説明

土中温度計測装置および土中温度計測方法

【課題】 植物の地下茎が存在する土中の加温を合理的に行える地下茎加温装置を提供する。
【解決手段】 帯状の半導体ヒータ(10)と、 その半導体ヒータ(10)の長手方向の両端を固定して筒状体を形成する樋状部材(20)と、 その樋状部材(20)および前記の半導体ヒータ(10)が形成する筒状体の内部空間(19)に対して空気を送り込むブロワ(31)と、を備える。 前記の樋状部材(20)には、前記の内部空間(19)およびその内部空間(19)の外側を連通させるための連通孔(21)を、樋状部材(20)の長手方向に複数備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の成長促進や品質の安定および向上のため、土中の温度測定をする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物や花卉類の出荷時期を多様化したり、成長速度を速めたり、品質の一定化や向上は、常に求められている。 その要求に対しては、加温による促成栽培が一般的である。
農作物、花卉類を問わず、植物の周囲温度を上昇させるため、外気を遮断するビニルハウスと、そのビニルハウス内の気温を加温する手段との組み合わせがもっとも普及している。 その加温の方法としては、重油ボイラが主流となっている。 花卉類の栽培においては、ヒートポンプの導入も一部で始まっている。
【0003】
近年では、ビニルハウス内の気温上昇の他、地下茎を暖めることで促成栽培に寄与させるため、土中の温度を上昇させる方法も普及している。 土中にパイプを埋設し、そのパイプ内に加温した流体を循環させる方法である。
この技術は、農圃の土壌温度を上昇させる加熱装置であって、前記加熱装置が、土壌中に埋設され、かつ、電熱ヒータを取り囲んで砂鉄である蓄熱体を充填した温熱管から構成され、前記温熱管の直径が30〜150mmの範囲であること、また、前記温熱管内の所定位置の蓄熱体温度を設定温度範囲内に制御する電熱ヒータの加熱制御装置を提供する、というものである。
【0004】
【特許文献1】特開2009−72202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地下にパイプを埋設し、そのパイプに温風を送り込む、といった技術には、以下のような問題点があった。
すなわち、温風の発生源から近い位置は、遠い位置よりも高温となり、パイプが長い場合には、温風の送り込み口と出口では大きな差ができてしまうという点である。
この点は、温風の送り込み口を多数設ける、送り込み口を頻繁にローテーションする、といった解決策もある。しかし、前者では設備が複雑となり、その設備コストが増大する、という問題があり、後者では、ローテーションをするための作業の手間が掛かる、という問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、植物の地下茎が存在する土中の加温を合理的に行える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するため、本願発明は、半導体ヒータを用いた技術を提供する。
【0008】
(第一の発明)
第一の発明は、植物の地下茎を加温するための装置に係る。
すなわち、帯状の半導体ヒータ(10)と、 その半導体ヒータ(10)の長手方向の両端を固定して筒状体を形成する樋状部材(20)と、 その樋状部材(20)および前記の半導体ヒータ(10)が形成する筒状体の内部空間(19)に対して空気を送り込むブロワ(31)と、を備える。
前記の樋状部材(20)には、前記の内部空間(19)およびその内部空間(19)の外側を連通させるための連通孔(21)を、樋状部材(20)の長手方向に複数備えた地下茎加温装置である。
【0009】
(用語説明)
「半導体ヒータ(10)」とは、通電すると発熱するヒータである。電熱線と比較すると、部位によって発熱のばらつきが極めて小さいことが特徴である。
「樋状部材(20)」とは、前記の「内部空間(19)」が形成されるような形状であればよく、代表的には半円形、「コ」字形、「く」字形などである。ねじれ方向のゆがみを防止するために溝を入れた「3」字形などもあり得る。半導体ヒータ(10)が加温した熱を拡散させたい場合には熱伝導率の高い素材を採用し、連通孔(21)からの熱拡散量を増やしたい場合には熱伝導率の低い素材を採用する。
【0010】
(作用)
樋状部材(20)に対して半導体ヒータ(10)の長手方向の両端を固定し、筒状体を形成する。形成された筒状体を、植物の地下茎を加温するのに適切な位置へ埋設する。 半導体ヒータ(10)に対して通電することで、内部空間(19)を加温することができる。
ブロワ(31)を用いて筒状体の内部空間(19)に対して空気を送り込むと、内部空間(19)にて加温された空気が連通孔(21)から吹き出し、地下茎を加温することができる。
【0011】
(発明のバリエーション1)
第一の発明は、以下のように形成しても良い。
すなわち、前記のブロワ(31)には、水蒸気発生装置(32)を備え、 その水蒸気発生装置(32)が発生させた水蒸気を前記の内部空間(19)へ送り込めるように形成する。
【0012】
(作用)
水蒸気発生装置(32)が水蒸気を発生させる。発生させた水蒸気は、ブロワ(31)が前記の内部空間(19)へ送り込む。 その結果、水蒸気を含んだ空気が連通孔(21)から吹き出し、地下茎に届く。水蒸気の温度が地下茎を取り巻く土壌よりも低ければ結露し、水まきと同様の効果を得ることができる。
【0013】
(発明のバリエーション2)
第一の発明は、地下茎の環境を測定するために土中へ埋設可能なセンサ(たとえば温度測定装置40)を備えることとしてもよい。
センサは、温度測定に限られず、湿度、pHなど、必要なデータを取得できるセンサを含む。
【発明の効果】
【0014】
本願発明によれば、植物の地下茎が存在する土中の加温を合理的に行える技術を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第一の実施形態を示す側断面図である。
【図2】第一の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施形態に基づいて更に詳しく説明する。ただし、本発明は、実施形態の態様に限られるものではない。 説明に使用する図面は、側断面たる図1および斜視図たる図2である。
【0017】
図1に示すように、加温対象となる植物が二列で植えられているとする。本実施形態では、その二列の間に地下茎加温装置の主要部を配置する。 更に具体的に説明する。
まず、U字形をなす樋状部材20に対して、帯状の半導体ヒータ10の長手方向の両端を固定し、内部空間19を備える筒状体を形成する。形成された筒状体は、加温対象である二列の植物の地下茎の間の土中へ埋設する。
【0018】
樋状部材20には、内部空間19およびその内部空間19の外側を連通させるための連通孔21を、樋状部材の長手方向に複数備えている。
また、内部空間19に対しては、空気を送り込むブロワ31が地上に設置してある。
さらに、地下茎の環境を測定するために、温度測定装置を設置している。すなわち、棒状の本体における長手方向の数カ所に熱電対を備えた温度測定棒41を所定の場所に埋設している。そして、その温度測定棒41が測定した温度を出力表示させる温度表示装置を地上に設置している。
【0019】
ブロワ31に隣接させて、水蒸気発生装置32を備えている。そして、その水蒸気発生装置32とブロワ31とは、送風パイプ33によって樋状部材20と連通させている。
半導体ヒータ10は、地上に設置した温度コントローラ11の操作によって、所望する温度となるように、均一に加温される。 半導体ヒータ10によって内部空間19を加温することができ、ひいては、二列の植物を、ほぼ均等に加温できる。
【0020】
ブロワ31を用いて筒状体の内部空間19に対して空気を送り込むと、内部空間19にて加温された空気が連通孔21から吹き出し、地下茎を加温することができる。
水蒸気発生装置32が水蒸気を発生させ、発生させた水蒸気をブロワ31が前記の内部空間19へ送り込むこともできる。 その場合、水蒸気を含んだ空気が連通孔21から吹き出し、地下茎に届く。水蒸気の温度が地下茎を取り巻く土壌よりも低ければ結露し、水まきと同様の効果を得ることができる。
【0021】
本実施形態においては、半導体ヒータ10によって得られた熱を樋状部材20の下方へ伝達することが加温対象の植物にとって適正とは言えず、熱エネルギが無駄になる。したがって、樋状部材20を熱伝導率が低い材質にて形成している。
ただし、対象植物の種類や地下茎の発達具合、埋設場所などの条件によっては、半導体ヒータ10によって得られた熱を樋状部材20の下方へ伝達することが有効な場合もある。そのような場合には、樋状部材20を熱伝導率が高い材質にて形成する。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、植物を栽培する施設の製造業、植物を栽培する施設における計測サービスや計測に伴うメンテナンス業、その計測データを処理するデータサービス業、データの送受信を司る情報通信業などにおいて利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0023】
10 半導体ヒータ 11 温度コントローラ
19 内部空間
20 樋状部材 21 連通孔
30 送風装置 31 ブロワ
32 水蒸気発生装置 33 送風パイプ
40 温度測定装置 41 温度測定棒
42 温度表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の半導体ヒータと、
その半導体ヒータの長手方向の両端を固定して筒状体を形成する樋状部材と、
その樋状部材および前記の半導体ヒータが形成する筒状体の内部空間に対して空気を送り込むブロワと、
を備え、
前記の樋状部材には、前記の内部空間およびその内部空間の外側を連通させるための連通孔を、樋状部材の長手方向に複数備えた地下茎加温装置。
【請求項2】
前記のブロワには、水蒸気発生装置を備え、
その水蒸気発生装置が発生させた水蒸気を前記の内部空間へ送り込めるように形成した請求項1に記載の地下茎加温装置。
【請求項3】
地下茎の環境を測定するために土中へ埋設可能なセンサを備えた請求項1または請求項2のいずれかに記載の地下茎加温装置。

【図1】
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【図2】
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