説明

固液二相流体の搬送装置

【課題】配管を通ってきた固液二相流体における固体粒子の密度を均一に維持しながら処理部に流入させることのできる搬送装置を提供する。
【解決手段】本発明の搬送装置は、固液二相流体を搬送する複数の配管5と、各々の配管5を通って固液二相流体が供給される処理部3と、を備える。各々の配管5の固液二相流体の搬送方向の端部にディフューザ7が接続されており、このディフューザを介して、固液二相流体が処理部3に流入する。ディフューザ7を介して処理部3に接続される配管5を複数とすることで、個々の配管5の口径を小さくし、配管5内を流れる固液二相流体の流速を大きくする。また、配管5の口径を小さくできるので、処理部3へ接続されるディフューザ7の長さを抑え、装置の小型化に寄与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体粒子と液体からなる固液二相流体を、固体粒子の密度を均一な状態で目的とする搬送先に供給することのできる搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体粒子と液体からなる固液二相流体は、化学関連設備、食品・飲料製造設備、建築・土木関連設備、等々の広範な産業分野で取り扱われている。これらのいずれの産業分野においても作製された固液二相流体を搬送する過程で、固体粒子が固液二相流体の中で均一な密度を保つことが必用な場合がある。例えば、所定量の固液二相流体に含まれる固体粒子の量を一定にすることが、化学関連設備においては適切な化学反応を得るために必要であり、また、食品・飲料製造設備においては狙った味覚を得るために必要である。
【0003】
固液二相流体は、固体粒子と液体を撹拌機により混合・撹拌した後に、必要な処理を行うための処理部に向けて供給され、そこで所定の処理がなされた後に、当該処理領域から排出され、さらに次の処理がある場合には、次の処理部に搬送される。一般に、撹拌機により混合・撹拌された時点では、固液二相流体における固体粒子の密度は均一であるが、配管を介して搬送される過程、あるいは、配管から処理部に移送される過程で密度の均一性が解かれることがある。特に、搬送される固液二相流体の流速が小さいと、液体に比べて比重が大きい固体粒子が沈降することによる分散状態の低下により、それ以降の固液二相流体の密度は混合・撹拌された当初より低くなる。
【0004】
このような固液二相流体の特質に応じて、固液二相流体の流れを均等に分配する分配器が特許文献1に開示されている。この分配器は、固液二相流体の流れ方向に横断面が十字状の2つの仕切り体を90°の角度をなして配置される。特許文献1によると、この分配器は、一段目の仕切り体で分割された流れが、二段目の仕切り体により更に分割された上で各流出管に分配されるので、固体粒子及び液体がそれぞれほぼ均等となるように固液二相流体を容易に分配できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−243644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、固液二相流体を搬送するものとして、配管を通ってきた固液二相流体が処理部に流入する形態があるが、この形態において固体粒子の密度を均一に維持しながら処理部に流入させる搬送装置の要望が多い。
本発明は、このような課題に基づいてなされたもので、配管を通ってきた固液二相流体における固体粒子の密度を均一に維持しながら処理部に流入させることのできる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
固液二相流体を搬送する場合、その流量が多い範囲では、圧損を小さくするために口径(直径)の大きい配管が必要である。一方、配管の口径を大きくすると流路面積が大きくなり、流速が小さくなるので、固液二相流体中の固体粒子が沈降しやすい。したがって、多量の固液二相流体を搬送する際に、固体粒子の沈降が生じない程度の流速で固液二相流体を流すことが本発明の目的を達成するために必要である。
【0008】
次に、固液二相流体が処理部に流入する際の固液二相流体中における速度分布が均一であることが、固液二相流体における固体粒子の密度を均一に保つ上で重要である。そのためには、配管と処理部の間にディフューザを設け、ディフューザを介して配管を流れてきた固液二相流体を処理部に流入させることが効果的である。ところが、ディフューザによる効果を得るためには、所定のテーパ角を有している必要がある。しかるに、配管の流入口における口径に対して処理部の流入部分の開口面積が大きい場合には、処理部と接続されるディフューザの開口面積を大きくする必要があるため、所定のテーパ角度を有するディフューザは長くならざるを得ない。これは、固液二相流体の搬送装置の大型化を招く要因となる。なお、本発明において、ディフューザの長さとは、固液二相流体が流れる向きの寸法を言うものとする。
【0009】
本発明者等は、一つの配管から固液二相流体を処理部に流入させるのではなく、配管を複数に分けることで、以上説明した二つの検討課題を同時に解決することを提案するものである。
すなわち本発明の固液二相流体の搬送装置は、固液二相流体を搬送する複数の配管と、各々の配管を搬送される固液二相流体が供給される処理部と、を備え、固液二相流体が、配管の固液二相流体の搬送方向の端部に接続されるディフューザを介して処理部に供給されることを特徴とする。
【0010】
本発明は、以上のようにディフューザを介して処理部に接続される配管を複数とすることで個々の配管の口径を小さくし、配管内を流れる固液二相流体の流速を大きくできるようにする。そうすることで、固体粒子の密度を均一に維持しながら固液二相流体を搬送する。固液二相流体の流速を大きくするために配管の口径を小さくするが、一方で処理部へ接続される配管の本数を複数にすることで必要な流量を確保する。
また、配管の口径を小さくできるので、処理部へ接続されるディフューザの長さを抑え、装置の小型化に寄与する。
【0011】
本発明の固液二相流体の搬送装置において、処理部に接続される複数のディフューザは、処理部との接続面において対称の位置に配置されることが好ましい。そうすることで個々のディフューザから固液二相流体の流れを乱すことなく処理部に流入させることができる。対称の位置とは、例えば、正三角形の頂点(線対称)、正方形の頂点(点対称)を言うが、これに限るものではない。
【0012】
本発明の固液二相流体の搬送装置は、処理部に流入する固液二相流体の向きを問わずに適用することができるが、下方より処理部に向けて上向きに固液二相流体がディフューザを通過して処理部に流入する場合に有効である。この場合に液体に対して比重の大きい固体粒子が沈降しやすいからである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の搬送装置によれば、配管を通ってきた固液二相流体における固体粒子の密度を均一に維持しながら処理部に流入させることができる。しかも、この装置は、ディフューザの長さを抑えることができるので、小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態における固液二相流体の処理装置の構成を示す図である。
【図2】(a)は図1の処理装置の要部拡大図を示し、細い配管を4本設けた図、(b)は(a)の比較として太い配管を1本だけ設けた図である。
【図3】複数の配管(ディフューザ)を処理部に接続する配置を示す図であり、(a)及び(b)は4本の場合を示し、(c)及び(d)は5本の場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
本実施形態による固液二相流体Lの処理装置1は、混合・撹拌部2と、処理部3と、を備え、混合・撹拌部2により生成される固液二相流体Lを処理部3に搬送して所定の処理を行う。
混合・撹拌部2は、固液二相流体Lを構成する固体粒子と液体とを混合し、かつ撹拌翼などの撹拌手段により撹拌して、液体中に固体粒子が分散した密度の均一な固液二相流体Lを生成する。本発明は、混合・撹拌部2の具体的な形態を問わない。
【0016】
処理部3は、前述したように、化学関連設備、食品・飲料製造設備等々の産業分野で利用される多種多様の処理を行う装置、機器を対象にすることができる。この処理部3は、混合・撹拌部2で生成された固液二相流体Lが、固体粒子の分散状態が維持された均一な密度で流入することが望まれるところである。処理部3で所定の処理が行われた固液二相流体Lは、次の処理部(図示を省略)に搬送される場合、または最終的な処理物(製品)として扱われる場合がある。あるいは、混合・撹拌部2に戻され、混合・撹拌部2と処理部3が循環経路を構成する場合もある。
【0017】
混合・撹拌部2と処理部3は搬送路4により接続されている。
搬送路4は、一端が混合・撹拌部2に接続され、他端がディフューザ7に接続される配管5を備える。この例では、搬送路4は4本の配管5を備えており、各々の配管5には混合・撹拌部2で生成された固液二相流体Lを処理部3に向けて送るためのポンプ6が設けられており、ポンプ6を作動させることで固液二相流体Lを処理部3に搬送、供給する。4本という配管5の本数は一例であり、2以上の数から適宜選択することができる。配管5の他端にはディフューザ7が接続されており、配管5はディフューザ7を介して、搬送される固液二相流体Lを供給可能に処理部3に接続される。なお、以上より理解できるように、本実施形態は単一種の固液二相流体Lを複数の配管5からディフューザ17を介して処理部3に供給するものである。
【0018】
ディフューザ7は、流体の運動エネルギーを圧力エネルギーに変換する流路のことであり、流路の入口から出口に向けて流路面積を徐々に拡大することで、流速を落とし、圧力を増加させる。これにより、固液二相流体Lの流路を形成するディフューザ7の内壁面からの固液二相流体Lの剥離が防止されるので、固液二相流体Lをその密度を均一に維持しながら処理部3に供給できる。
剥離を起させないで流体がディフューザ7の内部を通過するには、流路面積が徐々に拡大する程度、つまり軸方向に対する内壁面の傾斜角度θ(図1参照)を適切な範囲に設定する必要がある。この傾斜角度θは10°〜20°の範囲から選択されることが多い。
【0019】
本実施形態は、4本の配管5(ディフューザ7)を備えている。そうすることの効果を、図2を参照しながら説明する。
図2において、(a)は本実施形態に対応して4本のディフューザ7が処理部3に接続されているものを示し、(b)は本実施形態に対する比較例として1本のディフューザ17が処理部3に接続されているものを示している。
本実施形態において、1本のディフューザ7(配管5)から処理部3に供給される固液二相流体Lの流量(単位時間当たり)をQとする。仮に同じ流量Qをディフューザ17を介して処理部3に供給するものとし、各ディフューザ7に繋がる配管5の開口面積及びディフューザ17に繋がる配管5の開口面積を、各々、ディフューザ7:A、ディフューザ17:4Aとする。そうすると、ディフューザ7側の配管5を流れる固液二相流体Lの流速Vaは、ディフューザ17側の配管5を流れる固液二相流体Lの流速Vbの4倍となる。このように、配管5の口径を小さくした本実施形態は固液二相流体Lの流速を速くできるので、固体粒子の分散状態を維持しながら均一な密度で固液二相流体Lを搬送することができる。
【0020】
本実施形態は、固液二相流体Lを速く流せるディフューザ17を複数本、この例では4本設けているので、処理部3への固液二相流体Lの供給量を確保できる。
【0021】
本実施形態において、4本のディフューザ7から処理部3に供給される固液二相流体Lの配管5における流量をQとし、これと同じ流量Qが比較例のディフューザ17から処理部3に供給されるものとする。この場合は、本実施形態と比較例は、同じ積算時間に同じ量の固液二相流体Lを処理部3に供給することができる。しかし、本実施形態は配管5の口径が小さいので、ディフューザ7の長さを比較例のディフューザ17に比べて短くできる。各ディフューザ7が処理部3と接続される部分の開口面積をAとし、ディフューザ17が処理部3と接続される部分の開口面積を4Aとすると、ディフューザ7の長さをディフューザ17の1/2にすることができる。
【0022】
本実施形態において、処理部3に接続される4本のディフューザ7は、図3(a)、(b)に示されるように、接続面31において対称(点対称)の位置に配置し、4本のディフューザ7(配管5)の全てから固液二相流体Lを処理部3に供給するのが好ましい。図3の各ディフューザ7の中に記述されている「ON」は当該ディフューザ7から固液二相流体Lが供給されることを示しており、図3(a)は4本全てのディフューザ7から固液二相流体Lが処理部3に供給されることを示している。これに対して、図3(b)は「OFF」が記述されているディフューザ7からは、固液二相流体Lの供給が行われない。図3(a)の場合、各々のディフューザ7から処理部3に流入した固液二相流体Lは処理部3の内部で対称の状態で合流するので、合流した後の各固液二相流体Lの流れは乱れ難い。これに対して図3(b)の場合、各々のディフューザ7から流入した固液二相流体Lは対称性を有していないので処理部3の内部で合流した後に流れが乱れやすい。この流れの乱れは、固液二相流体Lにおける固体粒子の密度の均一性を低下させる要因となる。
【0023】
以上の通り、4本のディフューザ7を設ける場合、それらを対称の位置に配置した全てのディフューザ7から処理部3に固液二相流体Lが供給されること、を示したが、図3(c)、(d)に示すように、設けるディフューザ7の本数を例えば5本にすれば全てのディフューザ7から固液二相流体Lを供給しなくてもよい。
図3(c)、(d)に示す例は、5本のディフューザ7を正方形の頂点と中心に配置している。この例は、図3(c)に示すように、全てのディフューザ7から処理部3に固液二相流体Lを供給する場合はもちろん、中心に位置するディフューザ7からの供給を止めても、対称性は維持される。しかも、当該ディフューザ7からの供給を停止することにより、処理部3への固液二相流体Lの供給量を調整することができる。
【0024】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、実施形態で挙げた構成を取捨選択し、あるいは他の構成に適宜変更することが可能である。
本実施形態において、固液二相流体Lは、図1に示すように、鉛直方向に立設するディフューザ7の中を下方より処理部3に向けて上向きに通過して処理部3に流入する。本発明は、固液二相流体Lが処理部3に流入する向きを問わない。つまり、処理部3に対して水平方向に固液二相流体Lが流入する場合、処理部3に対してその上方から下向きに流入する、等の形態を本発明は含む。ただし、本実施形態のように、固液二相流体Lが下方から上向きに流れる場合、固体粒子と液体の比重差に基づく固体粒子の沈降が最も生じやすいので、本発明の効果が顕著となる。
また、処理部3は、生産を伴うものに限定されず、処理部3に設けた機器、部材の性能を評価する、といった機能を包含する。したがって、処理部3における処理とは、固液二相流体Lについて行われる、受動的な処理又は能動的な処理の両者を包含する。
【符号の説明】
【0025】
1 処理装置
2 混合・撹拌部
3 処理部
4 搬送路
5 配管
6 ポンプ
7,17 ディフューザ
31 接続面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固液二相流体を搬送する複数の配管と、
各々の前記配管を通って前記固液二相流体が供給される処理部と、を備え、
各々の前記配管の固液二相流体の搬送方向の端部に接続されるディフューザを介して、前記固液二相流体が前記処理部に流入することを特徴とする、
固液二相流体の搬送装置。
【請求項2】
処理部に接続される複数のディフューザは、
前記処理部との接続面において対称の位置に配置される、
請求項1に記載の固液二相流体の搬送装置。
【請求項3】
前記固液二相流体は、ディフューザを、下方より前記処理部に向けて上向きに通過して前記処理部に流入する、請求項2に記載の固液二相流体の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−201474(P2012−201474A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69492(P2011−69492)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】