図は図6に示す。正極反応層2と正極反応層2より高さの高い正極導電体4または負極反応層3と負極反応層3より高さの高い負極導電体5を、酸素含有ガス流路10または水素ガス流路11が島状または縞状になるよう配置されている。
【0058】
本発明にて使用した各部材の材料、製造方法の一例を下記に記載する。
【0059】
まず、酸素ガス流量当たり、または水素ガス流量当たりの触媒量を従来例と同じとするため、反応層2、3単位体積当たりの触媒量は反応層面積の総面積(電極触媒反応層2、3と電極カーボン導電体4、5をあわせた総面積)に対する割合分だけ大きくした。なお、反応層2、3パターン形成方法は実施例1〜6の方法を用いた。それ以外のタンポ印刷、凸版印刷、凹版印刷、平板印刷、オフセット印刷、または型成型、またはマスキングによる沈積法又はスプレー法でも良い。
【0060】
次に、形成反応層をマスキングして、沈積法又はスプレー法で電極カーボン導電体4、5を埋めた後、マスキングを除去するようにした。こうすることにより、電極触媒反応層2、3より厚みの大きい電極カーボン導電体4、5ができた。
【0061】
最後にセパレータ板6、7を置くことで、厚み差分の酸素含有ガス流路10と水素ガス流路11を形成した。
【0062】
なお、電極カーボン導電体4、5を先に形成し、形成電極カーボン導電体4、5をマスキングして沈積法又はスプレー法で反応層2、3を埋めた後、マスキングを除去するようにしても良い。
【実施例8】
【0063】
本発明の構図は図7である。電極触媒反応層2、3は電極としてのカーボンまたはカーボンペーパー上に形成し、反応層を形成した2枚の電極4、5を電解質膜1を介して積層一体化することにより、膜/電極接合体が作成され、この膜/電極接合体を用いて燃料電池の組み立てる、即ち数十μmの厚さに付着させて反応層2、3を形成し、熱処理を行って反応層2、3付きの電極4、5を作成、この反応2、3層付き電極4、5を電解質膜1を介して積層し、ホットプレス等により一体化して膜/電極接合体とする。その後、ホットプレスする時に、型でプレス成型することで、触媒反応層2、3の厚みの大きい領域を島状、または縞状に形成した。
【0064】
次に、厚みの大きい触媒反応層をマスキングして、沈積法又はスプレー法で正極カーボン導電体を埋めた後、マスキングを除去するようにした。こうすることにより、ホットプレスされていない正極触媒反応層2より厚みの大きい正極カーボン導電体4ができる。なお、型の底にマスキング材をおくことで、マスキングとホットプレスを同時に行っても良い。最後にセパレータ板6、7を置くことで、厚み差分の酸素含有ガス流路10を形成した。
【0065】
実施例7、実施例8の電気的特性は実施例1〜6と全く同じであった。理由は、ホットプレスされた厚みの小さい部分の電極触媒反応層2、3はガスが通らないため、反応層としてではなく、電極導電体としての働きしかないためである。以下に従来例からの特性改善を図を用いて説明する。
【0066】
図8に、実施例1〜8の本発明と従来の酸素または水素のクロスオーバー量を横軸をガス流路面積の全面積(ガス流路面積と電極カーボン導電体をあわせた総面積)に対する割合で示した。図8に示すように、従来が0.1%であるのに対し、本発明ではガス流路割合が80%でクロスオーバー量が最も高く0.05%で、割合が少なくなるとクロスオーバー量も比例して減少した。
【0067】
図9に、ガス流路割合が80%の場合のピッチの長さとクロスオーバー量及び電気特性の関係を示した。図9に示すように、ピッチが小さいほど、クロスオーバー量が低下するが、10μ未満となると逆にクロスオーバー量が急激に増加し0.1%となった。この理由は、ガスの圧損によると考えられる。電気特性ではピッチが大きいほどそれに比例して悪くなっており、許容できる上限は5mmであった。従って、ピッチの長さは10μ〜5mmであった。
【0068】
図10に本発明の割合80%、ピッチ10μの場合の燃料電池と従来の燃料電池の寿命を示す。図10に示すように、従来が20000時間で電圧が突然ほぼ0Vになっていたのに対し、本発明では約100000時間でほぼ0Vになっているので、寿命は約5倍になっていた。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の固体高分子型燃料電池の構成を示す断面図である。
【図2】マスクパターンをリフトオフ法で形成する手順を示した工程図である。
【図3】マスクパターンを湿式法で形成する手順を示した工程図である。
【図4】マスクパターンを湿式法で形成する手順を示した工程図である。
【図5】従来及び本発明に係る燃料電池の出力特性を示した特性図である。
【図6】本発明の固体高分子型燃料電池の構成を示す断面図である。
【図7】本発明の固体高分子型燃料電池の構成を示す断面図である。
【図8】従来及び本発明に係る燃料電池のクロスオーバー量を示した特性図である。
【図9】正極触媒反応層とピッチと酸素クロスオーバ量及び出力電圧との関係を示した特性図である。
【図10】従来及び本発明に係る燃料電池の出力特性を示した特性図である。
【図11】従来の固体高分子型燃料電池の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 電解質膜 2 正極触媒反応層 3 負極触媒反応層 4 正極導電体 5 負極導電体 6 正極セパレータ 7 負極セパレータ 8 正極集電板 9 負極集電板 10 酸素流路 11 水素流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子型燃料電池に関し、特に高出力で長寿命の固体高分子型燃料電池の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器などの装置に搭載する固体高分子型燃料電池として、図11に示した構成のものが一般に知られている。図11は特開2004−281211号公報に記載された固体高分子型燃料電池の構成を示した断面図である。
【0003】
水素ガスを燃料とする固体高分子型燃料電池の各電極での反応は次の通りである。
【0004】
負極(アノード):H2→2H++2e−
正極(カソード):2H++1/2O2+2e−→H2O
トータル反応式 :H2+1/2O2→H2O
図11において、電解質膜1と、この電解質膜1を両側から挟むガス拡散電極としての正極導電体4及び負極導電体5と、この積層体を更に両側から挟み、正極導電体4及び負極導電体5とで酸素含有ガス及び燃料ガスの流路を形成するセパレータ6、7とセパレータ6、7の外側に配置され、正極導電体4及び負極導電体5の集電極となる集電板8、9とから構成されている。正極導電体4と電解質膜1の間及び負極導電体5と電解質膜1との間には、正極触媒反応層2、負極触媒反応層3(以下単に「反応層」と称す。)が形成されている。また正極導電体4側のセパレータ6には、複数のリブが形成されており、このリブが正極導電体4に当接することで酸素含有ガスの流路としての正極ガス流路10を形成する。一方、負極導電体5側のセパレータ7にも、複数のリブが形成されており、このリブが負極導電体5に当接することで燃料ガスの流路としての負極ガス流路11を形成する。
【0005】
固体高分子型燃料電池は、実際にはセパレータ7、負極導電体5、反応層3、電解質膜1、反応層2、正極導電体4、及びセパレータ6をこの順で積層してなる積層体を集電板8、9間に複数層配置して構成されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−281211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
反応層2、3は電極4、5としてのカーボンペーパー(又はカーボン布)上に形成される。そして、反応層2、3を形成した2枚の電極4、5を電解質膜1の両側に積層一体化することにより、膜/電極接合体が作製され、この膜/電極接合体を用いて燃料電池の組み立てが行われる。
【0008】
具体的には、触媒金属をカーボンブラック粉末に担持した粉末、パーフルオロスルホン酸ポリマー液、及び水またはエチルアルコールなどアルコールを混合してペースト状あるいはスラリー状としたものを予めパーフルオロスルホン酸ポリマー液で撥水処理したカーボンペーパーの上にスクリーン印刷法で数十μmの厚さに付着させて反応層2、3を形成し、熱処理を行って反応層2、3付きの電極4、5を作製、そして、この反応層2、3付き電極4、5間に電解質膜1を介在させて積層し、ホットプレス等により一体化して膜/電極接合体とする。
【0009】
この後、膜/電極接合体に正極ガス流路10、負極ガス流路11を成型金型の山で溝を作った正極セパレータ6と負極セパレータ7で挟んでいる。この従来法では、成型金型の山で正極ガス流路10及び負極ガス流路11を作るので、ガス流路の1辺を10mm以下に整形することができず、ミクロンオーダーの微細なパターンで作ることもできず、ガスの流れが層流ではなく乱流となり、抵抗が大きく流れが遅いため燃料であるガス供給量が少なくなり、またガス供給に分布ができ、ガス利用効率が上がらず、燃料電池の出力が低いという欠点があった。また、負極セパレータ7では、電解質膜1へ水を供給するため水素ガスを少量水蒸気加湿したガスを流すが、従来では乱流のため両者の混合比率が場所により異なり、これによっても燃料電池の出力が低いという欠点があった。また、セパレータ6、7が厚く、電池反応による発熱が逃げやすく、かつ温度分布がつきやすいので、これによっても燃料電池の出力が低いという欠点があった。さらに、セパレータ6、7が厚く周辺部にひずみができガスが漏れるリスクがあるため、ガス流路部分を薄くできなく、これが燃料電池全体を薄くできないという原因になっていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る固体高分子型燃料電池は、正極セパレータ及び正極導電体により形成され、正極ガスを流通させる正極ガス流路と、負極セパレータ及び負極導電体により形成され、負極ガスを流通させる負極ガス流路とを有する固体高分子型燃料電池であって、上記正極ガス流路及び負極ガス流路はガス流の方向と垂直な断面形状が方形であり、該方形の各辺の長さが10μ〜5mmに形成されるように構成したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、正極ガス流路及び負極ガス流路の各辺の長さを10μ〜5mmに形成したので、正極ガス及び負極ガスの流れが層流となり、正極ガス及び負極ガスのクロスオーバーを低減できて電解質膜の劣化を抑制できるので燃料電池の出力を高くすることができるとともに、寿命を長くすることができる。
【0012】
また、正極導電体及び負極導電体をマスクパターンで島状又は縞状に形成することにより、燃料電池全体を薄くすることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
まず、本発明では正極ガス流路10と負極ガス流路11とをマスクパターンを用いることにより、ミクロンオーダーで作製した。重力よりも摩擦力(空気抵抗・付着力など)、慣性力よりも粘性力、体積力よりも表面力(表面張力・界面張力)が極端に大きくなり、従来のマクロスケールとは全く異なるガスの挙動となる。この極細の流路の中では、流れるガスは層流という状態になる。また、層流を維持する条件として、種々の実験をして確認したところ、方形のガス流路における各1辺の長さには制約があり、10μ〜5mmの範囲とする必要があることが判った。なお、10μの制約には負極ガス流路11から水素と水蒸気混合ガスを流入するが、水素の浸透が劣化することにも関係する。また、5mmの制限には正極ガス流路10において水抜きが許容値を越えてしまうことにも関係する。
【0014】
本発明では、正極ガス流路10及び負極ガス流路11のガス流が層流支配なので、その流れの中で起こるすべての現象は、流れの速さ・流路の形状・流れるガスなどの条件が一定である限り極めて高度な再現性を持つ。この再現性を利用して、流れの速さ・流路の形状を制御することにより、ガス利用効率を上げ、燃料電池の出力を高くした。また、負極ガス流路11では、水素ガスを少量水蒸気加湿した混合ガス流が層流のため、水素ガスと水蒸気ガスの互いのガスへの拡散速度が極端に高くなることから、両ガスの混合が瞬時に完了する。このため、混合比率が場所によらず同一となり、これによっても燃料電池の出力を高くした。また、セパレータ6、7が薄く、電池反応による発熱が逃げにくくかつ温度分布がつかないので、これによっても燃料電池の出力を高くした。さらに、セパレータ6、7が薄く周辺部にひずみができずガスが漏れるリスクがないため、ガス流路部分を薄くでき、これにより燃料電池全体を薄くできた。
【0015】
一方、燃料電池では、反応層2、3の触媒及び電解質膜1とガスとの三相界面で電気化学反応を生起させるため、この反応場の拡大を図ることが発電効率の向上につながる。そして、この反応場の拡大のための一手段として、反応層2、3の有効表面積を大きくする工夫がなされており、そのために、触媒金属粉末としては、触媒金属単独の粉末ではなく、表面積の大きいカーボンブラック粉末に触媒金属を担持したものが用いられている。
【0016】
この触媒金属担持カーボンブラック粉末は、カーボンブラック粉末に例えば触媒金属である白金を含む試薬を付着させ、その後熱処理することにより製造されている。さらに、触媒有効表面積を大きくするため、カーボンブラック粉末を無電解メッキ処理することにより、触媒金属を担持させるなどがされている。
【0017】
しかしながら、種々な方法で触媒有効表面積を大きくしても、従来の構造では、酸素のクロスオーバーによる負極導電体5表面で発生する過酸化水素水で電解質膜1が劣化(スルホン基が活性を失い、カーボンとカーボンの結合が切れる)し、2万時間(約2年)位経ったところで、突然電圧がほぼ0Vになり、燃料電池として使用できなくなっていた。電解質膜1が劣化する主原因は、正極ガス流路10がミクロンオーダーの微細なパターンでないため、酸素ガス供給に分布ができ、高濃度部分で酸素クロスオーバー量が大きいことであることがわかった。また、若干ながら、負極ガス流路11がミクロンオーダーの微細なパターンでないため、水素ガス供給に分布ができ、高濃度部分で水素クロスオーバー量が大きいことも影響していることがわかった。そこで、本発明では、単一セル構造を図1に示すような構造にした。図1の構造では、正極触媒反応層2に対して正極導電体4を、島状、または縞状に面積比率で20%以上80%以下に配置した。なお、島状、または縞上のピッチは5mm以下である。負極側についても同様であり、製造方法は後述の実施例に記載する。
【0018】
次に、本発明の実施の形態に係る固体高分子型燃料電池の構成を図1により説明する。図1において、1は電解質膜、2は正極触媒反応層、3は負極触媒反応層、4は正極触媒反応層2上にマスクパターンにより形成された正極導電体、5は負極触媒反応層上にマスクパターンにより形成された負極導電体、6、7はセパレータ、8は正極集電板、9は負極集電板、10は正極導電体4上に正極セパレータ6を配置することにより、正極触媒反応層2、正極導電体4、及び正極セパレータ6で方形に形成された正極ガス流路、11は負極導電体5上に負極セパレータ7を配置することにより、負極触媒反応層3、負極導電体5、及び負極セパレータ7で方形に形成された負極ガス流路である。
【0019】
即ち、この実施の形態によれば正極ガス流路10から供給される酸素ガスまたは負極ガス流路11から供給される水素ガスのクロスオーバーを従来の0.1%から0.05%以下に低減し、電解質膜1の劣化をなくすことで、電圧が突然0Vになるまでの寿命を4倍以上にすることができた。正極ガス流路10または負極ガス流路11を反応層2、3の外側に形成することができ、燃料電池の薄型化、小型化およびそれを搭載する装置の小型化が達成できた。
【実施例1】
【0020】
以下、図1に示す構成の固体高分子型燃料電池の製造方法、各部材の材料の実施例1を説明する。
【0021】
実施例1では、マスクパターンニング方法の光露光の中の紫外露光の内、リフトオフ法の一例を記載する。光露光は後述する加熱式インプリントより位置合わせ精度が高い。
【0022】
まず、触媒金属、例えば正極側は白金系、負極側は白金とルテニウムの合金系を粒径0.1ミクロン以下のカーボンブラック粉末に担持した粉末、パーフルオロスルホン酸ポリマー液、及び水またはエチルアルコールなどアルコールを混合してペースト状あるいはスラリー状としたものを予めパーフルオロスルホン酸ポリマー液で撥水処理したガラス、銅などの板で支持した50μ厚みの電解質膜1の上に圧力約0.5Mpa以上でスクリーン印刷法、ナノインプリント法またはフレキシブルナノインプリント(FNI:インデンターによりホールを形成)法で十数μmの厚さに付着させて、乾燥後、圧力約0.5Mpa以上でプレスして、まず5μ厚みの正極触媒反応層2を形成した。そして、一度電解質膜1ごと支持板からはずし、裏返して支持板に載せ、電解質膜1上に圧力約0.5Mpa以上でスクリーン印刷法により正極触媒反応層2と同様5μ厚みの負極触媒反応層3を形成した。
【0023】
なお、正極触媒反応層2と負極触媒反応層3とを同時にスクリーン印刷、乾燥後、一対のロール間にロール間隙の隙間より厚い電解質膜1と正極及び負極触媒反応層2、3の一体膜を通すと加圧され隙間厚みとなるロールプレス機挟みこみ法などにより電解質膜1上に同時に形成しても良い。
【0024】
正極導電体1と負極導電体2は図2のようにマスクパターンをリフトオフ法で形成した。
【0025】
まず、前述した電解質膜1上に塗布した正極触媒反応層2または負極触媒反応層3に、真空中(1000pa以下)でマスクを用いて紫外灯(波長300〜400nm、本発明では365nm、光量3500mW)で紫外線照射量1J/cm2のマスク露光によりノボラックなどの芳香族系樹脂のポジ型フォトレジスト(東京応化工業製化学増幅型ポジ型ホトレジスト「TDUR―DP604」または化学増幅型ポジ型ホトレジスト「TDUR―P034」)12を形成した(図2(a)参照)。
【0026】
なお、反応層基板に対し、マスクパターンを介して縮小投影露光装置ニコンNSR―2005EX8A(ニコン社製)を用いて露光したのち、ホットプレート上で130°Cにて90秒間加熱処理を行い、次いで2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて現像処理し、純水にて洗浄することで、島状、または縞状のピッチが10μ〜8mmのホトレジストパターンを焼き付け、正極ガス流路10と負極ガス流路11部分のホトレジストパターンを得るようにしても良い。なお、深堀り、長さ/孔径のアスペクト比向上などのため、純水にて洗浄後CHF3ガスまたはO2+ガスで、反応性イオンエッチング(RIE)を実施しても良い。得られたそれぞれのレジストパターン12をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察したところ、全てのパターン下部の断面はいずれも垂直であった。
【0027】
なお、紫外光のフォトレジスト12には、ポリメチルメタクリレート(PMMA)など飽和脂肪族系樹脂、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのシリコンゴムまたはポリビニールフェノール、フェノール樹脂、ポリスチレン(PS)、脂環族メタクリレート樹脂、ポリイミド、脂肪族ポリイミドなどであっても良い。
【0028】
次に、レジスト除去したレジストパターン上に正極導電体4または負極導電体5となるカーボン塗料またはカーボンインキ13を塗布・乾燥する(図2(b)参照)。
【0029】
次に、40°Cのエチレンカーボネート(EC:融点36°C)の溶液中またはアセトン中へ、正極導電体4と負極導電体5をパターン積層した正極触媒反応層2と負極触媒反応層3を侵漬しレジスト12を溶解する(図2(c)参照)。レジスト溶解性を上げるため、正極触媒反応層2と負極触媒反応層3への溶解液の圧力を上げるなどをしても良い。
【0030】
なお、レジスト溶解液14には、BTA(ベンゾトリアゾール)、NMP、アルキルベンゼンスルフォン酸、フェノール、ラウリル硫酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、または有機スルフォン酸やアルキレングリコールなどを主成分とする剥離液または硫酸過水(H2SO4+H2O2→H2SO5+H2O)または高濃度オゾン水(150ppm)またはソルファイン−リンス310または超臨界CO2溶解液またはエタノールアミン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノン、1,1,1−トリメチルアセトンなどのケトン類や、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール又はジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、あるいはこれらのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体や、ジオキサンのような環状エーテル類や、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類、有機アミン系などを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。乾式溶解ガスでは、真空中、ジクロロメタンをレジストに吹き付ける方法でも良い。
【0031】
最後に純水またはエタノールでスプレーすることで正極ガス流路10と負極ガス流路11部のレジストが溶解した部分の不要なカーボンを除去し、電解質膜1と電極導電体4、5と電極反応層2、3の接合体を作製した(図2(d)参照)。この接合体をセパレータ6、7とホットプレス等により積層一体化することにより、図1に示すような燃料電池の組み立てを行なった。
【0032】
なお、紫外露光の他に、ArFレーザー露光、KrFレーザー露光、F2レーザー露光、電子線露光、高圧水銀露光、X線露光、キセノン露光でも良い。ArFレーザー露光の場合、レジストは、ドライエッチング耐性に優れた2−メチルアダマンチルメタクリレート(2−MAdMA)+メバロニックラクトン(MLMA)を用いる。KrFレーザー露光の場合、アダマンチルメタクリレート(AdMA)と、KrFレジストの反応性基として広く用いられているt−ブチルメタクリレート(t−BMA)の共重合体)を用いる。電子線露光の場合、炭素系レジストまたはポリシロキサン誘導体レジストを用いる。
【実施例2】
【0033】
実施例2では、マスクパターンニング方法の光露光における紫外露光の内、グラビア印刷による方法の一例を述べる。
【0034】
正極導電体4と負極導電体5のカーボンパターニングを以下のように実施した。まず、グラビアポジを作った。次に、重クロム酸カリウムで感光性をもたせたカーボンティッシュに、このポジを紫外線で露光し焼き付けた。次に、露光したカーボンティッシュをまず正極導電体4として、電解質膜1と正極触媒反応層2の接合体に接着し、温水で未硬化のゼラチンを洗い流すと、正極触媒反応層2上にポジのゼラチン・レリーフ残存カーボン正極導電体4形成した。次に裏返して同様にしてカーボン負極導電体5を形成した。最後に、この電解質膜1と電極導電体4、5と電極触媒反応層2、3の接合体を用いて、実施例1のようにして燃料電池の組み立てを行った。
【0035】
なお、この他にマスクを用いた光露光は、カーボントナーをマスク越しに、超高圧水銀灯、キセノンランプなどによるフラッシュで焼き付ける方法などであっても良い。
【実施例3】
【0036】
実施例3では、マスクパターンニング方法の湿式方法の一例を述べる。
【0037】
本発明の工程図は、電極を上面から見た場合を図3、図3のA−Aでの断面図を図4に示す。
【0038】
まず、図3に示すように、カーボン15に分散材16と捕捉材17を混ぜたカーボンインクまたはカーボンインキを、一定速度で移動している電極触媒反応層2、3または電極にインジェット方式で横方向には非常に狭い間隔で、縦方向には横方向よりは広い間隔でプリントする。これを加熱することで、分散材16を捕捉材17が捕捉、化学反応でどちらも分解・蒸発することでカーボンインク15が露出、少しだれることにより、横方向のカーボンインク15は連結し、縦方向は連結しないため、図4に示すように電極ガス流路が成形される。
【0039】
その後、電解質膜1と電極導電体4、5及び電極反応層2、3との接合体を用いて、実施例1のようにして燃料電池の組み立てを行った。
【0040】
実施例3では、カーボンインク15に加熱により乾燥する熱乾燥型を使用したが、溶剤の蒸発で乾燥する蒸発乾燥型、空気中の酸素と結合して乾燥する酸化乾燥型、2種類のインクを混合することで乾燥する2液反応型であっても良い。また、酢酸レジストやメッキレジストで使用されるレジストカーボンインクでも良い。
【0041】
また、電極ガス流路10、11成形方法としてはブロックコポリマーの自己組織化または自己組織化単分子膜(SAM)によるナノパターニング法をしても良い。
【0042】
なお、湿式方法としては、この他にカーボン塗布膜を熱転写でパターニングする方法などであっても良い。
【実施例4】
【0043】
実施例4では、マスクパターンニング方法の乾式方法の一例を述べる。
【0044】
電解質膜1上に塗布した正極触媒反応層2と負極触媒反応層3に、ミクロンオーダーの穴のあいたマスク上からカーボン塗料(ペースト)を塗布・乾燥し、まず、正極導電体4、次に負極導電体5を作製する。その後、マスクを剥離し、電解質膜1と電極導電体4、5と電極触媒反応層2、3の接合体を用いて、実施例1のようにして燃料電池の組み立てを行った。
【実施例5】
【0045】
実施例5では、マスクパターンニング方法の乾式方法の一例を述べる。
【0046】
フォトリソマスキングを用いたマイクロブラスト加工を実施した。電解質膜1上に触媒を含むカーボンを塗布した正極触媒反応層2と負極触媒反応層3に、マスキング材となるドライフィルムをラミネートし、フォトマスクを介して紫外線を照射、弱アルカリ液にて現像、乾燥し、まず正極導電体4、次に負極導電体5を形成した。その後、0.5μ程度のアルミナ砥石を用いてマイクロブラスト法にてパターン加工し、マスクの無い部分を選択的に除去した。加工後はマスクを剥離し、洗浄後、電解質膜1と電極導電体4、5と電極触媒反応層2、3の接合体を用いて、実施例1のようにして燃料電池の組み立てを行った。
【実施例6】
【0047】
実施例6では、マスクパターンニング方法にモールドを用いた転写による方法の一例を述べる。
【0048】
モールドの材料にニッケル、タンタルなどの金属を使用して、マスクパターンを持った金型を作成した。また、モールドの剥離性を良くするために金型にフッ素処理を実施、未処理の金型に対して、水の接触角を20度→90度、応力(荷重P[N]/接触面積A[mm2])を0.19→1.02Mpaに向上させた。この金型に、樹脂粘度が高くても射出成型が可能なポリフェニレンサルファイド(pps:ポリフェニレンスルフィドともいう)などの熱可塑性樹脂に触媒を含む導電性カーボンを混合、スラリーとし、シリコンモールドに流し込み、電解質膜上に250°C(180〜400°C)以上加熱、プレス(プレス圧は約13Mpa)した後105°C(88〜140°C)以下で冷却し、非結晶化させ、金属モールドをリリースさせ、深堀り、長さ/孔径のアスペクト比向上などのため必要であればその後CHF3ガスまたはO2+ガスによる反応性イオンエッチング(RID)を実施、正極触媒反応層2と負極触媒反応層3を同時にまたは各層別に作成した。剥離荷重は0.1〜15KN、剥離速度は1〜1000μm/secで実施した。
【0049】
なお、実施例6ではPPSを使用したが、ポリメチルメタクリレート(PMMA:東京応化工業製OEBR−1000)でも良い。この場合は、加熱は200°C(180〜400°C)以上加熱、プレスした後105°C(88〜140°C)以下で冷却する。その他、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのシリコンゴム、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ドデシルアミン、ステアリルアミン、エラステックEPDM、熱可塑性エラストマー(TPE)、フェノール、アクリル、フッ素樹脂、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂(PEEK)、高密度ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン、ポリスチレン、フェノキシ樹脂、ABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの三元共重合体)、AES(アクリロニトリル、エチレンプロピレンゴム、スチレンの三元共重合体)、AS(アクリロニトリル、スチレンの共重合体)、ポリアリレート(PAR)、EPDM(エチレン、プロピレン、ジエンの三元共重合体)、その他のポリオレフィン、ウレタン、超高分子量ポリエチレン、PEワックス、αオレフィン、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタンエラストマー、エラストマー、シクロオレフィンポリマー、塩化ビニル(PVC)、液晶ポリマーなどの熱可塑性樹脂でも良い。
【0050】
装置は本実施例では三井電機精機(株)のナノインプリント装置を使用したが、装置はフレキシブルナノインプリント(FNI)装置、ホットエンボス装置、ローラープリント装置、光硬化リアクションインジェクションモールディング(RIM)装置、熱硬化RIM装置、マイクロコンタクト・プリンティング(μCP)装置、M−FPPR(Mold For Fine Pitch Patterning)装置でも良い。
【0051】
その後、電解質膜1と電極導電体4、5と電極触媒反応層2、3の接合体を用いて、実施例1のようにして燃料電池の組み立てを行った。
【0052】
なお、樹脂粘度が低く、導電性カーボンを高充填可能な、エポキシ、フェノール、シリコン樹脂(シリコーン)、ポリイミド、ジアリルフタレート、ポリエステル、フェノール、ベンゾオキサジン、ポリフェニレンエーテル、ポリアミドイミドなどの熱硬化性樹脂またはセルロースアセテート(東洋合成工業(株)社製商品名PAK01)などの光硬化性樹脂に触媒を含むカーボンを混合、超臨界炭酸ガスの使用により、樹脂の流動性を高めたスラリーを流し込み、電解質膜1上にパターン転写により塗布、その後加熱接着、プレス接着または光硬化させることにより、正極触媒反応層2と負極触媒反応層3を同時にまたは各層別に作成しても良い。
【0053】
また、モールドの材料は上記、金属(ニッケル、タンタル、シリコン)以外でも、炭化珪素(SiC)、窒化珪素(Si3N4)、酸化シリコン(SiO2)、フッ素樹脂、石英などであっても良い。
【0054】
また、成型方法が熱硬化や加熱冷却のかわりに紫外線(UV)、電子線(EV)、ArFレーザー、KrFレーザー、水銀灯、キセノン灯を用いた光硬化を使用しても良い。
【0055】
図5に、実施例1〜6で製作した正極及び負極ガス流路の一辺のピッチを10μと5mmとした場合の燃料電池の出力特性と従来例のピッチが10mmの燃料電池の出力特性を示した。この図から、上記のいずれの製造方法でも、燃料電池の単位電流密度あたりの出力電圧、すなわち燃料電池の出力が従来例より上がっていることがわかった。これは、正極ガス流路10と負極ガス流路11をミクロンオーダーで作製することにより、ガス利用率が上がったためである。
【0056】
なお、正極導電体4と負極導電体5のパターン製造方法は、実施例1〜6以外の方法、例えばタンポ印刷、凸版印刷、凹版印刷、平板印刷、オフセット印刷、型成型、マスキングによる沈積法またはスプレー法でも良い。
【実施例7】
【0057】
本発明の構図は図6に示す。正極反応層2と正極反応層2より高さの高い正極導電体4または負極反応層3と負極反応層3より高さの高い負極導電体5を、酸素含有ガス流路10または水素ガス流路11が島状または縞状になるよう配置されている。
【0058】
本発明にて使用した各部材の材料、製造方法の一例を下記に記載する。
【0059】
まず、酸素ガス流量当たり、または水素ガス流量当たりの触媒量を従来例と同じとするため、反応層2、3単位体積当たりの触媒量は反応層面積の総面積(電極触媒反応層2、3と電極カーボン導電体4、5をあわせた総面積)に対する割合分だけ大きくした。なお、反応層2、3パターン形成方法は実施例1〜6の方法を用いた。それ以外のタンポ印刷、凸版印刷、凹版印刷、平板印刷、オフセット印刷、または型成型、またはマスキングによる沈積法又はスプレー法でも良い。
【0060】
次に、形成反応層をマスキングして、沈積法又はスプレー法で電極カーボン導電体4、5を埋めた後、マスキングを除去するようにした。こうすることにより、電極触媒反応層2、3より厚みの大きい電極カーボン導電体4、5ができた。
【0061】
最後にセパレータ板6、7を置くことで、厚み差分の酸素含有ガス流路10と水素ガス流路11を形成した。
【0062】
なお、電極カーボン導電体4、5を先に形成し、形成電極カーボン導電体4、5をマスキングして沈積法又はスプレー法で反応層2、3を埋めた後、マスキングを除去するようにしても良い。
【実施例8】
【0063】
本発明の構図は図7である。電極触媒反応層2、3は電極としてのカーボンまたはカーボンペーパー上に形成し、反応層を形成した2枚の電極4、5を電解質膜1を介して積層一体化することにより、膜/電極接合体が作成され、この膜/電極接合体を用いて燃料電池の組み立てる、即ち数十μmの厚さに付着させて反応層2、3を形成し、熱処理を行って反応層2、3付きの電極4、5を作成、この反応2、3層付き電極4、5を電解質膜1を介して積層し、ホットプレス等により一体化して膜/電極接合体とする。その後、ホットプレスする時に、型でプレス成型することで、触媒反応層2、3の厚みの大きい領域を島状、または縞状に形成した。
【0064】
次に、厚みの大きい触媒反応層をマスキングして、沈積法又はスプレー法で正極カーボン導電体を埋めた後、マスキングを除去するようにした。こうすることにより、ホットプレスされていない正極触媒反応層2より厚みの大きい正極カーボン導電体4ができる。なお、型の底にマスキング材をおくことで、マスキングとホットプレスを同時に行っても良い。最後にセパレータ板6、7を置くことで、厚み差分の酸素含有ガス流路10を形成した。
【0065】
実施例7、実施例8の電気的特性は実施例1〜6と全く同じであった。理由は、ホットプレスされた厚みの小さい部分の電極触媒反応層2、3はガスが通らないため、反応層としてではなく、電極導電体としての働きしかないためである。以下に従来例からの特性改善を図を用いて説明する。
【0066】
図8に、実施例1〜8の本発明と従来の酸素または水素のクロスオーバー量を横軸をガス流路面積の全面積(ガス流路面積と電極カーボン導電体をあわせた総面積)に対する割合で示した。図8に示すように、従来が0.1%であるのに対し、本発明ではガス流路割合が80%でクロスオーバー量が最も高く0.05%で、割合が少なくなるとクロスオーバー量も比例して減少した。
【0067】
図9に、ガス流路割合が80%の場合のピッチの長さとクロスオーバー量及び電気特性の関係を示した。図9に示すように、ピッチが小さいほど、クロスオーバー量が低下するが、10μ未満となると逆にクロスオーバー量が急激に増加し0.1%となった。この理由は、ガスの圧損によると考えられる。電気特性ではピッチが大きいほどそれに比例して悪くなっており、許容できる上限は5mmであった。従って、ピッチの長さは10μ〜5mmであった。
【0068】
図10に本発明の割合80%、ピッチ10μの場合の燃料電池と従来の燃料電池の寿命を示す。図10に示すように、従来が20000時間で電圧が突然ほぼ0Vになっていたのに対し、本発明では約100000時間でほぼ0Vになっているので、寿命は約5倍になっていた。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の固体高分子型燃料電池の構成を示す断面図である。
【図2】マスクパターンをリフトオフ法で形成する手順を示した工程図である。
【図3】マスクパターンを湿式法で形成する手順を示した工程図である。
【図4】マスクパターンを湿式法で形成する手順を示した工程図である。
【図5】従来及び本発明に係る燃料電池の出力特性を示した特性図である。
【図6】本発明の固体高分子型燃料電池の構成を示す断面図である。
【図7】本発明の固体高分子型燃料電池の構成を示す断面図である。
【図8】従来及び本発明に係る燃料電池のクロスオーバー量を示した特性図である。
【図9】正極触媒反応層とピッチと酸素クロスオーバ量及び出力電圧との関係を示した特性図である。
【図10】従来及び本発明に係る燃料電池の出力特性を示した特性図である。
【図11】従来の固体高分子型燃料電池の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 電解質膜 2 正極触媒反応層 3 負極触媒反応層 4 正極導電体 5 負極導電体 6 正極セパレータ 7 負極セパレータ 8 正極集電板 9 負極集電板 10 酸素流路 11 水素流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極セパレータ及び正極導電体により形成され、正極ガスを流通させる正極ガス流路と、
負極セパレータ及び負極導電体により形成され、負極ガスを流通させる負極ガス流路とを有する固体高分子型燃料電池であって、
上記正極ガス流路及び負極ガス流路はガス流の方向と垂直な断面形状が方形であり、該方形の各辺の長さが10μ〜5mmに形成されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
【請求項2】
正極触媒反応層上及び負極触媒反応層上に10μ〜5mmの間隔を置いて正極導電体及び負極導電体をマスクパターンで縞状又は島状に形成したことを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池。
【請求項1】
正極セパレータ及び正極導電体により形成され、正極ガスを流通させる正極ガス流路と、
負極セパレータ及び負極導電体により形成され、負極ガスを流通させる負極ガス流路とを有する固体高分子型燃料電池であって、
上記正極ガス流路及び負極ガス流路はガス流の方向と垂直な断面形状が方形であり、該方形の各辺の長さが10μ〜5mmに形成されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
【請求項2】
正極触媒反応層上及び負極触媒反応層上に10μ〜5mmの間隔を置いて正極導電体及び負極導電体をマスクパターンで縞状又は島状に形成したことを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−123842(P2008−123842A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306511(P2006−306511)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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