土固化材混練機および地盤改良工法
【課題】地盤改良工事の現場へその都度運んでいって、各現場で掘削土とセメントミルクの混練りを行える土固化材混練機および地盤改良工法を提供する。
【解決手段】投入された土塊を収容する土収容部2と、土収容部2に隣接して設けられた土とセメントミルクを攪拌する攪拌部3とを備えており、土収容部2は、土収容ケース20と、その上面を開閉して閉止した状態で土収容ケース20を密閉する蓋22と、土収容ケース内で投入された土塊を攪拌部3に向けて押し込む押板26とを備えており、攪拌部3は、攪拌ケース30と、その内部で土とセメントミルクを攪拌する攪拌羽根37,38,39を備えている。土収容部2に土塊とセメントミルクを入れて蓋22で密閉し、押板26で攪拌部3に向け押し込めつつ、攪拌部内の攪拌羽根37,38,39で攪拌すれば、土塊とセメントミルクを混練りすることができる。
【解決手段】投入された土塊を収容する土収容部2と、土収容部2に隣接して設けられた土とセメントミルクを攪拌する攪拌部3とを備えており、土収容部2は、土収容ケース20と、その上面を開閉して閉止した状態で土収容ケース20を密閉する蓋22と、土収容ケース内で投入された土塊を攪拌部3に向けて押し込む押板26とを備えており、攪拌部3は、攪拌ケース30と、その内部で土とセメントミルクを攪拌する攪拌羽根37,38,39を備えている。土収容部2に土塊とセメントミルクを入れて蓋22で密閉し、押板26で攪拌部3に向け押し込めつつ、攪拌部内の攪拌羽根37,38,39で攪拌すれば、土塊とセメントミルクを混練りすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土固化材混練機および地盤改良工法に関する。さらに詳しくは、地盤改良工事の際に土塊とセメントミルク等の固化材を混練りするための土固化材混練機と、それを用いた地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
構築物の基礎に適した改良地盤を得るため、軟弱地盤にセメント系固化材液を混入攪拌して強度の高い地盤に改良する地盤改良工法がある。
その改良工法の一つに、バケット内に攪拌翼と液状固化材を噴出する噴出ロッドを備えたバックホウを用い、地盤の改良体造成部を掘削したあと液状固化材を土中に噴出させ、バケットと内蔵の攪拌翼とで土と液状固化材を混練りする工法がある。この地盤改良工法では、土を流動化した状態で地盤改良するので、締め固め工程を要せずブロック状改良体の製造も可能となる。
【0003】
ところで、前記地盤改良工法において、液状固化材と土の掘削を同時に行うと非常に時間がかかってしまう。なぜなら、掘削により粉砕された土塊と未粉砕の土塊が混在したドロドロ状態の中を未粉砕の土塊を探しながら粉砕していって、固化材と混練りするのは、内部を目視できない作業となるので、効率が悪く時間がかかるからである。
そこで、掘削した土塊を予め砕き攪拌しておいてから、液状固化材と混練りし、そのうえで改良体造成部に投入することが本発明者により検討された。この場合、掘削はバケットで行い、この時点では地盤を細かく砕く必要はなく、混練りは専用の機械を使えば能率よく細かく土を砕いたうえでセメントとの練り合せができると考えられるからである。
【0004】
しかるに、従来の土処理装置(特許文献1)は非常に大型のものしかなかった。
たとえば、特許文献1の従来技術は、非常に高く延びているフレームの上端に3基のホッパが設置されており、その下方にはそれぞれの物質(セメント、フライアッシュ、石灰)を収容する計量器が取り付けられている。そして計量器の下側にはエアスライダーが傾斜して配置され、計量器から流出する物質がこのエアスライダーを流れてミキサへ入ることが出来る。
ミキサの下方には大きな石を分別する振動スクリーンが設けられ、その下方にはホッパが配置されている。そしてホッパの下方には分散シュートと投入ホッパが配置されていて、分散シュートからは改良土がダンプトラックに積載され、投入ホッパからは流動化処理土がアジテータ車に移されるようになっている。
【0005】
特許文献1の従来技術は、上記のように非常に高さの高い大型の設備であり、いったん設置すると移動不可能なものでしかない。
したがって、地盤改良工事をする現場現場に運んでいって、その場に据え付けて利用することはできないので、大規模工事現場などの限られた現場でしか利用できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−115485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、地盤改良工事の規模の大小に拘らず現場へその都度運んでいって使用でき、各現場で掘削土とセメントミルク等の固化材との混練りを行える土固化材混練機を提供することを目的とする。
また、本発明は、土固化材混練機を用いた地盤改良工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の土固化材混練機は、投入された土塊を収容する土収容部と、該土収容部に隣接して設けられた土と固化材を攪拌する攪拌部とを備えており、前記土収容部は、土収容ケースと、その上面を開閉して閉止した状態で前記土収容ケースを密閉する蓋と、前記土収容ケース内で投入された土塊を前記攪拌部に向けて押し込む押板とを備えており、前記攪拌部は、攪拌ケースと、その内部で土と固化材を攪拌する攪拌羽根を備えていることを特徴とする。
第2発明の土固化材混練機は、第1発明において、前記土収容部は、前記蓋の開閉手段と前記押板の押込み手段を有しており、前記混練部は、前記攪拌羽根の回転駆動手段を有していることを特徴とする。
第3発明の土固化材混練機は、第2発明において、前記開閉手段は、前記蓋を開閉動作させる油圧シリンダで構成され、前記押込み手段は、前記押板を前記土収容部内で往復動させる油圧シリンダで構成されていることを特徴とする。
第4発明の土固化材混練機は、第2発明において、前記攪拌部は、その攪拌ケースにおける前記押板の押し込み方向前端部に混練りされた土を排出する排出口を備えていることを特徴とする。
第5発明の土固化材混練機は、第2発明において、前記土収容部の土収容ケースは円筒形であり、前記混練部の攪拌ケースも円筒形であって、互いに同一内径であって、かつ端部同士で接合されており、前記押板は、円形板であって、その外径は、前記土収容ケースの内径より少し小さい寸法であり、前記攪拌羽根の羽根の外径は、前記攪拌ケースの内径より少し小さい寸法であることを特徴とする。
第6発明の地盤改良工法は、請求項1記載の土固化材混練機を用い、改良予定区画を掘り下げる掘削作業と、この掘削作業で生じた掘削土を粉砕し、かつ固化材液と共に攪拌して混練り土を作る混練土生成作業と、前記混練り土を掘り下げられた前記改良予定区画内に投入する混練り土投入作業とを実行して地盤改良体を構成することを特徴とする。
第7発明の地盤改良工法は、第6発明において、前記掘削作業において、改良予定区画の全部を空洞に形成し、その後に混練り土生成作業と混練り土投入作業を実行することを特徴とする。
第8発明の地盤改良工法は、第6発明において、前記掘削作業において、改良予定区画の表層から下層に向けて部分的に掘削していき、その掘削土を使って混練り土生成作業と混練り土投入作業を実施し、これらの作業を繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、土収容部に土塊とセメントミルク等の固化材を入れて蓋で密閉し、押板で攪拌部に向け押し込めつつ、攪拌部内の攪拌羽根で攪拌すれば、土塊と固化材を混練りすることができる。この土固化材混練機は主たる部材が土収容部と攪拌部の2部材だけであり、コンパクトであるので改良地盤工事の現場へ運んでいって各現場で簡単に固化材混練り土を作ることができるので、地盤改良工事を容易に行うことができる。
第2発明によれば、開閉手段により蓋を開閉できるので、土を強制的に土収容ケース内に押し込んで密閉できる。また、押込み手段により押板を押すので石や砂利が混入した重い土塊であっても土収容ケース内から攪拌部内へ強制移動できるので、石や砂利を混合した自然地盤を確実に粉砕攪拌することができる。
第3発明によれば、開閉手段の油圧シリンダと押込み手段の油圧シリンダを、地盤改良現場で使用するバックホウの油圧源を利用して運転することもできるので、特別の動力源を用意する必要がなく、簡便に運転できる。
第4発明によれば、押板で押された土塊が攪拌部で攪拌されて細かな土となり、排出口から排出され、この段階で固化材と混練りされているので、そのまま改良区画へ投入することができる。
第5発明によれば、土収容ケースと攪拌ケースは同形状同寸であるので、石が混入した土塊であっても攪拌ケースの入口に引っ掛かることなく移動する。また、土収容ケース内で土を押す押板は、少し小さい外径なので土収容ケース内の土をほとんど残すことなく攪拌ケース内に押し込むことができ、攪拌ケース内では、その内径より少し小さい攪拌羽根で攪拌するので、土を残すことなく固化材と混練りすることができる。
第6発明によれば、改良予定区画を掘り下げつつ、そこで得られた掘削土で混練り土を生成して掘削部に投入する。混練り土は専用の土固化材混練機を用いて自然地盤の外で生成するので、短時間で良質の混練り土が得られる。また、掘削時に攪拌の必要がないので作業が短時間でできる。このため、改良体工事が短期で行え、かつ改良体の強度が均一で高品質になる。
第7発明によれば、改良予定区画の空洞を一気に形成するので、作業全体の期間が短くなる。
第8発明によれば、改良予定区画を部分的に深く掘り下げつつ、混練り土を投入していくので、崩れやすい地盤であっても投入された混練り土が掘削面の崩れを防止する。このため、地崩れの発生を抑制しつつ地盤改良が行える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る土固化材混練機の側面図である。
【図2】図1の土固化材混練機の一部透視平面図である。
【図3】図1の土固化材混練機の正面図である。
【図4】図1の土固化材混練機の内部構造を示す説明図である。
【図5】図2のV−V線拡大断面図である。
【図6】本発明の土固化材混練機の作業説明図であって、Iは土投入作業の説明図、IIは蓋閉止作業の説明図である。
【図7】本発明の土固化材混練機の作業説明図であって、IIIは押込み作業の説明図、IVは攪拌作業の説明図である。
【図8】掘削面が崩れない場所の地盤改良工事の説明図である。
【図9】図8に示す地盤改良工事のフローチャートである。
【図10】掘削面が崩れやすい場所の地盤改良工事の説明図である。
【図11】図10に示す地盤改良工事のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の一実施形態に係る土固化材混練機Aを図面に基づき説明する。
なお、本明細書における固化材とは、セメントミルク(水でセメント系固化材を溶かしたもの)が代表的であるが、これ以外であっても土を固化させるものであれば全てこれに含むものである。
図1および図2において、1は基台であって、その上部に土収容部2と攪拌部3が並べて配置されている。
土収容部2は、投入された土塊を収容して密閉し、攪拌部3へ押し込むための容器となる部材である。
攪拌部3は、土収容部2から押し込まれた土とセメントミルク等の固化材を攪拌混合する、いわゆる混練りする機構部分である。
【0012】
土収容部2は、図2および図3に示すように、土収容ケース20を備えており、この土収容ケース20は、下部の下ケース21と上部の蓋22とからなる。下ケース21の断面形状は半円であり、蓋22も閉じた状態では半円であって、土収容ケース20の全体としての断面は円形であって、全体形状は円筒形である。
土収容ケース20の外端部(反攪拌部3側)は、土収容ケース20の側端を塞ぐ側板を兼ねる支持板11により基台1に固定されている。
【0013】
土収容ケース20の上面を塞ぐ蓋22は、左右の蓋板22a,22bからなり、各蓋板22a,22bは角度にして90°分に湾曲した板材で構成されている。
各蓋板22a,22bの下縁は、下ケース21の上縁に蝶番23で開閉自在に連結されている。
このように、2枚の蓋板22a,22bからなる蓋22を開いておくと、土収容ケース20の上面から土を内部に投入することができる。そして、蓋22を閉じると、土収容ケース20を密閉でき、投入された土塊を円筒形に強制的に成形することができる。
【0014】
前記蓋22には開閉手段が取付けられている。各蓋板22a,22bの上面には杆24a,24bがそれぞれ取付けられ、その杆24a,24bと基台1との間には、それぞれ油圧シリンダ25a,25bが取付けられている(2本の油圧シリンダを区別しないときは、油圧シリンダ25と表示する)。
この油圧シリンダ25a,25bを伸長させると蓋板22a,22bを閉じ、収縮させると蓋板22a,22を開けることができる。図1は蓋22を閉じた状態、図2は蓋22を開いた状態を示している。図3において実線は蓋22を閉じた状態、想像線は蓋22を開いた状態を示している。
【0015】
図2および図4に示すように、前記土収容ケース20の内部には押板26が設けられている。この押板26は投入された土塊を土収容ケース20の一端側から攪拌部3側へ押し込む手段である。図5に示すように、押板26は円形板であって、その外径寸法は土収容ケース20(下ケース21と蓋板22a、22bからなる円)の内径より少し小さい寸法である。なお、押板26の中心部には後述する回転軸31を通すガイド筒29が形成されている。
【0016】
前記押板26には、押込み手段が設けられている。押込み手段は、2本の油圧シリンダ28,28からなり、そのシリンダ本体は前記支持板11に固定され、ピストンロッド28aが押板26の裏面に固定されている。このため、油圧シリンダ28,28を伸長させると、押板26を土収容ケース20内の一端から攪拌部3側に移動させることができ、油圧シリンダ28,28を収縮させると、押板26を攪拌部3の入側から元の端部側に移動させることができる。
【0017】
前記押板26の裏面に取付けられているガイド筒29は後述する回転軸31上を摺動するようになっている。このため、押込み手段で押板26を往復動させるとき、ガイド筒29が押板26の動きを円滑にする。
なお、図5に示すように、土収容ケース20の下ケース21の内周に軸方向に延びるガイドレール21gを取付け、押板26の外周にガイドレールを受入れる凹溝26gを形成しておけば、ガイドレール21gと凹溝26gが押板26の回転防止機構となる。
【0018】
図1、図2および図4に示すように、前記攪拌部3は円筒形の攪拌ケース30を備えている。
この攪拌ケース30は円筒形であって、その内径は前記土収容ケース20と同寸法である。
攪拌ケース30は前記土収容ケース20の内側端部と接合され、その接合部分において、支持フレーム32で基台1に結合され、また他端寄りの位置では小さい支持台33で基台1に結合されている。
攪拌ケース30の他端側では底部を一部切り欠いて排出口34を形成している。また、攪拌ケース30の側面は側板35で密閉されている。
【0019】
攪拌ケース30の中心線上には、回転軸31が配置されている。回転軸31の入力側は側板35に固定された軸受36aで回転自在に支持され、回転軸31の他端側は土収容ケース20の側板11に固定した軸受36bで回転自在に支持されている。
【0020】
図2および図4に示すように、攪拌ケース30の内部において回転軸31には、3組の攪拌羽根37,38,39が取付けられている。この3枚の羽根は、土収容ケース20に近い側から排出口34側に向けて、第1攪拌羽根37、第2攪拌羽根38、第3攪拌羽根39という。
【0021】
いずれの攪拌羽根も半径方向に延びる2枚の羽根から構成されているが、羽根の向きはそれぞれ変えられており、つぎのような機能を発揮するようになっている。
・第1攪拌羽根37:順方向
押し込み方向とは順方向に土を掻き込み、押板26で押されてきた土をスライスしセメントミルクと絡ませる。
・第2攪拌羽根38:中立
押込み方向に対し順方向でも逆方向でもなく、中立であって、土とセメントミルクをよく練り混ぜる。
・第3攪拌羽根39:逆流
押込み方向に対し逆方向の押し戻しを発生させる羽根であり、土を簡単には排出口34から出さないようにして、土とセメントミルクを更に練り混ぜる。
【0022】
前記回転軸31には、回転駆動手段が連結されている。
図1および図4に示すように、攪拌ケース30の端面には取付板41が取付けられており、その上部には駆動源である減速器付きモータ42が取付けられている。このモータ42の主軸にはスプロケット43が取付けられ、一方で回転軸31の入力端にもスプロケット44が取付けられている。そして、スプロケット43とスプロケット44にはチェーン45が巻き掛けられている。
このため、モータ42を駆動すると、回転軸31を回転させ、攪拌ケース30内で攪拌羽根37,38,39を回転させて、土とセメントミルクを混練りすることができる。
【0023】
つぎに、上記土固化材混練機Aの使用方法を説明する。
まず、本発明の土固化材混練機Aを地盤改良現場へ搬送していって現場に設置する。土固化材混練機Aは横に長い円筒体を基本とするコンパクトな構造であるため、長さが3.5m程度、重量が2トン程度であるため、一般のトラックで搬送でき、吊下ろすのもワイヤで玉掛けすればトラッククレーンを使ったり、バックホウを用いて吊下ろすことができる。よって、搬送設置も撤去も容易である。
本発明の土固化材混練機Aで混練りする土は、地盤改良現場における改良予定区画内の掘削土であることが一般的であり、この掘削土をバックホウで土固化材混練機Aに投入し、かつセメントミルクも投入して混練りすることになる。
【0024】
混練り作業を図6および図7に基づき以下順に説明する。
I 土投入作業
図6(I)に示すように、蓋22(22a、22b)を油圧シリンダ25(25a,25b)を収縮させて開いておく。また、押板26も油圧シリンダ27を収縮させて(図中右端へ)後退させておく。この状態で土収容ケース20の上面は大きく開口しているので、バックホウのバケット等を使って掘削土を投入する作業は容易に行える。
土塊Bの投入量は、土収容ケース20の内容積より多少多くてもよい。蓋22を閉めたとき、土塊Bを内部に押し込んだり、攪拌部3内に移動させて、土収容部2は密閉できるからである。
また、併せてセメントミルクを必要量だけ投入する。
【0025】
II 蓋閉止作業
図6(II)に示すように、2本の油圧シリンダ25(25a,25b)を伸長させて蓋体22a、22bを閉め土収容ケース20の蓋22を閉める。
既述のごとく、土塊Bを多目に投入しても、土塊の中に大小の石が混じっていてもよい。蓋22を閉めるとき大きな力が必要となるが、非圧縮性流体を使う油圧シリンダ25であれば、それに必要な充分な力を出すことができる。
このように蓋22で密閉したとき、内部の土塊を円筒形に押迫して成形することができる。
【0026】
III 押込み作業
図7(III)に示すように、油圧シリンダ28を伸長させて押板26を攪拌部側へ押し寄せると、土収容ケース20内の土塊は攪拌ケース30側に押し込まれる。土収容ケース20と攪拌ケース30は共に円筒形であって、内径が同寸であるので、後述する押板26で押し込むと、土収容ケース20内の土塊は攪拌ケース30内に支障なく押し込まれる。また、土塊は、円筒形に圧縮されているので、攪拌ケース30側に無理なく移動する。つまり、運転初めは攪拌ケース30内は空洞であり、運転継続中は土塊が連続的に排出口34に向けて移動するので、押し込みは容易である。
更に、このとき、土塊内に石が混入していても、土収容ケース20と攪拌ケース30は同寸の円筒形であるので、攪拌ケース30の入口で引っ掛かることもないので、押し込み作業が円滑に行われる。
【0027】
IV 攪拌作業
図7(III)(IV)に示すように、土塊を押し込みながら攪拌羽根37,38,39を同時に回転させる。このとき、土塊Bは、羽根で粉砕されて、細かな土となり、同時にセメントミルクと混練りされる。
また、押板26で押し込む量を油圧シリンダ28の伸長速度で均等に制御すると、攪拌もれなく全ての土塊Bを粉砕することができる。
【0028】
上記攪拌作業中、第1攪拌羽根37は土塊Bを掻き込みながらスライスしてセメントミルクを絡ませ、第2攪拌羽根38は、粉砕されつつある土とセメントミルクを練り混ぜを続け、第3攪拌羽根39は粉砕された土を押し戻しながら更に粉砕を続け、かつ練り混ぜを行う。
このようにして充分に細かく粉砕された土とセメントミルクを充分に混練りすると、排出口34から順々に練り合せ済みの土が改良体を形成すべき空洞内に排出される。
【0029】
排出された混練り済みの土は、改良区画内に投入されたあと、固化材と共に所定時間をかけて固化すれば、改良体として仕上がることになる。
【0030】
本発明の実施形態では、開閉手段の油圧シリンダ25と押込み手段の油圧シリンダ28専用の油圧源を用いて作動させてもよいが、地盤改良現場で使用するバックホウの油圧源を利用して運転することもでき、この場合、特別の動力源を用意する必要がなく、簡便に運転することができる。
【0031】
(地盤改良工法)
つぎに、本発明の土固化材混練機Aを利用した改良体工法を説明する。
図8および図9は地盤が固く掘削面が崩れない場所に適した地盤改良工法を示している。
同図(A)に示すように、掘削機Bで土塊Sを掘削して改良予定区画の全部を空洞Cに形成する。このとき、掘削した掘削土Sは周囲の地面上に置いておく。設計どおりの空洞ができると、(B)(C)図に示すように、掘削土Sを土固化材混練機Aに投入し、粉砕して固化材液を攪拌した混練り土scを作り、同時に改良予定区画内に投入する。混練り土scの投入を必要量だけ行うと、改良体RSが完成する。改良予定区画の空洞を一気に形成するので、作業全体の期間が短くなる。
【0032】
図10および図11は地盤から弱く掘削面が崩れやすい場所に適した地盤改良工法を示している。
同図(D)に示すように、改良予定区画の表層の一部を掘削する。また、そのとき得られた掘削土Sを同時に土固化材混練り機Aに入れて粉砕し固化材液と共に攪拌して混練り土scを作る。そして、部分的に掘削された改良予定区画内に投入する。
その後は、表層から下層に向けて未掘削部分を部分的に掘削していき、そのつど掘削土Sを土固化材混練機Aで混練り土scにして改良予定区画内に投入していく。
このような作業を繰り返していくと最終的には(E)図を経て(F)図に示すように、改良予定区画は混練り土scで充満していく。完全に混練り土scが充満すると、改良体RSが完成する。改良予定区画を部分的に深く掘り下げつつ、混練り土を投入していくので、崩れやすい地盤であっても投入された混練り土が掘削面の崩れを防止する。このため、地崩れの発生を抑制できる。
上記のように、この作業法では、改良予定区画の掘削面が崩れやすくても投入された混練り土scが掘削面の崩れを防止するので、改良体工事がやりやすくなる。
【0033】
上記のいずれの改良工事においても、改良予定区画において掘削しつつ、そこで得られた掘削土で混練り土を生成して改良予定区画内に投入する。混練り土は専用の土固化材混練機を用いて自然地盤の外で生成するので、短時間で良質の混練り土が得られる。つまり、本発明の土固化材混練機Aを用いれば、土塊を予め細かく砕きセメントミルクと充分に混ぜ合せておけるので、混練りと掘削のそれぞれの作業が専用機を用いて能率よく行える。
また、掘削と同時に攪拌する必要がないので掘削が短時間でできる。このため、改良体工事が短期で行え、かつ改良体の強度が均一で高品質になる。
【0034】
本発明の土固化材混練機Aは、既述のごとくトラックで運べる程度の大きさであるので、工事現場の規模が大きくても小さくても、各現場に運び入れて設置でき、また混練り作業を終えた後は、土固化材混練機Aをトラックで再び運び出し、別の現場へ移動することができるので、どのような現場で使用できるという利点がある。
【符号の説明】
【0035】
A 土固化材混練機
2 土収容部
3 攪拌部
20 土収容ケース
21 下ケース
22 蓋
25 油圧シリンダ
26 押板
28 油圧シリンダ
30 攪拌ケース
31 回転軸
37 第1攪拌羽根
38 第2攪拌羽根
39 第3攪拌羽根
42 モータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、土固化材混練機および地盤改良工法に関する。さらに詳しくは、地盤改良工事の際に土塊とセメントミルク等の固化材を混練りするための土固化材混練機と、それを用いた地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
構築物の基礎に適した改良地盤を得るため、軟弱地盤にセメント系固化材液を混入攪拌して強度の高い地盤に改良する地盤改良工法がある。
その改良工法の一つに、バケット内に攪拌翼と液状固化材を噴出する噴出ロッドを備えたバックホウを用い、地盤の改良体造成部を掘削したあと液状固化材を土中に噴出させ、バケットと内蔵の攪拌翼とで土と液状固化材を混練りする工法がある。この地盤改良工法では、土を流動化した状態で地盤改良するので、締め固め工程を要せずブロック状改良体の製造も可能となる。
【0003】
ところで、前記地盤改良工法において、液状固化材と土の掘削を同時に行うと非常に時間がかかってしまう。なぜなら、掘削により粉砕された土塊と未粉砕の土塊が混在したドロドロ状態の中を未粉砕の土塊を探しながら粉砕していって、固化材と混練りするのは、内部を目視できない作業となるので、効率が悪く時間がかかるからである。
そこで、掘削した土塊を予め砕き攪拌しておいてから、液状固化材と混練りし、そのうえで改良体造成部に投入することが本発明者により検討された。この場合、掘削はバケットで行い、この時点では地盤を細かく砕く必要はなく、混練りは専用の機械を使えば能率よく細かく土を砕いたうえでセメントとの練り合せができると考えられるからである。
【0004】
しかるに、従来の土処理装置(特許文献1)は非常に大型のものしかなかった。
たとえば、特許文献1の従来技術は、非常に高く延びているフレームの上端に3基のホッパが設置されており、その下方にはそれぞれの物質(セメント、フライアッシュ、石灰)を収容する計量器が取り付けられている。そして計量器の下側にはエアスライダーが傾斜して配置され、計量器から流出する物質がこのエアスライダーを流れてミキサへ入ることが出来る。
ミキサの下方には大きな石を分別する振動スクリーンが設けられ、その下方にはホッパが配置されている。そしてホッパの下方には分散シュートと投入ホッパが配置されていて、分散シュートからは改良土がダンプトラックに積載され、投入ホッパからは流動化処理土がアジテータ車に移されるようになっている。
【0005】
特許文献1の従来技術は、上記のように非常に高さの高い大型の設備であり、いったん設置すると移動不可能なものでしかない。
したがって、地盤改良工事をする現場現場に運んでいって、その場に据え付けて利用することはできないので、大規模工事現場などの限られた現場でしか利用できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−115485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、地盤改良工事の規模の大小に拘らず現場へその都度運んでいって使用でき、各現場で掘削土とセメントミルク等の固化材との混練りを行える土固化材混練機を提供することを目的とする。
また、本発明は、土固化材混練機を用いた地盤改良工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の土固化材混練機は、投入された土塊を収容する土収容部と、該土収容部に隣接して設けられた土と固化材を攪拌する攪拌部とを備えており、前記土収容部は、土収容ケースと、その上面を開閉して閉止した状態で前記土収容ケースを密閉する蓋と、前記土収容ケース内で投入された土塊を前記攪拌部に向けて押し込む押板とを備えており、前記攪拌部は、攪拌ケースと、その内部で土と固化材を攪拌する攪拌羽根を備えていることを特徴とする。
第2発明の土固化材混練機は、第1発明において、前記土収容部は、前記蓋の開閉手段と前記押板の押込み手段を有しており、前記混練部は、前記攪拌羽根の回転駆動手段を有していることを特徴とする。
第3発明の土固化材混練機は、第2発明において、前記開閉手段は、前記蓋を開閉動作させる油圧シリンダで構成され、前記押込み手段は、前記押板を前記土収容部内で往復動させる油圧シリンダで構成されていることを特徴とする。
第4発明の土固化材混練機は、第2発明において、前記攪拌部は、その攪拌ケースにおける前記押板の押し込み方向前端部に混練りされた土を排出する排出口を備えていることを特徴とする。
第5発明の土固化材混練機は、第2発明において、前記土収容部の土収容ケースは円筒形であり、前記混練部の攪拌ケースも円筒形であって、互いに同一内径であって、かつ端部同士で接合されており、前記押板は、円形板であって、その外径は、前記土収容ケースの内径より少し小さい寸法であり、前記攪拌羽根の羽根の外径は、前記攪拌ケースの内径より少し小さい寸法であることを特徴とする。
第6発明の地盤改良工法は、請求項1記載の土固化材混練機を用い、改良予定区画を掘り下げる掘削作業と、この掘削作業で生じた掘削土を粉砕し、かつ固化材液と共に攪拌して混練り土を作る混練土生成作業と、前記混練り土を掘り下げられた前記改良予定区画内に投入する混練り土投入作業とを実行して地盤改良体を構成することを特徴とする。
第7発明の地盤改良工法は、第6発明において、前記掘削作業において、改良予定区画の全部を空洞に形成し、その後に混練り土生成作業と混練り土投入作業を実行することを特徴とする。
第8発明の地盤改良工法は、第6発明において、前記掘削作業において、改良予定区画の表層から下層に向けて部分的に掘削していき、その掘削土を使って混練り土生成作業と混練り土投入作業を実施し、これらの作業を繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、土収容部に土塊とセメントミルク等の固化材を入れて蓋で密閉し、押板で攪拌部に向け押し込めつつ、攪拌部内の攪拌羽根で攪拌すれば、土塊と固化材を混練りすることができる。この土固化材混練機は主たる部材が土収容部と攪拌部の2部材だけであり、コンパクトであるので改良地盤工事の現場へ運んでいって各現場で簡単に固化材混練り土を作ることができるので、地盤改良工事を容易に行うことができる。
第2発明によれば、開閉手段により蓋を開閉できるので、土を強制的に土収容ケース内に押し込んで密閉できる。また、押込み手段により押板を押すので石や砂利が混入した重い土塊であっても土収容ケース内から攪拌部内へ強制移動できるので、石や砂利を混合した自然地盤を確実に粉砕攪拌することができる。
第3発明によれば、開閉手段の油圧シリンダと押込み手段の油圧シリンダを、地盤改良現場で使用するバックホウの油圧源を利用して運転することもできるので、特別の動力源を用意する必要がなく、簡便に運転できる。
第4発明によれば、押板で押された土塊が攪拌部で攪拌されて細かな土となり、排出口から排出され、この段階で固化材と混練りされているので、そのまま改良区画へ投入することができる。
第5発明によれば、土収容ケースと攪拌ケースは同形状同寸であるので、石が混入した土塊であっても攪拌ケースの入口に引っ掛かることなく移動する。また、土収容ケース内で土を押す押板は、少し小さい外径なので土収容ケース内の土をほとんど残すことなく攪拌ケース内に押し込むことができ、攪拌ケース内では、その内径より少し小さい攪拌羽根で攪拌するので、土を残すことなく固化材と混練りすることができる。
第6発明によれば、改良予定区画を掘り下げつつ、そこで得られた掘削土で混練り土を生成して掘削部に投入する。混練り土は専用の土固化材混練機を用いて自然地盤の外で生成するので、短時間で良質の混練り土が得られる。また、掘削時に攪拌の必要がないので作業が短時間でできる。このため、改良体工事が短期で行え、かつ改良体の強度が均一で高品質になる。
第7発明によれば、改良予定区画の空洞を一気に形成するので、作業全体の期間が短くなる。
第8発明によれば、改良予定区画を部分的に深く掘り下げつつ、混練り土を投入していくので、崩れやすい地盤であっても投入された混練り土が掘削面の崩れを防止する。このため、地崩れの発生を抑制しつつ地盤改良が行える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る土固化材混練機の側面図である。
【図2】図1の土固化材混練機の一部透視平面図である。
【図3】図1の土固化材混練機の正面図である。
【図4】図1の土固化材混練機の内部構造を示す説明図である。
【図5】図2のV−V線拡大断面図である。
【図6】本発明の土固化材混練機の作業説明図であって、Iは土投入作業の説明図、IIは蓋閉止作業の説明図である。
【図7】本発明の土固化材混練機の作業説明図であって、IIIは押込み作業の説明図、IVは攪拌作業の説明図である。
【図8】掘削面が崩れない場所の地盤改良工事の説明図である。
【図9】図8に示す地盤改良工事のフローチャートである。
【図10】掘削面が崩れやすい場所の地盤改良工事の説明図である。
【図11】図10に示す地盤改良工事のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の一実施形態に係る土固化材混練機Aを図面に基づき説明する。
なお、本明細書における固化材とは、セメントミルク(水でセメント系固化材を溶かしたもの)が代表的であるが、これ以外であっても土を固化させるものであれば全てこれに含むものである。
図1および図2において、1は基台であって、その上部に土収容部2と攪拌部3が並べて配置されている。
土収容部2は、投入された土塊を収容して密閉し、攪拌部3へ押し込むための容器となる部材である。
攪拌部3は、土収容部2から押し込まれた土とセメントミルク等の固化材を攪拌混合する、いわゆる混練りする機構部分である。
【0012】
土収容部2は、図2および図3に示すように、土収容ケース20を備えており、この土収容ケース20は、下部の下ケース21と上部の蓋22とからなる。下ケース21の断面形状は半円であり、蓋22も閉じた状態では半円であって、土収容ケース20の全体としての断面は円形であって、全体形状は円筒形である。
土収容ケース20の外端部(反攪拌部3側)は、土収容ケース20の側端を塞ぐ側板を兼ねる支持板11により基台1に固定されている。
【0013】
土収容ケース20の上面を塞ぐ蓋22は、左右の蓋板22a,22bからなり、各蓋板22a,22bは角度にして90°分に湾曲した板材で構成されている。
各蓋板22a,22bの下縁は、下ケース21の上縁に蝶番23で開閉自在に連結されている。
このように、2枚の蓋板22a,22bからなる蓋22を開いておくと、土収容ケース20の上面から土を内部に投入することができる。そして、蓋22を閉じると、土収容ケース20を密閉でき、投入された土塊を円筒形に強制的に成形することができる。
【0014】
前記蓋22には開閉手段が取付けられている。各蓋板22a,22bの上面には杆24a,24bがそれぞれ取付けられ、その杆24a,24bと基台1との間には、それぞれ油圧シリンダ25a,25bが取付けられている(2本の油圧シリンダを区別しないときは、油圧シリンダ25と表示する)。
この油圧シリンダ25a,25bを伸長させると蓋板22a,22bを閉じ、収縮させると蓋板22a,22を開けることができる。図1は蓋22を閉じた状態、図2は蓋22を開いた状態を示している。図3において実線は蓋22を閉じた状態、想像線は蓋22を開いた状態を示している。
【0015】
図2および図4に示すように、前記土収容ケース20の内部には押板26が設けられている。この押板26は投入された土塊を土収容ケース20の一端側から攪拌部3側へ押し込む手段である。図5に示すように、押板26は円形板であって、その外径寸法は土収容ケース20(下ケース21と蓋板22a、22bからなる円)の内径より少し小さい寸法である。なお、押板26の中心部には後述する回転軸31を通すガイド筒29が形成されている。
【0016】
前記押板26には、押込み手段が設けられている。押込み手段は、2本の油圧シリンダ28,28からなり、そのシリンダ本体は前記支持板11に固定され、ピストンロッド28aが押板26の裏面に固定されている。このため、油圧シリンダ28,28を伸長させると、押板26を土収容ケース20内の一端から攪拌部3側に移動させることができ、油圧シリンダ28,28を収縮させると、押板26を攪拌部3の入側から元の端部側に移動させることができる。
【0017】
前記押板26の裏面に取付けられているガイド筒29は後述する回転軸31上を摺動するようになっている。このため、押込み手段で押板26を往復動させるとき、ガイド筒29が押板26の動きを円滑にする。
なお、図5に示すように、土収容ケース20の下ケース21の内周に軸方向に延びるガイドレール21gを取付け、押板26の外周にガイドレールを受入れる凹溝26gを形成しておけば、ガイドレール21gと凹溝26gが押板26の回転防止機構となる。
【0018】
図1、図2および図4に示すように、前記攪拌部3は円筒形の攪拌ケース30を備えている。
この攪拌ケース30は円筒形であって、その内径は前記土収容ケース20と同寸法である。
攪拌ケース30は前記土収容ケース20の内側端部と接合され、その接合部分において、支持フレーム32で基台1に結合され、また他端寄りの位置では小さい支持台33で基台1に結合されている。
攪拌ケース30の他端側では底部を一部切り欠いて排出口34を形成している。また、攪拌ケース30の側面は側板35で密閉されている。
【0019】
攪拌ケース30の中心線上には、回転軸31が配置されている。回転軸31の入力側は側板35に固定された軸受36aで回転自在に支持され、回転軸31の他端側は土収容ケース20の側板11に固定した軸受36bで回転自在に支持されている。
【0020】
図2および図4に示すように、攪拌ケース30の内部において回転軸31には、3組の攪拌羽根37,38,39が取付けられている。この3枚の羽根は、土収容ケース20に近い側から排出口34側に向けて、第1攪拌羽根37、第2攪拌羽根38、第3攪拌羽根39という。
【0021】
いずれの攪拌羽根も半径方向に延びる2枚の羽根から構成されているが、羽根の向きはそれぞれ変えられており、つぎのような機能を発揮するようになっている。
・第1攪拌羽根37:順方向
押し込み方向とは順方向に土を掻き込み、押板26で押されてきた土をスライスしセメントミルクと絡ませる。
・第2攪拌羽根38:中立
押込み方向に対し順方向でも逆方向でもなく、中立であって、土とセメントミルクをよく練り混ぜる。
・第3攪拌羽根39:逆流
押込み方向に対し逆方向の押し戻しを発生させる羽根であり、土を簡単には排出口34から出さないようにして、土とセメントミルクを更に練り混ぜる。
【0022】
前記回転軸31には、回転駆動手段が連結されている。
図1および図4に示すように、攪拌ケース30の端面には取付板41が取付けられており、その上部には駆動源である減速器付きモータ42が取付けられている。このモータ42の主軸にはスプロケット43が取付けられ、一方で回転軸31の入力端にもスプロケット44が取付けられている。そして、スプロケット43とスプロケット44にはチェーン45が巻き掛けられている。
このため、モータ42を駆動すると、回転軸31を回転させ、攪拌ケース30内で攪拌羽根37,38,39を回転させて、土とセメントミルクを混練りすることができる。
【0023】
つぎに、上記土固化材混練機Aの使用方法を説明する。
まず、本発明の土固化材混練機Aを地盤改良現場へ搬送していって現場に設置する。土固化材混練機Aは横に長い円筒体を基本とするコンパクトな構造であるため、長さが3.5m程度、重量が2トン程度であるため、一般のトラックで搬送でき、吊下ろすのもワイヤで玉掛けすればトラッククレーンを使ったり、バックホウを用いて吊下ろすことができる。よって、搬送設置も撤去も容易である。
本発明の土固化材混練機Aで混練りする土は、地盤改良現場における改良予定区画内の掘削土であることが一般的であり、この掘削土をバックホウで土固化材混練機Aに投入し、かつセメントミルクも投入して混練りすることになる。
【0024】
混練り作業を図6および図7に基づき以下順に説明する。
I 土投入作業
図6(I)に示すように、蓋22(22a、22b)を油圧シリンダ25(25a,25b)を収縮させて開いておく。また、押板26も油圧シリンダ27を収縮させて(図中右端へ)後退させておく。この状態で土収容ケース20の上面は大きく開口しているので、バックホウのバケット等を使って掘削土を投入する作業は容易に行える。
土塊Bの投入量は、土収容ケース20の内容積より多少多くてもよい。蓋22を閉めたとき、土塊Bを内部に押し込んだり、攪拌部3内に移動させて、土収容部2は密閉できるからである。
また、併せてセメントミルクを必要量だけ投入する。
【0025】
II 蓋閉止作業
図6(II)に示すように、2本の油圧シリンダ25(25a,25b)を伸長させて蓋体22a、22bを閉め土収容ケース20の蓋22を閉める。
既述のごとく、土塊Bを多目に投入しても、土塊の中に大小の石が混じっていてもよい。蓋22を閉めるとき大きな力が必要となるが、非圧縮性流体を使う油圧シリンダ25であれば、それに必要な充分な力を出すことができる。
このように蓋22で密閉したとき、内部の土塊を円筒形に押迫して成形することができる。
【0026】
III 押込み作業
図7(III)に示すように、油圧シリンダ28を伸長させて押板26を攪拌部側へ押し寄せると、土収容ケース20内の土塊は攪拌ケース30側に押し込まれる。土収容ケース20と攪拌ケース30は共に円筒形であって、内径が同寸であるので、後述する押板26で押し込むと、土収容ケース20内の土塊は攪拌ケース30内に支障なく押し込まれる。また、土塊は、円筒形に圧縮されているので、攪拌ケース30側に無理なく移動する。つまり、運転初めは攪拌ケース30内は空洞であり、運転継続中は土塊が連続的に排出口34に向けて移動するので、押し込みは容易である。
更に、このとき、土塊内に石が混入していても、土収容ケース20と攪拌ケース30は同寸の円筒形であるので、攪拌ケース30の入口で引っ掛かることもないので、押し込み作業が円滑に行われる。
【0027】
IV 攪拌作業
図7(III)(IV)に示すように、土塊を押し込みながら攪拌羽根37,38,39を同時に回転させる。このとき、土塊Bは、羽根で粉砕されて、細かな土となり、同時にセメントミルクと混練りされる。
また、押板26で押し込む量を油圧シリンダ28の伸長速度で均等に制御すると、攪拌もれなく全ての土塊Bを粉砕することができる。
【0028】
上記攪拌作業中、第1攪拌羽根37は土塊Bを掻き込みながらスライスしてセメントミルクを絡ませ、第2攪拌羽根38は、粉砕されつつある土とセメントミルクを練り混ぜを続け、第3攪拌羽根39は粉砕された土を押し戻しながら更に粉砕を続け、かつ練り混ぜを行う。
このようにして充分に細かく粉砕された土とセメントミルクを充分に混練りすると、排出口34から順々に練り合せ済みの土が改良体を形成すべき空洞内に排出される。
【0029】
排出された混練り済みの土は、改良区画内に投入されたあと、固化材と共に所定時間をかけて固化すれば、改良体として仕上がることになる。
【0030】
本発明の実施形態では、開閉手段の油圧シリンダ25と押込み手段の油圧シリンダ28専用の油圧源を用いて作動させてもよいが、地盤改良現場で使用するバックホウの油圧源を利用して運転することもでき、この場合、特別の動力源を用意する必要がなく、簡便に運転することができる。
【0031】
(地盤改良工法)
つぎに、本発明の土固化材混練機Aを利用した改良体工法を説明する。
図8および図9は地盤が固く掘削面が崩れない場所に適した地盤改良工法を示している。
同図(A)に示すように、掘削機Bで土塊Sを掘削して改良予定区画の全部を空洞Cに形成する。このとき、掘削した掘削土Sは周囲の地面上に置いておく。設計どおりの空洞ができると、(B)(C)図に示すように、掘削土Sを土固化材混練機Aに投入し、粉砕して固化材液を攪拌した混練り土scを作り、同時に改良予定区画内に投入する。混練り土scの投入を必要量だけ行うと、改良体RSが完成する。改良予定区画の空洞を一気に形成するので、作業全体の期間が短くなる。
【0032】
図10および図11は地盤から弱く掘削面が崩れやすい場所に適した地盤改良工法を示している。
同図(D)に示すように、改良予定区画の表層の一部を掘削する。また、そのとき得られた掘削土Sを同時に土固化材混練り機Aに入れて粉砕し固化材液と共に攪拌して混練り土scを作る。そして、部分的に掘削された改良予定区画内に投入する。
その後は、表層から下層に向けて未掘削部分を部分的に掘削していき、そのつど掘削土Sを土固化材混練機Aで混練り土scにして改良予定区画内に投入していく。
このような作業を繰り返していくと最終的には(E)図を経て(F)図に示すように、改良予定区画は混練り土scで充満していく。完全に混練り土scが充満すると、改良体RSが完成する。改良予定区画を部分的に深く掘り下げつつ、混練り土を投入していくので、崩れやすい地盤であっても投入された混練り土が掘削面の崩れを防止する。このため、地崩れの発生を抑制できる。
上記のように、この作業法では、改良予定区画の掘削面が崩れやすくても投入された混練り土scが掘削面の崩れを防止するので、改良体工事がやりやすくなる。
【0033】
上記のいずれの改良工事においても、改良予定区画において掘削しつつ、そこで得られた掘削土で混練り土を生成して改良予定区画内に投入する。混練り土は専用の土固化材混練機を用いて自然地盤の外で生成するので、短時間で良質の混練り土が得られる。つまり、本発明の土固化材混練機Aを用いれば、土塊を予め細かく砕きセメントミルクと充分に混ぜ合せておけるので、混練りと掘削のそれぞれの作業が専用機を用いて能率よく行える。
また、掘削と同時に攪拌する必要がないので掘削が短時間でできる。このため、改良体工事が短期で行え、かつ改良体の強度が均一で高品質になる。
【0034】
本発明の土固化材混練機Aは、既述のごとくトラックで運べる程度の大きさであるので、工事現場の規模が大きくても小さくても、各現場に運び入れて設置でき、また混練り作業を終えた後は、土固化材混練機Aをトラックで再び運び出し、別の現場へ移動することができるので、どのような現場で使用できるという利点がある。
【符号の説明】
【0035】
A 土固化材混練機
2 土収容部
3 攪拌部
20 土収容ケース
21 下ケース
22 蓋
25 油圧シリンダ
26 押板
28 油圧シリンダ
30 攪拌ケース
31 回転軸
37 第1攪拌羽根
38 第2攪拌羽根
39 第3攪拌羽根
42 モータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された土塊を収容する土収容部と、
該土収容部に隣接して設けられた土と固化材を攪拌する攪拌部とを備えており、
前記土収容部は、土収容ケースと、その上面を開閉して閉止した状態で前記土収容ケースを密閉する蓋と、前記土収容ケース内で投入された土塊を前記攪拌部に向けて押し込む押板とを備えており、
前記攪拌部は、攪拌ケースと、その内部で土と固化材を攪拌する攪拌羽根を備えている
ことを特徴とする土固化材混練機。
【請求項2】
前記土収容部は、前記蓋の開閉手段と前記押板の押込み手段を有しており、
前記混練部は、前記攪拌羽根の回転駆動手段を有している
ことを特徴とする請求項1記載の土固化材混練機。
【請求項3】
前記開閉手段は、前記蓋を開閉動作させる油圧シリンダで構成され、
前記押込み手段は、前記押板を前記土収容部内で往復動させる油圧シリンダで構成されている
ことを特徴とする請求項2記載の土固化材混練機。
【請求項4】
前記攪拌部は、その攪拌ケースにおける前記押板の押し込み方向前端部に混練りされた土を排出する排出口を備えている
ことを特徴とする請求項2記載の土固化材混練機。
【請求項5】
前記土収容部の土収容ケースは円筒形であり、前記混練部の攪拌ケースも円筒形であって、互いに同一内径であって、かつ端部同士で接合されており、
前記押板は、円形板であって、その外径は、前記土収容ケースの内径より少し小さい寸法であり、
前記攪拌羽根の羽根の外径は、前記攪拌ケースの内径より少し小さい寸法である
ことを特徴とする請求項2記載の土固化材混練機。
【請求項6】
請求項1記載の土固化材混練機を用い、
改良予定区画を掘り下げる掘削作業と、
この掘削作業で生じた掘削土を粉砕し、かつ固化材液と共に攪拌して混練り土を作る混練土生成作業と、
前記混練り土を掘り下げられた前記改良予定区画内に投入する混練り土投入作業とを実行して地盤改良体を構成する
ことを特徴とする地盤改良工法。
【請求項7】
前記掘削作業において、改良予定区画の全部を空洞に形成し、その後に混練り土生成作業と混練り土投入作業を実行する
ことを特徴とする請求項6記載の地盤改良工法。
【請求項8】
前記掘削作業において、改良予定区画の表層から下層に向けて部分的に掘削していき、その掘削土を使って混練り土生成作業と混練り土投入作業を実施し、これらの作業を繰り返す
ことを特徴とする請求項6記載の地盤改良工法。
【請求項1】
投入された土塊を収容する土収容部と、
該土収容部に隣接して設けられた土と固化材を攪拌する攪拌部とを備えており、
前記土収容部は、土収容ケースと、その上面を開閉して閉止した状態で前記土収容ケースを密閉する蓋と、前記土収容ケース内で投入された土塊を前記攪拌部に向けて押し込む押板とを備えており、
前記攪拌部は、攪拌ケースと、その内部で土と固化材を攪拌する攪拌羽根を備えている
ことを特徴とする土固化材混練機。
【請求項2】
前記土収容部は、前記蓋の開閉手段と前記押板の押込み手段を有しており、
前記混練部は、前記攪拌羽根の回転駆動手段を有している
ことを特徴とする請求項1記載の土固化材混練機。
【請求項3】
前記開閉手段は、前記蓋を開閉動作させる油圧シリンダで構成され、
前記押込み手段は、前記押板を前記土収容部内で往復動させる油圧シリンダで構成されている
ことを特徴とする請求項2記載の土固化材混練機。
【請求項4】
前記攪拌部は、その攪拌ケースにおける前記押板の押し込み方向前端部に混練りされた土を排出する排出口を備えている
ことを特徴とする請求項2記載の土固化材混練機。
【請求項5】
前記土収容部の土収容ケースは円筒形であり、前記混練部の攪拌ケースも円筒形であって、互いに同一内径であって、かつ端部同士で接合されており、
前記押板は、円形板であって、その外径は、前記土収容ケースの内径より少し小さい寸法であり、
前記攪拌羽根の羽根の外径は、前記攪拌ケースの内径より少し小さい寸法である
ことを特徴とする請求項2記載の土固化材混練機。
【請求項6】
請求項1記載の土固化材混練機を用い、
改良予定区画を掘り下げる掘削作業と、
この掘削作業で生じた掘削土を粉砕し、かつ固化材液と共に攪拌して混練り土を作る混練土生成作業と、
前記混練り土を掘り下げられた前記改良予定区画内に投入する混練り土投入作業とを実行して地盤改良体を構成する
ことを特徴とする地盤改良工法。
【請求項7】
前記掘削作業において、改良予定区画の全部を空洞に形成し、その後に混練り土生成作業と混練り土投入作業を実行する
ことを特徴とする請求項6記載の地盤改良工法。
【請求項8】
前記掘削作業において、改良予定区画の表層から下層に向けて部分的に掘削していき、その掘削土を使って混練り土生成作業と混練り土投入作業を実施し、これらの作業を繰り返す
ことを特徴とする請求項6記載の地盤改良工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−246943(P2011−246943A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120600(P2010−120600)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(508142756)株式会社エルフ (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(508142756)株式会社エルフ (2)
【Fターム(参考)】
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