説明

土中温度計測装置および土中温度計測方法

【課題】 加温が均一に行え、且つ加温対象に対する設置作業を合理化するような技術として、半導体ヒータを用いた加温装置を提供する。
【解決手段】 帯状をなす電気式半導体ヒータである帯状半導体ヒータ(10)と、 その帯状半導体ヒータ(10)の幅方向の両端を支持して長手方向に生じる張力を増強する長手支持部材(12,13,14,15,16,20)と、を備えた加温装置とする。 長手支持部材は、帯状半導体ヒータ(10)における長手方向の両端を固定して筒状体を形成する樋状部材(20)としてもよい。 帯状半導体ヒータ(10)に対する前記の樋状部材(20)とは反対側の面を覆う樋蓋部材(24,25)を備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の成長促進や品質の安定および向上のため、土中の温度測定をする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物や花卉類の出荷時期を多様化したり、成長速度を速めたり、品質の一定化や向上は、常に求められている。 その要求に対しては、加温による促成栽培が一般的である。
農作物、花卉類を問わず、植物の周囲温度を上昇させるため、外気を遮断するビニルハウスと、そのビニルハウス内の気温を加温する手段との組み合わせがもっとも普及している。 その加温の方法としては、重油ボイラが主流となっている。 花卉類の栽培においては、ヒートポンプの導入も一部で始まっている。
【0003】
近年では、ビニルハウス内の気温上昇の他、土中の温度を上昇させる方法も普及している。 土中にパイプを埋設し、そのパイプ内に加温した流体を循環させる方法である。
【0004】
先行する技術として、特許文献1に記載される技術がある。 この技術は、農圃の土壌温度を上昇させる加熱装置であって、前記加熱装置が、土壌中に埋設され、かつ、電熱ヒータを取り囲んで砂鉄である蓄熱体を充填した温熱管から構成され、前記温熱管の直径が30〜150mmの範囲であること、また、前記温熱管内の所定位置の蓄熱体温度を設定温度範囲内に制御する電熱ヒータの加熱制御装置を提供する、というものである。
【0005】
【特許文献1】特開2009−72202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
土中に埋設したパイプを用いて加温流体を循環させる技術では、流体が循環を始める最初と最後で温度差が生じてしまうという問題点があった。
そこで、半導体ヒータという製品を用いることで、その問題が解消されると期待される。
しかし、加温対象が地下茎であるような場合、半導体ヒータを土中へ埋設して使用するという前例が発見できず、どのようにすればよいのかは、試行錯誤するしかなかった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、加温が均一に行え、且つ加温対象に対する設置作業を合理化するような技術として、半導体ヒータを用いた技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(第一の発明)
第一の発明は、 帯状をなす電気式半導体ヒータである帯状半導体ヒータ(10)と、 その帯状半導体ヒータ(10)の幅方向の両端を支持して長手方向に生じる張力を増強するための長手支持部材(12,13,14,15,16,20)と、を備えた加温装置に係る。
【0009】
(用語説明)
「長手支持部材」は、帯状半導体ヒータ(10)に対して、少なくともその帯部の幅両端を支持していればよい。 バリエーションについては後に詳述するが、たとえばワイヤ状の長手支持部材(側部固定ワイヤ12)のように多少の可撓性を備えていても良いし、底面固定体(13)のようにあまり変形しない部材であっても良い。
【0010】
(作用)
帯状半導体ヒータ(10)の幅方向の両端に、長手支持部材(12,13,14,15,16,20)を支持させる。それによって帯状半導体ヒータ(10)の長手方向に生じる張力に抗する強さが増強される。 そのため、加温対象に対して設置する作業において帯状半導体ヒータ(10)が切断したり、破損したりする事態を抑制できる。
【0011】
(発明のバリエーション1)
第一の発明における前記の長手支持部材は、前記の帯状半導体ヒータ(10)における長手方向の両端を固定して筒状体を形成する樋状部材(20)としてもよい。
ここで、樋状部材(20)の形状は、長手方向に垂直な断面形状が、「U」字形、「コ」字形、「く」字形、半円形など、いずれであってもよい。ねじれ方向のゆがみを防止するために溝を入れた「3」字形などもあり得る。
【0012】
(作用)
帯状半導体ヒータ(10)の幅方向の両端に、樋状部材(20)を支持させる。それによって帯状半導体ヒータ(10)の長手方向に生じる張力に抗する強さが増強される。
この場合、帯状半導体ヒータ(10)および樋状部材(20)によって、筒状体が形成される。その筒状体の内部空間(28)は、加温対象に応じて様々な利用法があり得る。
【0013】
(発明のバリエーション2)
前記のバリエーション1は、以下のように形成しても良い。
すなわち、 前記の帯状半導体ヒータ(10)に対する前記の樋状部材(20)とは反対側の面を覆う樋蓋部材(24,25)を備える。
この樋蓋部材は、樋状(24)であっても、平板状(25)であってもよく、加温対象や設置場所などの条件に応じて選択する。 樋状(24)を採用した場合には、筒状体が形成され、内部空間(29)も形成される。この内部空間(28)もまた、加温対象に応じて様々な利用法があり得る。
【0014】
(作用)
樋蓋部材(24,25)を備えることによって、帯状半導体ヒータ(10)の長手方向に生じる張力に抗する強さが更に増強される。 帯状半導体ヒータ(10)の両面ともが保護されるので、設置条件が過酷でも帯状半導体ヒータ(10)を保護できる。
【0015】
(発明のバリエーション3)
前記の長手支持部材は、前記の帯状半導体ヒータの一面を覆う中実部材(13,14,15,16)としてもよい。
中実部材としては、三角柱(13)、厚めの平板(14)または四角柱(16)、円柱(15)などがある。 加温対象や設置条件によって選択する。
【0016】
(発明のバリエーション4)
前記のバリエーション3における中実部材(13,14,15,16)は、熱伝導率の低い素材を採用する場合がある。
熱伝導率の低い素材であれば、中実部材(13,14,15,16)側に熱が逃げにくくなる。 加温対象や設置条件によって選択する。
【発明の効果】
【0017】
本願発明によれば、加温が均一に行え、且つ加温対象に対する設置作業を合理化するような技術として、半導体ヒータを用いた技術を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第一の実施形態の主要部を示す組み立て斜視図である。
【図2】第一の実施形態に用いる帯状半導体ヒータを示す斜視図である。
【図3】第二の実施形態の採用現場を示す斜視図である。
【図4】第二の実施形態の採用現場を示す側断面図である。
【図5】帯状半導体ヒータに用いる長手支持部材のバリエーションを示す長手方向に垂直な断面図である。
【図6】帯状半導体ヒータに用いる長手支持部材のバリエーションを示す長手方向に垂直な断面図である。
【図7】帯状半導体ヒータに用いる長手支持部材のバリエーションを示す長手方向に垂直な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施形態に基づいて更に詳しく説明する。ただし、本発明は、実施形態の態様に限られるものではない。
下記の説明に用いる図面は、図1から図7である。
【0020】
以下に説明する実施形態は、図3および図4に示すように、植物の地下茎を加温することを目的とした加温装置である。 加温対象となる植物が二列で植えられており、本実施形態では、その二列の間の土中に加温装置を埋めて配置することとなる。
【0021】
(図1)
図1には、第一の実施形態に係る加温装置の組み立て斜視図を示す。 この加温装置は、帯状をなす電気式半導体ヒータである帯状半導体ヒータ10と、 その帯状半導体ヒータ10の幅方向の両端を支持して長手方向に生じる張力を増強するための樋状部材20と、を備える。
樋状部材20の両上端に、帯状半導体ヒータ10の仮面両端を固定していくことで、この加温装置を組み立てる。
【0022】
樋状部材20の長手方向には、樋状部材20の内部空間およびその内部空間の外側を連通させるための連通孔21を、複数備えている。 また、図示を省略するが、ブロワ装置を設置して内部空間へ送風できるように、そのブロワ装置と連通させるための送風孔22を備えている。送風孔22から送風された場合、帯状半導体ヒータ10にて暖められた内部空間の空気が連通孔21から土中へ送り込まれることとなる。
樋状部材20の端部には、必要に応じて端部閉塞用の蓋を固定する。
【0023】
(図2)
図2は、帯状半導体ヒータ10をロール状に丸めた状態を示している。 加温装置の組み立て現場までは、図2に図示する状態として運搬し、図1に示すように組み立てるのである。 促成栽培の温室などへ本実施形態の加温装置を設置する場合、その全長が10メートル、20メートルというような長さとなるため、現場での組み立てが合理的だからである。
【0024】
(図3、図4)
図3および図4に示すのは、土中に断熱シート50を敷設し、その断熱シート50の上方に、幅方向の両端へ側部固定ワイヤを備えた帯状半導体ヒータ10(図5(a)を参照)を土中に埋設したものである。
帯状半導体ヒータ10には、温度コントローラ11が接続され、地表面に設置されて操作できるようにしている。 この温度コントローラ11は、図示を省略した外部電源と接続されている。
【0025】
加温対象の植物の脇には、温度測定装置40を設置している。すなわち、棒状の温度測定棒41を土中に差し込み、その温度測定棒41が測定する土中の温度を表示させる温度表示装置42を地表面に設置している。 この温度表示装置42を見ながら、前記の温度コントローラ11を調整することで、適正な温度となるようにするのである。
断熱シート50が存在するので、帯状半導体ヒータ10が発生させた熱は、断熱シート50の下方には逃げない。
【0026】
(図5(a))
図5(a)に示す実施形態は、帯状半導体ヒータ10に対して、その帯部の幅両端を側部固定ワイヤ12によって支持している。
この側部固定ワイヤ12は、帯状半導体ヒータ10に対して後付け加工であってもよいし、帯状半導体ヒータ10とともに製造されるものであってもよい。
帯状半導体ヒータ10とともに製造した場合する場合、側部固定ワイヤ12が可撓性を備えていれば、図2に示すようにロール状にすることができる。
後付けの場合には、帯状半導体ヒータ10に対する側部固定ワイヤ12の固定作業を、たとえば加温対象に対する設置場所において、行うこととなる。
【0027】
(図5(b))
図5(b)に示す実施形態は、長手方向支持部材として、長手方向に垂直な断面形状が鈍角二等辺三角形をなす三角柱(底面固定体13)を採用したものである。 帯状半導体ヒータ10における側部のみならず、片面全体を固定する。
底面固定体13は、中実なので、長手方向に対する張力に抗するのみならず、ねじれ方向にも強くなる。 なお、帯状半導体ヒータ10が発熱をするので、耐熱性のある素材で形成される。
【0028】
(図5(c))
図5(c)に示す実施形態は、長手方向支持部材として、長手方向に垂直な断面形状が面取りした長方である四角柱(底面固定体14)を採用したものである。 帯状半導体ヒータ10における側部のみならず、片面全体を固定する。
底面固定体14もまた、中実なので、長手方向に対する張力に抗するのみならず、ねじれ方向にも強くなる。 こちらも、帯状半導体ヒータ10が発熱をするので、耐熱性のある素材で形成される。
【0029】
(図6(a))
図6(a)に示す実施形態は、長手方向支持部材として、長手方向に垂直な断面形状が円形である円柱(半導体ヒータ固定丸棒15)を採用したものである。 帯状半導体ヒータ10の片面全体を、湾曲させて固定する。
なお、この実施形態では、上面側にのみ帯状半導体ヒータ10を固定しているが、全周に固定してもよいし、図示例よりも幅の狭い帯状半導体ヒータ10を固定してもよい。
【0030】
(図6(b))
図6(b)に示す実施形態は、長手方向支持部材として、長手方向に垂直な断面形状が菱形である円柱(半導体ヒータ固定角棒16)を採用したものである。 土中に埋設させた場合に上側となる二面へ帯状半導体ヒータ10,10を固定している。
【0031】
(図7(a))
図7(a)に示す実施形態は、図5(c)に示した実施形態の変形例である。 すなわち、長手方向支持部材として、長手方向に垂直な断面形状が面取りした長方である四角柱(底面固定体14)を採用し、上面に上面固定体17を固定したものである。
本実施形態では、上面固定体17は熱伝導率が高い材質にて形成し、底面固定体14は熱伝導率が低い材質にて形成している。それによって、帯状半導体ヒータ10が発生する熱は、上方(加温対象である植物の地下茎の方向)へ移動することとなる。
【0032】
(図7(b))
図7(b)に示す実施形態は、図1に示す実施形態の変形例である。 すなわち、長手方向支持部材として樋状固定体20を採用するとともに、樋状固定体20の反対側の面にはその樋状固定体20と同一形状の樋蓋部材24を固定する。
樋蓋部材24は熱伝導率が高い材質にて形成し、樋状固定体20は熱伝導率が低い材質にて形成している。それによって、帯状半導体ヒータ10が発生する熱は、内部空間28にはたまるものの、内部空間29を介して上方(加温対象である植物の地下茎の方向)へ移動することとなる。
【0033】
(図7(c))
図7(c)に示す実施形態は、図7(b)に示す実施形態の変形例である。 すなわち、U字形をなす樋蓋部材24に代わって、図7(a)に示したような板状の樋蓋部材25を固定したものである。
ここにおいても、蓋部材25は熱伝導率が高い材質にて形成し、樋状固定体20は熱伝導率が低い材質にて形成している。それによって、帯状半導体ヒータ10が発生する熱は、内部空間28にはたまるものの、上方(加温対象である植物の地下茎の方向)へ移動することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、帯状半導体ヒータの製造業、帯状半導体ヒータを用いた設備の製造業、そのような設備のメンテナンス業などにおいて利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0035】
10 帯状半導体ヒータ 10a 帯状半導体ヒータ(湾曲させたもの)
11 温度コントローラ
12 側部固定ワイヤ 13 底面固定体
14 底面固定体 15 半導体ヒータ固定丸棒
16 半導体ヒータ固定角棒 17 上面固定体
20 樋状部材 21 連通孔
22 送風孔 24 樋蓋部材
25 樋蓋部材
28 内部空間 29 内部空間
40 温度測定装置 41 温度測定棒
42 温度表示装置
50 断熱シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状をなす電気式半導体ヒータである帯状半導体ヒータと、
その帯状半導体ヒータの幅方向の両端を支持して長手方向に生じる張力を増強するための長手支持部材と、を備えた土中加温装置。
【請求項2】
前記の長手支持部材は、前記の帯状半導体ヒータにおける長手方向の両端を固定して筒状体を形成する樋状部材とした請求項1に記載の土中加温装置。
【請求項3】
前記の帯状半導体ヒータに対する前記の樋状部材とは反対側の面を覆う樋蓋部材を備えた請求項2に記載の土中加温装置。
【請求項4】
前記の長手支持部材は、前記の帯状半導体ヒータの一面を覆う中実部材とした請求項1に記載の土中加温装置。
【請求項5】
前記の中実部材は、熱伝導率の低い素材を採用した請求項4に記載の土中加温装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−200252(P2012−200252A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71208(P2011−71208)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】