説明

固形悪臭剤本発明は、新規な固形悪臭剤に関するものである。

【課題】
官能試験及び効力試験で使用される悪臭をもつ物質は、ほとんどが液体で提供される。液体を取扱うとき、手指への付着が起こりやすく、器具の洗浄時などには、試験室及び周辺環境への悪臭の対処が必要である。容器からの漏れも起こりやすい。容器の開栓時やピペットなどでの採取時にはドラフトなどが必要となり扱いにくい。又試薬の運搬時には慎重な取扱いが必要である。更に悪臭源が動植物由来の場合、エキスなどの試料は毎回調製されている。
【解決手段】
上記の問題は、悪臭物質の存在状態が液体であること、及び悪臭源が動植物由来の場合、前処理が煩雑であることである。そこで、物質を保持させる適切な固形基材を選定する。その基材に物質を含浸させるとき、均一に保持させるために適切な溶剤で希釈してから、基材と混合する。更に不安定なもの、特に酸化される物質には、酸化防止剤及び酸性状態にする有機酸などを添加する。悪臭の試験では、調製された固形悪臭剤の秤量は、計量スプーンなどを用い、軟質プラスチックバッグ内でも可能にする。試験の1回使用量の分包品も調製する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
従来、悪臭についての試験及び検査では、悪臭をもつ物質(ほとんど液体物質)は、ろ紙などに含浸させ、それを容器又はエアバッグに入れて試料(悪臭含有空気)を調製している。この手法は、臭いについての一般的官能試験、並びに社団法人におい・かおり環境協会及び業界団体 芳香消臭脱臭剤協議会の設定した効力試験において採用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
官能試験及び効力試験で使用される悪臭をもつ物質は、ほとんどが液体であるか、又は水溶液で提供される。液体を取扱うとき、手指への付着が起こりやすく、又使用器具への付着があり、器具の洗浄時などには、試験室及び周辺環境への悪臭の対処が必要である。購入できる試薬は、多くの場合、提供サイズが500gなどと必要量に比べて大きすぎ、容器からの漏れも起こりやすい。容器の開栓時やピペットなどでの採取時にはドラフトなどが必要となり扱いにくい。又試薬の運搬時には慎重な取扱いが必要である。更に悪臭源が動植物由来の場合、エキスなどの試料は毎回調製されている。このように、悪臭を学習し、又試験での適切な濃度の調製は、煩雑で容易とは言えないのが実情である。
【課題を解決するための手段】
【0003】
上記の問題は、悪臭物質の存在状態が液体であること、及び悪臭源が動植物由来の場合、前処理が煩雑であることである。そこで、物質を保持させる適切な固形基材を選定する。その基材に物質を含浸させるとき、均一に保持させるために適切な溶剤で希釈してから、基材と混合する。更に不安定なもの、特に酸化される物質には、酸化防止剤及び酸性状態にする有機酸などを添加する。悪臭の試験では、調製された固形悪臭剤の秤量は、計量スプーンなどを用い、軟質プラスチックバッグ内でも可能にする。試験の1回使用量の分包品も調製する。
【発明の効果】
【0004】
この発明は、悪臭物質を固形基材に保持するものである。これらの固形悪臭剤は、固体で保管可能で、悪臭成分からの毎回の調製は不要であり、手指に悪臭を付着させることは無く、秤量などの取扱いは容易である。特別な器具及び悪臭防御のための設備も不要である。運搬も特別な注意は不要で、試験を行う場所及び施設を選ばず、どこでも試験が可能となるなどのすぐれた効果を有するものである。特に、動植物由来成分の固形悪臭剤は、成分原料の入手、ろ過、抽出、灰化などの前処理が不要で、悪臭の試験での煩雑さが無くなった。更に、取扱う悪臭の絶対量は、臭いについての必要量のみであり、試験の安全性は大いに高まった。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下、この発明の実施の形態について説明する。調製された固形悪臭剤のうち、安定性に懸念のあるものについては、1週間後、又は1ヶ月後に悪臭の維持を確認した。
(実施の形態1)
〔固形悪臭剤・アンモニアの調製(1)〕
下表の臭い成分を溶媒に溶かし、これに色素を添加し、着色した液をつくる。この液を密封容器又は装置内で基材に均一に浸透させ、固形悪臭剤を調製する。
【表1】


・悪臭マスターバッチの作成
上記の固形悪臭剤・アンモニア(1)を10g量り、10Lエアバッグに入れ、1時間放置して作成する。
・消臭剤効力試験用試料の作成
上記マスターバッチ50mLをシリンジで量り、10Lエアバッグに入れる。このエアバッグ内のアンモニア濃度を検知管で測定するとき、90ppmであった。
(実施の形態2)
〔固形悪臭剤・アンモニアの調製(2)〕
下表の臭い成分を溶媒に溶かし、これに色素を添加し、着色した液をつくる。この液を密封容器又は装置内で基材に均一に浸透させ、固形悪臭剤を調製する。
【表2】


・悪臭マスターバッチの作成
上記の固形悪臭剤・アンモニア(2)を10g量り、10Lエアバッグに入れ、1時間放置して作成する。
・消臭剤効力試験用試料の作成
上記マスターバッチ100mLをシリンジで量り、10Lエアバッグに入れる。このエアバッグ内のアンモニア濃度を検知管で測定するとき、20ppmであった。
(実施の形態3)
〔固形悪臭剤・トリメチルアミンの調製〕
下表の臭い成分を溶媒に溶かし、これに色素を添加し、着色した液をつくる。この液を密封容器又は装置内で基材に均一に浸透させ、固形悪臭剤を調製する。
【表3】


・悪臭マスターバッチの作成
上記の固形悪臭剤・トリメチルアミン10gを量り*)、10Lエアバッグに入れ、30分放置して作成する。
【0006】
*)悪臭の激しい物質は、固形悪臭剤の入った容器を軟質プラスチックバッグなどに入れ、袋の中で開栓して計量スプーンで量り取る。
・消臭剤効力試験用試料の作成
上記マスターバッチ30mLをシリンジで量り、10Lエアバッグに入れる。このエアバッグ内のトリメチルアミン濃度を検知管で測定するとき、80ppmであった。
(実施の形態4)
〔固形悪臭剤・メチルメルカプタン1回分用の調製〕
下表の臭い成分を容器内で基材に均一に浸透させ、密栓して、固形悪臭剤1回分用を調製する。
【表4】



・悪臭マスターバッチの作成(1)
上記の固形悪臭剤・メチルメルカプタン1回分用を1Lエアバッグに入れる。1Lエアバッグに、クエン酸0.2gを水5mLに溶かした液を容器に入れたものを同居させる。エアバッグを密封した後、固形悪臭剤・メチルメルカプタン1回分用の容器を開け、クエン酸溶液をふりかける。この後、1Lの空気を入れ、30分放置して作成する。
・消臭剤効力試験用試料の作成
上記マスターバッチ300mLをシリンジで量り、10Lエアバッグに入れる。このエアバッグ内のメチルメルカプタン濃度を検知管で測定するとき、70ppmであった。
【0007】
・悪臭マスターバッチの作成(2):固形悪臭剤・メチルメルカプタン1回分用調製1週間後のマスターバッチの作成
上記の固形悪臭剤・メチルメルカプタン1回分用を1Lエアバッグに入れる。1Lエアバッグに、クエン酸0.2gを水5mLに溶かした液を容器に入れたものを同居させる。エアバッグを密封した後、固形悪臭剤・メチルメルカプタン1回分用の容器を開け、クエン酸溶液をふりかける。この後、1Lの空気を入れ、30分放置して作成する。
・消臭剤効力試験用試料の作成
上記マスターバッチ300mLをシリンジで量り、10Lエアバッグに入れる。このエアバッグ内のメチルメルカプタン濃度を検知管で測定するとき、30ppmであった。
(実施の形態5)
〔固形悪臭剤・ホルムアルデヒド1回分用の調製〕
下表の臭い成分を容器内で基材に均一に浸透させ、密栓して、固形悪臭剤1回分用を調製する。
【表5】


・悪臭マスターバッチの作成(1)
上記の固形悪臭剤・ホルムアルデヒド1回分用を1Lエアバッグに入れる。エアバッグ内で容器を開けた後、1Lの空気を入れ、1時間放置して作成する。
・消臭剤効力試験用試料の作成
上記マスターバッチ200mLをシリンジで量り、10Lエアバッグに入れる。このエアバッグ内のホルムアルデヒド濃度を検知管で測定するとき、50ppmであった。
【0008】
・悪臭マスターバッチの作成(2):固形悪臭剤・ホルムアルデヒド1回分用調製1ヶ月後のマスターバッチの作成
上記の固形悪臭剤・ホルムアルデヒド1回分用を1Lエアバッグに入れる。容器を開けた後、1Lの空気を入れ、1時間放置して作成する。
・消臭剤効力試験用試料の作成
上記マスターバッチ300mLをシリンジで量り、10Lエアバッグに入れる。このエアバッグ内のホルムアルデヒド濃度を検知管で測定するとき、20ppmであった。
(実施の形態6)
〔固形悪臭剤・酢酸の調製〕
下表の臭い成分を溶媒に溶かし、これに色素を添加し、着色した液をつくる。この液を密封容器又は装置内で基材に均一に浸透させ、固形悪臭剤を調製する。
【表6】


・悪臭マスターバッチの作成
上記の固形悪臭剤・酢酸2gをスプーン1杯又は計量スプーンで量り、10Lエアバッグに入れ、1時間放置して作成する。
・消臭剤効力試験用試料の作成
上記マスターバッチ20mLをシリンジで量り、10Lエアバッグに入れる。このエアバッグ内の酢酸濃度を検知管で測定するとき、20ppmであった。
(実施の形態7)
〔固形悪臭剤・トルエンの調製〕
下表の臭い成分を溶媒に溶かし、これに色素を添加し、着色した液をつくる。この液を密封容器又は装置内で基材に均一に浸透させ、固形悪臭剤を調製する。
【表7】


・悪臭マスターバッチの作成
上記の固形悪臭剤・トルエン4gをスプーン2杯又は計量スプーンで量り、20Lエアバッグに入れ、1時間放置して作成する。
・消臭剤効力試験用試料の作成
上記マスターバッチ100mLをシリンジで量り、20Lエアバッグに入れる。このエアバッグ内のトルエン濃度を検知管で測定するとき、100ppmであった。
(実施の形態8)
〔固形悪臭剤・ペンタンの調製〕
下表の臭い成分を溶媒に溶かし、これに色素を添加し、着色した液をつくる。この液を密封容器又は装置内で基材に均一に浸透させ、固形悪臭剤を調製する。
【表8】


・悪臭マスターバッチの作成
上記の固形悪臭剤・ペンタン10gを計量スプーンで量り、2Lエアバッグに入れ、1時間放置して作成する。
・消臭剤効力試験用試料の作成
上記マスターバッチ100mLをシリンジで量り、10Lエアバッグに入れる。このエアバッグ内のペンタン濃度を検知管で測定するとき、400ppmであった。
(実施の形態9)
〔固形悪臭剤・タバコ臭の調製〕
下表の臭い成分を溶媒と混合し、これに色素を添加し、着色した液をつくる。この液を密封容器又は装置内で基材に均一に塗布・浸透させ、固形悪臭剤を調製する。
【表9】


・悪臭マスターバッチの作成
上記の固形悪臭剤・タバコ臭10gを計量スプーンで量り、2Lエアバッグに入れ、1時間放置して作成する。
・消臭剤効力試験用試料の作成
上記マスターバッチ100mLをシリンジで量り、10Lエアバッグに入れる。このエアバッグ内の臭気濃度を臭気測定器で測定するとき、値300であった。
(実施の形態10)
〔固形悪臭剤・キムチ臭の調製〕
下表の臭い成分を溶媒及び安定剤と混合し、混合液をつくる。この液を密封容器又は装置内で基材に均一に浸透させ、固形悪臭剤を調製する。
【表10】


・悪臭マスターバッチの作成
上記の固形悪臭剤・キムチ臭10gを計量スプーンで量り、2Lエアバッグに入れ、1時間放置して作成する。
・消臭剤効力試験用試料の作成
上記マスターバッチ100mLをシリンジで量り、10Lエアバッグに入れる。このエアバッグ内の臭気濃度を臭気測定器で測定するとき、値400であった。
(実施の形態11)
〔固形悪臭剤・n-オクタナールの調製(1)〕
下表の臭い成分を溶媒に溶かし液をつくる。この液を密封容器又は装置内で基材に均一に浸透させ、固形悪臭剤を調製する。
【表11】



・悪臭マスターバッチの作成
上記の固形悪臭剤・n-オクタナール2gをスプーン1杯で量り、10Lエアバッグに入れ、1時間放置して作成する。
・n-オクタナール官能検査用試料の作成
上記マスターバッチ100mLをシリンジで量り、10Lエアバッグに入れる。このエアバッグ内のn-オクタナールの濃度は官能検査に適当であった。
(実施の形態12)
〔固形悪臭剤・n-オクタナールの調製(2)〕
下表の臭い成分を溶媒に溶かし液をつくる。この液を密封容器又は装置内で基材に均一に浸透させ、固形悪臭剤を調製する。
【表12】



・悪臭マスターバッチの作成(1)
上記の固形悪臭剤・n-オクタナール2gをスプーン1杯で量り、10Lエアバッグに入れ、1時間放置して作成する。
・n-オクタナール官能検査用試料の作成
上記マスターバッチ100mLをシリンジで量り、10Lエアバッグに入れる。このエアバッグ内のn-オクタナールの濃度は官能検査に適当であった。
【0009】
・悪臭マスターバッチの作成(2):固形悪臭剤・n-オクタナール調製1ヶ月後のマスターバッチの作成
上記の固形悪臭剤・n-オクタナール2gをスプーン1杯で量り、10Lエアバッグに入れ、1時間放置して作成する。
・n-オクタナール官能検査用試料の作成
上記マスターバッチ100mLをシリンジで量り、10Lエアバッグに入れる。このエアバッグ内のn-オクタナールの濃度は官能検査に適当であった。
(実施の形態13)
〔固形悪臭剤・trans-2-ノネナールの調製〕
下表の臭い成分を溶媒に溶かし液をつくる。この液を密封容器又は装置内で基材に均一に浸透させ、固形悪臭剤を調製する。
【表13】



・悪臭マスターバッチの作成
上記の固形悪臭剤・trans-2-ノネナール2gをスプーン1杯で量り、10Lエアバッグに入れ、1時間放置して作成する。
・trans-2-ノネナール官能検査用試料の作成
上記マスターバッチ20mLをシリンジで量り、10Lエアバッグに入れる。このエアバッグ内のtrans-2-ノネナールの濃度は官能検査に適当であった。
(実施の形態14)
〔固形悪臭剤・trans-2-ノネナールの調製(2)〕
下表の臭い成分を溶媒に溶かし液をつくる。この液を密封容器又は装置内で基材に均一に浸透させ、固形悪臭剤を調製する。
【表14】



・悪臭マスターバッチの作成(1)
上記の固形悪臭剤・trans-2-ノネナール2gをスプーン1杯で量り、10Lエアバッグに入れ、1時間放置して作成する。
・trans-2-ノネナール官能検査用試料の作成
上記マスターバッチ100mLをシリンジで量り、10Lエアバッグに入れる。このエアバッグ内のtrans-2-ノネナールの濃度は官能検査に適当であった。
(実施の形態15)
〔固形悪臭剤・イソ吉草酸の調製〕
下表の臭い成分を溶媒に溶かし液をつくる。この液を密封容器又は装置内で基材に均一に浸透させ、固形悪臭剤を調製する。
【表15】



・悪臭マスターバッチの作成
上記の固形悪臭剤・イソ吉草酸の入った容器を軟質プラスチックバッグ内に入れる。袋内で容器を開栓して、2gをスプーン1杯で量り取る。空気をバッグ内に10L入れ、1時間放置して作成する。
・イソ吉草酸官能検査用試料の作成
上記マスターバッチ5mLをシリンジで量り、10Lエアバッグに入れる。このエアバッグ内のイソ吉草酸の濃度は官能検査、臭いについての教育、研修、学習に適当であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬として得られる物質、アンモニア、ペンタン、酢酸、ホルムアルデヒド、トルエン、トリメチルアミン、メチルメルカプタンナトリウム(ナトリウムメタンチオラート)、n-オクタナール、trans-2-ノネナール及びイソ吉草酸、並びに動植物由来成分、タバコ灰及びキムチ汁を、無機物質・ケイ酸カルシウム粒子又は有機物質・セルロース粒子に含浸及び塗布させていることを特徴とする固形悪臭剤。
【請求項2】
請求項1記載の粒子に対象物質を含浸させるとき、水、プロピレングリコール、流動パラフィンを溶媒に用いることを特徴とする固形悪臭剤。
【請求項3】
請求項1記載の粒子に対象物質を含浸させるとき、色素を添加して含有悪臭物質を識別できることを特徴とする固形悪臭剤。
【請求項4】
請求項1記載の固形悪臭剤は、調製したとき及び保存した後、含浸させた物質が室温で気化し、発散することを特徴とする固形悪臭剤。
【請求項5】
請求項1記載の固形悪臭剤の内、メチルメルカプタンナトリウムからメチルメルカプタンを発散させるために有機酸・クエン酸を用いることを特徴とする固形悪臭剤。
【請求項6】
請求項1記載の固形悪臭剤の内、キムチ臭、n-オクタナール及びtrans-2-ノネナールの固形悪臭剤には、安定化のためフェノール性物質・BHT及び有機酸・クエン酸を用いることを特徴とする固形悪臭剤。
【請求項7】
請求項1記載の固形悪臭剤の秤量は、バッグ内で計量スプーンで行い、発散される物質の濃度は、におい・かおり環境協会及び芳香消臭脱臭剤協議会が設定する効力試験に適当であり、又、官能試験、臭いについての開発、教育、学習に適当であることを特徴とする固形悪臭剤。

【公開番号】特開2011−33571(P2011−33571A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182394(P2009−182394)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(508254129)株式会社プラネット (3)
【Fターム(参考)】