説明

園芸器具

本発明による園芸器具は、孔あきのまたは羽板からできたベッディングフレーム11の床面14を備えたモジュール要素13から構成されている。ベッディングフレーム11の床面14は、堆肥用入れ物10を覆うように取り付けられている。フレーム11は、半透明のプラスチックパネルからなるピラミッド形状の屋根構造体12で覆われており、パネルは曲げやすいテープ18により、組み合せることができ、他の縁部は、スライド式止め金具ファスナ20を備えたテープ19により連結されている。結露を受けるために、パネルの下側縁部の内面に沿って溝17が設けられており、パネルの縁部は、テープ18、19のトンネル状の継部内の補強棒やダボ22によって補強されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規性のある、改良した園芸器具に関するものである。
【0002】
園芸植物栽培では、後に移植するために、プロパゲータ(propagator)または冷床(cold frame)で第一段階の成長をさせて、苗(seedling)や挿し木(cutting)を作ることはよく知られている。冷床とは、(人工的に暖められる温室とは反対に)人工的な暖房を施さない庭床を覆うガラスの構造物である。冷床及びプロパゲータの双方とも、植物の上空にたくさんの空気を取り囲み、同時に太陽放射がガラスを透過することを許容している。しかしながら、長波の赤外線熱放射(longer wave infra red heat radiation)としての植物による太陽エネルギーの再放射(re-radiation)は閉じ込められ、冷床内で、早期成長の促進、及び、霜に耐えることを助ける有利な小気候(micro-climate)が形成される。
【0003】
庭の肥料(fertiliser)として使用する堆肥(compost)の製造も、広く行われている。堆肥の製造工程では、箱(bin)またはその他の容器(container)あるいは柵で囲まれた土地(fenced enclosure)に、おそらくプロモータ(promotor)やエンリッチャ(enricher)の使用による主に園芸植物の廃棄物である有機廃棄物(organic waste)を徐々に入れることが通常行われる。箱、容器又は柵で囲まれた土地がいっぱいになると、しばらくの間放置して腐らせる。最終段階は、肥料として使用するために、結果として作られた堆肥を庭に散布することである。
【0004】
腐らせる段階において、堆肥化材料(composting material)は、熱を発生し、また、メタンや二酸化炭素のようなガスを放出する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、廃棄物や、堆肥化処理(composting process)から生じる熱及びガスを利用して、プロパゲータや冷床のような植物用シェルター内で、植物の栽培を促進する園芸器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の園芸器具は、堆肥用入れ物(receptacle for compost)と、堆肥用入れ物の上にある1以上の植物育成容器(plant growth receptacle)のための支持体(support)と、光透過性(light permeable)及び保温性(heat retaining)を有する、植物育成容器のためのカバーとから構成されている。
【0007】
1以上の植物育成容器のための支持体は、堆肥用入れ物のための蓋(lid)を備えており、植木鉢(plant pot)、プランタ(planter)、またはレイズドベッドストラクチャ(raised bed structure)が蓋の上で支えられるように構成してもよい。蓋は、堆肥化処理により発生するガスが支持体の上の空間に流れ込むように、複数の孔(aperture)を備えているか、または、複数枚の羽板で作ってもよい(slatted)。
【0008】
堆肥用入れ物は、モジュール構造(modular construction)としてもよく、例えば、EP−A−1069253に記載されている構造要素(structual element)を使用してもよい。
【0009】
カバーは、ガラス製のクローシュ(glass cloche)や、従来のプロパゲータや冷床でもよい。しかしながら、好ましくは、適切な形状の透明感のあるプラスチック材料で作られたパネルを有する、取り外し可能な屋根構造体がよい。
【0010】
好適な実施の形態では、カバーは、四角形の基部と4つの透明感のあるプラスチックパネルを有するピラミッドの形状をしている。パネルのそれぞれには、パネルの内面からの結露(condensation)を受ける排水路(gutter)となる下側縁構造をパネルのベース縁部に沿って設けてもよい。
【0011】
パネルのそれぞれには、上方に延びる2つの縁部のそれぞれに、金属や適したプラスチック素材などの適当な材料で作られた補強棒を収納するトンネル状の継部を形成してもよい。
【0012】
複数のパネルは、繊維(fabric)又はファイバー(fibre)により強化されている軟質プラスチックテープによって、接触する2つの上方に延びる縁部に沿って結合することにより、2つのパネルが一組になるように固定されていてもよい。そして、カバーの内部に手を入れて、植物の世話や水やりを行ったり、植物を取り出したり、新しい植物を入れたりするために、カバーを異なる複数の位置から完全にまたは部分的に開けることができるように、スライド式止め金具ファスナ(zips)により、一方の組のパネルの残りの縁部を他方の組のパネルの対応する縁部に連結してもよい。
【0013】
カバーの各コーナ部は、箱の形をなす堆肥用入れ物(bin structure)の各コーナ部に設けられた戻り止めと係合するようになっているフックにより箱に固定してもよく、箱の上側縁部には複数の補強棒の端部を収納する孔を設けてもよい。
【0014】
強い日差しの下で内部を冷却するために、太陽エネルギーで動作する換気ファンをカバーの頂点に設けてもよい。また、カバーはさまざまな形状にしてもよいのはもちろんである。例えば、カバーを多角形ピラミッドの形状(六角形や八角形)などにして、その形状に対応する形状をしたコンポストコンテナ(compost container)と、その形状に対応する数の相互に連結される三角形のパネルを用いることができる。
【0015】
あるいは、カバーは、従来の冷床のように1つの傾斜パネル(slopping panel)で構成してもよく、2つの長い矩形状のパネルと2つの三角形のエンドパネルとから成る切妻屋根の形(ridge roof form)で構成してもよい。
【0016】
以下、本発明の園芸器具の好適な実施の形態を添付の図面を参照して、具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の園芸器具の一面の断面図である。
【図2】園芸器具の構造を示す部分横断面図である。
【図3】園芸器具の一部を構成するカバーの斜視図である。
【図4】カバーのコーナ部のための留め具を示す部分横断面図である。
【図5】カバーの隣り合う2つのパネルを固定するために使用される手段の断面図である。
【図6】図1の改良版のカバーの頂点部分のみを示した横断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明による園芸器具は、基本的には、堆肥用入れ物(compost bin)とプロパゲータまたは冷床との組み合わせから成り、堆肥用入れ物構造体(compost bin structure)10、その上に置かれたベッディングフレーム(bedding frame)11、ベッディングフレーム11を覆うカバーまたはクローシェ12から構成されている。
【0019】
好適な実施の形態では、堆肥用入れ物構造体10とベッディングフレーム11はEP−A−1069253に記載されているLINK−A−BORD(登録商標)から作られている。実際には、ベッディングフレーム11は、LINK−A−BORDの要素13(図2参照)の追加の段により構成されており、これにより、望ましくは孔あきの板(perforated sheet)である床面14を支持している。
【0020】
床面14は、間隔をあけた複数枚の羽板(spaced apart slats)、金属やプラスチックのメッシュまたは同種のもののいずれかで形成されている。
【0021】
カバー12は、半透明の、好ましくは透明なプラスチック板材の4つの正三角形のパネル(equilateral triangular panel)15、16によるピラミッド形状の構造物から構成されている。プラスチックには、突然変異誘発性の放射線(mutagenic radiation)を除去するために、紫から紫外線スペクトルまでの高周波放射線(higher frequency radiation)を遮断するための光互変性素材(photochromic material)を混ぜてもよい。
【0022】
図6は、任意であるが、図1の実施の形態の好ましい改良を示す図である。図6は、カバー12の頂点のみを示しているが、図1に対して先端を切り取ってあり、ピラミッド形状の先端が取り除かれている。換気ファン30が先端を切り取った頂点に配置されており、ピラミッドの面の上端を覆って、ファンのハウジングの上面に配置された光起電性の電池(photo-voltaic cells)31によって生じる電気で、換気ファンは動作するようになっている。強い日差しの下で、換気ファン30はカバー12の内部を冷却するように作動する。換気ファンが作動しなければ、強い日差しにより内部が過熱してしまう恐れがある。また、強い日差しは換気ファンを作動させるエネルギー源ともなっている。換気ファンは、太陽エネルギーが利用できる、日当たりのよい環境以外では不要である。
【0023】
このことにより、植物の熱焼け(cooking)を避けることができる。特に、園芸家(gardener)が休暇中に、留守にしているためにカバーに空気を通すことができない場合に、植物が熱焼けしてしまうことを防止することができる。
【0024】
各パネル15、16は、水分(moisture)をリサイクルするために、パネルの内面を流れ落ちる結露を受け、芯材媒体(wicking medium)を含むタンク(reservoir)へ結露を導くために、下側縁部の内面に沿って溝(channel)17を備えている。
【0025】
カバーのパネルは、テープにより結合されて、2組のパネルに構成されている。テープ18は、単純に、一方の組の隣接した(adjacent)パネル15、16の間を、曲げやすいヒンジ連結(flexible hinged connection)している。そして、この組のパネルの他の傾斜縁部(sloping edge)は、テープ19により、他方の組のパネル16、15の対応する縁部に連結可能である。これらのテープは、完全に分離することができる「ZIP」タイプのスライド式止め金具ファスナ(sliding clasp fastener)20を備えているため、フレーム内部に手を入れたり、カバー12を完全に除去したりすることができるように、これらの組み合わされたパネルは開閉可能になっている。
【0026】
テープ18、19は、パネルのための芯(stiffener)や補強材(reinforcement)としての役割を果たす硬いプラスチックの棒(rod)やダボ(dowel)22を収納するために、各パネルの縁部に沿ってトンネル状の継部21を形成し、これらが組み合わされて、ピラミッド形状の構造物のフレームを形成している。
【0027】
図5は、テープ19の断面図を示している。テープ19は、例えば、繊維を裏張りした(fablic-backed)、または、強化されたプラスチックシートの細長い一片(strip)から成り、これは、各縁部で半透明のパネル15、16のそれぞれの縁部に溶接(weld)されている。図にはトンネル状の継部21及び補強棒22も示されており、これらは23の部分で縫って(stitching)または溶接により固定されていてもよい。テープ19は2つの半部から構成されており、スライド式止め金具ファスナ20で連結されている。テープ18は、スライド式止め金具ファスナ20がない以外は、テープ19と同様である。
【0028】
補強棒またはダボ22の端部は、各コーナ部に隣接する構造要素(structural element)13の上側縁部の孔24に収納されている。そして、フック25は各テープ18、19の孔の間につながれており、それぞれのコーナ部部品(corner piece)27の上端部の孔26に収納されている(詳細は図3及び図4参照)。
【0029】
本構造物の詳細は異なってもよく、他の構造システムやコンポーネントを用いて作られてもよく、カバー及び箱(bin)の形状も異なってもよい。
【0030】
従来通り、堆肥用入れ物構造体10には、一定期間、生分解性廃棄物(biodegradable waste)を詰められる。そしていっぱいになると、ベッディングフレーム11を組み込んで、LINK−A−BORDの追加の段を最上部に置き、カバー12で覆う。
【0031】
堆肥化処理は、熱と、例えばメタンや二酸化炭素などのガスを発生させる。この熱とガスは、カバー12を通した日光とともに、ベッディングフレーム内で植物が成長するのに好ましいミクロ環境(micro environment)を生み出す。この環境は、従来の地面に設置された冷床やクローシェよりも好ましい。ベッディングフレーム11内での植物による光合成(photosynthesis)は二酸化炭素を使い切り、堆肥用入れ物によって生み出される余剰分(excess)により促進される。このように余剰分の二酸化炭素が除去された後、カバー12の頂点から空気を放出することができる。したがって、本構造物は、挿し木や苗の成長を促進させ、移植するために花を咲かせる植物(flowering plant)を生育させるのに適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆肥用入れ物と、前記堆肥用入れ物の上にあって1以上の植物育成容器のための支持体と、光透過性及び保温性を有する、前記1以上の植物育成容器のためのカバーとから構成される園芸器具。
【請求項2】
前記1以上の植物育成容器のための支持体は、前記堆肥用入れ物のための蓋を備えており、前記蓋は植木鉢、プランタ、またはレイズドベッドストラクチャを支えることができる支持体を提供する請求項1に記載の園芸器具。
【請求項3】
前記蓋が、堆肥化処理により発生するガスが前記支持体の上の空間に流れ込むようにする複数の孔を備えている請求項2に記載の園芸器具。
【請求項4】
前記複数の孔が、前記蓋が複数枚の羽板で作られていることにより形成されている請求項3に記載の園芸器具。
【請求項5】
前記カバーが、透明感のあるプラスチック材料で作られた1以上のパネルを有する、取り外し可能な屋根構造体で構成されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の園芸器具。
【請求項6】
前記屋根構造体が、四角形の基部と4つの略三角形の透明感のあるプラスチックパネルとを有するピラミッドの形状に構成されている請求項5に記載の園芸器具。
【請求項7】
前記パネルのそれぞれには、前記パネルの内面からの結露を受ける排水路となる下側縁構造が前記パネルのベース縁部に沿って設けられている請求項6に記載の園芸器具。
【請求項8】
前記パネルのそれぞれには、上方に延びる2つの縁部のそれぞれに、適当な材料で作られた補強棒を収納するトンネル状の継部が形成されている請求項6または7に記載の園芸器具。
【請求項9】
前記複数のパネルは、接触する2つの上方に延びる縁部に沿って軟質プラスチックテープにより結合することにより、2つの前記パネルが一組になるように固定されている請求項6乃至8のいずれか1項に記載の園芸器具。
【請求項10】
前記カバーの内部に手を入れて、植物の世話や水やりを行ったり、植物を取り出したり、新しい植物を入れたりするために、前記カバーを異なる複数の位置から完全にまたは部分的に開けることができるように、スライド式止め金具ファスナにより、一方の組の前記パネルの残りの縁部を他方の組の前記パネルの対応する縁部に連結する請求項9に記載の園芸器具。
【請求項11】
前記カバーの各コーナ部が、箱の形をなす前記堆肥用入れ物にフックにより固定されており、前記フックは前記箱の各コーナ部に設けられた戻り止めと係合するようになっており、前記箱の上側縁部には複数の前記補強棒の端部を収納する複数の孔が設けられている請求項10に記載の園芸器具。
【請求項12】
強い日差しの下で内部を冷却するために、太陽エネルギーで動作する換気ファンが前記カバーの頂点に設けられている請求項6またはこれに従属する請求項のいずれか1項に記載の園芸器具。
【請求項13】
前記屋根構造体が4つの面より多い面からなる多角形ピラミッドの形状をしており、堆肥コンテナがこの形状に対応する形状をしており、相互に結合される三角形のパネルの数もこの形状に対応している請求項5に記載の園芸器具。
【請求項14】
前記屋根構造体が、1つの傾斜パネルで構成されているか、または2つの長い矩形状のパネルと2つの三角形のエンドパネルとから成る切妻屋根の形に構成されている請求項5に記載の園芸器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−532023(P2009−532023A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502192(P2009−502192)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001062
【国際公開番号】WO2007/113480
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(508291560)アーミラトックス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】