説明

園芸用ポットの吊り下げ具

【課題】広告を施して展示、販売し、購入後持ち運びでき、育成にも利用できる園芸用ポットの吊り下げ具を提供する。
【解決手段】点対称な位置関係で平行な前折曲げ縁21及び後折曲げ縁41を設けた底面板3と、前記前折曲げ縁21を挟んで前記底面板3と繋がる前面板2と、前記後折曲げ縁1を挟んで前記底面板3と繋がる後面板4とを有する1枚の可撓性又は弾性シートからなり、前面板2に設けた連結孔23に、後面板4に設けた連結片431を挿入することにより、底面板3から折り曲げて立たせた前面板2及び後面板4を連結し、前折曲げ縁21及び後折曲げ縁41双方を越えて底面板3を縦断する通水スリッ31トを設け、前記通水スリット31を挟んで形成される一対の受け片32,32に跨がって園芸用ポット5を載せる園芸用ポットの吊り下げ具1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広告を施して展示、販売し、購入後持ち運びでき、育成にも利用できる園芸用ポットの吊り下げ具に関する。
【背景技術】
【0002】
園芸用ポットは、例えば苗を植えた状態でそのまま展示及び販売されることもあるが、購入後の持ち帰りを鑑みて、様々な吊り下げ具に収納されて展示及び販売されることも少なくない(特許文献1〜特許文献3)。特許文献1〜特許文献3は、植木鉢を例に説明されているが、特許文献1は「植木鉢などの物品(特許文献1・[0001])」、特許文献3は「上部が広がった容器(特許文献3・[0001])」を対象としていることから、いずれも園芸用ポットにも適用されると考えられる。
【0003】
特許文献1は、側面部及び底面部から構成される本体部材の前記側面部を底面部に対して折り曲げて起こし、底面部に対象物品(植木鉢等)を載せ、前記対象物品を挟んだ側面部に掛け回したひも状部材で、全体を吊り下げることのできる吊り下げ具(吊り下げ保持具)を開示する(特許文献1・請求項1)。側面部は、対象物品接触部と外側部との2重構造である(特許文献1・請求項3)。本体部材は、1枚の段ボールにより構成されている(特許文献1・請求項6及び請求項7)。
【0004】
特許文献2は、2枚の合成樹脂製のシートを上部、下部及び側縁部の下部から中間までを一体化して、下方部位に鉢植えの収容部を、上方部位に吊下部をそれぞれ形成すると共に、前記吊下部の両側に開口部を形成した吊り下げ具(鉢植え用手提げ袋)を開示する(特許文献2・請求項1)。吊下部の両側に形成した開口部は、縦長で、非対称に設ける(特許文献2・請求項2及び請求項4)。収納部は、下に向かって絞り形状(下方テーパー状)とし、底部を開口してもよい(特許文献2・請求項3及び請求項5)。全体として広い平面が確保できることから、シート表面に店名、広告等を表示してもよいとされる(特許文献2・[0009])。
【0005】
特許文献3は、長尺帯の中央部にスリットを形成し、前記長尺帯の両端部を、吊り手部を介して接続することにより把持部を形成する吊り下げ具(キャリーバンド)を開示する(特許文献3・請求項1)。長尺帯の両端部は、互いに係着できる係着部が形成される(特許文献3・請求項2)。スリットは、裂け防止用の処置、例えばスリットの両端部に小円孔を設けたり、前記両端部の周縁に粘着テープ等を貼り合わせて厚くすることにより強化したりする(特許文献3・請求項3及び[0007])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-327238号公報
【特許文献2】実開平06-082975号公報
【特許文献3】実用新案登録第3002707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜特許文献3が開示する吊り下げ具を園芸用ポットに適用したとして検討する。特許文献1が開示する吊り下げ具は、紙製の本体部材と吊り下げ用のひも状部材との2部材を要し、両者を組み付ける必要があるため、製造コストが高くつく問題がある。また、ひも状部材は、紙製の本体部材と擦れ合うと、前記本体部材を傷つけて裂いてしまう虞がある。このほか、植木鉢の上縁部を下支えする対象物品接触部を側面部の上縁に形成する関係から、側面部の外面が下向きとなり、仮に前記外面に広告等を施しても視認しづらく、広告等は別途ひも状部材に引っ掛けるほかない。
【0008】
特許文献2が開示する吊り下げ具は、構成要素である合成樹脂製のシートが広く、園芸用ポットの上方にまで前記シートが広がっているため、販売目的の展示のための広告等を施しやすい利点がある。しかし、特許文献2が開示する吊り下げ具は、全体が合成樹脂製のシートから形成されるために不定形であり、園芸用ポットの持ち運びに適しても、そのまま園芸用ポットを育成しようとする場合、かえって邪魔になり、除去する必要がある。これは、特許文献2が開示する吊り下げ具が植木鉢の運搬に特化して開発されたため、持ち帰ってそのまま育成する園芸用ポットの吊り下げ具として好適でないことを意味する。
【0009】
特許文献3が開示する吊り下げ具は、特許文献2が開示する吊り下げ具に対して、持ち帰ってそのまま育成する園芸用ポットの吊り下げ具としても利用できるが、実質長尺帯のみで構成されるため、広告等を施す場所がなく、販売を目的とした展示に利用できない欠点がある。このように、特許文献1〜特許文献3が開示する吊り下げ具は、それぞれに一長一短あるが、広告を施して展示、販売し、購入後持ち運びでき、育成にも利用できるものがない。そこで、製造コストの増加に留意しながら、広告を施して展示、販売し、購入後持ち運びでき、育成にも利用できる園芸用ポットの吊り下げ具を開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
検討の結果開発したものが、点対称な位置関係で平行な前折曲げ縁及び後折曲げ縁を設けた底面板と、前記前折曲げ縁を挟んで前記底面板と繋がる前面板と、前記後折曲げ縁を挟んで前記底面板と繋がる後面板とを有する1枚の可撓性又は弾性シートからなり、前面板に設けた連結孔に、後面板に設けた連結片を挿入することにより、底面板から折り曲げて立たせた前面板及び後面板を連結し、前折曲げ縁及び後折曲げ縁を越えて底面板を縦断する通水スリットを設け、前記通水スリットを挟んで形成される一対の受け片に跨がって園芸用ポットを載せる園芸用ポットの吊り下げ具である。
【0011】
前面板及び後面板は、便宜上、底面板を挟む位置関係にある一対の側面板を区別したもので、前記底面板から折り曲げて立ち上げる側面板の一方を前面板、残る他方を後面板と呼んでいるに過ぎず、必ずしも連結孔を設ける側面板を前面板、連結片を設ける側面板を前面板と区別しているわけではない。これから、例えば後面板に連結孔、前面板に連結片を設ける構成も本発明に含まれる。
【0012】
本発明の園芸用ポットの吊り下げ具は、1枚の可撓性又は弾性シートからなる底面板から前面板及び後面板を折り曲げて立ち上げ、そして前面板及び後面板を連結して側面視三角形の枠体を構成し、底面板に形成される一対の受け片に跨がって園芸用ポットを載せ、前面板及び後面板の連結部位をフック等に引っ掛けて、前記園芸用ポットを吊り下げる。可撓性又は弾性シートは、紙製シート、合成樹脂製シートや紙及び合成樹脂のラミネートシート等を例示できる。前面板、底面板及び後面板は、可撓性又は弾性シートの台紙から前記前面板、底面板及び後面板が繋がった全体の外形に沿った型紙として切り出される。
【0013】
底面板の通水スリットは、受け片に跨がって載せた園芸用ポットの底面中央にある水抜き孔に相対しており、園芸用ポットの排水を妨げず、吊り下げ具、特に底面板を排水に濡れなくする。底面板に形成される一対の受け片は、前記受け片の一方を軸とする園芸用ポットの傾倒に他方の受け片が対抗して、園芸用ポットの安定した支持に貢献する。更に、通水スリットを前折曲げ縁及び後折曲げ縁を越えて底面板を縦断するように設けたことから、受け片の変形は前折曲げ縁及び後折曲げ縁を越えて前面板又は後面板に伝達され、強度的に弱い前折曲げ縁及び後折曲げ縁に負荷が掛かりにくくなる。また、受け片の変形が大きな前面板及び後面板に抑制され、過剰な変形が抑制される。これにより、組み立てた吊り下げ具の底面板に園芸用ポットを出し入れしやすいが、一度底面板に載せた園芸用ポットは安定して支持できる。
【0014】
前面板又は後面板の一方又は双方は、底面板に形成される一対の受け片に跨がって載せられた園芸用ポットの上縁部に上方から係合するポット係合片を設けるとよい。これにより、園芸用ポットは、底面板とポット係合片とに上下に挟まれ、かつ上縁部がポット係合片に拘束され、底面板に安定して載せておけるようになる。園芸用ポットを底面板に安定して載せておく働きは、前面板のポット係合片(前ポット係合片)又は後面板のポット係合片(後ポット係合片)の一方があれば得られるが、両方設けることが好適である。
【0015】
また、前面板又は後面板の一方又は双方は、上方に跳ね上げる孔明けフラップを設け、前記孔明けフラップを跳ね上げて形成される開口を吊り下げ孔にするとよい。吊り下げ孔は、店頭においてハンガーを通し、底面に園芸用ポットを載せた吊り下げ具を吊り下げて展示できるようにする。孔明けフラップは、吊り下げ孔に挿通したハンガーに対して上面から接面し、前記ハンガーの擦れ合いによる吊り下げ孔の変形又は破損を防止するほか、ハンガーに対する接触範囲を増やして、吊り下げ具の安定した吊り下げを可能にする。
【0016】
前面板は、後面板と共に底面板から折り曲げて立たせた状態で、連結孔より上方に突出する前突片を設け、後面板は、前記連結孔に挿通して上方に突出する後突片を設けて、互いに連通する前吊り下げ孔及び後吊り下げ孔をそれぞれ前突片及び後突片に設けると、前突片及び後突片を重ね合わせて補強された部位に、前吊り下げ孔及び後吊り下げ孔が連通した一体の吊り下げ孔が形成される。これにより、本発明の園芸用ポットの吊り下げ具は、より重い園芸用ポットや、後述のように複数の園芸ポットを保持して、吊り下げることが可能になる。
【0017】
本発明の園芸用ポットの吊り下げ具は、底面板、前面板及び後面板からなる単位列を複数有する1枚の可撓性又は弾性シートからなり、底面板は形成される一対の受け片が単位列相互で離隔し、前面板及び後面板はそれぞれ一部又は全部が単位列相互で繋がった構成にすると、複数の園芸用ポットを保持できる。底面板は、上述の通り、通水スリットを挟んだ一対の受け片が形成されている必要があるため、単位列相互で離隔させる。しかし、単位列相互の一体性を確保するため、前面板及び後面板は、一部又は全部を繋がった状態にする。この場合、前面板又は後面板に設けられる連結孔、連結片又は吊り下げ孔は、単位列毎でなく、複数の単位列に共通して設ける方が好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の園芸用ポットの吊り下げ具は、前面板、底面板及び後面板が1枚の可撓性又は弾性シートからなるので、前記前面板、底面板及び後面板が繋がった型紙を台紙から切り抜き、前折曲げ縁及び後折曲げ縁で折り曲げて連結片を連結孔に挿入するだけで完成するため、製造コストが低廉に抑制できる。また、本発明の園芸用ポットの吊り下げ具は、すべてが可撓性又は弾性シートから構成されるため、部材の擦れ合いがない。そして、前面板又は後面板は、底面板に載せた園芸用ポットの上縁部を超えて上方に延びる面を広告面として、別途広告ポスターを貼ったり、直接広告を描いたりできる。特に、単位列を複数繋げた構成の場合、前記広告面が大きくなる。
【0019】
本発明の園芸用ポットの吊り下げ具は、底面板から前面板及び後面板を折り曲げて組み立てることのできる保形性を有する可撓性又は弾性シートから構成されているので、園芸用ポットを底面板に載せて保持した際、吊り下げたり、持ち運んだりしても壊れることがない。また、前面板及び後面板に挟まれた空間から、底面板に載せた園芸用ポットに対して容易に水やりができ、吊り下げ具に園芸用ポットを保持させたまま、育成できる。広告を必要としない前面板又は後面板を大きく刳り貫けば、前記水やりはより容易になる。このように、本発明の園芸用ポットの吊り下げ具は、園芸用ポットを保持したままの育成に適している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の園芸用ポットの吊り下げ具の使用状態を表す斜視図である。
【図2】本例の吊り下げ具の型紙を表す平面図である。
【図3】園芸用ポットを載せた底面板を表す部分拡大断面図である。
【図4】本例の吊り下げ具の型紙を台紙から切り抜いた段階を表す斜視図である。
【図5】底面板から前面板及び後面板を折り曲げて立たせた段階を表す斜視図である。
【図6】前面板及び後面板の上部を互いに接近する向きに湾曲させた段階を表す斜視図である。
【図7】後面板の連結フラップに設けた連結片を前面板の連結孔に挿入して組立を終えた段階を表す斜視図である。
【図8】単位列を2列にした別例1の吊り下げ具の使用状態を表す斜視図である。
【図9】単位列を2列にした別例1の吊り下げ具の型紙を表す平面図である。
【図10】単位列を3列にした別例2の吊り下げ具の使用状態を表す斜視図である。
【図11】単位列を3列にした別例2の吊り下げ具の型紙を表す平面図である。
【図12】単位列を3列にした別例3の吊り下げ具の使用状態を表す斜視図である。
【図13】単位列を3列にした別例3の吊り下げ具の型紙を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明の園芸用ポットの吊り下げ具1は、図1及び図2に見られるように、前面板2、底面板3及び後面板4が繋がった外形の厚紙シート(可撓性又は弾性シート)からなる型紙から構成され、前記底面板3から折り曲げて立たせた前面板2及び後面板4を連結した側面視二等辺三角形の枠体として使用される。本例の吊り下げ具1は、後面板4から切り起こした連結フラップ43に設けた連結片431,431を、前面板2に設けた連結孔23に挿入して組み立てられる。
【0022】
吊り下げ具1の幅は、保持する園芸用ポット5に合わせて適宜決定する。本例の吊り下げ具1の幅は、底面から上縁部に向けて徐変に拡開する角錐台様の園芸用ポット5に合わせ、底面板3が前記園芸用ポット5の底面およそ半分で、前面板2及び後面板4の園芸用ポット5の側面に添う部分が徐変に拡幅する逆台形状で、後面板4の前記園芸用ポット5の側面に添う部分より上部分が園芸用ポット5の上縁部の外形幅のおよそ半分である。吊り下げ具1は、前面板2、底面板3及び後面板4の側縁を蛇行させて審美性に富む外形にしてもよい。
【0023】
本例の吊り下げ具1は、後面板4から切り起こした下方に突な連結フラップ43の前面を広告面24として、様々な広告11を施すことができる。広告11は、例えば前記連結フラップ43に直接記載される商品案内、宣伝文句、値段や商品の注意喚起を促す絵又は記号であったり、前記商品案内や絵等を記載したポップ等を貼り付けたりして、構成される。連結フラップ432を切り起こして形成される後面板4の開口は、底面板3に載せた園芸用ポット5の覗き孔45として利用される。
【0024】
また、本例の吊り下げ具1は、連結フラップ432の基部に設けられた孔空けフラップ432を持ち上げて形成される吊り下げ孔433にハンガー(図示略)等を通して、園芸用ポット5を保持したまま展示及び販売のため、吊り下げることができる。孔明けフラップ432は、吊り下げ孔433に挿通したハンガーに対して上面から接面し、前記ハンガーの擦れ合いによる吊り下げ孔433の変形又は破損を防止するほか、ハンガーに対する接触範囲を増やして、吊り下げ具1の安定した吊り下げを可能にする(後掲図7参照)。
【0025】
園芸用ポット5は、底面板3に載せられ、前面板2から内側(園芸ポット5側)に向けて切り起こして下方に突な前ポット係合片22と、後面板4から内側(園芸ポット5側)に向けて切り起こして下方に突な後ポット係合片42とをそれぞれ上縁部51に上方から係合させて、位置固定された状態で保持される。これにより、仮に園芸用ポット5が底面板3からずれようとすると、前ポット係合片22又は後ポット係合片42が上縁部51の内側に引っかかり、前記底面板3からの脱落を防止できる。
【0026】
底面板3は、図3に見られるように、園芸用ポット5(仮想線表示)の底面中央にある水抜き孔(図示略)に相対する通水スリット31を挟む一対の受け片32で前記園芸用ポット5を下支えしている。一対の受け片32,32は、通水スリット31が前折曲げ縁21及び後折曲げ縁41(図3中前折曲げ縁21のみを図示)を越えて底面3を縦断しているため、互いに完全に独立し、各受け片32に繋がる前面板2及び後面板4の一部と一体に変形しようとする。これにより、受け片32の変形は、前曲げ縁21及び後折曲げ縁41に負荷を掛けにくくする一方、前面板2及び後面板4に抑制され、安定した園芸用ポット5の保持を実現する。
【0027】
本例の吊り下げ具1は、例えば次の手順で制作する。まず、図4に見られるように、前面板2、底面板3及び後面板4を繋げた型紙を複数配置した台紙6から、切り取り線又はミシン目に沿って前記型紙を切り出す。本例の台紙6は、前記型紙を互い違いに配置しているが、複数の型紙を同じ向きに揃えていてもよい。切り出された型紙は、前面板2、底面板3及び後面板4が繋がった状態にある。前面板2の連結孔23や底面板3の通水スリット31を形成する開口は、台紙6から型紙を切り出した段階で形成するとよい。本例の連結孔23は正面視略正方形、通水スリット31は両端半円の長孔である。
【0028】
前面板2、底面板3及び後面板4は、底面板3に対して園芸用ポット5を出し入れしやすいように、変形を許容する可撓性又は弾性シートから構成される。本例のように、前面板2、底面板3及び後面板4が繋がった型紙を台紙6から切り出すことから、台紙6自体が前記可撓性又は弾性シートから構成されことになる。本発明に好適な可撓性又は弾性シートは、厚紙シート又は樹脂シートである。厚紙シートの場合、吊り下げ具1が園芸用ポット5を保持したまま水やりされることもあるから、防水対策を施してあるとよい。厚紙シートの防水対策は、例えば片面又は両面に樹脂フィルムをラミネートする。
【0029】
台紙6から切り出された型紙は、図5に見られるように、底面板3から前折曲げ縁21により前面板2を折り曲げて立たせ、また前記底面板3から後折曲げ縁41により後面板4を折り曲げて立たせる。前折曲げ縁21及び後折曲げ縁41は、通水スリット31を挟んで受け片32毎に左右一対形成されており、それぞれの幅が狭い。これから、前折曲げ縁21及び後折曲げ縁41に沿って前面板2及び後面板4が容易に折り曲げられるように、前折曲げ縁21及び後折曲げ縁41に折り目又はミシン目をつけておくことが好ましい。
【0030】
底面板3から折り曲げて立たせた前面板2は、図6に見られるように、前ポット係合片22を設けた付近で内側(後面板4側)に向けて湾曲させ、また後面板4は、前記前面板2同様、後ポット係合片42を設けた付近で内側(前面板2側)に向けて湾曲させる。前面板2及び後面板4は、可撓性又は弾性シートから構成されているため、容易に湾曲させることができる。これにより、前面板2に設けた下方に突なホームベースの下側四辺に相当する切れ込みから切り起こした前ポット係合片22と、同じく後面板4に設けた下方に突なホームベース状の下側四辺に相当する切れ込みから切り起こした後ポット係合片42とは、前記湾曲部位から下方に向けて突出する。
【0031】
そして、図7に見られるように、最後に後面板4から下方に突な連結フラップ43を切り起こし、前記連結フラップ43の下端から突出する半円状の連結片431と、前記連結片432の直上に切れ込みを入れて設けられた半円状の連結片432とを、前面板2の前ポット係合片22の直上に開口した連結孔23へ共に挿入し、上下一対の連結片432それぞれを連結孔23の上下に係合させて連結すれば、吊り下げ具1が完成する。連結片431は絵半円状とすることで、正面視略正方形の連結孔23に挿入しやすくしている。園芸用ポット5は、組み立てた吊り下げ具1の底面板3に後から載せてもよいし、前記底面板3に載せた状態で、前面板2及び後面板4を組み立ててもよい。
【0032】
連結フラップ43の前面は広告面43として、前記連結フラップ43を切り起こした後の開口は覗き孔45として利用できる。また、孔明けフラップ432を切り起こして吊り下げ孔433を開口し、前記吊り下げ孔433にハンガー(図示略)等を挿通させ、園芸用ポット5を保持した吊り下げ具1を吊り下げて展示販売し、購入後持ち運びでき、育成にもそのまま利用できる。複数の吊り下げ具1を直接持ち運ぶ場合、各吊り下げ具1の吊り下げ孔433に連結棒(図示略)を挿通させ、複数の吊り下げ具1を一体に持ち運べるようにすると便利である。従来同様、園芸用ポット5を保持させた吊り下げ具1を、樹脂フィルム袋に収納して持ち運んでも構わない。
【0033】
持ち帰り後、園芸用ポット5の育成に際して吊り下げ具1が不要な場合、園芸用ポット5を吊り下げ具1から取り出して、残った吊り下げ具1をそのまま捨てても構わない。吊り下げ具1を紙製シート又は樹脂製シートから構成した場合、可燃物として廃棄できる。園芸用ポット5を取り出した吊り下げ具1は、連結片431,431を連結孔23から引き抜いて再び1枚の可撓性又は弾性シートに展開すれば、嵩張らずに保管又は廃棄できる。連結フラップ43は、後面板4に対する折曲げ縁をミシン目とすることにより容易に後面板4から切り離すことができるようになり、例えば園芸用ポットから取り出した植物を花壇に植えたり、鉢植えしたりする際の名札として利用できる。
【0034】
別例1の吊り下げ具1は、図8及び図9に見られるように、前面板2、底面板3及び後面板4からなる単位列A,Bを2列有する1枚の可撓性又は弾性シートから構成される(図9中、一点鎖線で単位列A,Bを区別)。単位列A,Bそれぞれは、上記例示(図1〜図7参照)と同じ構成で、連結フラップ43が2つ形成される。これから、別例1の吊り下げ具1は、広告面24が2倍になり、例えば左右の広告面24にわたってより大きなポップを貼り付けることができる利点がある。単位列A,Bは、同種又は異種の園芸用ポット5を保持させることができる。
【0035】
単位列A,Bは、上記例示と同じ構成であることから、組み立て順も上記例示に従う。すなわち、底面板3から折り曲げて立たせた前面板2の連結孔23に、同じく底面板3から折り曲げて立たせた後面板4から更に切り起こした連結フラップ43の連結片431,421を挿入して、前面板2及び後面板3を連結して個別に組み立てる。単位列A,Bの各底面板3に載せた園芸用ポット5は、単位列A,Bそれぞれの前ポット係合片22及び後ポット係合片42に上縁部51を係合させて、安定に保持される。
【0036】
単位列A,Bは、各底面板3に形成される一対の受け片32,32が単位列A,B相互で離隔しながら、各前面板2及び後面板4の前ポット係合片22及び後ポット係合片42から上方になる部分が余白26,46を介して単位列A,B相互で繋がっている。余白26,46は、単位列A,Bそれぞれの底面板3に載せた園芸用ポット5相互間に隙間を形成する。前記隙間は、隣り合う園芸用ポット5相互の干渉を防止し、特に吊り下げ具1に園芸用ポット5を保持させて持ち運ぶ際、園芸用ポット5同士がぶつかる虞をなくす。
【0037】
別例1の吊り下げ具1は、孔明けフラップ432が相手側に寄った位置=全体の中央寄りに設けられている。これは、孔明けフラップ432を切り起こして形成される吊り下げ孔433に挿通するハンガー(図示略)が、左右一対の2本を一組にした構成の場合、前記一組が接近して設けられているため、前記ハンガーの構成に合わせて、前記孔明けフラップ432を切り起こして形成される吊り下げ孔433の間隔を狭くしたためである。このため、上記例示(図1〜図7参照)と異なり、孔明けフラップ432は、連結フラップ43の根元ではなく、後面板4を延長して拡げた部分に設けられている。
【0038】
別例2の吊り下げ具1は、図10及び図11に見られるように、前面板2、底面板3及び後面板4からなる単位列A,B,Cを3列有する1枚の可撓性又は弾性シートから構成される(図11中、一点鎖線で単位列A,B,Cを区別)。各単位列A,B,Cは、上記例示(図1〜図7参照)と同じ構成で、各底面板3に形成される一対の受け片32,32が単位列A,B相互で離隔しながら、各前面板2及び後面板4の前ポット係合片22及び後ポット係合片42から上方になる部分が余白26,46を介して単位列A,B相互で繋がっている点や孔明けフラップ432が全体の中央寄りに設けられている点は、上記別例2と同じ構成である。単位列A,B,Cは、同種又は異種の園芸用ポット5を保持させることができる。
【0039】
別例3の吊り下げ具1は、図12及び図13に見られるように、前面板2、底面板3及び後面板4からなる単位列A,B,Cを3列有する1枚の可撓性又は弾性シートから構成される(図13中、一点鎖線で単位列A,B,Cを区別)。別例3の吊り下げ具1は、単位列A,B,Cそれぞれが前面板2、底面板3及び後面板4を有し、底面板3に通水スリット31を設けて一対の受け片32,32を形成している点が上記例示、別例2及び別例3と共通であるが、単位列A,B,Cそれぞれの前面板2を前ポット係合片22から先に延長し、かつ相互に繋げて大きな広告面24を構成している点に特徴がある。単位列A,B,Cは、上記別例2同様、同種又は異種の園芸用ポット5を保持させることができる。
【0040】
単位列A,B,Cそれぞれの前面板2は、前折曲げ縁21から前ポット係合片22までが上記例示と同じ構成であるが、前記前ポット係合片22から延長し、余白26を介して前記延長部分を相互に繋げて、正面視略正方形の広告面24を形成している。そして、前記広告面24の上辺中央から横長である正面視長方形の前突片25を突出し、左右一対となる正面視略正方形の前吊り下げ孔241を開口して、前記前吊り下げ孔241の直下にスリット状の連結孔23を設けている。
【0041】
また、単位列A,B,Cそれぞれの後面板4は、後折曲げ縁41から後ポット係合片42までが上記例示と同じ構成であるが、前記後ポット係合片42から延長する部分を、余白46を含めて正面視略台形にまとめている。そして、前記台形の上辺中央から横長である正面視長方形の後突片44を連結片として突出し、左右一対となる正面視略正方形の後吊り下げ孔441を開口している。また、後ポット係合片42から延長する部分は、左右一対となる正面視変形五角形の覗き孔45,45を開口している。
【0042】
別例3の吊り下げ具1は、底面板3から折り曲げて前面板2を立たせ、同じく底面板3から折り曲げて後面板4を立たせて、後突片44を連結孔23に下方から挿入して前突片25に重ね合わせている。前面板2及び後面板4は、前記連結孔23に対する後突片44の挿入により連結される。また、重ね合わせた前面板2及び後面板4は、前吊り下げ孔251及び後吊り下げ孔441を連通させる。前面板2及び後面板4の重ね合わせは、前吊り下げ孔251及び後吊り下げ孔441の周囲を補強するので、単位列A,B,Cの底面板3すべてに園芸用ポット5を載せた状態であっても、ハンガー等を前吊り下げ孔251及び後吊り下げ孔441に挿通して吊り下げ具1を吊り下げることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 吊り下げ具
2 前面板
21 前折曲げ縁
22 前ポット係合片
23 連結孔
3 底面板
31 通水スリット
32 受け片
4 後面板
41 後折曲げ縁
42 後ポット係合片
43 連結フラップ
431 連結片
5 園芸用ポット
51 上縁部
A,B,C 単位列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
点対称な位置関係で平行な前折曲げ縁及び後折曲げ縁を設けた底面板と、前記前折曲げ縁を挟んで前記底面板と繋がる前面板と、前記後折曲げ縁を挟んで前記底面板と繋がる後面板とを有する1枚の可撓性又は弾性シートからなり、
前面板に設けた連結孔に、後面板に設けた連結片を挿入することにより、底面板から折り曲げて立たせた前面板及び後面板を連結し、
前折曲げ縁及び後折曲げ縁を越えて底面板を縦断する通水スリットを設け、前記通水スリットを挟んで形成される一対の受け片に跨がって園芸用ポットを載せる園芸用ポットの吊り下げ具。
【請求項2】
前面板又は後面板の一方又は双方は、底面板に形成される一対の受け片に跨がって載せられた園芸用ポットの上縁部に上方から係合するポット係合片を設けた請求項1記載の園芸用ポットの吊り下げ具。
【請求項3】
前面板又は後面板の一方又は双方は、上方に跳ね上げる孔明けフラップを設け、前記孔明けフラップを跳ね上げて形成される開口を吊り下げ孔にした請求項1又は2いずれか記載の園芸用ポットの吊り下げ具。
【請求項4】
後面板は、前面板と共に底面板から折り曲げて立たせた状態で、前記前面板に向けた連結フラップを切り起こし、前記連結フラップに連結片を設けた請求項1〜3いずれか記載の園芸用ポットの吊り下げ具。
【請求項5】
前面板は、後面板と共に底面板から折り曲げて立たせた状態で、連結孔より上方に突出する前突片を設け、後面板は、前記連結孔に挿通して上方に突出する後突片を設けて、互いに連通する前吊り下げ孔及び後吊り下げ孔をそれぞれ前突片及び後突片に設けた請求項1〜4いずれか記載の園芸用ポットの吊り下げ具。
【請求項6】
底面板、前面板及び後面板からなる単位列を複数有する1枚の可撓性又は弾性シートからなり、
底面板は形成される一対の受け片が単位列相互で離隔し、前面板及び後面板はそれぞれ一部又は全部が単位列相互で繋がった請求項1〜5いずれか記載の園芸用ポットの吊り下げ具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−66616(P2013−66616A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207958(P2011−207958)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(506026829)フォルツァ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】