説明

固液分離装置、濾過装置、および固液分離方法

【課題】濾過装置の2次脱水機構として用いて、被処理物(ケーキ)の含液率を十分に低減することができるとともに連続的な固液分離が可能な固液分離装置、この固液分離装置を2次脱水機構として備えた濾過装置、および固液分離方法を提供する。
【解決手段】周方向に回転させられる分離ロール2Bの外周に、無端状の一対の分離濾布1、5が重ね合わされて巻回されつつ分離ロール2Bの回転方向に沿って走行可能とされ、これらの分離濾布1、5の間に供給された被処理物Pを、分離ロール2Bの外周で分離濾布1、5の間に挟み込んで圧搾するとともに、分離ロール2Bの径方向に通気することによって脱水させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に複数のロールに巻回されて走行する濾布上に供給された被処理物を濾過する水平式真空濾過装置、ドラム式真空濾過装置、および機械圧搾脱水機構のみのベルトプレス脱水機のような濾過装置の2次脱水機構として用いて好適な固液分離装置、該固液分離装置を用いたこのような濾過装置、および固液分離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような水平式真空濾過装置は一般に、真空トレイ上を連続的あるいは間欠的に走行する濾布の上に被処理物を供給し、この濾布を介して真空トレイにより真空吸引することによって濾過するものであり、またドラム式真空濾過装置は一般的に液槽内の被処理物スラリー中に浸漬された濾布を介する真空室により真空吸引することにより濾過するものであるが、通常は大気圧よりも大きな差圧を作用させることができない。このため、濾過されたケーキの到達含液率が目標値を達成することが難しく、当該濾過装置の後段にこれとは別に遠心分離器やフィルタープレス等の2次脱水装置を用意しなければならないことが多い。
【0003】
そこで、本発明の発明者等は、例えば特許文献1、2において、このような水平式真空濾過装置の真空トレイのみによる濾過の後段に、濾過されたケーキに向けて進退可能な枠状または環状のシール材を有するシール手段と、このシール材の開口面内側で加圧板や圧力流体(エアー等)によってケーキを加圧する加圧手段とを備えた固液分離装置を設け、この後段に濾布の走行によって移動してきたケーキにシール材を密着させ、その内側で加圧手段によりケーキを加圧して脱水するものを提案している。
【特許文献1】特開2006−297366号公報
【特許文献2】特開2007−83117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような固液分離装置を設けた水平式真空濾過装置等においても、被処理物の組成や性状によっては、加圧板や加圧ロールによる濾布に垂直な方向への面圧あるいは線圧だけでは、ケーキの含液率を十分に目標値を達成することが困難となる場合がある。また、上述のように濾布の走行によって後段に移動したケーキにシール材を前進させて密着させた上で加圧する固液分離装置では、濾布が連続的に走行する場合にそのまま適用することはできない。
【0005】
本発明は、このような背景の下になされたもので、特にこのような濾過装置の2次脱水機構として用いて、被処理物(ケーキ)の含液率を十分に低減することができるとともに連続的な固液分離が可能な固液分離装置、該固液分離装置を2次脱水機構として備えた濾過装置、および固液分離方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の固液分離装置は、周方向に回転させられる分離ロールの外周に、無端状の一対の分離濾布が重ね合わされて巻回されつつ上記分離ロールの回転方向に沿って走行可能とされ、これらの分離濾布の間に供給された被処理物が、上記分離ロールの外周で該分離濾布の間に挟み込まれて圧搾されるとともに、上記分離ロールの径方向に通気されることによって脱水させられることを特徴とするものであり、また本発明の固液分離方法は、周方向に回転させられる分離ロールの外周に、無端状の一対の分離濾布を重ね合わせて巻回しつつ上記分離ロールの回転方向に沿って走行させ、これらの分離濾布の間に供給した被処理物を、上記分離ロールの外周で該分離濾布の間に挟み込んで圧搾するとともに、上記分離ロールの径方向に通気することによって脱水することを特徴とする。
【0007】
このように、上記構成の固液分離装置および固液分離方法においては、一対の分離濾布の間に被処理物が供給されて挟み込まれ、周方向に回転する分離ロールの外周に巻回されて押し付けられることにより圧搾される。このため、分離ロールの回転や、その回転方向に沿った分離濾布の走行が間欠的な場合は勿論、連続的な場合でも、供給された被処理物を確実に処理することができる。
【0008】
そして、こうして回転する分離ロールの外周に押し付けられる際に、被処理物は、該分離ロールの径方向に押圧力を受けるだけでなく、被処理物を挟んで内周の分離ロール側の分離濾布と反対の外周側の分離濾布との走行速度の差、すなわち周速の差によって周方向にも剪断力を受けるため、効率的に圧搾される。さらに、こうして圧搾された被処理物は、分離ロールの径方向に通気されることによって液分が一方の分離濾布を介して分離されるため、濾布に垂直な方向への面圧や線圧および加圧だけでは十分な含液率の低下が困難であった被処理物に対しても、効果的な液分の除去を促すことが可能となる。
【0009】
ここで、このように分離ロールの外周に巻回された一対の分離濾布の間に挟み込まれた被処理物を、分離ロールの径方向に通気することによって脱水するには、例えば分離ロールの内周部に通気のためのエアー等を供給して径方向外周側に吹き出すように通気させればよいが、このとき、分離ロールの内周部に、このように分離ロールの径方向に通気する複数の通気チャンバーを、互いに隔絶して周方向に略等間隔に形成することにより、被処理物を挟んだ一対の分離濾布が分離ロールに巻回された範囲で通気を行うことができて、この範囲以外の脱水に関与しない部分でも通気が行われるのを防ぐことができる。
【0010】
特に、このような場合には、上記分離ロールにおいては、上記一対の分離濾布が巻回された範囲のうちでも、さらに周方向に所定の範囲においてのみ通気されるように制御することにより、通気のためのエアー等の供給量が必要以上に多くなるのを防いで、効率的な脱水を促すことが可能となる。
【0011】
ところで、上記被処理物を上記分離ロールの径方向内周から外周に向けて通気した場合には、分離された液分は、上記一対の分離濾布のうち該分離ロールの外周側に巻回される分離濾布を介して排出されることになるが、ロールは円柱状であるため、排出された液分が外周側の分離濾布の外側を伝って再びこの分離濾布を通して脱水された被処理物に染みこみ、含液率の低下を損なうおそれがある。
【0012】
そこで、そのような場合には、上記一対の分離濾布のうち該分離ロールの外周側に巻回される分離濾布のさらに外周に、上記被処理物から分離された液分をこの外周側の分離濾布から除去する液分除去手段を配設することにより、こうして脱水された液分が再び被処理物に染み込む前に回収して含液率の悪化を防ぐことができる。ここで、このような液分除去手段として、一つには、分離された液分を外周側の分離濾布から掻き取る掻き取り手段を採用することができ、こうして液分を掻き取って除去することによって、該液分が被処理物に再び染み込むのを防いで回収することができる。また、これとは別に、あるいはこれと合わせて、他の一つとして、上記被処理物から分離された液分を吸引する吸引手段を備えることにより、回収することもできる。
【0013】
また、本発明の濾過装置は、複数のロールに巻回されて走行させられる濾布上に、供給手段から被処理物が供給されて、この供給手段よりも上記濾布の走行方向側に備えられた濾過手段により上記被処理物が濾過される濾過装置であって、上記濾過手段よりも上記走行方向側に、上述した本発明の固液分離装置が配設されていて、上記複数のロールのうち上記濾過手段よりも上記走行方向側に位置するロールが上記分離ロールとされるとともに、上記濾布が上記一対の分離濾布のうちの一方とされていることを特徴とする。
【0014】
従って、このような、例えば上述した水平式真空濾過装置等の濾過装置では、その上記濾過手段よりも走行方向側の当該濾過装置のロールが、上記固液分離装置の分離ロールとされ、また濾過装置の上記濾布が固液分離装置の上記一対の分離濾布のうちの一方とされているので、濾過手段によって濾過された濾布上の被処理物は、そのままこの濾過手段よりも濾布の走行方向側すなわち濾過手段の後段に移動させられ、他方の分離濾布との間に挟まれて分離ロールに巻回されることにより圧搾されるとともに通気させられて、上述のように効果的に脱水させられる。
【0015】
このため、この濾過装置の後段に、該濾過装置とは別に遠心分離器やフィルタープレス等の2次脱水装置を用意しなくとも、含液率の少ない被処理物を得ることができて効率的であり、こうして脱水された被処理物を乾燥させる場合などに乾燥装置の負担を軽減することが可能となる。しかも、濾過装置の濾布およびロールを固液分離装置の上記分離濾布および分離ロールとして利用することができるので、経済的でもある。そして、上記固液分離装置が被処理物の連続的な供給にも対応可能であることから、濾布が連続的に走行する水平式真空濾過装置、ドラム式真空濾過装置、およびベルトプレス脱水機のような濾過装置でも確実な被処理物の含水率低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の固液分離装置および固液分離方法によれば、回転する分離ロールに重ね合わされて巻回される一対の分離濾布の間に被処理物が挟み込まれることにより、この分離ロールの径方向による押圧力に加えて、周方向への剪断力を作用させて被処理物を効果的に圧搾することができ、さらにこの径方向に通気することによって液分を効果的に分離することが可能となる。また、本発明の濾過装置によれば、このような固液分離装置を用いて、2次脱水装置を要することなく効率的かつ経済的に、より低い含液率の被処理物を得ることができる。また、後段の乾燥設備へ製品を搬送する際にベルトコンベア、スクリューコンベア等の搬送機器への付着に起因する搬送トラブル等を解決することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1ないし図6は、本発明の固液分離装置および該固液分離装置を備えた濾過装置の一実施形態を示すものである。本実施形態における濾過装置は、図1に示すように、無端状の濾布1が、中心軸線を水平にして互いに平行に配置された複数のロール2に巻回されて周回するように張り渡され、このうちの1つが駆動ロール2Aとされて上記中心軸線回りに回転駆動させられることにより、濾布1のうち装置上部に水平に渡された水平部1Aが矢線Fで示す走行方向に移動するように走行可能とされて、この水平部1Aの走行方向F後方側に配設された供給手段3から供給された被処理物Pが、その直ぐ走行方向F側の駆動ロール2Aとの間に配設された濾過手段4によって濾布1を介して濾過される、水平式真空濾過装置の構成とされている。
【0018】
ここで、上記駆動ロール2Aは、上記水平部1Aの走行方向F側の端部に位置して、図示されない駆動手段によって回転させられることにより、連続的、あるいは所定のピッチで間欠的に濾布1を走行させる。また、濾過手段4において被処理物Pは、水平部1Aにおいて濾布1を支持する図示されない真空トレイにより液分が濾布1を介して吸引されて濾過される。そして、さらにこの濾過手段4よりも上記走行方向F側に、図1に破線で示すように本発明の一実施形態の固液分離装置が配設されている。
【0019】
この実施形態の固液分離装置は、図2に示すように、回転方向Tに向けて周方向に回転させられる分離ロール2Bの外周に、無端状の一対の分離濾布1、5が重ね合わされて巻回されつつ上記回転方向Tに沿って走行可能とされたものとされている。そして、上記分離ロール2Bは、濾過装置におけるロール2のうち、上記走行方向Fにおいて上記駆動ロール2Aの次に位置するロールとされ、また一対の分離濾布1、5のうちの一方は、濾過装置の濾布1がそのままこの分離ロール2Bに巻回されたものとされている。
【0020】
分離ロール2Bは、本実施形態では駆動ロール2Aの下方に間隔をあけて、かつ平面視に互いの周面同士が重なるように配置されている。なお、これら駆動ロール2Aおよび分離ロール2B以外の濾過装置のロール2は、該駆動ロール2Aおよび分離ロール2Bよりも十分小径とされていて、このうち上記走行方向Fにおいて分離ロール2Bの次のロール2Cは、分離ロール2Bの上方に間隔をあけて、かつやはり平面視に互いの周面同士が重なるように配置されている。
【0021】
また、この分離ロール2Bは、図3に示すように概略中空の円筒状とされるとともに、その円筒面部分には該分離ロール2Bの中心軸線方向において上記濾布1の幅の範囲よりも内側に、多数の貫通孔6が開口させられている。一方、分離ロール2Bの概略中空とされた内周部には、中心軸線に直交する断面において該中心軸線部分から半径方向に延びて上記円筒面部分に達する複数の仕切り板7が、周方向に等間隔に、かつ上記貫通孔6が形成された範囲に亙って配設され、さらにこれらの仕切り板7の中心軸線方向両端部はそれぞれ円形の端板によって閉塞されるとともに、このうち一方の端板には、周方向に隣接する一対の仕切り板7間の空間にそれぞれ連通するように、仕切り板7と同数の通気配管8が接続されている。
【0022】
従って、これにより、分離ロール2Bの内周部には、この通気配管8から上記貫通孔6に連通する通気チャンバー9が、仕切り板7および通気配管8と同数、互いに隔絶されて周方向に略均等に等間隔に形成され、各通気配管8に供給されたエアー(圧縮空気)Aやスチーム等の通気流体がこの通気チャンバー9を介して上記貫通孔6から分離ロール2Bの外周に噴出して通気させられることになる。なお、これらの通気配管8に供給されるエアーAは、図示されない供給源からロータリージョイントあるいは多段回転継手を介して、回転する分離ロール2Bに固定された通気配管8に供給されるとともに、このロータリージョイント等と各通気配管8との間には、分離ロール2Bの周方向に分離濾布1、5が巻回された範囲(図2における符号Eの範囲)のうち、さらに所定の回転位置にある通気チャンバー9のみに、エアーAが分離ロール2Bの回転に伴い順次切り替えられながら連続して供給されるように制御する、やはり図示されないバルブ機構が介装されている。
【0023】
なお、一対の分離濾布1、5のうち他方の分離濾布5は、濾布(一方の分離濾布)1と等しい幅とされ、分離ロール2Bの外周には該濾布1の内側に巻回されるとともに、上記駆動ロール2Aとロール2Cの外周においても濾布1の外側に巻回され、さらに、これら駆動ロール2Aおよびロール2Cよりも上方に位置して互いの間隔が駆動ロール2Aとロール2Cとの間隔よりも大きくされた一対のロール10に巻回されて無端状に配設されている。そして、この分離濾布5は、濾布1とともに巻回された部分では該濾布1の走行方向Fに沿って走行可能とされている。
【0024】
また、当該濾過装置および固液分離装置において上記駆動ロール2A以外のロール2、10は、分離ロール2Bを始めとしていずれも駆動手段に連結されない従動ロールとされており、さらにこのうち分離ロール2Bを除いた濾過装置のロール2と固液分離装置のロール10のそれぞれにおいて少なくとも1つには、該ロール2、10を他のロール2、10と離間する方向に付勢するなどして濾布1と分離濾布5の張力を所定の強さに制御する張力制御手段が備えられている。また、固液分離装置において分離ロール2Bの下方には受け皿11が配設されている。
【0025】
このような固液分離装置を備えた濾過装置において、上記濾過手段4により濾過された処理物Pは、図2に示すように駆動ロール2Aの外周から一対の分離濾布1、5の間に挟み込まれて固液分離装置に供給され、これら分離濾布1、5とともに分離ロール2Bに巻回された後、上記ロール2Cにおいて分離濾布5が離れ、さらに走行方向Fにおいてロール2Cの次のロール2において濾布1から剥離して回収される。
【0026】
そして、上記構成の固液分離装置およびこれを用いた本発明の固液分離方法の一実施形態では、被処理物Pは、分離ロール2Bの外周で一対の分離濾布1、5の間に挟み込まれ、特にこの被処理物Pの外側に巻回された濾布1に上記張力制御手段によって所定に張力が与えられていることにより、分離ロール2Bの径方向内周側に押圧力を受けて圧搾される。さらに、この分離ロール2Bでは、通気配管8から、上述のように分離濾布1、5が巻回された範囲のうち、さらに所定の回転位置の範囲の通気チャンバー9を介してエアーAが貫通孔6から連続して噴出させられて分離濾布5、被処理物P、および分離濾布1を通して分離ロール2Bの径方向外周側に通気させられており、従って被処理物Pから圧搾された液分は、分離濾布1を介して該被処理物Pから分離させられ、受け皿11に滴下して回収される。
【0027】
しかも、この被処理物Pを挟み込んで分離ロール2Bに巻回された一対の分離濾布1、5は、被処理物Pの厚さ分だけ分離ロール2Bの中心軸線からの距離が異なり、かつ一方の分離濾布1が駆動ロール2Aに直接巻回されて走行させられるのに対し、他方の分離濾布5はこの一方の分離濾布1と被処理物Pを介して従動的に走行させられるために、分離ロール2Bの外周ではこれら一対の分離濾布1、5に周速差が生じる。従って、この周速差により被処理物Pには、これを周方向に剪断しようとする剪断力が作用し、この剪断力と上記押圧力とによって被処理物Pは効率的に圧搾され、さらに上記通気によっても脱水させられるため、従来は十分な固液分離が困難とされていた被処理物Pに対しても十分な含液率の低減を図ることが可能となる。
【0028】
また、上記固液分離装置および固液分離方法においては、上述のように濾布1の走行に伴い従動的に回転する分離ロール2Bの外周において被処理物Pの脱水が行われるため、濾過装置におけるこの濾布1の走行が連続的なものであっても、間欠的なものであっても、上記押圧力と剪断力とさらに通気とによって効率的な脱水を図ることができる。従って、駆動ロール2Aを連続的または間欠的に回転させて濾布1を走行させる場合は勿論、例えば濾布1をクランプして所定のストロークで走行方向Fに間欠移動させることにより走行させるような水平式真空濾過装置にも対応して適用することが可能である。
【0029】
一方、このような固液分離装置を備えた上記構成の濾過装置においては、濾過手段4よりも走行方向F側の駆動ロール2Aの次のロール2が、上記固液分離装置における分離ロール2Bとされるとともに、上記濾過手段4において被処理物Pを濾過する濾布1自体が固液分離装置の一対の分離濾布1、5のうちの一方とされている。このため、濾過手段4によって濾過された濾布1上の被処理物Pを、そのまま濾布1の走行によって固液分離装置に供給し、上述のように効率的に脱水することができる。
【0030】
従って、この濾過装置の濾過手段4によって濾過した被処理物Pを該濾過装置から一旦回収して、これとは別の遠心分離器やフィルタープレス等の2次脱水装置により脱水したりする必要がなく、また例えば既設の水平式真空濾過装置等の濾過装置にも、多少の改造を加える程度で適用することも可能であって、経済的である。さらに、上述のように十分な含液率の低減を図ることができるため、例えば液分が分離された被処理物Pを後段の乾燥装置において乾燥させたりする場合でも、該乾燥装置における負担を軽減することができる。また、このような後段の乾燥装置に製品を搬送する際にも、ベルトコンベアやスクリューコンベア等の搬送機器に液分の多い被処理物Pが付着することによるトラブル等も解決することが可能となる。
【0031】
また、本実施形態の固液分離装置では、分離ロール2Bの内周部に、貫通孔6を介して分離ロール2Bの径方向に通気する複数の通気チャンバー9が、互いに隔絶して周方向に略等間隔に形成されており、例えば被処理物Pを挟んだ一対の分離濾布1、5が分離ロール2Bに巻回された範囲E以外の、脱水に関与しない部分においても通気が行われて通気のためのエアーAが無駄に消費されるのを防ぐことができ、上記範囲Eの通気チャンバー9によって集中的に被処理物Pを通気することができる。
【0032】
ここで、分離濾布1、5が巻回された範囲Eの回転位置にある通気チャンバー9すべてにエアーAを供給してもよいが、エアーAの供給量が必要以上に多くなり電力等の運転費用や設備費用の増大を抑えるため、所定の回転位置にある通気チャンバー9のみにエアーAを供給するように制御することが好ましく、より効率的に脱水することができる。すなわち、上記バルブ機構によって通気チャンバー9を選択して通気を行うことにより、上記所定の回転位置では分離ロール2Bの回転に関わらずに常に連続して通気が行われて脱水が図られる一方、これ以外の位置では通気が行われないために不要なエアーA等の消費を一層確実に抑えることが可能となる。
【0033】
ところで、本実施形態の固液分離装置では、分離ロール2Bの外周で圧搾された被処理物Pが、その内周側の分離ロール2B外周面における貫通孔6から通気させられるエアーA等の通気流体により液分が分離させられて脱水させられ、この被処理物Pから分離された液分は、上述のように受け皿11に滴下して回収されるようになされているが、特に本実施形態では分離ロール2Bの下側に分離濾布1、5および被処理物Pが巻回されるため、分離させられた液分が受け皿11に滴下せずにこの分離ロール2Bの下側に回り込んで、外周側に位置する分離濾布1を通して再び被処理物Pに染み込むことにより、被処理物Pの含液率の低下を阻害するおそれがある。
【0034】
そこで、このような場合には、上記受け皿11に代えて、あるいは受け皿11と合わせて、図4や図5に示すように上記外周側の分離濾布1のさらに外周側に、被処理物Pから分離された液分をこの外周側の分離濾布1から除去する液分除去手段を配設すればよい。ここで、図4においてこの液分除去手段は、被処理物Pから分離された液分を吸引して回収する吸引手段12であり、この吸引手段12は、例えば図4(B)に示すように円管状の吸引管12Aに、この吸引管12Aの中心線に平行に延びる複数のスリット12Bを、径方向に貫通するように、かつこの中心線方向には間隔をあけて1列に形成したものであり、該吸引管12Aの一端は閉塞されるとともに、他端にはエアーAを吸引する図示されないポンプ等の吸引装置が接続されている。
【0035】
図4に示す液分除去手段(吸引手段12)では、このような吸引管12Aが、図4(A)に示すようにその中心線を分離ロール2Bの中心軸線に平行として、上記スリット12Bを外周側の分離濾布1に対向させ、あるいは接するように、分離ロール2Bの下側に周方向に複数間隔をあけて配設されている。従って、この分離ロール2Bの下側に回り込んだ液分は、この吸引手段12における吸引管12Aのスリット12BからエアーAとともに吸い込まれて回収されるので、この液分が分離濾布1を通して再び被処理物Pに染み込むのを防ぐことができ、より確実に被処理物Pの含液率の低減を図ることが可能となる。
【0036】
また、このような吸引手段12よりなる液分除去手段に代えて、あるいはこれと合わせて、図5に示すように、外周側の分離濾布1のさらに外周側に、被処理物Pから分離された液分をこの分離濾布1から掻き取って除去する掻き取り手段13を液分除去手段として配設してもよい。この掻き取り手段13は、例えばゴム板等の弾性を有する長方形板材よりなるスクレーパ13Aであって、その一側縁を撓ませて分離濾布1の外周に摺接させるように配設されている。ここで、図5ではこのようなスクレーパ13Aが、分離ロール2Bの中心軸線の直下よりも僅かに分離濾布1の走行方向F後方側に配置され、しかも上記一側縁がこの走行方向F後方側に撓むようにして分離濾布1外周に接触させられている。
【0037】
従って、このような液分除去手段(掻き取り手段13)においても、分離ロール2Bの下側に回り込んだ液分は、分離濾布1の走行に伴いこの掻き取り手段13のスクレーパ13Aに掻き取られるように該分離濾布1の表面から除去されて、スクレーパ13Aを伝って滴下するので、これを上記受け皿11等によって回収することにより、該液分が再び被処理物Pに染み込んだりするのを防ぐことができる。なお、図5では1つの掻き取り手段13しか示されていないが、複数の掻き取り手段13を分離ロール2Bの周方向に間隔をあけて設けてもよい。
【0038】
一方、上記実施形態の濾過装置では、駆動ロール2Aが濾過手段4の直ぐ走行方向F側に配設されていて、固液分離装置の分離ロール2Bはその次のロール2とされていたが、例えば図6に示す水平式真空濾過装置のように、濾過手段4の走行方向F側に位置して濾布1の上記水平部1Aを形成するロール2を固液分離装置の分離ロール2Bとして、駆動ロール2Aはこれとは別に、例えば固液分離装置よりも走行方向F側で供給手段3よりも走行方向F手前側の、濾布1が濾過装置の下部を周回する位置に設けてもよい。すなわち、水平式真空濾過装置のような複数のロール2に巻回された濾布1上に被処理物Pが供給されて濾過手段4により濾過される濾過装置においては、濾過された被処理物Pが濾布1上にある範囲では、いずれのロール2を分離ロール2Bとしても本発明の固液分離装置を配設することが可能となる。ただし、図6に示した場合には、濾過手段4において被処理物Pを濾過する濾布1は内周側の分離濾布として分離ロール2Bに接して巻回されるとともに、固液分離装置の分離濾布5が外周側の分離濾布として被処理物Pを挟んで分離ロール2Bの外周側に巻回されることになる。
【0039】
なお、上記駆動ロール2Aと分離ロール2Bとを共用することも可能ではあるが、本実施形態の固液分離装置のように分離ロール2Bの外周面からエアーAを噴出して通気を行う場合には、これにより分離ロール2Bと濾布1との摩擦が低減して滑りが生じ、濾布1を確実に所定の速度やピッチで走行させることが困難となるおそれがあるため、濾布1を走行させる駆動ロール2Aと固液分離装置の分離ロール2Bとは別に設けられるのが望ましい。ただし、例えば十分な圧搾圧力を作用させることにより濾布1の走行のための十分な摩擦力を発生することができるなら、このように駆動ロール2Aと分離ロール2Bとを共用することも可能であり、すなわちいずれのロール2を分離ロール2Bとしても本発明の固液分離装置を配設することはやはり可能である。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例を挙げてその効果を実証する。本実施例では、図1ないし図3に示した実施形態の濾過装置を用いて、固形物の粒子径が2.5μm〜30μmである4種の被処理物P(サンプルA〜D)を濾過手段4において真空脱水のみにより濾過した含液率の異なるケーキを、そのまま該濾過装置に備えた上記実施形態の固液分離装置に供給して液分を分離し、その際に分離ロール2Bから通気するエアーAの圧力を変化(増大)させて、この固液分離装置で脱水されたケーキの含液率を測定した。
【0041】
ただし、この実施例において用いた分離濾布1、5は通気度0.5〜5cc/sec/cm、分離ロール2Bは円筒面部分に直径5mmの貫通孔6が8mmピッチで穿孔されたものであり、また固液分離装置におけるケーキ厚みは3〜10mm、脱水時間は10〜30secであり、圧搾圧力は0.1〜0.3MPaGであった。
【0042】
この結果を、各サンプルA〜Dごとに真空脱水のみの含液率と合わせて次表1〜4に示す。また、図7には、サンプルA〜Dをまとめて、エアー圧力とケーキ含水率との関係とその傾向とを示す。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
これら表1〜4および図7の結果より、本発明の実施例によれば、真空脱水のみのケーキよりも含液率が低下していることは明らかであり、特にサンプルDに至ってはケーキ含液率が真空脱水のみと比べて半分近くにまで低減していることが分かる。また、エアー圧力を大きくするのに従いケーキ含液率も大きく低下する傾向にあることも分かるが、その含液率の低下率はサンプルによって異なり、また徒にエアー圧力を大きくしてもケーキを通過するエアー量が多いと全体のエネルギー効率が悪くなることにもなる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の濾過装置の一実施形態を示す概略図である。
【図2】図1に示す濾過装置に用いられる、本発明の固液分離装置の一実施形態を示すものである。
【図3】図2に示す固液分離装置の分離ロール2Bを示す部分破断斜視図である。
【図4】図2に示す固液分離装置の変形例を示す(A)分離ロール2B下側の部分断面図、(B)吸引管12Aの斜視図である。
【図5】図2に示す固液分離装置の他の変形例を示す分離ロール2B下側の部分断面図である。
【図6】図1に示す濾過装置の変形例を示す概略図である。
【図7】本発明の実施例において、各サンプルA〜Dにおけるエアー圧力とケーキ含液率との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 濾布(分離濾布)
2、10 ロール
2A 駆動ロール
2B 分離ロール
3 供給手段
4 濾過手段
5 分離濾布
9 通気チャンバー
12 吸引手段
13 掻き取り手段
P 被処理物
A エアー
F 濾布1の走行方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に回転させられる分離ロールの外周に、無端状の一対の分離濾布が重ね合わされて巻回されつつ上記分離ロールの回転方向に沿って走行可能とされ、これらの分離濾布の間に供給された被処理物が、上記分離ロールの外周で該分離濾布の間に挟み込まれて圧搾されるとともに、上記分離ロールの径方向に通気されることによって脱水させられることを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
上記分離ロールの内周部には、該分離ロールの径方向に通気する複数の通気チャンバーが、互いに隔絶されて周方向に略等間隔に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項3】
上記分離ロールにおいては、上記一対の分離濾布が巻回された範囲のうち周方向に所定の範囲においてのみ通気されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の固液分離装置。
【請求項4】
上記被処理物は上記分離ロールの径方向内周から外周に向けて通気されるとともに、上記一対の分離濾布のうち該分離ロールの外周側に巻回される分離濾布のさらに外周には、上記被処理物から分離された液分をこの外周側の分離濾布から除去する液分除去手段が配設されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の固液分離装置。
【請求項5】
上記液分除去手段が、分離された液分を掻き取る掻き取り手段であることを特徴とする請求項4に記載の固液分離装置。
【請求項6】
上記液分除去手段が、分離された液分を吸引する吸引手段を備えることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の固液分離装置。
【請求項7】
複数のロールに巻回されて走行させられる濾布上に、供給手段から被処理物が供給されて、この供給手段よりも上記濾布の走行方向側に備えられた濾過手段により上記被処理物が濾過される濾過装置であって、上記濾過手段よりも上記走行方向側には、請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の固液分離装置が配設されていて、上記複数のロールのうち上記濾過手段よりも上記走行方向側に位置するロールが上記分離ロールとされるとともに、上記濾布が上記一対の分離濾布のうちの一方とされていることを特徴とする濾過装置。
【請求項8】
周方向に回転させられる分離ロールの外周に、無端状の一対の分離濾布を重ね合わせて巻回しつつ上記分離ロールの回転方向に沿って走行させ、これらの分離濾布の間に供給した被処理物を、上記分離ロールの外周で該分離濾布の間に挟み込んで圧搾するとともに、上記分離ロールの径方向に通気することによって脱水することを特徴とする固液分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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