説明

固形重曹透析用剤

【課題】
ブドウ糖が分解および着色するおそれがなく、安定性および含量均一性に優れた固形重曹透析用剤を提供する。
【解決手段】
塩化ナトリウムを含む核粒子と、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、ブドウ糖および酢酸を含むコーティング層とからなり、該核粒子が該コーティング層により覆われたものである固形重曹透析用剤、および塩化ナトリウムを含む核粒子に、重曹以外の電解質成分を含む水溶液を噴霧しながら乾燥させて造粒する工程の途中でブドウ糖を混合することを特徴とする、固形重曹透析用剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固形重曹透析用剤、すなわち重曹含有透析液を調製するための固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
腎機能が低下した患者に血液透析を実施する場合、患者の血液は人工腎臓中で浄化される。この人工腎臓の内部においては透析液が灌流し、透析膜を介して、該血液中の老廃物を透析液側に移行させることが一般に行われる。この透析液としては、酢酸透析液が広く使用されてきたが、近年、透析中の不快症状を激減させる重曹を使用するものに代替されてきている。
【0003】
重曹を含む透析液は、通常、電解質成分(例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム)およびpH調整剤(例えば酢酸)を含む製剤(以下、A剤という)、重曹を含む製剤(以下、B剤という)の2種類の透析液製剤から調製される。これらの透析液製剤にはブドウ糖などの糖が含まれる場合もあるし、別に糖を含む製剤を混合する場合もある。
【0004】
従来、A剤およびB剤は所定濃度に調製された濃厚液の状態で販売され、使用者が水で希釈して使用されてきた。しかし、一回の透析で患者一人あたり約300Lの透析液を必要とするため、多数の患者に透析治療を行う場合、多量の濃厚液を使用し、水で希釈することになる。そこで、透析液を調製する人の負担を軽減し、省スペース化を計るため、粉末製剤化したB剤を使用する場合が多くなってきた。それに伴い、A剤を粉末化した2剤からなる固形重曹透析用剤が開発されている。しかし、A剤にブドウ糖が含まれている2剤の固形重曹透析用剤は、製造工程においてブドウ糖が加熱され、分解および着色するおそれがある。そのため、ブドウ糖を別包装にした3剤からなる固形重曹透析用剤に比べて、安定性が維持される時間が短くなる。
【0005】
粉末化した固形重曹透析用剤として、重曹以外の電解質、ブドウ糖および液体酸よりなる粉末状のA剤と、重曹のみ、あるいは重曹および酢酸ナトリウムまたはブドウ糖よりなる粉末状のB剤、との二つの組成物よりなる透析用製剤が開示されている(特許文献1〜3)。これらの透析用製剤のA剤は、重曹以外の電解質およびブドウ糖を撹拌混合機で撹拌混合し、ついで粉砕機で粉砕したのち再び混合し、乾式造粒機で造粒したのち、液体酸を配合して混合する乾式法(A)、および塩化ナトリウムおよびブドウ糖を撹拌混合機で混合し、流動層造粒機内で塩化ナトリウムと重曹以外の電解質を水に溶解させて得られる水溶液を噴霧しながら造粒したのち、液体酸を配合して混合する流動層法(B)のいずれかで製造されるものである。しかし、上記(A)および(B)のいずれの方法で得られた透析用製剤も、製造工程中、ブドウ糖にかかる加熱時間が長いため、得られた製剤中のブドウ糖が分解および着色しているおそれがある。また、上記方法により得られる透析用製剤は、含量均一性を得ることが困難である。
【0006】
【特許文献1】特許第2749375号
【特許文献2】特許第2751933号
【特許文献3】特開平03−038527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明はブドウ糖が分解および着色するおそれがなく、安定性および含量均一性に優れた固形重曹透析用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々鋭意検討した結果、塩化ナトリウムを含む核粒子に、重曹以外の電解質を含む水溶液を噴霧しながら造粒する工程の途中でブドウ糖を混合することにより、所期の目的が達成されることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は塩化ナトリウムを含む核粒子と、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、ブドウ糖および酢酸を含むコーティング層とからなり、該核粒子が該コーティング層により覆われたものである固形重曹透析用剤である。
【0010】
また、本発明は下記工程(1)〜(4)により製造された固形重曹透析用剤である。
(1)転動撹拌流動層造粒装置を用いて塩化ナトリウムを含む核粒子に、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウムおよび酢酸ナトリウムを含む水溶液の一部を噴霧し、乾燥させる工程、(2)転動撹拌流動層造粒装置を用いて工程(1)で得られた生成物に、ブドウ糖粉末を混合する工程、(3)転動撹拌流動層造粒装置を用いて工程(2)で得られた混合物に、工程(1)で噴霧した残りの水溶液を噴霧し、乾燥させる工程、および(4)工程(3)で得られた生成物に、酢酸を混合して固形重曹透析用剤を得る工程
【発明の効果】
【0011】
本発明の固形重曹透析用剤は、転動攪拌流動層造粒装置を用いることにより、含量均一性に優れた固形重曹透析用剤を提供することが出来る。また、ブドウ糖粉末添加時期を調整することにより、分解や着色がなく、長期保存安定性に富んだ固形重曹透析用剤が得られる。さらに、酢酸ナトリウムの一部を粉末状態で添加することにより、固形重曹透析用剤の製造時間を短縮することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において固形重曹透析用剤とは、重曹を含まない電解質成分、pH調整剤および糖成分を含む、重曹含有透析液を調製するために使用する固形製剤である。該固形重曹透析用剤は、少なくとも電解質成分として、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウムを含むが、他の電解質成分、例えば、酢酸カリウムやグルコン酸カルシウム等を含んでいてもよい。本発明においてpH調整剤としては、酢酸を用いる。他のpH調整剤、例えば、乳酸、クエン酸、シュウ酸等の固体酸は、必要により添加してもよい。本発明において、糖成分としてはブドウ糖を用いる。他の糖成分、例えば、マルトース、キシリトール、トレハロース等は、必要により添加してもよい。本発明においては、塩化ナトリウムを含む核粒子に、重曹以外の電解質成分を含む水溶液を噴霧しながら乾燥させて造粒する工程の途中でブドウ糖を混合することを特徴とする。
【0013】
本発明の固形重曹透析用剤に含まれる塩化ナトリウムとしては、固体状態であって、核粒子を形成するものであればいかなるものでもよいが、粒径が約75〜1,700μmの結晶状態であるものが好ましい。本発明の固形重曹透析用剤に含まれる塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウムは、水に溶解して水溶液に調製し、前記塩化ナトリウムの核粒子に噴霧、乾燥させてコーティング層を形成するものであり、固体状態に限らず、いかなる状態のものであってもよい。上記塩化カルシウムとしては、塩化カルシウム2水和物、塩化カルシウム1水和物、塩化カルシウム無水物などが用いられ、塩化マグネシウムとしては塩化マグネシウム6水和物などが好ましく用いられ、酢酸ナトリウムとしては、無水酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム3水和物などが好ましく用いられる。本発明の固形重曹透析用剤に含まれる酢酸としては、氷酢酸、無水酢酸などが好ましく用いられる。本発明の固形重曹透析用剤に含まれるブドウ糖としては、粒径が約45〜1,700μmの粉末であるものが好ましい。
【0014】
本発明の固形重曹透析用剤は、重曹又は重曹を主体とする製剤とともに水に溶解させて重曹含有透析液に調製する。該透析液は、例えば下記組成(最終濃度)を有する。
Na+ 120〜150 mEq/L
+ 0.5〜3 mEq/L
Ca2+ 1.5〜4.5 mEq/L
Mg2+ 0.1〜2.0 mEq/L
Cl- 90〜135 mEq/L
CH3COO- 5〜15 mEq/L
HCO3- 20〜35 mEq/L
ブドウ糖 0.5〜2.5 g/L
【0015】
本発明における固形重曹透析用剤は、塩化ナトリウムを含む核粒子が、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、ブドウ糖および酢酸からなるコーティング層によって覆われた構造を有する。前記核粒子は、塩化ナトリウムの他に、塩化マグネシウムや塩化カルシウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウムを含んでいてもよい。該核粒子の各々の成分は、本発明の固形重曹透析用剤を製造するにあたり、粉砕せずにそのまま用いてもよいし、あらかじめ粉砕機や整粒機などにより、粒径75〜1,700μmの顆粒状に粉砕するか、あるいは湿式または乾式造粒にて同様のサイズの顆粒状に造粒してもよい。前記コーティング層に含まれる化合物は、上記成分の他に、塩化ナトリウムを含んでいてもよい。該化合物のうちブドウ糖および酢酸以外のものは、水に溶解させて水溶液に調製して、前記塩化ナトリウムの核粒子に噴霧、乾燥され、該核粒子にコーティング層を形成する。
【0016】
本発明では、ブドウ糖が粉末の状態で、前記核粒子に前記コーティング層に含まれる化合物の水溶液を噴霧する工程中に混合されることが特徴である。その混合時期は、前記水溶液の10〜90%を噴霧した後が好ましく、より好ましくは50〜90%を噴霧した後である。前記水溶液の液量が10%より少ないコーティング初期に混合した場合は、ブドウ糖の熱による着色や分解が起こりやすくなり、90%より多い場合は、コーティング層の層厚が不均一になり、得られた固形重曹透析用剤の含量が均一にならないおそれがある。ブドウ糖を混合した後、前記水溶液の残りの90〜10%を再び、噴霧、乾燥させて、コーティング層を完成させる。ここで、前記ブドウ糖は、あらかじめ粉砕機により、粒径45〜1,700μmの顆粒状に粉砕されていることが好ましい。
【0017】
前記コーティング層に含まれる酢酸ナトリウムは、全量が前記水溶液に調製されて使用される必要はなく、その一部が粉末状態で、ブドウ糖とともにコーティング工程中に混合されても良い。この場合、酢酸ナトリウム粉末の粒径は、約45〜1,700μmであるものが好ましい。上記酢酸ナトリウムの一部を粉末状態で使用することにより、コーティングする水溶液の量が減り、コーティングにかかる時間が短縮できる。具体的には、前記酢酸ナトリウム全量の90%以下を粉末状態で使用するのが好ましく、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは70%以下である。酢酸ナトリウムを粉末状態で使用する量が90%を越えると、コーティングする水溶液の量が少なすぎて、均一なコーティング層が形成されず、得られた固形重曹透析用剤の含量が均一にならなくなるおそれがある。
【0018】
本発明における固形重曹透析用剤は、転動攪拌流動造粒法によって造粒することにより得られる。これにより、ブドウ糖にかかる熱を最小限に抑えることができ、得られた製剤中のブドウ糖が分解および着色しているおそれがなくなる。
【0019】
以下、本発明の固形重曹透析用剤の製造方法の一例を説明する。
(1)まず、転動攪拌流動層造粒装置に、核粒子となる塩化ナトリウム1,500gを投入する。該核粒子に塩化カルシウム2水和物27〜81g、塩化マグネシウム6水和物2.5〜49.8g、塩化カリウム9〜54gおよび無水酢酸ナトリウム6〜202gの4種の電解質を含む水溶液の10〜90%を噴霧し、乾燥させてコーティング層を形成させる。該水溶液中の電解質の濃度は15〜50重量%が好ましく、25〜40重量%が特に好ましい。該水溶液中の電解質の濃度が15重量%より低いと水溶液の量が多くなるためコーティング時間が長くなり、50重量%より高いとコーティング層を形成する化合物が完全に溶解されず懸濁液になるおそれがある。
(2)前記転動撹拌流動層造粒装置内に、ブドウ糖粉末122.8〜614gを投入し、工程(1)で得られた生成物と混合する。ここで酢酸ナトリウム粉末0〜196gを添加してもよい。
(3)工程(2)で得られた混合物に、工程(1)で噴霧した残りの水溶液を噴霧し、乾燥させてコーティング層を形成させる。
【0020】
前記転動攪拌流動層造粒装置とは、層壁近傍からの空気流による流動作用と、装置底部のローターの回転による転動作用により、前記核粒子を転動流動させ、前記水溶液中の成分を噴霧してコーティングするものである。前記空気流の風量は、0.2〜300m/minが好ましく、0.5〜200m/minが特に好ましい。該風量が0.2m/minより少ないと核粒子同士が凝集しやすくなる。また、300m/minより多いと水溶液中の成分がスプレードライ現象を生じやすくなり、さらに各粒子が受ける衝撃が大きくなるため微粉が生じやすくなる。また、前記ローターの回転数は20〜1,000rpmが好ましく、50〜500rpmが特に好ましい。該回転数が20rpmより低いとコーティング層の層厚が不均一になり、1,000rpmり高いとコーティングされた粒子同士の衝突や装置内壁との摩擦のためにコーティング層が削れるおそれがある。乾燥は排気温度25〜70℃、好ましくは30〜50℃で前記噴霧中に継続して行うのが好ましい。乾燥後の造粒物の含水率は、0〜10%であることが好ましい。(4)工程(3)で得られた造粒物を前記転動攪拌流動層造粒装置より取り出し、自然冷却した後、V型混合機などに投入し、氷酢酸29〜73gを添加し、混合して固形重曹透析用剤を製造する。得られた造粒物の平均粒子径は75〜1,700μmであり、含水率は0〜10%であることが好ましい。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0022】
[実施例1]
塩化カリウム36.6g、塩化マグネシウム6水和物25g、塩化カルシウム2水和物45.1gおよび無水酢酸ナトリウム110.8gを精製水519.9gに溶解して水溶液を調製した。転動攪拌流動層造粒装置(マルチプレックス MP−01、パウレック社製)に、平均粒径300μmを有する塩化ナトリウム核粒子1,500gを投入し、給気温度80℃にて、ローター回転数300rpmおよび給気風量40m/hrの条件下で、前記水溶液を噴霧すると同時に乾燥させた。20分後、前記水溶液の約50%をコーティングした時点で、平均粒径180μmを有するブドウ糖粉末245.6gを前記造粒装置内に投入し、引き続き、前記工程で噴霧した残りの約50%の水溶液の噴霧を行い、平均粒径850μmを有する顆粒を得た。該顆粒を該装置内より取り出し、室温まで冷却した後、V型混合機(S−3型、筒井理化学器械社製)に投入し、該混合機内に氷酢酸36.9gを添加し、均一に混合して平均粒径850μmの固形重曹透析用剤を得た。
【0023】
[実施例2]
ブドウ糖粉末添加時期を、前記水溶液の約70%をコーティングした時点に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、平均粒径850μmを有する固形重曹透析用剤を得た。
【0024】
[実施例3]
ブドウ糖粉末添加時期を、前記水溶液の約90%をコーティングした時点に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、平均粒径900μmを有する固形重曹透析用剤を得た。
【0025】
[実施例4]
塩化カリウム36.6g、塩化マグネシウム6水和物25.0g、塩化カルシウム2水和物45.1gおよび無水酢酸ナトリウム80.6gを精製水447.6gに溶解して水溶液を調製した。転動攪拌流動層造粒装置(マルチプレックス MP−01、パウレック社製)に、平均粒径300μmを有する塩化ナトリウム核粒子1,500gを投入し、給気温度80℃にて、ローター回転数300rpmおよび給気風量40m/hrの条件下で、前記水溶液を噴霧すると同時に乾燥させた。30分後、前記水溶液の約90%をコーティングした時点で、平均粒径180μmを有するブドウ糖粉末245.6gおよび平均粒径150μmを有する無水酢酸ナトリウム粉末30.2gを前記造粒装置内に投入し、引き続き前記工程で噴霧した残りの約10%の水溶液の噴霧を行い、平均粒径900μmを有する顆粒を得た。該顆粒を装置内より取り出し、室温まで冷却した後、V型混合機(S−3型、筒井理化学器械社製)にを投入し、該混合機内に氷酢酸36.9gを添加し、均一に混合して平均粒径900μmの固形重曹透析用剤を得た。
【0026】
[比較例1]
塩化カリウム36.6g、塩化マグネシウム6水和物25.0g、塩化カルシウム2水和物45.1gおよび無水酢酸ナトリウム110.8gを精製水519.9gに溶解して水溶液を調製した。転動攪拌流動層造粒装置(マルチプレックス MP−01、パウレック社製)に、平均粒径300μmを有する塩化ナトリウム核粒子1,500gを投入し、給気温度80℃にて、ローター回転数300rpmおよび給気風量40m/hrの条件下で、前記水溶液を噴霧すると同時に乾燥させた。40分後、前記水溶液の全量をコーティングした時点で、平均粒径180μmを有するブドウ糖粉末245.6gを前記造粒装置内に投入し、10分間混合して平均粒径800μmの顆粒を得た。該顆粒を装置内より取り出し、室温まで冷却した後、V型混合機(S−3型、筒井理化学器械社製)にを投入し、該混合機内に氷酢酸36.9gを添加し、均一に混合して平均粒径800μmを有する固形重曹透析用剤を得た。
【0027】
[比較例2]
塩化カリウム12.2g、塩化マグネシウム6水和物8.3g、塩化カルシウム2水和物15.0gおよび無水酢酸ナトリウム36.9gを精製水173.3gに溶解して水溶液を調製した。流動層造粒装置(フローコーター、FLO−1、フロイント産業社製)に、平均粒径300μmを有する塩化ナトリウム核粒子500g及び平均粒子径180μmを有するブドウ糖81.9gを投入し、給気温度80℃および給気ダンパー開度50%の条件下で、前記水溶液を噴霧すると同時に乾燥させて、平均粒径900μmを有する顆粒を得た。該顆粒を装置内より取り出し、室温まで冷却した後、V型混合機(S−3型、筒井理化学器械社製)にを投入し、該混合機内に氷酢酸12.3gを添加し、均一に混合して平均粒径900μmを有する固形重曹透析用剤を得た。
【0028】
[比較例3]
塩化カリウム12.2g、塩化マグネシウム6水和物8.3g、塩化カルシウム2水和物15.0gおよび無水酢酸ナトリウム36.9gを精製水173.3gに溶解して、水溶液を調製した。流動層造粒装置(フローコーター、FLO−1、フロイント産業社製)に、平均粒径300μmを有する塩化ナトリウム核粒子500gを投入し、給気温度80℃および給気ダンパー開度50%で、前記水溶液を噴霧すると同時に乾燥させた。35分後、前記水溶液の約90%をコーティングした時点で、平均粒径180μmを有するブドウ糖粉末81.9gを前記造粒装置内に投入し、引き続き前記工程で噴霧した残りの約10%の水溶液の噴霧を行い、平均粒径900μmを有する顆粒を得た。該顆粒を装置内より取り出し、室温まで冷却した後、V型混合機(S−3型、筒井理化学器械社製)にを投入し、該混合機内に氷酢酸12.3gを添加し、均一に混合して平均粒径900μmを有する固形重曹透析用剤を得た。
【0029】
上記実施例1〜4および比較例1〜3で得られた固形重曹透析用剤について、各々の電解質およびブドウ糖の含量測定、含量均一性の評価および安定性試験を行った。
【0030】
(含量測定および均一性評価)
上記実施例1〜4および比較例1〜3で得られた固形重曹透析用剤から、任意に50gを6回採取し、それぞれを水に溶解させて500mLの水溶液を調製した。該水溶液中の各成分含量を測定し、理論値に対する測定した含量の平均値の割合(%)およびCV値(%)(変動係数)を表1に示す。Na及びKは炎光光度計、Ca及びMgはイオンクロマトグラフ、Clは硝酸銀滴定法、ブドウ糖は旋光度計、酢酸(CHCOO)はHPLC−UVによりそれぞれ測定した。
【0031】
【表1】

上段の数字:(測定含量の平均値)/(理論値)×100(%)
下段の括弧内:CV値(%)
【0032】
表1から明らかなように、本発明の固形重曹透析用剤はいずれも、各成分含量の平均値が理論値に近く、CV値も小さく、優れた含量均一性を示したことがわかる。一方、比較例1の核粒子にコーティング層に含まれる化合物の水溶液をコーティングする工程が終了した後でブドウ糖粉末を添加して得られた固形重曹透析用剤、および比較例2および3の流動層造粒装置を用いて得られた固形重曹透析用剤は、いずれもブドウ糖の含量がかなり不均一であった。
【0033】
(安定性試験)
上記実施例1〜4および比較例1〜3で得られた固形重曹透析用剤50gを100×100mmのアルミ包材に封入し、(A)25℃、60%RHで6ヶ月間、または(B)40℃、75%RHで3ヶ月間保存した物について、袋内の固形重曹透析用剤の着色、を観察した。着色は、色差計(Z−300A、日本電色社製)により測定した。その結果を表2に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
表2から明らかなように、本発明の固形重曹透析用剤は、長期間保存後も着色が見られなかった。一方、比較例2の核粒子にコーティング層に含まれる化合物の水溶液をコーティングする前にブドウ糖粉末を添加して得られた固形重曹透析用剤は、製造直後、既に着色していた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の固形重曹透析用剤は、転動攪拌流動層造粒装置を用いることにより、含量均一性に優れた固形重曹透析用剤を提供することが出来る。また、ブドウ糖粉末添加時期を調整することにより、分解や着色がなく、長期保存安定性に富んだ固形重曹透析用剤が得られる。さらに、酢酸ナトリウムの一部を粉末状態で添加することにより、固形重曹透析用剤の製造時間を短縮することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ナトリウムを含む核粒子と、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、ブドウ糖および酢酸を含むコーティング層とからなり、該核粒子が該コーティング層により覆われたものである固形重曹透析用剤。
【請求項2】
下記工程(1)〜(4)により製造された固形重曹透析用剤。
(1)転動撹拌流動層造粒装置を用いて塩化ナトリウムを含む核粒子に、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウムおよび酢酸ナトリウムを含む水溶液の一部を噴霧し、乾燥させる工程、
(2)転動撹拌流動層造粒装置を用いて工程(1)で得られた生成物に、ブドウ糖粉末を混合する工程、
(3)転動撹拌流動層造粒装置を用いて工程(2)で得られた混合物に、工程(1)で噴霧した残りの水溶液を噴霧し、乾燥させる工程、
および(4)工程(3)で得られた生成物に、酢酸を混合して固形重曹透析用剤を得る工程
【請求項3】
下記工程(1)〜(4)により製造された固形重曹透析用剤。
(1)転動撹拌流動層造粒装置を用いて塩化ナトリウムを含む核粒子に、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウムおよび酢酸ナトリウムを含む水溶液の一部を噴霧し、乾燥させる工程、
(2)転動撹拌流動層造粒装置を用いて工程(1)で得られた生成物に、ブドウ糖粉末および酢酸ナトリウム粉末を混合する工程、
(3)転動撹拌流動層造粒装置を用いて工程(2)で得られた混合物に、工程(1)で噴霧した残りの水溶液を噴霧し、乾燥させる工程、
および(4)工程(3)で得られた生成物に、酢酸を混合して固形重曹透析用剤を得る工程

【公開番号】特開2008−7523(P2008−7523A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244826(P2007−244826)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【分割の表示】特願平11−333763の分割
【原出願日】平成11年11月25日(1999.11.25)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】