説明

固定部材の取り付け構造

【課題】本発明は、簡単な構造で容易に取り付けられる部材の取り付け構造を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明に係るキャビネットにおける固定部材取り付け構造は、キャビネットを構成するパネル1に長穴形状の固定部材取り付け穴4を設け、固定部材3は、固定部材取り付け穴4に対向する形状で固定部材取り付け穴4に挿通可能であるようにフランジを形成し、フランジには固定部材取り付け穴4の直線部を一辺とした略八角形の位置決め部と、位置決め部の表面に略円柱状にねじ部を形成し、固定部材3はねじ部に第一のナットを取り付け、パネル1を固定部材3のフランジと第一のナットではさみ込み固定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信機器を収納するキャビネットにおける、機器間の配線を支持固定する固定部材の取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信機器を収納するキャビネットは、従来、パネルに機器を取り付け、配線していた。配線を固定するための固定部材の取り付けは、パネルに固定穴を設けると共に、固定部材にも取り付け穴を設け、固定穴と取り付け穴にそれぞれねじを挿通し締め付け行っていた。
【0003】
また、光通信機器は光ケーブルにより配線されるが、光ケーブルは光ファイバの束とその束を保持するためのテンションメンバで構成され、光ケーブルとテンションメンバそれぞれを固定する必要があった。そのため、光ケーブルを固定するためにはケーブルクランプを、テンションメンバを固定するためにはテンションメンバ押さえをそれぞれパネルに設けていた。
【非特許文献1】カワムララックカタログNo.10 2006年6月1日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来技術におけるキャビネットでは、図6に示すように、ケーブル等の固定部材31をパネル32にねじ止めで取り付けていた。固定部材31には取り付け穴33を、パネル32には固定穴34をそれぞれ設け、ねじ35を挿通し取り付けていた。そのとき、パネル32に設ける固定穴34を設けてしまうと、固定部材31の取り付け方向を変更したい場合に、固定穴34を穿設しなおさなくてはならなかった。固定部材31を取り付けるために図6に示すように二ヶ所固定穴34と取り付け穴33が設けられているときには、さらに作業に手間が掛かっていた。また、設置しなおしの場合、ねじ35を取り外すと紛失の虞があった。
【0005】
また、従来は、ケーブルクランプ31aとテンションメンバ押さえ31bをそれぞれの用途に合わせて製作していたので製造費用がかかっていた。また、部品の在庫管理の手間が煩雑になっていた。また、パネル32上のレイアウトによっては、ケーブルクランプ31aとテンションメンバ押さえ31bの取り付け位置が変わるが、その変更に合わせて取り付けのための固定穴34を開口しなおしたり、大きな手間が掛かっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明は簡単な構造で容易に取り付けられる部材の取り付け構造を提供することを目的とし、その構造は、キャビネットを構成するパネルに長穴形状の固定部材取り付け穴を設け、固定部材は、固定部材取り付け穴に対向する形状で固定部材取り付け穴に挿通可能であるようにフランジを形成し、フランジには固定部材取り付け穴の直線部を一辺とした略八角形の位置決め部と、位置決め部の表面に略円柱状にねじ部を形成し、固定部材はねじ部に第一のナットを取り付け、パネルを固定部材のフランジと第一のナットではさみ込み固定することを特徴とする。
【0007】
また、固定部材には、さらに配線固定具を取り付け、第二のナットにより配線固定具を固定し、配線固定具は光ケーブル、テンションメンバのいずれも固定可能とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る部材の取り付け構造は、キャビネットを構成するパネルに長穴形状の固定部材取り付け穴を設け、固定部材は、固定部材取り付け穴に対向する形状で固定部材取り付け穴に挿通可能であるようにフランジを形成し、フランジには固定部材取り付け穴の直線部を一辺とした略八角形の位置決め部と、位置決め部の表面に略円柱状にねじ部を形成し、固定部材はねじ部に第一のナットを取り付け、パネルを固定部材のフランジと第一のナットではさみ込み固定するため、部材を取り付けるために設ける穴は部材取り付け穴一つでよく、しかも部材の取り付け向きも変更可能である。また、ねじ締めのためのドライバー等工具が不要で、部材の取り付けが可能である。また、部材の取り付け方向の変更ができるので、部品の共用化を図ることができる。また、部材の取り付け向きの変更時にパネルから部品が離れないので部品の紛失の虞が無くなる。
【0009】
また、固定部材には、さらに配線固定具を取り付け、第二のナットにより配線固定具を固定し、配線固定具は光ケーブル、テンションメンバのいずれも固定可能とするため、部材を取り付けるために設ける穴は部材取り付け穴一つでよく、しかも部材の取り付け向きも変更可能である。また、ねじ締めのためのドライバー等工具が不要で、部材の取り付けが可能である。本発明に係る固定部材という部品だけで、ケーブルクランプにもテンションメンバ押さえにもなるので、入出線の方向の関わらず用いることができる。コストが抑えられ、省スペースで配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
部材の取り付け方向の変更を容易に行えるようにするという目的を、取り付け穴を一つ開けるだけで実現し、ケーブルクランプとテンションメンバ押さえの両方を共用できる。
【実施例1】
【0011】
本発明に係る部材の取り付け構造の実施例を図1〜図4の添付図面に基いて説明する。
【0012】
機器を配置するパネル1と、パネル1の前面を施蓋する箱状のカバー2とでキャビネットを構成する。本発明は、光通信機器を載置したパネル1上で、光通信機器間を配線するケーブル等を支持固定するための固定部材3の取り付け構造に関する。
【0013】
パネル1には、長穴形状の固定部材取り付け穴4を設ける。
【0014】
固定部材3にはパネル1に設けた固定部材取り付け穴4に対向する長穴形状で、固定部材取り付け穴4に挿通可能である程度の大きさのフランジ5を形成する。フランジ5には、フランジ5の直線部分を一辺とする略八角形の位置決め部6を形成し、さらにその表面に円柱状のねじ部7を形成する。
【0015】
固定部材取り付け穴4に固定部材3のフランジ5を差し込み、固定部材3に固定するケーブル等の方向を考慮し、固定部材3の方向を任意に回転させ、ねじ部7に第一のナット8を嵌め込み締め付け固定する。固定部材3のフランジ5と第一のナット8でパネル1の端部を挟んで、固定部材3をパネル1に取り付ける。
【0016】
一旦固定部材3を取り付けた後、キャビネットの内部のレイアウト変更や固定するケーブルの入出線方向の変更により固定部材3の取り付け方向を変更したい場合には、第一のナット8を緩め、固定部材3のフランジ5をパネル1の裏面に入れた状態のままで回転させ、また第一のナット8を締め付け直し固定する。
【0017】
同じ固定部材取り付け穴4で容易に固定部材3の取り付け方向を変更できることが特徴で、従来のように、固定のためのねじ穴を余分に設けたり、変更になったときに追加工が必要となることがない。また工具も不要で手で取り付けが可能である。ねじ等の小さい部品の紛失の虞も無く大きな効果が得られる。
【実施例2】
【0018】
本発明に係るキャビネットの固定部材取り付け構造を図1〜図6の添付図面に基いて説明する。
【0019】
光通信機器は光ケーブル9により配線されるが、光ケーブル9は光ファイバ(図示せず)の束と、光ファイバ9を保持するためのテンションメンバ10とで構成される。光ケーブル9を確実に固定するために、光ケーブル9全体とテンションメンバ10とをそれぞれパネル1に固定する必要がある。
【0020】
実施例1に示した固定部材3のねじ部7に配線固定具11を挿通し、固定部材3の配線固定具11の前面側には第二のナット12を挿通し締め付け、固定部材3に配線固定具11を取り付ける。
【0021】
配線固定具11には同一直線状に光ケーブル9が挿通可能である光ケーブル固定穴13を、同様に同一直線状にテンションメンバ10が挿通可能であるテンションメンバ固定穴14を設ける。キャビネットに入線されてきた側の固定部材3には光ケーブル9を固定し、その先の固定部材にはテンションメンバ10を固定する。入線側の固定部材3に取り付けられた配線固定具11の光ケーブル固定穴13に光ケーブルを、もう一方の配線固定具11のテンションメンバ固定穴14にテンションメンバ10をそれぞれ挿通し、光ケーブル9がまっすぐになるように配線固定具11の取り付け方向を整えて、第二のナット12で締め付け固定する。
【0022】
一旦固定部材3を取り付けた後、キャビネットの内部のレイアウト変更や固定するケーブルの入出線方向の変更により光ケーブル9とテンションメンバ10との位置が逆になる場合がある。その場合、固定部材3の取り付け方向を変更が容易に可能であるので、ナット8を緩め、固定部材3のフランジ5をパネル1の裏面に入れた状態のままで回転させ、配線固定具11に設けられたケーブル固定穴13とテンションメンバ固定穴14との位置を定め、またナット8を締め付け直し固定する。
【産業上の利用可能性】
【0023】
部材は容易に取り付け方向の変更が可能であり、部品の共用化を図ることができ、同じ部品が他の種々の目的にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るキャビネットを示す説明図である。(実施例1、実施例2)
【図2】本発明に係るキャビネットの固定部材の取り付け構造を示す説明図である。(実施例1、実施例2)
【図3】図2における固定部材をパネルに取り付けた状態を示す説明図である。(実施例1、実施例2)
【図4】図2における固定部材の拡大図である。(実施例1、実施例2)
【図5】図2における固定部材に光ケーブルとテンションメンバとを固定させた状態を示す説明図である。(実施例1、実施例2)
【図6】従来のキャビネットにおける固定部材の取り付け構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 パネル
2 カバー
3 固定部材
4 固定部材取り付け穴
5 フランジ
6 位置決め部
7 ねじ部
8 第一のナット
9 光ケーブル
10 テンションメンバ
11 配線固定具
12 第二のナット
13 光ケーブル固定穴
14 テンションメンバ固定穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光通信機器を収納するキャビネットにおける、前記機器間の配線を支持固定する固定部材の取り付け構造であって、前記キャビネットを構成するパネルに長穴形状の固定部材取り付け穴を設け、前記固定部材は、前記固定部材取り付け穴に対向する形状で前記固定部材取り付け穴に挿通可能であるようにフランジを形成し、該フランジには前記固定部材取り付け穴の直線部を一辺とした略八角形の位置決め部と、該位置決め部の表面に略円柱状にねじ部を形成し、前記固定部材は前記ねじ部に第一のナットを取り付け、前記パネルを前記固定部材のフランジと第一のナットではさみ込み固定することを特徴とする固定部材の取り付け構造。
【請求項2】
前記キャビネットにおいて、前記固定部材には、さらに配線固定具を取り付け、第二のナットにより前記配線固定具を固定し、該配線固定具は光ケーブル、テンションメンバのいずれも固定可能とすることを特徴とする請求項1に記載の固定部材の取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−58680(P2008−58680A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236289(P2006−236289)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)
【Fターム(参考)】