説明

固形腐葉土及びその製造方法

【課題】農園芸などの生育用として植物の根に長期間酸素を供給することができる固形腐葉土を提供する。
【解決手段】固形腐葉土10は、腐葉土14と、水分を含んでも溶解しにくく、長期間粒形状を保つための接合剤16とが所定割合で混合された所定の水分量を有する所定寸法の固形粒とされる。腐葉土14と接合剤16は、90.0:10.0乃至99.8:0.2の割合で混合されている。固形粒の寸法は、直径15mm以下、1mm以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の根に長期間水と空気を供給することができると共に、吸水や雨水により水分を含んでも形状が崩れにくい固形腐葉土に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、落葉樹の葉を集めて所定期間発酵させた腐葉土が通常作物用や園芸用(農園芸用)などとして市販されているが、腐葉土は、その中に酸素を溜めて農園芸などの生育用として用いられる。この腐葉土は一般的に袋詰めされて展示販売されているが、袋詰めされた腐葉土は圧縮されていない(固まっていない)ので、運搬や保管、或いは、展示販売を行う際、展示スペースが広くなってしまう不具合や、複数段積み重ねた際荷崩れを起こし易いなどという不具合があった。
【0003】
そこで、腐葉土を無加圧状態時の体積に対して1/4よりも小さな体積になるように圧縮して、所定の大きさの袋(例えば14リットルの袋)に詰めることによって、輸送時の輸送効率性や、保管時の省スペースなどを図ることができる圧縮腐葉土が考案されている。しかし、腐葉土は一般的に土と混合して使用を行うものであり、このように圧縮されて袋に詰められた状態の圧縮腐葉土は、そのままでは一塊になっていて散布した際好適に土と混合させることができなかった。そこで、圧縮腐葉土の使用を行う際は、圧縮腐葉土を手でほぐして元の体積に復元させてから、適量を散布し土と混合させることにより、農園芸などの生育用として土に施していた(特許文献1参照)。
【0004】
一方、このような腐葉土は集めた落葉をそのまま発酵させて腐葉土にしたものであった。このため、腐葉土には小枝や軸が混入しており、また、発酵させた落葉は長さが約1mm〜約100mmと大きさが大小まちまちの形状であった。
【特許文献1】特開2004−97065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の圧縮腐葉土は手でほぐして使用しなければならないため、所定量の土と圧縮腐葉土とを均一に混合させるのが困難であった。この状態では、圧縮腐葉土と土とが混合されない箇所の発生もあり、圧縮腐葉土が混合されない土中には空気が殆ど供給されず、植物が根から吸収できる酸素量が不足してしまうという問題があった。
【0006】
また、無加圧状態時の体積に対して1/4よりも小さな体積にした圧縮腐葉土は硬くなってしまうので、腐葉土を施すときには腐葉土が連なってしまう。また、圧縮腐葉土は使用時には手でほぐして体積を増大させ、元の状態に復元してからでないと散布して土に施すのが困難であった。このため、硬くなった圧縮腐葉土を手でほぐすのが煩わしく、多大な手間がかかってしまう問題があった。
【0007】
特に、所定の圧力で圧縮してある圧縮腐葉土を手でほぐして使用しなければならないため、どうしても手が汚れてしまうと言う問題もあった。
【0008】
また、腐葉土には小枝や軸が混入すると共に、発酵させた落葉は大きさが大小まちまちの形状であったため、腐葉土が部分的に土中に混合されてしまう。このため、腐葉土と土とを好適に混合させることができないと言う問題もあった。
【0009】
本発明は、係る従来技術の課題を解決するために成されたものであり、農園芸などの生育用として植物の根に長期間酸素を供給することができる固形腐葉土を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明の固形腐葉土は、腐葉土と、水分を含んでも溶解しにくく、長期間粒形状を保つための接合剤とが所定割合で混合され、所定の水分量を有する所定寸法の固形粒とされていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2の発明の固形腐葉土は、上記において、腐葉土と接合剤は、90.0:10.0乃至99.8:0.2の割合で混合されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3の発明の固形腐葉土は、請求項2において、腐葉土と接合剤は、99.0:1.0の割合で混合されていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4の発明の固形腐葉土は、請求項1乃至請求項3の何れかにおいて、固形粒の寸法は、直径15mm以下、1mm以上であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5の発明の固形腐葉土は、請求項1乃至請求項4の何れかにおいて、固形粒の水分量は、10%乃至30%であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項6の発明の固形腐葉土は、請求項1乃至請求項5の何れかにおいて、接合剤は、澱粉、CMC、コーンスターチ、ベントナイト、リグニン、木酢液、鶏糞などの中から選ばれる一種類、或いは、複数種類の組み合わせであることを特徴とする。
【0016】
また、請求項7の発明の固形腐葉土の製造方法は、腐葉土と、水分を含んでも溶解しにくく、長期間粒形状を保つための接合剤とを所定の割合で混合し、圧縮して所定寸法の固形粒に成形した後、乾燥させて所定の水分量とすることを特徴とする。
【0017】
また、請求項8の発明の固形腐葉土の製造方法は、請求項7において、腐葉土と接合剤を、90.0:10.0乃至99.8:0.2の割合で混合することを特徴とする。
【0018】
また、請求項9の発明の固形腐葉土の製造方法は、請求項8において、腐葉土と接合剤を、99.0:1.0の割合で混合することを特徴とする。
【0019】
また、請求項10の発明の固形腐葉土の製造方法は、請求項7乃至請求項9の何れかにおいて、固形粒の寸法を、直径15mm以下、1mm以上とすることを特徴とする。
【0020】
また、請求項11の発明の固形腐葉土の製造方法は、請求項7乃至請求項10の何れかにおいて、固形粒の水分量を、10%乃至30%とすることを特徴とする。
【0021】
また、請求項12の発明の固形腐葉土の製造方法は、請求項7乃至請求項11の何れかにおいて、接合剤として、澱粉、CMC、コーンスターチ、ベントナイト、リグニン、木酢液、鶏糞などの中から選ばれる一種類、或いは、複数種類の組み合わせを使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明では腐葉土を所定の形状の固形粒に形成しているので、例えば、従来では腐葉土に触れたときに手が汚れてしまうが、腐葉土を固形粒にし、尚且つ、固形粒の水分を10%乃至30%と乾燥させているので腐葉土に触れても手を汚すことなく取り扱うことが可能となる。また、従来では圧縮腐葉土を施すときには腐葉土が連なって散布するのが困難であったが、腐葉土を固形粒にしているので散布を行うのが容易となる。また、固形粒を直径15mm以下、1mm以上としているので、固形腐葉土を容易に手で取り扱うことが可能となる。これにより、腐葉土に触れても手が汚れずに清潔で、取り扱いが容易な固形腐葉土を提供することができるようになる。従って、極めて取り扱いが容易な固形腐葉土を提供することができるようになるものである。
【0023】
また、接合剤は澱粉、CMC、コーンスターチ、ベントナイト、リグニン、木酢液、鶏糞などの中から選ばれる一種類、或いは、複数種類としているので、腐葉土と共に接合剤を容易に土に戻すことが可能となる。また、澱粉、CMC、コーンスターチ、ベントナイト、リグニン、木酢液、鶏糞などからなる接合剤には毒性がないので、例えば、プランターや鉢内の土に固形腐葉土を施して使用した場合でも、育てた野菜などを安全に食することが可能となる。従って、極めて安全な固形腐葉土を提供することができるようになるものである。
【0024】
また、固形粒は10%乃至30%と少ない水分量として固形腐葉土の軽量化を図っているので、固形腐葉土の運搬や取り扱い、或いは、散布などの作業を容易に行うことができる。また、長期間粒形状を保つための接合剤で腐葉土を固形化することにより固形腐葉土が崩れにくくなるので、例えばプランターや鉢などに土に固形腐葉土を施して使用した際、固形粒形状を長期間維持させることが可能となる。これにより、長期間土中の通気性及び排水性を高めることができるので、プランターや鉢などによる作物や花などの好適な生育を行うことが可能となる。また、接合剤を含む固形腐葉土は全て有機質のため、土中の有用微生物により分解還元を行うことができるので、プランターや鉢などによる作物や花など更に好適な生育を行うことができるようになる。
【0025】
特に、固形腐葉土には所定の大きさに粉砕された腐葉土内部に隙間を有しているので、農園芸として土に施した際、土に混ぜた固形腐葉土内の隙間により土中に酸素を溜めることができる。これにより、植物の根に酸素を長期間供給することができるようになるので、植物の根が酸素を長期間得ることができ農園芸などの植物の生育を大幅に促進させることが可能となる。従って、固形腐葉土の利便性を大幅に向上させることができるようになるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、土中の通気性及び排水性を高め、更に腐葉土に触れたときに手の汚れを抑えることを主な特徴とする。土中の通気性及び排水性を高めると共に手の汚れを抑えるという目的を、接合剤を腐葉土とを所定の割合で混合し、圧縮して所定の大きさの固形粒に成形するだけの簡単な構造で実現した。
【実施例1】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施例を示す固形腐葉土10の斜視図、図2は本発明の一実施例を示す固形腐葉土10の正面図、図3は本発明の一実施例を示す固形腐葉土10の製造工程のブロック図、図4は本発明の一実施例を示す固形腐葉土10製造工程の工程図である。
【0028】
本実施形態における固形腐葉土10は、広葉樹、針葉樹などの落葉12、好ましくは広葉樹の落葉12からなる腐葉土14を固形化して所定の大きさの固形粒としたもので、図1、図2に示すように直径1mm〜15mm(矢印A)、長さ1mm〜15mm(矢印B)の円柱形状に形成している。該固形腐葉土10は、給水や雨水などの水分を含んでも崩れ難い接合剤16(図3に図示)にて固形化されている。尚、図1では固形腐葉土10を見やすくするため周囲及び上面に縁取りの線を描いている。
【0029】
該固形腐葉土10は、土中の有用微生物で分解されて土に戻すことができる接合剤16が所定量混合され、圧縮され固形化されてペレット状の固形粒(この固形粒を固形腐葉土10と称す)が製造される。即ち、固形腐葉土10は、接合剤16により腐葉土14が結合されて給水や雨水などの水分を含んだ場合に短期間で容易に溶解しにくく構成すると共に、水分を含まない場合でも容易に崩れにくくなるように構成されている。これによって、固形腐葉土10は、長期間固形粒形状を維持できるように構成されている。
【0030】
次に、図3、図4を参照して固形腐葉土10の具体的な製造方法を、(1)〜(12)に順を追って説明する。
【0031】
(1)腐葉土14の原料である集めた落葉12が粉砕機20で所定の大きさに粉砕される。この場合、粉砕機20で粉砕される落葉12は主に広葉樹からなる落葉12で、例えば一方の辺が約1mm、他方の辺が約5mmの大きさに粉砕機20で粉砕される。詳しくは、一辺が約5mmになるように粉砕機20で落葉12が粉砕された後、図示しない5mm角の網目の篩いにかけられ、この篩いから落ちた落葉は更に1mm角の網目の篩いにかけられて、ふるい分けが行われる。5mm角の網目の篩いでふるい落とされずに残った大きな落葉12は再度粉砕機20にて粉砕され、これが繰り返される。尚、1mm角の網目の篩いでふるい落とされた落葉12は、別途土壌改良材として使用される。
【0032】
(2)粉砕された落葉12に所定量の水が加えられる。この場合、粉砕された落葉12は所定の大きさの容器、或いは、野積みにした状態で所定量の水を加えても良い。尚、落葉12の含水率が約60%となるように加水量の調整が行われる。好ましくは、粉砕機20で粉砕された箇所(落葉12が粉砕された直後)で、図示しない噴霧器からの噴霧により加水が行われる。
【0033】
(3)落葉12が所定期間発酵される。この場合(2)を実施した後約1〜3日経過すると落葉12の発酵が始まる。落葉12の発酵が始まると発酵熱が発生して、次第に落葉12の温度が上昇していき、約24時間後に+50℃程度になる。尚、落葉12を入れた容器や野積み状態、材料の質や量、或いは、環境状態によって落葉12の温度上昇に差がでるが、通常1〜3日以内に+50℃以上の温度になる。
【0034】
(4)落葉12の温度が+60℃〜+70℃に達した時点で、落葉12の切り返しが数回行われる。これにより、落葉12の発酵が満遍なく行われ、落葉12全体が腐葉土化される。係る落葉12の発酵期間中には、落葉12の温度管理(最も温度が上昇する部分に温度計を差し込んで温度を確認)が定期的に行われる。そして、落葉の温度上昇が停止して約3〜4ヶ月後に腐葉土14が完成する。
【0035】
このとき、落葉12は発酵が進むにつれて体積が減少していき、発酵開始前の2分の1程度の容積量の腐葉土14が完成する。また、黄赤色の落葉12では一般的に約3ヶ月位で腐葉土14が完成する。完成した腐葉土14は、温度上昇により水分が蒸発して約30〜約40%の含水率になる。これにより、腐葉土14(固形腐葉土10)の軽量化を図ることが可能となる。尚、落葉12の発酵から腐葉土14完成までの期間は、落葉12を入れた容器や野積み状態、材料の質や量、或いは、環境状態によって差があり、約3ヶ月位での腐葉土14の完成は一例である。
【0036】
(5)完成した腐葉土14は、粉砕機40で所定の大きさ(この場合、約5mm角以下)に粉砕される。詳しくは、一辺が約5mm以下になるように粉砕機20で落葉12が粉砕された後、5mm角の網目の図示しない篩いにかけられてふるい分けが行われる。5mm角の網目の篩いでふるい落とされずに残った大きな落葉12は再度粉砕機40で粉砕されこれが繰り返される。尚、このときの腐葉土14の大きさは約5mm角以下の大きさのものを全て含む。
【0037】
(6)粉砕された腐葉土14に所定量の接合剤16が加えられる。詳しくは、粉砕された腐葉土14に、乾燥すると硬化して固まり、自然環境において土中の有用微生物で分解されて土に戻すことができる水溶性の接合剤16が所定量の水に溶かされて腐葉土14に加えられる。この場合、粉砕された腐葉土14が粉砕機40から排出される箇所で、噴霧装置22により、水に溶かされた接合剤16が所定量噴霧される。即ち、粉砕された腐葉土14が粉砕機40から排出される箇所で、腐葉土14に接合剤16が噴霧されることにより、少ない接合剤16で大量の腐葉土14全体に満遍なく接合剤16を塗布することができる。
【0038】
ここで接合剤16は、有機質からなる澱粉、CMC、コーンスターチ、ベントナイト、リグニン、木酢液、鶏糞などからできている。そして、接合剤16はこれらの中から選ばれた一種類、或いは、複数種類が混合され、所定量の水で溶解された後、噴霧器で腐葉土14に噴霧され混合される。このときの腐葉土14と水分を除く接合剤16との割合は、腐葉土14の量90.0〜99.8:接合剤16の量10.0〜0.2、好ましくは腐葉土14の量99.0:接合剤16の量1.0割合で混合される。尚、接合剤16と水との割合は、約1:10の割合の混合比が好ましい。また、腐葉土14及び接合剤16が、自然環境において土中の有用微生物に分解されて土に戻るのは、従来より周知の技術であるため詳細な説明は省略する。
【0039】
(7)接合剤16が噴霧された腐葉土14は、所定の大きさの撹拌タンク24内に投入される。
【0040】
(8)撹拌タンク24内に投入された腐葉土14は、予め撹拌タンク24内に設けられ、回転する撹拌装置26により撹拌される。このように、腐葉土14が粉砕機40から排出される箇所で、噴霧装置22からの接合剤16が噴霧された後、更に、撹拌装置26で腐葉土14と接合剤16とが撹拌されるので、噴霧した接合剤16が塗布されなかった腐葉土14の面にも、接合剤16を塗布することができる。これにより、腐葉土14全体に接合剤16を満遍なく塗布することができる。
【0041】
(9)接合剤16が塗布された腐葉土14を所定の圧力で加圧する。該撹拌タンク24には予め加圧装置28が設けられており、この加圧装置28内に投入された腐葉土14は、この加圧装置28によって所定の圧力で加圧される。このとき、加圧された腐葉土14は、加圧される前の体積に対して約1/2程度に圧縮される。即ち、腐葉土14を完全に密着させて固形化していないので、所定の大きさに粉砕された腐葉土14と、腐葉土14との間には隙間があり、その隙間は密閉されずに腐葉土14内部は通気性を有している。また、加圧装置28には、プレス式とスクリュー式とがある。これらの加圧装置28にて腐葉土14を加圧する技術は、従来より周知の技術であるため詳細な説明を省略する。
【0042】
(10)所定の圧力で加圧された腐葉土14は直径1mm〜15mm、好ましくは直径約5mmの円筒形の筒内から押し出された後、切断装置30にて切断されて長さ約2mm〜15mm、好ましくは直径約5mmのペレット状の固形粒が製造される。即ち、加圧装置28の出口側に、予め円筒形の筒が設けられており、その先に切断装置30が設けられている。そして、加圧されて円筒形の筒内から押し出された腐葉土14は切断装置30で切断されて所定の大きさの固形粒形状に成形される。尚、腐葉土14を円筒形の筒内から押し出してペレット状に成形する技術は、従来より周知の技術であるため詳細な説明を省略する。
【0043】
(11)固形粒形状に成形された腐葉土14は、所定の温度で加熱乾燥されて、所定の水分量になったら固形腐葉土10が完成する。この場合、固形粒を乾燥機32を用いて、約+105℃程度の温度で所定時間乾燥して腐葉土14の水分を蒸発させる。尚、乾燥機32は電気ヒータ、或いは、燃料ヒータなどの加熱器を有している。
【0044】
(12)腐葉土14の含水率が約15%〜約20%になるまで乾燥させた後、送風機(図示せず)で自然の外気が送風され、略常温まで冷却されると固形腐葉土10が完成する。完成した固形腐葉土10は、所定の大きさの袋に詰められる。固形腐葉土10を詰める袋は5リットル、10リットル、15リットル、20リットルなどがあり、販売時の形態に応じてそれらの袋が選択され、完成した固形腐葉土10が詰められる。このようにして製造された固形腐葉土10は、容易に移送又は保管することができ、然も、腐葉土14が飛散させることなく、固形腐葉土10をばらまいたり、土に混ぜ込むだけで土に施すことができる。
【0045】
係る固形粒には乾燥させることにより硬化する接合剤16が水に溶かされて混合されているので、接合剤16が、粉砕された腐葉土14同士を粘結させる働きをして、ペレット状の固形腐葉土10を製造することができる。また、固形腐葉土10は、成形後の固形粒を加熱することにより接合剤16を乾燥して硬化させているので、固形腐葉土10は容易に崩れることのない固化状態となる。これにより、外力を受けても簡単に破壊することがなく、固形腐葉土10の運搬時や土に施す際に触れても手が汚れてしまうなどの不都合を確実に防止することができる。尚、固形腐葉土10をペレット状の固形粒で説明したが、図5に示すような球形であっても差し支えない。
【0046】
このように、固形腐葉土10は、所定の大きさに粉砕された腐葉土14と、土中の有用微生物に分解されて土に戻すことができ、且つ、水分を含んでも溶解しにくく、固形腐葉土10の固形粒形状を長期間維持させるための接合剤16とを所定の割合で混合し、圧縮して所定寸法の固形粒形状に成形した後、乾燥させて所定の水分量としているので、所定の大きさに粉砕された落葉12(腐葉土14)と、落葉12(腐葉土14)との間に隙間を有した状態(多孔質状態)で、所定の大きさの固形腐葉土10を製造することが可能となる。これにより、取り扱いが容易に行える腐葉土14を製造することが可能となる。従って、例えば、従来のように、圧縮して硬くなった腐葉土14を、手でほぐして使用するなどの煩わしさを解消することが可能になると共に、腐葉土に触れたとき手が汚れてしまうなどの不都合を確実に防止することができる。
【0047】
特に、固形腐葉土10には所定の大きさに粉砕された腐葉土14と、腐葉土14との間に隙間を有しているので、農園芸として土に施した際、土に混ぜた固形腐葉土10内の隙間により土中に酸素を溜めることができる。これにより、植物の根に酸素を長期間供給することができるので、植物の根が酸素を長期間得ることができて農園芸などの植物の生育を大幅に促進させることが可能となり、固形腐葉土10の利便性を大幅に向上させることができるようになる。
【0048】
また、腐葉土14と接合剤16とを、90.0:10.0乃至99.8:0.2の割合で混合、好ましくは、99.0:1.0の割合で混合しているので、固形腐葉土10の90%以上を腐葉土14で製造することができる。これにより、少ない接合剤16で、切り刻んで粉砕された腐葉土14を接着し、固形化させることができる。従って、腐葉土14の特性を殆ど損なわずに固形腐葉土10を製造することが可能となる。
【0049】
また、固形粒の寸法を、直径15mm以下、1mm以上としているので、取り扱いが容易で手が汚れずに清潔に取り扱うことができる。また、従来のように圧縮腐葉土を施すときには圧縮腐葉土が連なって散布し土に施すのが困難であったが、本発明の固形腐葉土10は取り扱いを容易にしているので、土に容易に散布することができる。従って、極めて取り扱いが容易な固形腐葉土10を提供することができるようになる。
【0050】
特に、固形腐葉土10の直径を15mm以下、1mm以上の固形粒としているので、土壌を改善しようとする土地や田畑などに、図示しない散布機により土に施すこともできる。従って、固形腐葉土10の散布能率も大幅に向上することができ、固形腐葉土10の利便性を極めて向上させることができる。
【0051】
また、固形粒の水分量を、10%乃至30%としているので、土中の有用微生物による固形腐葉土10の分解期間を長期化させることができる。これにより、プランターや鉢内に入れた土に固形腐葉土10を施して使用した際、固形腐葉土10の固形粒形状を長期間維持させることが可能となり、土中の通気性を長期間確保することができる。これにより、農園芸などの植物の生育を大幅に促進させることが可能となり、固形腐葉土10の利便性を更に大幅に向上させることができるようになる。
【0052】
また、接合剤16として、有機質からなる澱粉、CMC、コーンスターチ、ベントナイト、リグニン、木酢液、鶏糞などの中から選ばれる一種類、或いは、複数種類の組み合わせを使用しているので、接合剤16を腐葉土14と共に土中の有用微生物により安全に分解還元させることができる。これにより、プランターや鉢内の土に固形腐葉土10を施して使用した場合でも、育てた野菜などを安全に食することが可能となる。従って、極めて安全な固形腐葉土10を提供することができるようになるものである。
【実施例2】
【0053】
次に、本発明の他の実施例の固形腐葉土10の具体的な製造方法の説明を行う。該固形腐葉土10は、前述の実施例と略同じ構成を有している。以下、異なる部分について説明する。尚、接合剤16は、前述同様のものが使用されるものとする。
【0054】
次に、固形腐葉土10の具体的な他の製造方法を、(51)〜(61)に順を追って説明する。
【0055】
(51)腐葉土14の原料である集めた落葉12を粉砕機20で所定の大きさに粉砕する。この場合、粉砕機20で粉砕する落葉12は主に広葉樹からなる落葉12で、例えば一方の辺が約1mm、他方の辺が約5mmの大きさに粉砕機20で粉砕される。詳しくは、一辺が約5mmになるように落葉12が粉砕機20で粉砕された後、図示しない5mm角の網目の篩いにかけられ、この篩いから落ちた落葉が更に1mm角の網目の篩いにかけられて、ふるい分けが行われる。5mm角の網目の篩いでふるい落とされずに残った大きな落葉12は再度粉砕機20で粉砕され、これが繰り返される。尚、この場合も1mm角の網目の篩いでふるい落とされた落葉12は、別途土壌改良材として使用される。
【0056】
(52)粉砕された落葉12に所定量の水が加えられる。この場合、粉砕された落葉12が所定の大きさの容器、或いは、野積み状態にして水が加えられても良い。尚、落葉12の含水率が約60%となるように加水量の調整が行われる。好ましくは、粉砕機20で粉砕された箇所(落葉12が粉砕された直後)で、図示しない噴霧器からの噴霧により加水が行われる。
【0057】
(53)落葉12を所定期間発酵させる。この場合(52)を実施した後約1〜3日経過すると落葉12の発酵が始まる。落葉12の発酵が始まると発酵熱が発生し、落葉12は次第に温度上昇していき、約24時間後に+50℃程度になる。尚、落葉12を入れた容器や野積み状態、材料の質や量、或いは、環境状態によって落葉12の温度上昇に差がでるが、通常1〜3日以内に+50℃以上の温度になる。
【0058】
(54)落葉12の温度が+60℃〜+70℃に達した時点で、落葉12の切り返しを数回行う。これにより、落葉12の発酵が満遍なく行われ、落葉12全体が腐葉土化される。係る落葉12の発酵期間中には、落葉12の温度管理(最も温度が上昇する部分に温度計を差し込んでの温度確認)が定期的に行われる。そして、落葉の温度上昇が停止して約3〜4ヶ月後に腐葉土14が完成する。
【0059】
このとき、落葉12は発酵が進むにつれて体積が減少していき、発酵開始前の2分の1程度の量の腐葉土14が完成する。また、黄赤色の落葉12では一般的に約3ヶ月位で腐葉土14が完成する。完成した腐葉土14は、温度上昇により水分が蒸発して約30〜約40%の含水率になる。尚、落葉12の発酵から腐葉土14完成までの期間は、落葉12を入れた容器や野積み状態、材料の質や量、或いは、環境状態によって差があり、約3ヶ月位での腐葉土14の完成は一例である。
【0060】
(55)完成した腐葉土14は、粉砕機40で所定の大きさ(この場合、約5mm角以下)に粉砕される。詳しくは、約5mm角になるように粉砕機20で落葉12が粉砕された後、5mm角の網目の図示しない篩いにかけられて、ふるい分けが行われる。5mm角の網目の篩いでふるい落とされずに残った大きな落葉12は、再度粉砕機40で粉砕されこれが繰り返される。尚、このときの腐葉土14の大きさは約5mm角以下の大きさのものを全て含む。
【0061】
(56)粉砕された腐葉土14に所定量の接合剤16が噴霧された後、図示しないが所定角度傾斜すると共に所定の回転速度で回転する円筒形状の両端(上下端)を開口した容器内に投入される。詳しくは、粉砕された腐葉土14が粉砕機40から排出される箇所で、腐葉土14に接合剤16が噴霧され、接合剤16が噴霧された腐葉土14は、上部の開口から所定角度傾斜して所定の回転速度で回転する円筒形状の容器内に投入される。この場合も、実施例1同様粉砕された腐葉土14が粉砕機40から排出される箇所で、腐葉土14に接合剤16が噴霧されることにより、少ない接合剤16で大量の腐葉土14全体に満遍なく接合剤16を塗布することができる。尚、円筒形状の容器の内壁は、接合剤16が容易に貼り付かないように、テフロン(登録商標)などの加工が施されている。
【0062】
(57)接合剤16が噴霧され、傾斜した容器に上部に投入された腐葉土14が、容器の上部側の下壁上に投入されると、摩擦力により回転する容器の内壁に吸着しながら上方に移動していく。回転する容器の内壁に吸着した腐葉土14は、円筒形の容器の内壁面が垂直方向に近づいていくに従って、摩擦力に耐えきれなくなって重力で容器の内壁から離脱して落下する。尚、回転する容器内で腐葉土14は撹拌状態となるので、噴霧した接合剤16が塗布されなかった腐葉土14の面にも、接合剤16が塗布されるので、腐葉土14全体に接合剤16は満遍なく塗布される。
【0063】
(58)落下した腐葉土14は、下部に位置する腐葉土14に衝突或いは接触し、接合剤16で相互に吸着する。接合剤16で吸着した腐葉土14は、再度回転する容器の内壁に吸着し、円筒形の容器の内壁面が垂直方向に近づいていくに従って、摩擦力に耐えきれなくなって重力で容器の内壁から離脱して落下する。これが繰り返されるに従って、最初体積が小さかった腐葉土14は少しずつ大きく成長していく。
【0064】
該傾斜している容器は回転しているので、腐葉土14は成長するに従って略球形状態に形成されていく。大きく成長して略球形状に成長した腐葉土14は、必然的に重量が重くなるので、容器の内壁との摩擦力による吸着力が次第に低下していく。重くなった腐葉土14は、容器の内壁への吸着力が所定の吸着力以下になった時点で、腐葉土14は内壁より離脱して下方の開口から自動的に排出される。
【0065】
即ち、所定量の接合剤16が噴霧された腐葉土14は、所定角度傾斜し、所定の回転速度で回転する円筒形状の容器の上部の開口から投入される。回転する容器内で腐葉土14の大きさが成長して固形粒状体となり、所定の大きさになると容器の下部の開口から排出される。これにより、所定の大きさの固形粒となった腐葉土14が製造される。このときの腐葉土14は、直径約1mm〜15mmの大きさとされる。係る傾斜した容器を回転させて粒子の大きさを成長させる技術については、従来より周知の技術であるため詳細な説明を省略する。尚、腐葉土14の大きさは、容器の形状や直径、或いは、角度、回転速度などの設定により決定される。
【0066】
(59)腐葉土14は容器内で成長する際、所定の圧力が加わるので、加圧される前の体積に対して約1/2程度に圧縮される。即ち、腐葉土14を完全に固めていないので、成長した所定の大きさに粉砕された腐葉土14、腐葉土14との間には隙間があり、その隙間は密閉されずに腐葉土14内部は通気性を有している。
【0067】
(60)容器から排出された腐葉土14(固形粒)は、所定の温度で加熱乾燥されて、所定の水分量になったら固形腐葉土10が完成する。この場合、固形粒を乾燥機32を用いて、約+105℃程度の温度で所定時間乾燥して腐葉土14の水分を蒸発させる。尚、乾燥機32は電気ヒータ、或いは、燃料ヒータなどの加熱器を有している。
【0068】
(61)腐葉土14の含水率が約15%〜約20%になるまで乾燥させた後、送風機(図示せず)で自然の外気が送風され、略常温まで冷却されると固形腐葉土10が完成する。固形腐葉土10は、成形後の固形粒を加熱することにより接合剤16を乾燥して硬化させているので、固形腐葉土10は容易に崩れることのない固化状態となる。これにより、外力を受けても簡単に破壊することがなく、固形腐葉土10の運搬時や土に施す際に触れても手が汚れてしまうなどの不都合を確実に防止することができると共に、前述同様の効果を得ることが可能となる。
【0069】
尚、実施例では固形腐葉土10の形状や寸法などを記載したが、固形腐葉土10は要旨を逸脱しない範囲内で形状や寸法などを変更しても良いのは言うまでもない。勿論本発明は、上記各実施例のみに限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の様々な変更を行っても本発明は有効である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施例を示す固形腐葉土の斜視図である。
【図2】本発明の一実施例を示す固形腐葉土の正面図である。
【図3】本発明の一実施例を示す固形腐葉土の製造工程のブロック図である。
【図4】本発明の一実施例を示す固形腐葉土製造工程の工程図である。
【図5】他の形状の固形腐葉土10の斜視図である。
【符号の説明】
【0071】
10 固形腐葉土
12 落葉
14 腐葉土
16 接合剤
20 粉砕機
22 噴霧装置
24 撹拌タンク
26 撹拌装置
28 加圧装置
30 切断装置
32 乾燥機
40 粉砕機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐葉土と、水分を含んでも溶解しにくく、長期間粒形状を保つための接合剤とが所定割合で混合され、所定の水分量を有する所定寸法の固形粒とされていることを特徴とする固形腐葉土。
【請求項2】
前記腐葉土と接合剤は、90.0:10.0乃至99.8:0.2の割合で混合されていることを特徴とする請求項1に記載の固形腐葉土。
【請求項3】
前記腐葉土と接合剤は、99.0:1.0の割合で混合されていることを特徴とする請求項2に記載の固形腐葉土。
【請求項4】
前記固形粒の寸法は、直径15mm以下、1mm以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の固形腐葉土。
【請求項5】
前記固形粒の水分量は、10%乃至30%であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の固形腐葉土。
【請求項6】
前記接合剤は、澱粉、CMC、コーンスターチ、ベントナイト、リグニン、木酢液、鶏糞などの中から選ばれる一種類、或いは、複数種類の組み合わせであることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の固形腐葉土。
【請求項7】
腐葉土と、水分を含んでも溶解しにくく、長期間粒形状を保つための接合剤とを所定の割合で混合し、圧縮又は、吸着させながら粒形状を成長させて所定寸法の固形粒に成形した後、乾燥させて所定の水分量とすることを特徴とする固形腐葉土の製造方法。
【請求項8】
前記腐葉土と接合剤を、90.0:10.0乃至99.8:0.2の割合で混合することを特徴とする請求項7に記載の固形腐葉土の製造方法。
【請求項9】
前記腐葉土と接合剤を、99.0:1.0の割合で混合することを特徴とする請求項8に記載の固形腐葉土の製造方法。
【請求項10】
前記固形粒の寸法を、直径15mm以下、1mm以上とすることを特徴とする請求項7乃至請求項9の何れかに記載の固形腐葉土の製造方法。
【請求項11】
前記固形粒の水分量を、10%乃至30%とすることを特徴とする請求項7乃至請求項10の何れかに記載の固形腐葉土の製造方法。
【請求項12】
前記接合剤として、澱粉、CMC、コーンスターチ、ベントナイト、リグニン、木酢液、鶏糞などの中から選ばれる一種類、或いは、複数種類の組み合わせを使用することを特徴とする請求項7乃至請求項11の何れかに記載の固形腐葉土の製造方法。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−182932(P2008−182932A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18326(P2007−18326)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(506411807)あかぎ園芸株式会社 (1)
【Fターム(参考)】