説明

固定具及びそれに適したセンサケース

【課題】ライザパイプの内径の如何に関わらず単一の部材で用を足すことができる液面センサをライザパイプに垂直に保持するための固定具を提供すること。
【解決手段】液面センサを構成する封止具Hが挿通可能な貫通穴を有し、かつセンサの上部に係合する基部11と、基部11から放射状に伸び、かつライザパイプの内径に合わせて径方向の寸法を変更できる複数の調整片13とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下タンクに垂下される液面センサをライザパイプに垂直に保持するための固定構造及びそれに適した固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に見られるような地下タンクに設置される液面測定装置は、図9(A)乃至(C)に示したように液面センサBは、センサ本体部を管状のセンサケースCに収容され上端を封止具Dにより封止して構成されていて、地下タンクAの上面に設けられたライザパイプEに挿入して垂直に固定されている。
ところがライザパイプEは、通常、封止具Hの外径よりも大なる管で構成されているため、封止具Hの上端の外周にリング部材Fを嵌入し、このリング部材Fに放射状に複数のネジGを螺合させ、ネジGをライザパイプEの内周に突っ張らせるように調整したり、また種々の外径のリング部材Fを用意し、適切な外径の物を用いて固定することが行われている。
このため、複数のネジGを進退させての調整作業やそれぞれサイズの異なる複数種類のリング部材Fを用意する必要があり、コストの上昇や部品管理の手間がかかるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−4434
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものでその目的とするところは、ライザパイプの内径の如何に関わらず単一の部材で用を足すことができる液面センサをライザパイプに垂直に保持するための固定構造及びそれに適した固定具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような問題を解消するために本発明は、タンクのライザパイプに液面センサを設置するための固定具において、前記液面センサの上部が挿通可能でかつ係合する貫通穴を有する基部と、前記基部から放射状に伸び、かつライザパイプの内径に合わせて径方向の寸法を変更できる複数の調整片とから構成されている。
【発明の効果】
【0006】
調整片のカッテイングや弾性変形という簡単な作業でライザパイプの内径に関わらず液面センサをライザパイプの内面に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図(A)(B)は、それぞれ本発明の一実施例を示す上面図と断面図である。
【図2】図(A)(B)はそれぞれ寸法調整後のバリの状態と、バリによる影響を軽減することができる実施例を示す図である。
【図3】図(A)(B)は、それぞれ円弧状貫通孔の他の実施例を示す図である。
【図4】図(A)(B)は、それぞれ本発明の固定具の他の実施例を示す上面図と断面図である。
【図5】図(A)(B)は、それぞれ調整片の他の実施例を、また図(C)(D)は、それぞれライザパイプに挿入した状態を示す上面図、及び断面図である。
【図6】図(A)(B)は、それぞれ調整片の他の実施例を、また図(C)(D)は、それぞれライザパイプに挿入した状態を示す上面図、及び断面図である。
【図7】本発明の固定具の他の適用例を示す図である。
【図8】図(A)乃至(C)は、それぞれ本発明の他の実施例を示す斜視図、センサケースの上部と固定具とを示す断面図である。
【図9】図(A)乃至(C)はそれぞれ従来の固定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
そこで以下に本発明の詳細を図示した実施例に基づいて以下に説明する。
図1は本発明の固定具1の一実施例をセンサケースに取り付けた状態で示すものであって、これが取り付けられる液面センサBは、前述したように管状のセンサケースCとその上端に固定される封止具Dとから構成されており、封止具Dは、その上端に固着される基部D1とキャップを兼ねるケーブルクランプD2とを有し、基部D1の上端の外周にネジ山D3が設けられ、これにケーブルクランプD2が螺合している。
また基部D1のネジ山D3の下方にはフランジD4が形成されている。なお、符号D5はケーブル引き出し孔を示す。
【0009】
一方、本発明が特徴とする固定具1は、センサケースCの封止具Hの上端が挿入される穴を有する基部11と、先端がフランジD4に係合する複数、この実施例では6本の爪12と、放射状に伸びる複数、この実施例では3枚の調整片13とから構成されている。
【0010】
各調整片13は、基部11に等間隔に配置され、かつ半径が異なる複数の同一円周上に位置し、さらに各調整片の端部では連続する円弧状貫通孔13a、13b、13c、13dを有する。
【0011】
これら固定具、とりわけ調整片13は刃具により切断可能で、かつ弾性と剛性を備えた高分子の射出成形により構成するのが好ましい。
【0012】
この実施例において、センサ本体に接続されている図示しないケーブルをケーブルクランプDのケーブル引き出し孔D5に挿通し、ついで固定具1の爪12がキャップD2を乗り越えてキャップD2の下面とフランジD4の上面との間に到達するまで押しこむ。その際、基部11は封止具Hの外周に嵌入される。
【0013】
ついでライザパイプEの内径に適合する位置の溝13a〜13dの両端の連続部をニッパ等の刃具で切断して各調整片13の外径をライザパイプEの内径に揃え、ライザパイプEに液面センサBを挿入すると、調整片13の外端がライザパイプEの内周面に弾接する。
これにより、液面センサBは鉛直状態でタンクAに設置される。
【0014】
この実施例によれば基部11はその爪12の移動距離L1をケーブルクランプD2により制限されるため、基部11の内周面とセンサケースCの外周との接触距離L2とを L1<L2 の関係に維持することにより、センサケースCの封止具Hが基部11より下方に移動して脱落するのを防止できる。
【0015】
ところで上述の実施例において調整片の径を調整するために調整片の円弧状貫通孔の連結部で切断すると、図2(A)に示したように場合によってはバリ13’が発生してバリの径方向の長さだけ、径方向の長さが大きくなって挿入が困難となったり、傾きを生じるなどのためバリの除去作業が必要になる。
【0016】
図2(B)はこのような不都合を防止することができる円弧状貫通孔の実施例を示すものであって、この実施例においては切断可能領域を当該円弧状貫通孔13a〜13dよりも可及的に中心側、つまり基部11側に位置させて、各円弧状貫通孔の中央部に凸部13a’〜13d’を形成して外径方向に突出するように構成されている。
【0017】
この実施例によれば、寸法調整のために切断して端部にバリが生じた場合にも、バリのよりも調整片13の凸部13a’〜13d’が切断領域よりも外径側に突出するので、バリの影響を受けることがない。
【0018】
なお、上述の実施例においては各調整片13の寸法調整用の円弧状貫通孔13a〜13dを両端のみで連続する形状としているが、図3(A)、(B)のそれぞれに示したように両端だけでなく中央部でも連続させて2領域に分割した円弧状貫通孔13a1、13a2〜13d1、13d2として形成すると、各連続部の寸法を小さくしても強度を得ることができ、また連続部の寸法が小さい分だけ切断作業が容易となる。
【0019】
図4(A)、(B)は、それぞれ本発明の固定具の他の実施例を示すものであって、この実施例においては前述の実施例における固定具の爪12を省く一方、基部11をセンサケースCの外周に弾性的に嵌合するようにしたものである。
【0020】
この実施例によれば、前述の実施例のように爪12をセンサの封止具Hに係合させる必要がないので、施工を簡単に行うことができる。
【0021】
図5(A)、(B)は、それぞれ固定具の他の実施例を示すものであって、少なくとも調整片13’の部分だけは前述の実施例よりも弾性の大きな材料で構成したものである。
【0022】
この実施例によればセンサの封止具Hに固定具の基部11を装着した状態で調整片13”のサイズを調整することなくライザパイプEに押しこむと、図5(C)、(D)に示したようにそれぞれの調整片13”がライザパイプEの内径に応じて端部側131’がライザパイプEの内周面に沿って上方に均等に弾性変形する。
これによりセンサはライザパイプEの中心部に鉛直に保持される。
【0023】
また図6(A)、(B)は、それぞれは固定具の調整片の他の実施例を示すもので、この調整片14は、径方向、及び円周方向に伸縮可能に構成したもので、径方向はいわゆる蛇腹構造によりで、また周方向は例えばニトリルゴム、フッ素ゴム等の耐油ゴムやナイロン、フッ素樹脂、フェノール等の耐油プラスチックの弾力性で伸縮するように構成されている。
【0024】
この実施例によれば基部にセンサケースCを装着した状態で、調整片14の外周長を縮小させるようにしてライザパイプEに押しこみ、進入後に離すと図6(C)、(D)に示したように調整片14の外周全体がライザパイプEの内周面に弾接する。これによりセンサケースはライザパイプEの中心部に鉛直に保持される。
これらの図5及び図6に示した実施例によれば切断等の加工が不要であるため、工数の削減が可能となる。
【0025】
なお、上述の実施例においてはセンサケースCの最上部だけを固定しているが、図7に示したように垂直方向に距離を隔てて上下関係となるように固定具2、3を複数配置すると、センサケースCの傾きを可及的に防止することができる。
【0026】
なお、上述の実施例においては、既存のセンサケースの上部の封止具に適した固定具について説明したが、センサケースを新しく設計する場合に適した実施例を説明する。
上述の実施例においてはセンサケースの頂部の封止具に設けられるキャップとの径差を利用して固定具をセンサケースの頂部の封止具Hに固定しているが、図8(A)〜(C)に示したようにセンサケースCの頂部の封止具Hの外周に周回する溝H1を形成することにより、固定具1をセンサケースCの頂部に押し込むだけで溝H1に固定具の爪12を係合させることができ、簡単、確実に固定具をセンサケースCの頂部の封止具Hに固定することができる。
【符号の説明】
【0027】
1、2、3 固定具
11 基部
12 爪
13、13’、14 調整片
13a〜13d、13a’〜13d’ 円弧状貫通孔
A 地下タンク
B 液面センサ
C 管状ケース
H 封止具
D ケーブルクランプ
D1 基部
D2 キャップ
D3 ネジ山
D4 フランジ
D5 ケーブル引き出し孔
E ライザパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクのライザパイプにセンサケースに収容された液面センサを設置するための固定具において、
前記液面センサの上部が挿通可能でかつ係合する貫通穴を有する基部と、前記基部から放射状に伸び、かつライザパイプの内径に合わせて径方向の寸法を変更できる複数の調整片とからなる固定具。
【請求項2】
前記調整片には前記ライザパイプの内径に対応する切断支援用の半径が異なる複数の円弧状貫通孔が形成されている請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
前記円弧状貫通孔の中央部に対向する領域が切断支援領域よりも径方向に突出している請求項2に記載の固定具。
【請求項4】
前記センサケースのフランジに係合する爪が前記基部に形成されている請求項1に記載の固定具。
【請求項5】
前記調整片が弾性変形により前記ライザパイプの内径に適合するように構成されている請求項1に記載の固定具。
【請求項6】
タンクのライザパイプに液面センサを設置するための固定具に適したセンサケースにおいて、
前記液面センサの上部が挿通可能でかつ係合する貫通穴を有する基部と、前記基部から放射状に伸び、かつライザパイプの内径に合わせて径方向の寸法を変更できる複数の調整片とからなる前記基部に前記センサケースの頂部近傍の外周に、前記爪が係合する円周状の溝が形成されていているセンサケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−168162(P2012−168162A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233541(P2011−233541)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000151346)株式会社タツノ (167)
【Fターム(参考)】