説明

固化処理土及び固化処理方法

【課題】主として浚渫土などの軟弱地盤上に表面固化層を形成する際に有効な固化処理土及び固化処理方法を提供する。
【解決手段】石炭灰と軟弱土とを混合してかさ密度が8.5kN/m以下のフレーク状の固化処理土を形成し、これを軟弱地盤上へ空気圧送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、海域、河川、湖沼等の浚渫土などの軟弱地盤上に表面固化層を形成するために用いることができる固化処理土及び固化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤の改良工法として、帯状をしたドレーン材を軟弱地盤表面から地盤内に挿入し、そのドレーン材を通して軟弱地盤内の土壌間隙水を排出させる地盤改良工法が開発されている。この種の工法を浚渫土による超軟弱な地盤に対して施工する場合には、一般に、フローター式の固化処理船を浮かべ、これによってドレーン材の打込み等の地盤改良処理を行っているが、近年においては、浚渫土等の軟弱な埋立土砂に、セメントミルクなどの固化材を添加混合しておき、この固化材添加埋立土砂を使用して埋立地盤表層を形成し、これによって陸上走行式の地盤改良重機が走行できる表面固化層を形成する工法が研究されている。
【0003】
この表面固化層を造成する工法は、重機のトラフィカビリティ確保を目的に行われるため、材令28日の一軸圧縮強度qu28=50〜200kN/mといった固化処理としては比較的低強度で行われることが多い。これは、後の地盤改良作業におけるドレーン材の打設に際し、これ以上の強度になるとマンドレルの貫入が困難になるためである。
【0004】
また、埋立土砂に固化材などの添加材を混合する方法として、スラリー状の、又はスラリー状にした埋立土砂を、埋立投入位置まで搬送管内を空気圧送し、その途中で添加材を注入する方法が開発されている。
【0005】
この従来の添加材管中混合方法は、スラリー状の埋立土砂を搬送管内で、空気部分に挟み、多数の塊状をしたプラグに分断して移動させ、搬送管内に設置した2つ圧力計を用いて移動するプラグ毎に、その体積、移動速度を計測し、各プラグの添加材注入器位置の通過に対応させて、添加材の注入量を制御するようにしている(特許文献1参照)。
【0006】
この従来工法では、埋立土砂を搬送管を介して空気圧送する必要があるため、埋立土砂を投入する箇所は所定間隔毎に設定された特定の場所であり、作業効率の面で問題があった。
【0007】
一方、埋立土砂を圧縮空気で空中を飛行させて軟弱地盤上に埋立土砂を搬送することが考えられるが、埋立土砂などでは効率的に空中を飛行させることはできない。
【0008】
また、発電設備などから発生する石炭灰は有効利用が種々考えられているものの、従来においてはその多くが埋立処分されており、埋立用地の問題もあり、埋立処分した石炭灰の処分方法の検討が為されているが、有効な利用方法は未だ出現していない。
【0009】
【特許文献1】特開平11−229428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような従来の問題に鑑み、主として浚渫土などの軟弱地盤上に表面固化層を形成する際に有効な固化処理土及び固化処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、石炭灰と軟弱土とを混合してなる固化処理土であって、かさ密度が8.5kN/m以下のフレーク状であることを特徴とする固化処理土にある。
【0012】
かかる第1の態様では、石炭灰と軟弱土とを混合し、かさ密度が所定値以下のフレーク状とすることにより、空気圧送性、特に、空気の圧力により空中を飛行させて搬送する空中搬送性が著しく高くなり、軟弱地盤上に表面固化層を形成する作業性が著しく向上した固化処理土を得ることができる。また、石炭灰と軟弱土とを混合してフレーク状とした固化処理土であるので、石炭灰、特に埋立処分された石炭灰でも有効利用できる。
【0013】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の固化処理土において、前記石炭灰と前記軟弱土との混合は、前記石炭灰と前記軟弱土とを落下させながら回転駆動される回転体で打撃することによる破砕混合であることを特徴とする固化処理土にある。
【0014】
かかる第2の態様では、石炭灰と軟弱土との混合を、両者を落下させながら回転駆動される回転体で打撃することによる破砕混合する回転混合方式で行うことにより、かさ密度が所定値以下で空気圧送性の優れたフレーク状の固化処理土を得ることができる。
【0015】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様に記載の固化処理土において、前記石炭灰と前記軟弱土との混合比は、重量比で40:60〜75:25の範囲であることを特徴とする固化処理土にある。
【0016】
かかる第3の態様では、石炭灰と軟弱土との混合比を重量比で40:60〜75:25の範囲とすることにより、特にかさ密度が小さく、空気圧送性の高い固化処理土とすることができる。
【0017】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様に記載の固化処理土において、さらに、固化材を含有することを特徴とする固化処理土にある。
【0018】
かかる第4の態様では、さらにセメント、石灰系固化材などの固化材を含有させることにより、より強固な表面固化層を形成できる固化処理土とすることができる。
【0019】
本発明の第5の態様は、石炭灰と軟弱土とを混合してかさ密度が8.5kN/m以下のフレーク状の固化処理土を形成し、これを軟弱地盤上へ空気圧送することを特徴とする固化処理方法にある。
【0020】
かかる第5の態様では、石炭灰と軟弱土とを混合し、かさ密度が所定値以下のフレーク状とすることにより、空気圧送性、特に空気の圧力により空中を飛行させて搬送する空中搬送性が著しく高くなるので、これを空気圧送、特に、空中を飛行させての搬送をおこなうことにより、効率的に軟弱地盤上に表面固化層を形成することができ、作業性を著しく向上させることができる。また、石炭灰と軟弱土を混合してフレーク状とした固化処理土を用いるので、石炭灰、特に埋立処分された石炭灰でも有効利用できる。
【0021】
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載の固化処理方法において、前記石炭灰と前記軟弱土との混合は、前記石炭灰と前記軟弱土とを落下させながら回転駆動される回転体で打撃することによる破砕混合により行うことを特徴とする固化処理方法にある。
【0022】
かかる第6の態様では、石炭灰と軟弱土との混合を、両者を落下させながら回転駆動される回転体で打撃することによる破砕混合する回転混合方式で行うことにより、かさ密度が所定値以下で空気圧送性の優れたフレーク状の固化処理土を得ることができ、効率的な固化処理を行うことができる。
【0023】
本発明の第7の態様は、第5又は6の態様に記載の固化処理方法において、前記石炭灰と前記軟弱土との混合比は、重量比で40:60〜75:25の範囲であることを特徴とする固化処理方法にある。
【0024】
かかる第7の態様では、石炭灰と軟弱土との混合比を重量比で40:60〜75:25の範囲とすることにより、特に、かさ密度が小さく、空気圧送性の高い固化処理土とすることができ、固化処理作業をさらに効率的に行うことができる。
【0025】
本発明の第8の態様は、第5〜7の何れかの態様に記載の固化処理方法において、前記固化処理土が、さらに、固化材を含有することを特徴とする固化処理方法にある。
【0026】
かかる第8の態様では、さらにセメント、石灰系固化材などの固化材を含有させることにより、より強固な表面固化層を形成することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、浚渫土などの軟弱地盤上に表面固化層を形成する際に、軟弱土と石炭灰とを用いて所定のかさ密度を有するフレーク状の固化処理土とすることにより、石炭灰、特に埋立処分された石炭灰を有効利用でき、且つ空気圧送性の優れた固化処理土とすることができるので、軟弱地盤上に作用性よく効率的に表面固化層を形成することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
図1は、本発明を実施するための装置の一例の概略を示している。図面に示すように、高濃度の浚渫土等の軟弱土を輸送してくる土運船10には、揚土用のサンドポンプ11が設けられており、サンドポンプ11には揚土管12が連結されており、揚土管12は回転式破砕混合装置30に導入されている。回転式破砕混合装置30は図2及び図3を参照しながら後述するが、回転式破砕混合装置30には軟弱土と共に石炭灰等を投入するためのホッパ14が設けられており、また、回転式破砕混合装置30で破砕混合された固化処理土は、その下部に連結された一時貯留槽15に一時的に貯留されるようになっている。また、一時貯留槽15の下部には、搬送管16の始端が連結され、搬送管16には、空気圧送管17が連通され、固化処理土を空気圧送するようになっている。
【0030】
ここで、回転式破砕混合装置30は、縦断面の概略を表す図2及び主要部の横断面の概略を表す図3に示すように、ケーシング31の内側には、支持台32が設けられ、支持台32の起立壁33を水平方向に貫通する水平軸に回転自在に設けられた支持ローラ34が周方向に複数個設けられており、支持ローラ34上には、上下両面が開放された円筒形状の縦型処理容器35がその中心軸を中心として回転自在に載置されている。すなわち、縦型処理容器35の外周面にはフランジ状のレール36及び歯車37が固着されており、縦型処理容器35はレール36を介して支持ローラ34により回転自在に支持されている。また、ケーシング31の内側に支持台32の上方には、複数個の電動機38が設けられ、その回転軸には縦型処理容器35の歯車37と噛み合うピ二オン39が取り付けられている。
【0031】
ケーシング31の上部は上蓋40により覆われており、上蓋40の略中央部に設けられた軸受41で回転自在に支持された回転軸42が縦型処理容器35を貫通するように設けられている。回転軸42の外周面には周方向に複数箇所、実施例では4個、軸方向に複数箇所、実施例では3箇所に取付部43が設けられ、各取付部43には複数のリングを鎖状に連結した回転部材44が取り付けられている。なお、回転軸42の上端にはプーリ45が設けられており、プーリ45は電動機46の回転軸に設けられたプーリ47と駆動ベルト48で連結されている。
【0032】
また、上蓋40上には、スクレーパ50が設けられている。スクレーパ50は、縦型処理容器35の内周面に近接して配置される掻取部材51を有し、掻取部材51は、その上部に連結されたクランク軸52と電動機53に設けられたクランク盤54とからなるクランク機構により上下方向に往復移動されるようになっている。
【0033】
なお、縦型処理容器35の上端部と上蓋40との間には円筒形状の上部シュート55が上蓋40の下面に固定されて設けられており、上部シュート55の開口部は上蓋40に設けられて混合処理する材料を投入するための図示しない投入口に連通している。一方、縦型処理容器35の下部には逆円錐筒状を有し、破砕混合処理されて形成された固化処理土を排出するための下部シュート56が設けられている。
【0034】
このような回転式破砕混合装置30により軟化土と石炭灰とを混合するには、まず、電動機38を駆動することにより、ピ二オン39及び歯車37を介して縦型処理容器35を自転させると共に、電動機46を駆動することにより、上述した駆動伝達系を介して回転軸42を高速回転させ、自重で垂れ下がっていた複数本の回転部材44を水平に浮揚させて高速回転させる。この状態で図示しない投入口から軟弱土及び石炭灰、必要に応じてさらにセメントを所定の比率で投入すると、投入された材料は上部シュート55から縦型処理容器35中に落下し、さらに落下しながら高速で回転駆動される回転体である回転部材44で打撃されながら破砕混合され、フレーク状の固化処理土が下部シュート56から排出される。なお、このとき、破砕混合途中の又は破砕混合された材料が縦型処理容器35の内周面に堆積成長しようとするが、電動機53により上下方向に往復移動されるスクレーパ50の掻取部材51と自転する縦型処理容器35とが協働して堆積成長を防止する。
【0035】
このように回転式破砕混合装置30により破砕混合されることにより形成された固化処理土は、かさ密度が8.5kN/m以下のフレーク状であり、空気圧送性が著しく向上したものである。すなわち、このような固化処理土は、軟弱土と石炭灰とを落下させながら回転駆動される回転体で打撃することにより破砕混合することにより形成されるものである。
【0036】
ここで、軟弱土とは、含水比が液性限界付近のものから液性限界を超えたものであり、例えば、含水比が80%〜400%のものをいう。また、石炭灰とは、クリンカアッシュやフライアッシュであり、好ましくはクリンカアッシュである。なお、石炭灰としては、既に埋立処理されたものを用いてもよく、このような石炭灰を用いても、所定のかさ密度を有するフレーク状のものとすることができる。
【0037】
また、石炭灰と軟弱土との好ましい混合比率は、それぞれの含水比率などによって異なるが、重量比で40:60〜75:25の範囲であれば、かさ密度が8.5kN/m以下のフレーク状となる。
【0038】
このようにして得られるかさ密度が所定の範囲のフレーク状の固化処理土は、空気圧送性に優れるものであるので、搬送管16内を空気圧送されると共に、搬送管16の出口から噴出して空中を飛行し、広範囲に亘って空気圧送により堆積させることができ、軟弱埋立地盤21の表面に、非常に作業性良好に層状に堆積させて表層固化地盤22を造成することができる。
【0039】
ここで、表層固化地盤22の強度が不十分な場合には、軟弱土及び石炭灰にさらに固化材としてセメントを混合して、所定のかさ密度を有する固化処理材としてもよい。また、この他、本発明の目的を損なわない範囲で、水砕スラグや砂土などの他の添加材を混合してもよい。
【0040】
本発明では、このように予め軟弱土と石炭灰とを回転式の破砕混合することのより、所定のかさ密度を有するフレーク状の固化処理材とするので、空気圧送性の優れた固化処理材を得ることができ、これを空気圧送により空中を飛行させて堆積させることにより、非常に作業性良好に表面固化層を形成することができる。
【0041】
(実施例1、2)
次に、高含水比の浚渫土からなる軟弱土に対して、クリンカアッシュを所定割合で添加し、上述した回転式破砕混合装置30を用いて破砕してフレーク状の固化処理材を得た実施例を示す。
【0042】
軟弱土として粘性土(ローム)(含水比130%)とクリンカアッシュとを1:1,3:1の湿潤重量比で混合し、固化処理材を製造した。なお、以下、クリンカアッシュをC、ロームをRと表記する。
【0043】
(比較例)
軟弱土として粘性土(ローム)(含水比130%)とクリンカアッシュとを1:3の湿潤重量比で混合し、固化処理材を製造した。
【0044】
(試験例)
製造した固化処理材のかさ密度、空気による搬送距離別の重量比分布により、製造した固化処理材の空気圧送性を評価した。
【0045】
製造した固化処理材のかさ密度、空気による搬送距離別の重量比分布により、製造した固化処理材の空気圧送性を評価した。表1には空気圧送された距離別の重量比を示す。
【0046】
【表1】

【0047】
図4に示すように、混合材料のかさ密度はクリンカアッシュの混合比が大きくなると小さくなるという傾向が顕著であった。このことから、クリンカアッシュを混合することにより、固化処理土が軽量となり且つフレーク状となり、空気による搬送性の向上を図ることができる。
【0048】
また、図5に示す空気による搬送による距離別の重量比の結果から、クリンカアッシュと軟弱土との混合比がクリンカアッシュの配合比が概ね1:1となり、かさ密度が8.5kN/m以下となると、搬送距離の重心位置が大きくなっていることが確認できた。このことから、固化処理材の空気圧送性はクリンカアッシュを40重量%以上、好ましくは50%以上配合するのが好ましいことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明を実施するための装置の一例の概略を示す図である。
【図2】図1の縦断面の概略を示す図である。
【図3】図1の主要部の横断面の概略を示す図である。
【図4】混合材料のかさ密度を示す図である。
【図5】空気による搬送による距離別の重量比の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
10 土運船
11 サンドポンプ
12 揚土管
14 ホッパ
15 一時貯留槽
16 搬送管
17 空気圧送管
21 軟弱埋立地盤
22 表層固化地盤
28 材令
30 回転式破砕混合装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭灰と軟弱土とを混合してなる固化処理土であって、かさ密度が8.5kN/m以下のフレーク状であることを特徴とする固化処理土。
【請求項2】
請求項1に記載の固化処理土において、前記石炭灰と前記軟弱土との混合は、前記石炭灰と前記軟弱土とを落下させながら回転駆動される回転体で打撃することによる破砕混合であることを特徴とする固化処理土。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の固化処理土において、前記石炭灰と前記軟弱土との混合比は、重量比で40:60〜75:25の範囲であることを特徴とする固化処理土。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の固化処理土において、さらに、固化材を含有することを特徴とする固化処理土。
【請求項5】
石炭灰と軟弱土とを混合してかさ密度が8.5kN/m以下のフレーク状の固化処理土を形成し、これを軟弱地盤上へ空気圧送することを特徴とする固化処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の固化処理方法において、前記石炭灰と前記軟弱土との混合は、前記石炭灰と前記軟弱土とを落下させながら回転駆動される回転体で打撃することによる破砕混合により行うことを特徴とする固化処理方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の固化処理方法において、前記石炭灰と前記軟弱土との混合比は、重量比で40:60〜75:25の範囲であることを特徴とする固化処理方法。
【請求項8】
請求項5〜7の何れかに記載の固化処理方法において、前記固化処理土が、さらに、固化材を含有することを特徴とする固化処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−248662(P2008−248662A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94704(P2007−94704)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(504002193)株式会社エネルギア・エコ・マテリア (24)
【出願人】(000231198)日本国土開発株式会社 (51)