説明

固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物およびエアゾール製品

【課題】食用油脂類を含有する吐出物を飛散させることなく適用することのできる固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物およびエアゾール製品を提供することにある。
【解決手段】固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物は、融点が10〜40℃である食用油脂類を主成分とする食用油脂成分と、この食用油脂成分が溶解される液化石油ガスよりなる噴射剤とよりなり、噴射剤の気化熱により固形状の吐出物が形成されることを特徴とする。エアゾール製品は、前記固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物がエアゾール用バルブを備えた耐圧容器内に充填されてなるものであり、前記エアゾール用バルブが、アクチュエーターとしてスパウトを備えてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物およびエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアゾール組成物は、利便性などの観点から、フライパンなどの調理器具、あるいは食品の調理過程において食材に対して食用油脂類を塗布するためなどにも利用することが検討されており、具体的に、噴射剤と共に食用油脂類を含有し、霧状の吐出物を形成するものが提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照。)。
このようなエアゾール組成物においては、アルコール、あるいはジグリセライドや中鎖脂肪酸トリグリセリドなどを配合することによって粘度が調整されていることから良好な霧状の吐出物を得ることができるため、調理器具や食材に対して、その表面全体に、少量の食用油脂類を素早く均一に塗布することができるものの、例えば熱せられたフライパンに適用するような場合には、吐出物が霧状であるため、吐出物が飛散して引火するおそれがあることから、その使用に危険性が伴う、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−316471号公報
【特許文献2】特開2001−178364号公報
【特許文献3】特開2006−174745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、食用油脂類を含有する吐出物を飛散させることなく適用することのできる固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物およびエアゾール製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物は、融点が10〜40℃である食用油脂類を主成分とする食用油脂成分と、この食用油脂成分が溶解される液化石油ガスよりなる噴射剤とよりなり、
噴射剤の気化熱により固形状の吐出物が形成されることを特徴とする。
【0006】
本発明の固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物においては、前記食用油脂成分の含有割合が、組成物100質量%において20〜80質量%であることが好ましい。
【0007】
本発明のエアゾール製品は、前記固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物がエアゾール用バルブを備えた耐圧容器内に充填されてなるものであり、
前記エアゾール用バルブが、アクチュエーターとしてスパウトを備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物によれば、特定の融点を有する食用油脂類を主成分とする食用油脂成分が液化石油ガスよりなる噴射剤に溶解されてなるものであり、噴射されるときに、噴射剤の気化熱によって食用油脂成分が一時的に固形化されることから、吐出物として固形状態のものが得られるため、食用油脂類を含有する吐出物を飛散させることなく適用することができる。
従って、本発明の固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物においては、例えば熱せられたフライパンに適用するような場合であっても、食用油脂類を含有する吐出物を飛散させることなくフライパンに付着させることができるため、高い安全性をもって使用することができる。
【0009】
本発明のエアゾール製品によれば、エアゾール用バルブを備えた耐圧容器内に本発明の固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物が充填されてなるものであり、しかもエアゾール用バルブが、アクチュエーターとしてスパウトを備えてなるものであることから、確実に良好な固形状の吐出物を得ることができるため、食用油脂類を含有する吐出物を飛散させることなく適用することができ、従って、例えば熱せられたフライパンに適用するような場合であっても、高い安全性をもって使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物は、融点が10〜40℃である食用油脂類(以下、「特定食用油脂物質」ともいう。)を主成分とする食用油脂成分と、液化石油ガスよりなる噴射剤とを必須成分として含有し、噴射剤としての液化石油ガスに食用油脂成分が溶解されてなる構成を有し、固形状の吐出物が形成されることを特徴とするものである。
ここに、「固形状の吐出物」とは、一定の形状を有する固まりであって、その形状が保持された状態であり、吐出物の全体積を占める固形分の割合が5割以上であるものである。
【0011】
本発明の固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物の必須成分である食用油脂成分は、噴射剤を構成する液化石油ガスに溶解することによって液状とされている。
【0012】
この食用油脂成分の主成分を構成する食用油脂類(特定食用油脂物質)は、その融点が10℃以上であって40℃以下のものであることが必要とされる。
特定食用油脂物質の融点が過小である場合には、吐出物を固形状態とすることができなくなる。
また、特定食用油脂物質の融点が過大である場合には、噴射剤に対する十分な溶解性が得られず、エアゾール組成物自体を形成することができなくなる。
【0013】
特定食用油脂物質としては、10〜40℃の温度範囲内において融点を有するものであれば、植物由来の食用油脂物質および動物由来の食用油脂物質のいずれをも用いることができる。
【0014】
具体的に、植物由来であって10〜40℃の範囲内に融点を有する食用油脂物質としては、例えばココナッツオイル (融点:20〜28℃)、アーモンド油(融点:10〜21℃)、パーム油 (融点:27〜50℃)、カカオ脂(融点:32〜39℃)、シア脂(融点:23〜45℃)等の植物油などが挙げられる。
また、動物由来であって10〜40℃の範囲内に融点を有する油脂物質としては、例えば牛脂(融点:35〜50℃) 、豚脂(融点:27〜40℃)、馬脂(融点:29〜50℃) 、乳脂(融点:35〜50℃)、卵黄油(融点:10〜17℃)等の動物油などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いることもできるが、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0015】
食用油脂成分には、主成分としての特定食用油脂物質の他、融点が10℃未満の食用油脂物質(以下、「低融点食用油脂物質」ともいう。)または融点が40℃を超える食用油脂物質(以下、「高融点食用油脂物質」ともいう。)が含有されていてもよい。
油脂成分が低融点食用油脂物質または高融点食用油脂物質よりなる添加油脂物質を含有することにより、吐出物の性状を、例えばその使用用途などに応じて調整すること、香り等の添加油脂物質に固有の特性を利用することなどができる。
【0016】
この添加油脂物質の含有割合は、食用油脂成分全体に対して20質量%以下であることが好ましい。すなわち、食用油脂成分においては、主成分を構成する特定食用油脂物質の含有割合は80質量%を超えることが好ましい。
食用油脂成分における添加油脂物質の含有割合が過大である場合には、吐出物を固形状とすることができなくなる、あるいはエアゾール組成物自体を形成することができなくなるなどの弊害が生じるおそれがある。
【0017】
低融点食用油脂物質および高融点食用油脂物質としては、融点が10℃未満あるいは40℃を超えるものであれば、植物由来の食用油脂物質および動物由来の食用油脂物質のいずれをも用いることができる。
低融点食用油脂物質の具体例としては、10℃未満の範囲内に融点を有する、例えばつばき油(融点:−21〜−15℃)、オリーブ油(融点:0〜6℃)、大豆油(融点:−8〜−7℃)、トウモロコシ油(融点:−18〜−10℃)、なたね油(融点:−12〜0℃)、綿実油(融点:−6〜4℃)、サフラワー油(融点:−5℃)、ブドウ種子油(融点:−24〜−10℃)、ヒマワリ油(融点:−18〜−16℃)、ゴマ油(融点:−6〜−3℃)、ヒマシ油(融点:−13〜−10℃)、メドウホーム油(融点:10℃以下)、米ぬか油(融点:−10〜−5℃)、落花生油(融点:0〜3℃)などが挙げられる。
また、高融点食用油脂物質の具体例としては、40℃を超える範囲内に融点を有する、例えばモクロウ(融点:49〜56℃)、植物油に水素添加(水添)を行うことによって得られる硬化油(具体的には、例えば水添パーム油(融点:54℃))などが挙げられる。
【0018】
本発明の固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物において、食用油脂成分の含有割合は、組成物全体100質量%において20〜80質量%であることが好ましく、更に好ましくは30〜70質量%である。
食用油脂成分が上記の特定の含有割合で含有されていることにより、吐出物の噴射時における固形状態への形成性が優れたものとなり、また、得られる固形状の吐出物が室温(25℃)の適用環境条件下において固形状態から徐々に融解する溶融特性が得られて高い取扱性を有するものとなる。
【0019】
食用油脂成分の含有割合が過大である場合には、噴射剤の気化熱による冷却作用が小さくなるため、食用油脂成分の固形化が十分になされず、その結果、吐出物を固形状とすることができなくなるおそれがある。
一方、食用油脂成分の含有割合が過小である場合には、吐出物を固形状とすることはできるものの、噴射総量に対して噴出される食用油脂成分の量が相対的に少なくなるために吐出物量(適用箇所に対する付着量)が少なくなる、あるいは噴射剤の気化熱による冷却作用が過剰となるため、その固形状の吐出物が非常に冷たいものとなり、その吐出物が極めて短時間のうちに完全に融解してしまうなどの弊害が生じることから、吐出物にその溶融特性に基づく良好な取扱性が得られなくなるおそれがある。
【0020】
本発明の固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物を構成する噴射剤としては、液化石油ガスが用いられる。
ここに、液化石油ガスとは、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンまたはこれらの混合物である。
【0021】
本発明の固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物においては、噴射剤として液化石油ガスを用いることにより、食用油脂成分を溶解させることができ、かつ当該噴射剤と共に食用油脂成分を噴射させるときに、当該噴射剤の気化熱によって吐出物が固形状となり、その状態で適用箇所に付着させることができる。
【0022】
噴射剤としては、ブタン20〜60質量%と、プロパン40〜80質量%との混合液化石油ガスを用いることが好ましい。
このような混合液化ガスを用いることにより、噴射性および食用油脂成分の溶解性が優れたものとなると共に、気化熱を利用することによって得られる固形状の吐出物を良好な状態のもの、すなわちその溶解特性に基づく良好な取扱性を有するものとすることができる、という効果が得られる。
【0023】
噴射剤の含有割合は、前述のように、食用油脂成分の含有割合との関係から、組成物100質量%に対して20〜80質量%であることが好ましい。
【0024】
本発明の固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物には、食用油脂成分および噴射剤の他、必要に応じて種々の添加成分が含有されていてもよい。
【0025】
このような食用油脂成分および噴射剤により構成される本発明の固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物は、エアゾール容器、すなわちエアゾール用バルブ(噴射バルブ)を備えた耐圧容器内に充填されてエアゾール製品とされる。
【0026】
本発明のエアゾール製品は、前述の本発明の固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物が、エアゾール用バルブを備えた耐圧容器内に充填されてなるものであり、当該エアゾール用バルブが、アクチュエーターとしてスパウトを備えてなるものである。
ここに、「スパウト」とは、内部通路がボタン(通常の噴霧用ボタン)に比して大きく、拡張室が形成されてなる構成を有するものである。
【0027】
本発明のエアゾール製品においては、エアゾール用バルブとして、スパウトよりなるアクチュエータを備えてなるものを用いることにより、当該スパウトが、内部通路が大きく、拡張室が形成されてなる構成を有していることから、スパウト内部において内容物の体積拡張を十分に図ることのできるため、吐出物を固形状に噴射させやすくなるという効果が得られる。
【0028】
そして、このエアゾール製品から、その内容物を噴射すると、当該内容物が耐圧容器から、アクチュエータとしてスパウトを備えてなるエアゾール用バルブ内における内部通路よりなる拡張室にて、大気中に放出されることにより噴射剤が気化し、このときに、噴射剤の気化によって吐出された内容物から熱が奪われる。そして、吐出された内容物を構成する食用油脂成分はその融点が10〜40℃である特定食用油脂物質を主成分とするものであるため、耐圧容器内においては液状であった食用油脂成分が、噴射剤の気化に基づく冷却作用によって固形化されることから、結局、吐出物は固形状となり、固形状態において、例えば適用箇所に付着することなどによって適用される。
【0029】
また、このようにして吐出された固形状の吐出物は、噴射剤の気化熱の作用によって食用油脂成分が一時的に固形状態とされたものであることから、適用箇所の表面温度などの適用環境温度に応じ、その適用環境温度によって固形状態から融解する溶融特性を有しており、最終的には液状とされることとなる。
【0030】
ここに、本発明の固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物の有する固形状の吐出物の溶融特性としては、具体的に、室温(25℃)の環境条件下、例えば固形状の吐出物が付着されることとなる適用箇所の表面温度が25℃である場合において、固形状の吐出物が完全に融解して液状とならずに固形物が残存している状態とされている時間(固形状態の保持時間)が、10秒間以上であることが好ましく、特に30秒間以上であることが好ましい。
このように、本発明の固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物が、形成される固形状の吐出物が室温において固形状態から一定の時間をかけて融解する溶融特性を有するものであることにより、形成される固形状の吐出物が高い取扱性を有するものとなり、例えばその重量を測定器具などを用いて測定するための十分な時間を確保することができる。特に室温における固形状態の保持時間が30秒間以上である場合においては、例えば気温の高い季節の屋外などの高温環境下においても、ある程度の時間において吐出物の固形状態が保持されることとなるため、良好な取扱性が得られる。
【0031】
この固形状の吐出物の溶融特性は、本発明の固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物を耐圧容器内に充填することによって得られるエアゾール製品を、25℃に設定した恒温槽に30分間浸漬した後、その内容物を、25℃に設定した恒温槽に浸漬した容積10ミリリットルのビーカー内に1.0g吐出させ、このようにして吐出物を温度25℃で保持した条件下においてその状態を経時的に観察し、固形物が残存している状態とされている時間を測定することによって確認される。
【0032】
以上のような本発明のエアゾール製品によれば、エアゾール用バルブを備えた耐圧容器内に本発明の固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物が充填されてなるものであり、この本発明の固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物が、特定の融点を有する特定食用油脂物質を主成分とする食用油脂成分が液化石油ガスよりなる噴射剤に溶解されてなり、噴射されるときに噴射剤の気化熱によって食用油脂成分が一時的に固形化され、吐出物として固形状態のものが得られるものであるため、食用油脂類を含有する吐出物を飛散させることなく適用することができる。
また、エアゾール用バルブが、アクチュエーターとしてスパウトを備えてなるものであることから、このエアゾール用バルブ内において、噴射剤の気化熱によって食用油脂成分を一時的に固形化することができるため、確実に良好な固形状の吐出物を得ることができる。
この本発明のエアゾール製品は、フライパンなどの調理器具、あるいは食品の調理過程において食材に対して食用油脂類を塗布するためなどに利用されるが、その剤形がエアゾール剤形であることから高い利便性が得られ、しかも、例えば熱せられたフライパンに適用するような場合であっても、食用油脂類を含有する吐出物を飛散させることなくフライパンに付着させることができるため、周囲に飛散した吐出物が引火するなどの危険を伴うことなく、高い安全性をもって使用することができる。
【0033】
また、本発明のエアゾール製品においては、固形状の吐出物が得られることから、その吐出量を目視にて容易に確認することができ、しかも、吐出物量を測定器具などを用いて測定し、その重量を確認することも可能である。
【0034】
更に、本発明のエアゾール製品においては、その内容物としての本発明の固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物の必須成分が食用油脂成分と噴射剤のみであって、当該噴射剤を構成する液化石油ガスのみによって食用油脂成分(食用油脂類)の溶解媒体が構成されており、しかも例えばアルコールなどの粘度を調整するための成分を添加する必要もないことから、その作製が容易である。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0036】
〔実施例1〜6および比較例1〜3〕
表1に示す配合処方に従って食用油脂成分を用意し、この食用油脂成分を、ブタン53質量%とプロパン47質量%との混合液化石油ガスよりなる噴射剤(0.49MPa)と共に、スパウトを備えた透明の耐圧容器内に充填することにより、エアゾール製品を作製した。
【0037】
<評価試験>
上記の実施例1〜6および比較例1〜3により作製されたエアゾール製品の各々に関して、下記の手法によって食用油脂成分の噴射剤に対する溶解性、固形状の吐出物の形成性(吐出物の噴射時における固形状態への形成性)および固形状の吐出物の溶融性を評価した。結果を表1に示す。
【0038】
(食用油脂成分の噴射剤に対する溶解性)
実施例および比較例の各々により作製されたエアゾール製品を25℃に設定した恒温槽に30分間浸漬し、耐圧容器内の状態を目視にて観察し、固形分(不溶解物)がまったく残存していない場合および耐圧容器を振とうすることによって、固形分(不溶解物)のすべてを溶解させることができた場合を油脂成分が噴射剤に溶解するとして「○」、耐圧容器を振とうすることによっても固形分(不溶解物)が残存する場合を油脂成分が噴射剤に溶解しないとして「×」と評価した。
ここに、耐圧容器の振とうは、振とう機「RECIPRO SHAKER SR−1N」(TAITEC社製)を用い、振とう方向が横振り、振とう幅が5cm、振とう速度が100往復/分、振とう回数が100往復となる条件で行った。
【0039】
(固形状の吐出物の形成性)
実施例および比較例の各々により作製されたエアゾール製品を、25℃に設定した恒温槽に30分間浸漬した後、各エアゾール製品の内容物を、25℃に設定した恒温槽に浸漬した容積10mlのガラスビーカー内に1.0g吐出させ、吐出直後、その吐出物の状態を目視にて確認し、吐出物の全体積を占める固形分の割合が5割以上である場合を固形状態が形成されるとして「○」、吐出物の全体積を占める固形分の割合が5割未満である場合を固形状態が形成されないとして「×」と評価した。
【0040】
(固形状の吐出物の溶融性)
実施例および比較例の各々により作製されたエアゾール製品を、25℃に設定した恒温槽に30分間浸漬した後、各エアゾール製品の内容物を、25℃に設定した恒温槽に浸漬した容積10mlのガラスビーカー内に1.0g吐出させ、この吐出をしてから固形状の吐出物が完全に融解するまでに要する時間を測定した。
【0041】
【表1】

【0042】
表1において、融点32〜39℃の「カカオ脂」とは、大東カカオ社製の「ココアバターD」、融点27〜40℃の「豚脂(ラード)」とは、雪印乳業社製の「雪印ラード」、融点20〜28℃の「ココナッツオイル(ヤシ油)」とは、花王社製の「RCO」、融点−12〜0℃の「なたね油」とは、味の素社製の「キャノーラ油」、融点0〜6℃の「オリーブ油」とは、日光ケミカルズ社製の「NIKKOLオリーブ油」、融点54℃の「水添パーム油」とは、日光ケミカルズ社製の「NIKKOL Trifat P−52」を示す。
【0043】
以上の結果から明らかなように、本発明の各実施例に係るエアゾール組成物によれば、吐出物として固形状態のものが得られることが確認された。これらの実施例のうちの実施例6に係るエアゾール組成物は、食用油脂成分として、主成分としてのココナッツオイル(特定食用油脂物質)と共に高融点油脂物質および低融点油脂物質が含有されているものであるが、食用油脂成分が特定食用油脂物質のみよりなる他の実施例と同等の、固形状の吐出物の形成性および固形状の吐出物の溶融性を有するものであること確認された。
また、本発明の各実施例に係るエアゾール組成物においては、得られる固形状の吐出物が、室温(25℃)の適用環境条件下において、速やかに溶融することなく、固形状態から一定の時間をかけて徐々に融解する溶融特性が得られるものであることが確認されたことから、高い取扱性を有するものであることが理解される。
【0044】
また、実施例1〜6において作製したエアゾール製品の各々をフライパンに対して適用させてみたところ、いずれも吐出物を周囲に飛散させることなく、フライパンに付着させることのできるものであることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が10〜40℃である食用油脂類を主成分とする食用油脂成分と、この食用油脂成分が溶解される液化石油ガスよりなる噴射剤とよりなり、
噴射剤の気化熱により固形状の吐出物が形成されることを特徴とする固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物。
【請求項2】
前記食用油脂成分の含有割合が、組成物100質量%において20〜80質量%であることを特徴とする請求項1に記載の固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の固形状吐出物形成食用油脂エアゾール組成物がエアゾール用バルブを備えた耐圧容器内に充填されてなるものであり、
前記エアゾール用バルブが、アクチュエーターとしてスパウトを備えてなることを特徴とするエアゾール製品。

【公開番号】特開2012−95620(P2012−95620A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247511(P2010−247511)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000222129)東洋エアゾール工業株式会社 (77)
【Fターム(参考)】