説明

固定装置および固定構造

【課題】床を損傷せずに重量物の固定ができて、吸盤の吸着力を維持することができる。
【解決手段】サーバーラックなどのラック(重量物)20を床面(固定面)21に固定するために設置されていて、ラック20に固定された軸部2と、軸部2に取り付けられて床面21に吸着する吸盤3と、床面21と吸盤3との間に設けられて軸部2を支持する支持部4とから概略構成される。吸盤3には外部の空気が内部へ流入すること阻止可能な逆止弁5が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、什器や機器類などの重量物を床などの固定面に固定するための固定装置および固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、サーバーラックなどの什器や機器類などを床に固定する場合、アンカーボルトを用いて固定している。
また、アンカーボルトの代わりに吸盤を用いる固定装置も提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、対象物への吸着時に負圧空間を形成する吸盤本体と、この空間に連通する排気筒とを備えていて、吸盤本体が吸盤本体の形状を保持する硬質部材と、吸盤本体と吸着対象物との隙間を塞ぐ軟質部材とで構成されていて、吸盤本体の形状変形が少ない真空吸着装置用吸盤が開示されている。
また、特許文献2には、下端部に吸盤が取り付けられていて、吸盤にシリンダを取付けて、吸着盤内面凹部とシリンダ内部空間を弁付きの通気孔により連通し、支柱本体の下端部に、シリンダの内部に装入して風圧などにより支柱本体が浮き上がったときに支柱本体と共にシリンダ内を上方へ摺動することにより吸着盤内面凹部内の空気を通気孔を介してシリンダ内部空間内へ吸入し吸着盤内面凹部内を減圧するピストンを設けたテント用支柱が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−41417号公報
【特許文献2】実開平4−116556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の固定装置では以下のような問題があった。
重量物をアンカーボルトで固定面に固定する場合、床にアンカーボルトを挿入するための穴を形成しなければならないので、床が損傷してしまうと共に、アンカーボルトの設置に施工時間や労力がかかるという問題があった。また、アンカーボルトを挿入する穴を形成する際に、震動や騒音が発生している。
また、特許文献1による真空吸着装置用吸盤では、吸盤本体を真空状態にする機構が開示されておらず、吸盤本体を容易に吸着させることができるかは不明である。
また、特許文献2によるテント用支柱は、テントが風に煽られたときに支柱の固定が安定するが、通常時の吸着力が維持されるかは不明である。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、固定面を損傷せずに容易にかつ確実に重量物を固定面に固定することができる固定装置および固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る固定装置は、什器や機器類などの重量物を固定面に固定するための固定装置であって、前記重量物と連結し前記重量物を支持する支持部と、前記支持部を覆い前記固定面に吸着する吸盤とを備え、前記吸盤には前記吸盤内部の空気を外部へ排出可能であると共に、前記吸盤外部の空気が内部へ流入すること阻止可能な逆止弁が設けられていることを特徴とする。
また、本発明に係る固定装置では、前記重量物と支持部との間には前記重量物の荷重を支持する軸部が設けられていてもよい。
本発明では、重量物と連結し重量物を支持する支持部と、支持部を覆い固定面に吸着する吸盤とを備え、吸盤には吸盤内部の空気を外部へ排出可能であると共に、吸盤外部の空気が内部へ流入すること阻止可能な逆止弁が設けられていることにより、重量物の自重で逆止弁から吸盤内の空気が排出されて吸盤が固定面に吸着され、支持部が吸盤に覆われた状態で固定面に固定されるので、支持部と連結した重量物を固定面に固定することができる。そして、逆止弁が吸盤内への空気の流入を阻止できるので、重量物の固定面への固定状態を維持することができる。
また、逆止弁に人為的に空気を流入させることによって、容易に吸着を解除することができる。
また、重量物の固定を吸盤によって行うことができるので、固定面を損傷させることがない。
【0008】
また、本発明に係る固定構造では、上記の固定装置によって重量物が固定面に固定される固定構造であって、前記固定面には表面に平滑材が設けられていることを特徴とする。
本発明では、固定面には表面に平滑材が設けられていることにより、固定面が平滑でない場合でも固定面を平滑にすることができるので、固定面に吸盤を確実に吸着させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の固定装置によれば、重量物の自重によって吸盤が支持部を覆って固定面に吸着され、支持部と連結する重量物を固定面に固定されることにより、重量物の固定面への固定が容易且つ確実にでき、この固定の解除も容易にできると共に、固定面を損傷せずに重量物を固定面に固定することができる。
また、本発明の固定構造によれば、固定面が平滑でない場合でも固定面を平滑にすることができるので、固定面に吸盤を確実に吸着させて、構造物を固定面に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態による固定装置の一例を示す斜視図である。
【図2】(a)は図1のA−A線断面図、(b)はB−B線断面図である。
【図3】図1に示す固定装置が床面に固定される前の状態を示す図である。
【図4】図1に示す固定装置を用いた固定構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の本実施の形態による固定装置について、図1乃至図3に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施の形態による固定装置1は、サーバーラックなどのラック(重量物)20を床面(固定面)21に固定するために設置されていて、ラック20に固定された軸部2と、軸部2を支持する支持部4と、支持部4を覆い床面21に吸着する吸盤3とから概略構成される。吸盤3には逆止弁5が設けられている
【0012】
軸部2はラック20の底部20aに複数設置されて、その軸方向を鉛直方向に合わせた棒状の部材で、例えば鋼材などで形成されている。軸部2の設置箇所や設置個数は任意に設定される。軸部2の先端には支持部4が連結されている。支持部4は、平面視で吸盤3よりも小さい円板状の部材で、その面を水平にして設置される。
【0013】
図2(a)、(b)に示すように、吸盤3は、軸部2の先端側に支持部4を覆うように設置されている。図3に示すように、床面21に吸着する前の吸盤3は、下向きに開口した椀状に形成されている。吸盤3の内部には吸盤受6が配設されていて、吸盤受6は軸部2と吸盤3の位置を固定している。
【0014】
図2および図3に示すように、吸盤3には、複数の逆止弁5が設けられている。この逆止弁5は吸盤3内の空気を外部へ排出し、外部から吸盤3内へ自然に空気が流入することを防ぐ構造である。
逆止弁5は、例えば、吸盤3の外面から突出し常時は吸盤3の内外に連通する開口部3aを塞ぐ弁5aと、吸盤3から突出していて弁5aに隣接して弁5aを挟む位置に設けられた押圧部5bとから構成されている。
開口部3aは吸盤3の内側から外側に向って狭くなる構成で、吸盤3内部が吸盤3外部よりも空気圧が高いと、吸盤3内の空気圧により弁5aに塞がれた開口部3aが開く構成である。
押圧部5bは、周囲から挟まれると弁5aを押圧して弾性変形させ、開口部3aを開くことができる。
【0015】
次に、本実施の形態による固定装置1を用いたラック20の床面21への固定方法について説明する。
まず、固定装置1が取り付けられたラック20を所定の場所に設置して、図2(b)に示すように吸盤3を床面21と接触させると共に、ラック20の自重によって支持部4を下降させて支持部4の下面と床面21とを面接触させる。
このとき、吸盤3が床面21に押し付けられることによって、吸盤3内の気圧が高くなり、吸盤3内の空気は逆止弁5から排出される。そして、吸盤3内の空気が排出されて吸盤3が支持部4を覆った状態で床面21に吸着される。このように、吸盤3が床面21に吸着されることによってラック20が床面21に固定される。
また、支持部4は床面21と面接触した状態でラック20を支持しているので、ラック20はぐらつかず防ぎ安定した状態となる。
【0016】
固定装置1によってラック20が床面21に固定された状態では、ラック20の荷重は軸部2および支持部4を通じて床面21に伝達される。また、ラック20に下向きの外力が作用した場合にも、この外力は同様に床面21に伝達される。
反対に、ラック20に上向きの外力が作用した場合には、吸盤3の吸着力がこの外力に抵抗し、ラック20が浮き上がることを防ぐことができる。また、ラック20に水平方向の外力が作用した場合には、吸盤3の吸着力および支持部4と床面21との摩擦力がこの外力に抵抗し、ラック20が水平方向に変位することを防ぐことができる。
【0017】
床面21へ固定されたラック20の固定を解除する場合には、人為的に押圧部5bを挟み逆止弁5を開いて吸盤3内に空気を流入させれば、吸盤3の吸着が解除され、ラック20の床面21への固定が解除される。
【0018】
次に、上述した本実施の形態による固定装置1の効果について図面を用いて説明する。
本実施の形態による固定装置1では、ラック20を所定の位置に設置するとラック20の自重によって吸盤3内の空気が逆止弁5から排出され、吸盤3が支持部4を覆った状態で床面21に吸着されて、支持部4が床面21へ固定される構成なので、床面21を損傷しないと共に容易にかつ確実にラック20を床面21に固定できる効果を奏する。
また、吸盤3に逆止弁5が設けられていることによって、吸盤3内に自然に空気が流入しないので吸盤3内の負圧状態が保たれて床面21への固定力を長期に渡って維持することができる。
【0019】
次に、実施の形態による固定装置1を用いてラック20を平滑でない床面(固定面)へ固定する固定構造について説明する。
図4に示すように、床面22が平滑でない場合には床面22を平滑にするために、床面22に合成樹脂塗料などの平滑材12が配設される。そして、この平滑材12の表面に固定装置1によってラックが固定される。
このように、床面に平滑材12を配設することにより、床面22が平滑でなく吸盤3の吸着が悪い場合でも吸盤3を床面21に吸着させることができ、固定装置1によってラックを床面22に固定することができる。
【0020】
以上、本発明による固定装置1および固定構造の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態では、固定装置1は軸部2を備えているが、ラック20の底部20aに直接吸盤3を取り付けて、ラック20と支持部4が吸盤3および吸盤受6を介して連結している構成としてもよい。
また、上記の本実施の形態では、固定装置1は吸盤3と支持部4との間に吸盤受6を備えているが、吸盤受6を設けず吸盤3と支持部4とを連結する構成としてもよい。
また、上記の実施の形態では、支持部4は円板状の部材であるが、平面視多角形や楕円形などの板状の部材としてもよい。また、支持部4は、板状の部材に変わって、床面21との接触面が平らに形成されている塊状の部材としてもよい。
また、本実施の形態では、ラック20に固定装置1を設置しているが、ラック20に代わって他の什器や機器類などに固定装置1を設置してもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 固定装置
2 軸部
3 吸盤
4 支持部
5 逆止弁
12 平滑材
20 ラック(重量物)
21、22 床面(固定面)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
什器や機器類などの重量物を固定面に固定するための固定装置であって、
前記重量物と連結し前記重量物を支持する支持部と、
前記支持部を覆い前記固定面に吸着する吸盤とを備え、前記吸盤には前記吸盤内部の空気を外部へ排出可能であると共に、前記吸盤外部の空気が内部へ流入すること阻止可能な逆止弁が設けられていることを特徴とする固定装置。
【請求項2】
前記重量物と支持部との間には前記重量物の荷重を支持する軸部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の固定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の固定装置によって重量物が固定面に固定される固定構造であって、前記固定面には表面に平滑材が設けられていることを特徴とする固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−153652(P2011−153652A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14753(P2010−14753)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】