説明

固相担持コバルト・カルボニル錯体を用いたタンパク質の精製方法

【課題】新規なタンパク質の精製法を提供する。
【解決手段】新規な固相担持コバルト・カルボニル錯体とアルキンタグを有するリガンドとを用いることを特徴とするタンパク質の精製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固相担持コバルト・カルボニル錯体を用いたタンパク質の精製法に関する。より詳細には、本発明は、アルキンタグを有するリガンドを用いてタンパク質を精製する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質の分離・精製は、生化学、分子生物学、ケミカルバイオロジー、プロテオミクス等の分野の最も基礎的な手技の一つである。タンパク質は種々のアミノ酸が脱水縮合した集合体であり、これに糖鎖や脂質が結合している場合がある。従って、これを分離・精製するときには、タンパク質の持つ、等電点、分子量、溶解度、特別な物質への親和性等を利用する。これまでに、多くのタンパク質の分離・精製法が知られており、それらは、硫安沈殿等の溶解度の差を利用した沈殿分離、イオン交換クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、吸着カラムクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー等のクロマトグラフィーを包含する。タンパク質の分離・精製にあたっては、目的とするタンパク質の性質と夾雑物の種類により、上記精製法の何れか又はそれらを組み合わせた方法が採られる。医学・薬学・農学等のライフサイエンスの分野では、ある特定の生理的な機能に関与する標的タンパク質に対して高い親和性を有する特定の化合物(リガンド)を用いて、標的タンパク質を細胞抽出液のような複雑な混合物の中から精製し、その構造を決定することが必要となることがあり、このような目的のためには、アフィニィークロマトグラフィーが広く用いられている。しかし、従来のアフィニティークロマトグラフィーにおいては、リガンドを樹脂などの固相に共有結合で直接担持して用いるため、リガンドと標的タンパク質との結合能が低下し、十分な結果が得られない場合がある。又、固相に結合したリガンドは膜透過性が低いため、標的タンパク質と結合させるためには細胞や組織等の試料を予め粉砕したり抽出したりして前処理を施した後にアフィニティークロマトグラフィーに付す必要がある。しかし、生理的な機能に関与しているタンパク質は、生理的条件では、例えば膜に埋め込まれていたり、ホモダイマーやヘテロダイマー等の多量体を構成し、細胞内のタンパク質や脂質などの他の成分と複合体を作って、複雑な立体構造を形成している場合が多く、これらのタンパク質は破砕や抽出等の前処理を施すことにより本来の構造とは別の構造に変化してしまい、本来の結合能を保持していないために十分な結果が得られない場合がある。新しい原理に基づくタンパク質の分離・精製法は、既存の方法では困難な分離・精製を可能にする又はより容易な分離・精製法を提供する可能性があるため、そのような方法の開発が待ち望まれている。
【0003】
ところでアルキンとジコバルトオクタカルボニルが選択的に反応してアルキン―ジコバルトヘキサカルボニル錯体が生成することは有機化学の分野では良く知られており、この反応はアルキンの保護、生成した複合体を中間体として用いるNicholas反応やPauson-Khand反応等の有機合成反応に応用されている(非特許文献1〜5)。これらの反応は固相上でも進行することが知られている(非特許文献6)。これらの反応は通常は有機溶媒中・加熱条件下で行われ、タンパク質を扱う一般的条件である水溶液中・低温(例えば氷冷下)での反応は知られていない。最近、Brownらはアルキンを導入したリン脂質を、ジコバルトヘキサカルボニル錯体に誘導し、固相に担持したホスフィンと結合させて釣り上げる方法を発表した(非特許文献7)。しかし、この方法においても、アルキンを含有するリン脂質とジコバルトオクタカルボニルの反応は有機溶媒中・加熱条件下で行われており、タンパク質の精製に応用できる方法ではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Nicholas, K. M.; Pettit, R. Tetrahedron Lett. 1971, 12, 3475-3478
【非特許文献2】Sugihara, T.; Yamaguchi, M.; Nishizawa, M. Chem. Eur. J. 2001, 7, 589-1595
【非特許文献3】Teobald, B. J. Tetrahedron 2002, 58, 4133-4170
【非特許文献4】Diaz, D. D.; Betancort, J. M.; Martin, V. S. Synlett 2007, 343-359
【非特許文献5】Park, J. H.; Chang, K.-M.; Chung, Y. K. Coord. Chem. Rev. 2009, 253, 2461-2480
【非特許文献6】Comely, A. C.; Gibson, S. E.; Hales, N. J.; Johnstone, C.; Stevenazzi, A. Org. Biomol. Chem. 2003, 1, 1959-1968
【非特許文献7】Milne, S. B.; Tallman, K. A.; Serwa, R.; Rouzer, C. A.; Armstrong, M. D.; Marnett, L. J.; Lukehart, C. M.; Porter, N. A.; Brown, H. A. Nat. Chem. Biol. 2010, 6, 205-207
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑み、新規なタンパク質の精製法を提供すること、特に上記問題点を克服したタンパク質精製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記従来技術の問題点を克服するために鋭意研究した結果、アルキンタグを有し標的タンパク質に結合可能なリガンド及びアルキンタグと反応性の固相担持コバルト・カルボニル錯体を用いることにより、目的のタンパク質の精製を容易に行うことができることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は以下を包含する。
(1) 固相担持コバルト・カルボニル錯体と、アルキンタグを有するリガンドとを用いることを特徴とするタンパク質の精製方法。
(2) 前記アルキンタグを有するリガンドと、前記タンパク質とを結合させるステップを含む、上記方法。
(3) 以下のステップ(i)〜(iv):
(i)アルキンタグを有するリガンドを用意するステップ、
(ii)前記アルキンタグを有するリガンドと、該リガンドに結合可能であるタンパク質とを結合させてリガンド−タンパク質複合体を生成するステップ、
(iii)固相担持コバルト・カルボニル錯体と、前記ステップ(ii)の前記リガンド−タンパク質複合体とを反応させてリガンド−タンパク質複合体結合固相担持コバルト・カルボニル錯体を生成するステップ、及び
(iv)ステップ(iii)のリガンド−タンパク質複合体結合固相担持コバルト・カルボニル錯体からタンパク質を解離するステップ
を含む、上記方法。
(4) 以下のステップ(i)〜(iv):
(i)アルキンタグを有するリガンドを用意するステップ、
(ii)前記アルキンタグを有するリガンドと、固相担持コバルト・カルボニル錯体とを反応させてリガンド結合固相担持コバルト・カルボニル錯体を生成するステップ、
(iii)前記ステップ(ii)の前記リガンド結合固相担持コバルト・カルボニル錯体と、該リガンドに結合可能であるタンパク質とを結合させてリガンド−タンパク質複合体結合固相担持コバルト・カルボニル錯体を生成するステップ、及び
(iv)ステップ(iii)のリガンド−タンパク質複合体結合固相担持コバルト・カルボニル錯体からタンパク質を解離するステップ
を含む上記方法。
(5) 以下のステップ(i)〜(iv):
(i)アルキンタグを有するリガンドを用意するステップ、
(ii)前記アルキンタグを有するリガンドと、該リガンドに結合可能であるタンパク質とを結合させてリガンド−タンパク質複合体を生成するステップ、
(iii)コバルト・カルボニル錯体と、前記ステップ(ii)の前記リガンド−タンパク質複合体とを反応させてリガンド−タンパク質複合体結合コバルト・カルボニル錯体を生成するステップ、
(iv)ステップ(iii)のリガンド−タンパク質複合体結合コバルト・カルボニル錯体と固相に担持したホスフィンを反応させてリガンド−タンパク質複合体結合固相担持コバルト・カルボニル錯体を生成するステップ、及び
(v)ステップ(iv)のリガンド−タンパク質複合体結合固相担持コバルト・カルボニル錯体からタンパク質を解離するステップ
を含む上記方法。
(6) 洗浄を行うステップをさらに含む、上記方法。
【0008】
(7) 固相担持コバルト・カルボニル錯体が下記の式
【化1】

[式中、灰色の丸は固相を表し、Aはスペーサーを表し、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に1以上の低級アルキル、低級アルコキシ若しくはハロゲンで置換されている又は置換されていないアリールである]
により表されるものである、上記いずれかの方法。
【0009】
(8) 下記の式
【化2】

[式中、灰色の丸は固相を表し、黒丸はリガンドを表し、Aはスペーサーを表し、Bはリンカーを表し、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に1以上の低級アルキル、低級アルコキシ若しくはハロゲンで置換されている又は置換されていないアリールであり、並びにリガンドはタンパク質と結合可能なものである。]
により表される、タンパク質を精製するためのリガンド結合固相担持コバルト・カルボニル錯体。
【0010】
(9) 下記の式
【化3】

[式中、灰色の丸は固相を表し、Aはスペーサーを表し、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に1以上の低級アルキル、低級アルコキシ若しくはハロゲンで置換されている又は置換されていないアリールである]
により表される、固相担持コバルト・カルボニル錯体と、下記の式:
【化4】

[式中、黒丸はリガンドを表し、Bはリンカーを表し、≡はアルキニル基を表す]
であるアルキンタグを有するリガンドとを含んでなる、タンパク質の精製用のキット。
【0011】
本発明の一の実施形態において、本発明の固相担持コバルト・カルボニル錯体、及びアルキンタグを有するリガンドを含んでなる、タンパク質の精製用のキットを提供する。このキットはタンパク質の精製に用いる他の成分を含むものとすることもできる。
【0012】
本発明の一の応用において、本発明のアルキンタグを有するリガンドが標的タンパク質と結合する場合、本発明のタンパク質の精製方法によって、標的タンパク質―リガンド複合体を形成および回収・精製し、引き続いて質量分析装置等により標的タンパク質―リガンド複合体の構造解析を行うことにより、標的タンパク質の構造決定、又はリガンド結合部位の構造決定を行うこともできる。このときリガンドを標的タンパク質と共有結合させるために、リガンドに例えば光反応性基を導入し、光アフィニティーラベル法を応用することにより、標的タンパク質とアルキンタグを有するリガンドとを共有結合により強固に結合させることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、比較的小さなアルキンタグを有するリガンドと標的タンパク質を反応させた後に固相に結合させ、夾雑物を含む溶液部分と固相部分とを分離し、その後標的タンパク質とリガンドとの結合を解離させる条件又はアルキンとコバルト・カルボニル錯体との結合を解離させる条件に付すことにより、標的タンパク質を単離・精製するため、通常のアフィニティークロマトグラフィーではリガンドと標的タンパク質の親和性が十分ではない、又は前処理により標的タンパク質が変性する等の理由により十分な結果が得られない場合にも十分な結果を得ることができる可能性がある。又、細胞や組織等に発現した生理的機能を担う標的タンパク質に、細胞や組織等を破砕することなく、アルキンタグを有するリガンドをより生理的な温和な条件で反応させることにより、標的タンパク質を変性の極力少ない天然の(native)状態又は非変性状態で固相に結合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の固相担持コバルト・カルボニル錯体を用いた精製方法のスキームを示す。
【図2】本発明の固相担持コバルト・カルボニル錯体を用いた別の精製方法のスキームを示す。
【図3】本発明の固相担持コバルト・カルボニル錯体を用いた別の精製方法のスキームを示す。
【図4】固相担持コバルト・カルボニル錯体の調製スキームの一例を示す。
【図5】固相担持コバルト・カルボニル錯体の調製スキームの一例を示す。
【図6】本発明の精製方法を用いたサンプルのSDS−PAGEの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明によれば、アルキンタグを有するリガンドとタンパク質を結合させて複合体を形成し、次いで該複合体中のアルキンタグを固相担持コバルト・カルボニル錯体と反応させてリガンド−タンパク質複合体結合固相担持コバルト・カルボニル錯体を生成し、これを利用することにより、目的のタンパク質を分離することができる。
【0016】
また、本発明によれば、アルキンタグを有するリガンドと固相担持コバルト・カルボニル錯体とを反応させてリガンド結合固相担持コバルト・カルボニル錯体を生成し、これに目的のタンパク質を結合させることにより、目的のタンパク質を分離することもできる。
【0017】
また、本発明によれば、アルキンタグを有するリガンドとタンパク質を結合させて複合体を形成し、次いでコバルト・カルボニル錯体を反応させてリガンド―タンパク質複合体結合コバルト・カルボニル錯体を生成し、次いで該複合体中のコバルト・カルボニル錯体を固相に担持したホスフィン配位子と反応させてリガンド−タンパク質複合体結合固相担持コバルト・カルボニル錯体を生成し、これを利用することにより、目的のタンパク質を分離することもできる。
【0018】
本発明は、アルキンタグを有するリガンドと、そのアルキンタグと反応性の固相担持コバルト・カルボニル錯体とを利用した新規のタンパク質精製方法を提供するものであり、上記の反応により容易に、リガンド結合固相担持コバルト・カルボニル錯体を得ることができるという利点を有する。該リガンドとタンパク質との結合親和性を利用して形成された固相担持されたタンパク質は、ろ過、遠心分離、又は洗浄液を用いた洗浄により、容易に夾雑物と分離することができる。
【0019】
固相担持コバルト・カルボニル錯体
本明細書において用いる「固相担持コバルト・カルボニル錯体」との用語は、固相に担持されたコバルト・カルボニル錯体をいう。コバルト・カルボニル錯体は固相に結合した配位子とコバルトカルボニルCo(CO)との反応によって生成されうる。配位子は固相に直接担持されてもよいし、又はスペーサーを介して担持されてもよいが、好ましくはスペーサーを介して固相に担持される。
【0020】
固相担持コバルト・カルボニル錯体は、下記の式
【化5】

[式中、灰色の丸は固相を表し、Lは任意の配位子を表し、Aは任意のスペーサーを表す]
により表すことができる。
【0021】
本明細書において用いる「スペーサー」は、何ら限定されず如何なる種類のものとすることもできるが、一般に、一方で、担体基材上の適切な反応性官能基と反応し、もう一方で、コバルト・カルボニルと配位結合するための配位子を有する基Lと反応することによって二官能有機化合物から誘導され得るスペーサーである。
【0022】
このようなスペーサーとして用いるための二官能有機化合物は好ましくは一端に固相担体への結合のための反応基を有し、他の一端に、配位子上の官能基と反応しうる官能基を有する。該二官能有機化合物の官能基としては、例えば、アミノ、カルボキシル、チオール、ハロゲン、及びエポキシなどの基から選択される反応性官能基が挙げられる。
【0023】
上記の式−A−で表されるスペーサーは1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基、あるいは、そのなかの任意の位置に1若しくは複数(例えば2〜10)の酸素原子、窒素原子、硫黄原子、−CONH−、−NHCO−、及び/又はフェニレンを含んでもよいアルキレン基であり、該アルキレン基は1以上の低級アルキル、低級アルコキシ、若しくはハロゲンなどの置換基で置換されていてもよい。
【0024】
配位子Lは、コバルト・カルボニルと配位結合するものであれば特に限定されず、どのような配位子を用いることもできる。配位子は、例えば、トリアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、トリアルキルホスフィンなどのホスフィンが好ましい。トリアリールホスフィンは、例えばトリフェニルホスフィンであり、フェニル基は1若しくは複数の低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、シアノ、アシル、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、アミド、アルキルオキシカルボニルなどの置換基を有してもよい。アルキルジアリールホスフィンは、例えばメチルジフェニルホスフィンであり、フェニル基は1若しくは複数の低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、シアノ、アシル、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、アミド、アルキルオキシカルボニルなどの置換基を有してもよい。ジアルキルアリールホスフィンは、例えばジメチルフェニルホスフィンであり、フェニル基は1若しくは複数の低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、シアノ、アシル、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、アミド、アルキルオキシカルボニルなどの置換基を有してもよい。トリアルキルホスフィンは例えばトリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィンなどのトリ(C1〜C8アルキル)ホスフィンであり、アルキル基は上記例示のような置換基を有していてもよい。
【0025】
好ましい配位子Lは、トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィンであり、以下の式により表される。
【0026】
【化6】

[式中、Ar、Ar、及びArは、独立に、置換されている又は置換されていないアリールである]。
【0027】
本明細書において用いる「アルキル」という用語は、置換された又は置換されていない、炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の飽和炭化水素をいう。
【0028】
本明細書において用いる「低級アルキル」という用語は、置換された又は置換されていない、1〜8個、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝鎖の飽和炭化水素をいう。代表的な低級アルキル基としては、限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ネオヘキシルなどが挙げられる。
【0029】
本明細書において用いる「アルキレン」という用語は、置換された又は置換されていない、1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の二価炭化水素基を言う。アルキレン基の例としては、限定するものではないが、メチレン、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレンなどが挙げられる。
【0030】
本明細書において用いる「アルキン」とは、置換された又は置換されていない、1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個の炭素原子を有し、少なくとも1つの三重結合を含有する、直鎖又は分枝鎖の不飽和炭化水素を言う。アルキンの例としては、限定するものではないが、アセチレン、プロピン、1-ブチン、2-ブチン、イソブチン、sec-ブチン、1-ペンチン、2-ペンチン、イソペンチン、1-ヘキシン、2-ヘキシン、3-ヘキシン、イソヘキシン、ヘプチン、オクチン、ノニン、デシンなどが挙げられる。
【0031】
本明細書において用いる「アリール」という用語は、置換された又は置換されていない、6〜14員環の、単環式、二環式、又は三環式の芳香族炭化水素環系をいう。アリール基の例としては、置換された又は置換されていない、フェニル及びナフチル基が挙げられる。本明細書中では、アリール基をArと表し、フェニル基をPhと表すことがある。
【0032】
置換基の例は上記例示のもの以外に、例えば以下の置換基を例示することができる。
低級アルコキシは、一般式−OR(ここでRは低級アルキル基である)で表される、置換された又は置換されていない、直鎖又は分枝鎖の酸素原子と結合した炭化水素をいう。代表的な低級アルコキシはC〜Cアルコキシであり、限定するものではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどである。
【0033】
ハロゲンは−F、−Cl、−Br、−Iなどであり、
アシルは、一般式−C(=O)R(ここでRは低級アルキル基である)で表される、置換された又は置換されていない、直鎖又は分枝鎖の酸素原子と結合した炭化水素をいう。代表的なアシル基はC〜Cアシルであり、限定するものではないが、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイルなどであり、
ヒドロキシは−OHであり、
ニトロは−NOであり、
シアノ(ニトリル、カルボニトリル)は−CNであり、
アルキルオキシカルボニルは一般式−COOR、(ここでRはアルキル基である)である。アルキルオキシカルボニル基の例としては、−C(=O)OCH、−C(=O)OCHCHなどが挙げられるが、これらに限らない、
アミノは一般式−NRで表され、ここでR及びRは独立に、アミノ置換基、例えば、水素、上記に定義したアルキル基又はアリール基であり、あるいは環式アミノ基の場合には、RとRは、それらが結合している窒素原子と一緒に4〜8個の環原子を有する複素環を形成する。アミノ基の例としては、−NHCH、−NHCH(CH、−N(CH、−N(CHCH、及び−NHPhが挙げられ、環式アミノ基の例としては、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、モルホリノが挙げられるが、これらに限らない、
アミドは一般式−C(=O)NRで表され、ここでR及びRは独立に、アミノ基について定義したようなアミノ置換基である。アミド基の例としては、限定するものではないが、−C(=O)NH、−C(=O)NHCH、−C(=O)N(CH、−C(=O)NHCHCH、及び−C(=O)N(CHCH、並びに、R及びRが、それらの結合している窒素原子と一緒になって、複素環式構造を形成するアミド基、例えば、ピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニルにおける前記アミド基が挙げられる。
【0034】
本明細書の固相担持コバルト・カルボニル錯体の調製方法のスキーム例を図4及び5に示す。本発明のコバルト・カルボニル錯体が結合するための固相担体は、特に限定されないが、コバルト・カルボニル錯体と結合しうるように表面に化学結合基を有する担体、例えば、ガラス、シリカ、シリカゲル、珪藻土等のシリカ含有固相、セルロース、アセチルセルロースのようなセルロース誘導体等、ポリエチレン、ポリエチレン誘導体、ポリビニルアルコールのようなポリビニルポリマー、ポリスチレン―ポリエチレングリコールグラフト共重合体、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール誘導体等のポリマー、アガロース、アガロース誘導体等の多糖類などが挙げられる。これらの物質を粒子状や多孔性膜状などの任意の形状に加工して固相を形成することができる。結合は、共有結合、イオン性結合、分子間力結合等の化学結合のうち如何なる様式で結合していてもよい。化学結合基は、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシル、チオール、などを含む。固相は薬品での、例えばジメチルジクロロシランのようなシラン化合物での表面処理、溶剤系及びエマルジョン系表面処理、電子表面処理、粉末表面処理、金属表面処理等の表面処理法により処理されたものを用いることができる。表面改質シリカとしてはグリシジルプロポキシ変性多孔質シリカ、アミノプロピル変性シリカ、及びメルカプトプロピルシリカなどが挙げられる。あるいは、適切なデキストラン変性又はブタジエン−ビニルコポリマー変性シリカを担体材料として使用することができる。
【0035】
固相担持コバルト・カルボニル錯体の調製方法
本発明の固相担持コバルト・カルボニル錯体は、(Co(CO))のコバルト・カルボニルと、固相に担持された配位子Lとを配位結合させることにより調製することができる。固相に担持された配位子と配位結合したコバルト・カルボニル錯体の例としては、(Co(CO))とトリフェニルホスフィニル基との錯体が好ましい。
【0036】
本発明の固相担持コバルト・カルボニル錯体中に包含される、配位子を有する固相担体は、例えば2以上の反応性置換基を有する二価のスペーサー分子を使用し、該スペーサー分子上の一の反応性置換基を配位子上の適切な官能基と反応し、スペーサー分子上の別の反応性置換基を固相担体と反応させることにより調製することができる。次いで前記の配位子を有する固相担体と(Co(CO))のコバルト・カルボニルとを反応させて固相担持コバルト・カルボニル錯体を得ることができる。ここで行う反応の順番は当業者であれば所望の目的化合物に応じて適宜選択することができる。また、2以上の反応性置換基を有する二価のスペーサー分子において、所望の一の反応性置換基を適当な保護基で保護し、別の非保護反応性置換基を反応させ、次いで適当な条件で前記保護した基の脱保護を行い、脱保護された反応性置換基を反応させることができる。
【0037】
ここで本明細書において用いる「保護基」とは、1つ以上の特定の合成手順中の望ましくない反応から、あるいは保護しなければ反応する部分を保護し、かつ所定の反応条件下で選択的に除去できる当技術分野で知られている化学基を意味する。保護基の例としては、限定するものではないが、トリメチルシリル、ジメチルヘキシルシリル、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル、トリチル、アルキル基、アシル基、メタンスルホニル、ベンジルオキシカルボニル、p-トルエンスルホニル及びt-ブトキシカルボニル基が挙げられる。
【0038】
一例として、図1、図2又は図3を参照しながら、本発明の固相担持コバルト・カルボニル錯体(II)は、固相に担持したホスフィン(I)とジコバルトオクタカルボニル(Co(CO))とを例えばTHF、ジエチルエーテル、クロロホルム、ジクロロメタン、メタノール、エタノール等の溶媒中、0℃〜溶媒の沸点で反応させることにより調製することができる。
【0039】
本発明に用いるコバルト・カルボニル錯体と配位結合するための配位子は、例えばトリアリールホスフィニル基、アルキルジアリールホスフィニル基、ジアルキルアリールホスフィニル基、又はトリアルキルホスフィニル基であり、トリフェニルホスフィニルのようなトリアリールホスフィニル基が好ましい。ホスフィニル基は所望により調製したものを用いることができ、また予め固相に担持されたものを用いることもできる。固相に担持されたホスフィンとしては、例えば市販の2−ジフェニルホスフィノエチルシリカゲル(2-Diphenylphosphinoethyl functionalized silica gel、Sigma-Aldrich社)を用いることができる。
【0040】
また、固相に担持したホスフィンとしては、図4又は図5を参照しながら、例えばIaと1級アミノ基を持つ固相(Ib)とを反応させて調製したものを用いることができる(図4を参照されたい)。あるいは、1級アミノ基を持つ固相(Ib)と式Ie
【化7】

で表わされる化合物を例えば1−エチル−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド等の縮合剤の存在下にDMF等の溶媒中で反応させて調製したものを用いることができる(図5を参照されたい)。ここにアミノ基を持つ固相(Ib)としては、例えば市販の3−アミノプロピルシリカゲル(3-Aminopropyl-functionalized silica gel、Sigma-Aldrich社)、TentaGel(登録商標) S-NH2 (ハイペップ研究所)等を用いることができる。IbとIa又はIeを結合するための化学基としてはカルボキシル基とアミノ基の他にチオール基、ヒドロキシ基、ビニル基、エポキシ基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、リン酸基、マレイミド基、N−ヒドロキシマレイミド基、N−ヒドロキシスクシンイミド基、ビニルスルホン基などを例示することができる。
【0041】
アルキンタグを有するリガンド
本明細書において用いる「アルキンタグを有するリガンド」との用語は、少なくとも1つのアルキンタグを有し、少なくとも1つのリガンドを有する化合物をいう。好ましくはアルキンタグを有するリガンドは、少なくとも1つの末端にアルキンタグを有し、少なくとも1つの別の末端にリガンドを有する、少なくとも2以上の末端を有する化合物である。
【0042】
一例としてアルキンタグを有するリガンドは以下の式により示されるものである:
【化8】

[式中、黒丸はリガンドを表し、Bは任意のリンカーを表す]。
【0043】
ここでリンカーBは、二価の基であれば何ら限定されず如何なる種類のものとすることもできるが、一般に、一方で、リガンド上の適切な反応性官能基と反応し、もう一方で、リンカーと結合するための反応基を有するアルキン化合物と反応することのできる二価のリンカーである。
【0044】
上の式のアルキンタグを有するリガンドにおけるBは、例えば式−[(CH−X−(CH−Y−(CH−で表され、ここでX及びYは、それぞれ独立に−CONH−、−NHCO−、−CO−、−COO−、−OC(O)−、−CH=CH−、−C≡C−、−NH−、−O−、−S−及び単結合からなる群より選択され、m、n、o、pはそれぞれ独立に、0〜30、より好ましくは0〜20、さらに好ましくは0〜10であり得る。本発明のアルキンタグを有するリガンドの例としては、−(CH−COO−CH−、−(CH−CONH−CH−、−(CHCH−O)−CHCHNHCOOCH−、−(CHCH−O)−CHCHNHCONHCH−、−(CH−CONH−(CHCH−O)−CHCHNHCOOCH−、−(CH−CONH−(CHCH−O)−CHCHNHCONHCH−等が挙げられる。ここでm、nはそれぞれ独立に、好ましくは1〜30、より好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10であり得る。
【0045】
本明細書において用いる「リガンド」は、目的の標的タンパク質と相互作用、共有または非共有結合、会合又は複合体形成する任意の物質をいい、その例としては基質、補酵素、調節因子、アゴニスト、アンタゴニスト、低分子化合物、蛍光分子、フルオロホア、光反応性基を有する化合物、放射性同位体を含む分子、イオン、有機化合物、ビタミン、ビオチン、薬剤及び作用物質、神経伝達物質、サイトカイン、ケモカイン、レクチン、結合因子、受容体結合因子、受容体、増殖因子、高分子、ホルモン、核酸、糖鎖、アミノ酸、脂質、抗体、抗体結合フラグメント及びこれらの擬似体若しくは誘導体などが挙げられる。本発明において用いるリガンドは1種又は複数種の目的タンパク質に選択的及び/又は特異的に結合するものとすることができる。また、リガンドの結合対象は、既知のタンパク質であっても未知のタンパク質であってもよい。すなわち目的のタンパク質とは、上述したリガンド分子が相互作用する機能を有するタンパク質であれば特に限定されない。タンパク質はまた、細胞、オルガネラ、組織等の生物材料に天然状態で存在するもの、例えば細胞表面に存在するレセプタータンパク質等の膜結合タンパク質でもよい。
【0046】
リガンドは光アフィニティーラベル法の手法に用いるために光反応性基を導入したものとすることもできる。光反応性基の例としては、限定するものではないが、アゾ基、アゾキシ基、ジアゾ基、ジアジリン基、スルホニル基などが挙げられる。
【0047】
アルキンタグを有するリガンドは、当業者であれば慣用の技術を用いて調製することができ、例えば2以上の反応性置換基を有する二価のリンカー分子を使用し、該リンカー分子上の一の反応性置換基をリガンド上の適切な官能基と反応し、リンカー分子上の別の反応性置換基をアルキン化合物と反応させることにより調製することができる。ここで反応を行う順番は当業者であれば所望の目的化合物に応じて適宜選択することができる。また、2以上の反応性置換基を有する二価のリンカー分子において、所望の一の反応性置換基を適当な保護基で保護し、別の非保護反応性置換基を反応させ、次いで適当な条件で前記保護した基の脱保護を行い、脱保護された反応性置換基を反応させることができる。保護基としては上記に定義したものが挙げられる。
【0048】
固相担持コバルト・カルボニル錯体とアルキンタグを有するリガンドとが結合した複合体
固相担持コバルト・カルボニル錯体とアルキンタグを有するリガンドとが結合した複合体は、上記固相担持コバルト・カルボニル錯体と、上記アルキンタグを有するリガンドとを反応させて形成させることができる(図1〜図3を参照されたい)。ここで、該複合体中のリガンドは目的タンパク質と結合したものであっても結合していないものであってもよい。固相担持コバルト・カルボニル錯体と、アルキンタグを有するリガンドとの反応は、コバルト・カルボニルとアルキンとの錯体形成反応に基づいている。反応条件は、0〜5℃の温度で上記の物質を好ましくは中性域のバッファー等の溶媒中で接触させることを含む。
【0049】
図1〜図3には、その手順を示してあり、図1は、アルキンタグを有するリガンド(VI)とタンパク質(V)を結合し、これに固相担持コバルト・カルボニル錯体(II)を反応させるスキームを示し、一方図2は、アルキンタグを有するリガンド(VI)と固相担持コバルト・カルボニル錯体(II)を反応させたのち、その結合体(IX)をタンパク質(V)との結合に用いるスキームを示している。また図3では、アルキンタグを有するリガンド(VI)とタンパク質(V)を結合し、この(VII)にコバルト・カルボニル錯体を反応させた後、その結合体(X)を固相担持トリアリールホスフィン(I)との結合に用いるスキームを示している。
本発明ではいずれのスキームでも実施可能である。
【0050】
タンパク質の精製方法
以下に、本発明の固相担持コバルト・カルボニル錯体を用いたタンパク質の精製方法の例を、図1、図2又は図3を参照しながら説明する。
【0051】
本発明の一の実施形態における固相担持コバルト・カルボニル錯体を使用するタンパク質精製方法は次のとおりである。すなわち、
以下のステップ(i)〜(iv):
(i)アルキンタグを有するリガンドを用意するステップ、
(ii)前記アルキンタグを有するリガンドと、該リガンドに結合可能であるタンパク質とを結合させてリガンド−タンパク質複合体を生成するステップ、
(iii)固相担持コバルト・カルボニル錯体と、前記ステップ(ii)の前記リガンド−タンパク質複合体とを反応させてリガンド−タンパク質複合体結合固相担持コバルト・カルボニル錯体を生成するステップ、及び
(iv)ステップ(iii)のリガンド−タンパク質複合体結合固相担持コバルト・カルボニル錯体からタンパク質を解離するステップ
を含む、上記方法である(図1)。
【0052】
あるいは本発明の別の実施形態における固相担持コバルト・カルボニル錯体を使用するタンパク質精製方法は、
以下のステップ(i)〜(iv):
(i)アルキンタグを有するリガンドを用意するステップ、
(ii)前記アルキンタグを有するリガンドと、固相担持コバルト・カルボニル錯体とを反応させてリガンド結合固相担持コバルト・カルボニル錯体を生成するステップ、
(iii)前記ステップ(ii)
の前記リガンド結合固相担持コバルト・カルボニル錯体と、該リガンドに結合可能であるタンパク質とを結合させてリガンド−タンパク質複合体結合固相担持コバルト・カルボニル錯体を生成するステップ、及び
(iv)ステップ(iii)のリガンド−タンパク質複合体結合固相担持コバルト・カルボニル錯体からタンパク質を解離するステップ
を含む上記方法とすることができる(図2)。
【0053】
あるいは本発明の別の実施形態における固相担持コバルト・カルボニル錯体を使用するタンパク質精製方法は、
以下のステップ(i)〜(v):
(i)アルキンタグを有するリガンドを用意するステップ、
(ii)前記アルキンタグを有するリガンドと、該リガンドに結合可能であるタンパク質とを結合させてリガンド−タンパク質複合体を生成するステップ、
(iii)コバルト・カルボニル錯体と、前記ステップ(ii)の前記リガンド−タンパク質複合体とを反応させてリガンド−タンパク質複合体結合コバルト・カルボニル錯体を生成するステップ、
(iv)ステップ(iii)のリガンド−タンパク質複合体結合コバルト・カルボニル錯体と固相に担持したホスフィンとを反応させてリガンド−タンパク質複合体結合固相担持コバルト・カルボニル錯体を生成するステップ、及び
(v)ステップ(iv)のリガンド−タンパク質複合体結合固相担持コバルト・カルボニル錯体からタンパク質を解離するステップ
を含む上記方法とすることができる(図3)。
【0054】
特に、上記図1や図3に記載の方法は、生物材料に天然状態で存在するタンパク質を精製する方法として適している。具体的には、回収した細胞又はオルガネラ上の膜結合タンパク質とアルキンタグを有するリガンドとを接触させて、タンパク質−リガンド複合体を形成し、細胞又はオルガネラを物理的又は化学的に破壊し、破壊した液に固相担持コバルト・カルボニル錯体を作用することによって、タンパク質を固相に結合した状態で回収することができる。
【0055】
本発明の固相担持コバルト・カルボニル錯体を用いたタンパク質の精製方法において、分離手段に用いる担体は、如何なる形状、サイズからなるものであってもよく、なんら限定されない。こうした固相の形状若しくは形態としては、何ら限定するものではないが、ビーズ、微粒子などの球状、平面若しくは曲面などの形状等が挙げられる。また分離手段として用いる固相は、クロマトグラフィー用の分離カラムに充填したり、微粒子、ビーズの形態で溶液中で用いることができる。
【0056】
本発明の一の実施形態においては、分離手段として用いる固相をビーズの形態とし、タンパク質を含有する試料と接触させ、攪拌等を行い、その後遠心分離、ろ過等の操作で回収することができる。本発明の別の実施形態では、分離手段として用いる固相をクロマトグラフィー用の分離カラム、ビーズ、微粒子、ゲル、樹脂とし、これにタンパク質を含有する試料を添加して目的のタンパク質を選択的に保持させ、任意の洗浄操作を行い、次いで目的のタンパク質を溶離させる溶離液を添加することもできる。本発明のさらなる実施形態においては固相担持コバルト・カルボニル錯体を固体表面上に塗布し、該固体に試料を接触させることにより試料に含まれる目的のタンパク質を選択的若しくは特異的に保持し、任意の洗浄操作を行い、他の成分と目的のタンパク質とを分離することができる。
【0057】
本発明のタンパク質精製方法において、適当な解離条件を用いることにより、目的タンパク質を固相担持コバルト・カルボニル錯体から解離することができる。
【0058】
解離に用いる溶液としては、目的タンパク質とリガンドとの結合が解離し得る条件とする溶液、若しくはアルキンとコバルト・カルボニル錯体との結合が解離し得る条件とする溶液、又は前記いずれの条件をも満たす溶液を用いることができる。解離に用いる溶液の塩濃度、界面活性剤濃度、pH、温度等の条件は当業者であれば適宜選択することができる。好ましくは解離条件はアルキンタグを有するリガンドとコバルト・カルボニル錯体との配位結合を解離する際に、目的タンパク質を変性若しくは失活させない条件である。
【0059】
pH、温度等については、タンパク質を安定化する至適条件を適宜使用する。精製に用いるpH、温度等は目的のタンパク質に応じて適宜調整することができる。pHは例えばpH約4〜pH約10、好ましくはpH約5〜pH約9、より好ましくはpH約6〜pH約8とすることができる。温度は例えば約0℃〜約50℃、好ましくは約4℃〜約25℃、より好ましくは約4℃〜約10℃で行うことができる。
【0060】
塩濃度、界面活性剤濃度等については当業者であれば目的のタンパク質に応じて適宜設定することができる。本明細書中で用いる界面活性剤は、一般に疎水性部分と親水性部分とを有する表面活性剤を指す。界面活性剤としては、有機及び無機性の、天然又は合成の、非イオン性、アニオン性、カチオン性、及び双性イオン界面活性剤が挙げられ、その例としてはソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール誘導体、t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X-100)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween 20)等が挙げられるがこれらに限定されない。塩としては、当技術分野で用いる一般的な塩、例えば無機塩、有機酸の塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、NaCl、KCl等が挙げられる。pH調整に用いるpHバッファーとしては、当技術分野で通常用いられるものを使用することができ、その例としては酢酸バッファー、リン酸バッファー、トリスバッファー、HEPESバッファー等が挙げられるがこれに限定されない。
【0061】
(実施例)
以下の実施例は、例示のみを意図し、何ら本発明の技術的範囲を限定することを意図するものではない。特に断らない限り、試薬は、市販されているか、又は当技術分野で慣用の手法、公知文献の手順に従って調製する。
【0062】
実施例1:PS-PEG担持コバルトモノホスフィン錯体(3)の調製
【化9】

【0063】
TentaGel(登録商標)S-NH2 (ハイペップ研究所) 1 (1 g, < 0.28 mmol)、4-(ジフェニルホスフィノ)安息香酸(300 mg , 1 mmol)、1−エチルー3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド・塩酸塩(298 mg, 1.55 mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(270 mg, 2 mmol)を量りとり、ジメチルホルムアミド20 mLで溶かして室温で12時間振盪撹拌した。フィルターにてろ過後、ジメチルホルムアミド及びジクロロメタンで洗浄、乾燥し、ホスフィン担持PS-PEG (2) 1.05 gを得た。
【0064】
1.5 mLの遠心チューブにCo2(CO)8(60 mg)を量りとり、テトラヒドロフラン(1 mL)に溶かした後、ホスフィン担持PS-PEG 2(60 mg)を加えた。この混合物を3時間室温にて撹拌した。その後、ビーズをテトラヒドロフラン1 mLで10回、可溶化バッファー(10 mM HEPES-Na, 0.5% Triton X-100, 150 mM NaCl, pH 7.0)1 mLで10回洗浄し、PS-PEG担持コバルトモノホスフィン錯体(3)を得た。
IR (neat): 2077 (m), 2021(m), 1894 (s), 1955 (m), 1887 (vs) cm-1
【0065】
実施例2:アルキンタグ導入ビオチン(7)の合成
モデル化合物とタンパク質の組み合わせとして、ビオチン及びアビジンの組み合わせで精製操作を行うことにした。ビオチンにアルキンを導入した化合物を以下のスキームに基づき合成した。
【0066】
【化10】

【0067】
6−tert−ブトキシカルボニルアミノヘキサン酸(化合物4)の合成
6-アミノヘキサン酸(656 mg, 5 mmol)を1N水酸化ナトリウム水溶液5 mLと1,4-ジオキサン10 mLの混合溶媒に溶かし、室温にて(Boc)2O(1.25 ml, 5.4 mmol)を加え撹拌した。4時間後、濃塩酸で中和し、酢酸エチルで抽出後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、減圧下に溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)にて精製し、表題化合物4(1.19 g, 100%)を得た。
【0068】
IR (neat): 2975 (m), 2934 (m), 2866 (w), 691 (vs), 1528 (m), 1411 (s), 1366 (s), 1249 (s), 1162 (vs) cm-1; 1H NMR (CD3OD, 400 MHz): d 3.02 (t, 2H, J = 7.1 Hz), 2.28 (t, 2H, J = 7.3 Hz), 1.64-1.57 (m, 2H), 1.51-1.30 (m, 13H);13C NMR (CD3OD, 100 MHz): d 177.3, 158.3, 79.7, 41.2, 34.9, 30.7, 28.8, 27.4, 25.8。
【0069】
化合物5の合成
化合物4(120 mg, 0.52 mmol)、1−エチルー3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド・塩酸塩(120 mg, 0.63 mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(90 mg, 0.67 mmol)をジクロロメタン5 mLで溶かし、ここに室温で1-アジド-3,6,9-トリオキサウンデカ-1-アミン(110 μL, 0.5 mmol)を加え撹拌した。4時間後減圧下に溶媒を留去して、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=95:5)にて精製し、表題化合物5(184.9 mg, 86%)を得た。
【0070】
IR (neat): 3324 (m), 2930 (m), 2865 (m), 2100 (s), 1696 (s), 1652 (s), 1530 (s), 1454 (m), 1364 (m), 1248 (s), 1167 (vs), 1105 (vs) cm-1; 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): d 5.98 (brs, 1H), 4.55 (brs, 1H), 3.68-3.60 (m, 10H), 3.54 (t, 2H, J = 5.1 Hz), 3.45-3.36 (m, 4H), 3.09 (dd, 2H, J = 6.3, 12.9 Hz), 2.16 (t, 2H, J = 7.6 Hz), 1.67-1.60 (m, 2H), 1.51-1.29 (m, 13H); 13C NMR (CDCl3, 100 MHz): d 172.4, 155.6, 78.8, 70.5, 70.4, 70.4, 70.1, 69.9, 69.7, 50.5, 40.3, 39.0, 36.4, 29.7, 28.4, 26.4, 25.2; HRMS (ESI+). Calcd for [C19H37N5O6+ H]+: m/z = 432.28166. Found: m/z = 432.28170。
【0071】
化合物6の合成
化合物5(132 mg, 0.31 mmol)を3M塩酸メタノール溶液10 mLで溶かし、40 ℃で撹拌した。6時間後、反応液を炭酸水素ナトリウムのカラムに通し、減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣をジメチルホルムアミド8 mLに溶かし、ビオチン(90 mg, 0.37 mmol)、1−エチルー3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド・塩酸塩(90 mg, 0.47 mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(62 mg, 0.46 mmol)を室温で加え撹拌した。12時間後減圧下に溶媒を留去して、得られた残渣を塩基性シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=1:0 → 6:1)にて精製し、さらに中性シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=3:1)にて精製を行い、表題化合物6(113.8 mg, 67%)を得た。
【0072】
IR (neat): 3297 (m), 2926 (m), 2859 (m), 2470 (w), 2422 (w), 2102 (m), 1698 (vs), 1631 (vs), 1553 (vs), 1460 (s), 1246 (m), 1107 (vs) cm-1; 1H NMR (CD3OD, 400 MHz): d 4.43 (dd, 1H, J = 5.1 7.8 Hz), 4.24 (dd, 1H, J = 4.4 7.8 Hz), 3.62-3.46 (m, 12H), 3.33-3.27 (m, 4H), 3.16-3.08 (m, 3H), 2.86 (dd, 1H, J = 5.1, 12.7 Hz), 2.64 (d, 1H, J = 12.7 Hz), 2.13 (dd, 4H, J = 7.1, 12.7 Hz), 1.72-1.24 (m, 12H); 13C NMR (CD3OD, 100 MHz): d 175.7, 175.5, 165.7, 71.6, 71.5, 71.4, 71.2, 71.1, 70.5, 63.3, 61.5, 57.0, 51.7, 41.1, 40.3, 40.2, 36.9, 36.8, 30.2, 29.8, 29.5, 27.6, 27.0, 26.7; HRMS (ESI+). Calcd for [C24H43N7O6S + H]+: m/z = 558.30683. Found: m/z = 558.30685。
【0073】
化合物7の合成
化合物6(48 mg, 0.09 mmol)をメタノール溶液2 mLに溶かし、10% パラジウム‐炭素(10 mg)を加えた後、水素雰囲気下24時間撹拌した。反応液をセライトろ過し、減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣をジクロロメタン6 mLに溶かし、炭酸水素ナトリウム(165 mg, 2 mmol)及びプロパルギルクロロホルメート(1 mmol)を氷冷下加え、1時間撹拌した後に減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=3:1)にて精製し、表題化合物7(15.7 mg, 30%)を得た。
【0074】
IR (neat): 3279 (m), 2928 (m), 2863 (m), 1692 (s), 1640 (s), 1547 (s), 1457 (s), 1252 (s), 1094 (s) cm-1; 1H NMR (CD3OD, 400 MHz): d 4.63 (s, 2H), 4.48 (dd, 1H, J = 4.9, 7.7 Hz), 4.29 (dd, 1H, J = 4.4, 7.7 Hz), 3.65-3.51 (m, 12H), 3.36-3.28 (m, 4H), 3.22-3.14 (m, 3H), 2.94-2.88 (m, 2H), 2.70 (d, 1H, J = 12.7 Hz), 2.19 (dd, 4H, J = 7.1, 14.1 Hz), 1.77-1.30 (m, 12H); 13C NMR (CD3OD, 100 MHz): d 175.8, 175.6, 165.8, 157.7, 79.4, 75.8, 71.5, 71.5, 71.2, 71.2, 70.8, 70.5, 63.4, 61.6, 57.0, 53.1, 41.8, 41.1, 40.4, 40.2, 36.9, 36.9, 30.2, 29.8, 29.6, 27.6, 27.0, 26.7; HRMS (ESI+). Calcd for [C28H47N5O8S + H]+: m/z = 614.32181. Found: m/z = 614.32178。
【0075】
実施例3:アルキンタグ導入ビオチン(7)を用いたFITC標識ニュートラアビジンの精製
可溶化バッファー(10 mM HEPES-Na, 0.5% Triton X-100, 150 mM NaCl, pH 7.0)0.5 mLに、アルキンタグ導入ビオチン7(2.5 nmol)及びFITC標識ニュートラアビジン(サーモフィッシャー社、2.5 nmol)を加え、4 ℃にて1時間転倒混和した。この混合液に実施例1で調整したPS-PEG担持コバルトモノホスフィン錯体(2)を添加し、4 ℃で3時間転倒混和した。その後、ビーズを可溶化バッファー0.5 mLで5回洗浄し、ビーズ上にニュートラアビジンを精製した。
【0076】
このビーズを可溶化バッファー0.5 mLに懸濁させ、その中からビーズごと50μLを1.5 mLの遠心チューブに移した。これにTFA/可溶化バッファー(0.36μL/100μL)を加えたのち、4 ℃で終夜撹拌を行った。撹拌後、上澄み100μL を取り2D Cleanup kit (バイオラッド)を用いて脱塩操作を行い、溶出したタンパク質を精製した。得られたタンパク質を電気泳動にて分離後、CBB染色で検出した。結果を図6に示す。
【0077】
サンプル番号1は精製前のタンパク質、2は精製後の上澄み、3はTFAで溶出した溶液中のタンパク質を泳動した。その結果、1から2においてFITC標識ニュートラアビジンが溶液中からなくなってビーズへ吸着し、その後3で溶出されていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の固相担持コバルト・カルボニル錯体を用いるタンパク質精製方法により、選択的に目的のタンパク質を得ることができる。固相に結合した目的のタンパク質は他の成分と容易に分離・精製が可能であり、次いで温和な条件下に固相及びリガンドからタンパク質を解離させることにより、目的の精製タンパク質を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相担持コバルト・カルボニル錯体と、アルキンタグを有するリガンドとを用いることを特徴とするタンパク質の精製方法。
【請求項2】
前記アルキンタグを有するリガンドと、前記タンパク質とを結合させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下のステップ(i)〜(iv):
(i)アルキンタグを有するリガンドを用意するステップ、
(ii)前記アルキンタグを有するリガンドと、該リガンドに結合可能であるタンパク質とを結合させてリガンド−タンパク質複合体を生成するステップ、
(iii)固相担持コバルト・カルボニル錯体と、前記ステップ(ii)の前記リガンド−タンパク質複合体とを反応させてリガンド−タンパク質複合体結合固相担持コバルト・カルボニル錯体を生成するステップ、及び
(iv)ステップ(iii)のリガンド−タンパク質複合体結合固相担持コバルト・カルボニル錯体からタンパク質を解離するステップ
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
以下のステップ(i)〜(iv):
(i)アルキンタグを有するリガンドを用意するステップ、
(ii)前記アルキンタグを有するリガンドと、固相担持コバルト・カルボニル錯体とを反応させてリガンド結合固相担持コバルト・カルボニル錯体を生成するステップ、
(iii)前記ステップ(ii)の前記リガンド結合固相担持コバルト・カルボニル錯体と、該リガンドに結合可能であるタンパク質とを結合させてリガンド−タンパク質複合体結合固相担持コバルト・カルボニル錯体を生成するステップ、及び
(iv)ステップ(iii)のリガンド−タンパク質複合体結合固相担持コバルト・カルボニル錯体からタンパク質を解離するステップ
を含む前記方法。
【請求項5】
以下のステップ(i)〜(iv):
(i)アルキンタグを有するリガンドを用意するステップ、
(ii)前記アルキンタグを有するリガンドと、該リガンドに結合可能であるタンパク質とを結合させてリガンド−タンパク質複合体を生成するステップ、
(iii)コバルト・カルボニル錯体と、前記ステップ(ii)の前記リガンド−タンパク質複合体とを反応させてリガンド−タンパク質複合体結合コバルト・カルボニル錯体を生成するステップ、
(iv)ステップ(iii)のリガンド−タンパク質複合体結合コバルト・カルボニル錯体と固相に担持したホスフィンを反応させてリガンド−タンパク質複合体結合固相担持コバルト・カルボニル錯体を生成するステップ、及び
(v)ステップ(iv)のリガンド−タンパク質複合体結合固相担持コバルト・カルボニル錯体からタンパク質を解離するステップ
を含む上記方法。
【請求項6】
洗浄を行うステップをさらに含む、請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
固相担持コバルト・カルボニル錯体が下記の式
【化1】

[式中、灰色の丸は固相を表し、Aはスペーサーを表し、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に1以上の低級アルキル、低級アルコキシ若しくはハロゲンで置換されている又は置換されていないアリールである]
により表されるものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
下記の式
【化2】

[式中、灰色の丸は固相を表し、黒丸はリガンドを表し、Aはスペーサーを表し、Bはリンカーを表し、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に1以上の低級アルキル、低級アルコキシ若しくはハロゲンで置換されている又は置換されていないアリールであり、並びにリガンドはタンパク質と結合可能なものである。]
により表される、タンパク質を精製するためのリガンド結合固相担持コバルト・カルボニル錯体。
【請求項9】
下記の式
【化3】

[式中、灰色の丸は固相を表し、Aはスペーサーを表し、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に1以上の低級アルキル、低級アルコキシ若しくはハロゲンで置換されている又は置換されていないアリールである]
により表される、固相担持コバルト・カルボニル錯体と、下記の式:
【化4】

[式中、黒丸はリガンドを表し、Bはリンカーを表し、≡はアルキニル基を表す]
であるアルキンタグを有するリガンドとを含んでなる、タンパク質の精製用のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−241155(P2011−241155A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112226(P2010−112226)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】