土圧式シールド掘進機の排土用スクリュウコンベヤ装置
【目的】 スクリュウ羽根の耐摩耗性を向上させた排土用スクリュウコンベヤ装置を提供する。
【構成】 シールド本体1の前部に設けられたカッタヘッド2により掘削した土砂を、シールド本体1前部のチャンバ1a内へ取込んだ後、スクリュウコンベヤ4によりチャンバ1a内より搬出するようにした土圧式シールド掘進機において、上記スクリュウコンベヤ4のスクリュウ羽根4b外周面に、円周方向に所定のピッチpで多数の超硬チップ8を取付けたもので、超硬チップ8によりスクリュウ羽根4bの耐摩耗性が向上するため、長期間安定した土砂の搬送が可能である。
【構成】 シールド本体1の前部に設けられたカッタヘッド2により掘削した土砂を、シールド本体1前部のチャンバ1a内へ取込んだ後、スクリュウコンベヤ4によりチャンバ1a内より搬出するようにした土圧式シールド掘進機において、上記スクリュウコンベヤ4のスクリュウ羽根4b外周面に、円周方向に所定のピッチpで多数の超硬チップ8を取付けたもので、超硬チップ8によりスクリュウ羽根4bの耐摩耗性が向上するため、長期間安定した土砂の搬送が可能である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はスクリュウ羽根の耐摩耗性を向上させた土圧式シールド掘進機の排土用スクリュウコンベヤ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来土圧式シールド掘進機は図1に示すようにシールド本体aの前部にカッタヘッドモータbにより回転駆動されるカッタヘッドcが設けられていて、このカッタヘッドcによりシールド本体a前方の切羽dを掘削するように構成されている。またカッタヘッドcにより掘削された土砂は、シールド本体a前部のチャンバe内へ取込まれた後、スクリュウコンベヤfによりチャンバe内より搬出され、さらに図示しない土砂搬送装置により後方へ搬出されるようになっている。
【0003】一方上記従来のスクリュウコンベヤfは、ケーシングg内にスクリュウ羽根hが設けられていて、このスクリュウ羽根hをスクリュウモータiにより回転させることにより、チャンバe内の土砂をケーシングg内へと取込み、ケーシングg内面と土砂の摩擦を利用して土砂をケーシングgの後方へ搬送するように構成されている。例えば実開昭60−100497号公報では,スクリュウコンベヤにおけるスクリュウ羽根の搬送側もしくは、反対側に突起を設けることにより土砂中の礫などが効率よく搬送できるようにしたトンネル掘削機が提案されている。さらに実開昭60−85395号公報では、スクリュウコンベヤにおける土砂取込み口のトラフ先端とスクリュウ羽根との間に形成された楔状部に、スクリュウ羽根の土砂搬出側となる外径側に突起物を設けることにより土砂中の礫などが効率よく搬送できるようにしたトンネル掘削機が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし従来のスクリュウコンベヤfではスクリュウ羽根hが鉄または鉄の表面に図2の(イ)及び(ロ)に示すように耐摩耗材料jを肉盛りした構造のため、砂礫などを搬送すると、スクリュウ羽根hが早期に摩耗して搬送能力が低下する不具合がある。
【0005】またスクリュウ羽根の摩耗によりケーシングg内面とスクリュウ羽根h外周間の隙間が大きくなって小礫などが噛み込みやすくなり、その結果スクリュウモータiに過大なトルクが作用して、スクリュウモータiの耐久性が早期に低下するなどの不具合もあった。なおシールド掘進機用のカッタービットにおいては特開平4−166596号公報のように、複数の超硬チップを台金の少なくとも切削方向の前端面に先端側から基端部側にかけて多段式に並べて安定した掘削作業ができるようにしたものや、特開平3−87494号公報のように刃先部先端に楔傾斜面と同一傾斜面を有する超硬チップを植設し、台金の楔傾斜面に設けた凹部に硬化肉盛材を充填肉盛りして刃先部の耐摩耗性を向上させるようにしたものは公知であるが、スクリュウコンベヤ装置においてスクリュウ羽根の早期摩耗に対する対策については従来格別の対策がなされていないのが現状である。この発明はかかる不具合を改善するためになされたもので、スクリュウ羽根の耐摩耗性を向上させた土圧式シールド掘進機のスクリュウコンベヤ装置を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明は上記目的を達成するために、シールド本体の前部に設けられたカッタヘッドにより掘削した土砂を、シールド本体前部のチャンバ内へ取込んだ後、スクリュウコンベヤによりチャンバ内より搬出するようにした土圧式シールド掘進機において、上記スクリュウコンベヤのスクリュウ羽根外周面に、円周方向に所定のピッチで多数の超硬チップを取付けたものである。またスクリュウ羽根の摩耗しやすいケーシングの後部側ほど超硬チップのピッチを小さくしたものである。さらにケーシング内周面に複数の突条を突設したものである。
【0007】
【作用】上記構成によりスクリュウ羽根の耐摩耗性が向上すると共に、摩耗したスクリュウ羽根の外周面とケーシング内面との間に小礫などが噛み込むことも少なくなるため、スクリュウモータに過大なトルクが作用するのを防止することができる。
【0008】また摩耗しやすいケーシングの後部側ほど超硬チップのピッチを小さくしたことにより、スクリュウ羽根の寿命が向上すると共に、ケーシング内面に突条を突設して、これら突条の間でケーシングの内面に土砂のフィルムを形成することにより、ケーシング内面の摩擦係数がスクリュウ羽根面の摩耗係数より大きくなるため、土砂は羽根に付着できず羽根につれまわりする事なく後方へ排土されていくため、搬送効率が向上する。
【0009】
【実施例】この発明の一実施例を図3以下に示す図面を参照して詳述する。図3は土圧式シールド掘進機の断面図、図4は排土用スクリュウコンベヤ装置の断面図、図5R>5は図4のA円内の拡大図、図6は図5のB方向からの矢視図、図7は図6のC−C線に沿う断面図である。
【0010】図3において1はシールド本体で、前部にカッタヘッドモータ3により回転されるカッタヘッド2が設けられている。上記カッタヘッド2により掘削された土砂はシールド本体1前部のチャンバ1a内へ取込まれた後、スクリュウコンベヤ4によりチャンバ1a内より搬出され、さらに図示しない土砂搬送装置により後方へ搬送されるようになっている。上記スクリュウコンベヤ4は前下りとなるように傾斜されたケーシング4aと、このケーシング4a内に収容されたコイル状のスクリュウ羽根4bよりなる。
【0011】上記スクリュウ羽根4bの前端はチャンバ1a内へ突出されていると共に、後端はケーシング4aの後端側に回転自在に設けられた回転筒4cの内面に固着されている。上記回転筒4cの外周面にはリングギヤ4dが固着されていて、このリングギヤ4dにギヤボックス4eを介してケーシング4aに取付けられたスクリュウモータ5のピニオン5aが噛合されていて、スクリュウモータ5により回転筒4cを回転させることにより、スクリュウ羽根4bが回転されるようになっている。
【0012】またケーシング4aの後端部にはゲートシリンダ6により開閉される排土ゲート7が設けられていて、この排土ゲート7を開放することにより、スクリュウ羽根4bで搬送されてきた土砂をケーシング4a内より排出できるようになっている。
【0013】一方上記スクリュウ羽根4bの外周面には円周方向に沿って所定のピッチpで多数の超硬チップ8が溶接などの手段で固着されている。上記超硬チップ8はスクリュウ羽根4bの外周面の幅wより長さの短い長方形状の板体より形成されていて、図5に示すようにスクリュウ羽根4b外周の後縁に一端が合致するよう固着されており、土砂の圧密度が高くなるケーシング4aの後部側ほど超硬チップ8のピッチpが小さくなるように設定されている。
【0014】すなわち図4に示すようにケーシング4aの中間部よりやや前側のL1 の範囲では、超硬チップ8のピッチは例えば2pに、またほぼ中間部L2 の範囲では例えば1.5pに、そして中間部より後側のL3 の範囲では例えば1pに設定されていて、ケーシング4aの後部側ほどスクリュウ羽根4bの耐摩耗性が高くなるように構成されている。
【0015】次に作用を説明すると、カッタヘッド2により掘削されてチャンバ1a内に取込まれた土砂は、スクリュウ羽根4bの前端でケーシング4a内へ取込まれた後ケーシング4a内を後方へ搬送され、排土ゲート7よりベルトコンベヤなどの土砂搬送装置10に排出されて、土砂搬送装置10により後方へ搬送される。
【0016】またスクリュウ羽根4bによりケーシング4a内の土砂を搬送する際、スクリュウ羽根4bの外周面がケーシング4aの内面に付着した土砂と摺接するが、スクリュウ羽根4bの外周面には超硬チップ8が所定のピッチpで固着されているため、早期に摩耗することがないと共に、スクリュウ羽根4bの外周面には、各超硬チップ8の間に入り込んだ土砂により図8に示すように薄膜9が形成され、この薄膜9によりスクリュウ羽根4b外周の摩耗が防止されるため、スクリュウ羽根4bの耐摩耗性が超硬チップ8と相俟ってさらに向上する。
【0017】なお上記実施例はスクリュウ羽根4bの外周面に所定のピッチpで超硬チップ8を取付けたものであるが、同時にケーシング4bの内面に突条4gを設けることにより、土砂の搬送効率を上げることもできる。次にこれを図9ないし図13で説明すると、ケーシング4aの内周面には図9及び図10に示すように、ケーシング4aの軸線方向に沿い、かつ円周方向に間隔を存して複数本の突条4gが突設されている。これら突条4gは例えば断面が半円状となっていて、頂部がスクリュウ羽根4bの外周面に固着された超硬チップ8と干渉しないよう僅かな隙間が形成されている。
【0018】なお突条4gは図11に示すように網目状に設けたり、図12に示すように軸方向と円周方向の組合せや図13に示すように螺旋状に設けるようにしてもよい。
【0019】次に作用を説明すると、カッタヘッド2により掘削されてチャンバ1a内に取込まれた土砂は、スクリュウ4bによりケーシング4a内に取込まれてケーシング4a内を後方へ搬送されるが、ケーシング4aの内面には軸線方向に複数本の突条4cが突設されており、スクリュウ4bの回転により、これら突条4cの間に図10に示すように土砂のフィルム(薄膜)12が形成される。これによってケーシング4a内に取込まれた土砂はこの土砂のフィルム6と接触する際の摩擦力がスクリュウ羽根に付着する土砂の摩擦力よりも高いので、スクリュウ4bの土砂付着力が負けてとも回りしなくなるため、土砂の搬送が効率よく行えるようになる。
【0020】ちなみに従来の内面が平滑なケーシングでは、スクリュウ表面の摩擦係数μ1とケーシング内面の摩擦係数μ2がほぼ等しい(μ1=μ2)ため、スクリュウに土砂が付着してμ1>μ2になると、土砂はスクリュウととも回りして搬送することができなかったが、この発明のようにケーシング4aの内面に土砂のフィルム12を形成することにより、スクリュウ4b表面の摩擦係数μ1と、ケーシング4a内面の摩擦係数μ2の関係は常にμ1<μ2に保持されるため、ケーシング4a内の土砂はスクリュウ4bととも回りすることもなく、効率よく搬送することができるようになる。
【0021】
【発明の効果】この発明は以上詳述したように、スクリュウコンベヤのスクリュウ羽根外周面に、円周方向に所定のピッチで多数の超硬チップを取付けたことから、スクリュウ羽根外周面の摩耗を大幅に低減することができる。これによってスクリュウ羽根外周面の摩耗によりケーシング内面との間の隙間が増加して、この隙間に小礫などが噛み込まれにくくなるため、スクリュウモータに過大なトルクが作用することがなく、スクリュウモータの耐久性を大幅に向上することができる。
【0022】また各超硬チップの間に入り込んだ土砂によりスクリュウ羽根外周面に土砂の薄膜が形成されて、この薄膜によりスクリュウ羽根の摩耗が防止されるため、スクリュウ羽根の寿命が向上すると共に、土砂が圧密されるケーシングの後部側ほど超硬チップのピッチを小さくすることにより、さらに耐摩耗性が向上する。さらにスクリュウ羽根の外周面に超硬チップを所定の間隔で取付ければよいため、スクリュウ羽根の外周面全体に耐摩耗材料を肉盛りする場合に比べて作業が容易で、かつ材料費も少なくてよいため経済的であると共に、超硬チップが摩耗した場合も超硬チップを交換するだけでよいため補修も容易である。
【0023】しかもケーシングの内面に突条を突設して、この突条によりケーシング内面に土砂のフィルムを形成するようにすれば、土砂のフィルムによりケーシング内面の摩擦係数を常にスクリュウ羽根に付着する土砂の摩擦係数より高くなって土砂がスクリュウ羽根と共回りすることがないため、土砂の搬送効率を向上させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の土圧式シールド掘進機の断面図である。
【図2】(イ)従来の土圧式シールド掘進機に設けられた排土用スクリュウコンベヤのスクリュウ羽根を示す説明図である。
(ロ)図2の(イ)のE−E線に沿う断面図である。
【図3】この発明の一実施例になる土圧式シールド掘進機の断面図である。
【図4】この発明の一実施例になる土圧式シールド掘進機に設けられた排土用スクリュウコンベヤ装置の断面図である。
【図5】図4のA円内の拡大図である。
【図6】図5のB方向からの矢視図である。
【図7】図6のC−C線に沿う断面図である。
【図8】この発明の一実施例になる排土用スクリュウコンベヤ装置の作用を示す説明図である。
【図9】この発明の他の実施例になる排土用スクリュウコンベヤ装置の断面図である。
【図10】図9のD−D線に沿う断面図である。
【図11】ケーシング内面に突設された突条の他の実施例を示す説明図である。
【図12】ケーシング内面に突設された突条の他の実施例を示す説明図である。
【図13】ケーシング内面に突設された突条の他の実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 シールド本体
1a チャンバ
2 カッタヘッド
4 スクリュウコンベヤ
4a ケーシング
4b スクリュウ羽根
4g 突条
8 超硬チップ
p ピッチ
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はスクリュウ羽根の耐摩耗性を向上させた土圧式シールド掘進機の排土用スクリュウコンベヤ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来土圧式シールド掘進機は図1に示すようにシールド本体aの前部にカッタヘッドモータbにより回転駆動されるカッタヘッドcが設けられていて、このカッタヘッドcによりシールド本体a前方の切羽dを掘削するように構成されている。またカッタヘッドcにより掘削された土砂は、シールド本体a前部のチャンバe内へ取込まれた後、スクリュウコンベヤfによりチャンバe内より搬出され、さらに図示しない土砂搬送装置により後方へ搬出されるようになっている。
【0003】一方上記従来のスクリュウコンベヤfは、ケーシングg内にスクリュウ羽根hが設けられていて、このスクリュウ羽根hをスクリュウモータiにより回転させることにより、チャンバe内の土砂をケーシングg内へと取込み、ケーシングg内面と土砂の摩擦を利用して土砂をケーシングgの後方へ搬送するように構成されている。例えば実開昭60−100497号公報では,スクリュウコンベヤにおけるスクリュウ羽根の搬送側もしくは、反対側に突起を設けることにより土砂中の礫などが効率よく搬送できるようにしたトンネル掘削機が提案されている。さらに実開昭60−85395号公報では、スクリュウコンベヤにおける土砂取込み口のトラフ先端とスクリュウ羽根との間に形成された楔状部に、スクリュウ羽根の土砂搬出側となる外径側に突起物を設けることにより土砂中の礫などが効率よく搬送できるようにしたトンネル掘削機が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし従来のスクリュウコンベヤfではスクリュウ羽根hが鉄または鉄の表面に図2の(イ)及び(ロ)に示すように耐摩耗材料jを肉盛りした構造のため、砂礫などを搬送すると、スクリュウ羽根hが早期に摩耗して搬送能力が低下する不具合がある。
【0005】またスクリュウ羽根の摩耗によりケーシングg内面とスクリュウ羽根h外周間の隙間が大きくなって小礫などが噛み込みやすくなり、その結果スクリュウモータiに過大なトルクが作用して、スクリュウモータiの耐久性が早期に低下するなどの不具合もあった。なおシールド掘進機用のカッタービットにおいては特開平4−166596号公報のように、複数の超硬チップを台金の少なくとも切削方向の前端面に先端側から基端部側にかけて多段式に並べて安定した掘削作業ができるようにしたものや、特開平3−87494号公報のように刃先部先端に楔傾斜面と同一傾斜面を有する超硬チップを植設し、台金の楔傾斜面に設けた凹部に硬化肉盛材を充填肉盛りして刃先部の耐摩耗性を向上させるようにしたものは公知であるが、スクリュウコンベヤ装置においてスクリュウ羽根の早期摩耗に対する対策については従来格別の対策がなされていないのが現状である。この発明はかかる不具合を改善するためになされたもので、スクリュウ羽根の耐摩耗性を向上させた土圧式シールド掘進機のスクリュウコンベヤ装置を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明は上記目的を達成するために、シールド本体の前部に設けられたカッタヘッドにより掘削した土砂を、シールド本体前部のチャンバ内へ取込んだ後、スクリュウコンベヤによりチャンバ内より搬出するようにした土圧式シールド掘進機において、上記スクリュウコンベヤのスクリュウ羽根外周面に、円周方向に所定のピッチで多数の超硬チップを取付けたものである。またスクリュウ羽根の摩耗しやすいケーシングの後部側ほど超硬チップのピッチを小さくしたものである。さらにケーシング内周面に複数の突条を突設したものである。
【0007】
【作用】上記構成によりスクリュウ羽根の耐摩耗性が向上すると共に、摩耗したスクリュウ羽根の外周面とケーシング内面との間に小礫などが噛み込むことも少なくなるため、スクリュウモータに過大なトルクが作用するのを防止することができる。
【0008】また摩耗しやすいケーシングの後部側ほど超硬チップのピッチを小さくしたことにより、スクリュウ羽根の寿命が向上すると共に、ケーシング内面に突条を突設して、これら突条の間でケーシングの内面に土砂のフィルムを形成することにより、ケーシング内面の摩擦係数がスクリュウ羽根面の摩耗係数より大きくなるため、土砂は羽根に付着できず羽根につれまわりする事なく後方へ排土されていくため、搬送効率が向上する。
【0009】
【実施例】この発明の一実施例を図3以下に示す図面を参照して詳述する。図3は土圧式シールド掘進機の断面図、図4は排土用スクリュウコンベヤ装置の断面図、図5R>5は図4のA円内の拡大図、図6は図5のB方向からの矢視図、図7は図6のC−C線に沿う断面図である。
【0010】図3において1はシールド本体で、前部にカッタヘッドモータ3により回転されるカッタヘッド2が設けられている。上記カッタヘッド2により掘削された土砂はシールド本体1前部のチャンバ1a内へ取込まれた後、スクリュウコンベヤ4によりチャンバ1a内より搬出され、さらに図示しない土砂搬送装置により後方へ搬送されるようになっている。上記スクリュウコンベヤ4は前下りとなるように傾斜されたケーシング4aと、このケーシング4a内に収容されたコイル状のスクリュウ羽根4bよりなる。
【0011】上記スクリュウ羽根4bの前端はチャンバ1a内へ突出されていると共に、後端はケーシング4aの後端側に回転自在に設けられた回転筒4cの内面に固着されている。上記回転筒4cの外周面にはリングギヤ4dが固着されていて、このリングギヤ4dにギヤボックス4eを介してケーシング4aに取付けられたスクリュウモータ5のピニオン5aが噛合されていて、スクリュウモータ5により回転筒4cを回転させることにより、スクリュウ羽根4bが回転されるようになっている。
【0012】またケーシング4aの後端部にはゲートシリンダ6により開閉される排土ゲート7が設けられていて、この排土ゲート7を開放することにより、スクリュウ羽根4bで搬送されてきた土砂をケーシング4a内より排出できるようになっている。
【0013】一方上記スクリュウ羽根4bの外周面には円周方向に沿って所定のピッチpで多数の超硬チップ8が溶接などの手段で固着されている。上記超硬チップ8はスクリュウ羽根4bの外周面の幅wより長さの短い長方形状の板体より形成されていて、図5に示すようにスクリュウ羽根4b外周の後縁に一端が合致するよう固着されており、土砂の圧密度が高くなるケーシング4aの後部側ほど超硬チップ8のピッチpが小さくなるように設定されている。
【0014】すなわち図4に示すようにケーシング4aの中間部よりやや前側のL1 の範囲では、超硬チップ8のピッチは例えば2pに、またほぼ中間部L2 の範囲では例えば1.5pに、そして中間部より後側のL3 の範囲では例えば1pに設定されていて、ケーシング4aの後部側ほどスクリュウ羽根4bの耐摩耗性が高くなるように構成されている。
【0015】次に作用を説明すると、カッタヘッド2により掘削されてチャンバ1a内に取込まれた土砂は、スクリュウ羽根4bの前端でケーシング4a内へ取込まれた後ケーシング4a内を後方へ搬送され、排土ゲート7よりベルトコンベヤなどの土砂搬送装置10に排出されて、土砂搬送装置10により後方へ搬送される。
【0016】またスクリュウ羽根4bによりケーシング4a内の土砂を搬送する際、スクリュウ羽根4bの外周面がケーシング4aの内面に付着した土砂と摺接するが、スクリュウ羽根4bの外周面には超硬チップ8が所定のピッチpで固着されているため、早期に摩耗することがないと共に、スクリュウ羽根4bの外周面には、各超硬チップ8の間に入り込んだ土砂により図8に示すように薄膜9が形成され、この薄膜9によりスクリュウ羽根4b外周の摩耗が防止されるため、スクリュウ羽根4bの耐摩耗性が超硬チップ8と相俟ってさらに向上する。
【0017】なお上記実施例はスクリュウ羽根4bの外周面に所定のピッチpで超硬チップ8を取付けたものであるが、同時にケーシング4bの内面に突条4gを設けることにより、土砂の搬送効率を上げることもできる。次にこれを図9ないし図13で説明すると、ケーシング4aの内周面には図9及び図10に示すように、ケーシング4aの軸線方向に沿い、かつ円周方向に間隔を存して複数本の突条4gが突設されている。これら突条4gは例えば断面が半円状となっていて、頂部がスクリュウ羽根4bの外周面に固着された超硬チップ8と干渉しないよう僅かな隙間が形成されている。
【0018】なお突条4gは図11に示すように網目状に設けたり、図12に示すように軸方向と円周方向の組合せや図13に示すように螺旋状に設けるようにしてもよい。
【0019】次に作用を説明すると、カッタヘッド2により掘削されてチャンバ1a内に取込まれた土砂は、スクリュウ4bによりケーシング4a内に取込まれてケーシング4a内を後方へ搬送されるが、ケーシング4aの内面には軸線方向に複数本の突条4cが突設されており、スクリュウ4bの回転により、これら突条4cの間に図10に示すように土砂のフィルム(薄膜)12が形成される。これによってケーシング4a内に取込まれた土砂はこの土砂のフィルム6と接触する際の摩擦力がスクリュウ羽根に付着する土砂の摩擦力よりも高いので、スクリュウ4bの土砂付着力が負けてとも回りしなくなるため、土砂の搬送が効率よく行えるようになる。
【0020】ちなみに従来の内面が平滑なケーシングでは、スクリュウ表面の摩擦係数μ1とケーシング内面の摩擦係数μ2がほぼ等しい(μ1=μ2)ため、スクリュウに土砂が付着してμ1>μ2になると、土砂はスクリュウととも回りして搬送することができなかったが、この発明のようにケーシング4aの内面に土砂のフィルム12を形成することにより、スクリュウ4b表面の摩擦係数μ1と、ケーシング4a内面の摩擦係数μ2の関係は常にμ1<μ2に保持されるため、ケーシング4a内の土砂はスクリュウ4bととも回りすることもなく、効率よく搬送することができるようになる。
【0021】
【発明の効果】この発明は以上詳述したように、スクリュウコンベヤのスクリュウ羽根外周面に、円周方向に所定のピッチで多数の超硬チップを取付けたことから、スクリュウ羽根外周面の摩耗を大幅に低減することができる。これによってスクリュウ羽根外周面の摩耗によりケーシング内面との間の隙間が増加して、この隙間に小礫などが噛み込まれにくくなるため、スクリュウモータに過大なトルクが作用することがなく、スクリュウモータの耐久性を大幅に向上することができる。
【0022】また各超硬チップの間に入り込んだ土砂によりスクリュウ羽根外周面に土砂の薄膜が形成されて、この薄膜によりスクリュウ羽根の摩耗が防止されるため、スクリュウ羽根の寿命が向上すると共に、土砂が圧密されるケーシングの後部側ほど超硬チップのピッチを小さくすることにより、さらに耐摩耗性が向上する。さらにスクリュウ羽根の外周面に超硬チップを所定の間隔で取付ければよいため、スクリュウ羽根の外周面全体に耐摩耗材料を肉盛りする場合に比べて作業が容易で、かつ材料費も少なくてよいため経済的であると共に、超硬チップが摩耗した場合も超硬チップを交換するだけでよいため補修も容易である。
【0023】しかもケーシングの内面に突条を突設して、この突条によりケーシング内面に土砂のフィルムを形成するようにすれば、土砂のフィルムによりケーシング内面の摩擦係数を常にスクリュウ羽根に付着する土砂の摩擦係数より高くなって土砂がスクリュウ羽根と共回りすることがないため、土砂の搬送効率を向上させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の土圧式シールド掘進機の断面図である。
【図2】(イ)従来の土圧式シールド掘進機に設けられた排土用スクリュウコンベヤのスクリュウ羽根を示す説明図である。
(ロ)図2の(イ)のE−E線に沿う断面図である。
【図3】この発明の一実施例になる土圧式シールド掘進機の断面図である。
【図4】この発明の一実施例になる土圧式シールド掘進機に設けられた排土用スクリュウコンベヤ装置の断面図である。
【図5】図4のA円内の拡大図である。
【図6】図5のB方向からの矢視図である。
【図7】図6のC−C線に沿う断面図である。
【図8】この発明の一実施例になる排土用スクリュウコンベヤ装置の作用を示す説明図である。
【図9】この発明の他の実施例になる排土用スクリュウコンベヤ装置の断面図である。
【図10】図9のD−D線に沿う断面図である。
【図11】ケーシング内面に突設された突条の他の実施例を示す説明図である。
【図12】ケーシング内面に突設された突条の他の実施例を示す説明図である。
【図13】ケーシング内面に突設された突条の他の実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 シールド本体
1a チャンバ
2 カッタヘッド
4 スクリュウコンベヤ
4a ケーシング
4b スクリュウ羽根
4g 突条
8 超硬チップ
p ピッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シールド本体(1)の前部に設けられたカッタヘッド(2)により掘削した土砂を、シールド本体(1)前部のチャンバ(1a)内へ取込んだ後、スクリュウコンベヤ(4)によりチャンバ(1a)内より搬出するようにした土圧式シールド掘進機において、上記スクリュウコンベヤ(4)のスクリュウ羽根(4b)外周面に、円周方向に所定のピッチ(p)で多数の超硬チップ(8)を取付けてなる土圧式シールド掘進機の排土用スクリュウコンベヤ装置。
【請求項2】 ケーシング(4a)の後部側ほど超硬チップ(8)のピッチ(p)を小さくしてなる請求項1記載の排土用スクリュウコンベヤ装置。
【請求項3】 ケーシング(4a)の内周面に複数の突条(4g)を突設してなる請求項1記載の排土用スクリュウコンベヤ装置。
【請求項1】 シールド本体(1)の前部に設けられたカッタヘッド(2)により掘削した土砂を、シールド本体(1)前部のチャンバ(1a)内へ取込んだ後、スクリュウコンベヤ(4)によりチャンバ(1a)内より搬出するようにした土圧式シールド掘進機において、上記スクリュウコンベヤ(4)のスクリュウ羽根(4b)外周面に、円周方向に所定のピッチ(p)で多数の超硬チップ(8)を取付けてなる土圧式シールド掘進機の排土用スクリュウコンベヤ装置。
【請求項2】 ケーシング(4a)の後部側ほど超硬チップ(8)のピッチ(p)を小さくしてなる請求項1記載の排土用スクリュウコンベヤ装置。
【請求項3】 ケーシング(4a)の内周面に複数の突条(4g)を突設してなる請求項1記載の排土用スクリュウコンベヤ装置。
【図1】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図11】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図5】
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【図8】
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【図12】
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【公開番号】特開平8−60986
【公開日】平成8年(1996)3月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−220834
【出願日】平成6年(1994)8月24日
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【公開日】平成8年(1996)3月5日
【国際特許分類】
【出願日】平成6年(1994)8月24日
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
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