説明

固定治具、固定方法及びハニカムフィルタの製造方法

【課題】位置合わせをしたハニカム構造体及びマスクを固定でき、かつ、マスクの位置合わせの邪魔になり難い固定治具等を提供することを目的とする。
【解決手段】柱状のハニカム構造体70が載置される載置面14aを有する台座10と、台座10に固定されると共に、載置面14a上に載置されるハニカム構造体70の側面70sを挟持する挟持部材30と、台座10に固定されると共に、ハニカム構造体70の上に載置されるマスク170の外周部170pにおける台座側の面を吸着する吸着部材20と、を備える固定治具100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定治具、固定方法、及びハニカムフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハニカムフィルタが、DPF(Diesel particulate filter)用等として広く知られている。このハニカムフィルタは、多数の貫通孔を有するハニカム構造体の一部の貫通孔の一端側を封口材で封じると共に、残りの貫通孔の他端側を封口材で封じた構造を有する。そして、特許文献1には、このようなハニカムフィルタを製造する方法が開示されている。特許文献1では、シリンダ7内に配置したハニカム構造体1の一端面に対して、封口する場所に穴が開いたマスクを介してピストン8により封口材を貫通孔に押圧することにより、ハニカム構造体の所望の貫通孔の端部に封口材を供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭63−24731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ハニカム構造体の貫通孔とマスクの穴との位置を合わせてから後、マスクを介してハニカム構造体の所望の貫通孔に封口材を供給するまでの間に、マスクと貫通孔との相対位置がずれないようにマスクとハニカム構造体とを強固に固定しておくことが必要である。
【0005】
また、このような固定が可能となると、位置合わせしたハニカム構造体及びマスクを、位置合わせ装置とは異なる場所に設けた封口装置にまで移動させて互いに異なる場所で作業することも可能である。
【0006】
しかしながら、このような固定治具は、位置合わせ作業や封口作業の邪魔にならないような構造である必要がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、位置合わせをしたハニカム構造体及びマスクを固定でき、かつ、マスクの位置合わせ等の邪魔になり難い固定治具、固定方法、及びハニカムフィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る固定治具は、柱状のハニカム構造体が載置される載置面を有する台座と、台座に固定されると共に、載置面上に載置されるハニカム構造体の側面を挟持する挟持部材と、台座に固定されると共に、ハニカム構造体の上に載置されるマスクの外周部における台座側の面を吸着する吸着部材とを備える。
【0009】
本発明によれば、挟持部材はハニカム構造体の側面を挟持する。これにより、ハニカム構造体を台座に固定した状態で、挟持部材に邪魔されずにハニカム構造体の端面でマスクの位置の調製を行うことができる。また、吸着部材はマスクの外周部における台座側の面を吸着するので、マスクの位置合わせの際に吸着部材がマスクの移動を阻害しにくく、マスクをしっかりと固定できる。また、マスクの固定時における位置ずれも起こしにくい。また、このような挟持部材や吸着部材によれば、マスクの上面で封口作業する際の障害ともなり難いので、封口作業も容易に行なうことが出来る。なお、本願明細書において「マスクの外周部における台座側の面」とは、例えば、ハニカム構造体の下側の端面を台座に固定した状態で、ハニカム構造体の上側の端面にマスクを載置した場合に、マスクの下側の面(台座側の面)であって、ハニカム構造体の上側の端面の外側にはみ出した部分(マスクの外周部)を意味する。
【0010】
ここで、挟持部材は、ハニカム構造体の側面を取り囲むように配置された複数のエアピッカーを有し、エアピッカーはガスが供給されると膨張するゴム中空体を有することができる。この場合、ハニカム構造体の固定が容易である。
【0011】
また、吸着部材は、電磁石を有することができる。これにより、例えば、電磁石に電流を流すことにより磁界を発生させて、位置合わせ後のマスクを固定することが容易となる。また、吸着部材が、電磁石及び永久磁石の磁界を弱める磁界を発生可能な電磁石を有する場合は、電磁石に電流を流すことにより磁界を弱めてマスクの位置合わせを容易とし、その後、電流を切ることによって永久磁石の磁界によりマスクを固定することが出来る。この場合、マスクの固定状態で電流を消費しない。
【0012】
また、磁力によりマスクを固定すると、固定動作時に、マスクの位置ズレが生じることが少なくなり、また、固定されたマスクに不要な歪が生じることも少なくなる。
【0013】
また、吸着部材は、真空吸着パッドを有してもよい。
【0014】
本発明に係るハニカム構造体とマスクとの固定方法は、台座の載置面上に載置されたハニカム構造体の側面を挟持する工程と、ハニカム構造体の端面の上においてハニカム構造体の貫通孔とマスクの穴との位置を合わせる工程と、位置が合わせられたマスクの外周部における台座側の面を台座に固定された吸着部材で吸着する工程とを備える。
【0015】
本発明によれば、上述の位置合わせ装置と同様の効果がある。
【0016】
本発明にかかるハニカムフィルタの製造方法は、上述の固定方法と、吸着されたマスクを介してハニカム構造体の貫通孔に封口材を供給する工程とを備える。
【0017】
ここで、吸着する工程と、封口材を供給する工程とを、互いに離れた場所で行い、吸着する工程と、封口材を供給する工程との間に、さらにハニカム固定部材を挟持しかつマスクを吸着した固定治具を移動する工程を備えることができる。
【0018】
これによれば、位置合わせと、封口とを離れた場所で行うことができ、それぞれの工程を互いに独立な最適な環境で行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、位置合わせをしたハニカム構造体及びマスクを固定でき、かつ、マスクの位置合わせの邪魔になり難い固定治具等が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る固定治具の斜視図である。
【図2】図2は、図1の側面図である。
【図3】図3は、図1の上面図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係るハニカムフィルタの製造方法を説明する斜視図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態に係るハニカムフィルタの製造方法を説明する図4に続く斜視図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態に係るハニカムフィルタの製造方法を説明する図5に続く、部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る固定治具の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0022】
図1は本実施形態に係る固定治具100の斜視図、図2は固定治具100の側面図、図3は固定治具100の上面図である。本実施形態に係る固定治具100は、主として、台座10、エアピッカー(挟持部材)30、電磁ホルダ(吸着部材)20を有する。
【0023】
台座10は、概ね円板状をなし、上面中央部に円板状の凸部12を有する。凸部12の上面中央部には、円板状の凹部14が形成され、凹部14の上面が、ハニカム構造体の端面を載置する載置面14aとなる。凹部14の直径は、ハニカム構造体(詳しくは、後述(図4等参照))の端部を収容できる大きさとされている。
【0024】
図1に戻って、エアピッカー30は、支持棒31の上端に取り付けられている。支持棒31は、載置面14aを取り囲むように3つ配置されている。したがって、本実施形態では、エアピッカー30を3つ備えている。3つのエアピッカー30は、図3に示すように、載置面14aの中心O周りに互いに120度離れた位置に配置されており、図4に示すように、載置面14a上に載置されるハニカム構造体の側面70sを3方から挟持可能な位置に配置されている。
【0025】
図1に戻って、エアピッカー30は、ガス出入口30cを有するベース部30aと、ガス出入口30cから供給されるガスにより膨らむことの出来るゴム中空体30bと、を備える。エアピッカー30に対して、ガス出入口30cからガスを供給すると、ゴム中空体30bが膨らんでハニカム構造体の側面を3方から押圧できる一方、ガス出入口30cからガスを排出すると、ゴム中空体30bがしぼんでハニカム構造体の側面を押圧しなくなる。なお、ガスの配管は図示を省略している。
【0026】
電磁ホルダ20は、支持棒21の上端に取り付けられている。支持棒21は、載置面14aを取り囲むように3つ配置されている。したがって、本実施形態では、電磁ホルダ20を3つ備えている。3つの電磁ホルダ20は、図3に示すように、載置面14aの中心O周りに互いに120度離れた位置に配置されており、図5に示す(詳しくは後述)するように、ハニカム構造体70の上面に配置されるマスク170の外周部170pの下面に3方から対向する位置に配置されている。図3に示すように、電磁ホルダ20と、エアピッカー30とは、載置面14aの中心O周りに互いに60度離れた位置に配置されている。
【0027】
電磁ホルダ20は、図1に示すように、上面20aが平面とされている。図2に示すように、この電磁ホルダ20の上面20aの位置は、載置面14a上に載置されるハニカム構造体70の上端面と同一平面となるようにされている。
【0028】
電磁ホルダ20は、図1に示すように、上面20aから磁束を放出する永久磁石20bと、この磁束と逆向きの磁束を放出可能な電磁石20cと、を内部に有している。電磁石20cに電流が流れていない場合には、永久磁石20bの磁界により、上面20a上の磁性を有する金属板の下面を吸着してこれを固定できる一方、電磁石20cに電流が流れている場合には、永久磁石20bの磁界が電磁石の磁界により弱められるため、上面20a上の金属板を容易に移動させることができる。
【0029】
(製造方法)
続いて、このような固定治具100を使用した封口されたハニカムフィルタの製造方法について、図4〜図6を参照して説明する。
【0030】
まず、ハニカム構造体70を用意する。ハニカム構造体70は、図4に示すように、互いに平行に伸びる複数の貫通孔70aを有する円柱体である。
【0031】
ハニカム構造体70の貫通孔70aが延びる方向の長さは特に限定されないが、例えば、40〜350mmとすることができる。また、ハニカム構造体70の外径も特に限定されないが、例えば、100〜320mmとすることできる。貫通孔70aの断面のサイズは、例えば、正方形の場合一辺0.8〜2.5mmとすることができる。貫通孔70a間の間隔である隔壁の厚みは、0.05〜0.5mmとすることができる。
【0032】
ハニカム構造体70は、後で焼成することにより多孔性セラミクスとなるグリーン(未焼成体)とでき、この場合、セラミクス原料を含む成形体や、セラミクス粒子の成形体であることができる。セラミクスは特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素、金属等が挙げられる。なお、チタン酸アルミニウムは、さらに、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。このようなハニカム構造体70は、セラミクス原料である無機化合物源粉末、及び、メチルセルロース等の有機バインダ、及び、必要に応じて添加される添加剤を含む。
【0033】
例えば、セラミクスがチタン酸アルミニウムの場合、無機化合物源粉末は、αアルミナ粉等のアルミニウム源粉末、及び、アナターゼ型やルチル型のチタニア粉末等のチタニウム源粉末を含み、必要に応じて、さらに、マグネシア粉末やマグネシアスピネル粉末等のマグネシウム源粉末及び/又は、酸化ケイ素粉末やガラスフリット等のケイ素源粉末を含むことができる。
【0034】
有機バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩を例示できる。
【0035】
添加物としては、例えば、造孔剤、潤滑剤および可塑剤、分散剤、溶媒が挙げられる。
【0036】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;およびドライアイス等などが挙げられる。
【0037】
潤滑剤および可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが挙げられる。潤滑剤及び可塑剤の添加量は、無機化合物源粉末の100重量部に対して、0〜10重量部とでき、0.1〜5重量部とできる。
【0038】
分散剤としては、たとえば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウムなどの界面活性剤などが挙げられる。分散剤の添加量は、無機化合物源粉末の100重量部に対して、0〜20重量部とでき、2〜8重量部とできる。
【0039】
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水などを用いることができる。
【0040】
このようなハニカム構造体70は例えば以下のようにして製造することができる。まず、無機化合物源粉末と、有機バインダと、溶媒と、必要に応じて添加される添加物を用意する。そして、これらを混練機等により混合して原料混合物を得、得られた原料混合物を隔壁の形状に対応する出口開口を有する押出機から押し出し、所望の長さに切断後、公知の方法で乾燥することにより、ハニカム構造体70を得ることができる。
【0041】
なお、ハニカム構造体は、未焼成体でなくて、焼成済みのもの(例えば、多孔質セラミクス)であってもよい。
【0042】
続いて、このハニカム構造体70を、開口がある一端面(下面)が載置面14aと対向するように、載置面14a上に載せる。続いて、エアピッカー30のガス出入口30cからガスを供給することにより、図4に示すようにゴム中空体30bを膨らませ、ゴム中空体30bによりハニカム構造体70の側面70sを3方から挟持する。これにより、ハニカム構造体70が、台座10に対して固定される。
【0043】
続いて、図5に示すマスク170を用意する。マスク170は、円形の板状部材であり、多数の貫通孔170aを有する。貫通孔170aの平面形状は、例えば、ハニカム構造体70の貫通孔70a(図4参照)に対応する正方形とすることができる。これらの複数の貫通孔170aは、図5に示すように、千鳥配置とされており、各貫通孔170aは、図4の正方配置されたハニカム構造体70の複数の貫通孔70aのうち、互いに上下左右に隣接しない関係にある複数の貫通孔のみに対向して配置される。マスク170の外径は、ハニカム構造体70の外径よりも大きくなっており、マスク170は、ハニカム構造体70とは対向しない環状の外周部170pを有する。マスク170は、電磁ホルダ20による吸着を可能とすべく、磁力により吸着可能な強磁性材料、例えば、SUS430等の
フェライト系ステンレスからなるものとできる。厚みは、例えば、0.1〜1mmとすることができる。
【0044】
そして、このマスク170を、ハニカム構造体70の上面に載置し、ハニカム構造体70の貫通孔70aと、マスク170の貫通孔170aとの位置を合わせ、封口すべきハニカム構造体70の貫通孔70aと、マスク170の貫通孔170aとが互いに連通し、かつ、封口したくないハニカム構造体70の貫通孔が遮蔽されるようにする。
【0045】
位置合わせの方法は特に限定されず、目視しながら手でマスク170を移動して合わせてもよいし、目視しながら公知の微動装置を用いてマスクや固定治具を移動して位置合わせをしても良く、公知の画像処理法によって移動量を制御してもよい。
【0046】
この位置合わせの際に、各電磁ホルダ20の上面20aは、マスク170の外周部170pと対向しているが、電磁ホルダ20の電磁石20cに電流を流しておき、永久磁石20bの磁束をキャンセルすることにより、電磁ホルダ20の上面20aによる吸着力の発生を抑制し、マスク170が電磁ホルダ20の上面20aの上で水平方向に自由に動けるようにしておく。
【0047】
そして、位置合わせが完了した後に、各電磁ホルダ20の電磁石20cの電流を切り、永久磁石20bによる磁束によりマスク170の外周部170pの下面を吸着する。これにより、ハニカム構造体70とマスク170との位置があった状態で、マスク170が台座10に対して固定される。
【0048】
続いて、マスク170の貫通孔170aを介して、ハニカム構造体70の所望の貫通孔70aを封口する。封口方法は特に限定されないが、例えば、図6のような装置を用いることができる。本実施形態に係る封口装置200は、主として、本体部210、弾性板220、ポンプ250を備える。
【0049】
本体部210は、剛性材料から形成されている。剛性材料としては、ステンレス等の金属や、繊維強化プラスチック等のポリマー材料が挙げられる。本体部210の上面210aには、円柱状の凹部210dが形成されている。凹部210dの内面には、多孔質部材210pが貼り付けられている。
【0050】
弾性板220は、凹部210dの開口面を覆うように、本体部210の上面210a上に、配置されている。弾性板220は、弾性を有し、容易に変形しうる。弾性板220としては、ゴム板とできる。ゴムとしては、天然ゴムや、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ふっ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等の合成ゴムが挙げられる。弾性板220の厚みは特に限定されないが、例えば、0.3〜3.0mmとすることができる。
【0051】
弾性板220は、リング部材225、及び、ボルト231により本体部210に固定されている。リング部材225は、本体部210の凹部210dに対応する位置に開口225aを有し、これにより環状形状をなしている。そして、リング部材225は、弾性板220における中央部(凹部210dとの対向部)が露出するように弾性板220上に配置されている。これにより、弾性板220の外周部が、本体部210とリング部材225とにより挟まれている。リング部材225及び弾性板220には貫通孔hがそれぞれ形成され、本体部210には、これら貫通孔hに対応するねじ孔jが形成されており、ボルト231がこれらの貫通孔hを貫通して配置され、ねじ孔jにねじ込まれて固定されることにより、本体部210の上面210aにおける凹部210dのまわりの部分に、弾性板220の外周部が密着して固定されている。
【0052】
本体部210は、さらに、凹部210dの底面の多孔質部材210pに連通する連通路210eを有している。連通路210eには、接続パイプ214を介してポンプ250が接続されている。
【0053】
ポンプ250は、シリンダ251、シリンダ251内に配置されたピストン253、及びピストン253に接続されたピストンロッド254を備える。ピストンロッド254には、ピストンロッド254を軸方向に往復移動させるモータ255が接続されている。
【0054】
本実施形態では、弾性板220と、ピストン253と、の間には、本体部210、接続パイプ214、及び、シリンダ251により形成される閉鎖空間Vが形成され、閉鎖空間V内には、気体、液体等の流体FLが充填されている。そして、ピストン53を移動させることにより、本体部210の凹部210d内から流体FLを排出して弾性板220を凹部210dの内面に密着させて弾性板220による凹部220dを形成することができ(図5の凹部210dの左側の状態)、また、凹部210d内に流体FLを供給することに弾性板220を凹部210dの底部から引き離すこと(図5の凹部210dの右側の状態)が出来る。
【0055】
そして、予め、ピストン253を下げることにより、図5の凹部210dの左側のように、弾性板220による凹部220dを形成し、この凹部220d内に封口材130を貯留しておく。
【0056】
封口材130は、ハニカム構造体70の貫通孔70aの端部を閉鎖できるものであれば特に限定されないが、液状とできる。例えば、封口材として、セラミクス材料又はセラミクス原料と、バインダと、溶媒とを含むスラリーが例示できる。
【0057】
セラミクス材料としては、上述のハニカム構造体の構成材料や、その原料が挙げられる。
【0058】
バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩等の有機バインダを例示できる。バインダの使用量は、セラミックス源粉末を100質量部に対して、例えば、30.2〜5000質量部とすることができる。
【0059】
潤滑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが挙げられる。潤滑剤の使用量は、セラミックス源粉末の100質量部に対して、2〜20質量部とすることができる。
【0060】
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水、イオン交換水などを用いることができる。なかでも、水とでき、不純物が少ない点で、イオン交換水が用いられる。溶媒の使用量は、セラミックス材料を100質量部に対して、例えば、1520〜460質量部とすることができる。
【0061】
続いて、本体部210の凹部210d上に、上述した固定治具100を配置する。ここでは、固定治具100を、図5の状態から、マスク170が下側になりかつ台座10が上側になるように天地をひっくり返し、マスク170をリング部材225の開口225a内に配置し、マスク170が弾性板220の凹部220dと対向するように配置する。
【0062】
続いて、ポンプ250のピストンを上方に移動させることにより、凹部210d内に流体FLを供給し、これによって、図5の凹部210dの右側に示すように、弾性板220をマスク170に向かって移動させる。これにより、封口材130がマスク170の貫通孔170aを介して、ハニカム構造体70の一部の貫通孔70a内に供給され、封口部が形成する。
【0063】
続いて、ピストン53をさらに上昇させ弾性板220と本体部210との間にさらに流体FLを供給し、弾性板220を上方向に凸状に変形させ、ハニカム構造体70及びマスクを固定する固定治具100を、弾性板220から引き離す。その後、電磁ホルダ20の電磁石を駆動してマスクを除去し、その後、エアピッカー30を収縮させることにより、ハニカム構造体70を台座10から外すことが出来る。そして、必要に応じて、同様の操作により、ハニカム構造体70の他の面のマスク固定及び封口を行うことができる。そして、封口されたハニカム構造体を乾燥、焼成することにより、ハニカムフィルタを製造することが出来る。
【0064】
本実施形態によれば、エアピッカー30がハニカム構造体70の側面70sを挟持する。これにより、ハニカム構造体70を台座10に固定した状態で、エアピッカー30に邪魔されずにハニカム構造体70の上面でマスクの位置の調製を行うことができる。また、電磁ホルダ20はマスク170の外周部170pの下面(台座10側の面)を吸着するので、マスクの位置合わせの際に電磁ホルダ20がマスク170の移動を阻害しにくく、しかも、マスク170をしっかりと固定できる。さらに、電磁ホルダ20を使用しているので、マスク170を固定する際にマスク170の位置ズレが殆ど生じず、また、マスクを固定する際にマスク170に不要な歪を生じさせることも少ない。
【0065】
さらに、このようにしてハニカム構造体70とマスク170とを固定した固定治具100により、これらの位置関係をずらすことなく離れた場所にある封口装置に移動することが容易である。また、このようなエアピッカー30や電磁ホルダ20は、マスク170の上面で封口作業する際の障害ともなり難いので、封口作業も容易に行なうことが出来る。
【0066】
また、エアピッカーが、図3に示すように、載置面14aに直交する方向から見て、互いに120度離れて3つ配置されているので、ハニカム構造体70を強固に固定することが出来る。
【0067】
本発明は、上記実施形態に限定されず、様々な変改態様が可能である。例えば、上記実施形態では、3つあるエアピッカー30の配置位置を、図3のZ軸から見て、互いに120度離れた位置としているが、120度ではなくても実施可能である。例えば、互いに、80〜100度となる位置にすることができる。また、エアピッカー30は3つでなくても2つでも、4つ以上でも実施は可能である。n個ある場合の角度は、360/nとできる。強固にハニカム構造体70を固定する観点からは、エアピッカー30は、ハニカム構造体70の側面を取り囲むように3つ以上あるものとできる。
【0068】
また、上記実施形態では、ハニカム構造体の側面の挟持部材として、エアピッカー30を採用しているが、ハニカム構造体の側面を挟持できるものであれば、エアピッカーでなくても実施可能である。例えば、水平断面が楕円形状のゴムローラを用い、固定時には長軸側がハニカム構造体の側面と当接して挟持する一方、非固定時には短軸側がハニカム構造体の側面と離間しながら対向して非挟持となるように、回動可能とされたゴムローラを使用してもよい。また、ベルト状の部材によりハニカム構造体の側面を挟持してもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、3つある電磁ホルダ20の配置位置を、図3のZ軸から見て互いに120度離れた位置としているが120度ではなくても実施可能である。例えば、互いに、80〜100度となる位置にすることができる。また、電磁ホルダ20も、3つでなくても2つでも、4つ以上でも実施は可能である。n個ある場合の角度は、360/nとできる。電磁ホルダ20は、ハニカム構造体70の側面を取り囲むように3つ以上あるものとできる。
【0070】
上記実施形態では、マスク170の外周部170pの下面の吸着部材として、永久磁石及び電磁石を有する電磁ホルダ20を採用しているが、吸着する状態と、非吸着の状態とを切替えることが出来るものであれば、上記の電磁ホルダに限られない。例えば、永久磁石を有さず電磁石のみを有する電磁ホルダでもよいし、真空吸着パッドを用いてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、Z軸から見て、電磁ホルダ20と、エアピッカー30とが互いに60度離れているが、これに限定されず、Z軸の高さ方向の位置が異なれば、Z軸から見て互いの角度が0度すなわち重なっていても実施可能である。
【0072】
また、台座10の形状も特に限定されず、また、台座10にエアピッカー30や電磁ホルダ20を固定する方法も特に限定されない。これらを支持棒21,31で支持すると、支持棒間に間隙ができるので、ハニカム構造体70の載置や取出しが容易である。
【0073】
ハニカム構造体70の形状や構造も上述に限定されない。例えば、ハニカム構造体70の外形形状も円柱でなくてもよく、例えば、四角柱等の角柱でもよい。また、ハニカム構造体70の貫通孔70aの断面形状は、正方形でなくてもよく、例えば、長方形、三角形、多角形、円形等でも構わない。さらに、貫通孔70aの配置も、正方形配置でなくてもよく、例えば、3角配置、千鳥配置等でも構わない。
【0074】
また、マスク170の形態やマスクの貫通孔のパターンも自由である。さらに、封口装置200の形態も特に限定は無い。
【符号の説明】
【0075】
70…ハニカム構造体、10…台座、14a…載置面、30…エアピッカー(挟持部材)、30b…ゴム中空体、20…電磁ホルダ(吸着部材)、20a…面、20b…永久磁石、20c…電磁石、100…固定治具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状のハニカム構造体が載置される載置面を有する台座と、
前記台座に固定されると共に、前記載置面上に載置されるハニカム構造体の側面を挟持する挟持部材と、
前記台座に固定されると共に、前記ハニカム構造体の上に載置されるマスクの外周部における台座側の面を吸着する吸着部材と、を備える固定治具。
【請求項2】
前記挟持部材は、前記ハニカム構造体の側面を取り囲むように配置された複数のエアピッカーを有し、前記エアピッカーはガスが供給されると膨張するゴム中空体を有する請求項1記載の固定治具。
【請求項3】
前記吸着部材は、電磁石を有する請求項1又は2記載の固定治具。
【請求項4】
前記吸着部材は、永久磁石、及び、前記永久磁石の磁界を弱める磁界を発生可能な電磁石を有する請求項1〜3のいずれか一項記載の固定治具。
【請求項5】
前記吸着部材は、真空吸着パッドを有する請求項1又は2のいずれか記載の固定治具。
【請求項6】
台座の載置面上に載置されたハニカム構造体の側面を挟持する工程と、
前記ハニカム構造体の端面の上においてハニカム構造体の貫通孔とマスクの穴との位置を合わせる工程と、
前記位置が合わせられたマスクの外周部における台座側の面を前記台座に固定された吸着部材で吸着する工程と、
を備えるハニカム構造体とマスクとの固定方法。
【請求項7】
請求項6記載のハニカム構造体とマスクとの固定方法と、前記吸着されたマスクを介して前記ハニカム構造体の貫通孔に封口材を供給する工程と、を備えるハニカムフィルタの製造方法。
【請求項8】
前記吸着する工程と、前記封口材を供給する工程とを、互いに離れた場所で行い、前記吸着する工程と、前記封口材を供給する工程との間に、さらに、前記固定治具を移動する工程を備える請求項7記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−40874(P2012−40874A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162399(P2011−162399)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】