固形燃料
【課題】陶磁器の燃料としての赤松と同等な燃料を安価に提供する。
【解決手段】綿わたとポリエステルわたとの混合比率を2:8から6:4の範囲内とする固形燃料。これにより、赤松の発熱量と同等にでき、また、綿とポリエステルの灰に含まれている各元素が、赤松の灰に含まれている各元素と同様なため、赤松の薪の代替品とすることができる。また、熱分解挙動の測定結果においても、綿とポリエステルとの混合比率を6:4とした混合わたにおいて、赤松の場合と同様な挙動結果を得ていることで、赤松の薪の代替品とすることができる。
【解決手段】綿わたとポリエステルわたとの混合比率を2:8から6:4の範囲内とする固形燃料。これにより、赤松の発熱量と同等にでき、また、綿とポリエステルの灰に含まれている各元素が、赤松の灰に含まれている各元素と同様なため、赤松の薪の代替品とすることができる。また、熱分解挙動の測定結果においても、綿とポリエステルとの混合比率を6:4とした混合わたにおいて、赤松の場合と同様な挙動結果を得ていることで、赤松の薪の代替品とすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、綿(めん)とポリエステルとを混合した固形燃料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国では、年間200万トン以上の繊維製品が廃棄されており、一部は古繊維業者によって回収され、軍手やウエスにリサイクルされている。消費者レベルでも、リサイクルショップやフリーマーケットで再利用が行なわれているが、繊維廃棄物のリサイクル率は約15%程度と言われており、ほとんどは焼却や埋め立て処分されているのが現状である。
【0003】
循環型社会形成に向けて、繊維廃棄物の減量化と有効利用が責務であり、繊維製品は廃棄量の多さ、リサイクル率の低さからリサイクルを推進する必要があり、なかでも、大型繊維廃棄物である廃棄布団は、かつては打ち直しなどによりリユースされていたが、現在ではほとんど行われておらず、焼却処分されているのが現状である。
廃棄布団わたの有効利用(リサイクル)を考えると、(1)マテリアルリサイクル、(2)サーマルリサイクルの2項目が挙げられる。
【0004】
サーマルリサイクルには、油化、ガス化、ごみ焼却熱利用、ごみ焼却発電、セメントキルン原燃料化、ごみ固形燃料(RDF:Refuse Derived Fuel ) などがある。ごみ固形燃料(RDF)はゴミの有効利用の一環として、一般廃棄物を固形燃料化させているが、雑多なゴミが混在した状態で排出されることが多く、固形燃料の性能が安定せず、処理過程で火災などの事故が発生するなど、各地でトラブルを起こしている。
【0005】
一方、特許文献1に示すように産業廃棄物を中心としたプラスチックと紙とを主原料として使用している固形燃料は、RPF( Refuse Paper and plastic Fuel )と呼ばれている。固形燃料は発熱量を調整することが可能であるが、その品質は変動が大きいため、特許文献2では各種廃棄物を発熱量に応じて3種類の原料に分類して各原料を個別に供給混合して固形燃料を得ている。しかし、廃プラスチックの中には塩素を含有するものがあり、塩素を含有した燃料は腐食の問題が大きい。その塩素の除去方法として事前選別や特許文献3のような脱塩素装置が提案されているが、脱塩素処理がコスト高につながる。
さらに、廃プラスチックを鉄鋼製造工程で還元剤として利用する方法については特許文献4に示すように、古くから知られている。
【0006】
【特許文献1】特開平7−118673号公報
【特許文献2】特開平7−242887号公報
【特許文献3】特開2001−220590号公報
【特許文献4】特公昭51−33493号公報
【0007】
しかしながら、上述の廃棄布団わたの主成分は、綿(めん)とポリエステルであり、塩素系素材を含んでいない。また、布団の中わたは染色加工工程を経ていないため、薬品等の付着もほとんどない上、布団の形状から廃棄の際にも一般ゴミと分別して回収している自治体が多く、廃棄布団わたのみをリサイクル用途として回収することが容易である。
【0008】
ところで、陶磁器の製造には焼成工程が不可欠であり、焼成には電気、石油、ガス、薪が用いられており、特に登窯、穴窯などの燃料としては赤松の薪が理想とされている。登窯、穴窯は都市部ではほとんど見られないが、郊外ではいまだに登窯、穴窯が用いられていて、この登窯、穴窯の燃料として赤松が使用されている。
この赤松を燃焼させると灰になり、その灰が窯の中で焼き物の表面に降り灰釉の働きをすることで独特の色合いを出すことができる。一般的には、松灰には、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、マンガン、鉄、アルミニウム、ケイ素が含まれており、これらの成分が釉薬の働きをする。
【0009】
しかしながら、赤松の育成は時間がかかり、伐採から実際に燃料として使用するまでに2年間ほどの時間を要するため、現在では、赤松の薪は非常に入手が困難であり、かつ高価である。
すなわち、里山の開発や松食虫の影響で、陶磁器の焼成に適している30年育成の赤松の薪が全国的に不足しており、これは、全国六古窯(瀬戸、常滑、越前、信楽、丹波、備前)とも共通している。そのため、登り窯、穴窯の燃料である赤松の薪を韓国、中国から輸入している。
【0010】
陶磁器の焼成の燃料として、特に赤松は他の木材に比べて燃焼カロリーが大きく、灰には釉薬の焼成に必要な酸化鉄、リンなどの化学物質を含んでいる。赤松の代わりに建築廃材などを用いても発熱量が不足しており、有害な化学物質を含んでいることも多く、赤松の代替品には不向きである。
また、灰と陶土との化学反応による自然釉薬の焼成には電気炉やガス炉では不向きであり、赤松の薪が好まれて用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上述の問題点に鑑みて提供したものであって、陶磁器焼成用の燃料として赤松と同等な燃料を安価に提供することを目的とした固形燃料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明の請求項1に記載の固形燃料では、綿(めん)わたとポリエステルわたとを6:4の重量比から0付近から10付近の重量比の割合の混合わたで陶磁器の窯の燃料としていることを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載の固形燃料では、綿(めん)わたとポリエステルわたとを重量比で2:8から6:4の範囲の割合の混合わたで陶磁器の窯の燃料としていることを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載の固形燃料では、綿(めん)わたとポリエステルわたとを重量比で6:4の割合の混合わたで陶磁器の窯の燃料としていることを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の固形燃料では、前記綿(めん)わたとポリエステルわたは回収した廃棄布団わたを材料としていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に記載の固形燃料によれば、綿(めん)わたとポリエステルわたとを6:4の重量比から0付近から10付近の重量比の割合の混合わたで陶磁器の窯の燃料としていることで、発熱量も赤松の発熱量と近くなり、さらに焼成工程では、必要なエネルギーは一定ではないため、綿とポリエステルとの混合比を変えることによりその状態に見合った固形燃料を提供することができる。また、綿とポリエステルの灰に含まれている各元素が、赤松の灰に含まれている各元素と同様なため、赤松の薪の代替品とすることができる。
これにより、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を6:4の重量比から0付近から10付近の重量比の割合とした混合わたを固形燃料として陶磁器の窯の燃料として燃焼させることで、赤松の場合と同様に窯の中で焼き物の表面に降り灰釉の働きをして、独特の色合いを出すことができる。
また、固形燃料の材料を綿(めん)わたとポリエステルわたとで構成しているので、赤松と同等な燃料を安価に提供することができる。
【0017】
請求項2に記載の固形燃料によれば、綿(めん)わたとポリエステルわたとを重量比で2:8から6:4の範囲の割合の混合わたで陶磁器の窯の燃料としていることで、発熱量も赤松の発熱量と近くなり、さらに焼成工程では、必要なエネルギーは一定ではないため、綿とポリエステルとの混合比を変えることによりその状態に見合った固形燃料を提供することができる。また、綿とポリエステルの灰に含まれている各元素が、赤松の灰に含まれている各元素と同様なため、赤松の薪の代替品とすることができる。
これにより、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を2:8から6:4の範囲の割合とした混合わたを固形燃料として陶磁器の窯の燃料として燃焼させることで、赤松の場合と同様に窯の中で焼き物の表面に降り灰釉の働きをして、独特の色合いを出すことができる。
また、固形燃料の材料を綿(めん)わたとポリエステルわたとで構成しているので、赤松と同等な燃料を安価に提供することができる。
【0018】
請求項3に記載の固形燃料によれば、綿(めん)わたとポリエステルわたとを重量比で6:4の割合の混合わたで陶磁器の窯の燃料としていることで、赤松の発熱量と同等にでき、さらに焼成工程では、必要なエネルギーは一定ではないため、綿とポリエステルとの混合比を変えることによりその状態に見合った固形燃料を提供することができる。また、綿とポリエステルの灰に含まれている各元素が、赤松の灰に含まれている各元素と同様なため、赤松の薪の代替品とすることができる。また、熱分解挙動の測定結果においても、綿とポリエステルとの混合比率を6:4とした混合わたにおいて、赤松の場合と同様な挙動結果を得ていることで、赤松の薪の代替品とすることができる。
これにより、綿(めん)とポリエステルとの混合比率を6:4とした混合わたを固形燃料として陶磁器の窯の燃料として燃焼させることで、赤松の場合と同様に窯の中で焼き物の表面に降り灰釉の働きをして、独特の色合いを出すことができる。
また、固形燃料の材料を綿(めん)わたとポリエステルわたとで構成しているので、赤松と同等な燃料を安価に提供することができる。
【0019】
請求項4に記載の固形燃料によれば、前記綿(めん)わたとポリエステルわたは回収した廃棄布団わたを材料としているので、廃棄布団わたのリサイクル率を向上させることができ、廃棄布団わたの有効利用を促進することができる。また、廃棄布団わたの材料(綿(めん)わたとポリエステルわた)でゴミ固形燃料を製造しているので、赤松と同等な燃料を安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。本発明者達は、種々の実験を行うことで、綿(めん)とポリエステルとを所定の比率で混合することによって赤松と同等の発熱量が得られることを見いだしたのである。ポリエステルは廃プラスチック同様還元剤として利用できるため、布団わたのみで赤松の代替燃料を安価に製造することが可能である。
また、綿(めん)およびポリエステルの燃料後の灰に含まれている元素は、赤松と綿でほぼ同様であり、ポリエステルにはチタンが含まれているが、チタンは赤松には含まれていないものの釉薬の成分の一つである。
【0021】
本発明者達は、布団わたの素材として綿(めん)とポリエステルがほとんどであることに着目し、特に大量に廃棄されようとする廃棄布団わたに着目したものである。そして、この廃棄布団わたの素材である綿とポリエステル混合による熱カロリーの計算は容易であり、燃焼のシミュレーションが立て易く、しかも、固形燃料として廃棄布団わたのリサイクルができ、廃棄物の利用であるが故に材料費も安価である。
【0022】
また、布団わたは、染色仕上げ加工が施されておらず、灰と陶土との化学反応による釉薬の焼成に必要な特定ガス雰囲気での燃焼仕様の化学物質の混入が容易である。すなわち、釉薬の働きをするものを固形燃料の製造時(またはその前後)に付与して、所望の色合いを陶磁器に加味することも可能となる。
また、塩素は窯を腐食させるために、少ないことが望ましく、さらには、NOx、SOxの生成の観点から窒素や硫黄も少ないことが望ましい。
【0023】
図1は、レギュラーポリエステルわた、芯鞘ポリエステルわた、綿(めん)、赤松のそれぞれの発熱量を示している。なお、発熱量は、MJ/kgと、Kcal/kgの2種類の表記をしている。
図1に示すように、レギュラーポリエステルわたでは、6420(Kcal/kg)の発熱量であり、芯鞘ポリエステルわたでは、6018(Kcal/kg)の発熱量であり、綿(めん)わたでは、3863(Kcal/kg)の発熱量である。さらに、赤松は5800(Kcal/kg)の発熱量である。
【0024】
図2は、綿とポリエステルとの混合わたの発熱量を示し、綿とポリエステルとの混合比率をそれぞれ0:10から10:0に変えた場合の発熱量のグラフを示している。図3はこれの混合比率の所定の混合比での発熱量を示すものである。綿とポリエステルとの混合わたの比率を、6:4とした場合の発熱量は、5812(Kcal/kg)である。この発熱量は、赤松の発熱量とほぼ同等であり、綿とポリエステルとの混合比率を所定の比率、つまり、綿(めん)わたを6とした場合に、ポリエステルわたを4とすることで、赤松の発熱量と同等の発熱量を得ることができることを示している。
【0025】
このように、赤松は5800(Kcal/kg)程度の発熱量があり、綿(めん)わたとポリエステルわたを6:4の比率で混合することで、赤松の発熱量と同等に調整することが可能である。さらに、他の合成繊維と天然繊維若しくは半合成繊維を混合比率を調整することで、赤松の発熱量に調整することが可能である。
【0026】
また、図2及び図3に示すように、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を0:10とした場合の発熱量は、6420(Kcal/kg)であり、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を2:8とした場合の発熱量は、6297(Kcal/kg)である。
また、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を4:6とした場合の発熱量は、6103(Kcal/kg)であり、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を6:4とした場合の発熱量は、5812(Kcal/kg)である。
【0027】
そして、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を8:2とした場合の発熱量は、4183(Kcal/kg)であり、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を10:0とした場合の発熱量は、3863(Kcal/kg)である。
【0028】
図2のグラフに示すように、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を0:10から6:4の範囲における発熱量の傾斜は緩やかであり、赤松の発熱量(図1参照)の5800(Kcal/kg)の場合とあまり差がないことを示している。
しかし、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を6:4から8:2へと綿(めん)わたの混合比率を上昇させるにしたがい発熱量が比較的急激に減少しており、赤松の発熱量に対して約1600(Kcal/kg)低くなっている。
【0029】
したがって、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を0:10から6:4の範囲内とした場合では、その発熱量は赤松の発熱量と近くなり、固形燃料として赤松の代替品になり得る。
ここで、実際に固形燃料を製造する場合において、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率であるが、綿(めん)わたは0付近であり、ポリエステルわたは10付近であり、綿(めん)わたを0とはせず、同様のポリエステルわたを100%とはしない。
【0030】
すなわち、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率(重量比)を、0.1:9.9から、0.5:9.5としたり、または、1:9とするのが好適例である。つまり、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を0.1:9.9から1:9の範囲内とする。
これは、後述するように、赤松の灰に含まれている各種の成分と同様な成分を含ませるためには、ポリエステルわたのみでは達成できないため、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合わたが必要となってくるからである。
【0031】
綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率(重量比)の範囲としては、2:8から6:4の方が、より好適例である。これは、この範囲内の混合比率では、赤松の発熱量に一層同等になるからである。また、後述する綿(めん)わたの混合比率を高めるほど、赤松に含まれている成分に近くなるからである。
【0032】
さらに、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率(重量比)を6:4とするのが、一層の好適例である。これは、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を6:4とすることで、赤松の発熱量と同等となるからである。
【0033】
また、図4は、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)の含有量と、水分と灰分のデータを示すものである。
図5〜図7は、それぞれ赤松、綿、レギュラーポリエステルの灰のX線マイクロアナライザーによる元素分析(定性分析)の結果を示すものである。
【0034】
赤松では図5に示すように、Ca(カルシウム)、K(カリウム)、P(リン)、Mg(マグネシウム)、S(硫黄)が多く含まれており、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)は少ない。
綿では図6に示すように、Ca(カルシウム)、K(カリウム)、P(リン)、Al(アルミニウム)、Na(ナトリウム)、Mg(マグネシウム)、Cl(塩素)、Si(ケイ素)、S(硫黄)が含まれている。
【0035】
レギュラーポリエステルでは図7に示すように、P(リン)、Ca(カルシウム)、K(カリウム)に比較してTi(チタン)が非常に多く含まれている。
【0036】
図8〜図10は、それぞれ綿(めん)、赤松、レギュラーポリエステルのTG−DTA(TG-DTA : simultaneous thermogravimetry and differential thermal analysis 示差熱−熱重量同時測定)による燃焼及び熱分解挙動を測定した結果を示すものである。また、図11は各素材のTG曲線を示している。
測定温度範囲は、0℃から600℃とし、昇温速度10℃/minで、air(空気)気流中(流量200ml/min)と、N2 (窒素)気流中(流量100ml/min)で測定した。
【0037】
図8において、綿(めん)は初期に5%程度の重量減少が見られる(第1段階)。これは、水分の蒸発によるものと考えられる。また、250℃付近から急激な重量減少(第2段階)が起こり、330℃付近から緩やかに減少する(第3段階)。赤松も図9に示すように綿(めん)とほぼ同様の挙動であった。
赤松、綿(めん)は、燃焼開始温度が熱分解開始温度より低く、窒素中での熱分解時の重量減少と比べて空気中での重量減少が大きい。また、空気中で燃焼が緩やかになったときの未燃分の重量(%)と窒素中での未熱分解の重量(%)はほぼ同じである。これは、固定炭素(チャー)によるものと考えられる。
【0038】
固定炭素は、固体の炭素の集合体であり、燃焼性が悪く、燃焼後に未燃分として残り易い成分である。以上より、綿と赤松は、先ず温度の上昇とともに、第1の段階で水が蒸発し、第2段階では揮発分の燃焼が起こり、第3段階で固定炭素の燃焼が起こると考えられる。
【0039】
レギュラーポリエステルは図10に示すように、350℃付近から急激に重量減少が見られ(第1段階)、430℃付近から重量減少が緩やかになった(第2段階)。
また、綿(めん)とポリエステル(6:4)混合わたは、図11に示すように、綿とポリエステルとの中間的な挙動を示した。
【0040】
このように本実施形態では、綿(めん)とポリエステルとの混合比率を6:4とすることで、赤松の発熱量と同等にでき、また、綿(めん)とポリエステルの灰に含まれている各元素が、赤松の灰に含まれている各元素と同様なため、赤松の薪の代替品とすることができる。
また、熱分解挙動の測定結果においても、綿(めん)とポリエステルとの混合比率を6:4とした混合わたにおいて、赤松の場合と同様な挙動結果を得ていることで、赤松の薪の代替品とすることができる。
【0041】
これにより、綿とポリエステルとの混合わたを固形燃料として陶磁器の窯の燃料として燃焼させることで、赤松の場合と同様に窯の中で焼き物の表面に降り灰釉の働きをして、独特の色合いを出すことができる。また、綿(めん)及びポリエステルの混合わたは、回収した廃棄布団わたから製造することができるので、廃棄布団わたのリサイクル率を向上させることができ、廃棄布団わたの有効利用を促進することができる。
また、廃棄布団わたの材料(綿(めん)わたとポリエステルわた)で固形燃料を製造しているので、赤松と同等な燃料を安価に提供することができる。
【0042】
また、焼成工程では、必要なエネルギーが一定でなく、綿(めん)わたとポリエステルわたとを6:4の重量比から0付近(0.1、0.5、1のいずれか)から10付近(9.9、9.5、9のいずれか)の重量比の割合の混合わたで陶磁器の窯の燃料としていることで、発熱量のコントロールが可能であり、綿とポリエステルとの混合比を変えることによりその状態に見合った固形燃料を提供することができる。また、綿とポリエステルの灰に含まれている各元素が、赤松の灰に含まれている各元素と同様なため、赤松の薪の代替品とすることができる。
これにより、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を6:4の重量比から0付近から10付近の重量比の割合とした混合わたを固形燃料として陶磁器の窯の燃料として燃焼させることで、赤松の場合と同様に窯の中で焼き物の表面に降り灰釉の働きをして、独特の色合いを出すことができる。また、廃棄布団わたの材料(綿(めん)わたとポリエステルわた)で固形燃料を製造しているので、赤松と同等な燃料を安価に提供することができる。
【0043】
さらに、綿(めん)わたとポリエステルわたとを重量比で2:8から6:4の範囲の割合の混合わたで陶磁器の窯の燃料としていることで、発熱量も赤松の発熱量と近くなり、さらに焼成工程では、必要なエネルギーは一定ではないため、綿とポリエステルとの混合比を変えることによりその状態に見合った固形燃料を提供することができる。また、綿とポリエステルの灰に含まれている各元素が、赤松の灰に含まれている各元素と同様なため、赤松の薪の代替品とすることができる。
これにより、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を2:8から6:4の範囲の割合とした混合わたを固形燃料として陶磁器の窯の燃料として燃焼させることで、赤松の場合と同様に窯の中で焼き物の表面に降り灰釉の働きをして、独特の色合いを出すことができる。また、廃棄布団わたの材料(綿(めん)わたとポリエステルわた)で固形燃料を製造しているので、赤松と同等な燃料を安価に提供することができる。
【0044】
ここで、綿とポリエステルとの混合比率を調整して固形燃料を製造する場合、綿(めん)とポリエステルを重量比で加熱圧縮することにより、固形燃料を製造することができる。製造にはRPFを製造する一般的な装置が使用可能であり、例えば、フジRPステーション(富士車輛株式会社製)などを使用することにより製造できる。
【0045】
なお、上記の説明では、綿とポリエステルとの混合わたの材料を廃棄布団わたからとしていたが、廃棄布団わたに限られるものではない。例えば、新品の綿とポリエステルから混合わたから上記の固形燃料を製造するようにしても良い。この新品の綿(めん)わたとポリエステルわたとで固形燃料を構成した場合でも、材料を綿(めん)わたとポリエステルわたとしているので、赤松と同等な燃料を安価に提供することができる。
さらに、染色加工が行われてなければ、わたでなくとも綿およびポリエステルの布帛等でもよい。また、染色加工が行われていてもその染色加工薬剤の成分によっては問題なく使用可能な場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態における綿や赤松などの各素材の発熱量を比較した図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるポリエステルと綿の混合比率を変えた場合の発熱量をグラフで示した図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるポリエステルと綿の混合比率を変えた場合の発熱量を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における各素材の発熱量及び成分を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における赤松の灰のX線マイクロアナライザーによる元素分析を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における綿の灰のX線マイクロアナライザーによる元素分析を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態におけるレギュラーポリエステルの灰のX線マイクロアナライザーによる元素分析を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態における綿のTG−DTA曲線を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態における赤松のTG−DTA曲線を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態におけるレギュラーポリエステルのTG−DTA曲線を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態における各素材のTG曲線を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、綿(めん)とポリエステルとを混合した固形燃料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国では、年間200万トン以上の繊維製品が廃棄されており、一部は古繊維業者によって回収され、軍手やウエスにリサイクルされている。消費者レベルでも、リサイクルショップやフリーマーケットで再利用が行なわれているが、繊維廃棄物のリサイクル率は約15%程度と言われており、ほとんどは焼却や埋め立て処分されているのが現状である。
【0003】
循環型社会形成に向けて、繊維廃棄物の減量化と有効利用が責務であり、繊維製品は廃棄量の多さ、リサイクル率の低さからリサイクルを推進する必要があり、なかでも、大型繊維廃棄物である廃棄布団は、かつては打ち直しなどによりリユースされていたが、現在ではほとんど行われておらず、焼却処分されているのが現状である。
廃棄布団わたの有効利用(リサイクル)を考えると、(1)マテリアルリサイクル、(2)サーマルリサイクルの2項目が挙げられる。
【0004】
サーマルリサイクルには、油化、ガス化、ごみ焼却熱利用、ごみ焼却発電、セメントキルン原燃料化、ごみ固形燃料(RDF:Refuse Derived Fuel ) などがある。ごみ固形燃料(RDF)はゴミの有効利用の一環として、一般廃棄物を固形燃料化させているが、雑多なゴミが混在した状態で排出されることが多く、固形燃料の性能が安定せず、処理過程で火災などの事故が発生するなど、各地でトラブルを起こしている。
【0005】
一方、特許文献1に示すように産業廃棄物を中心としたプラスチックと紙とを主原料として使用している固形燃料は、RPF( Refuse Paper and plastic Fuel )と呼ばれている。固形燃料は発熱量を調整することが可能であるが、その品質は変動が大きいため、特許文献2では各種廃棄物を発熱量に応じて3種類の原料に分類して各原料を個別に供給混合して固形燃料を得ている。しかし、廃プラスチックの中には塩素を含有するものがあり、塩素を含有した燃料は腐食の問題が大きい。その塩素の除去方法として事前選別や特許文献3のような脱塩素装置が提案されているが、脱塩素処理がコスト高につながる。
さらに、廃プラスチックを鉄鋼製造工程で還元剤として利用する方法については特許文献4に示すように、古くから知られている。
【0006】
【特許文献1】特開平7−118673号公報
【特許文献2】特開平7−242887号公報
【特許文献3】特開2001−220590号公報
【特許文献4】特公昭51−33493号公報
【0007】
しかしながら、上述の廃棄布団わたの主成分は、綿(めん)とポリエステルであり、塩素系素材を含んでいない。また、布団の中わたは染色加工工程を経ていないため、薬品等の付着もほとんどない上、布団の形状から廃棄の際にも一般ゴミと分別して回収している自治体が多く、廃棄布団わたのみをリサイクル用途として回収することが容易である。
【0008】
ところで、陶磁器の製造には焼成工程が不可欠であり、焼成には電気、石油、ガス、薪が用いられており、特に登窯、穴窯などの燃料としては赤松の薪が理想とされている。登窯、穴窯は都市部ではほとんど見られないが、郊外ではいまだに登窯、穴窯が用いられていて、この登窯、穴窯の燃料として赤松が使用されている。
この赤松を燃焼させると灰になり、その灰が窯の中で焼き物の表面に降り灰釉の働きをすることで独特の色合いを出すことができる。一般的には、松灰には、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、マンガン、鉄、アルミニウム、ケイ素が含まれており、これらの成分が釉薬の働きをする。
【0009】
しかしながら、赤松の育成は時間がかかり、伐採から実際に燃料として使用するまでに2年間ほどの時間を要するため、現在では、赤松の薪は非常に入手が困難であり、かつ高価である。
すなわち、里山の開発や松食虫の影響で、陶磁器の焼成に適している30年育成の赤松の薪が全国的に不足しており、これは、全国六古窯(瀬戸、常滑、越前、信楽、丹波、備前)とも共通している。そのため、登り窯、穴窯の燃料である赤松の薪を韓国、中国から輸入している。
【0010】
陶磁器の焼成の燃料として、特に赤松は他の木材に比べて燃焼カロリーが大きく、灰には釉薬の焼成に必要な酸化鉄、リンなどの化学物質を含んでいる。赤松の代わりに建築廃材などを用いても発熱量が不足しており、有害な化学物質を含んでいることも多く、赤松の代替品には不向きである。
また、灰と陶土との化学反応による自然釉薬の焼成には電気炉やガス炉では不向きであり、赤松の薪が好まれて用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上述の問題点に鑑みて提供したものであって、陶磁器焼成用の燃料として赤松と同等な燃料を安価に提供することを目的とした固形燃料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明の請求項1に記載の固形燃料では、綿(めん)わたとポリエステルわたとを6:4の重量比から0付近から10付近の重量比の割合の混合わたで陶磁器の窯の燃料としていることを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載の固形燃料では、綿(めん)わたとポリエステルわたとを重量比で2:8から6:4の範囲の割合の混合わたで陶磁器の窯の燃料としていることを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載の固形燃料では、綿(めん)わたとポリエステルわたとを重量比で6:4の割合の混合わたで陶磁器の窯の燃料としていることを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の固形燃料では、前記綿(めん)わたとポリエステルわたは回収した廃棄布団わたを材料としていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に記載の固形燃料によれば、綿(めん)わたとポリエステルわたとを6:4の重量比から0付近から10付近の重量比の割合の混合わたで陶磁器の窯の燃料としていることで、発熱量も赤松の発熱量と近くなり、さらに焼成工程では、必要なエネルギーは一定ではないため、綿とポリエステルとの混合比を変えることによりその状態に見合った固形燃料を提供することができる。また、綿とポリエステルの灰に含まれている各元素が、赤松の灰に含まれている各元素と同様なため、赤松の薪の代替品とすることができる。
これにより、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を6:4の重量比から0付近から10付近の重量比の割合とした混合わたを固形燃料として陶磁器の窯の燃料として燃焼させることで、赤松の場合と同様に窯の中で焼き物の表面に降り灰釉の働きをして、独特の色合いを出すことができる。
また、固形燃料の材料を綿(めん)わたとポリエステルわたとで構成しているので、赤松と同等な燃料を安価に提供することができる。
【0017】
請求項2に記載の固形燃料によれば、綿(めん)わたとポリエステルわたとを重量比で2:8から6:4の範囲の割合の混合わたで陶磁器の窯の燃料としていることで、発熱量も赤松の発熱量と近くなり、さらに焼成工程では、必要なエネルギーは一定ではないため、綿とポリエステルとの混合比を変えることによりその状態に見合った固形燃料を提供することができる。また、綿とポリエステルの灰に含まれている各元素が、赤松の灰に含まれている各元素と同様なため、赤松の薪の代替品とすることができる。
これにより、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を2:8から6:4の範囲の割合とした混合わたを固形燃料として陶磁器の窯の燃料として燃焼させることで、赤松の場合と同様に窯の中で焼き物の表面に降り灰釉の働きをして、独特の色合いを出すことができる。
また、固形燃料の材料を綿(めん)わたとポリエステルわたとで構成しているので、赤松と同等な燃料を安価に提供することができる。
【0018】
請求項3に記載の固形燃料によれば、綿(めん)わたとポリエステルわたとを重量比で6:4の割合の混合わたで陶磁器の窯の燃料としていることで、赤松の発熱量と同等にでき、さらに焼成工程では、必要なエネルギーは一定ではないため、綿とポリエステルとの混合比を変えることによりその状態に見合った固形燃料を提供することができる。また、綿とポリエステルの灰に含まれている各元素が、赤松の灰に含まれている各元素と同様なため、赤松の薪の代替品とすることができる。また、熱分解挙動の測定結果においても、綿とポリエステルとの混合比率を6:4とした混合わたにおいて、赤松の場合と同様な挙動結果を得ていることで、赤松の薪の代替品とすることができる。
これにより、綿(めん)とポリエステルとの混合比率を6:4とした混合わたを固形燃料として陶磁器の窯の燃料として燃焼させることで、赤松の場合と同様に窯の中で焼き物の表面に降り灰釉の働きをして、独特の色合いを出すことができる。
また、固形燃料の材料を綿(めん)わたとポリエステルわたとで構成しているので、赤松と同等な燃料を安価に提供することができる。
【0019】
請求項4に記載の固形燃料によれば、前記綿(めん)わたとポリエステルわたは回収した廃棄布団わたを材料としているので、廃棄布団わたのリサイクル率を向上させることができ、廃棄布団わたの有効利用を促進することができる。また、廃棄布団わたの材料(綿(めん)わたとポリエステルわた)でゴミ固形燃料を製造しているので、赤松と同等な燃料を安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。本発明者達は、種々の実験を行うことで、綿(めん)とポリエステルとを所定の比率で混合することによって赤松と同等の発熱量が得られることを見いだしたのである。ポリエステルは廃プラスチック同様還元剤として利用できるため、布団わたのみで赤松の代替燃料を安価に製造することが可能である。
また、綿(めん)およびポリエステルの燃料後の灰に含まれている元素は、赤松と綿でほぼ同様であり、ポリエステルにはチタンが含まれているが、チタンは赤松には含まれていないものの釉薬の成分の一つである。
【0021】
本発明者達は、布団わたの素材として綿(めん)とポリエステルがほとんどであることに着目し、特に大量に廃棄されようとする廃棄布団わたに着目したものである。そして、この廃棄布団わたの素材である綿とポリエステル混合による熱カロリーの計算は容易であり、燃焼のシミュレーションが立て易く、しかも、固形燃料として廃棄布団わたのリサイクルができ、廃棄物の利用であるが故に材料費も安価である。
【0022】
また、布団わたは、染色仕上げ加工が施されておらず、灰と陶土との化学反応による釉薬の焼成に必要な特定ガス雰囲気での燃焼仕様の化学物質の混入が容易である。すなわち、釉薬の働きをするものを固形燃料の製造時(またはその前後)に付与して、所望の色合いを陶磁器に加味することも可能となる。
また、塩素は窯を腐食させるために、少ないことが望ましく、さらには、NOx、SOxの生成の観点から窒素や硫黄も少ないことが望ましい。
【0023】
図1は、レギュラーポリエステルわた、芯鞘ポリエステルわた、綿(めん)、赤松のそれぞれの発熱量を示している。なお、発熱量は、MJ/kgと、Kcal/kgの2種類の表記をしている。
図1に示すように、レギュラーポリエステルわたでは、6420(Kcal/kg)の発熱量であり、芯鞘ポリエステルわたでは、6018(Kcal/kg)の発熱量であり、綿(めん)わたでは、3863(Kcal/kg)の発熱量である。さらに、赤松は5800(Kcal/kg)の発熱量である。
【0024】
図2は、綿とポリエステルとの混合わたの発熱量を示し、綿とポリエステルとの混合比率をそれぞれ0:10から10:0に変えた場合の発熱量のグラフを示している。図3はこれの混合比率の所定の混合比での発熱量を示すものである。綿とポリエステルとの混合わたの比率を、6:4とした場合の発熱量は、5812(Kcal/kg)である。この発熱量は、赤松の発熱量とほぼ同等であり、綿とポリエステルとの混合比率を所定の比率、つまり、綿(めん)わたを6とした場合に、ポリエステルわたを4とすることで、赤松の発熱量と同等の発熱量を得ることができることを示している。
【0025】
このように、赤松は5800(Kcal/kg)程度の発熱量があり、綿(めん)わたとポリエステルわたを6:4の比率で混合することで、赤松の発熱量と同等に調整することが可能である。さらに、他の合成繊維と天然繊維若しくは半合成繊維を混合比率を調整することで、赤松の発熱量に調整することが可能である。
【0026】
また、図2及び図3に示すように、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を0:10とした場合の発熱量は、6420(Kcal/kg)であり、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を2:8とした場合の発熱量は、6297(Kcal/kg)である。
また、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を4:6とした場合の発熱量は、6103(Kcal/kg)であり、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を6:4とした場合の発熱量は、5812(Kcal/kg)である。
【0027】
そして、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を8:2とした場合の発熱量は、4183(Kcal/kg)であり、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を10:0とした場合の発熱量は、3863(Kcal/kg)である。
【0028】
図2のグラフに示すように、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を0:10から6:4の範囲における発熱量の傾斜は緩やかであり、赤松の発熱量(図1参照)の5800(Kcal/kg)の場合とあまり差がないことを示している。
しかし、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を6:4から8:2へと綿(めん)わたの混合比率を上昇させるにしたがい発熱量が比較的急激に減少しており、赤松の発熱量に対して約1600(Kcal/kg)低くなっている。
【0029】
したがって、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を0:10から6:4の範囲内とした場合では、その発熱量は赤松の発熱量と近くなり、固形燃料として赤松の代替品になり得る。
ここで、実際に固形燃料を製造する場合において、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率であるが、綿(めん)わたは0付近であり、ポリエステルわたは10付近であり、綿(めん)わたを0とはせず、同様のポリエステルわたを100%とはしない。
【0030】
すなわち、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率(重量比)を、0.1:9.9から、0.5:9.5としたり、または、1:9とするのが好適例である。つまり、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を0.1:9.9から1:9の範囲内とする。
これは、後述するように、赤松の灰に含まれている各種の成分と同様な成分を含ませるためには、ポリエステルわたのみでは達成できないため、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合わたが必要となってくるからである。
【0031】
綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率(重量比)の範囲としては、2:8から6:4の方が、より好適例である。これは、この範囲内の混合比率では、赤松の発熱量に一層同等になるからである。また、後述する綿(めん)わたの混合比率を高めるほど、赤松に含まれている成分に近くなるからである。
【0032】
さらに、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率(重量比)を6:4とするのが、一層の好適例である。これは、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を6:4とすることで、赤松の発熱量と同等となるからである。
【0033】
また、図4は、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)の含有量と、水分と灰分のデータを示すものである。
図5〜図7は、それぞれ赤松、綿、レギュラーポリエステルの灰のX線マイクロアナライザーによる元素分析(定性分析)の結果を示すものである。
【0034】
赤松では図5に示すように、Ca(カルシウム)、K(カリウム)、P(リン)、Mg(マグネシウム)、S(硫黄)が多く含まれており、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)は少ない。
綿では図6に示すように、Ca(カルシウム)、K(カリウム)、P(リン)、Al(アルミニウム)、Na(ナトリウム)、Mg(マグネシウム)、Cl(塩素)、Si(ケイ素)、S(硫黄)が含まれている。
【0035】
レギュラーポリエステルでは図7に示すように、P(リン)、Ca(カルシウム)、K(カリウム)に比較してTi(チタン)が非常に多く含まれている。
【0036】
図8〜図10は、それぞれ綿(めん)、赤松、レギュラーポリエステルのTG−DTA(TG-DTA : simultaneous thermogravimetry and differential thermal analysis 示差熱−熱重量同時測定)による燃焼及び熱分解挙動を測定した結果を示すものである。また、図11は各素材のTG曲線を示している。
測定温度範囲は、0℃から600℃とし、昇温速度10℃/minで、air(空気)気流中(流量200ml/min)と、N2 (窒素)気流中(流量100ml/min)で測定した。
【0037】
図8において、綿(めん)は初期に5%程度の重量減少が見られる(第1段階)。これは、水分の蒸発によるものと考えられる。また、250℃付近から急激な重量減少(第2段階)が起こり、330℃付近から緩やかに減少する(第3段階)。赤松も図9に示すように綿(めん)とほぼ同様の挙動であった。
赤松、綿(めん)は、燃焼開始温度が熱分解開始温度より低く、窒素中での熱分解時の重量減少と比べて空気中での重量減少が大きい。また、空気中で燃焼が緩やかになったときの未燃分の重量(%)と窒素中での未熱分解の重量(%)はほぼ同じである。これは、固定炭素(チャー)によるものと考えられる。
【0038】
固定炭素は、固体の炭素の集合体であり、燃焼性が悪く、燃焼後に未燃分として残り易い成分である。以上より、綿と赤松は、先ず温度の上昇とともに、第1の段階で水が蒸発し、第2段階では揮発分の燃焼が起こり、第3段階で固定炭素の燃焼が起こると考えられる。
【0039】
レギュラーポリエステルは図10に示すように、350℃付近から急激に重量減少が見られ(第1段階)、430℃付近から重量減少が緩やかになった(第2段階)。
また、綿(めん)とポリエステル(6:4)混合わたは、図11に示すように、綿とポリエステルとの中間的な挙動を示した。
【0040】
このように本実施形態では、綿(めん)とポリエステルとの混合比率を6:4とすることで、赤松の発熱量と同等にでき、また、綿(めん)とポリエステルの灰に含まれている各元素が、赤松の灰に含まれている各元素と同様なため、赤松の薪の代替品とすることができる。
また、熱分解挙動の測定結果においても、綿(めん)とポリエステルとの混合比率を6:4とした混合わたにおいて、赤松の場合と同様な挙動結果を得ていることで、赤松の薪の代替品とすることができる。
【0041】
これにより、綿とポリエステルとの混合わたを固形燃料として陶磁器の窯の燃料として燃焼させることで、赤松の場合と同様に窯の中で焼き物の表面に降り灰釉の働きをして、独特の色合いを出すことができる。また、綿(めん)及びポリエステルの混合わたは、回収した廃棄布団わたから製造することができるので、廃棄布団わたのリサイクル率を向上させることができ、廃棄布団わたの有効利用を促進することができる。
また、廃棄布団わたの材料(綿(めん)わたとポリエステルわた)で固形燃料を製造しているので、赤松と同等な燃料を安価に提供することができる。
【0042】
また、焼成工程では、必要なエネルギーが一定でなく、綿(めん)わたとポリエステルわたとを6:4の重量比から0付近(0.1、0.5、1のいずれか)から10付近(9.9、9.5、9のいずれか)の重量比の割合の混合わたで陶磁器の窯の燃料としていることで、発熱量のコントロールが可能であり、綿とポリエステルとの混合比を変えることによりその状態に見合った固形燃料を提供することができる。また、綿とポリエステルの灰に含まれている各元素が、赤松の灰に含まれている各元素と同様なため、赤松の薪の代替品とすることができる。
これにより、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を6:4の重量比から0付近から10付近の重量比の割合とした混合わたを固形燃料として陶磁器の窯の燃料として燃焼させることで、赤松の場合と同様に窯の中で焼き物の表面に降り灰釉の働きをして、独特の色合いを出すことができる。また、廃棄布団わたの材料(綿(めん)わたとポリエステルわた)で固形燃料を製造しているので、赤松と同等な燃料を安価に提供することができる。
【0043】
さらに、綿(めん)わたとポリエステルわたとを重量比で2:8から6:4の範囲の割合の混合わたで陶磁器の窯の燃料としていることで、発熱量も赤松の発熱量と近くなり、さらに焼成工程では、必要なエネルギーは一定ではないため、綿とポリエステルとの混合比を変えることによりその状態に見合った固形燃料を提供することができる。また、綿とポリエステルの灰に含まれている各元素が、赤松の灰に含まれている各元素と同様なため、赤松の薪の代替品とすることができる。
これにより、綿(めん)わたとポリエステルわたとの混合比率を2:8から6:4の範囲の割合とした混合わたを固形燃料として陶磁器の窯の燃料として燃焼させることで、赤松の場合と同様に窯の中で焼き物の表面に降り灰釉の働きをして、独特の色合いを出すことができる。また、廃棄布団わたの材料(綿(めん)わたとポリエステルわた)で固形燃料を製造しているので、赤松と同等な燃料を安価に提供することができる。
【0044】
ここで、綿とポリエステルとの混合比率を調整して固形燃料を製造する場合、綿(めん)とポリエステルを重量比で加熱圧縮することにより、固形燃料を製造することができる。製造にはRPFを製造する一般的な装置が使用可能であり、例えば、フジRPステーション(富士車輛株式会社製)などを使用することにより製造できる。
【0045】
なお、上記の説明では、綿とポリエステルとの混合わたの材料を廃棄布団わたからとしていたが、廃棄布団わたに限られるものではない。例えば、新品の綿とポリエステルから混合わたから上記の固形燃料を製造するようにしても良い。この新品の綿(めん)わたとポリエステルわたとで固形燃料を構成した場合でも、材料を綿(めん)わたとポリエステルわたとしているので、赤松と同等な燃料を安価に提供することができる。
さらに、染色加工が行われてなければ、わたでなくとも綿およびポリエステルの布帛等でもよい。また、染色加工が行われていてもその染色加工薬剤の成分によっては問題なく使用可能な場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態における綿や赤松などの各素材の発熱量を比較した図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるポリエステルと綿の混合比率を変えた場合の発熱量をグラフで示した図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるポリエステルと綿の混合比率を変えた場合の発熱量を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における各素材の発熱量及び成分を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における赤松の灰のX線マイクロアナライザーによる元素分析を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における綿の灰のX線マイクロアナライザーによる元素分析を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態におけるレギュラーポリエステルの灰のX線マイクロアナライザーによる元素分析を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態における綿のTG−DTA曲線を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態における赤松のTG−DTA曲線を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態におけるレギュラーポリエステルのTG−DTA曲線を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態における各素材のTG曲線を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
綿(めん)わたとポリエステルわたとを6:4の重量比から0付近から10付近の重量比の割合の混合わたで陶磁器の窯の燃料としていることを特徴とする固形燃料。
【請求項2】
綿(めん)わたとポリエステルわたとを重量比で2:8から6:4の範囲の割合の混合わたで陶磁器の窯の燃料としていることを特徴とする固形燃料。
【請求項3】
綿(めん)わたとポリエステルわたとを重量比で6:4の割合の混合わたで陶磁器の窯の燃料としていることを特徴とする固形燃料。
【請求項4】
前記綿(めん)わたとポリエステルわたは回収した廃棄布団わたを材料としていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の固形燃料。
【請求項1】
綿(めん)わたとポリエステルわたとを6:4の重量比から0付近から10付近の重量比の割合の混合わたで陶磁器の窯の燃料としていることを特徴とする固形燃料。
【請求項2】
綿(めん)わたとポリエステルわたとを重量比で2:8から6:4の範囲の割合の混合わたで陶磁器の窯の燃料としていることを特徴とする固形燃料。
【請求項3】
綿(めん)わたとポリエステルわたとを重量比で6:4の割合の混合わたで陶磁器の窯の燃料としていることを特徴とする固形燃料。
【請求項4】
前記綿(めん)わたとポリエステルわたは回収した廃棄布団わたを材料としていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の固形燃料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−7659(P2008−7659A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180558(P2006−180558)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(598088240)京滋興産株式会社 (2)
【出願人】(598088239)
【出願人】(596053068)京都市 (26)
【出願人】(506226326)
【出願人】(506225776)
【出願人】(506227574)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(598088240)京滋興産株式会社 (2)
【出願人】(598088239)
【出願人】(596053068)京都市 (26)
【出願人】(506226326)
【出願人】(506225776)
【出願人】(506227574)
【Fターム(参考)】
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