説明

土嚢袋及び防水堤

吸水剤の膨張時における袋体表面の変形量を減らす。 袋体2に、水の吸収にて体積が膨張する吸水剤5を収めた密閉室3と、この密閉室3に隣接して内部に空間が形成された開放室4とを備え、上記吸水剤5の膨張に伴って密閉室3の内側面7を開放室4の内部空間へ向け膨出させることにより、吸水剤5の膨張力が分散されて、密閉室3の外側面3aの膨出が抑えられると共に、袋体2の上下面2a,2bの膨出量も減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に水害時に使用される土嚢袋及びそれを利用した防水堤に関する。
詳しくは、袋体内に、土の代用として水を吸収する吸水剤が収容される土嚢袋(土嚢代用袋)及び防水堤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の土嚢袋として、袋体(袋)が透水性の布状資材で形成され、その内部に吸水体(高吸水性樹脂物)が充填された土嚢(土のう)の表面のコーナー部と表面のほぼ真中に穴を夫々設け、これら表面の穴と、これに対向する裏面の穴とを筒状の布状資材により連通し、上記土嚢を地表に積み重ねた状態で、夫々のコーナー部及び真中の貫通穴に、鉄ピンや鉄柱や鉄杭などを挿通してその先端を地表に打ち込むか、又は上記貫通穴を設けず、各コーナーに取り付けたヒモで、隣接する土嚢同士を連結すると共に、外側の土嚢のヒモを地表に打ち込んだ鉄ピンに結んで固定したり、或いは積み重ねた土嚢にネットを被せて、このネットの周囲を地表に打ち込んだ鉄ピンで固定することにより、吸水体が水を吸収して水の比重と同じ程度になっても、流水の力に耐えて流されないようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、袋体の内部に、水の吸収にて体積が膨張する吸水剤(吸水性ポリマー)を収容し、袋体の布を通水して吸水することにより袋体内で膨張して、該袋体を積み重ねた時にもその上下面が凸とならず、上下面が平坦部を有して重なるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−75208号公報(第1−4頁、第1図−第5図)
【特許文献2】特開2000−303424号公報(第1−3頁、図1−図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来の土嚢袋では、貫通穴に挿通したピンや杭などを打ち込んで一体化したり、ヒモやネットで土嚢袋同士を一体的に連結しても、水の吸収に伴って夫々の土嚢袋が水の比重と同じ程度になることは変わりがなく、水中では浮力が作用するために流水の影響などにより浮動して位置ズレを起こし、その結果、土嚢袋同士の間に大きな隙間が簡単に発生して、水漏れを完全に防止できない恐れがあった。
そのため、このような従来の土嚢袋だけを積み上げで防水堤を構築しても、水漏れなどの対策や積み直しが必要になって、激しい水流に対して迅速に対応できないという問題があった。
また、特許文献2のように吸水剤の吸水によって袋体を膨張させる場合には、土嚢袋として確実に機能させるのに吸水剤を多目に収容する傾向があるため、吸水剤が膨張すると、袋体の上下面や外側面が膨出して夫々球面状に曲がってしまい、隣り合う土嚢袋同士の間に隙間ができて、水漏れの原因となると共に、積み上げた土嚢袋が崩れ易くなるという問題があった。
しかも吸水剤が膨張し過ぎると袋体の素材にも余計な負荷がかかかるため、膨張した袋体に僅かな衝撃や荷重が作用すると、破裂する恐れもあった。
【0005】
本発明のうち請求項1記載の発明は、吸水剤の膨張時における袋体表面の変形量を減らすことを目的としたものである。
請求項2記載の発明は、流水の影響などで位置ズレしない土嚢袋を提供することを目的としたものである。
請求項3記載の発明は、激しい水流に対して迅速に対応可能な防水堤を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、袋体に、水の吸収にて体積が膨張する吸水剤を収めた密閉室と、この密閉室に隣接して内部に空間が形成された開放室とを備え、上記吸水剤の膨張に伴い密閉室の内側面を開放室の内部空間へ向け膨出させて、少なくとも密閉室の外側面の膨出を抑えたことを特徴とするものである。
請求項2記載の発明は、袋体に、吸水剤を収めた密閉室と、この密閉室に隣接し外部に向け開口する開放室とを備え、この開放室の下方側に、重量物の支持と棒状物の打ち込みで突き破ることが可能な受け面を備えたことを特徴とする。
ここで言う「重量物」とは、現場で比較的に調達が容易な土砂などからなる。
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の土嚢袋を用いて構築したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち請求項1記載の発明は、袋体に、水の吸収にて体積が膨張する吸水剤を収めた密閉室と、この密閉室に隣接して内部に空間が形成された開放室とを備え、上記吸水剤の膨張に伴って密閉室の内側面を開放室の内部空間へ向け膨出させることにより、吸水剤の膨張力が分散されて、密閉室の外側面の膨出が抑えられると共に、袋体の上下面の膨出量も減少する。
従って、吸水剤の膨張時における袋体表面の変形量を減らすことができる。
その結果、隣り合う土嚢袋間の隙間による水漏れを減少でき、積み上げた土嚢袋が崩れ難くなって、積み直す手間が省けると共に、袋体の素材への負荷も減少するため、吸水剤5の膨張によって袋体の外側面と上下面だけしか膨出しない従来のものに比べ、膨張した袋体に衝撃や荷重が作用したり、多少乱暴に取り扱っても袋体が破裂し難いする恐れがない。
【0008】
請求項2の発明は、袋体に、吸水剤を収めた密閉室と、この密閉室に隣接して外部に向け開口する開放室とを備え、この開放室の下方側に、重量物の支持と棒状物の打ち込みで突き破ることが可能な受け面を備えることにより、この受け面の上に重量物を支持した時には、袋体及び吸水剤の重量に重量物の重さが追加されて土嚢袋全体の比重が水に比べ遙かに大きくなり、水中で浮力が作用しても土嚢袋全体が浮動せず、また棒状物の打ち込みで上記受け面を突き破った時には、この棒状物との係合で受け面が上下方向へ移動不能に保持されて、水中で浮力が作用しても土嚢袋全体が浮動しない。
従って、流水の影響などで位置ズレしない土嚢袋を提供することができる。
その結果、水の吸収により土嚢袋が水の比重と同じ程度になって位置ズレを起こし易い従来のものに比べ、土嚢袋の位置ズレを起因とした隣り合う土嚢袋間の大きな隙間の発生が格段に低下するから、それによる水漏れを確実に防止できる。
それにより、水害発生時に少ない労力で素早く敷設できる。
また使用後に土嚢袋を撤去する際には、受け面上に重量物が収容されているため、土嚢袋ごと移動して上下反転させるだけで重量物を排出でき、その結果、撤去作業が非常に簡単である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の土嚢袋を用いて構築することにより、積み上げられた土嚢袋が水中で浮動せず、確実に位置決めされる。
従って、激しい水流に対して迅速に対応可能な防水堤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の土嚢袋1は、図1〜図6に示す如く、透水性と通気性がある素材で形成された袋体2からなり、その内部には密閉室3と、この密閉室3に隣接して内部に空間が形成されると共に外部へ向けて開口する開放室4とを備え、この密閉室3内に水の吸収にて体積が膨張する吸水剤5を組み込み、上記開放室4の下方側には、該開放室4の開口6から内部空間に投入される重量物10の支持及び又は杭などの先端が尖った棒状物12の打ち込みで突き破ることが可能な受け面4aを設けている。
【0011】
上記袋体2は、水を吸収した吸水剤5が不通過な例えば不織布などの繊維を縫製するか、又はそれ以外の材料を接着するなどの他の手法で立体形状に形成され、保管や輸送などの不使用時には図2(a)に示す如く、該袋体2の側面2cや後述する仕切7が平面状に折り畳まれ、使用時には図2(b)に示す如く、後述する吸水剤5が水の吸収にて体積が膨張することで立体形状に膨らむ。
【0012】
図示例では、膨張時における袋体2の外形状を直方体形状とし、開放室4の開口6を矩形にしているが、袋体2の平面形状を例えば三角形や菱形や台形などの多角形としたり、略T型、略H型、略L型、略Z型、略十型など可能であり、これに伴って開放室4の開口6の平面形状も矩形以外に変更することも可能である。
【0013】
また、上記袋体2の内部は、図1(a)〜(c)に示す如く、仕切7を設けて、複数の空間に区切られており、これら空間を区切る方法としては、袋体2の内部に新たな生地を縫い合わせたり、袋体2の表と裏を直接縫い合わせるなど多様に選択可能だが、各空間は隣接する他の空間と連通しないように完全に区切られている。
【0014】
そして、上記空間のうち少なくとも一区画を密閉室3と呼び、この密閉室3は袋体2や仕切7で全面的に囲まれて、外部から固形物が入り込む余地はない。
また密閉室3以外の空間を開放室4と呼び、この開放室4も袋体2や仕切7で取り囲まれているが、袋体2の一部が開口して外部と通じている。
【0015】
上記密閉室3と開放室4を隔離している仕切7は、過酷な条件で使用された場合にも破損することのないよう十分な強度が必要で、袋体2との接合部には隙間や切れ目は存在しない。
上記密閉室3は、袋体2と仕切7で囲まれた閉じた空間であるが、水や空気などは内外を自由に通過でき、その内部には吸水剤5が収容されている。
【0016】
この吸水剤5は、真水や海水などの水分を吸収する前と後では容積が大きく変化する例えば高分子ポリマーなどからなり、粉末状である場合には、取り扱いを容易にするため紙製の小袋に収容した状態で、粘着テープや糊付けやステープラーなどの従来周知な固着方法により密閉室3内の定位置に固定され、水分を吸収すると膨張して小袋を破って更に拡大を続けるようになっている。
更に、膨張した吸水剤5は寒天のように柔軟性があれば、密閉室3の内部形状が複雑な空間であっても隅まで埋め尽くすことが可能である。
【0017】
一方、上記開放室4は、仕切7や袋体2の側面2cにて囲まれ、その上面に袋体2の外部に通じる開口(投入口)6が開設される。
図示例では、開放室4の開口6にフタなどを備えていないが、必要に応じてボタンや面ファスナーなどを用いて、着脱可能なフタを備えることも可能である。
【0018】
更に、上記開放室4の下方側には、それを覆う受け面4aが設けられ、図示例では、開放室4の底面を受け面4aで覆っているが、それより上方に受け面4aを配置することも可能である。
【0019】
そして、この受け面4aの上に、上記開口6から後述する重量物10を投入した時には、該重量物10が支持されて開放室4の内部に詰め込み可能にしている。
上記重量物10としては、水害の発生し易い現場で比較的に調達が容易な土砂などの固形物だけでなく、それ以外に水より比重が重いものであれば代用は可能である。
【0020】
また、上記受け面4aに対し、杭などの先端が尖った棒状物12を打ち込んで突き破った時には、これら受け面4aと棒状物12との摩擦係合で該受け面4aが上下方向へ移動不能に保持されるようにすることも可能である。
【0021】
従って、上記受け面4aは、土砂などの重量物10を開放室4の内部に収容できれば、例えば不織布などの繊維に限らず、網などで覆うことも可能であると共に、打ち込まれた杭などの棒状物12との摩擦抵抗を増やすために、杭などの棒状物12の外周面に軸方向へ複数の凹凸部などを形成することも可能である。
【0022】
更に、上記袋体2の上下両面2a,2bに、袋体2の積み重ねに際しての滑り落ちを防ぐ滑り止め部8が形成されており、地表面や他の土嚢袋1との間で十分な摩擦力を確保して、より強力に水流に対抗できる。
この滑り止め部8の具体的な形態としては、図示せる如く、ゴム製の半球状の突起を適宜間隔で並べるなどの方法があるが、十分な摩擦力を確保できれば、他の形状でも良い。
また、上記袋体2の端部には、図示されたヒモやベルクロファスナーなどの他の土嚢袋1との連結手段9を備えており、他の土嚢袋1と連結することもできる。
【0023】
従って、本発明の土嚢袋1は、使用の際に水害現場へ輸送した後、図1及び図2(b)に示す如く、水に浸っている地表面に袋体2を開放室4の開口6が上に向くように置くと、袋体2が水分を吸収して吸水剤5にも到達するため、吸水剤5が膨張して密閉室3全体を押し広げ、これと隣り合う開放室4も、その内部が空洞のまま膨らんで、最終的には袋体2全体が立体形状に膨らむ。
【0024】
この際、上記吸水剤5の膨張に伴って、図2(b)の二点鎖線に示す如く、少なくとも密閉室3の外側面3aが外方へ向けて膨出すると同時に、密閉室3の内側面である仕切7も、開放室4の内部空間へ向けて膨出する。
それにより、吸水剤5の膨張力が分散されて、密閉室3の外側面3aの膨出量が抑えられるだけでなく、袋体2の上下面2a,2bの膨出量も減少する。
【0025】
従って、密閉室3の内側面である仕切7の表面積が広くなるほど、密閉室3の外側面3a及び袋体2の上下面2a,2bの膨出量を減少できるため、密閉室3の開口面積を可能な限り広く確保する必要がある。
その結果、吸水剤5の膨張時における袋体2表面の変形量を減らすことができて、隣り合う土嚢袋1の間に隙間が発生し難くなると共に、袋体2を構成する不織布などの素材への負荷も減少するから、落下テストをした結果、性能が2倍以上に向上した。
【0026】
このように吸水剤5が膨れ上がった段階で、袋体2は土嚢袋1として機能し始めるが、膨張した吸水剤2は比重が水と同程度で、水中では浮力が作用するため簡単に押し流される恐れがあり、激しい水流に対抗するには、さらに重量を増加させる必要がある。
【0027】
このため本発明では、吸水剤5が膨らんだ後に、近隣から集めた土砂などの重量物10を、スコップ11で開口(投入口)6から開放室4内の空間に詰めると、土砂は水の数倍の比重があるため、土嚢袋1の重量は素早く増加する。
それにより、本発明の土嚢袋1は、水中で浮力が作用しても土嚢袋1が浮動せず、流水の影響などによって位置ズレしない。
【0028】
また、このような重量物10に代えて、上記受け面4aに杭などの棒状物12を打ち込んで突き破った場合も、この棒状物12と係合で受け面4a及び袋体2が下方へ押圧されたまま保持されるため、水中で浮力が作用しても土嚢袋1が浮動せず、流水の影響などによって位置ズレしない。
【0029】
その結果、これらのどちらか一方を採用するだけで、土嚢袋1の位置ズレを起因とした隣り合う土嚢袋1の相互間や地表面との間に大きな隙間が発生しなくなり、それによる水漏れを確実に防止できる。
以下、本発明の各実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0030】
この実施例1は、図1〜図3に示す如く、前記袋体2が使用時において、その少なくとも上下両面2a,2bがほぼ平行な直方体形状に膨らむように形成され、その外縁に沿って密閉室3を環状に形成し、この密閉室3で囲まれるように開放室4が区画形成された場合を示すものである。
【0031】
上記袋体2の膨張時において、その上下両面2a,2bがほぼ平行な状態を保持できるように、上下両面2a,2bを他の面に比べて厚い素材や変形し難い素材で形成するなど、袋体2の側面2cや仕切7に比べて曲がり難くすることが好ましい。
【0032】
従って、図1〜図3に示すに示す実施例1は、土砂などの重量物10を詰め込む開放室4が袋体2のほぼ中央に配置されるため、重量バランスに優れ、重量物10を詰め込でから土嚢袋1を持ち運びする際に運び易いと共に、土嚢袋1を積み重ねた際に崩れ難いという利点がある。
【0033】
また、図3に示す如く、開放室4の底壁4aを突き破るように上から杭などの棒状物12を打ち込めば、開放室4内に収容された重量物10で棒状物12の回りが囲まれて、この杭などの棒状物12に対して土嚢袋1全体が移動不能に位置決めされるため、土嚢袋1を確実に固定できるという利点がある。
【0034】
更に、本発明の土嚢袋1を上下方向へ一列に積み上げて、全ての開放室4が上下方向へ重なるように配置し、これらの開放室4を貫通するように杭などの棒状物12を打ち込んで複数の土嚢袋1を串刺し状に一体化すれば、棒状物12による密閉室3の破裂で吸水剤5が外部に排出することなく、個々の土嚢袋1を結合して外力を広範囲に分散でき、それにより、一層抵抗力が増大して、より強靭性を増強でき、しかも、これら積み上げた隣接する各列の土嚢袋1同士をヒモなどの連結手段9で連結すれば、更に強固な防水堤Aを簡単に構築できる。
【0035】
なお、図示例では、袋体2のほぼ中央に開放室4を1つのみ形成しているが、これに限定されず、この袋体2が水平方向へ直線状に延長された場合には、その延長方向へ適宜間隔毎に開放室4を複数形成しても良い。
【実施例2】
【0036】
この実施例2は、図4に示す如く、前記袋体2の長手方向中央位置に密閉室3を配置して、この両側に開放室4を配置したもので、図中の破線で示す位置に配置された仕切7で袋体2の内部を分割すると共に、これら仕切7と袋体2の側面2cとで開放室4が囲まれ、各仕切7から袋体2の両側端寄りに開放室4が離れているため、夫々が独自の開口(投入口)6を備えている構成が、前記図1〜図3に示した実施例1とは異なり、それ以外の構成は図1〜図3に示した実施例1と同じものである。
【0037】
従って、図4に示す実施例2は、前記図1〜図3に示した実施例1と同様な作用効果に加えて、片方の開放室4にだけ重量物10を詰め、他方には重量物10を詰めずに杭などの棒状物12を打ち込むために使用する、というような役割分担が可能になり、重量物10を詰めていない方に杭などの棒状物12を打ち込むことで、打ち込み作業を素早く終えることができるという利点がある。
【実施例3】
【0038】
この実施例3は、図5に示す如く、前記袋体2の長手方向中央位置に開放室4を配置すると共に、この両側に密閉室3を配置した構造で、これらの密閉室3は、完全に独立しているため両方に吸水剤5を組み込んだ構成が、前記図1〜図3に示した実施例1及び図4に示す実施例2とは異なり、それ以外の構成は図1〜図3に示した実施例1又は図4に示す実施例2と同じものである。
【0039】
従って、図5に示す実施例3は、前記図1〜図3に示した実施例1と同様な作用効果に加えて、袋体2の中央部全域を開放室4とすることで、重量物10を詰め込み可能な容積が増加するため、土嚢袋1の重量を更に増加させることが可能で、より激しい水流に対抗できるという利点がある。
【実施例4】
【0040】
この実施例4は、図6に示す如く、前記袋体2を長手方向へ等分して夫々の中心位置に開放室4を夫々複数配置し、土嚢袋1の積み上げ時において各段毎に、土嚢袋1の長手寸法を開放室4の個数で除算した寸法分だけ長手方向へずらして互い違いに配置することにより、夫々の開放室4が上下方向へ一列に並ぶようにし、これら各列の開放室4を貫通するように杭などの棒状物12を打ち込んで複数の土嚢袋1を串刺し状に一体化した構成が、前記図1〜図3に示した実施例1とは異なり、それ以外の構成は図1〜図3に示した実施例1と同じものである。
【0041】
図示例では、袋体2を長手方向へ二等分して夫々の中心位置に開放室4が2つ配置された土嚢袋1を、各段毎にその長手寸法の1/2だけずらして互い違いに配置したが、これに限定されず、開放室4が3つ以上配置された土嚢袋1を積み上げる際も上述した如く互い違いに配置すれば、夫々の開放室4が上下方向へ一列に並び、杭などの棒状物12を打ち込んでも密閉室3を貫通して吸水剤5が外部に排出しない。
【0042】
従って、図6に示す実施例4は、前記図1〜図3に示した実施例1と同様な作用効果に加えて、前記図3に示した土嚢袋1を上下方向へ一列に積み上げてから、各列の開放室4を貫通するように杭などの棒状物12を打ち込んで複数の土嚢袋1を串刺し状に一体化した防水堤Aに比べ、より強度の高い防水堤A′を簡単に構築できるという利点がある。
【0043】
尚、前示実施例1〜4では、前記袋体2の中央側に開放室4を配置してその全ての側面が仕切7だけか又は仕切7と袋体2の側面2cで囲まれる場合を示しているが、これに限定されず、開放室4の上面に加えて少なくとも一側面が側方へ向けて開口するように配置しても良い。
その具体例としては、平面から見て略コの字形に配置された密閉室3で開放室4を囲まれるようにして、その一側方が開口するようにする。
この場合には、複数の袋体2を、各開放室4の開口する一側面が、隣り合う袋体2の側面2cで夫々塞がれるように一列に並べるか、或いは2つの袋体2を、これらの開放室4の開口する一側面同士が互い対向して連結されるように並べることにより、各開放室4の受け面4a上に重量物10の支持が可能となると共に、杭などの棒状物12の打ち込みで各開放室4の受け面4aを突き破ることも可能となる。
【0044】
更に、前記袋体2の外形状を少なくとも上下両面2a,2bがほぼ平行な立体形状にして、本発明の土嚢袋1を積み上げた時に、これら上下面全体が互いに面接触する場合を示したが、これに限定されず、袋体2の上面及び下面の一部に凹部を形成して、積み上げ時に互いに嵌り合う形状にしても良い。
これと同様に袋体2の側面2cの一部に凹部を形成して、本発明の土嚢袋1を同一平面上に並べて配置した時に、互い嵌り合う形状にしても良い。
【0045】
また、本発明の土嚢袋1だけを積み重ねて防水堤Aを構築したが、これに限定されず、本発明の土嚢袋1と、例えば登録実用新案30838684号公報に開示される袋体内に土を詰め込んで積み上げられる土嚢袋や、特開2000−303424号公報に開示される袋体内に吸水剤5として吸水ポリマーが収容された土嚢袋などの従来周知な土嚢袋とを組み合わせて積み上げることにより、防水堤A,A′を構築しても良い。
この場合も、本発明の土嚢袋1と従来周知な土嚢袋とを積み上げた時に、互いに嵌り合う形状にしたり、本発明の土嚢袋1と従来周知な土嚢袋とを同一平面上に並べて配置した時に、互い嵌り合う形状にしても良い。
【0046】
また更に、前記密閉室3内に水の吸収にて体積が膨張する吸水剤5を収容したが、これに限定されず、水の吸収にて体積が膨張しない吸水剤を密閉室3内に収容しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
[図1]本発明の土嚢袋の実施例1を示しており、(a)は上方から見た斜視図であり、(b)はA−A線に沿える縦断側面図であり、(c)はB−B線に沿える横断平面図である。
[図2](a)は折り畳み状態を示す斜視図であり、(b)は使用状態を示す斜視図である。
[図3]本発明の土嚢袋で構築した防水堤の縮小斜視図である。
[図4]本発明の土嚢袋の実施例2を示す斜視図である。
[図5]本発明の土嚢袋の実施例3を示す斜視図である。
[図6]本発明の土嚢袋で構築した防水堤の実施例4を示す縮小斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 土嚢袋 2 袋体
2a 上面 2b 下面
2c 側面 3 密閉室
3a 外側面 4 開放室
4a 受け面 5 吸水剤
6 開口(投入口) 7 密閉室の内側面(仕切)
8 滑り止め部 9 連結手段
10 重量物 11 スコップ
12 棒状物 A 防水堤
A′ 防水堤
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋体(2)内に水を吸収する吸水剤(5)が収容される土嚢袋において、
前記袋体(2)に、水の吸収にて体積が膨張する吸水剤(5)を収めた密閉室(3)と、この密閉室(3)に隣接して内部に空間が形成された開放室(4)とを備え、上記吸水剤(5)の膨張に伴い密閉室(3)の内側面(7)を開放室(4)の内部空間へ向け膨出させて、少なくとも密閉室(3)の外側面(3a)の膨出を抑えたことを特徴とする土嚢袋。
【請求項2】
袋体(2)内に水を吸収する吸水剤(5)が収容される土嚢袋において、
前記袋体(2)に、吸水剤(5)を収めた密閉室(3)と、この密閉室(3)に隣接して外部に向け開口する開放室(4)とを備え、この開放室(4)の下方側に、重量物(10)の支持と棒状物(12)の打ち込みで突き破ることが可能な受け面(4a)を備えたことを特徴とする土嚢袋。
【請求項3】
請求項1または2記載の土嚢袋(1)を用いて構築したことを特徴とする防水堤。

【国際公開番号】WO2005/064086
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【発行日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516625(P2005−516625)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019299
【国際出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(502034556)
【Fターム(参考)】